(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】非溢流型浸透システム及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
E03F 1/00 20060101AFI20230908BHJP
E03F 5/10 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
E03F1/00 A
E03F5/10 A
(21)【出願番号】P 2019140135
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】393022920
【氏名又は名称】株式会社アスカ設計
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】秋元 稔夫
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-032695(JP,A)
【文献】実開平06-018425(JP,U)
【文献】特開2012-219591(JP,A)
【文献】特開2002-339438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00
E03F 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端及び基端が開放端であり、少なくとも前記先端が地中の深部透水層に到達せしめられ、少なくとも先端近傍の周面に複数の孔が開穿されてなる内側中空鋼管と、
前記内側中空鋼管の少なくとも前記基端の周囲を囲繞するように設けられてなり、上部及び下部に開口部を有し、
前記下部にリング状底部が形成され、且つ周面にポーラスコンクリートで構成されてなる透水部が形成されたコンクリートで構成された外側筒状構造体と、
前記外側筒状構造体の周囲を囲繞するように配置されてなる砂利層である浅部透水囲繞層と、
を含み、
水は前記内側中空鋼管内を流れて地中の前記深部透水層に浸透し、泥は前記外側筒状構造体にトラップされるようにした、非溢流型浸透システム。
【請求項2】
前記外側筒状構造体が、複数の外側筒状構造体が鉛直方向に直列状に連結せしめられた外側筒状構造体である、請求項1記載の非溢流型浸透システム。
【請求項3】
前記非溢流型浸透システムが、それぞれ鉛直方向に立設せしめられた複数の非溢流型浸透システムが並列状に連結せしめられた連結型の非溢流型浸透システムである、請求項1又は2記載の非溢流型浸透システム。
【請求項4】
前記内側中空鋼管の基端が、前記外側筒状構造体の前記透水部の上端と略同じ高さに設定されてなる、請求項1~3いずれか1 項記載の非溢流型浸透システム。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項記載の非溢流型浸透システムを施工するための施工方法であり、
上部及び下部に開口部を有し、前記下部にリング状底部が形成され、且つ周面にポーラスコンクリートで構成されてなる透水部が形成された、コンクリートで構成された外側筒状構造体を鉛直方向に立設した状態で地中に埋設し、前記外側筒状構造体の周囲に砂利層である浅部透水囲繞層を配置する工程と、
前記外側筒状構造体を貫通して羽根付鋼管杭で地中の深部透水層に到達する掘削孔を掘削する工程と、
前記羽根付鋼管杭を引き抜いた後に前記掘削孔に、先端及び基端が開放端であり、少なくとも前記先端が地中の深部透水層に到達せしめられ、少なくとも先端近傍の周面に複数の孔が開穿されてなる内側中空鋼管を挿入する工程と、
前記内側中空鋼管の少なくとも前記基端の周囲を前記外側筒状構造体が囲繞するように配置する工程と、
を含み、
水は前記内側中空鋼管内を流れて地中の前記深部透水層に浸透し、泥は前記外側筒状構造体にトラップされるようにした、非溢流型浸透システムの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敷地内の雨水などの排水を地下に浸透させるための新規な非溢流型浸透システム及びその施工方法であり、特にガソリンスタンドの敷地内の雨水や洗車などの排水を地下に浸透させるのに好適な非溢流型浸透システム及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浸透システム、浸透井戸や浸透桝などと呼ばれる敷地内の雨水を地下に浸透させるための浸透施設は、地表付近に浸透施設を埋設し、その埋設した地表付近の土壌に排水を浸透させる構造となっている。
