IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

特許7345150アーク検出システム、アーク検出方法、及びプログラム
<>
  • 特許-アーク検出システム、アーク検出方法、及びプログラム 図1
  • 特許-アーク検出システム、アーク検出方法、及びプログラム 図2A
  • 特許-アーク検出システム、アーク検出方法、及びプログラム 図2B
  • 特許-アーク検出システム、アーク検出方法、及びプログラム 図3A
  • 特許-アーク検出システム、アーク検出方法、及びプログラム 図3B
  • 特許-アーク検出システム、アーク検出方法、及びプログラム 図4
  • 特許-アーク検出システム、アーク検出方法、及びプログラム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】アーク検出システム、アーク検出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/12 20200101AFI20230908BHJP
   G01R 31/58 20200101ALI20230908BHJP
【FI】
G01R31/12 A
G01R31/58
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022551853
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2021032957
(87)【国際公開番号】W WO2022065031
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2020161115
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】木寺 和憲
(72)【発明者】
【氏名】古賀 達雄
(72)【発明者】
【氏名】大堀 貴大
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/082564(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/019164(WO,A1)
【文献】特開2015-2606(JP,A)
【文献】特開2015-517792(JP,A)
【文献】特開2015-525054(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0218044(US,A1)
【文献】米国特許第5047724(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/12
G01R 31/58
G01R 31/50
H02H 1/04
H02H 3/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から電力が供給される給電路に流れる電流の測定結果を取得する取得部と、
前記取得部にて取得した前記電流の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、アーク故障が発生したか否かを判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、前記特定の周波数帯域の成分が閾値以上となる特定時間が、前記給電路に対する機器の着脱の際に生じ得るアークの発生時間よりも長い場合に、前記アーク故障が発生したと判定する、
アーク検出システム。
【請求項2】
前記給電路に対する前記機器の着脱の際に生じ得るアークを抑制する抑制回路を更に備え、
前記抑制回路は、
前記機器の有する負荷と前記給電路との間の電路を開閉する第1スイッチと、
前記機器が前記電路に接続されてから遅延時間の経過後に前記電路を閉じるように前記第1スイッチを駆動する駆動回路と、を有する、
請求項1に記載のアーク検出システム。
【請求項3】
前記第1スイッチは、電界効果トランジスタであって、
前記駆動回路は、前記第1スイッチのゲートに接続されて、前記第1スイッチの前記ゲートにコンデンサの充電電圧を印加するCRフィルタを更に備え、
前記遅延時間は、前記CRフィルタの時定数により決定される、
請求項2に記載のアーク検出システム。
【請求項4】
前記抑制回路は、前記第1スイッチの前記ゲートと前記電路との間を短絡状態及び開放状態の一方から他方に切り替える第2スイッチを更に備える、
請求項3に記載のアーク検出システム。
【請求項5】
前記第2スイッチは、少なくとも前記機器が前記給電路から取り外される際に一時的に前記短絡状態に切り替わるように構成されている、
請求項4に記載のアーク検出システム。
【請求項6】
前記遅延時間は、前記給電路に対して前記機器を着脱する際に生じ得るチャタリングの発生期間において前記機器へ電力が供給されないように設定され、
前記特定時間は、前記遅延時間よりも長い、
請求項2~5のいずれか1項に記載のアーク検出システム。
【請求項7】
直流電源から電力が供給される給電路に流れる電流の測定結果を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにて取得した前記電流の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、アーク故障が発生したか否かを判定する判定ステップと、を含み、
前記判定ステップでは、前記特定の周波数帯域の成分が閾値以上となる特定時間が、前記給電路に対する機器の着脱の際に生じ得るアークの発生時間よりも長い場合に、前記アーク故障が発生したと判定する、
アーク検出方法。
【請求項8】
1以上のプロセッサに、
請求項7に記載のアーク検出方法を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電路においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定するアーク検出システム、アーク検出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アークを検出するためのアーク検出手段が開示されている。このアーク検出手段は、端子台への入力側配線と端子台からの出力側配線との間の電圧値を測定する電圧検出手段と、端子台からの出力側配線の電流値を測定する電流検出手段と、を備える。そして、このアーク検出手段では、電圧検出手段の電圧値の変動及び電流検出手段の電流値の変動を同時に検出することで、電気ノイズ等と、端子台におけるアークとを識別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-7765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アーク故障の発生の誤検出を防ぎやすいアーク検出システム、アーク検出方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るアーク検出システムは、取得部と、判定部と、を備える。前記取得部は、直流電源から電力が供給される給電路に流れる電流の測定結果を取得する。前記判定部は、前記取得部にて取得した前記電流の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、アーク故障が発生したか否かを判定する。前記判定部は、前記特定の周波数帯域の成分が閾値以上となる特定時間が、前記給電路に対する機器の着脱の際に生じ得るアークの発生時間よりも長い場合に、前記アーク故障が発生したと判定する。
【0006】
本発明の一態様に係るアーク検出方法は、取得ステップと、判定ステップと、を含む。前記取得ステップでは、直流電源から電力が供給される給電路に流れる電流の測定結果を取得する。前記判定ステップでは、前記取得ステップにて取得した前記電流の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、アーク故障が発生したか否かを判定する。前記判定ステップでは、前記特定の周波数帯域の成分が閾値以上となる特定時間が、前記給電路に対する機器の着脱の際に生じ得るアークの発生時間よりも長い場合に、前記アーク故障が発生したと判定する。
