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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】フローティングセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20230908BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20230908BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
G01N27/416 341N
G01N27/00 Z
G01N27/327 355
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019199646
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021071434
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】田口 耕造
(72)【発明者】
【氏名】グエン トラン ダン
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/024633(WO,A1)
【文献】特開2019-053909(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0033757(US,A1)
【文献】実開昭59-117924(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/49
H01M 8/00-8/2495
C12Q 1/00-3/00
H01M 4/86-4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード電極を支持するカソード支持体と、
アノード電極を支持するアノード支持体と、
前記アノード支持体に支持された前記アノード電極を下面、前記カソード支持体に支持された前記カソード電極を上面として、前記カソード支持体及び前記アノード支持体を水面に浮遊させるフロート部材と、を備え、
前記アノード支持体は、前記アノード電極を、交換膜を間に挟んで前記カソード電極と接するように支持し、
前記アノード支持体は、前記アノード電極を、前記カソード支持体に対して分離可能に支持し、
前記アノード支持体は、前記下面より凹形状である、前記アノード電極を収容する収容空間を有し、
前記アノード支持体は、前記収容空間から前記上面に貫通する通気路を有する
フローティングセンサ。
【請求項2】
前記アノード支持体は、前記収容空間に収容された前記アノード電極を、前記下面から前記収容空間の底部に向けて押さえることで挟持する部材を含む
請求項に記載のフローティングセンサ。
【請求項3】
前記通気路は、前記収容空間に収容された前記アノード電極から伸びる端子を前記収容空間から前記上面までガイドする機能をさらに有する
請求項1又は請求項2に記載のフローティングセンサ。
【請求項4】
前記フロート部材が前記カソード支持体に対して着脱可能である
請求項1~請求項のいずれか一項に記載のフローティングセンサ。
【請求項5】
前記アノード電極は、乾燥状態の微生物を保持する保持体を構成している
請求項1~請求項のいずれか一項に記載のフローティングセンサ。
【請求項6】
前記フロート部材は、前記アノード電極と前記カソード電極とを接続する回路を搭載している
請求項1~請求項のいずれか一項に記載のフローティングセンサ。
【請求項7】
前記フロート部材は、さらに、前記回路によって発電された電力を送信するためのアンテナを搭載している
請求項に記載のフローティングセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フローティングセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
工場排水などの水中にある有機性物質(以下、有機物)は微生物によって分解される。その際に水中酸素が消費されることによって水質が悪化する。そのため、水質保全の観点より、水中に有機物が存在するか否かの検査が重要である。
【0003】
