(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】服薬管理デバイス
(51)【国際特許分類】
A61J 7/00 20060101AFI20230908BHJP
B65D 83/04 20060101ALI20230908BHJP
B65B 69/00 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
A61J7/00 C
B65D83/04 D
B65B69/00 A
(21)【出願番号】P 2022137736
(22)【出願日】2022-08-31
(62)【分割の表示】P 2018247375の分割
【原出願日】2018-12-28
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000206185
【氏名又は名称】大成化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三橋 博一
(72)【発明者】
【氏名】野間 翔太
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-188186(JP,A)
【文献】特開2000-168856(JP,A)
【文献】特開2018-070234(JP,A)
【文献】特開2009-255966(JP,A)
【文献】国際公開第2009/018382(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 7/00
B65D 83/04
B65B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTP包装シートを保持し、保持された前記PTP包装シートに包装されている薬剤を押し出すカセット部と、前記カセット部から排出される前記薬剤を感知する電装部とから構成される服薬管理デバイスであって、
前記カセット部は、
前記PTP包装シートを固定する固定部と、
前記固定部に固定された前記PTP包装シートから薬剤を押し出すボタンが形成された押出部を少なくとも一つ有するボタンカバーと、
前記固定部を所定の位置に固定すると共に、前記ボタンカバーを回動可能に保持し、前記ボタンにより前記PTP包装シートから押し出された薬剤を収納する空間が形成された収納部と
を備え、
前記電装部は、
前記収納部から前記薬剤を排出する排出口と、
前記排出口から排出される前記薬剤を感知するセンサーと
を備え
、
前記固定部は、
前記収納部と反対側に突出するように、断面V字形状を有し、
前記PTP包装シートを載置する載置部と、
前記薬剤が包装された薬剤ポケットを前記押出部側に露出させる開口が形成された蓋部と
を備え、
前記PTP包装シートは、前記載置部と前記蓋部との間に挟持されることを特徴とする服薬管理デバイス。
【請求項2】
前記固定部には、前記開口が複数の列をなして形成され、
前記開口の列の間には、稜線部が位置することを特徴とする請求項
1記載の服薬管理デバイス。
【請求項3】
前記載置部には、前記載置部の前記収納部側を囲んで形成された壁部が形成され、
前記壁部には、前記排出口の側に向かって前記載置部の短手方向両サイドの前記壁部の幅を狭めながら傾斜する誘導部が形成されていることを特徴とする請求項
1または
2記載の服薬管理デバイス。
【請求項4】
前記載置部の前記収納部側には、柱状の支持部が所定の間隔で複数形成されていることを特徴とする請求項
1~
3の何れか一項に記載の服薬管理デバイス。
【請求項5】
前記固定部は、前記載置部と前記蓋部とを回動可能に接続するヒンジ部を備えることを特徴とする請求項
1~
4の何れか一項に記載の服薬管理デバイス。
【請求項6】
前記ボタンカバーの前記稜線部に対応する位置には、少なくとも一つの孔部が形成され、
前記稜線部には前記孔部に挿入される突出リブが形成されていることを特徴とする請求項
2記載の服薬管理デバイス。
【請求項7】
前記固定部には、前記収納部から前記薬剤を排出する前記排出口の位置において底面側に向けて突出し、前記排出口の高さを規制する規制部が形成されていることを特徴とする請求項1~
6の何れか一項に記載の服薬管理デバイス。
【請求項8】
前記排出口の底面には、前記収納部側から前記排出口の外側に向けて立ち上がるスロープ部が形成され、
前記スロープ部のスロープ面には曲面加工が施されていることを特徴とする請求項1~