【0007】
本発明の一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、上記のアーク検出方法を実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、アーク故障の発生の誤検出を防ぎやすい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態1に係るアーク検出システムを含む全体構成を示す概要図である。
図2A図2Aは、実施の形態1に係るアーク検出システムにおいて、機器の給電路に対する着脱時の抑制回路の動作を示す概要図である。
図2B図2Bは、実施の形態1に係るアーク検出システムにおいて、機器の給電路に対する着脱時の抑制回路の動作を示す概要図である。
図3A図3Aは、実施の形態1に係るアーク検出システムにおいて、機器の給電路に対する着脱時の抑制回路の動作を示す概要図である。
図3B図3Bは、実施の形態1に係るアーク検出システムにおいて、機器の給電路に対する着脱時の抑制回路の動作を示す概要図である。
図4図4は、実施の形態1に係るアーク検出システムの動作例を示すフローチャートである。
図5図5は、実施の形態2に係るアーク検出システムを含む全体構成を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。
【0011】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0012】
(実施の形態1)
[構成]
実施の形態1に係るアーク検出システムについて、図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1に係るアーク検出システム100を含む全体構成を示す概要図である。
【0013】
アーク検出システム100は、主として直流電源2から電力が供給される給電路L1においてアーク故障が発生しているか否かを判定するためのシステムである。すなわち、給電路L1は、例えば外的要因又は経年劣化等によって損傷又は破断を引き起こす可能性があり、このような損傷等に起因してアーク(アーク放電)が発生し、結果としてアーク故障が発生する可能性がある。そこで、アーク検出システム100は、主として給電路L1で発生し得るアーク故障を検出するために用いられる。
【0014】
具体的には、アーク検出システム100は、いわゆるDC(Direct Current)配電網200に用いられる。DC配電網200は、1以上の給電路L1を含むように構成されている。図1では、1本の給電路L1のみを図示している。DC配電網200には、直流電源2から直流電力が供給される。各給電路L1は、直流電源2の出力側の正極に接続される正側給電路と、直流電源2の出力側の負極に接続される負側給電路と、の一対の電路により構成されている。
【0015】
ここで、DC配電網200が1本の給電路L1のみ有している場合、この給電路L1に直流電源2から直流電力が供給される。また、DC配電網200が複数本の給電路L1を有している場合、複数本の給電路L1の各々の一端は、1以上の分岐点に接続される。このため、いずれかの給電路L1に直流電源2から直流電力が供給されると、他の給電路L1にも1以上の分岐点を介して直流電力が供給される。
【0016】
実施の形態1では、直流電源2は、AC/DCコンバータ21を備えた電力変換器である。直流電源2は、電力系統300から出力される交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を直流電源2が接続された給電路L1へ出力する。DC配電網200が複数本の給電路L1を有している場合、当該給電路L1へ出力された直流電力は、他の給電路L1にも出力される。なお、実施の形態1において、直流電源2は、直流電力を出力する態様であればよく、太陽光電池等の分散型電源若しくは蓄電池等の電源、又はこれらの電源と電力変換器(例えば、DC/DCコンバータ回路を備えた電力変換器)との組み合わせであってもよい。
【0017】
各給電路L1は、例えばダクトレールにより構成されており、1以上の機器3が取付可能である。つまり、各給電路L1においては、1以上の機器3を自由な位置に配置することが可能である。もちろん、各給電路L1は、1以上の機器3が取付可能な場所があらかじめ定められている態様であってもよい。実施の形態1では、各給電路L1は、施設の天井に配置されているが、施設の床、壁、又は什器等に配置されていてもよい。
【0018】
機器3は、負荷31と、一対の接続端子32と、を有している。機器3は、一対の接続端子32を介して給電路L1に取り付けたり、給電路L1から取り外したりすることが可能である。具体的には、機器3を給電路L1に取り付ける場合、機器3の一対の接続端子32をダクトレール(給電路L1)に差し込んだ状態で、機器3の差し込み方向から見て機器3を時計回り又は反時計回りに所定角度(例えば、90度)回転させる。これにより、一対の接続端子32が給電路L1に設けられた一対の接続導体L11に接触した状態で固定され、機器3が給電路L1に電気的かつ機械的に接続される。
【0019】
機器3を給電路L1から取り外す場合、機器3の差し込み方向から見て機器3を上記とは逆回りに所定角度回転させる。これにより、一対の接続端子32と一対の接続導体L11との接触状態が解除されるので、その後、機器3を給電路L1から取り外すことが可能になる。負荷31は、機器3が給電路L1に取り付けられた状態において、直流電源2から当該給電路L1を介して供給される直流電力を受けて駆動する。
【0020】
実施の形態1では、機器3は照明器具であるが、例えばスピーカ、カメラ、センサ、又はUSB PD(Power Delivery)等であってもよい。つまり、機器3は、負荷31が電力を受けて駆動する態様であれば、照明器具以外の機器であってもよい。また、実施の形態1では、各給電路L1に接続されている機器3は全て照明器具であって1種類であるが、各給電路L1に接続される機器3の種類は複数であってもよい。例えば、各給電路L1には、照明器具と、スピーカと、カメラと、センサと、USB PDと、が接続されていてもよい。これらの機器3は、1つの給電路L1に全て接続されていてもよいし、複数の給電路L1に分かれて接続されていてもよい。
【0021】
アーク検出システム100は、アーク故障が発生しているか否かを判定するための機能構成要素として、取得部11と、判定部12と、報知部13と、停止部14と、抑制回路4と、を備えている。実施の形態1では、取得部11、判定部12、報知部13、及び停止部14は直流電源2に設けられており、抑制回路4は各機器3に設けられている。直流電源2において、アーク検出システム100は、例えばマイコン、又は、マイコンを備える装置である。マイコンは、プログラムが格納されたROM及びRAM、プログラムを実行するプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)、タイマ、A/D変換器、並びに、D/A変換器等を有する半導体集積回路等である。取得部11、判定部12、報知部13、及び停止部14は、いずれもプロセッサが上記プログラムを実行することにより実現される。
【0022】
取得部11は、直流電源2から電力が供給される給電路L1に流れる電流I1の測定結果を取得する。実施の形態1では、取得部11は、電流計22により所定周期(サンプリング周期)でサンプリングすることで測定された電流I1の測定結果を取得する。つまり、取得部11は、電流計22から所定周期で電流I1の測定結果を取得する。電流計22は、直流電源2と給電路L1との間に設けられており、給電路L1の負側給電路に流れる電流(つまり、給電路L1に流れる電流I1)を測定する。なお、電流計22は、直流電源2に内蔵されていてもよい。
【0023】