ここで、微生物の代謝反応を利用して有機物である燃料を電気エネルギーに変換することで発電する発電装置が知られている。たとえば、特開2015-95274号公報(以下、特許文献1)や特開2015-204198号公報(以下、特許文献2)は、水中の微生物による有機物の分解によって発電する装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-95274号公報
【文献】特開2015-204198号公報
【発明の概要】
【0005】
このような発電装置を利用して、水中の有機物の有無を検出するセンサとすることが考えられる。しかしながら、この発電装置を利用するには、検査対象とする液を容器に入れ、電極をセットするなどの手間がかかる。
【0006】
一方で、水中に有機物が存在するか否かの検査は、工場などからの排水、プール、公衆浴場、河川など多方でのニーズがある。そこで、簡易な装置で手間なく検査できるフローティングセンサを提供する。
【0007】
ある実施の形態に従うと、フローティングセンサは、カソード電極を支持するカソード支持体と、アノード電極を支持するアノード支持体と、アノード支持体に支持されたアノード電極を下面、カソード支持体に支持されたカソード電極を上面として、カソード支持体及びアノード支持体を水面に浮遊させるフロート部材と、を備え、アノード支持体は、アノード電極を、交換膜を間に挟んでカソード電極と接するように支持し、アノード支持体は、アノード電極を、カソード支持体に対して分離可能に支持する。
【0008】
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態に係るセンシングシステムの概略図である。
図2図2は、実施の形態に係るフローティングセンサの平面概略図である。
図3図3は、実施の形態に係るフローティングセンサの底面概略図である。
図4図4は、実施の形態に係るフローティングセンサのAA断面概略図である。
図5図5は、実施の形態に係るフローティングセンサのBB断面概略図である。
図6図6は、実施の形態に係るフローティングセンサの展開図である。
図7図7は、フローティングセンサに含まれるフロート部材の平面概略図である。
図8図8は、フローティングセンサに含まれるフロート部材の底面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<1.フローティングセンサの概要>
【0011】
(1)本実施の形態に含まれるフローティングセンサは、カソード電極を支持するカソード支持体と、アノード電極を支持するアノード支持体と、アノード支持体に支持されたアノード電極を下面、カソード支持体に支持されたカソード電極を上面として、カソード支持体及びアノード支持体を水面に浮遊させるフロート部材と、を備え、アノード支持体は、アノード電極を、交換膜を間に挟んでカソード電極と接するように支持し、アノード支持体は、アノード電極を、カソード支持体に対して分離可能に支持する。
【0012】
これにより、センシング対象の水面に浮遊させることで、水中の有機物に応じて発電され、その発電によって有機物のセンシングができる。そのため、簡易な装置で手間なく水質を検査できる。
【0013】
(2)好ましくは、アノード支持体は、下面より凹形状である、アノード電極を収容する収容空間を有する。これにより、浮遊させることでアノード電極を水に接触させることができる。
【0014】
(3)好ましくは、アノード支持体は、収容空間に収容されたアノード電極を、下面から収容空間の底部に向けて押さえることで挟持する部材を含む。これにより、簡易な構造でアノード電極を着脱できる。
【0015】
(4)好ましくは、アノード支持体は、収容空間から上面に貫通する通気路を有する。これにより、水面に浮遊させた際に、収容空間内の空気を排気でき、安定して浮遊させることができる。
【0016】
(5)好ましくは、通気路は、収容空間に収容されたアノード電極から伸びる端子を収容空間から上面までガイドする機能をさらに有する。これにより、回路を水面より上に配置することができる。
【0017】
(6)好ましくは、フロート部材がカソード支持体に対して着脱可能である。これにより、取り扱いを容易にできる。
【0018】
(7)好ましくは、アノード電極は、乾燥状態の微生物を保持する保持体を構成している。これにより、アノード電極に保持された微生物による有機物の分解を利用して発電が行われる。