7の何れか一項に記載の服薬管理デバイス。
【請求項9】
前記電装部には、第1係合部が形成され、
前記カセット部には、前記第1係合部と係合し、前記電装部をスライドさせて固定するための第2係合部が形成され、
前記電装部には、複数の前記カセット部が交換可能に装着されることを特徴とする請求項1~
8の何れか一項に記載の服薬管理デバイス。
【請求項10】
前記押出部は、
軸部と、
前記軸部を支点として回動するアームと、
前記アームの前記PTP包装シート側に配置された少なくとも一つの前記ボタンとを備え、
前記ボタンには、
薬剤を押下する第1リブと、
前記第1リブよりも前記軸部から離れた位置に位置する第2リブとが形成され、
前記アームを回動させることにより、時間差を置いて前記第1リブ、前記第2リブを前記薬剤に当接させ、段階的に前記薬剤を押し出すことを特徴とする請求項1記載の服薬管理デバイス。
【請求項11】
前記第2リブの高さは前記第1リブの高さよりも低いことを特徴とする請求項
10記載の服薬管理デバイス。
【請求項12】
前記アームは、前記軸部からの距離がそれぞれ異なる複数の前記ボタンを備えることを特徴とする請求項
10または
11記載の服薬管理デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、PTP包装シートに包装された錠剤などの服薬を管理する服薬管理デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、新薬を開発する過程において、新薬の有効性、安全性、および医学的な効果などを実証するための治験と呼ばれる臨床試験が行われている。この治験の際には、信頼性の高い服薬記録が求められることから、高度の服薬管理を行うことが必要である。そのため、治験にて所定の結果が得られなかった場合には、新薬の効果に問題があるのか、または治験者が薬を時間通りにきちんと服用していなかったことが原因なのかが明確に判明できなければならない。
【0003】
このような服薬管理を行う装置として、たとえば、PTP包装シートの錠剤の位置に対応する位置に押出しキーを設け、予め設定された服薬時間間隔内に予め設定された回数押出しキーが押下されないとブザーで警報する錠剤取出し容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。この錠剤取出し容器においては、ブザーで警報することにより、薬を飲み忘れることなく時間通りに服薬することを促すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の錠剤取出し容器においては、すべての押出しキーにブザーを作動するためのスイッチを設けているため、構造が複雑になる上に製造コストが増大するという問題があった。
【0006】
また、上述の錠剤取出し容器においては、押出しキーの先端下面に配置された突出し棒を用いて錠剤を押し出しているが、錠剤が破れたアルミシートに挟まり錠剤ポケットから完全に押し出されないおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、高精度の服薬管理ができる簡単な構造で安価な服薬管理デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る服薬管理デバイスは、
PTP包装シートを保持し、保持された前記PTP包装シートに包装されている薬剤を押し出すカセット部と、前記カセット部から排出される前記薬剤を感知する電装部とから構成される服薬管理デバイスであって、
前記カセット部は、
前記PTP包装シートを固定する固定部と、
前記固定部に固定された前記PTP包装シートから薬剤を押し出すボタンが形成された押出部を少なくとも一つ有するボタンカバーと、
前記固定部を所定の位置に固定すると共に、前記ボタンカバーを回動可能に保持し、前記ボタンにより前記PTP包装シートから押し出された薬剤を収納する空間が形成された収納部と
を備え、
前記電装部は、
前記収納部から前記薬剤を排出する排出口と、
前記排出口から排出される前記薬剤を感知するセンサーと
を備え、
前記固定部は、
前記収納部と反対側に突出するように、断面V字形状を有し、
前記PTP包装シートを載置する載置部と、
前記薬剤が包装された薬剤ポケットを前記押出部側に露出させる開口が形成された蓋部と
を備え、
前記PTP包装シートは、前記載置部と前記蓋部との間に挟持されることを特徴とする。
