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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】理美容施術台
(51)【国際特許分類】
   A47C 1/06 20060101AFI20230908BHJP
   A47C 27/00 20060101ALI20230908BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20230908BHJP
   A61H 15/02 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
A47C1/06
A47C27/00 F
A47C7/74 B
A61H15/02 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019003525
(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2019217249
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2018114420
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108672
【氏名又は名称】タカラベルモント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】多田 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】萬成 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小川 俊介
(72)【発明者】
【氏名】戸田 和成
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-030063(JP,A)
【文献】特開2005-278696(JP,A)
【文献】特開2003-125908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 1/06
A47C 27/00
A47C 7/74
A61H 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施術者の臀部および大腿が載せられる臀部大腿載置部と、この臀部大腿載置部の先端に連結されて被施術者の下腿が載置される下腿載置部と、前記臀部大腿載置部の後部側に連結されて被施術者の頭部を除いた上半身が載せられる上半身載置部と、前記上半身載置部の後方に配置されて被施術者の頭部が載置されるシャンプーボウルと、を有し、前記上半身載置部が倒れて前記シャンプーボウルに近接したベッド状態と、前記上半身載置部が起きた椅子状態とに、相互に変形する理美容施術台において、
前記ベッド状態での施術中に被施術者を眠らせるために、
前記上半身載置部に上半身温熱部が備えられ、この上半身温熱部による温度が、所定の温度範囲において高温と低温とに繰り返し変化するものであり、
前記上半身載置部と被施術者との接触面における前記温度範囲が37から41度であり、高温と低温との差が2度以内であり、
前記上半身温熱部による温熱範囲が、被施術者の肩近傍における肩幅方向及び上下方向に沿った範囲であり、
被施術者の頭部が、前記シャンプーボウルにおける温湯を用いた施術によって加温される、
ことを特徴とする理美容施術台。
【請求項2】
被施術者の臀部および大腿が載せられる臀部大腿載置部と、この臀部大腿載置部の先端に連結されて被施術者の下腿が載置される下腿載置部と、前記臀部大腿載置部の後部側に連結されて被施術者の頭部を除いた上半身が載せられる上半身載置部と、前記上半身載置部の後方に配置されて被施術者の頭部が載置されるシャンプーボウルと、を有し、前記上半身載置部が倒れて前記シャンプーボウルに近接したベッド状態と、前記上半身載置部が起きた椅子状態とに、相互に変形する理美容施術台において、
前記ベッド状態での施術中に被施術者を眠らせるために、
前記上半身載置部に上半身温熱部が備えられ、この上半身温熱部による温度が、所定の温度範囲において高温と低温とに繰り返し変化するものであり、
前記上半身載置部と被施術者との接触面における前記温度範囲が37から41度であり、高温と低温との差が2度以内であり、
