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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】熱分解油を浄化する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C10G 25/03 20060101AFI20230908BHJP
   C10G 21/14 20060101ALI20230908BHJP
   B01J 20/12 20060101ALI20230908BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
C10G25/03
C10G21/14
B01J20/12 A
B01J20/34 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020517511
(86)(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 US2018052102
(87)【国際公開番号】W WO2019067311
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】15/717,264
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502127766
【氏名又は名称】アールジェイ リー グループ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RJ LEE GROUP,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レバイン,アラン エム.
(72)【発明者】
【氏名】モナコ,スティーブン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リー,リチャード ジェイ.
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-512424(JP,A)
【文献】特表2011-506709(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0352204(US,A1)
【文献】特開平10-204446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
B01J 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分解油を処理するための装置であって、
前記熱分解油と非極性溶媒の混合物を収容するための容器と、
前記容器から送られる前記混合物を収容して、不溶性の極性化合物を含む前記油に含まれる不要な成分を活性化されたアタパルジャイト粘土に結合するための粘土カラムと、
前記粘土カラムで処理された前記混合物を収容するための第1のタンクと、
前記第1のタンク内で前記混合物から前記非極性溶媒を蒸発させて生成油を得るための第1の加熱器と、
前記粘土カラムを加熱する第2の加熱器と、
前記第1の加熱器により蒸発させられた前記非極性溶媒の蒸気を収容して凝縮するための凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮された前記非極性溶媒が送られる第2のタンクと、
を含んでおり、
前記第2の加熱器により前記粘土カラムが加熱されると、前記アタパルジャイト粘土内の残留非極性溶媒が蒸発して、前記粘土カラムから前記第2のタンクに送られる、装置。
【請求項2】
熱分解油を処理するための装置であって、
前記油と非極性溶媒の混合物を保持するための第1の容器と、
前記混合物を収容して、不溶性の極性化合物を含む前記油に含まれる不要な成分を活性化されたアタパルジャイト粘土に結合するための粘土カラムと、
前記粘土カラムを通過する前記混合物を収容するための第2の容器であって、前記油は蒸発しないが、前記混合物を前記非極性溶媒が蒸発する温度まで加熱するように構成された第2の容器と、
前記非極性溶媒の蒸気を凝縮する凝縮器と、
前記第2の容器に油のみが残るまで前記凝縮された蒸気を収容するための第3の容器と、
運転サイクルの後、前記アタパルジャイト粘土を再使用のために浄化するための粘土浄化材料を前記粘土カラムに送る送達手段と、