判定部12は、取得部11にて取得した電流I1の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、アーク故障が発生しているか否かを判定する。具体的には、判定部12は、取得部11にて取得した電流I1の測定結果を周波数分析する。周波数分析とは、例えば、電流I1の測定結果の時間波形をフーリエ変換(ここでは、FFT(Fast Fourier Transform))することで、電流I1の測定結果の周波数スペクトルを算出することである。そして、判定部12は、算出した周波数スペクトルを参照することにより、アーク故障が発生しているか否かを判定する。特定の周波数帯域は、例えば、アーク故障が発生した場合に発生するノイズの周波数を含む帯域である。特定の周波数帯域は、一例として、数十kHz帯であって、比較的高周波の周波数帯域である。なお、上記のような場合に発生するノイズの周波数は、実験的に求めることが可能である。
【0024】
ここで、判定部12は、特定の周波数帯域の成分が閾値以上となる特定時間と、あらかじめ設定された閾値時間(例えば、1秒間)とを比較し、特定時間が閾値時間よりも長い場合、アーク故障が発生したと判定する。閾値時間は、給電路L1に対する機器3の着脱の際に生じ得るアークの発生時間に基づいてあらかじめ設定される。つまり、判定部12は、特定の周波数帯域の成分が閾値以上となる特定時間が、給電路L1に対する機器3の着脱の際に生じ得るアークの発生時間よりも長い場合に、アーク故障が発生したと判定する。以下、このようにアーク故障の発生を判定するに至った経緯について説明する。
【0025】
DC配電網200において発生し得るアークには、給電路L1の断線又は半断線に起因するアークと、機器3の給電路L1に対する着脱時に瞬間的に生じ得るアークと、がある。すなわち、機器3を給電路L1に取り付ける際に、機器3の取り付けが円滑に行われなければ、機器3の有する負荷31が給電路L1に接続される状態と、給電路L1から切り離される状態とが短時間の間に繰り返される、いわゆるチャタリングが発生し得る。そして、チャタリングの発生期間においては、電流が流れた状態で負荷31が給電路L1から瞬間的に切り離される際にアークが生じ得る。また、機器3を給電路L1から取り外す際にも、上記と同様にチャタリングが発生し得る。そして、チャタリングの発生期間においては、電流が流れた状態で負荷31が給電路L1から瞬間的に切り離される際にアークが生じ得る。このようなチャタリングに起因するアークの発生は、DC配電網200のみならず、AC配電網でも起こり得る。ただし、AC配電網においては、給電路に流れる電流が交流電流であるため、電流が零になる瞬間が存在することから、チャタリングに起因するアークの継続時間が短くなりやすい。具体的には、アークの継続時間は、交流電流の周期の半分以下となる。一方、DC配電網200では、給電路L1に流れる電流が直流電流であるため、電流が零にならずに、チャタリングに起因するアークの継続時間が長くなりがちである。特に、機器3の電極と給電路L1の電極との間の距離が中途半端な状態で機器3が給電路L1に取り付けられると、アークが消滅しにくくなる。
【0026】
ここで、給電路L1の断線又は半断線に起因するアークはアーク故障の原因となりがちであるが、チャタリングに起因するアークは、基本的に短期間で消滅するためアーク故障の原因となりにくい。したがって、アーク検出システム100においては、チャタリングに起因する短時間のアークは検出せずに、主として給電路L1の断線又は半断線に起因するアークの発生をアーク故障の発生と判定することが望まれる。
【0027】
そこで、実施の形態1では、上記の要望を満たすために、各機器3に抑制回路4を設けている。詳しくは後述するが、抑制回路4は、機器3が給電路L1に取り付けられた際に、遅延時間だけ遅れて負荷31が給電路L1に接続されるように構成されている。これにより、機器3が給電路L1に確実に取り付けられたであろう後に負荷31が給電路L1に接続されることになり、上述のような電流が流れた状態で負荷31が給電路L1から瞬間的に切り離されるという状況が生じにくく、結果としてチャタリングに起因するアークが発生しにくくなる。
【0028】
また、詳しくは後述するが、抑制回路4は、機器3を給電路L1から取り外す際に、機器3が給電路L1から取り外される前に機器3の給電路L1に対する電気的な接続が解除されるように構成されている。これにより、機器3が給電路L1から切り離された後に機器3が給電路L1から取り外されることになり、上述のような電流が流れた状態で負荷31が給電路L1から瞬間的に切り離されるという状況が生じにくく、結果としてチャタリングに起因するアークが発生しにくくなる。
【0029】
そして、判定部12は、特定の周波数帯域の成分が閾値以上となる特定時間が、上記の遅延時間(閾値時間)よりも長ければ、チャタリングに起因するアークではなく、給電路L1での断線又は半断線に起因するアークが発生、つまりアーク故障が発生している、と判定する。つまり、実施の形態1では、特定時間は、遅延時間よりも長い。ここで、抑制回路4が存在しない場合、遅延時間に相当する期間においてチャタリングに起因するアークが発生し得ると考えられる。このため、特定時間が遅延時間よりも長いことは、特定時間が給電路L1に対する機器3の着脱の際に生じ得るアークの発生時間よりも長いことに相当する。
【0030】
なお、各機器3に抑制回路4を設けていない場合、機器3の給電路L1に対する着脱時にチャタリングに起因するアークが生じ得る。しかしながら、チャタリングに起因するアークは基本的に短時間で消滅するため、判定部12は、チャタリングに起因するアークが発生しても、アーク故障が発生したと判定することはない。ただし、例外的にチャタリングに起因するアークが原因となってアーク故障が発生する場合がある。この場合、特定時間が閾値時間よりも長くなるため、判定部12は、このような場合でもアーク故障が発生したと判定することが可能である。
【0031】
報知部13は、例えばランプを点灯したり、ブザーを鳴らしたりすることでアーク故障が発生していることを周囲に報知する。また、報知部13は、アーク故障が発生していることを示す情報をアーク検出システム100の所有者又は管理者等が有する情報端末に送信することで、アーク故障が発生していることを報知してもよい。情報端末は、一例として、スマートフォン又はタブレット等の携帯端末の他、パーソナルコンピュータ等を含み得る。
【0032】
停止部14は、判定部12にてアーク故障が発生していると判定された場合に、給電路L1に流れる電流を停止する。これにより、アーク故障によりアーク放電が発生していた場合には、アーク放電が消滅する。
【0033】
例えば、停止部14は、給電路L1に接続されたスイッチを制御することで、給電路L1に流れる電流を停止する。スイッチは、例えば、メカスイッチ又は半導体スイッチである。メカスイッチは、例えば、リレー又はブレーカ等のスイッチであり、半導体スイッチは、トランジスタ又はダイオード等のスイッチである。
【0034】
なお、給電路L1に接続されたスイッチとは、給電路L1に直接的に接続されたスイッチであってもよいし、給電路L1に間接的に接続されたスイッチであってもよい。例えば、当該スイッチは、AC/DCコンバータ21におけるAC/DC変換機能を実現するためのスイッチである。当該スイッチは、給電路L1に直接的に接続されていなくても、間接的には給電路L1に接続されることになるため、給電路L1に接続されたスイッチとなる。例えば、停止部14は、当該スイッチを制御して当該スイッチのスイッチング動作を停止することで、給電路L1に流れる電流を停止する。
【0035】
なお、スイッチは、直流電源2のオン及びオフを切り替えるように構成されていてもよい。この場合、停止部14は、当該スイッチを制御して直流電源2をオフすることで、給電路L1に流れる電流を停止する。
【0036】
また、スイッチは給電路L1上に設けられていてもよく、当該スイッチは給電路L1の開閉を切り替えるように構成されていてもよい。例えば、停止部14は、当該スイッチを制御して給電路L1を開放することで、給電路L1に流れる電流を停止してもよい。