【0019】
(8)好ましくは、フロート部材は、アノード電極とカソード電極とを接続する回路を搭載している。これにより、アノード電極とカソード電極とを容易に電気的に接続することができる。
【0020】
(9)好ましくは、フロート部材は、さらに、回路によって発電された電力を送信するためのアンテナを搭載している。これにより、センシング結果を容易に得ることができる。
【0021】
<2.フローティングセンサの例>
【0022】
図1を参照して、センシングシステム300は、フローティングセンサ100と、受信装置200と、を含む。フローティングセンサ100は、微生物の代謝反応を利用して有機物である燃料を電気エネルギーに変換することで発電する発電装置として機能する。フローティングセンサ100は、センシング対象とする水の水面に浮遊させる。フローティングセンサ100は、水中の有機物である燃料を用いて発電する。フローティングセンサ100は、アンテナ20をさらに有し、発電した電力を放射する。受信装置200は、アンテナ20から放射された電力を受信する。
【0023】
図2図6を参照して、フローティングセンサ100は、微生物が、有機物である燃料を分解する作用を利用して発電を行うものであり、アノード電極12と、カソード電極11と、セパレータとして機能する交換膜13と、を備えている。
【0024】
フローティングセンサ100は、さらに、これらを支持する筐体として、カソード支持体110と、アノード支持体120と、を有する。また、フローティングセンサ100は、カソード支持体110に対してアノード支持体120を固定するための固定体130をさらに有する。これらカソード支持体110、アノード支持体120、及び、固定体130を構成する各部材は、後述するように扁平な板状部材であって、例えばアクリル板などの、軽く加工しやすい素材である。これにより、製造が容易になる。好ましくは、リサイクル可能な素材である。これにより、環境に配慮した製品となる。好ましくは、低コストの素材である。これにより、全体のコストアップを抑えることができる。
【0025】
カソード支持体110は、カソード電極11を支持する。カソード電極11は、酸素の透過性を有する、いわゆるエアカソードである。詳しくは、カソード電極11はカーボンを主成分とする導電性コーティングであって、例えば、多層カーボンナノチューブと活性炭粉末とナフィオン溶液とを混合して乾燥させることによって生成されている。このようにして生成されたカソード電極11は、リサイクル可能である。これにより、環境に配慮した製品となる。なお、カソード電極11は、ステンレスメッシュ10に付加された状態で用いられる。ステンレスメッシュ10を用いることで、カソード電極11の電気接点層を容易に構成できる。
【0026】
カソード支持体110は、支持部材6及び枠材7を含む。支持部材6は、扁平な板状の矩形部材であって、厚みが3mm程度である。支持部材6の中央付近には、開口61が設けられている。また、向き合う両辺近傍に、当該辺に平行して貫通孔62A及び62Bと、貫通孔63A及び63Bとが設けられている。支持部材6の一方の面を上面、他方の面を下面とする。
【0027】
枠材7は、支持部材6よりも小さい、扁平な板状の矩形の枠であって、厚みが2mm程度である。枠材7は、支持部材6の上面に、枠内空間71が開口61と重なり、かつ、貫通孔62A及び62B、並びに、貫通孔63A及び63Bに枠材7が重ならないように設置される。
【0028】
枠内空間71には、カソード電極11及びステンレスメッシュ10が、ステンレスメッシュ10側を上面としてセットされる。従って、枠内空間71及び支持部材6の枠内空間71に接する領域が、上面側から凹形状のカソード電極11及びステンレスメッシュ10の収容空間である第1の収容空間を構成する。
【0029】
枠内空間71の上方は開口している。そのため、図2に示されたように、カソード電極11が付加されたステンレスメッシュ10によって形成されたカソード電極11の電気接点17を上方に露出させることができる。
【0030】
アノード支持体120は、カソード支持体110によって支持されたカソード電極11と、交換膜13を間に挟んで接するようにアノード電極12を支持する。交換膜13は、一例としてナフィオン膜である。交換膜13は、アノード電極12付近で発生したプロトン(水素イオン)を透過可能であり、かつ、アノード電極12付近の水分の透過を防止する。交換膜13は、リサイクル可能である。これにより、環境に配慮した製品となる。