【0003】
一方、例えば、関東ローム層などの地盤は、砂‐シルト‐粘土混合土であるが、概ね粘性土であり、透水性が非常に低い。砂‐シルト‐粘土混合土の透水性が非常に低いものは、透水係数が10
-9k(m/s)程度となっている(非特許文献1の
図4-透水性と試験方法との適用性参照)。
【0004】
従って、上記した浸透施設を関東ローム層などの地盤の地表に埋設しても、周囲の土壌は浸透性が非常に低いため、該浸透施設の内部に水を実質的に貯留しているに過ぎず、大雨が降ると、該浸透施設から水が溢れ出てしまうというのが現状である。昨今では、毎年のように全国各地で豪雨が発生しており、周囲に溢れ出ない浸透施設が望まれていた。
【0005】
また、現在の浸透施設では、おおよそ3年立つと浸透施設としての浸透機能を発揮しなくなってしまうため、長い間浸透機能を発揮することができる浸透施設が望まれていた。
【0006】
従来提案されている浸透施設としては、例えば特許文献1や特許文献2に記載されたものがある。
【0007】
これらの特許文献に記載された浸透施設は、周面に多数の孔が開穿され、雨水が排出されるようにした円筒状又は桝状の構造体を地中に埋設する構造である。
【0008】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された貯留浸透システムや雨水地下浸透用桝では、埋設する円筒状又は桝状の構造体の周囲の土壌や砂利層に水が浸透するだけで、それ以上浸透しない。周囲に砂利層を配置しても、そのわずかな砂利層では、大雨の水は浸透しない。また、関東ローム層などの地盤の地表に埋設しても、関東ローム層などの地盤は浸透性が非常に低いために、ほとんど浸透しないことは上述の通りである。
【0009】
従って、前記構造体の周りに存在する土壌や砂利層が水分飽和状態に陥ると、雨水はもはや浸透せずに敷地内に雨水が溢れて、周囲の道路に流れることとなる。
【0010】
また、特許文献1に記載されているように、土などが貯留浸透システム内に侵入しないように、周囲を透水シート(例えば不織布や網)で覆うこと(段落0023)がある。しかしながら、そのような透水シートは、不純物の入っていない水であれば通過するが、塵や泥を含む水では、目詰まりを起こしてしまい、やはり、敷地内に雨水が溢れて、周囲の道路に流れる原因となる。そして、特許文献1のような貯留浸透システムが目詰まりを起こして浸透機能を発揮しなくなっても、修理することができないという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2012-117367
【文献】実開平1-84382
【非特許文献】
【0012】
【文献】JIS A 1218:2009 土の透水試験方法
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、敷地内の雨水などの排水を地下に浸透させるための浸透性に優れ、メンテナンスにより半永久的に浸透機能を発揮させることができ、経年により溢流することもない、新規な非溢流型浸透システム及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の浸透システムは、先端及び基端が開放端であり、少なくとも前記先端が地中の深部透水層に到達せしめられ、少なくとも先端近傍の周面に複数の孔が開穿されてなる内側中空鋼管と、前記内側中空鋼管の少なくとも前記基端の周囲を囲繞するように設けられてなり、上部及び下部に開口部を有し、且つ周面に透水部が形成された外側筒状構造体と、前記外側筒状構造体の周囲を囲繞するように配置されてなる浅部透水囲繞層と、を含む、非溢流型浸透システムである。
【0015】
前記外側筒状構造体がコンクリート製であるのが好適である。
【0016】
前記外側筒状構造体が、複数の外側筒状構造体が鉛直方向に直列状に連結せしめられた外側筒状構造体であるのが好適である。
【0017】
前記浸透システムが、鉛直方向に立設せしめられた複数の浸透システムが並列状に連結せしめられた連結型の浸透システムであるのが好適である。
【0018】
前記内側中空鋼管の基端が、前記外側筒状構造体の前記透水部の上端と略同じ高さに設定されてなるのが好適である。
【0019】
水は内側中空鋼管内を流れて地中の深部透水層に浸透し、泥は外側筒状構造体にトラップされるようにするのが好適である。
【0020】