を含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用タイヤ又はその他の廃棄物の熱処理によって得られる黒色の熱分解油を、より明るくてより黄色い色に変えるための方法及び装置に関する。本発明はまた、熱分解油から極性化合物を除去し、熱分解油中の多環芳香族炭化水素(PAH)のレベルを低減する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄された車両用タイヤ等の炭化水素材料を熱分解する方法を用いて、有用な副産物を生成することが知られている。これは、廃棄タイヤが大量に蓄積されるという問題を最小限に抑えるだけでなく、経済的に価値のある生成物を生成するものである。例えば、米国特許第6,833,485号を参照のこと。熱分解処理によって、炭素生成物、液体炭化水素生成物、及び可燃性ガスが生成され得る。
【0003】
米国特許第6,835,861号は、粘土及び金属触媒を用いて、炭化水素材料の熱分解を行う低エネルギーな方法を開示している。これは、固体炭素質物質、油、及び可燃性ガス生成物を生成する。当該特許に記載の方法によって生成されたカーボンブラックは検知可能な程度のPAHを含まないと考えられていた。カーボンチャーは燃料源として用いることができると考えられている。高純度のカーボンブラックは、トナー及び電気センサーに使用可能であると考えられていた。この方法により生成された液体油及びガスは、システムから容易に分離できると考えられている。
【0004】
米国特許第8,263,038号及び第8,512,643号には、タイヤの熱分解によって得られたリサイクルカーボンブラックから揮発物を除去する方法が記載されており、当該方法では、リサイクルカーボンブラックを脱凝集して黒色粒子のサイズを低減し、黒色粒子に対向気流を当てて処理温度を上昇させ、揮発物の放出を増大させる。
【0005】
無酸素下のタイヤゴムなどのゴムを加熱することによって生成される熱分解油は、硫黄及びアミン臭気が強い黒色の油を生成する。この油は原油とよく似た外観を有しているが、その成分は著しく異なる。
【0006】
原油及び熱分解油は何れもペンタン(C5)、ヘプタン(C7)及びその他のアルカン不溶物を含んでいる一方で、原油の不溶物はパラフィン及びアスファルテンからなる。熱分解油の不溶物は、安息香酸及び含酸素成分(oxygenates)、硫黄化合物及び窒素化合物のような極性化合物からなる。
【0007】
タイヤ熱分解油は現在、粗燃料として使用されるか、又は油井の堆積物を取り除くためにダウンウェル(down well)用途に用いられている。蒸留によって油の留分を集めることが知られているが、非常に軽い留分を除いては、蒸留物は黒色であり、不快な硫黄/アミン臭気を含む。黒色は伴出した炭素であることが示唆されてきたが、黒色を除去するために濾過が試みられたが、これは成功しなかった。
【0008】
公知の先行技術があるに拘わらず、前述の問題に対する解決策について非常に現実的なかなりの要求が依然として存在している。
【発明の概要】
【0009】
本発明の方法及び装置は、好ましくない黒色を、透明な暗い黄褐色、好ましくは透明な黄色、最も好ましくは明るく透明な黄色へと効果的に低減させる。本発明はまた、好ましくない硫黄/アミン臭気を有意に低減する効果ももたらす。最後に、好ましい最終製品は、PAHのレベルが低減され、PAHベンゾ[a]ピレンが1ppm未満のものである。
【0010】
油又は粘土残留物から溶媒を除去するための温度は、溶媒の沸点から概ね油留分の沸点までの範囲である。例えば、ヘキサンの場合、未分留の熱分解油の処理に用いられる場合の温度範囲は約68℃乃至100℃である。この上限を超えると、この工程にかかる費用が増大し、相殺関係にある同等の利点がもたらされないことがわかっている。好ましい温度範囲は68℃乃至78℃であり、最も好ましい温度範囲は68℃乃至70℃である。
【0011】
本発明の目的は、熱分解油を効率的に浄化する方法及び装置を提供することである。
【0012】
本発明の更なる目的は、このような浄化を達成するための効率的で経済的な手段を提供することである。
【0013】
本発明の更に別の目的は、処理された熱分解油として所望される透明な黄色い熱分解油を生成することである。
【0014】
本発明の別の目的は、不快な硫黄/アミン臭気のない熱分解油を生成することである。
【0015】
本発明の更に別の目的は、処理された油に存在するPAHの量を低減することである。
【0016】
本発明の更に別の目的は、望ましい明るく黄色い熱分解油を提供するとともに、熱分解油の商品価値を高めるために、望ましくない硫黄/アミン臭気を除去し、PAHを低減することである。
【0017】
