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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】ステンレス製熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/00 20060101AFI20230908BHJP
   F28D 7/08 20060101ALI20230908BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
F28D7/00 A
F28D7/08
F28F21/08 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019195401
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021067441
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000126632
【氏名又は名称】株式会社アタゴ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107906
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 克彦
(72)【発明者】
【氏名】大友 昇
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 正信
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-214471(JP,A)
【文献】特開2007-183062(JP,A)
【文献】特開2012-202609(JP,A)
【文献】特開2005-326063(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0267966(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00 - 13/00
F28F 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に互いにロウ付けされた複数の円筒状の水管と、
前記複数の水管の一方の端に接続された円筒状の第1のヘッダー管と、
前記複数の水管の他方の端に接続された円筒状の第2のヘッダー管と、
前記第1のヘッダー管の一方の端部に接続された水入口管と、
前記第1のヘッダー管の他方の端部に接続された水出口管と、
前記水入口管から流入した水が前記複数の水管を交互に逆方向に流れ、前記第1及び第2のヘッダー管の間で折り返されながら前記水出口管から流出する水流路を形成するように、前記第1及び第2のヘッダー管の内部を仕切る複数の円板状の仕切り羽と、
前記複数の水管に沿って、水管の上面と裏面にそれぞれロウ付けされたサーペンタイン形状を有する一対の冷媒管と、
前記一対の冷媒管の一方の端に接続された冷媒入口ヘッダー管と、
前記一対の冷媒管の他方の端に接続された冷媒出口ヘッダー管と、を備え、
前記水管、前記第1のヘッダー管、前記第2のヘッダー管、前記水入口管、前記水出口管、前記仕切り羽、前記冷媒管、前記冷媒入口ヘッダー管、及び前記冷媒出口ヘッダー管は、ステンレス材で構成されたことを特徴とするステンレス製熱交換器。
【請求項2】
前記第1及び第2のヘッダー管にそれぞれ挿入され、前記複数の仕切り羽が長手方向に沿って取り付けられた一対の支持棒体と、
前記第1及び第2のヘッダー管の開口端をそれぞれ塞ぐ第1及び第2の蓋体と、を備え、
前記一対の支持棒体の両端はそれぞれ、前記第1及び第2の蓋体に挿通されて固定され、前記支持棒体、前記第1蓋体、及び前記第2の蓋体は、ステンレス材で構成されたことを特徴とする請求項1に記載のステンレス製熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒(CO2を含む)と水との熱交換を行うステンレス製熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱交換器は熱伝導率の高い銅材で作製されることが一般的であった。特許文献1、2には銅製のプレート式熱交換器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-180077号公報
【文献】特開2009-074772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、銅製熱交換器においては水等の圧力に対する耐圧を確保するために、銅材は相応の肉厚が必要であり、その結果として熱交換器の重量が大きくなり、また材料費が高くなるという問題があった。
【0005】
また、銅製熱交換器では孔食等の耐食性の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題に鑑み、本発明のステンレス製熱交換器は、長手方向に互いにロウ付けされた複数の円筒状の水管と、前記複数の水管の一方の端に接続された円筒状の第1のヘッダー管と、前記複数の水管の他方の端に接続された円筒状の第2のヘッダー管と、