【0009】
このような構成を有する服薬管理デバイスを用いることにより、高精度に服薬管理を行うことができる。また、センサーを排出口近傍に設けることにより、押出部ごとにセンサーを設ける必要がなくなるため、簡単な構造を実現でき製造コストを抑制することができる。
【0010】
また、薬剤を押し出す際においてPTP包装シートが位置ずれしないように的確に固定することができる。
また、断面V字形状の固定部が押出部の旋回角に対応するため、アームが回動する空間を広く取ることができる。
【0011】
前記固定部には、前記開口が複数の列をなして形成され、
前記開口の列の間には、稜線部が位置することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る服薬管理デバイスは、
前記載置部には、前記載置部の前記収納部側を囲んで形成された壁部が形成され、
前記壁部には、前記排出口の側に向かって前記載置部の短手方向両サイドの前記壁部の幅を狭めながら傾斜する誘導部が形成されていることを特徴とする。
これにより、服薬管理デバイスを傾けた際に、収納部に収納された錠剤が誘導部によって排出口に誘導され、錠剤を的確に排出口に案内することができる。
【0013】
また、本発明に係る服薬管理デバイスは、
前記載置部の前記収納部側には、柱状の支持部が所定の間隔で複数形成されていることを特徴とする。
これにより、押出部を押下して錠剤ポケットから錠剤を押し出す際に、固定部が歪まないようにすることができる。
【0014】
また、本発明に係る服薬管理デバイスは、
前記固定部が、前記載置部と前記蓋部とを回動可能に接続するヒンジ部を備えることを特徴とする。
これにより、PTP包装シートを的確に挟持することができる。
【0015】
また、本発明に係る服薬管理デバイスは、
前記ボタンカバーの前記稜線部に対応する位置には、少なくとも一つの孔部が形成され、
前記稜線部には前記孔部に挿入される突出リブが形成されていることを特徴とする。
これにより、ボタンカバーと固定部の位置関係が固定され、押出部の位置がずれないようにすることができる。
【0016】
また、本発明に係る服薬管理デバイスは、
前記固定部には、前記収納部から前記薬剤を排出する前記排出口の位置において底面側に向けて突出し、前記排出口の高さを規制する規制部が形成されていることを特徴とする。
これにより、排出口において複数の薬剤が重なることがなく、薬剤の向きも規制できる。よって、センサーで服薬される薬剤の個数を1錠ずつ正確に感知することができる。
【0017】
また、本発明に係る服薬管理デバイスは、
前記排出口の底面には、前記収納部側から前記排出口の外側に向けて立ち上がるスロープ部が形成され、
前記スロープ部のスロープ面には曲面加工が施されていることを特徴とする。
【0018】
この場合、薬剤はスロープの位置に応じて傾きを変えながら曲面に沿って移動するため、排出口前方の薬剤と後方の薬剤とで移動速度に差が生じる。したがって、前方の薬剤が取り出された直後、後方の薬剤がすぐには排出されないため、1錠ずつ正確に薬剤をカウントすることができる。
【0019】
また、本発明に係る服薬管理デバイスは、
前記電装部には、第1係合部が形成され、
前記カセット部には、前記第1係合部と係合し、前記電装部をスライドさせて固定するための第2係合部が形成され、
前記電装部には、複数の前記カセット部が交換可能に装着されることを特徴とする。
これにより、さまざまなサイズのPTP包装シートに対応できるようになる。
【0020】
また、本発明に係る服薬管理デバイスは、
前記押出部は、
軸部と、
前記軸部を支点として回動するアームと、
前記アームの前記PTP包装シート側に配置された少なくとも一つの前記ボタンと
を備え、
前記ボタンには、
薬剤を押下する第1リブと、
前記第1リブよりも前記軸部から離れた位置に位置する第2リブと
が形成され、
前記アームを回動させることにより、時間差を置いて前記第1リブ、前記第2リブを前記薬剤に当接させ、段階的に前記薬剤を押し出すことを特徴とする。
【0021】
このように、梃子の原理を利用し時間差を置いて第1リブ、第2リブを押出対象物に当接させ、段階的に押出対象物を押下することにより、確実に押出対象物を押し出すことが
できる。
【0022】
また、本発明に係る服薬管理デバイスは、
前記第2リブの高さが前記第1リブの高さよりも低いことを特徴とする。
