(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】ICタグ
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20230908BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
G06K19/077 156
G06K19/07 230
G06K19/077 144
G06K19/077 200
(21)【出願番号】P 2019135329
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000186566
【氏名又は名称】小林クリエイト株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山内 望由季
(72)【発明者】
【氏名】岩月 文雄
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 一広
【審査官】打出 義尚
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-004323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
G06K 19/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップと、
該ICチップを支持するシート状の樹脂基材と、
前記ICチップを保護するものであって、スポンジ状の素材により形成される1対2枚のシートであり、1枚のシートは前記ICチップを被覆するように前記樹脂基材に接着され、他の1枚は前記1枚のシートが接着される面とは異なる前記樹脂基材の面に接着される保護材と、を備え、
前記樹脂基材は、外周部において前記保護材から露出する露出部を有
しており、
前記露出部は、前記保護材の端部から前記樹脂基材の端部までの距離が、前記保護材1枚分の厚さの25%以下であることを特徴とするICタグ。
【請求項2】
前記保護材は、少なくとも1組の対向する辺を有する多角形であり、
前記露出部は、前記対向する辺のそれぞれに設けられることを特徴とする請求項1記載のICタグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り扱いが容易なICタグに関する。
【背景技術】
【0002】
無線方式で情報を読み書き可能なICタグが、物流や生産における物品管理に広く利用されている。ICタグとして広く普及しているものの1つが、RFID(Radio Frequency Identifier)タグである。
【0003】
ICタグは、情報を保持および入出力するためのICチップおよび無線通信のためのアンテナ(以下、ICチップ及びアンテナを総称して「インレイ」と称す)を備える。インレイは精密な機器であるため外的な衝撃に対して脆弱であり、ICタグについて衝撃が加わることが想定される用途にあっては、無線通信による情報の読み書き機能を維持するためにはインレイを衝撃から保護する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1にはICチップ基盤(インレイ)を発泡スポンジシートによって形成される衝撃吸収材で被覆するICタグ(無線通信媒体タグ)の製造方法が記載されている。このように、スポンジ状の材料によってインレイを衝撃から保護することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スポンジ状の材料は柔軟であるために、人の手で扱うには力加減が難しい。インレイを損傷させる懸念から弱い力で把持した場合、ICタグを落下させてしまう虞がある。他方、しっかり把持しようと強い力をかけた場合、柔軟なスポンジ状の材料は容易に変形してしまうため、インレイに力が及んでこれを損傷させる虞がある。したがって、従来のスポンジ状の材料で被覆した構成のICタグにあっては、微妙な力加減を意識する必要があり、取り扱う上で支障があるという問題点があった。
【0007】
本発明は、前述した問題点等を解決するためになされたものであり、容易に取り扱うことのできるICタグを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のICタグは、ICチップと、該ICチップを支持するシート状の樹脂基材と、前記ICチップを保護するものであって、スポンジ状の素材により形成される1対2枚のシートであり、1枚のシートは前記ICチップを被覆するように前記樹脂基材に接着され、他の1枚は前記1枚のシートが接着される面とは異なる前記樹脂基材の面に接着される保護材と、を備え、前記樹脂基材は、外周部において前記保護材から露出する露出部を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記保護材は、少なくとも1組の対向する辺を有する多角形であり、前記露出部は、前記対向する辺のそれぞれに設けられることを特徴とする。
【0010】
また、前記露出部は、前記保護材の端部から前記樹脂基材の端部までの距離が、前記保護材1枚分の厚さの25%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のICタグによれば、外周部においてスポンジ状の保護材に被覆されない露出部が樹脂基材の外縁に備えられるので、ICタグを取り扱う者は、当該露出部を把持すれば柔らかい保護材ではなく比較的固い樹脂基材によって力加減を気にすることなくICタグを持ち上げることができる。よって、本発明のICタグによれば、故障等の心配をすることなく、容易に持ち運ぶことができるとの効果を奏する。
【0012】
また、多角形の対向する辺に露出部を設けるので、自然な動作によって手指で挟み込むように把持すれば、特に意識せずに手指が露出部に接触する。従って、本発明のICタグによれば、より容易に取り扱うことができるとの効果もある。
【0013】
