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  • 特許-集合住宅漏水検査方法 図1
  • 特許-集合住宅漏水検査方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】集合住宅漏水検査方法
(51)【国際特許分類】
   E03B 7/00 20060101AFI20230908BHJP
   G01M 3/26 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
E03B7/00 A
G01M3/26 M
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019130793
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021014741
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】509246264
【氏名又は名称】株式会社セーフティネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100116861
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 義博
(72)【発明者】
【氏名】中田 治
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-299446(JP,A)
【文献】特開2002-239488(JP,A)
【文献】実開平06-051850(JP,U)
【文献】特開平08-285720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 1/00-11/16
G01M 3/00- 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅において、各戸に供給される小径の水道管による使用量を個別に計算するよりも低額となる、水道局から集合住宅の受水槽に供給される大径水道管による供給量に基づく水道料金により、安価な水道料金体系を享受するために前提となる、漏水がないことを確認するための、受水槽と各戸の水道メータまたは共用部その他の各設備ないし各施設の水道メータとの間の水道経路の漏水検査方法であって、
前記水道メータ直近の各止水栓を総て閉め、前記水道経路中の屋外の散水栓水圧測定型の漏水計を接続し、
受水槽直近のバルブを閉めてから、バルブ下流のいずれかの蛇口から所定量の水を流して漏水計の減圧を確認し、次いで、当該蛇口を閉めてからの水圧上昇がないことを確認し、
その後、所定時間漏水計を監視することにより前記水道経路の漏水の有無を検出することを特徴とする集合住宅漏水検査方法。
【請求項2】
止水栓を閉めた後、各水道メータのパイロットの回転の有無を確認する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の集合住宅漏水検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来、集合住宅では、戸建て住宅よりも安価な水道料金体系を事実上享受していた。これは、水道料金は、水道管の口径と使用量とそれぞれの基本料金とにより算出されるが、集合住宅では、大径水道管により一端受水槽に大量の水が供給されることに由来する。すなわち、水道局から集合住宅に一括して請求される水道料金は、各戸に供給される小径の水道管による使用量を個別に計算するよりも低額となり、その差額分だけ割安にすることが可能となる。
また、水道料金の算出の基礎である水道使用量を正確に算出する場合には、水道局による検針日と、集合住宅の管理組合等にておこなわれる検針日とを合わせる必要があるが、どのみち差額が生じるので、検針日の制約が緩和されるという利点も有する(労務負担が軽減される)。
【0002】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
水道料金を正確に算出するに際しては、漏水が生じていないことが前提であるが、集合住宅においては、上述の様に、検針のタイミングが一致していないので、受水槽と各水道メータとの間の水道管(水道経路)の漏水が発見できないという問題点があった。
これは受水槽の水道メータを電子メータに交換すれば解消されるが、費用もかかり所定期間経過後には交換も必要となるので、住人の理解が得られにくいという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-024484号
【文献】特開2019-090745号
【文献】特開2006-053057号