これにより、たとえば押出対象物が底面をアルミシートで塞がれた保持シートに封入されている場合、まず第1リブで押出対象物を押下してアルミシートを破り、続いて第2リブで押し出し切れていない押出対象物を押し出すことができる。
【0023】
また、本発明に係る服薬管理デバイスは、
前記アームが、前記軸部からの距離がそれぞれ異なる複数の前記ボタンを備えることを特徴とする。
これにより、小さな力で複数の押出対象物を同時に押し出すことができる。特に、複数の押出対象物を組み合わせて押し出す場合などに有効である。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る発明によれば、高精度の服薬管理ができる簡単な構造で安価な服薬管理デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施の形態に係る服薬管理デバイスを示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る服薬管理デバイスを構成するカセット部の分解斜視図である。
【
図3】実施の形態に係るカセット部を構成する固定部を示す斜視図である。
【
図4】実施の形態に係るカセット部においてボタンカバーを開いた状態を示す斜視図である。
【
図5】実施の形態に係る押出部を示す斜視図である。
【
図6】実施の形態に係る押出部を示す六面図である。
【
図7】実施の形態に係る服薬管理デバイスを構成する電装部を示す斜視図である。
【
図8】実施の形態に係る服薬管理デバイスにおいて、扉部を開いて錠剤を排出する通路を露出した状態を示す部分斜視図である。
【
図9】実施の形態に係る服薬管理デバイスにおいて、扉部とストッパー部の開閉する状況およびセンサーで錠剤を検出する状況を示す図である。
【
図10】実施の形態に係る服薬管理デバイスにおいて、押出部を押下して錠剤を押し出す状態を示す概要図である。
【
図11】実施の形態に係る服薬管理デバイスにおいて、錠剤を取り出す状況を説明する断面図である。
【
図12】他の実施の形態に係る、複数のボタンを備えた押出部を示す図である。
【
図13】他の実施の形態に係る固定部を下方から視た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る服薬管理デバイスについて説明する。
図1は、実施の形態に係る服薬管理デバイスを上方から視た斜視図である。なお、本明細書内で表記される、「上」、「下」、「右」、「左」とは、各図面に示された状態における上下左右の方向を意味する。
【0027】
図1に示すように、服薬管理デバイス2は、PTP包装シートを保持し、保持されたPTP包装シートに包装されている錠剤を押し出すカセット部4、カセット部4から排出される錠剤を感知する電装部6、およびカセット部4を保護するためのカバー8から構成されている。
【0028】
図2は、カセット部4の分解斜視図である。
図2に示すように、カセット部4は、PTP包装シート10を固定する固定部12、ボタンカバー14、収納部16を備えている。ここで、固定部12は、断面V字形状に形成され、
図3(a)に示すように、折り畳んだ状態でPTP包装シート10を固定する。この折り畳んだ状態において、固定部12は、後述する開口12k、12mが複数の列を成して形成され、開口12k、12mの列の間に位置する後述する稜線部12j、12lが収納部16と反対側に突出する断面V字形状に形成されている。なお、固定部12は、載置部12a、蓋部12b、載置部12aと蓋部12bとを回動可能に接続するヒンジ部12c、および張出部12dを備えており、短手方向において左右非対称(稜線部12j、12lを挟んだ両サイドが非対称)の形状を有している。このように、短手方向において左右非対称の形状を有することにより、固定部12の向きを間違えないようにすることができる。
【0029】
載置部12aは、PTP包装シート10が載置される側の部材であり、短手方向の中央に、上方(収納部16と反対側)に突出する稜線部12jが形成されている。また、載置部12aの稜線部12jを挟んだ両サイドには、PTP包装シート10を収納部16に落下させるための開口12kがそれぞれ1列形成されている。また、
図3(b)に示すように、載置部12aのヒンジ部12cと反対側の長辺には、後述する爪部12fと係合する爪受部12eが形成されている。
【0030】
蓋部12bは、ヒンジ部12cを介して載置部12aに回動可能に接続されている。蓋部12bもまた、短手方向の中央に、上方に突出する稜線部12lが形成され、この稜線部12lには、