前記上半身温熱部による温熱範囲が、前記上半身載置部の前後方向に渡る中心線を中心として両幅方向に50から200ミリメートルであって、被施術者の背骨に沿った範囲であり、
被施術者の頭部が、前記シャンプーボウルにおける温湯を用いた施術によって加温される、
ことを特徴とする理美容施術台。
【請求項3】
前記施術が、前記シャンプーボウルの後方から被施術者の頭部を施術するリアシャンプー式である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された理美容施術台。
【請求項4】
前記下腿載置部に下腿温熱部が備えられた、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された理美容施術台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理美容施設などで用いられる理美容施術台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、理美容施設などに設置されたシャンプー用の椅子として、背もたれ部が倒れてシャンプー台に近接することで、被施術者が横たわると共に頭部がシャンプー台に載せられるものがある。近年の理美容施設では、シャンプーだけでなく、頭皮のマッサージやリンパの流れを改善し、リラクゼーションを促すことなどを目的として、数十分のヘッドスパも行われているため、シャンプー用の椅子は、リラクゼーションに適した仕様であることも望まれる。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載された医療用椅子は、レッグレストに温熱手段が内蔵され、被施術者の脚を加温することで、快適な環境を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-37825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
理美容施設におけるシャンプー用の椅子などにおいても、被施術者の身体の一部を加温することで、リラクゼーション効果が期待できる。
【0006】
例えば、被施術者は、ヘッドスパの最中に眠気が起こることで施術に快感を覚え、満足を得る傾向にある。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、被施術者の身体の一部を加温することで、快適な環境を提供することができる理美容施術台の提供を目的とする。特に、被施術者が眠気を起こす環境を提供することができる理美容施術台の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
人間は、体内の温度である深部体温が低下する際に眠気を起こす。したがって、理美容施術台において、被施術者の深部体温を強制的に下げることができれば、被施術者は眠気が促される。
【0009】
そこで、上記目的を達成するために、本発明に係る理美容施術台は、被施術者の臀部および大腿が載せられる臀部大腿載置部と、この臀部大腿載置部の先端に連結されて被施術者の下腿が載置される下腿載置部と、前記臀部大腿載置部の後部側に連結されて被施術者の上半身が載せられる上半身載置部と、を有する理美容施術台において、前記上半身載置部に上半身温熱部が備えられ、この上半身温熱部による温度が、所定の温度範囲において高温と低温とに繰り返し変化する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る理美容施術台は、前記上半身温熱部による温熱範囲が、被施術者の肩近傍における肩幅方向に沿った範囲である、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る理美容施術台は、前記上半身載置部と被施術者との接触面における前記温度範囲が37から41度であり、高温と低温との差が2度以内である、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る理美容施術台は、前記上半身温熱部による温熱範囲が、被施術者の背骨に沿った範囲である、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る理美容施術台は、前記上半身温熱部による温熱範囲が、前記上半身載置部の前後方向に渡る中心線を中心として両幅方向に50から200ミリメートルである、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る理美容施術台は、前記下腿載置部に下腿温熱部が備えられた、ことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る理美容施術台は、前記上半身載置部の後方に配置されて被施術者の頭部が載置されるシャンプーボウルを有し、前記上半身載置部が倒れて前記シャンプーボウルに近接したベッド状態と、前記上半身載置部が起きた椅子状態とに、相互に変形する、ことを特徴とする。