前記第1のヘッダー管の一方の端部に接続された水入口管と、前記第1のヘッダー管の他方の端部に接続された水出口管と、前記水入口管から流入した水が前記複数の水管を交互に逆方向に流れ、前記第1及び第2のヘッダー管の間で折り返されながら前記水出口管から流出する水流路を形成するように、前記第1及び第2のヘッダー管の内部を仕切る複数の円板状の仕切り羽と、前記複数の水管に沿って、水管の上面と裏面にそれぞれロウ付けされたサーペンタイン形状を有する一対の冷媒管と、前記一対の冷媒管の一方の端に接続された冷媒入口ヘッダー管と、前記一対の冷媒管の他方の端に接続された冷媒出口ヘッダー管と、を備え、
前記水管、前記第1のヘッダー管、前記第2のヘッダー管、前記水入口管、前記水出口管、前記仕切り羽、前記冷媒管、前記冷媒入口ヘッダー管、及び前記冷媒出口ヘッダー管は、ステンレス材で構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のステンレス製熱交換器によれば、ステンレス材の材料強度が銅材より高く、その肉厚を小さくできるので、軽量化と材料費の削減化が可能になる。
【0008】
また、ヘッダー管の内部に仕切り羽を設けて、水管の水流路を2つのヘッダー管の間で折り返すように構成したことで、水と冷媒との熱交換を促進し、銅製熱交換器に匹敵する熱交換効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態によるステンレス製熱交換器の正面図である。
図2】本発明の実施形態によるステンレス製熱交換器の各部を示す図である。(図2(a)は図1のA-A線における断面図、図2(b)は支持棒体の正面図、図2(c)はステンレス製熱交換器の側面図)
図3】本発明の実施形態による2段ステンレス製熱交換器を示す平面図及び正面図である。
図4図3の2段ステンレス製熱交換器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態によるステンレス製熱交換器の構成を説明する。先ず、ステンレス製熱交換器100(1ユニット1段構成)について、図1及び図2に基づいて説明する。
【0011】
図1は、ステンレス製熱交換器100の正面図である。図2は、ステンレス製熱交換器100の各部を示す図であり、図2(a)は図1のA-A線における断面図、図2(b)は支持棒体7の正面図、図2(c)はステンレス製熱交換器100の側面図である。
【0012】
複数(好ましくは数十本という多数)の円筒状の水管1は、隣接する水管1,1の外面が互いに接触するように並設されている。隣接する水管1,1は、長手方向に沿ってロウ付けされおり、これらの水管1が集まって一体化された剛体になっている。これらの水管1の一方の端には円筒状の第1のヘッダー管2が接続され、これらの水管1の他方の端には円筒状の第2のヘッダー管3が接続されている。
【0013】
この場合、各水管1は、第1及び第2のヘッダー管2,3の長手方向に沿って開口された穴に挿入され、ロウ付け等により接続されている。第1のヘッダー管2の開口端は第1の蓋体2A,2Bにより塞がれ、第2のヘッダー管3の開口端は第2の蓋体3A,3Bにより塞がれている。また、第1のヘッダー管2の長手方向の一方の端部には水入口管4が接続され、第1のヘッダー管2の他方の端部には水出口管5が接続されている。
【0014】
第1及び第2のヘッダー管2,3の内部には、管の内部空間を仕切る複数の円板状の仕切り羽6が配置されている。これらの仕切り羽6は、水入口管4から流入した水が複数の水管1を交互に逆方向に流れ、かつ第1及び第2のヘッダー管2,3の間で折り返されながら水出口管5から流出する水流路を形成する。
【0015】
仕切り羽6の配置例を説明すると、第1のヘッダー管2については、水入口管4に最も近い仕切り羽6は、2本の水管1の束と、隣接する4本の水管4の束との間に設けられ、これに続く仕切り羽6は、4本の水管1毎に1枚設けられる。そして、水出口管5に最も近い仕切り羽6は、2本の水管1の束と、隣接する4本の水管1の束との間に設けられる。これに対して、第2のヘッダー管3については、仕切り羽6は4本の水管1毎に1枚設けられる。
【0016】
このように構成すると、第1のヘッダー管2の入口管4から流入した水は、水入口管5に最も近い仕切り羽6に堰き止められるとともに、2本の水管1を通って第2のヘッダー管3に流入する。
【0017】
そして、第2のヘッダー管3に入った水は第2のヘッダー管3の1番目の仕切り羽6によって堰き止められるとともに、隣接する2本の水管1を通って逆方向に流れ、第1のヘッダー管2に還流する。そして、第1のヘッダー管2に還流した水は第1のヘッダー管2の2番目の仕切り羽6によって堰き止められるとともに、隣接する2本の水管1を通って逆方向に流れ、再び第2のヘッダー管3に流入する、という経路を繰り返す。
【0018】