図3(a)に示すように、上方に突出し後述する孔部23(
図4参照)に挿入される突出リブ13が所定の間隔で複数形成されている。また、蓋部12bの稜線部12lを挟んだ両サイドには、載置部12aに載置されたPTP包装シート10の錠剤ポケット10aを後述する押出部14c側に露出させる開口12mがそれぞれ1列形成されている。また、蓋部12bのヒンジ部12cと反対側の長辺には、載置部12aの爪受部12eに係合する爪部12fが形成されている。
【0031】
なお、本実施の形態では、開口12k、12mが2列である場合を例に説明するが、開口12k、12mは、稜線部12j、12lを挟んだ両サイドに形成されていれば、2列以上の複数列が形成されていてもよい。
【0032】
張出部12dは、載置部12aの長手方向の一方の端部に張り出しており、下方には、後述する排出口42(
図11参照)の底面側に向けて突出し排出口42の高さを規制する規制部12pが形成されている。
【0033】
ボタンカバー14は、固定部12に固定されたPTP包装シート10の錠剤ポケット10aから錠剤を押し出すための部材であり、係合部14a、中央軸部14b、押出部14cを備えている。ここで、係合部14aには、爪部15が形成され、この爪部15を後述する収納部16の爪部17に係合させることで、ボタンカバー14が収納部16に装着される。また、それぞれの係合部14aの長手方向の端部には突起部19が形成されており、この突起部19を後述する収納部16の孔部21に嵌合することで、
図4に示すように、ボタンカバー14を収納部16に対して回動可能に装着することができる。
【0034】
中央軸部14bは、
図4に示すように、長手方向両端部に位置する係合部14aと一体的に接続され、内部に押出部14cを回動可能に支持する軸部14hを備えている。なお、中央軸部14bの長手方向両端部に位置する二つの係合部14aは、中央軸部14bのみによって接続されており、ボタンカバー14の構造体は、平面視H状の形状を有している。また、中央軸部14bの底面において、蓋部12bの稜線部12lに対応する位置には、ボタンカバー14を閉じた際に突出リブ13が挿入される孔部23が形成されている。
【0035】
押出部14cは、中央軸部14bを挟んだ両側に複数個接続されている。ここで、
図5は、押出部14cを下方から視た斜視図である。
図5に示すように、押出部14cは、軸部14hで回動可能に接続されたアーム22aと、アーム22aに一体的に成形されたボタン22bを備えている。このボタン22bにより、固定部12に固定されたPTP包装シート10の錠剤ポケット10aから錠剤が押し出される。また、ボタン22bには、錠剤ポケット10aから錠剤を押し出す第1リブ22cと第1リブ22cよりも軸部14hから離れた位置に位置し、かつ第1リブ22cよりも高さが低い第2リブ22dが形成されている。
【0036】
図6は、押出部14cの六面図である。すなわち、
図6(a)は、押出部14cの正面図、
図6(b)は、押出部14cの右側面図、
図6(c)は、押出部14cの平面図、
図6(d)は、押出部14cの底面図、
図6(e)は、押出部14cの背面図である。なお、左側面図は、右側面図と同様に表れるため省略している。
【0037】
収納部16は、ボタンカバー14を回動可能に保持する部材であり、
図2に示すように、短手方向の両上端部には、ボタンカバー14の突起部19が嵌合される孔部21が形成されている。また、収納部16は、ボタン22bによりPTP包装シート10から押し出された錠剤を一時的に収納する空間26が形成された平面視矩形状の部材である。収納部16の長手方向の一端には、固定部12を所定の位置に固定すると共に、錠剤の通路となる切欠28が形成され、一の長手側面には、電装部6の凸状部38(
図7参照)を挿入し、電装部6をスライドさせて固定するための溝部32が側面に設けられている。
【0038】
電装部6は、
図7に示すように、錠剤を排出する排出部36とカセット部4に接合するための接合部37とを備えている。排出部36は、断面扇形状の部材であり、スライドさせることで開閉可能な扉部40を備えている。ここで、
図8(a)、(b)は、扉部40を開いた状態を示す部分斜視図である。
図8(a)、(b)に示すように、排出部36には、収納部16から錠剤を排出する通路となる排出口42が形成され、排出口42の底面には、収納部16側から排出口42の外側に向けて立ち上がるスロープ面43を有するスロープ部44が形成されている。スロープ面43には、半径5mm以上30mm以下の曲率の曲面加工が施されている。