【0016】
なお、理美容施術台は、前記上半身温熱部が、施術中の温度である施術中温度、および、施術が終了する直前の温度であって前記施術中温度よりも低い終了温度に制御される構成であってもよい。
【0017】
なお、理美容施術台は、施術中における前記上半身温熱部の温度である施術中温度が、36から40度であり、施術が終了する直前における前記上半身温熱部の温度である終了温度が、36度未満であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る理美容施術台は、上半身載置部に上半身温熱部が備えられ、この上半身温熱部による温度が、所定の温度範囲において高温と低温とに繰り返し変化する。この構成により、被施術者の上半身が加温され、リラクゼーション効果が生じる。特に、上半身温熱部の温度が高温から低温に下がることで、上半身載置部から被施術者に伝わる熱が下がると共に被施術者の深部体温が下がり、被施術者は眠気を起こす。したがって、被施術者に快適な環境を提供することができる。
【0019】
本発明に係る理美容施術台は、上半身温熱部による温熱範囲が、被施術者の肩近傍における肩幅方向に沿った範囲である。この構成により、被施術者の上半身のうち、肩や背中が加温され、手の皮膚温が上昇する。手指の毛細血管から表皮を通じて放熱量が増えると、やがて深部体温が下がり、被施術者は眠気を起こす。昇温と降温とが繰り返されると、複数回に渡って被施術者に眠気を起こさせることができる。したがって、被施術者に快適な環境を提供することができる。
【0020】
本発明に係る理美容施術台は、温度範囲が37から41度であり、高温と低温との差が2度以内である。一般的な体温である約36から37度よりも若干高い温度範囲であれば、体が過剰に加温されることがなく、深部体温も過剰に上昇しない。すなわち、深部体温の上昇が適度であれば、放熱による深部体温の低下が適切に促される。また、高温と低温との差が2度程度であれば、過剰に深部体温を制御することがなく、被施術者に適切に眠気を起こさせることができると考えられる。したがって、快適な環境を提供することができる。なお、高温と低温との差が広すぎた場合、寒暖が顕著となり、被施術者が不快に感じる場合がある。
【0021】
本発明に係る理美容施術台は、上半身温熱部による温熱範囲が、被施術者の背骨に沿った範囲である。この構成により、被施術者の上半身のうち、背骨に沿った部位が特に加温され、リラクゼーション効果が生じる。したがって、被施術者に快適な環境を提供することができる。
【0022】
本発明に係る理美容施術台は、上半身温熱部による温熱範囲が、上半身載置部の前後方向に渡る中心線を中心として両幅方向に50から200ミリメートルである。この構成により、被施術者の上半身のうち、背骨に沿った部位が、温熱範囲に収まって適切に加温され、リラクゼーション効果が生じる。したがって、被施術者に快適な環境を提供することができる。
【0023】
本発明に係る理美容施術台は、下腿載置部に下腿温熱部が備えられている。この構成により、被施術者の上半身に加えて下腿が加温され、リラクゼーション効果が生じる。
【0024】
本発明に係る理美容施術台は、上半身載置部の後方に配置されて被施術者の頭部が載置されるシャンプーボウルを有し、上半身載置部が倒れてシャンプーボウルに近接したベッド状態と、上半身載置部が起きた椅子状態とに、相互に変形する。したがって、被施術者は、椅子状態の理美容施術台に着座すれば、自動的にベッド状態における快適な姿勢が促される。施術が終わった後、理美容施術台が椅子状態に変形すれば、被施術者は着座した姿勢が促される。
【0025】
なお、理美容施術台は、上半身温熱部が、施術中の温度である施術中温度、および、施術が終了する直前の温度であって施術中温度よりも低い終了温度に制御される構成であってもよい。この構成により、施術が終了する際、温熱範囲の温度が徐々に低下し、リラックスした環境から通常の環境に、緩やかに遷移させ、快適な覚醒を被施術者に提供することができる。