これにより、水入口管4から流入した水が複数の水管1を交互に逆方向に流れ、かつ第1及び第2のヘッダー管2,3の間で折り返されながら水出口管5から流出する水流路を形成することになる。このような仕切り羽6の配置例は一例であって、何本の水管1を1束とするかは、適宜変更することができる。
【0019】
図2(b)に示すように、複数の円板状の仕切り羽6は、第1及び第2のヘッダー管2,3にそれぞれ挿入された支持棒体7,7の長手方向に沿って取り付けられることが好ましい。支持棒体7,7の両端はそれぞれ第1の蓋体2A,2B、第2の蓋体3A,3Bに挿通して固定することができる。これにより、複数の円板状の仕切り羽6を簡単に取り付けることができ、摩耗劣化の際の交換作業も容易である。
【0020】
また、複数の水管1に沿って、その両側の外面にそれぞれサーペンタイン形状を有する一対の冷媒管8,8がロウ付けされている。この場合、一対の冷媒管8,8を複数の水管1に1本おきに重ね合せ、複数の水管1を流れる水と一対の冷媒管8,8を流れる冷媒とが互いに逆方向に流れるように構成することで、熱交換効率を高めることができる。
【0021】
図2(c)に示すように、一対の冷媒管8,8の一方の端の冷媒入口8A,8Aには冷媒入口ヘッダー管9がロウ付け等により接続されている。これにより、冷媒は冷媒入口ヘッダー管9を介して一対の冷媒管8,8にそれぞれ分流するようになっている。
【0022】
また、一対の冷媒管8,8の他方の端の冷媒出口8B,8Bには冷媒出口ヘッダー10がロウ付け等により接続されている。一対の冷媒管8,8も耐圧を高めるため円筒状であることが好ましい。これにより、一対の冷媒管8,8を流れる冷媒は、冷媒出口ヘッダー10を介して合流し外部に流出するようになっている。
【0023】
また、第1及び第2のヘッダー管2,3の側面には、それぞれステンレス製熱交換器100の本体を取り付け部に固定するための固定金具11,11が設けられている。
【0024】
ステンレス製熱交換器100の主要構成部品である、水管1、第1のヘッダー管2、第1の蓋体2A,2B、第2のヘッダー管3、第2の蓋体3A,3B、水入口管4、水出口管5、仕切り羽6、支持棒体7、冷媒管8、冷媒入口ヘッダー管9、及び冷媒出口ヘッダー管10は、すべてステンレス材で構成されている。
【0025】
このように、ステンレス製熱交換器100よれば、ステンレス材の材料強度が銅材より高く、その肉厚を小さくできるので、軽量化と材料費の削減化が可能になる。
【0026】
また、第1及び第2のヘッダー管2,3の内部に仕切り羽6を設けて、水管1の水流路を第1及び第2のヘッダー管2,3の間で折り返すように構成したことで、水と冷媒との熱交換を促進し、銅製熱交換器に匹敵する熱交換効率を得ることができる。さらに、水管1、第1及び第2のヘッダー管2,3は円筒で構成されているので、管内を流れる水に対する耐圧を向上させることができる。
【0027】
次に、2段ステンレス製熱交換器200(2ユニット2段構成)について、図3及び図4に基づいて説明する。図3は、2段ステンレス製熱交換器200を示す図であり、図3(a)はその平面図、図3(b)はその正面図である。図4はこの2段ステンレス製熱交換器200の側面図である。
【0028】
2段ステンレス製熱交換器200は上述のステンレス製熱交換器100を上下2段に積み重ねたものである。図4に示すように、上下2段に積み重ねられた一対(2本)の第1のヘッダー管2の一端には水入口ヘッダー管12が接続され、これらの第1のヘッダー管2の他方の端には水出口ヘッダー管13が接続されている。
【0029】
これにより、水は水入口ヘッダー管12を介して一対の第1のヘッダー管2にそれぞれ分流し、上述のように、複数の水管1を交互に逆方向に流れ、かつ第1及び第2のヘッダー管2,3の間で折り返されながら、水出口ヘッダー管13を介して合流して外部に流出するようになっている。
【0030】
また、図3及び図4に示すように、上下4段に積み重ねられた4本の冷媒管8の一端には、大型の冷媒入口ヘッダー管14が接続され、これらの冷媒管8の他方の端には大型の冷媒出口ヘッダー管15が接続されている。これにより、冷媒は大型の冷媒入口ヘッダー管14を介して4本の冷媒管8にそれぞれ分流し、大型の冷媒出口ヘッダー管15を介して合流して外部に流出するようになっている。
【0031】
また、2ユニットのステンレス製熱交換器100を上下に重ねて保持するための保持金具16がステンレス製熱交換器200の側面に設けられている。
【0032】
このように、ステンレス製熱交換器100を積み重ねて組み立てることにより、コンパクトな構成で熱交換能力を高めることができる。なお、ステンレス製熱交換器100を3段以上に積み重ねて、多段ステンレス製熱交換器を構成することもできる。
【符号の説明】
【0033】
1 水管
2 第1のヘッダー管
2A,2B 第1の蓋体
3 第2のヘッダー管
3A,3B 第2の蓋体
4 水入口管
5 水出口管
6 仕切り羽
7 支持棒体
8 冷媒管
9 冷媒入口ヘッダー管
10 冷媒出口ヘッダー管
11 固定金具
12 水入口ヘッダー管
13 水出口ヘッダー管
14 大型の冷媒入口ヘッダー管
15 大型の冷媒出口ヘッダー管
図1
図2
図3
図4