本発明のこれらの目的及び他の目的は、下記の詳細な説明及び添付の請求の範囲を参照することによって容易に明らかにされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、蒸留-溶出方法を用いており、本発明にて使用可能な装置の形態の概要図である。
【0019】
図2図2は、強制流動-溶出方法を用いており、本発明にて使用可能な装置の概要図である。
【0020】
図3図3は、乾燥中の粘土における、重量パーセント対温度対微分重量(derivative weight)パーセントの関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、極性化合物を除去する方法及び装置を提供する。除去は、極性化合物が、パリゴルスカイトとしても知られる活性化されたアタパルジャイトと結合するように条件を調整することによって実現される。他の材料も多数試したが、有意義な成功は得られなかった。これらの材料には、限定ではないが、ベントナイト、モンモリロナイト、活性炭、木炭、カーボンブラック及び珪藻土が含まれていたが、望ましい結果を生じさせることはできなかった。
【0022】
本発明はまた、極性溶媒を用いて粘土を再生して、次にそれを再活性化する方法及び装置を意図している。再活性化は、上記の極性溶媒を用いるものの、溶出用と同じ装置及び方法を用いて実現できる。
【0023】
本発明の方法では、まず未分留の熱分解油又は熱分解油留分の極性を調整し、汚染物質を粘土に吸着させた後に、調整溶媒からクリーンな油を溶出及び分離する。
【0024】
極性は、非極性溶媒で希釈することによって調整することができる。非極性溶媒は、アルカン又は幾つかのアルカンを組み合わせたものであってよい。アルカンは、4乃至10個の炭素(ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン又はデカン)を有するものであってよく、好ましくは、ペンタン、ヘキサン、及びヘプタン(C5-C7)であり、最も好ましいアルカンはヘキサン(C6)である。必要であれば、2以上のアルカンの組合せをこの方法において使用してよい。
【0025】
不要な成分はアタパルジャイト上に吸着される。これらの不要な成分は、安息香酸、キノロン、ステアリン酸オキシジェネレート(steric acid oxygenates)、硫黄含有化合物、及びニトロゲン含有化合物等の極性化合物のアルカン不溶物を含む。本発明の方法及び装置は、極性化合物を除去する。これは、不溶物を沈殿させて濾過又は遠心分離し、極性化合物を活性化されたアタパルジャイト粘土と結合することによって達成される。極性化合物を除去することによって、黒色及び不快な臭気が除去されるだけでなく、熱分解油はその物理的及び化学的な性質を維持する。その後、非極性溶媒にクリーンな油が溶出される。次に、蒸発によって油から溶媒が分離される。その後、例えばアセトン、メタノール、テトラヒドロフラン又はジメチルホルムアミド、或いはその他の極性溶媒と共に再利用するためにカラムが清浄にされる。
【0026】
重い部類の熱分解油は、種々の多環芳香族炭化水素(PAH)を含むことが知られており、その中でもベンゾ[a]ピレンはこの化合物群の中で最も発癌性が高い。本願発明が、油の色を透明にして臭気を低減し、PAHのレベルを低減したことがわかった。
【0027】
本願発明の方法は、C4乃至C10(ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン及びデカン)からなる群から選択されるアルカン又はアルカン混合物を使用することによって、油から黒色物質を沈殿させて吸着して除去することを含む。好ましいアルカンは、C5乃至C7のアルカン(ペンタン、ヘキサン及びヘプタン)からなる群から選択されるものである。最も好ましいアルカンはヘキサンである。
【0028】
カラムに装填される油はアルカン溶媒で希釈され、その割合は体積比で約1:2乃至1:30(油対アルカン)、好ましくは約1:4乃至1:15、最も好ましくは、約1:6乃至1:10である。希釈された油は、沈殿を可能にするために、室温で少なくとも30分間放置することにより寝かされる。寝かされた希釈油は、カラムに装填する前にろ過又は遠心分離して沈殿物を除去するか、沈殿物を除去せずにカラムに装填されてよい。油はゆっくりとベッドの上部に装填され、流体はカラムの底部から収集される。例えば、これには、空隙容量1リットルにつき、毎時約0.22リットルのカラム流量が必要になるであろう(空隙容量が約18.2リットルのカラムを使用した場合、毎時4リットルのカラム流量に相当する)。流量は、空隙容量1リットルにつき毎時約0.1乃至0.6リットルカラム流量の範囲であり、好ましくは、空隙容量1リットルにつき毎時約0.2乃至0.4リットルカラム流量の範囲であり、最も好ましくは、空隙容量1リットルにつき毎時0.3乃至3.5リットルカラム流量の範囲である。