【0031】
アノード電極12は、カーボンを主成分とする導電性コーティングであって、例えば、カーボンシートに活性炭を混合した活性炭シートである。アノード電極12は、ステンレスメッシュ10の両面に付加された状態で用いられる。ステンレスメッシュ10を用いることで、アノード電極12の電気接点層を容易に構成できる。
【0032】
アノード電極12には、有機物を分解する微生物が保持されていてもよい。この場合、アノード電極12は、微生物を保持するための「保持体」を構成している。フローティングセンサ100は、不使用時には乾燥状態であるため、アノード電極12は乾燥状態である。アノード電極12の保持する微生物は、好ましくは、乾燥状態で長期間生存可能な微生物であって、例えば、納豆菌等の枯草菌である。保持される微生物は枯草菌に限定されず、乾燥状態でも生存可能な他の微生物であってもよい。例えば、グルコースを分解する酵母菌、大腸菌等であってもよい。これらの微生物は人体に対して安全で、入手しやすいため、フローティングセンサ100の製造や取り扱いが容易になる。なお、アノード電極12には、有機物を分解する微生物が保持されていなくてもよい。この場合、水中の微生物による有機物の分解を利用して発電が行われる。
【0033】
固定体130は、アノード支持体120が、アノード電極12をカソード支持体110に対して分離可能に支持するように、カソード支持体110に対してアノード支持体120を固定する。固定体130については後述する。
【0034】
アノード支持体120は、上記の支持部材6に加えて、枠材5及び係止部材4を含む。枠材5及び係止部材4は、いずれも、支持部材6に対して固定されておらず、別個の部材であり、後述する固定体130によって固定される。
【0035】
枠材5は、支持部材6と同一、又は、概ね同一の大きさの扁平な板状の矩形の枠であり、厚みが2mm程度である。枠材5は、支持部材6の下面側に接し、枠内空間51が開口61と重なるように、交換膜13を間に挟んで開口61の周りに設置される。枠材5の支持部材6に向く側の面を上面、反対側の面を下面とする。
【0036】
支持部材6、枠材5及び枠材7は、第1の収容空間にカソード電極11及びステンレスメッシュ10が収容された状態で重ねられ、接着剤などによって固定されている。このため、カソード電極11及びステンレスメッシュ10はカソード支持体110に対して確実に固定されている。これにより、取り扱いが容易になる。
【0037】
他の例として、支持部材6、枠材5、及び、枠材7は、固定されていなくてもよい。その場合、固定体130によって支持部材6、枠材5、及び、枠材7は相互に着脱可能である。そのため、カソード電極11及びステンレスメッシュ10はカソード支持体110に対して分離可能となる。これにより、カソード電極11及びステンレスメッシュ10を容易に交換可能となる。
【0038】
枠材5の枠内空間51には、アノード電極12及びステンレスメッシュ10がセット可能である。従って、枠内空間51及び支持部材6の枠内空間51に交換膜13を間に挟んで接する領域が、下面側から凹形状のアノード電極12及びステンレスメッシュ10の収容空間である第2の収容空間を構成する。
【0039】
枠材5の支持部材6の貫通孔62A及び62Bと重なる位置に、それぞれ、枠内空間51と連続した切り欠き52A及び52Bが形成されている。これにより、カソード支持体110とアノード支持体120とを重ねたときに、切り欠き52A及び貫通孔62Aと、切り欠き52B及び貫通孔62Bとが連結し、この2か所が下面から上面まで貫通する。
【0040】
枠材5の、支持部材6に重ねたときに貫通孔63A,63Bに一致する位置に、それぞれ、貫通孔53A,53Bが設けられている。これにより、カソード支持体110とアノード支持体120とを重ねたときに、下面から上面まで、貫通孔53A及び貫通孔63Aと、貫通孔53B及び貫通孔63Bとが連結し、この2か所が下面から上面まで貫通する。
【0041】