【0037】
抑制回路4は、給電路L1に対する機器3の着脱の際に生じ得るアークを抑制するための回路である。抑制回路4は、第1スイッチSW1と、第2スイッチSW2と、駆動回路41と、を有している。実施の形態1では、抑制回路4は、各機器3において、機器3の有する負荷31と一対の接続端子32との間に設けられている。
【0038】
第1スイッチSW1は、機器3の有する負荷31と給電路L1との間の電路L2を開閉する。電路L2は、一対の接続端子32のうちの正極側の接続端子32と負荷31の正極とをつなぐ電路と、一対の接続端子32のうちの負極側の接続端子32と負荷31の負極とをつなぐ電路と、で構成されている。第1スイッチSW1がオン状態であれば、電路L2が閉じられることで一対の接続端子32と負荷31との間が電気的に接続される。この状態では、機器3が給電路L1に取り付けられていると、給電路L1から負荷31へと電力が供給される(つまり、電流が流れる)。一方、第1スイッチSW1がオフ状態であれば、電路L2が開放されることで一対の接続端子32と負荷31との間が電気的に切り離される。この状態では、機器3が給電路L1に取り付けられていても、給電路L1から負荷31へと電力が供給されない(つまり、電流が流れない)。
【0039】
実施の形態1では、第1スイッチSW1は、nチャネルのエンハンスメント型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。つまり、第1スイッチSW1は、電界効果トランジスタである。なお、図1において、ドレイン-ソース間にあるダイオードの記号は、第1スイッチSW1の寄生ダイオードを表している。後述する図5においても同様である。第1スイッチSW1のドレインは、負荷31の負極に接続されており、第1スイッチSW1のソースは、一対の接続端子32のうちの負側の接続端子32に接続されている。第1スイッチSW1のゲートは、駆動回路41に接続されている。
【0040】
駆動回路41は、機器3が電路L2に接続されてから遅延時間の経過後に電路L2を閉じるように第1スイッチSW1を駆動する。実施の形態1では、駆動回路41は、第1スイッチSW1のゲートに接続されて、第1スイッチSW1のゲートにコンデンサC1の充電電圧を印加するCRフィルタ42を備えている。そして、遅延時間は、CRフィルタ42の時定数により決定される。
【0041】
具体的には、駆動回路41は、第1抵抗素子R1と、第2抵抗素子R2と、コンデンサC1と、ツェナーダイオードZD1と、を有している。そして、第1抵抗素子R1、第2抵抗素子R2、及びコンデンサC1によりCRフィルタ42が構成されている。第1抵抗素子R1の一端は、一対の接続端子32のうちの正側の接続端子32及び負荷31の正極に接続されており、第1抵抗素子R1の他端は、第1スイッチSW1のゲートに接続されている。第2抵抗素子R2の一端は、第1スイッチSW1のゲートに接続されており、第2抵抗素子R2の他端は、第2スイッチSW2を介して一対の接続端子32のうちの負側の接続端子32に接続されている。コンデンサC1の一端は、第1スイッチSW1のゲートに接続されており、コンデンサC1の他端は、第1スイッチSW1のソースに接続されている。ツェナーダイオードZD1は、第1スイッチSW1のゲート-ソース間に接続されており、第1スイッチSW1のゲート-ソース間に過大な電圧が印加されるのを抑制している。
【0042】
なお、ツェナーダイオードZD1は、第1スイッチSW1のゲート-ソース間電圧がオン状態に切り替えるのに十分な電圧となるように、第1抵抗素子R1との分圧比が設定された抵抗に置き換えられてもよい。また、ツェナーダイオードZD1と並列に更に抵抗が接続されていてもよい。後述する実施の形態2においても同様である。
【0043】
CRフィルタ42においては、第2スイッチSW2がオフ状態である場合、第1抵抗素子R1の抵抗値と、コンデンサC1の静電容量値と、に基づいて時定数及び遅延時間が決定される。一方、CRフィルタ42においては、第2スイッチSW2がオン状態である場合、第2抵抗素子R2の抵抗値と、コンデンサC1の静電容量値と、に基づいて時定数及び遅延時間が決定される。なお、第2スイッチSW2がオン状態である場合、定常的には、第1スイッチSW1のゲート-ソース間には第1抵抗素子R1及び第2抵抗素子R2による分圧が印加されるが、この分圧は第1スイッチSW1をオン状態にする程度に大きい電圧ではない。後述する実施の形態2においても同様である。そして、実施の形態1では、遅延時間は、給電路L1に対して機器3を着脱する際に生じ得るチャタリングの発生期間において機器3へ電力が供給されないように設定されている。
【0044】
第2スイッチSW2は、第1スイッチSW1のゲートと電路L2との間を短絡状態及び開放状態の一方から他方に切り替えるように構成されている。実施の形態1では、第2スイッチSW2は、ノーマリーオフ型の押釦スイッチであって、機器3の外部に露出している。第2スイッチSW2は、ユーザが押し操作を行っている間のみオン状態(つまり、短絡状態)に切り替わり、ユーザが押し操作を行っていない間はオフ状態(つまり、開放状態)を維持する。第2スイッチSW2の一端は、第2抵抗素子R2を介して第1スイッチSW1のゲートに接続されており、第2スイッチSW2の他端は、一対の接続端子32のうちの負側の接続端子32に接続されている。
【0045】
以下、抑制回路4の動作について図2A図3Bを用いて説明する。図2A図3Bは、いずれも機器3の給電路L1に対する着脱時の抑制回路4の動作を示す概要図である。なお、図2A図3Bにおいては、第1スイッチSW1のオン/オフを視覚的にわかりやすくするために、第1スイッチSW1の表現を図1とは異ならせている。
【0046】
まず、機器3を給電路L1に取り付ける際の抑制回路4の動作について説明する。ここでは、ユーザが第2スイッチSW2を操作しながら、機器3を給電路L1に取り付ける、と仮定する。図3Bに示すように、機器3の一対の接続端子32と、給電路L1の一対の接続導体L11と、が接触した時点(以下、「接触時点」ともいう)では、第1スイッチSW1はオフ状態にあり、電路L2は開放されている。また、接触時点においては、機器3が給電路L1に電気的に接続されるが、第2スイッチSW2がオン状態にあるため、コンデンサC1に充電電流I11が流れずに第1スイッチSW1はオンしない。
【0047】
ここで、ユーザは、第2スイッチSW2を操作しながら機器3を給電路L1に差し込み、所定角度回転させることで、機器3を給電路L1に電気的かつ機械的に接続させる。これにより、機器3の給電路L1に対する取り付けが完了する。その後、ユーザは、第2スイッチSW2から手を放すことで、第2スイッチSW2がオフする。つまり、ユーザが第2スイッチSW2を操作している限り、言い換えれば、ユーザが機器3の給電路L1に対する取り付けを完了するまでは、基本的に第1スイッチSW1はオンしない。
【0048】
第2スイッチSW2がオフすると、図2Aに示すように、駆動回路41のCRフィルタ42において、第1抵抗素子R1を介してコンデンサC1に充電電流I11が流れることにより、コンデンサC1の充電が開始される。コンデンサC1は、上述のように第1抵抗素子R1の抵抗値と、コンデンサC1の静電容量値と、に基づく時定数に従って充電される。
【0049】
そして、図2Bに示すように、コンデンサC1が十分に充電されることにより、コンデンサC1の充電電圧(つまり、第1スイッチSW1のゲート-ソース間電圧)が所定電圧に達すると、第1スイッチSW1がオンし、電路L2が閉じられる。これにより、給電路L1から負荷31へと電力が供給されるようになる。
【0050】
このように、抑制回路4は、機器3が電路L2に接続された時点(ここでは、第2スイッチSW2がオフされた時点)から遅延時間の経過後に第1スイッチSW1をオンすることで、上記時点から遅延時間の経過後に給電路L1から負荷31へ電力が供給されるようにしている。したがって、機器3を給電路L1に取り付ける際にチャタリングが発生したとしても、チャタリングの発生期間において給電路L1から負荷31へ電力が供給されないことから、チャタリングに起因するアークの発生を抑制することができる。