【文献】特開平06-074854号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、集合住宅において、適正な水道料金算出に資するための簡便な漏水検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の集合住宅漏水検査方法は、集合住宅において、各戸に供給される小径の水道管による使用量を個別に計算するよりも低額となる、水道局から集合住宅の受水槽に供給される大径水道管による供給量に基づく水道料金により、安価な水道料金体系を享受するために前提となる、漏水がないことを確認するための、受水槽と各戸の水道メータまたは共用部その他の各設備ないし各施設の水道メータとの間の水道経路の漏水検査方法であって、前記水道メータ直近の各止水栓を総て閉め、前記水道経路中の屋外の散水栓水圧測定型の漏水計を接続し、受水槽直近のバルブを閉めてから、バルブ下流のいずれかの蛇口から所定量の水を流して漏水計の減圧を確認し、次いで、当該蛇口を閉めてからの水圧上昇がないことを確認し、その後、所定時間漏水計を監視することにより前記水道経路の漏水の有無を検出することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の集合住宅漏水検査方法は、請求項1に記載の集合住宅漏水検査方法において、止水栓を閉めた後、各水道メータのパイロットの回転の有無を確認する工程を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明において、止水栓は通常水道メータの直近上流に設けられているがこの態様に限定されない
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、集合住宅において、電子メータを導入せずに済み、屋外の散水栓を利用して各戸への影響を最小限にしつつ適正な水道料金算出に資するための簡便な漏水検査方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明を適用する集合住宅についての水道経路を中心に描画した模式図である。
図2】本発明の処理流れの手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
ここでは、集合住宅の各戸とは別に屋外にある散水栓を利用した漏水検査方法について説明する。図1は、本発明を適用する集合住宅についての水道経路を中心に描画した模式図である。図2は、本発明の処理流れの手順を示したフローチャートである。
【0011】
図1に示した様に、集合住宅Sでは、水道局側から引かれた大口径の水道管の水が一端受水槽Jに送り込まれる。受水槽Jには水を流す/遮断するためのバルブBが備わり、また、図示しないポンプにより所定の水圧にて各住戸H(H1,H2,・・・,Hn)および屋外の共用散水栓Tに水が供給される。散水栓Tは植栽などの水やりに用いられる。なお、ここでは説明の便宜上、水道が引かれた共用部は散水栓Tのみとしたが、共用の集会部屋、踊り場などに別途水道管が配管されていても当然に良いものとする。
【0012】
各住戸Hや散水栓Tには、それぞれ水道メータM(M1,M2,・・・,Mn,Mt)が備わり、各住戸Hや散水栓Tでの水道使用量が適時把握される。なお、各水道メータMには、上流側にそれぞれ止水栓Pが備わる。
【0013】
漏水検査の方法は次のとおりである。
まず、各住戸Hの止水栓Pを閉め、漏水計Kを散水栓Tに接続しその蛇口をあける。ここで用いる漏水計Kは、水圧をみるもので、一般的な住戸の水圧は0.2Mパスカル~0.4Mパスカルであるので、この程度の圧力が測定できるものを用いる。なお、針により目盛を指し示すタイプであると、経時的に針が動くかどうかがわかり好ましい。漏水計の例としてはエスコ社製SA115F1などを挙げることができる。
【0014】
次に、受水槽JのバルブBを閉め、直後から、漏水計Kの針の動きを監視する。監視時間は特に限定されないが、バルブBから止水栓Pまでの経路(水道経路)中に漏水がある場合には、程度にもよるが10分~30分程度で針が動く。
【0015】
針が動いた場合には、どこかで漏水が生じているため、より詳しい検査を適宜おこなうようにする。
また、通常止水栓Pをしめた場合、それから下流の各住戸H等には水は流れないが、仮に閉まりが悪い場合がると漏水検査の正確性が担保されないので、止水栓Pを閉めたときに、水道メータMのパイロットが回っているか否かを確認しておくのが好ましい。
同様に、バルブBの閉まりが悪いことも考えられるので、バルブBを閉めてから、バルブB下流のいずれかの蛇口から所定量の水を流して漏水計Kの減圧を確認し(例えば0.6Mpaであったのが0.55Mpaまで下がるまで水を流し)、次いで、当該蛇口を閉めてからの水圧上昇がないことを確認する(所定時間0.55Mpaのままであることを確認する)。仮に閉まりが悪い場合には水圧が再び0.6Mpaまで上昇し、それがないことを確認することにより適正な漏水検査が可能となる。
【0016】
以上の検査方法は、漏水計Kの接続も止水栓Pの操作もパイロットの監視も総て屋外にておこなうことができるので、簡便に漏水検査が可能となる。検査自体はいつでもおこなえ、各住戸Hには事前に、例えば午前3時からの30分間といった影響の少ないだろう時間帯を通知すればよいので、この点からも集合住宅Sでの影響を最小限にしつつ簡便な検査が可能となる。漏水検査自体は、例えば1年に一回おこなうなどすればよい。
【0017】
以上の例では止水栓Pを閉め散水栓Tをあける態様を示したが、下流の水道使用がない場合には、一つの止水栓だけはあけたままにしておき、その下流の蛇口等を利用して漏水計Kを接続して検査してもよい。調べたい水道経路上に蛇口等がない場合であっても、これにより漏水検査が可能となる。
【0018】
以上の方法によれば、集合住宅Sにおいて漏水検査が事実上なされない区域の漏水検査を簡便にすることができ、差益還元がより適切となって、安価かつ適正な各住戸への水道供給が可能となる。特に、電子メータが導入されていない集合住宅Sへの適用に好適である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
漏水が発見された場合には、水道経路を適宜切り分けて再検査をおこなうことにより、おおよその漏水位置の把握も可能である。
図1
図2