【0029】
粘土と浄化される油との比は、重量で約4:1乃至20:1、又は、好ましくは重量で約6:1乃至15:1、最も好ましくは重量で約6:1乃至10:1の範囲である。重量が大きいほど回収が向上する。
【0030】
図1は、熱分解油を処理する他の方法(本明細書では「蒸留-溶出方法」と称する)を示す。この方法は、図2に関連して本明細書にて説明される強制流動-溶出方法よりもわずかに好ましい。強制流動-溶出方法よりも優れている点の一つは、蒸留-溶出法はより少ない溶媒を使用するため、経済的により有利に使用できることである。
【0031】
図1及び図2の方法及び装置の何れも本発明を効果的に実施するが、図1のほうが好ましい。蒸留-溶出方法及び装置(図1に示す)は、溶出フェーズにおいてより少ない溶媒を使用してカラムから材料を溶出し、洗浄フェーズにおいてより少ない溶媒を使用する。また、カラムは蒸留された溶媒で溶出及び洗浄されるため、通常、強制流動-溶出法よりも高い温度で作動する。これにより、溶出と洗浄の効率が向上する。
【0032】
油の溶出に関しては、カラムを洗浄するための効果的で代替可能な2つの手順がある。第1の手法の例では、ヘキサンが、例えばポンプによってベッドの上部に送られ、重力によって下に移動させられる。カラムを流れる流量は、カラムの底にあるバルブを使用して毎時約4リットルに制御され、最大30ベッドボリュームのベッドを洗浄する。溶出液は、抽出された油とヘキサンとを含む。油とヘキサンは容器に集められ、ヘキサンを蒸発させるのに充分(68℃)であるが油を蒸発させるほど高くない温度で蒸留することによって互いに分離される。再生油は、蒸留残渣(distillation bottoms)で回収される。次にカラムが洗浄され、次の作動サイクルの準備が整えられる。
【0033】
第2の溶出プロセスの例では、蒸留システムを使用して、新たに蒸留されたヘキサンがカラムの上部に送られる。このシステムでは、カラムの溶出底部は、ヘキサンを蒸発させるのに充分(68℃)であるが油を蒸発させるほど高くない温度に加熱される。
【0034】
溶出又は洗浄に使用されている特定の溶媒及び特定の熱分解油留分の蒸発温度は、(1)特定の溶媒の沸点と、特定の熱分解油留分における最も揮発性の高い化合物の沸点より32℃高い温度との間の温度、又は(2)好ましくは、特定の溶媒の沸点と、油留分中の最も揮発性の高い化合物の沸点より10℃高い温度との間の温度、又は(3)最も好ましくは、特定の溶媒の沸点と、油留分中の最も揮発性の高い化合物の沸点より2℃高い温度との間の温度である。
【0035】
例えば、未分留の熱分解油を浄化するために使用されるヘキサンについては、範囲は、(1)68℃乃至100℃、又は(2)好ましくは68℃乃至78℃、又は(3)最も好ましくは68℃乃至70℃である。その他のアルカンについての範囲は当業者に知られており、容易に決定することができる。
【0036】
このようにして、溶媒は連続的にカラムの上部に送られる。カラムを流れる流量は、カラムの底部にあるバルブを使用して、毎時約4リットルに制御され、最大30ベッドボリュームのベッドを洗浄する。
【0037】
このプロセスと既知の標準的なカラムクロマトグラフィープロセスとの違いは、本発明の蒸留-溶出方法はより少ない溶媒とより高い温度とを用いることである。ソックスレーは、固形物(本発明の場合は粘土)を連続的に浸して、結合又は捕捉された物質を除去するのに使用される。それは、クロマトグラフィーに必要とされるように、トップダウン方式で物質を通して溶媒を流さないため、本発明のプロセスには適さない。別のプロセスでは、ファイバーシンブル(fiber thimble)により、残留物をるつぼ(crucible)の側面に流出させることができる。これによって、抽出物の一部が粘土で滞留することなく容器の底に運ばれるため、それらの間の接触が最小化される。
【0038】
本発明のプロセスは、洗浄中に油から極性物質を除去し、カラムから極性物質を除去するのにより効果的であることがわかった。
【0039】