【0051】
なお、機器3を給電路L1に取り付ける際に、ユーザが第2スイッチSW2の操作をし忘れる場合があり得る。この場合、接触時点からコンデンサC1に充電電流I11が流れ始めることになる。このような場合でも、抑制回路4は、機器3が電路L2に接続された時点(ここでは、接触時点)から遅延時間の経過後に第1スイッチSW1をオンするので、上記時点から遅延時間の経過後に給電路L1から負荷31へ電力が供給される。したがって、このような場合にチャタリングが発生したとしても、チャタリングの発生期間において給電路L1から負荷31へ電力が供給されにくくなることから、チャタリングに起因するアークの発生を抑制する効果が期待できる。
【0052】
次に、機器3を給電路L1から取り外す際の抑制回路4の動作について説明する。ここでは、ユーザが第2スイッチSW2を操作しながら、機器3を給電路L1から取り外す、と仮定する。図3Aに示すように、機器3が給電路L1から取り外される前において、第2スイッチSW2がオンする。すると、駆動回路41のCRフィルタ42において、コンデンサC1から第2抵抗素子R2を介して給電路L1へと放電電流I12が流れることにより、コンデンサC1の放電が開始される。コンデンサC1は、上述のように第2抵抗素子R2の抵抗値と、コンデンサC1の静電容量値と、に基づく時定数に従って放電される。
【0053】
そして、図3Bに示すように、コンデンサC1が十分に放電されることにより、コンデンサC1の充電電圧(つまり、第1スイッチSW1のゲート-ソース間電圧)が所定電圧を下回ると、第1スイッチSW1がオフし、電路L2が開放される。これにより、給電路L1から負荷31へと電力が供給されなくなる。その後、機器3が給電路L1から取り外されることで、機器3の一対の接続端子32と、給電路L1の一対の接続導体L11と、が離れることにより、機器3の給電路L1に対する電気的な接続が解除される。
【0054】
このように、抑制回路4は、第2スイッチSW2がオンされた時点から遅延時間の経過後に第1スイッチSW1をオフすることで、機器3が給電路L1から取り外される前に機器3の給電路L1に対する電気的な接続が解除されるようにしている。したがって、機器3を給電路L1から取り外す際にチャタリングが発生したとしても、チャタリングの発生期間において給電路L1から負荷31へ電力が供給されないことから、チャタリングに起因するアークの発生を抑制することができる。
【0055】
なお、遅延時間が経過する前に機器3が給電路L1から取り外される場合もあり得る。この場合、機器3が給電路L1から取り外された時点でアークが発生し得るが、抑制回路4が存在しない場合と比較してアークの発生時間を短縮することができ、結果としてチャタリングに起因するアークの発生を抑制している、と言える。
【0056】
ここで、CRフィルタ42において、第2抵抗素子R2の抵抗値は、第1抵抗素子R1の抵抗値よりも小さいのが好ましい。第2抵抗素子R2の抵抗値が小さければ、第1スイッチがオフするまでの遅延時間が短くなる。そして、この遅延時間が短ければ、機器3の給電路L1に対する着脱が遅延時間よりも早い時間で行われる可能性が低くなり、チャタリングに起因するアークが生じにくくなる。ただし、この遅延時間は短くすればする程好ましいわけではなく、極端に短くした場合には、逆に第1スイッチSW1が一瞬でオフすることに起因するアークが生じ得る。したがって、例えば、この遅延時間は、およそ数十ミリ秒であるのが好ましい。
【0057】
一方、機器3を給電路L1に取り付ける際には、機器3が給電路L1に確実に取り付けられたであろう後に負荷31が給電路L1に接続されればよいので、第1スイッチSW1がオンするまでの遅延時間は長くてもよい。ただし、この遅延時間を極端に長くすれば、機器3を給電路L1に取り付けてから負荷31が実際に駆動するまでの時間が長くなり、ユーザが違和感を覚える可能性がある。したがって、例えば、この遅延時間は、およそ数百ミリ秒であるのが好ましい。
【0058】
[動作]
以下、実施の形態1に係るアーク検出システム100の動作の一例について図4を用いて説明する。図4は、実施の形態1に係るアーク検出システム100の動作例を示すフローチャートである。
【0059】
まず、取得部11は、電流計22から所定周期で電流I1の測定結果を取得する(S1)。処理S1は、アーク検出方法の取得ステップST1に相当する。そして、判定部12は、取得部11にて取得した電流I1の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、アーク故障が発生しているか否かを判定する(S2)。ここでは、判定部12は、取得部11にて取得した電流I1の測定結果を周波数分析することで判定する。
【0060】
具体的には、判定部12は、上記特定の周波数帯域の成分と閾値とを比較し、上記特定の周波数帯域の成分が閾値以上であって、かつ、その状態が継続する特定時間が閾値時間よりも長ければ、アーク故障が発生していると判定する(S3:Yes)。一方、判定部12は、特定時間が閾値時間に達していない場合、又は上記特定の周波数帯域の成分が閾値を下回っている場合、アーク故障が発生していないと判定する(S3:No)。処理S2,S3は、アーク検出方法の判定ステップST2に相当する。
【0061】
判定部12にてアーク故障が発生していると判定された場合(S3:Yes)、停止部14は、給電路L1に流れる電流を停止することで、直流電源2から給電路L1への給電を停止する(S4)。そして、報知部13は、アーク故障の発生を報知する(S5)。一方、判定部12にてアーク故障が発生していないと判定された場合(S3:No)、アーク検出システム100の処理が終了する。以下、上記の一連の処理S1~S5が繰り返される。
【0062】
[利点]
以下、実施の形態1に係るアーク検出システム100の利点について、比較例のアーク検出システムとの比較を交えて説明する。比較例のアーク検出システムは、取得部11にて取得した電流I1の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分が閾値を上回ると、即座にアーク故障が発生したと判定する点で、実施の形態1に係るアーク検出システム100と相違する。
【0063】
まず、アーク検出システムとして要求される条件について説明する。給電線L1の断線又は半断線に起因してアークが発生した場合に、この状態を放置すると、断線又は半断線した箇所が過剰に発熱し、場合によっては発火することで火災につながる可能性がある。そこで、アーク検出システムは、アークの発生(つまり、アーク故障の発生)をいち早く検出し、火災が発生するような状況となる前に給電路L1への給電を停止することが重要となる。例えば、UL(Underwriters Laboratories)規格では、アークの発生後2秒以内にアーク故障の発生を検出することが要求されている。
【0064】
比較例のアーク検出システムでも、アーク故障の発生を検出することは可能である。しかしながら、比較例のアーク検出システムでは、給電路L1の断線又は半断線に起因するアークが発生した場合のみならず、チャタリングに起因するアークが発生した場合にも、アーク故障が発生したと判定する。つまり、比較例のアーク検出システムでは、アーク故障の原因となりにくいアークの発生によってもアーク故障が発生したと誤って判定してしまう。このように、比較例のアーク検出システムでは、アークが発生するたびにアーク故障が発生したと判定するため、ユーザの使い勝手が悪くなり得る。例えば、機器3の給電路L1に対する着脱が行われるたびにアーク故障が発生したとユーザに報知するといった事象が生じ得るため、ユーザにとって煩わしい。また、例えば、アーク故障が発生したと判定した場合に直流電源2から給電路L1に対する電力供給を自動的に停止するように構成されている、と仮定する。この構成では、機器3の給電路L1に対する着脱が行われるたびに給電路L1に対する電力供給が停止されるといった事象が生じ得るため、これもまたユーザにとって煩わしい。