係止部材4は、枠材5の枠内空間51にはめ込まれる大きさの扁平な板状部材である。係止部材4は、第2の収容空間にアノード電極12及びステンレスメッシュ10が収容された状態で下面からはめ込まれる。係止部材4は、固定体130によってカソード支持体110に対してアノード支持体120とともに固定される。これにより、係止部材4は、第2の収容空間に収容されたアノード電極12及びステンレスメッシュ10を下方から上方、つまり、第2の収容空間の底部に向けて押さえることで、アノード電極12を挟持する。その結果、第2の収容空間にアノード電極12及びステンレスメッシュ10を係止して下方への落下を防ぐ。
【0042】
係止部材4は、アノード電極12の下方側の露出を確保しつつ下方への落下を防ぐ。そのため、係止部材4は、図2図5に示されたように、枠形状であって、枠内空間41を有する。これにより、アノード電極12の下方側の露出を確保でき、水面に浮遊させたときにアノード電極12が水と接することになる。
【0043】
好ましくは、係止部材4には、枠材5と重ねたときに切り欠き52A及び52Bに対応した位置に、それぞれ、枠内空間41と連続した切り欠き42A及び42Bが形成されている。これにより、枠内空間41が切り欠き42A及び42Bを経て、それぞれ、切り欠き52A及び52Bに連結される。切り欠き52A及び52Bは、上記のように、それぞれ、支持部材6の貫通孔62A及び62Bと連結される。その結果、枠内空間41は、切り欠き42A及び42Bを経て、それぞれ、切り欠き52A及び貫通孔62A、及び、切り欠き52B及び貫通孔62Bによって、上面まで連結して、2本の貫通孔を形成している。
【0044】
枠内空間41が切り欠き52A及び貫通孔62Aと、切り欠き52B及び貫通孔62Bとの2か所を介して上面まで連結して、2本の貫通孔を形成していることで、これら貫通孔は、第2の収容空間内の空気の通気路とすることができる。これにより、第2の収容空間内の空気を排気でき、安定して水面に浮遊させることができる。
【0045】
さらに、2本の貫通孔のうちの一方の貫通孔は、第2の収容空間に収容されたアノード電極12の端子のガイドに兼用される。アノード電極12の端子の先端は、アノード電極12が付加されたステンレスメッシュ10によって形成されたアノード電極12の電気接点16を構成している。これにより、図2に示されたように、下方に固定されたアノード電極12の電気接点16を上面までガイドされる。
【0046】
固定体130は、固定部材2及び固定部材3と、第1固定棒1、第2固定棒8、及び、第3固定棒9と、を含む。固定部材2及び固定部材3は同形状であって、扁平な板状部材で、厚みが2mm程度である。固定部材2及び固定部材3の長手方向に直交する幅方向の長さは、貫通孔53A及び貫通孔63A、及び、貫通孔53B及び貫通孔63Bのいずれの幅よりも小さい。そのため、固定部材2及び固定部材3は、長手方向を、重ねた支持部材6、枠材5、及び、枠材7の厚さ方向と一致させ、支持部材6、枠材5、及び、枠材7を重ねた状態で下面から上面まで連通する貫通孔53A及び貫通孔63A、及び、貫通孔53B及び貫通孔63Bに、それぞれ挿入、抜去が可能である。
【0047】
固定部材2及び固定部材3の一方端には、幅方向に少なくとも一方に突出した突起24,34が形成されている。好ましくは、図6に示されたように、突起24,34は幅方向の両側に突出している。これにより、固定部材2及び固定部材3をそれぞれ貫通孔53A及び貫通孔63A、及び、貫通孔53B及び貫通孔63Bに挿入するときに、貫入状態を維持しやすくなる。
【0048】
固定部材2及び固定部材3には、それぞれ、同じ位置に、第1貫通孔21,31、第2貫通孔22,32、及び、第3貫通孔23,33が設けられている。第1貫通孔21,31、第2貫通孔22,32、及び、第3貫通孔23,33は、その順に下面から上面に配置されている。第1貫通孔21,31は第1固定棒1を渡すための貫通孔、第2貫通孔22,32は第2固定棒8を渡すための貫通孔、及び、第3貫通孔23,33は第3固定棒9を渡すための貫通孔である。
【0049】
固定棒1,8,9は、いずれも、扁平な板状部材で、厚みが2mm程度である。固定棒1,8,9は、それぞれ、長さ方向を支持部材6、枠材5、及び、枠材7の面と平行にして、第1貫通孔21,31、第2貫通孔22,32、及び、第3貫通孔23,33の両方を貫通するように挿入される。そのため、各固定棒1,8,9は、いずれも、重ねた支持部材6、枠材5、及び、枠材7の固定部材2及び固定部材3で挟む方向の幅よりも長い。