本発明の非溢流型浸透システムの施工方法は、前記非溢流型浸透システムを施工するための施工方法であり、外側筒状構造体を鉛直方向に立設した状態で地中に埋設し、前記外側筒状構造体の周囲に浅部透水囲繞層を配置する工程と、前記外側筒状構造体を貫通して羽根付鋼管杭で地中の深部透水層に到達する掘削孔を掘削する工程と、前記羽根付鋼管杭を引き抜いた後に前記掘削孔に、先端及び基端が開放端であり、少なくとも前記先端が地中の深部透水層に到達せしめられ、少なくとも先端近傍の周面に複数の孔が開穿されてなる内側中空鋼管を挿入する工程と、前記内側中空鋼管の少なくとも前記基端の周囲を前記外側筒状構造体が囲繞するように配置する工程と、を含む非溢流型浸透システムの施工方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、敷地内の雨水などの排水を地下に浸透させるための浸透性に優れ、メンテナンスにより半永久的に浸透機能を発揮させることができ、経年により溢流することもない、新規な非溢流型浸透システム及びその施工方法を提供することができるという著大な効果を奏する。
【0022】
また、本発明によれば、特にガソリンスタンドの敷地内の雨水や洗車などの排水もしっかりと効率的に地下に浸透させることができる、浸透性に優れた新規な非溢流型浸透システム及びその施工方法である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る非溢流型浸透システムの一つの実施の形態を示す模式断面図である。
【
図2】本発明に係る非溢流型浸透システムの別の実施の形態を示す模式断面図である。
【
図3】本発明に係る非溢流型浸透システムに用いられる外側筒状構造体の一つの実施の形態を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る非溢流型浸透システムに用いられる内側中空鋼管の一つの実施の形態を示す斜視図である。
【
図5】本発明に係る非溢流型浸透システムにおいて地中に孔を掘削するための鋼管杭の一つの実施の形態を示す斜視図である。
【
図6】本発明に係る非溢流型浸透システムにおいて、地中に孔を掘削するまでの様子を示す模式図である。
【
図7】本発明に係る非溢流型浸透システムにおいて、地中に孔を掘削した後、浸透システムを完成させるまでを示す模式図である。
【
図8】本発明に係る非溢流型浸透システムにおいて、鉛直方向に立設せしめられた複数の非溢流型浸透システムが並列状に連結せしめられた非溢流型浸透システムとした一つの実施の形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。図示において、同一部材は同一符号であらわされる。
【0025】
図において、符号10A,10Bは本発明に係る非溢流型浸透システムを示す。非溢流型浸透システム10Aは、
図1によく示されるように、先端12及び基端14が開放端であり、少なくとも前記先端12が地中の深部透水層16に到達せしめられ、少なくとも先端12近傍の周面に複数の孔60が開穿されてなる内側中空鋼管18と、前記内側中空鋼管18の少なくとも前記基端14の周囲を囲繞するように設けられてなり、上部20及び下部22に開口部を有し、且つ周面に透水部24が形成された外側筒状構造体26と、前記外側筒状構造体の周囲を囲繞するように配置されてなる浅部透水囲繞層28と、を含む、非溢流型浸透システムである。
【0026】
本発明では、透水層とは、透水係数が10
-2k(m/s)程度(非特許文献1の
図4-透水性と試験方法との適用性参照)かそれよりも透水性が高い層を指す。
【0027】
深部透水層16とは、例えば8m~20m程度掘削すると到達する砂礫層である。5m~6mぐらい掘削しただけで砂礫層に到達することは稀である。即ち、数m程度の地表に近い地盤(不透水層)よりも深部にある透水性が高い層(透水係数が10-2k(m/s)程度かそれよりも透水性が高い層)が本発明の深部透水層16である。
【0028】
浅部透水囲繞層28とは、外側筒状構造体26を囲繞するように配置される透水層であり、例えば50cm~1m程度の厚さの砂利層が外側筒状構造体26の周面の周囲に配置される。浅部透水囲繞層28は、地表から2~3m程度の比較的浅い地盤に設けられる。砂利が周辺に多い地盤であれば、そのまま浅部透水囲繞層28として適用してもよいし、砂利を入れて砂利層を周囲に配置した後に外側筒状構造体26を埋設したり、外側筒状構造体26を設置した周囲に砂利を入れて浅部透水囲繞層28を形成したりしてもよい。