【0026】
なお、理美容施術台は、理美容施術台は、施術中における上半身温熱部の温度である施術中温度が、36から40度であり、施術が終了する直前における上半身温熱部の温度である終了温度が、36度未満であってもよい。この構成により、温熱範囲の温度が36度から徐々に低下し、リラックスした環境から通常の環境に、緩やかに遷移させ、快適な覚醒を被施術者に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る理美容施術台の椅子状態における外観斜視図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係る理美容施術台の椅子状態における外観側面図である。
図3図3は、本発明の第一実施形態に係る理美容施術台の椅子状態における外観平面図である。
図4図4は、本発明の第一実施形態に係る理美容施術台のベッド状態における外観斜視図である。
図5図5は、本発明の第一実施形態に係る理美容施術台のベッド状態における外観側面図である。
図6図6は、本発明の第一実施形態に係る理美容施術台のベッド状態における外観平面図である。
図7図7は、本発明の第一実施形態に係る理美容施術台における実施例の条件の概要を比較例と共に示した概要説明図である。
図8図8は、本発明の第一実施形態に係る理美容施術台における実施例の検証作業を説明するための説明図である。
図9図9は、本発明の第一実施形態に係る理美容施術台における実施例の検証結果を示した説明図である。
図10図10は、本発明の第二実施形態に係る理美容施術台の椅子状態における外観斜視図である。
図11図11は、本発明の第二実施形態に係る理美容施術台における上半身温熱部による温度変化の例を示したグラフである。
図12図12は、本発明の第二実施形態に係る理美容施術台における上半身温熱部による温度変化の他の例を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の第一実施形態に係る理美容施術台を図面に基づいて説明する。図1から図6は、第一実施形態に係る理美容施術台1の外観が示されている。図1から図3は、椅子状態の理美容施術台1が示され、図4から図6は、ベッド状態の理美容施術台1が示されている。なお、以下の説明では、設置面に対して垂直な方向が上方および下方、上半身載置部7から下腿載置部6に向かう方向が前方、下腿載置部6から上半身載置部7に向かう方向が後方(図2および図5参照)、前後方向と直交し、上半身載置部7の横幅の向きが幅方向である(図3および図6参照)。
【0029】
図1から図6に示されているとおり、理美容施術台1は、設置面に固定される基台部2と、この基台部2に連結された施術台本体部4とから構成されている。
【0030】
基台部2は、例えば空圧式、油圧式のピストンシリンダーなどの駆動部(図示省略)や、施術台本体部4の配置や角度を制御する位置制御部(図示省略)、施術台本体部4の温度を制御する温度制御部(図示省略)などが内蔵されている。基台部2は、施術台本体部4の高さや角度を変化させる変形機構3が備えられている。変形機構3は、複数のアームやリンク機構によって実現されている。
【0031】
施術台本体部4は、被施術者(図示省略)の臀部および大腿が載せられる臀部大腿載置部5と、この臀部大腿載置部5の先端に連結されて被施術者の下腿が載置される下腿載置部6と、臀部大腿載置部5の後部側近傍の連結軸10に連結されて被施術者の上半身が載せられる上半身載置部7とを有している。また、被施術者の頭部が載置されるシャンプーボウル(図示省略)が、上半身載置部7の後方に配置されている。シャンプーボウルは、上半身載置部7と間を空けて配置され、または、上半身載置部7に近接して配置されている。シャンプーボウルが上半身載置部7と間を空けて配置されている場合、シャンプーボウルは、上半身載置部7が倒れ、被施術者が上半身載置部7に仰向けに横たわった場合に頭部が載置できる程度に、上半身載置部7の後端が近接する位置に配置されている。シャンプーボウルは、基台部2を介して一体であってもよく、また、施術台本体部4から独立した移動式でもよい。
【0032】
各部5,6,7は、例えば、バネ、樹脂、綿などのクッション材が上面に取り付けられ、革や布などで覆われている。臀部大腿載置部5は、ほぼ四角形の座部である。
【0033】