【0050】
好ましくは、固定棒1,8,9の長手方向の一方の端部には、図7に示されたように、それぞれ、長手方向に対して角度をなす方向に突出した突起111,81,91が形成されている。これにより、固定棒1,8,9をそれぞれ第1貫通孔21,31で形成される貫通孔、第2貫通孔22,32で形成される貫通孔、及び、第3貫通孔23,33で形成される貫通孔に挿入するときに、貫入状態を維持しやすくなる。
【0051】
第1貫通孔21,31と第2貫通孔22,32との間隔は、枠材7の厚みと、支持部材6の厚みと、交換膜13の厚みと、アノード電極12及びステンレスメッシュ10の厚みと、係止部材4の厚みと、を加えた長さに相当する。これにより、固定棒1,8をそれぞれ第1貫通孔21,31及び第2貫通孔22,32に貫通させることによって、固定されたカソード支持体110及びアノード支持体120が固定棒1,8に厚み方向に挟まれる。
【0052】
固定棒1,8は、いずれも、第1貫通孔21,31及び第2貫通孔22,32に対して挿入、抜去が可能である。各部材4~7を上下に重ね、アノード電極12及びステンレスメッシュ10を第2の収容空間にセットして固定棒1,8をそれぞれ第1貫通孔21,31及び第2貫通孔22,32に挿入することで、カソード支持体110に対してアノード支持体120が固定される。つまり、フローティングセンサ100を容易に構築できる。なお、以降における固定されたカソード支持体110及びアノード支持体120は、固定棒1,8を挿入することによってカソード支持体110に対してアノード支持体120が固定されている状態のものを指す。
【0053】
また、固定棒1,8をそれぞれ第1貫通孔21,31及び第2貫通孔22,32から抜去することによって、カソード支持体110からアノード支持体120が分離し、アノード電極12及びステンレスメッシュ10が第2の収容空間から離脱する。これにより、フローティングセンサ100を容易に分解できるとともに、アノード電極12を容易に交換できる。
【0054】
フローティングセンサ100は、フロート部材14をさらに有する。フロート部材14は、扁平な板状の形状であって、例えば発砲スチロールなどの水に浮く素材で形成されている。厚みは、例えば5mm程度である。
【0055】
図7及び図8に示されたように、フロート部材14は、開口141を有する。開口141は、支持部材6のサイズ以上のサイズであって、開口141に、固定されたカソード支持体110及びアノード支持体120が嵌め込み可能である。
【0056】
好ましくは、フロート部材14は、図8及び図9に示されたように、開口141の周囲の少なくとも一部に庇部142が形成されている。庇部142は、フロート部材14の上面側又は下面側の一方が他方の開口141の縁よりも内側に張り出したものである。図7及び図8の例では、上面側に張り出した庇部142が形成されている。このような庇部142が形成されていることによって、庇部142と反対側、この例では下面側から固定された状態のカソード支持体110及びアノード支持体120を開口141に嵌め込むと、庇部142がカソード支持体110の縁部に干渉し、嵌め込み状態が維持される。その結果、フロート部材14からのカソード支持体110及びアノード支持体120に抜け落ちを防止できる。
【0057】
第1貫通孔21,31と第3貫通孔23,33との間隔は、フロート部材14の厚みに相当する。固定棒1,9は、いずれも、固定されたカソード支持体110及びアノード支持体120の固定部材2及び固定部材3で挟む方向の幅よりも長い。これにより、フロート部材14の開口141に固定されたカソード支持体110及びアノード支持体120を嵌めこみ、固定棒1,9をそれぞれ第1貫通孔21,31及び第3貫通孔23,33に貫通させることによって、カソード電極11及びステンレスメッシュ10を支持したカソード支持体110と、アノード電極12及びステンレスメッシュ10を支持したアノード支持体120とが、交換膜13を介して固定棒1,8に厚み方向に挟まれる。
【0058】
固定棒1,9は、いずれも、第1貫通孔21,31及び第3貫通孔23,33に対して挿入、抜去が可能である。固定棒1,9をそれぞれ第1貫通孔21,31及び第3貫通孔23,33から抜去することによって、カソード支持体110及びアノード支持体120をフロート部材14から離脱させることができる。これにより、カソード支持体110及びアノード支持体120がフロート部材14に対して分離可能に支持される。つまり、フロート部材14がカソード支持体110に対して着脱可能となる。これにより、フローティングセンサ100の取り扱いが容易になる。