【0039】
また、排出部36には、
図9(a)に示すように、さらに、センサー46とストッパー部45が配置されている。ここで、センサー46は、図示しない照射部から射出されるレーザー光50の受光加減によって排出口42から排出される錠剤10bを感知する。たとえば、錠剤10bが排出口42を通過し、錠剤10bによってレーザー光50が遮られたときに錠剤10bが排出されたことを感知する。ストッパー部45は、扉部40と共に開閉し、
図9(b)に示すように、扉部40を閉ざすとストッパー部45も閉じる。これにより、錠剤10bが排出口42を通過しなくなるため、扉部40を閉じたときには錠剤10bがセンサー46に感知されなくなる。
【0040】
また、接合部37のカセット部4側の一の長手側面には、
図7に示すように、収納部16の溝部32に挿入される凸状部38が形成されている。また、接合部37の内部には、センサー46と接続される図示しないプリント基板、センサー46で錠剤が感知されたことを外部のパソコンなどに送信する図示しない通信部などが内蔵されている。
【0041】
なお、本発明において、固定部12(支持部)、および押出部14c(軸部14h、アーム22a、ボタン22b)は、梃子の原理を用いて押出対象物である錠剤を押し出す押出機構を構成している。押出対象物は、押出部14cにより押し出される。かかる押出機構自体は、服薬管理デバイス2以外にも利用することができる。この場合、押出対象物は必ずしも錠剤である必要がなく、PTP包装シート10を上述したような固定部12に固定する必要もない。この場合、押出対象物が保持された保持シート(PTP包装シート10に相当)を支持部(固定部12に相当)で支持しておき、軸部14hを支点としてアームを回動させ、ボタン22bで押出対象物を押し出す。
【0042】
次に、図面を参照して、実施の形態に係る服薬管理デバイス2の組立手順および使用方法について説明する。服薬管理デバイス2を組み立てる場合、まず、
図2に示す、ボタンカバー14と収納部16を用意する。そして、ボタンカバー14の突起部19を収納部16の孔部21に嵌合し、ボタンカバー14を収納部16に対して回動可能に装着する。なお、収納部16の両孔部21間には弾性があるため、ボタンカバー14を収納部16に組
付けやすい。また、突起部19は、先端が太くなるように形成することで孔部21から抜け難くすることができる。
【0043】
次に、固定部12を用意し、
図3(b)に示すように、開いた状態の固定部12の載置部12aにPTP包装シート10を載置する。なお、PTP包装シート10は、中央を山形に折り曲げて載置部12aに載置する。次に、PTP包装シート10の錠剤ポケット10aの位置に蓋部12bの12mの位置を合わせた状態で固定部12を折り畳み、蓋部12bの爪部12fを載置部12aの爪受部12eに係合させて載置部12aと蓋部12bとの間にPTP包装シート10を挟持する。これにより、固定部12がロックされてPTP包装シート10が容易に取り外せなくなる。また、PTP包装シート10が山形に折り曲げられた状態を維持したまま固定されるため、本来平板上状のPTP包装シート10が元に戻ろうとして蓋部12bが浮くことを防止することができる。また、PTP包装シート10の錠剤ポケット10a以外の部分が固定部12で覆われた状態になるため、錠剤10bの押し出し時においてボタン22bの位置ずれを防止できる。
【0044】
次に、PTP包装シート10を挟持した状態の固定部12の張出部12dの位置を切欠28の位置に合わせ、切欠28に張出部12dを挟み込んで収納部16の空間26内に固定部12をセットする。固定部12がセットされたら、ボタンカバー14を回動させて閉じ、ボタンカバー14の爪部15を収納部16の爪部17に係合させる。ボタンカバー14が収納部16に被せられると、ボタンカバー14に形成された孔部23に固定部12に形成された突出リブ13が挿入される。これにより、ボタンカバー14と固定部12の位置関係が固定され、押出部14cの位置がずれないようにすることができる。以上により、カセット部4の組み立てが完了する。
【0045】