図1のシステムの運転サイクルの例を考察する。図1に示すシステムは、溶液を送るために蒸発と重力を用いており、後で説明される図2に示す強制流動溶出方法の約10分の1乃至15分の1の溶媒を使用する。この蒸留-溶出方法の例で同程度の浄化を達成するために、油とヘキサンは、カラムに装填される前に、最も好ましくは1:6乃至1:10の比で混合される。油とヘキサンは容器13内で混合されて、約2時間以上放置される。容器13内で沈殿する固体は、濾過又は遠心分離によって除去されてよく、或いは、この流体中に懸濁したままにされてよい。液体は重力により、空隙容量1リットルにつき毎時約0.22リットルのカラム流量で、バルブ24を通ってカラム17に供給される。底部バルブ26は、約1乃至2時間の接触時間中、閉められたままである。バルブ26が開かれて、タンク20内における油とヘキサンの混合物に相当する量のヘキサンが、熱交換器14によって、ヘキサンの場合は少なくとも68℃である沸騰温度に維持される。ヘキサン蒸気は、管16を通って移動し、凝縮器10によって凝縮される。凝縮されたヘキサンは、バルブ24を通ってカラム17に滴下し、カラム17を通って、次にバルブ26からタンク20内に滴下する。流量は、バルブ26を用いて、好ましくは空隙容量1リットルにつき毎時約0.1乃至0.6リットルカラム流量に制御される。油の溶出プロセスは、約10乃至30のカラムのベッドボリュームのヘキサンがカラム17を通って溶出された後に完了する。
【0040】
この時点で、バルブ23が開かれて、バルブ24及びバルブ26が閉められる。タンク20の内容物を少なくとも68℃に加熱し、蒸発によってタンク20からヘキサンを完全に除去する。ヘキサンは、タンク20で蒸発し、管16、そして開いているバルブ23を通り、凝縮器10及び凝縮器12によって凝縮されてタンク18に送られる。次に、タンク20内の生成油は、バルブ25を介してタンク21に排出される。その後、バルブ25が閉められ、タンク21が清浄なタンクと交換される。バルブ24及びバルブ26を閉めてカラム17を隔離して、熱交換器15を使用してカラムを加熱し、凝縮器11を通ってタンク18内へと残留ヘキサンを蒸発させることにより、残留ヘキサンが粘土から除去される。
【0041】
次に、カラムが極性溶媒で洗浄される。粘土を洗浄するための好ましい溶媒はアセトンである。アセトンの場合には、バルブ23、バルブ25及びバルブ26が閉位置にある間に、タンク20に移される。バルブ24は凝縮器10に対して開いている。タンク20は、交換器14を用いてアセトンの沸点まで加熱される。アセトンは、タンク20から蒸発して管16を通過し、その後凝縮器10において凝縮され、バルブ24を通り、カラム17上に滴下してカラム17を通過する。底部バルブ26は開いており、タンク20への滴下が可能である。これは、約30ベッドボリュームについて継続される(カラム内の粘土の体積がベッドボリュームである)。プロセスのこの部分のために、タンク18及びタンク21が清浄なタンクに交換される。バルブ24及びバルブ26は閉められ、バルブ23は開かれている。タンク20は、アセトンが完全に蒸発するまで加熱され続ける。アセトン蒸気は管16を通って移動し、凝縮器10及び凝縮器12を通して凝縮される。回収されたアセトンはタンク18に集められる。タンク20に集められた廃棄物は、廃棄又は別用途使用のためにバルブ25を通してタンク21に排出される。その後タンクは洗浄され、次のバッチのための初期準備が整えられる。
【0042】
図2は、本発明の方法で使用可能な強制溶出装置の例を概略的に示したものである。この例では、油とヘキサンの比率は1:16である。油-ヘキサン混合物は容器40内にあり、約2時間放置される。容器40内で沈殿する固体は、濾過又は遠心分離によって除去されてよく、或いは、この流体中に懸濁されたままであってよい。液体は、ポンプ31により、バルブ33を通ってカラム22上に圧送される。油はゆっくりとベッドの上部にポンプで圧送られて、空隙容量1リットル当たり毎時約0.22リットルのカラム流量で流体がカラム22の底から回収される(空隙容量が約18.2リットルのカラムを使用した場合、毎時4リットルのカラム流量に相当する)。材料がカラム22上に装填されると、カラム底部バルブ36が約1乃至2時間閉じられて、液体と粘土の間で十分な接触時間が与えられる。次に、バルブ36が開かれ、バルブ33が回し開かれて、ポンプ31によって、ヘキサンがタンク41から空隙容量1リットル当たり毎時約0.22リットルカラム流量の速度でカラム22上に圧送される(空隙容量が約18.2リットルのカラムを使用した場合、毎時4リットルのカラム流量に相当する)。次に、バルブ36が開かれ、バルブ37が閉じられ、バルブ35が開位置にあり、タンク27に入る状態で、タンク41からヘキサンのカラムに装填された油-ヘキサンの体積の約30倍でカラムが洗浄される。タンク27は加熱ジャケット28によって約68℃に加熱され、蒸気は凝縮器44によって凝縮される。タンク27に油のみが残るまで、ヘキサンはタンク45に回収される。次に、浄化された油がバルブ37を通ってタンク29に送られる。バルブ33、バルブ35、バルブ36、バルブ37は閉じられており、バルブ32は開いている。ジャケット42を加熱し、ジャケット43を冷却して、残留ヘキサンをカラム22から除去し、粘土を乾燥させることができる。タンク45はすべての回収されたヘキサンを保持し、ヘキサンは、最終的には再利用のためにポンプ30によってバルブ38を通してタンク41に圧送される。