【0059】
フロート部材14の上面には、図2図7に示されたように外部回路(負荷抵抗)18が配置され、上面に導出されたアノード電極12の電気接点16及びカソード電極の電気接点17を接続する。これにより、アノード電極12とカソード電極11とは外部回路(負荷抵抗)18を介して電気配線により電気的に接続される。
【0060】
フローティングセンサ100は、カソード支持体110及びアノード支持体120を固定してフロート部材14に装着した状態で、カソード支持体110を上側、アノード支持体120を下側として水面に置いて用いられる。フローティングセンサ100は、フロート部材14の浮力によって水面を浮遊する。すなわち、フロート部材14は、アノード支持体120に支持されたアノード電極12を下面、カソード支持体110に支持されたカソード電極11を上面として、カソード支持体110及びアノード支持体120を水面に浮遊させる。
【0061】
フローティングセンサ100を水面に浮遊させると、アノード電極12が水中に位置し、水に接する。この状態において、アノード電極12に保持された微生物、又は、水中の微生物によって水中の有機物が分解されることによって、プロトン及び電子が生成される。電子は、アノード電極12で回収され、外部回路18を経由してカソード電極11に移動する。プロトンは、交換膜13を透過してカソード電極11に移動する。カソード電極11において、接している外気から得られる酸素と、カソード電極11に移動した電子及びプロトンとの反応により水が発生する。
【0062】
フロート部材14の上面に配置された外部回路18には、図2に示されたように、さらに、アンテナ20が接続されている。図2では、アンテナ20は通信モジュール20Aに含まれ、通信モジュール20Aが外部回路18に接続されている。
【0063】
アンテナ20からは、発電された電力が放射される。この放射を受信装置200で受信することによって、フローティングセンサ100で発電されたことが検出される。また、受信した電力に基づいて、フローティングセンサ100における発電量を検出することもできる。これにより、センシング対象とする水中に有機物が所定量あることを検出できる。
【0064】
フローティングセンサ100を利用したセンシングシステム300は、遠隔で水質を管理するのに好適に用いられる。例えば、工場などからの排水、プールや公衆浴場、河川などの水質管理が想定される。この場合、屋外や公衆スペースで用いられることから、フローティングセンサ100が紛失したり破損したりすることも考えられる。こういった場合でも、フローティングセンサ100が軽量で、比較的安価な素材で形成され、また、構築、分解も容易であることから、容易に用いることができる。
【0065】
<3.付記>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 :第1固定棒
2 :固定部材
3 :固定部材
4 :係止部材
5 :枠材
6 :支持部材
7 :枠材
8 :第2固定棒
9 :第3固定棒
10 :ステンレスメッシュ
11 :カソード電極
12 :アノード電極
13 :交換膜
14 :フロート部材
16 :電気接点
17 :電気接点
18 :外部回路
20 :アンテナ
20A :通信モジュール
21 :第1貫通孔
22 :第2貫通孔
23 :第3貫通孔
24 :突起
31 :第1貫通孔
32 :第2貫通孔
33 :第3貫通孔
34 :突起
41 :枠内空間
42A :切り欠き
51 :枠内空間
52A :切り欠き
52B :切り欠き
53A :貫通孔
53B :貫通孔
61 :開口
62A :貫通孔
62B :貫通孔
63A :貫通孔
63B :貫通孔
71 :枠内空間
81 :突起
91 :突起
100 :フローティングセンサ
110 :カソード支持体
111 :突起
120 :アノード支持体
130 :固定体
141 :開口
142 :庇部
200 :受信装置
300 :センシングシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8