次に、電装部6を用意し、収納部16の溝部32に電装部6の凸状部38を挿入する。そして、カセット部4を排出部36側にスライドさせて電装部6をカセット部4に固定し、カバー8を被せて服薬管理デバイス2を完成させる。このように、電装部6に対してカセット部4を装着できるようにすることにより、複数のカセット部4を交換することが可能となる。これにより、さまざまなサイズのPTP包装シート10に対応できるようになる。
【0046】
服薬管理デバイス2を使用する場合、
図10(a)に示すように、治験者は、所望する錠剤の位置に対応する押出部14cを押下する。押出部14cが押下されると、アーム22aが軸部14hを支点として回動し、まず第1リブ22cが錠剤ポケット10aに当接する。ここで、固定部12は、断面V字形状に形成され、押出部14cの旋回角に対応しているため、アーム22aが回動する空間を広く取ることができる。また、ボタンカバー14の長手方向には、中央軸部14bのみが構造体として存在し、押出部14cを押下する指を妨げる枠のような構造体が存在しないため、押出部14cを押下しやすくすることができる。また、アーム22aの回動には梃子の原理が利用され、アーム22aの外側が力点として押下されるため、小さな押下力で錠剤10bを押し出すことができる。
【0047】
第1リブ22cによって錠剤10bが押下されると、錠剤10bによって錠剤ポケット10aの下側を塞ぐアルミシート10dが破られる。さらにアーム22aが回動すると、第2リブ22dが錠剤ポケット10aに当接した後に錠剤10bを押下し、
図10(b)に示すように、錠剤10bが空間26内に落下する。このように、梃子の原理を利用し時間差を置いて第1リブ22c、第2リブ22dを錠剤ポケット10aに当接させ、段階的に錠剤を押下することにより、確実に錠剤10bを押し出すことができる。このため、錠剤10bが破れたアルミシート10dに挟まって錠剤ポケット10aから押し出し切れないという事態を防止できる。
【0048】
なお、固定部12が断面V字形状に形成されていると、
図10(a)に示すように、傾斜した錠剤ポケット10a内の錠剤10bが滑り落ちて左右に離れた状態で固定されて位置が明確になるため、押出部14cを押下した際に確実に錠剤10bを押し出すことができる。また、収納部16と固定部12の間に所定の高さの空間が確保できるため、押し出された錠剤10bが破れたアルミシート10dに引っ掛かったままになることなく、確実に収納部16に収納される。
錠剤10bが押し出された後は、押出部14cの高さ位置が低くなるため、治験者は、どの錠剤10bを押し出したかを一目で認識することができる。
【0049】
次に、治験者は、服薬管理デバイス2を傾けて、収納部16の空間26内に収納されている錠剤10bを取り出す。
図11は、錠剤10bを取り出す状況を説明する服薬管理デバイス2の断面図である。排出口42が下側を向くようにして服薬管理デバイス2を傾け、扉部40をスライドさせて排出口42を開放すると、
図11に示すように、錠剤10bが排出口42側に移動する。ここで、張出部12dに形成された規制部12pによって排出口42の高さが規制されるため、複数の錠剤10bが重なることがなく、錠剤10bの向きも規制できる。よって、接合部37の内部に配置されたセンサー46で、服薬される錠剤10bの個数を1錠ずつ正確に感知することができる。
【0050】
さらに、排出口42を通過する錠剤10bは、スロープ部44に誘導される。スロープ面43は所定の曲率を有するため、錠剤10bはスロープ部44の位置に応じて傾きを変えながらスロープ面43に沿って移動する。このため、排出口42の前方の錠剤10bと後方の錠剤10bとで移動速度に差が生じる。したがって、前方の錠剤10bが取り出された直後、後方の錠剤10bがすぐには排出されないため、1錠ずつセンサー46を通過し、通過する錠剤10bが正確にカウントされる。
なお、スロープ面43は、排出口42の前方の錠剤10bと後方の錠剤10bとで移動速度に差を生じさせることができれば、特に曲面加工が施されていなくてもよい。
【0051】
この実施の形態の押出機構によれば、梃子の原理を利用し時間差を置いて第1リブ22c、第2リブ22dを錠剤ポケット10aに当接させ、段階的に錠剤10bを押下することにより、確実に錠剤10bを押し出すことができる。また、この実施の形態の服薬管理デバイス2によれば、服薬される錠剤10bの個数を1錠ずつ正確に感知することができるため、高精度に服薬管理を行うことができる。また、センサー46を排出口42に設けることにより、押出部14cごとにセンサー46を設ける必要がなくなるため、簡単な構造を実現でき製造コストを抑制することができる。