下腿載置部6は、ほぼ四角形または台形のレッグレストであり、全長が、被施術者の足よりも先端側に長く形成されている。すなわち、被施術者の足が下腿載置部6からはみ出すことなく、下腿が足先まで下腿載置部6に載置される。下腿載置部6は、下腿温熱部11が内蔵されている。下腿温熱部11は、例えば電気ヒーターなどであり、サーミスタなどの温度検知手段(図示省略)を有している。下腿温熱部11による下腿温熱範囲12は、下腿載置部6のほぼ全体に渡っている。下腿温熱部11の温度は、温度制御部において、電力量による制御、または、断続的な電源のON-OFFによる制御によって調節される。下腿温熱範囲12の温度は、約36から40度、約37.5から39度である。
【0034】
上半身載置部7は、ほぼ四角形の背もたれであり、側方にひじ掛け部8が形成されている。ひじ掛け部8は、前方に向けて張り出している。上半身載置部7は、上半身温熱部13が内蔵されている。上半身温熱部13は、例えば電気ヒーターなどであり、サーミスタなどの温度検知手段(図示省略)を有している。上半身温熱部13による上半身温熱範囲14は、被施術者の背骨に沿った範囲である。詳説すれば、上半身温熱範囲14は、上半身載置部7の先端から後端まで、かつ、上半身載置部7の前後方向に渡る中心線Xを中心として両幅方向に約50から00ミリメートルである(上半身温熱範囲14の幅は、約100から400ミリメートルである。)。好ましくは、上半身温熱範囲14の幅は、約320ミリメートルである。すなわち、上半身温熱範囲14は、被施術者が上半身載置部7に仰向けに横たわった場合に、背骨を通り腰から頸部に渡って加温することができる範囲である。なお、上半身温熱範囲14は、任意に設定することができる。例えば、上半身載置部7のほぼ全体、頸部近傍のみ、腰近傍のみ、ひじ掛け部8などが、上半身温熱範囲14に設定される。上半身温熱部13の温度は、温度制御部において、電力量による制御、または、断続的な電源のON-OFFによる制御によって調節される。
【0035】
温度制御部は、例えば、シャンプーやヘッドスパなどの施術中の温度である施術中温度、および、施術が終了する直前の温度であって施術中温度よりも低い終了温度に、上半身温熱部13の温度を制御する。ここで、施術中温度は、約36から40度であり、終了温度は、約36度未満である。施術中温度が、約38.5から41度であり、終了温度が、約38.5度未満としてもよい。
【0036】
シャンプーボウルは、半球状であり、例えば、シャワーヘッド、止水栓、被施術者の頸部を支持する支持部材が備えられている。シャンプーボウルは、施術者が、被施術者の頭頂部側から施術するリアシャンプー式、被施術者の頭部の側方から施術するサイドシャンプー式のいずれであってもよく、また、全自動のオートシャンプー式であってもよい。
【0037】
各部5,6,7は、基台部2の変形機構3に連結されている。したがって、変形機構3が稼働することで、各部5,6,7が変位し、理美容施術台1は、椅子状態とベッド状態とに相互に変化する。
【0038】
図1から図3に示されているとおり、椅子状態は、被施術者が着座できる形態である。この椅子状態では、図2に示されているとおり、臀部大腿載置部5は、後端を軸として上向きに僅かに傾斜している。上半身載置部7は、連結軸10を軸として起きている。下腿載置部6は、臀部大腿載置部5の前端を軸として下向きに傾斜している。一方で、図4から図6に示されているとおり、ベッド状態は、被施術者が仰向けに横たわり、シャンプーやヘッドスパなどの施術が行われる形態である。このベッド状態では、図5に示されているとおり、臀部大腿載置部5は、後端を軸として上向きに僅かに傾斜している。上半身載置部7は、連結軸10を軸として倒れ、後端がシャンプーボウルに近接している。下腿載置部6は、ほぼ水平である。
【0039】
上記のとおり、理美容施術台1が構成されている。次に、理美容施術台1の実施例に基づいた検証結果を、比較例と共に説明する。図7は、実施例と比較例の条件の概要が示され、図8は、実施例および比較例の検証作業の説明が示され、図9は、実施例および比較例の検証結果が示されている。
【0040】
図7に示されているとおり、実施例は、ベッド状態であり、下腿温熱部11が稼働して下腿温熱範囲12が温まっており、かつ、上半身温熱部13が稼働して上半身温熱範囲14が温まっている。一方で、比較例1は、ベッド状態であり、下腿温熱部11が稼働して下腿温熱範囲12が温まっているが、上半身温熱部13が停止している。比較例2は、ベッド状態であり、下腿温熱部11が稼働して下腿温熱範囲12が温まっており、かつ、上半身温熱部13が稼働して温まった温熱範囲が、頸部近傍の背中部分である。