【0043】
溶出又は浄化に使用されている特定の溶媒及び特定の熱分解油留分の蒸発温度は、(1)特定の溶媒の沸点と、特定の熱分解油留分中の最も揮発性の高い化合物の沸点より32℃高い温度との間の温度、又は(2)好ましくは、特定の溶媒の沸点と、油留分中の最も揮発性の高い化合物の沸点より10℃高い温度との間の温度、又は(3)最も好ましくは、特定の溶媒の沸点と、油留分中の最も揮発性の高い化合物の沸点より2℃高い温度との間の温度である。
【0044】
例えば、未分留の熱分解油を浄化するためにヘキサンが使用される場合、範囲は、(1)68℃乃至100℃、又は(2)好ましくは68℃乃至78℃、又は(3)最も好ましくは68℃乃至70℃である。
【0045】
実施例で使用された4リットルの油を処理できたカラムベッドは、直径約18インチ、高さ24インチで、容量が約34リットルであった。ベッドは、約16キログラム、即ち約32リットルの粘土で満たされて、約20リットルのヘキサンで濡れていた。カラム配置は、上部と底部にあるスクリーンプレートとグラスウールで構成され、下部に流れを制御するバルブが付いていた。
【0046】
図2に示すように、バルブ38が開かれ、タンク45の中身がポンプ30を通してタンク41に圧送される。移送が完了すると、バルブ38が閉じられる。タンク41は、アセトンを含むタンクと交換される。アセトンは、ポンプ31を使用して、タンク41からバルブ33を通って圧送され、カラム22に供給される。アセトンはカラム22の材料を抽出し、それを開いたバルブ36を通してタンク27に送る。
【0047】
タンク27に収集された材料は蒸発させられて、タンク45にアセトンが回収される。開いたバルブ35を通過する蒸気は、冷却ジャケット44によって凝縮され、タンク27に廃棄物残留物のみが残るまでアセトンが回収される。洗浄工程の温度範囲は以上に記載した通りである。タンク27からの廃棄物は、廃棄又は別用途での使用のために、バルブ37を介してタンク29に排出される。次に、タンクは、次の運転サイクルのために初期設定条件へと補充される。
【0048】
アタパルジャイト粘土は、活性化するとより効率的に機能することがわかった。活性化は、重量が変化しなくなるまでそれを150℃で乾燥することで達成されてよい。図3を参照すると、TGAを使用して、10℃/分のランプレートで700℃まで適切な温度に到達することができた。粘土は150℃を超える温度で乾燥させることができるが、その温度では粘土は分解し、その性能の多くを失う傾向がある。図3は、アタパルジャイト試験の熱重量分析(TGA)の結果を示しており、重量損失率を温度の関数として示している。このプロファイルは、自由水及び水和水が発生する温度を示している。高温の水和水を飛ばすと、浄化残留物の粘土の容量が減少することがわかった。
【0049】
粘土を再使用のために浄化する場合、アセトン、メタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、又は目的に適した別の溶媒からなる群から選択されるような極性溶媒を使用することが好ましい。現在のところ、この目的のために好ましい極性溶媒はアセトンである。浄化では、カラムの底部にあるバルブを使用して、カラムを通る流量が1時間あたり約4リットルに制御され、最大30ベッドボリュームでベッドが洗浄される。
【0050】
プロセスが完了した後、極性溶媒で洗浄することにより粘土が再生されてよい。
【0051】
好ましいアルカンは4乃至10個の炭素を有するものであるが、プロセスにおいて、それらは個別に使用されてもよく、例えばヘキサンとブタンが組み合わせて使用されてもよいことが理解されるであろう。また、ヘキサンを誘導する目的で、好ましいアルカンを個別に使用したが、4乃至10個の炭素を有する好ましい群の中の他のアルカンが個別に使用されてよい。
【0052】
本発明の特定の実施形態を例示の目的で説明してきたが、当業者であれば、その詳細については、添付の特許請求の範囲に規定された発明から逸脱することなく多くの変形をなし得ることは明らかであろう。
図1
図2
図3