【0052】
なお、上述の実施の形態において、押出部14cは、複数のボタン22bを備えていてもよい。たとえば、
図12(a)に示すように、第1ボタン25aと第2ボタン25bを備えていてもよい。この場合、
図12(b)に示すように、軸部14hからの第1ボタン25aと第2ボタン25bの位置が異なるように設計することが好ましい。これにより、押出部14cを押下した時に第1ボタン25aと第2ボタン25bが時間差を置いてそれぞれ錠剤ポケット10aを介して錠剤10bに当接することになる。このため、先に錠剤ポケット10aに当接した錠剤10bがアルミシート10dを破ることになり、後から押し出される錠剤10bはさらに大きな力でアルミシート10dを破ることができる。
【0053】
第1ボタン25aと第2ボタン25bが軸部14hから同じ距離に位置していた場合、二つの錠剤10bに力が分散されるので2錠分の力が必要となるが、第1ボタン25aと第2ボタン25bが軸部14hから異なる距離に配置し、時間差を置くことにより2倍以下の力で錠剤10bを押し出すことができる。なお、第1ボタン25aと第2ボタン25bの高さが異なればより効果的である。特に、複数の錠剤10bを組み合わせて押し出す場合などに有効である。
なお、上述の実施の形態において、服薬管理デバイス2は、必ずしも新薬を開発する過程の治験に用いられるものでなくてもよい。
【0054】
また、上述の実施の形態において、載置部12aの下方(収納部16側)には、
図13に示すように、壁部12xと支持部12yが形成されていてもよい。ここで、壁部12xは、載置部12aの下方を囲んで形成されている。この壁部12xには、張出部12d(排出口42の側)に向かって載置部12aの短手方向両サイドの壁部12xの幅Xを狭めながら傾斜する誘導部12zが形成されている。このように、誘導部12zが形成されることにより、服薬管理デバイス2を傾けた際に、収納部16の空間26に収納された錠剤が誘導部12zによって排出口42に誘導され、錠剤を的確に排出口42に案内することができる。
【0055】
また、支持部12yは、円柱状の形状を有し、載置部12aの下方の面の短手方向中央部に、所定の間隔で長手方向に複数形成されている。この支持部12yの上端は載置部12aの下方の面に固定され、下端は固定部12を収納部16に固定した際に収納部16の底面に当接する。このように支持部12yを備えることにより、押出部14cを押下して錠剤ポケット10aから錠剤を押し出す際に、固定部12が歪まないようにすることができる。
【0056】
また、上述の実施の形態においては、押出対象物が錠剤である場合を例に説明しているが、押出対象物は、カプセル剤やトローチなどの他の薬剤であってもよい。
また、上述の実施の形態においては、電装部6に凸状部38が形成され、収納部16に溝部32が形成されているが、電装部6に溝部32が形成され、収納部16に凸状部38が形成されていてもよい。この場合においても、カセット部4を排出部36側にスライドさせて電装部6をカセット部4に固定することができる。
【0057】
すなわち、電装部6に第1係合部(溝部32または凸状部38)が形成され、収納部16に第2係合部(凸状部38または溝部32のうち第1係合部に該当しないもの)が形成されていればよい。この場合においても、第1係合部と第2係合部を係合させ、カセット部4を排出部36側にスライドさせることにより電装部6をカセット部4に固定することができる。
【符号の説明】
【0058】
2 服薬管理デバイス
4 カセット部
6 電装部
8 カバー
10 PTP包装シート
10a 錠剤ポケット
10b 錠剤
10d アルミシート
12 固定部
12a 載置部
12b 蓋部
12c ヒンジ部
12d 張出部
12e 爪受部
12f 爪部
12j 稜線部
12k 開口
12l 稜線部
12m 開口
12p 規制部
12x 壁部
12y 支持部
12z 誘導部
13 突出リブ
14 ボタンカバー
14a 係合部
14b 中央軸部
14c 押出部
14h 軸部
15 爪部
16 収納部
17 爪部
19 突起部
21 孔部
22a アーム
22b ボタン
22c 第1リブ
22d 第2リブ
23 孔部
25a 第1ボタン
25b 第2ボタン
26 空間
28 切欠
32 溝部
36 排出部
37 接合部
38 凸状部
40 扉部
42 排出口
43 スロープ面
44 スロープ部
45 ストッパー部
46 センサー
50 レーザー光