【0041】
被験者は、20代から40代の10名の女性である。同一人物が、実施例、比較例1、比較例2を一週間の間隔を開けて体験した。実施例、比較例1、比較例2を体験する順番は、被験者ごとに任意である。
【0042】
図8に示されているとおり、はじめに、被施術者を着座させて5分間の安静時間を設け、次いで検証前測定として、10分間で、VAS(Visual Analog Scale)、二次元気分尺度(TDMS-ST)を実施し、下腿周囲径、筋硬度(肩、腰、足)、血圧を順番に測定した。ベッド状態の理美容施術台1で、5分間、仰臥位の姿勢で安静時間を設けた。次いで、各温熱部(比較例1では下腿温熱部のみ)の電源を入れ、同時に、皮膚表面温度を測定した。電源を入れてから5分後を検証開始時刻として、30分間の検証を行った。検証開始時と、検証開始から10分ごとの計4回、皮膚表面温度を測定し、同時に聞き取り調査を行った。安静時間の開始時から検証時間の終了時までの40分の間、皮膚血流量、心拍数、脈拍数、心拍スペクトルを測定した。また、実際の施術を想定し、試験者が、被験者の頭部を15秒間持ち上げる動作を、聞き取り調査の度に行った。最後に、検証後測定として、血圧、下腿周囲径、筋硬度の順に測定し、VASとTDMS-STを実施した。
【0043】
図9に示されているとおり、比較例1では、皮膚温が手指において低下し、筋硬度が腰において増加した。主観評価についても、検証中における首への負担感が増加し、身体的負担が軽減されにくい傾向がみられた。
【0044】
比較例2では、手甲における皮膚温の上昇、手指における皮膚血流の増加、六点周囲径計測法による足体積の減少がみられ、末梢循環が改善された可能性がある。
【0045】
実施例では、手甲における皮膚温の上昇、肩や足における筋硬度の減少がみられ、筋疲労を緩和させることで、身体的負担を軽減させる効果が期待できる。
【0046】
次に、理美容施術台1の効果を説明する。
【0047】
上記したとおり、理美容施術台1では、下腿載置部6は、下腿温熱部11が内蔵され、また、上半身載置部7は、上半身温熱部13が内蔵されている。上半身温熱範囲14は、上半身載置部7の先端から後端まで、かつ、上半身載置部7の前後方向に渡る中心線Xを中心として両幅方向に約50から00ミリメートルである。この構成により、被施術者が上半身載置部7に仰向けに横たわった場合に、背骨を通り腰から頸部に渡って加温され、かつ、下腿が加温され、リラクゼーション効果が生じる。特に、ヘッドスパの施術では、頭部が刺激されると共に温湯で加温され、さらなるリラクゼーション効果が生じる。したがって、被施術者に快適な環境を提供することができる。
【0048】
理美容施術台1では、上半身温熱部13の温度は、温度制御部によって、施術中の温度である施術中温度、および、施術が終了する直前の温度であって施術中温度よりも低い終了温度に制御される。この構成により、施術が終了する際、温熱範囲の温度が徐々に低下し、リラックスした環境から通常の環境に、緩やかに遷移させ、快適な覚醒を被施術者に提供することができる。
【0049】
特に、上半身温熱範囲14の温度が36度または38.5度から徐々に低下すれば、リラックスした環境から通常の環境に、緩やかに遷移し、快適な覚醒を被施術者に提供することができる。
【0050】
理美容施術台1では、基台部2の変形機構3が稼働することで、臀部大腿載置部5、下腿載置部6、上半身載置部7が変位し、理美容施術台1は、椅子状態とベッド状態とに相互に変化する。したがって、被施術者は、椅子状態の理美容施術台1に着座すれば、自動的にベッド状態における快適な姿勢が促される。施術が終わった後、理美容施術台1が椅子状態に変形すれば、被施術者は着座した姿勢が促される。
【0051】
なお、理美容施術台1は、初めからベッド状態のままであり、椅子状態に変形するものではない実施形態であってもよい。
【0052】
次に、本発明の第二実施形態に係る理美容施術台を図面に基づいて説明する。図10は、第二実施形態に係る理美容施術台21の外観が示されている。図11および図12は、理美容施術台21における上半身温熱部23および上半身載置部27の温度変化が示されている。なお、以下では、第一実施形態と異なる構成が主に説明され、同様の構成は適宜説明が省略されている。
【0053】