【0029】
地表から2~3m程度の比較的浅い地盤は、例えば、関東地方では、関東ローム層となっているので、砂‐シルト‐粘土混合土であり、透水性が非常に低く、透水係数が10
-9k(m/s)程度(非特許文献1の
図4-透水性と試験方法との適用性参照)の不透水層である。このため、外側筒状構造体26は地表から2m以内程度の比較的浅い地盤に埋設される。外側筒状構造体26の周囲には、透水性の高い(透水係数が10
-2k(m/s)程度かそれよりも透水性が高い層)の浅部透水囲繞層28を配置する。
【0030】
図示例では、外側筒状構造体26の材質は、コンクリートであり、透水部24は、ポーラス(多孔質)コンクリートで構成されている。透水部24の透水性も高く、透水係数が10-2k(m/s)程度のポーラス(多孔質)コンクリートが好ましい。符号Gは、地面である。
【0031】
図示例では、
図1~
図3によく示されるように、外側筒状構造体26には、非透水性のコンクリート中間環状体30及びコンクリート最上部環状体32が連結されている。コンクリート最上部環状体32の上部には、マンホールの蓋34が載置されている。なお、符号36は、コンクリートである。
【0032】
図1に示した非溢流型浸透システム10Aと
図2に示した非溢流型浸透システム10Bの違いは、非溢流型浸透システム10Aでは、前記外側筒状構造体26が単一であるのに対して、非溢流型浸透システム10Bでは、複数の外側筒状構造体26(図示例では2つ)が鉛直方向に直列状に連結せしめられた外側筒状構造体となっている点が異なる。現場の地盤などの性質や状況に合わせて、外側筒状構造体26を単一とするか複数とするか選択することができる。
【0033】
図示は省略するが、非溢流型浸透システム10A,10Bの他にオイルトラップ施設を設けるのが好ましく、油が取り除かれた水を、例えば、コンクリート最上部環状体32に接続されたパイプ62から流入させるようにすればよい。
【0034】
前記外側筒状構造体26の下部にはリング状底部38が形成されており、泥などは、このリング状底部38に溜まるので、該泥をバキュームなどで吸い取るようにすればよい。
【0035】
内側中空鋼管18は、
図3によく示されるように、中空鋼管本体40とそれに取り付けられた環状羽根42とから構成されており、公知の羽根付き鋼管杭と同様の構成のものが適用できる。
【0036】
一方、後述する掘削孔44を穿孔するための鋼管杭は、
図4によく示されるように、先端46が閉塞された閉塞鋼管杭48を使用する。閉塞鋼管杭48は、先端が閉塞させた中空鋼管本体50とそれに取り付けられた環状羽根52とから構成されており、公知の羽根付き鋼管杭と同様の構成のものが適用できる。
【0037】
図示例では、
図2に示すように、前記外側筒状構造体26が、複数の外側筒状構造体26a,26bが鉛直方向に直列状に連結せしめられた外側筒状構造体とされている。すなわち、単一の外側筒状構造体26a,26bが鉛直方向に直列状に連結せしめられて複合の外側筒状構造体26を形成している。
【0038】
また、
図1に示すように、前記内側中空鋼管18の上端が、前記外側筒状構造体26の前記透水部24の上端と略同じ高さに設定されてなる。
【0039】
本発明の非溢流型浸透システム10A,10Bでは、水は内側中空鋼管18内を流れて地中の砂礫層などの透水層に浸透し、泥は外側筒状構造体26にトラップされて、リング状底部38に溜まるので、該泥をバキュームなどで吸い取るようにすればよい。
【0040】
また、非溢流型浸透システム10A,10Bは一つでもよいが、より浸透効果を得るためには、
図8に示すように、鉛直方向に立設せしめられた複数の非溢流型浸透システム10A,10Bが並列状に連結せしめられた連結型の非溢流型浸透システム56とするのが好適である。
図8において、複数の非溢流型浸透システム56は、連結中空鋼管54で連結せしめられており(
図1及び
図2参照)、サイフォン効果によって、連結中空鋼管54内を水が流れることとなる。
【0041】
本発明の非溢流型浸透システム10A,10Bでは、内側中空鋼管18が透水係数が10-2k(m/s)程度かそれよりも透水性が高い深部透水層16に到達しているので、内側中空鋼管18を流れた水は内側中空鋼管18の先端12及び孔60から深部透水層16に浸透することとなる。また、内側中空鋼管18を流れない水も、外側筒状構造体26の透水部24から、浅部透水囲繞層28に浸透することとなる。