【0065】
一方、実施の形態1に係るアーク検出システム100では、給電路L1の断線又は半断線に起因するアークが発生した場合にアーク故障が発生したと判定し、チャタリングに起因するアークが発生した場合には基本的にアーク故障が発生したと判定することがない。つまり、実施の形態1に係るアーク検出システム100では、アーク故障の原因となりにくいアークの発生によってアーク故障が発生したと判定する可能性が低い。言い換えれば、実施の形態1に係るアーク検出システム100では、給電路L1に対する機器3の着脱の際に生じ得るアークのように、一時的に発生しただけではアーク故障に至らない事象を検出しなくて済むので、アーク故障の発生の誤検出を防止しやすくなる、という利点がある。このため、実施の形態1に係るアーク検出システム100では、比較例のアーク検出システムで起こり得た上記事象が生じにくい。つまり、実施の形態1に係るアーク検出システム100では、ユーザにとって特に影響の大きい事象と考えられるアーク故障の発生時にのみユーザに報知したり、給電路L1に対する電力供給を停止したりすることができるので、ユーザの使い勝手が良い、という利点がある。
【0066】
(実施の形態2)
[構成]
以下、実施の形態2に係るアーク検出システム100について、図5を用いて説明する。図5は、実施の形態2に係るアーク検出システム100を含む全体構成を示す概要図である。図5では、直流電源2の図示を省略している。したがって、図5では、アーク検出システム100の構成要素である取得部11、判定部12、報知部13、及び停止部14の図示を省略している。実施の形態2に係るアーク検出システム100では、抑制回路4Aの構成が、実施の形態1に係るアーク検出システム100における抑制回路4の構成と相違する。以下では、実施の形態1との相違点について主として説明し、実施の形態1との共通点については説明を適宜省略する。
【0067】
実施の形態2では、抑制回路4Aは、実施の形態1の抑制回路4と同様に、第1スイッチSW1と、第2スイッチSW2と、駆動回路41と、を有している。ただし、実施の形態2の抑制回路4Aでは、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、及び駆動回路41の各構成要素の配置が実施の形態1の抑制回路4と異なっている。また、実施の形態2の駆動回路41は、実施の形態1の抑制回路4とは異なり、電源回路43を更に有している。
【0068】
第1スイッチSW1は、実施の形態1と同様に、nチャネルのエンハンスメント型のMOSFETである。第1スイッチSW1のドレインは、一対の接続端子32のうちの正側の接続端子32に接続されており、第1スイッチSW1のソースは、負荷31の正極に接続されている。第1スイッチSW1のゲートは、駆動回路41に接続されている。
【0069】
第2スイッチSW2は、実施の形態1と同様に、ノーマリーオフ型の押釦スイッチである。第2スイッチSW2の一端は、第2抵抗素子R2を介して第1スイッチSW1のゲートに接続されており、第2スイッチSW2の他端は、一対の接続端子32のうちの正側の接続端子32に接続されている。
【0070】
駆動回路41は、第1抵抗素子R1と、第2抵抗素子R2と、コンデンサC1と、ツェナーダイオードZD1と、電源回路43と、を有している。そして、第1抵抗素子R1、第2抵抗素子R2、及びコンデンサC1によりCRフィルタ42が構成されている。第1抵抗素子R1の一端は、第1スイッチSW1のゲートに接続されており、第1抵抗素子R1の他端は、電源回路43の一対の出力端子432のうちの高圧側の出力端子432に接続されている。第2抵抗素子R2の一端は、第1スイッチSW1のゲートに接続されており、第2抵抗素子R2の他端は、第2スイッチSW2を介して一対の接続端子32のうちの正側の接続端子32に接続されている。コンデンサC1の一端は、第1スイッチSW1のゲートに接続されており、コンデンサC1の他端は、第1スイッチSW1のソースに接続されている。ツェナーダイオードZD1は、第1スイッチSW1のゲート-ソース間に接続されており、第1スイッチSW1のゲート-ソース間に過大な電圧が印加されるのを抑制している。
【0071】
電源回路43は、一対の入力端子431と、一対の出力端子432と、を有し、一対の入力端子431と一対の出力端子432との間は電気的に絶縁されている。また、電源回路43は、一対の入力端子431に印加される電圧に基づいて、第1スイッチSW1のゲートを駆動するための駆動電圧を生成し、生成した駆動電圧を一対の出力端子432から出力する。一対の入力端子431は、それぞれ一対の接続端子32に接続されている。一対の出力端子432のうちの高圧側の出力端子432は、第1抵抗素子R1を介して第1スイッチSW1のゲートに接続されており、低圧側の出力端子432は、負荷31の正極に接続されている。
【0072】
CRフィルタ42においては、第2スイッチSW2がオフ状態である場合、第1抵抗素子R1の抵抗値と、コンデンサC1の静電容量値と、に基づいて時定数及び遅延時間が決定される。一方、CRフィルタ42においては、第2スイッチSW2がオン状態である場合、第2抵抗素子R2の抵抗値と、コンデンサC1の静電容量値と、に基づいて時定数及び遅延時間が決定される。
【0073】
以下、抑制回路4Aの動作について説明する。まず、機器3を給電路L1に取り付ける際の抑制回路4Aの動作について説明する。ここでは、ユーザが第2スイッチSW2を操作しながら、機器3を給電路L1に取り付ける、と仮定する。機器3の一対の接続端子32と、給電路L1の一対の接続導体L11と、が接触した時点(以下、「接触時点」ともいう)では、第1スイッチSW1はオフ状態にあり、電路L2は開放されている。また、接触時点においては、機器3が給電路L1に電気的に接続されるが、第2スイッチSW2がオン状態にあるため、コンデンサC1に充電電流が流れずに第1スイッチSW1はオンしない。
【0074】
ここで、ユーザは、第2スイッチSW2を操作しながら機器3を給電路L1に差し込み、所定角度回転させることで、機器3を給電路L1に電気的かつ機械的に接続させる。これにより、機器3の給電路L1に対する取り付けが完了する。その後、ユーザは、第2スイッチSW2から手を放すことで、第2スイッチSW2がオフする。つまり、ユーザが第2スイッチSW2を操作している限り、言い換えれば、ユーザが機器3の給電路L1に対する取り付けを完了するまでは、基本的に第1スイッチSW1はオンしない。
【0075】
第2スイッチSW2がオフすると、電源回路43の一対の入力端子431に給電路L1から電圧が印加されることにより、電源回路43が駆動電圧を生成し、生成した駆動電圧を一対の出力端子432から出力する。これにより、駆動回路41のCRフィルタ42において、第1抵抗素子R1を介してコンデンサC1に充電電流が流れ、コンデンサC1の充電が開始される。コンデンサC1は、上述のように第1抵抗素子R1の抵抗値と、コンデンサC1の静電容量値と、に基づく時定数に従って充電される。
【0076】
そして、コンデンサC1が十分に充電されることにより、コンデンサC1の充電電圧(つまり、第1スイッチSW1のゲート-ソース間電圧)が所定電圧に達すると、第1スイッチSW1がオンし、電路L2が閉じられる。これにより、給電路L1から負荷31へと電力が供給されるようになる。
【0077】
次に、機器3を給電路L1から取り外す際の抑制回路4Aの動作について説明する。ここでは、ユーザが第2スイッチSW2を操作しながら、機器3を給電路L1から取り外す、と仮定する。機器3が給電路L1から取り外される前において、第2スイッチSW2がオンする。すると、駆動回路41のCRフィルタ42において、コンデンサC1から第2抵抗素子R2を介して給電路L1へと放電電流が流れることにより、コンデンサC1の放電が開始される。コンデンサC1は、上述のように第2抵抗素子R2の抵抗値と、コンデンサC1の静電容量値と、に基づく時定数に従って放電される。
【0078】