図10に示されているとおり、理美容施術台21は、第一実施形態に係る理美容施術台1(図1参照)と比較して、上半身載置部27における上半身温熱部23の仕様および上半身温熱範囲24が異なる。
【0054】
上半身温熱部23は、温度検知器(図示省略)を有し、この温度検知器によって、上半身温熱部23の温度が制御される。温度検知器は、例えばバイメタルサーモスタットなどである。なお、温度検知器は、温度を制御することができる機器であれば任意であるが、バイメタルサーモスタットであれば、制御回路の構成や設置箇所の選択が比較的簡便である。
【0055】
上半身温熱部23による上半身温熱範囲24は、被施術者の肩近傍における肩幅方向に沿った範囲である。詳説すれば、上半身温熱範囲24は、上半身載置部27の上部近傍において、中心線Xと直交する幅方向の端から端まで、かつ、上下の幅が約100から400ミリメートルである。好ましくは、上半身温熱範囲24の上下の幅は、約320ミリメートルである。
【0056】
図11に示されているとおり、理美容施術台21は、第一実施形態に係る理美容施術台1と比較して、上半身温熱部23における温度制御が異なる。
【0057】
上半身温熱部23は、温度検知器によって、設定された温度範囲に制御され、このことによって、上半身載置部27の表面、または、上半身載置部27と被施術者との接触面(以下、上半身載置部27の表面、または、上半身載置部27と被施術者との接触面を、「接触面」と記す。)の温度が、所定の周期および所定の温度範囲において高温と低温とに繰り返し変化する。
【0058】
接触面の温度範囲は、約37から41度であり、高温と低温との差が2度以内である。例えば、高温が約41度であれば、低温は39から41度未満である。高温が約40度であれば、低温は38から40度未満である。高温が約39度であれば、低温は37から39度未満である。高温が約38度であれば、低温は37から38度未満である。好ましくは、接触面の温度範囲は、約38から40度である。
【0059】
接触面の温度範囲は、上半身温熱部23の温度が温度検知器によって制御されることに伴って実現する。ここで、温度検知器の設定温度は、予め約45から55度の範囲に設定されている。したがって、上半身温熱部23の温度が約55度のとき、上半身温熱部23の電源がOFFとなり、上半身温熱部23の温度が約45度のとき、上半身温熱部23の電源が再びONとなる。さらに、接触面の温度は、例えば、上半身載置部27の材質、上半身温熱部23から接触面までの厚みなどに応じて異なる。例えば、上半身温熱部23の上面に、第一積層体として約25ミリメートルの通常のウレタンが積層された場合、上半身温熱部23から接触面までの厚みは、約25ミリメートルである。また、第一積層体の上面に、第二積層体として通常よりも柔らかい約20ミリメートルのウレタンが積層された場合、上半身温熱部23から接触面までの厚みは、約45ミリメートルである。この場合の接触面の温度範囲は、下表1のとおりである。
【0060】
【表1】
【0061】
所定の周期は、上半身温熱部23の電源がONである時間(低温から高温に至るまでの時間)、および、上半身温熱部23の電源がOFFである時間(高温から低温に至るまでの時間)を一周期としたとき、この一周期が、約10分以上であることが好ましい。図11においては、上半身温熱部23の電源がONである平均の時間が約2.4分、上半身温熱部23の電源がOFFである平均の時間が約8.1分である。デューティ比は23パーセントである。
【0062】
上記のとおり、上半身温熱部23の温度、上半身載置部27の材質、上半身温熱部23から接触面までの厚みなどが適切に選択されることで、接触面の温度範囲が所望の数値に制御される。詳説すれば、上半身温熱部23の温度が上昇することに伴い、接触面も昇温し、上半身温熱部23が約55度に達すると、接触面は高温(例えば約40度)となる。このとき、温度検知器が作動して上半身温熱部23の電源がOFFとなる。上半身温熱部23の温度が低下することに伴い、接触面も降温し、上半身温熱部23が約45度に達すると、接触面は低温(例えば約38度)となる。このとき、温度検知器が作動して上半身温熱部23の電源がONとなる。この現象が繰り返される。被施術者は、接触面の温度が低下することに伴い、深部体温が低下して眠気を起こす。
【0063】