【0042】
内側中空鋼管18の少なくとも先端12近傍の周面に開穿された複数の孔60としては、内側中空鋼管18の先端12側に複数形成されていればよいものであるが、図示例では、
図1~3に示されるように相対向する孔60を先端12から少なくとも1m~2m程度所定の間隔をあけて形成した例を示した。
【0043】
このように、本発明の非溢流型浸透システム10A,10Bでは、地表付近に浸透施設を埋設し、その埋設した地表付近の土壌に排水を浸透させる構造となっていた従来の浸透施設とは根本的に原理が異なり、透水性の高い深部透水層16に浸透させることで、大雨の際にも溢れない構造となっている。このため、従来にはなかった画期的な非溢流型の浸透システムである。
【0044】
また、従来の浸透施設では、3年程度で浸透機能がなくなるが、埋設した後のメンテナンスができないため、そのままにせざるを得なかった。本発明の非溢流型浸透システム10A,10Bでは、内側中空鋼管18を容易に交換可能である。また、外側筒状構造体26も容易に交換可能とされている。このため、メンテナンス性も良好であり、部品を交換することで、半永久的に浸透機能が発揮される。
【0045】
次に、本発明の浸透システム10Bの施工方法を、以下に示す。
【0046】
まず、外側筒状構造体26を鉛直方向に立設した状態で地中に埋設する(
図6(a))。外側筒状構造体26は地中の不透水漕L1に設置されることなる。
図6の例では、外側筒状構造体26の長さは1.5m程度である。不透水漕L1の例としては、例えば粘土層などの透水性の悪い層が挙げられる。しかしながら、外側筒状構造体26の周囲には、外側筒状構造体26を囲繞するように浅部透水囲繞層28を配置して透水性をよくする。浅部透水囲繞層28は例えば砂利層である。外側筒状構造体26を埋設するにあたって周囲が予め砂利層などの浅部透水囲繞層28の場合もあるし、後から砂利層などの浅部透水囲繞層28を配置するようにしてもよい。
【0047】
次に、前記外側筒状構造体26を貫通して羽根付鋼管杭48で地中の透水層L2に到達する孔を掘削機58を使って掘削する(
図6(b))。羽根付鋼管杭48が十分に深部透水層L2に到達するまで掘削する(
図6(c))。
【0048】
羽根付鋼管杭48が深部透水層L2に到達したら羽根付鋼管杭48を引き上げる(
図7(d))。このとき、土壌を確認して羽根付鋼管杭48が深部透水層L2に到達したことを確認する。
【0049】
そして、羽根付鋼管杭48を引き抜いて、先端12が開放され、少なくとも先端近傍の周面に複数の孔60が開穿されてなる内側中空鋼管18に交換する(
図7(e))。
【0050】
内側中空鋼管18を、形成された掘削孔44に挿入する(
図7(f))。
【0051】
このようにして、非溢流型浸透システム10Bが施工される(
図7(g))。
【0052】
本発明の非溢流型浸透システム10A,10Bは、敷地内の雨水などの排水を地下に浸透させるための浸透性に優れた非溢流型浸透システムであり、特にガソリンスタンドの敷地内の雨水などの排水を地下に浸透させるための浸透性に優れた浸透システムである。ガソリンスタンドには、洗車時に生じる排水や、水や油の混じった排水がオイルトラップ(水油分離槽)を経由した後に生じた水、それに加えて雨水など、様々な水が敷地内に排水として生じる。これら排水を地下に浸透させることができないと、敷地内に雨水などの排水が溢れてしまうこととなる。本発明の非溢流型浸透システム10A,Bを用いれば、浸透性に優れるので、これら排水をしっかりと効率的に地下に浸透させることができる。そのため、本発明の非溢流型浸透システム10A,10Bは、特にガソリンスタンドの敷地に設置するのが好適である。本発明の非溢流型浸透システムの施工方法によれば、非溢流型浸透システム10A,Bを好適に施工できる。
【符号の説明】
【0053】
10A,10B:非溢流型浸透システム、12:先端、14:基端、16:深部透水層、18:内側中空鋼管、20:上部、22:下部、24:透水部、26,26a,26b:外側筒状構造体、28:浅部透水囲繞層、30:コンクリート中間環状体、32:コンクリート最上部環状体、34:マンホールの蓋、36:コンクリート、38:リング状底部、40:中空鋼管本体、42:環状羽根、44:掘削孔、46:先端、48:閉塞鋼管杭、50:中空鋼管本体、52:環状羽根、54:連結中空鋼管、56:連結型の非溢流型浸透システム、58:掘削機、60:孔、62:パイプ、G:地面、L1:不透水漕、L2:透水層。