そして、コンデンサC1が十分に放電されることにより、コンデンサC1の充電電圧(つまり、第1スイッチSW1のゲート-ソース間電圧)が所定電圧を下回ると、第1スイッチSW1がオフし、電路L2が開放される。これにより、給電路L1から負荷31へと電力が供給されなくなる。その後、機器3が給電路L1から取り外されることで、機器3の一対の接続端子32と、給電路L1の一対の接続導体L11と、が離れることにより、機器3の給電路L1に対する電気的な接続が解除される。
【0079】
上述のように、実施の形態2に係るアーク検出システム100においても、抑制回路4Aは、実施の形態1の抑制回路4と同様に動作する。また、実施の形態2に係るアーク検出システム100は、抑制回路4Aを除いて、実施の形態1に係るアーク検出システム100と同様の構成である。したがって、実施の形態2に係るアーク検出システム100は、実施の形態1に係るアーク検出システム100と同様の効果を奏し得る。
【0080】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態1,2について説明したが、本発明は、上記実施の形態1,2に限定されるものではない。以下、実施の形態1,2の変形例について列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせてもよい。
【0081】
実施の形態1,2では、電流計22はアーク検出システム100とは別の機器であるが、アーク検出システム100に内蔵されていてもよい。
【0082】
実施の形態1,2では、アーク検出システム100は直流電源2に設けられているが、これに限定されない。例えば、アーク検出システム100は、直流電源2とは別の機器として給電路L1に接続されていてもよい。この場合、アーク検出システム100は、直流電源2との間で有線通信又は無線通信により通信可能に構成されていれば、直流電源2に対して判定部12の判定結果に応じた指示を与えることが可能である。
【0083】
実施の形態1,2では、判定部12は、取得部11にて取得した電流I1の測定結果に対して周波数分析を実行することにより、特定の周波数帯域の成分を抽出しているが、これに限らない。例えば、判定部12は、周波数分析を実行する代わりに、取得部11にて取得した電流I1の測定結果をフィルタ(例えば、バンドパスフィルタ)に通すことで、特定の周波数帯域の周波数成分を抽出してもよい。
【0084】
実施の形態1,2では、第2スイッチSW2は、ユーザの手により操作されることでオン/オフを切り替えるように構成されているが、これに限らない。例えば、第2スイッチSW2は、給電路L1に対する機器3の着脱に応じて自動的にオン/オフを切り替えるように構成されていてもよい。例えば、第2スイッチSW2は、少なくとも機器3が給電路L1から取り外される際に一時的に短絡状態に切り替わるように構成されていてもよい。
【0085】
以下、上記構成の具体例について説明する。具体例において、第2スイッチSW2は、ノーマリーオン型の押釦スイッチであって、所定の力が加わるとオフ状態(開放状態)に切り替わるように構成されている。つまり、第2スイッチSW2は、機器3が給電路L1に取り付けられていない状態においてはオン状態(短絡状態)を維持し、機器3が給電路L1に取り付けられる際に所定の力が加わることでオフ状態に切り替わる。
【0086】
以下、上記具体例での第2スイッチSW2の動作について説明する。機器3を給電路L1に取り付ける場合、まず、機器3が給電路L1に差し込まれる。この時点では、第2スイッチSW2は未だオン状態を維持する。その後、機器3を所定角度回転させることで、機器3が給電路L1に接続される。このとき、第2スイッチSW2には、機器3の回転に伴って機器3及び給電路L1から所定の力が加えられる。これにより、第2スイッチSW2はオフ状態に切り替わる。そして、機器3が給電路L1に取り付けられている間は、第2スイッチSW2はオフ状態を維持する。
【0087】
機器3を給電路L1から取り外す場合、まず、機器3を取り付け時とは逆向きに所定角度回転させる。この機器3の回転の開始時において、第2スイッチSW2は機器3及び給電路L1から加えられる力から解放され、オン状態に切り替わる。そして、機器3の回転の途中で負荷31が給電路L1から切り離される。
【0088】
この構成では、第2スイッチSW2は、機器3の給電路L1に対する着脱に応じて、ユーザが直接操作することなく、自動的にオン/オフを切り替える。そして、第2スイッチSW2は、機器3が給電路L1から取り外される前にオン状態に切り替わる(つまり、少なくとも機器3が給電路L1から取り外される際に一時的に短絡状態に切り替わる)。この構成では、機器3を給電路L1から取り外す際にユーザが第2スイッチSW2を操作する場合と同様に、機器3が給電路L1から取り外される前に機器3の給電路L1に対する電気的な接続が解除されるようになっている。したがって、この構成では、機器3を給電路L1から取り外す際にチャタリングが発生したとしても、チャタリングの発生期間において給電路L1から負荷31へ電力が供給されないことから、チャタリングに起因するアークの発生を抑制することができる。
【0089】
実施の形態1,2において、抑制回路4,4Aは、第2スイッチSW2を有していなくてもよい。また、実施の形態1,2において、アーク検出システム100は、報知部13及び停止部14を備えていなくてもよい。つまり、アーク検出システム100は、あくまでアーク故障の発生を検出する機能を有していればよく、報知部13及び停止部14については別システムで実現されてもよい。
【0090】
実施の形態1,2では、各機器3に抑制回路4,4Aが設けられているが、これに限定されない。例えば、複数の機器3のうちの一部の機器3のみに抑制回路4,4Aが設けられていてもよい。また、例えば、いずれの機器3にも抑制回路4,4Aが設けられていなくてもよい。つまり、アーク検出システム100は、抑制回路4,4Aを備えていなくてもよい。また、例えば、抑制回路4,4Aは、機器3とは別に、機器3と給電路L1とを互いに接続するためのコネクタに設けられていてもよい。
【0091】
例えば、本発明は、アーク検出システム100として実現できるだけでなく、アーク検出システム100を構成する各構成要素が行うステップ(処理)を含むアーク検出方法として実現できる。
【0092】
具体的には、アーク検出方法は、取得ステップST1と、判定ステップST2と、を含む。取得ステップST1では、直流電源2から電力が供給される給電路L1に流れる電流I1の測定結果を取得する。判定ステップST2では、取得ステップST1にて取得した電流I1の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、アーク故障が発生したか否かを判定する。判定ステップST2では、特定の周波数帯域の成分が閾値以上となる特定時間が、給電路L1に対する機器3の着脱の際に生じ得るアークの発生時間よりも長い場合に、アーク故障が発生したと判定する。
【0093】
例えば、それらのステップは、1以上のプロセッサを有するコンピュータ(コンピュータシステム)によって実行されてもよい。そして、本発明は、それらの方法に含まれるステップを、コンピュータに実行させるためのプログラムとして実現できる。さらに、本発明は、そのプログラムを記録したCD-ROM等である非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現できる。具体的には、プログラムは、1以上のプロセッサに、上記のアーク検出方法を実行させる。
【0094】
上記各実施の形態に係るアーク検出システム100の少なくとも一部は、マイコンによってソフトウェア的に実現されたが、パーソナルコンピュータなどの汎用コンピュータにおいてソフトウェア的に実現されてもよい。さらに、アーク検出システム100の少なくとも一部は、A/D変換器、論理回路、ゲートアレイ、D/A変換器等で構成される専用の電子回路によってハードウェア的に実現されてもよい。
【0095】