なお、接触面の温度範囲および所定の周期は、例えば、上半身載置部27に横たわった被施術者の体重、血流量、体温、表面積などに応じて僅かに異なる。すなわち、被施術者の体重に応じて、積層体における圧縮の度合いが異なるため、体重が重たく、接触面が上半身温熱部23に近づけば、接触面の温度が比較的高くなりやすく、一方で、体重が軽ければ、接触面の温度が比較的低くなりやすい。また、被施術者の血流量、体温、表面積などに応じて、接触面からの放熱の度合いが異なるため、血流量が多い場合、体温が接触面の温度と多分に相違する場合、表面積が比較的大きい場合は、接触面からの放熱量が多く、所定の周期が比較的早くなりやすい。一方で、血流量が少ない場合、体温が接触面の温度とあまり変わらない場合、表面積が比較的小さい場合は、接触面からの放熱量が少なく、所定の周期が比較的遅くなりやすい。
【0064】
したがって、図11および図12に示されているとおり、接触面の温度および所定の周期は、被施術者に応じて僅かに差異がある。なお、図12の場合においては、上半身温熱部23の電源がONである平均の時間が約8分、上半身温熱部23の電源がOFFである平均の時間が約16分である。デューティ比は33パーセントである。また、他の例(図示省略)では、上半身温熱部23の電源がONである平均の時間が約4.2分、上半身温熱部23の電源がOFFである平均の時間が約14.2分であり、デューティ比は23パーセントであった。
【0065】
上記したとおり、理美容施術台21では、温度検知器によって、設定された温度範囲に上半身温熱部23が制御され、このことによって、接触面が、所定の周期および所定の温度範囲において高温と低温とに繰り返し変化する。この構成により、上半身温熱部23の温度が高温から低温に下がることで、上半身載置部27から被施術者に伝わる熱が下がると共に被施術者の深部体温が下がり、被施術者は眠気を起こす。したがって、被施術者に快適な環境を提供することができる。
【0066】
理美容施術台21は、上半身温熱範囲24が、上半身載置部27の上部近傍において、被施術者の肩近傍における肩幅方向に沿った範囲である。この構成により、被施術者の上半身のうち、肩や背中が加温され、手の皮膚温が上昇する。手指の毛細血管から表皮を通じて放熱量が増えると、やがて深部体温が下がり、被施術者は眠気を起こす。昇温と降温とが繰り返されると、複数回に渡って被施術者に眠気を起こさせることができる。したがって、被施術者に快適な環境を提供することができる。
【0067】
理美容施術台21は、温度範囲が37から41度であり、高温と低温との差が2度以内である。この構成により、体が過剰に加温されることがなく、深部体温も過剰に上昇しない。すなわち、深部体温の上昇が適度であれば、放熱による深部体温の低下が適切に促される。また、高温と低温との差が2度程度であれば、過剰に深部体温を制御することがなく、被施術者に適切に眠気を起こさせることができると考えられる。したがって、快適な環境を提供することができる。
【0068】
理美容施術台21は、シャンプーボウルを有していないが、シャンプーボウルを有する構成であってもよい。なお、シャンプーボウルを有していない構成であっても、例えば水を使わないマッサージによるヘッドスパ、美容施術などにおいて、快適な環境を提供することができる。
【0069】
理美容施術台21は、下腿温熱部11を稼働させず、下腿温熱範囲12を有しない構成であってもよい。また、下腿載置部6に下腿温熱部11が備えられていなくてもよい。
【0070】
なお、本発明に係る第三実施形態(図示省略)として、第一実施形態に係る理美容施術台1と同様に、上半身温熱範囲14が、上半身載置部7の先端から後端まで、かつ、上半身載置部7の前後方向に渡る中心線Xを中心として両幅方向に約50から00ミリメートルであり(図1参照)、第二実施形態に係る理美容施術台21と同様に、上半身温熱部23が、温度検知器によって、設定された温度範囲に制御され、このことによって、接触面の温度が、所定の周期および所定の温度範囲において高温と低温とに繰り返し変化する構成(図11および図12参照)であってもよい。
【0071】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1,21 理美容施術台
2 基台部
3 変形機構
4 施術台本体部
5 臀部大腿載置部
6 下腿載置部
7,27 上半身載置部
8 ひじ掛け部
10 連結軸
11 下腿温熱部
12 下腿温熱範囲
13,23 上半身温熱部
14,24 上半身温熱範囲
X 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12