また、露出部における保護材の端部から樹脂基材の端部までの距離を、保護材の1枚分の厚みの25%以下とされるので、万が一ICタグを落下させたとしても、ほとんどの場合、下方の物体には樹脂基材よりも先に保護材が接触することとなる。従って、把持のために比較的固い露出部を有しつつも、落下先の物体を傷つけることを防止できるとの効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)RFIDタグ1の構成要素を示す模式図、(b)各構成要素を接着してRFIDタグ1を構成した状態を示す模式図
【
図2】RFIDタグ1をスポンジ材4aの面から正視した状態を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願に係る発明(以下「本発明」と称す)の実施の一形態であるRFIDタグ1を説明する。まず、
図1(a)を参照してRFIDタグ1を構成する各要素を説明する。本発明のRFIDタグ1は、スポンジ材3aと、スポンジ材3bと、樹脂シート4と、インレイ2とで構成される。
【0016】
インレイ2は、RFIDに必要な不図示のICチップやアンテナからなり、固有識別子などの情報の保持や通信などの機能を備える公知の部品である。インレイ2は、樹脂シート4に接着される。樹脂シート4は、PET(ポリエチレンテレフタレート)により形成されるシート状の基材である。
【0017】
スポンジ材3aおよびスポンジ材3bは、ウレタン材料により形成される厚さが約2.0mmのシート状の保護材であり、外的な衝撃を緩衝するためのものである。スポンジ材3aは、樹脂シート4のインレイ2が接着された面に、当該インレイ2を完全に被覆するように接着されるものである。
【0018】
スポンジ材3bは、樹脂シート4のスポンジ3aが接着された面とは反対の面に接着されるものである。
【0019】
以上説明したように、樹脂シート4、インレイ2、スポンジ材3a、スポンジ3bを積層接着した状態を
図1(b)に示す。
図1(b)によく表されるように、スポンジ材3aおよびスポンジ材3bは、一の面がほぼ全域で接するように積層される。本実施例のRFIDタグ1にあっては、樹脂シート4をある程度の弾性を有するPETで形成しているため、RFIDタグ1全体としてある程度の変形を許容している。この特性によって、RFIDタグ1は全体としても耐衝撃性を高めている。
【0020】
ここで、樹脂シート4は、タテ方向(
図1において手前左方から奥右方の向きをいう、以下同じ)において、スポンジ材3aおよびスポンジ3bより約1.0mm大きい長さで形成されている。したがって、
図1(b)のように積層接着された状態においては、樹脂シート4が大きい分だけ、スポンジ材3aおよびスポンジ材3bからはみ出す。
図2は、
図1(b)の状態のRFIDタグ1をスポンジ材3aの側から正視した状態を示すものであり、樹脂シート4が部分4aおよび部分4bにおいてスポンジ材3aおよびスポンジ材3bに被覆されず、RFIDタグ1においてそれぞれ約0.5mm突出した状態となる。
【0021】
樹脂シート4の部分4aおよび部分4bが突出していることによって、比較的柔らかいRFIDタグ1を取り扱い場合には、部分4aや部分4bが手指に引っかかり、しっかりとRFIDタグ1を手指で支持することができる。従って、RFIDタグ1を安定して取り扱うことができる。
【0022】
また、部分4aおよび部分4bの突出距離(スポンジ材3a,3bの外縁から樹脂シート4の外縁までの距離)を、スポンジ材3aおよびスポンジ材3bの厚さである2.0mmの25%以下の範囲である約0.5mmとなるように樹脂シート4のサイズを調整している。
【0023】
これは、RFIDタグ1を万が一落下させた場合に樹脂シート4が下方の物体に衝突することによって当該物体を傷つけないための構成であり、部分4aおよび部分4bの突出距離をスポンジ材3aおよび/またはスポンジ材3bの厚さの25%以下とすることで、落下の際にはほとんどの場合において樹脂シート4よりも先にスポンジ材3aかスポンジ材3bが先に下方に接触するようになる。このように部分4aや部分4bのサイズを調整することで、RFIDタグ1による他の物体の損傷を防止することができる。
【0024】
以上、本発明をRFIDタグ1の実施例に基づいて説明したが、本発明の無線通信媒体タグとしては、これに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を適用できることは言うまでもない。
【0025】
例えば、
図3に示すように、RFIDタグ1にフック等に吊り下げるための孔10を設けることも可能である。このとき、部分4a,4bと同様に、孔10においても樹脂シート4の部分4cがスポンジ材3aおよびスポンジ材3bから露出するように構成すれば、孔10にフック等を通した場合にスポンジ材3a,3bを損傷することを防止でき、RFIDタグ1の耐久性を向上することができる。
【0026】
また、実施例では略四角形のRFIDタグ1を説明したが、六角形や八角形などの多角形にも本発明は適用できる。この場合、樹脂シート4がスポンジ材3aやスポンジ材3bから露出する部分としては、対向する2辺のそれぞれに設けられることが望ましい。なぜならば、対向する1対の2辺に手指により支持しやすい箇所を設けることによって、RFIDタグ1を持ち上げる動作をより自然に行うことができるからである。
【0027】
また、実施例では、RFIDタグ1の外周の一部分(部分4a,4b)において樹脂シート4がスポンジ材3aおよびスポンジ材3bから露出することを説明したが、RFIDタグ1の外周の全域において樹脂シート4が露出するように構成することも当然に可能である。この場合、RFIDタグ1を取り扱う者はRFIDタグ1の外周のどこに触れても樹脂シート4に触れられるので、RFIDタグ1の向きを気にすることなく容易に取り扱うことができ、至便である。
【符号の説明】
【0028】
1 RFIDタグ(ICタグ)
2 インレイ
3a,3b スポンジ材(保護材)
4 樹脂シート(樹脂基材)
10 孔