また、実施の形態1,2における抑制回路4,4Aは、アーク検出システム100とは別に、単独で市場に流通し得る。すなわち、抑制回路4,4Aは、第1スイッチSW1と、駆動回路41と、を備える。第1スイッチSW1は、直流電源2から電力が供給される給電路L1と、給電路L1に着脱可能な機器3の有する負荷31と、の間の電路L2を開閉する。駆動回路41は、機器3が電路L2に接続されてから遅延時間の経過後に電路L2を閉じるように第1スイッチSW1を駆動する。
【0096】
また、抑制回路4,4Aは、例えば以下のように構成されていてもよい。すなわち、第1スイッチSW1は、電界効果トランジスタである。駆動回路41は、第1スイッチSW1のゲートに接続されて、第1スイッチSW1のゲートにコンデンサC1の充電電圧を印加するCRフィルタ42を更に備える。遅延時間は、CRフィルタ42の時定数により決定される。
【0097】
さらに、抑制回路4,4Aは、例えば以下のように構成されていてもよい。すなわち、抑制回路4,4Aは、第1スイッチSW1のゲートと電路L2との間を短絡状態及び開放状態の一方から他方に切り替える第2スイッチSW2を更に備える。
【0098】
さらに、抑制回路4,4Aは、例えば以下のように構成されていてもよい。すなわち、第2スイッチSW2は、少なくとも機器3が給電路L1から取り外される際に一時的に短絡状態に切り替わるように構成されている。
【0099】
また、抑制回路4,4Aは、例えば以下のように構成されていてもよい。すなわち、遅延時間は、給電路L1に対して機器3を着脱する際に生じ得るチャタリングの発生期間において機器3へ電力が供給されないように設定されている。
【0100】
上述の抑制回路4,4Aによれば、給電路L1に対して機器3を着脱する際に生じ得るチャタリングに起因するアークが生じにくくなる、という利点がある。
【0101】
なお、第1スイッチSW1は、電界効果トランジスタに限らず、例えばリレー等であってもよい。
【0102】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【0103】
(まとめ)
以上述べたように、アーク検出システム100は、取得部11と、判定部12と、を備える。取得部11は、直流電源2から電力が供給される給電路L1に流れる電流I1の測定結果を取得する。判定部12は、取得部11にて取得した電流I1の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、アーク故障が発生したか否かを判定する。判定部12は、特定の周波数帯域の成分が閾値以上となる特定時間が、給電路L1に対する機器3の着脱の際に生じ得るアークの発生時間よりも長い場合に、アーク故障が発生したと判定する。
【0104】
このようなアーク検出システム100によれば、給電路L1に対する機器3の着脱の際に生じ得るアークのように、一時的に発生しただけではアーク故障に至らない事象を検出しなくて済むので、アーク故障の発生の誤検出を防止しやすくなる、という利点がある。
【0105】
また、例えば、アーク検出システム100は、給電路L1に対する機器3の着脱の際に生じ得るアークを抑制する抑制回路4,4Aを更に備える。抑制回路4,4Aは、第1スイッチSW1と、駆動回路41と、を有する。第1スイッチSW1は、機器3の有する負荷31と給電路L1との間の電路L2を開閉する。駆動回路41は、機器3が電路L2に接続されてから遅延時間の経過後に電路L2を閉じるように第1スイッチSW1を駆動する。
【0106】
このようなアーク検出システム100によれば、機器3が給電路L1に取り付けられたであろう後に機器3の有する負荷31が給電路L1に接続されることになるので、電流が流れた状態で負荷31が給電路L1から瞬間的に切り離されるという状況が生じにくくなる。結果として、給電路L1に対して機器3を着脱する際に生じ得るチャタリングに起因するアークが生じにくくなる、という利点がある。
【0107】
また、例えば、アーク検出システム100では、第1スイッチSW1は、電界効果トランジスタである。駆動回路41は、第1スイッチSW1のゲートに接続されて、第1スイッチSW1のゲートにコンデンサC1の充電電圧を印加するCRフィルタ42を更に備える。遅延時間は、CRフィルタ42の時定数により決定される。
【0108】
このようなアーク検出システム100によれば、機器3が給電路L1に取り付けられたであろう後に機器3の有する負荷31が給電路L1に接続されることになるので、電流が流れた状態で負荷31が給電路L1から瞬間的に切り離されるという状況が生じにくくなる。結果として、給電路L1に対して機器3を着脱する際に生じ得るチャタリングに起因するアークが生じにくくなる、という利点がある。
【0109】
また、例えば、アーク検出システム100では、抑制回路4,4Aは、第1スイッチSW1のゲートと電路L2との間を短絡状態及び開放状態の一方から他方に切り替える第2スイッチSW2を更に備える。
【0110】
このようなアーク検出システム100によれば、機器3を給電路L1から取り外す際に第2スイッチSW2を操作することで、機器3が給電路L1から取り外される前に機器3の給電路L1に対する電気的な接続を解除することができる。したがって、チャタリングが発生し得る期間において給電路L1から負荷31へ電力が供給されないことから、チャタリングに起因するアークの発生を抑制することができる、という利点がある。
【0111】
また、例えば、アーク検出システム100では、第2スイッチSW2は、少なくとも機器3が給電路L1から取り外される際に一時的に短絡状態に切り替わるように構成されている。
【0112】
このようなアーク検出システム100によれば、機器3を給電路L1から取り外す際に、機器3が給電路L1から取り外される前に機器3の給電路L1に対する電気的な接続を自動的に解除することができる、という利点がある。
【0113】
また、例えば、アーク検出システム100では、遅延時間は、給電路L1に対して機器3を着脱する際に生じ得るチャタリングの発生期間において機器3へ電力が供給されないように設定されている。特定時間は、遅延時間よりも長い。
【0114】
このようなアーク検出システム100によれば、チャタリングに起因するアークの発生を、アーク故障の発生であると誤って判定するのを防ぎやすい、という利点がある。
【0115】
また、例えば、アーク検出方法は、取得ステップST1と、判定ステップST2と、を含む。取得ステップST1では、直流電源2から電力が供給される給電路L1に流れる電流I1の測定結果を取得する。判定ステップST2では、取得ステップST1にて取得した電流I1の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、アーク故障が発生したか否かを判定する。判定ステップST2では、特定の周波数帯域の成分が閾値以上となる特定時間が、給電路L1に対する機器3の着脱の際に生じ得るアークの発生時間よりも長い場合に、アーク故障が発生したと判定する。
【0116】
このようなアーク検出方法によれば、給電路L1に対する機器3の着脱の際に生じ得るアークのように、一時的に発生しただけではアーク故障に至らない事象を検出しなくて済むので、アーク故障の発生の誤検出を防止しやすくなる、という利点がある。
【0117】
また、例えば、プログラムは、1以上のプロセッサに、上記のアーク検出方法を実行させる。
【0118】
このようなプログラムによれば、給電路L1に対する機器3の着脱の際に生じ得るアークのように、一時的に発生しただけではアーク故障に至らない事象を検出しなくて済むので、アーク故障の発生の誤検出を防止しやすくなる、という利点がある。
【符号の説明】
【0119】
100 アーク検出システム
11 取得部
12 判定部
2 直流電源
3 機器
31 負荷
4,4A 抑制回路
41 駆動回路
42 CRフィルタ
C1 コンデンサ
I1 電流
L1 給電路
L2 電路
ST1 取得ステップ
ST2 判定ステップ
SW1 第1スイッチ
SW2 第2スイッチ
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5