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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】熱伝導体及び熱伝導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20230908BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2022532455
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2021020410
(87)【国際公開番号】W WO2021256220
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2020106514
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145987
【氏名又は名称】株式会社昭和丸筒
(74)【代理人】
【識別番号】100167276
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】香川 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆幸
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-141464(JP,A)
【文献】特開2009-055021(JP,A)
【文献】国際公開第2017/086487(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/29
H01L23/34 -23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱伝導部と、柔軟性を有する樹脂材料を含んで構成され、前記各熱伝導部を接合する接合部とを備える熱伝導体であって、
前記樹脂材料は、柔軟性エポキシ樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマー、又は、環状分子と直鎖状の分子構造を有し前記環状分子を串刺し状に包接する第1のポリマーと前記第1のポリマーの両端付近に設けられた封鎖基とを有するポリロタキサン及び第2のポリマーを含み前記環状分子を介して前記ポリロタキサンと前記第2のポリマーとが結合しているものであり、
前記熱伝導部及び前記接合部が存在していない空隙部を有し、
第1の方向から平面視した際の熱伝導体の面積をS0[cm]とし、前記第1の方向から0.2MPaで押圧した押圧状態で前記第1の方向から平面視した際の熱伝導体の面積をS1[cm]とした場合に、0.5≦[(S1-S0)/S0]×100≦20の条件を満たすことを特徴とする熱伝導体。
【請求項2】
熱伝導体は、シート状をなすものである請求項1に記載の熱伝導体。
【請求項3】
熱伝導体の厚さが0.15mm以上20mm以下である請求項2に記載の熱伝導体。
【請求項4】
複数の前記熱伝導部のうち少なくとも一部は、熱伝導体の内部に連続して設けられるとともに、熱伝導体の異なる2つの面に露出している請求項1~3のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項5】
熱伝導体は、少なくとも一組の平行な表面を有しており、
複数の前記熱伝導部のうち少なくとも一部が、熱伝導体の内部に連続して設けられるとともに、平行な2つの前記表面に露出している貫通熱伝導部であり、
前記表面の法線方向と、前記貫通熱伝導部の延在方向とのなす角が、3°以上45°以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項6】
熱伝導体中に占める前記熱伝導部の割合が15体積%以上80体積%以下である請求項1~5のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項7】
熱伝導体中に占める前記接合部の割合が15体積%以上70体積%以下である請求項1~6のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項8】
熱伝導体中に占める前記空隙部の割合が5体積%以上65体積%以下である請求項1~7のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項9】
熱伝導体中に占める前記熱伝導部の割合をVC[体積%]、熱伝導体中に占める前記接合部の割合をVJ[体積%]、熱伝導体中に占める前記空隙部の割合をVV[体積%]としたとき、25≦[(VJ+VV)/(VC+VJ+VV)]×100≦90の関係を満たす請求項1~8のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項10】
前記熱伝導部は、黒鉛を含む材料で構成されている請求項1~9のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項11】
前記熱伝導部は、実質的に単一成分で構成されたものである請求項1~10のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項12】
前記第1の方向から平面視した際に、複数個の前記熱伝導部が、島状に設けられている請求項1~11のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項13】
前記第1の方向から平面視した際に、複数個の前記熱伝導部が、千鳥状に配置されている請求項12に記載の熱伝導体。
【請求項14】
前記第1の方向から平面視した際の隣り合う前記熱伝導部の間隔が、1μm以上2000μm以下である請求項1~13のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項15】
前記押圧状態とする前の状態における熱伝導体の密度が0.6g/cm以上2.5g/cm以下である請求項1~14のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項16】
前記第1の方向と直交する第2の方向から平面視した際の熱伝導体の面積をS3[cm]とし、
前記第1の方向から0.2MPaで押圧した押圧状態で前記第2の方向から観察した際の熱伝導体の面積をS4[cm]とした場合に、5≦[(S3-S4)/S3]×100≦50の条件を満たす請求項1~15のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項17】
前記第1の方向についての初期状態の熱伝導体の長さをL0[mm]、前記第1の方向から1.0MPaで1分間押圧した後に、押圧状態から解放し、1分間放置する操作を、繰り返し1000回行った時点での前記第1の方向についての熱伝導体の長さをL1[mm]としたとき、0.70≦L1/L0の関係を満たす請求項1~16のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項18】
前記第1の方向から0.2MPaで押圧した押圧状態での前記第1の方向での熱伝導率の実測値が50W/(m・K)以上である請求項1~17のいずれか一項に記載の熱伝導体。
【請求項19】
複数の熱伝導部と、柔軟性を有する樹脂材料を含んで構成され、前記各熱伝導部を接合する接合部とを備える熱伝導体の製造方法であって、
前記樹脂材料は、柔軟性エポキシ樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマー、又は、環状分子と直鎖状の分子構造を有し前記環状分子を串刺し状に包接する第1のポリマーと前記第1のポリマーの両端付近に設けられた封鎖基とを有するポリロタキサン及び第2のポリマーを含み前記環状分子を介して前記ポリロタキサンと前記第2のポリマーとが結合しているものであり、
前記熱伝導部の形成に用いる熱伝導部形成用部材を用意する熱伝導部形成用部材用意工程と、
前記熱伝導部形成用部材の表面に、前記接合部の形成に用いる接合部形成用組成物を付着させる接合部形成用組成物付着工程とを有し、
前記熱伝導体は、前記熱伝導部及び前記接合部が存在していない空隙部を有するものであり、
第1の方向から平面視した際の前記熱伝導体の面積をS0[cm]とし、前記第1の方向から0.2MPaで押圧した押圧状態で前記第1の方向から平面視した際の前記熱伝導体の面積をS1[cm]とした場合に、0.5≦[(S1-S0)/S0]×100≦20の条件を満たす前記熱伝導体を製造することを特徴とする熱伝導体の製造方法。
【請求項20】
前記接合部形成用組成物付着工程において、前記熱伝導部形成用部材と前記接合部形成用組成物との間に、気泡を含ませる請求項19に記載の熱伝導体の製造方法。
【請求項21】
複数の熱伝導部と、柔軟性を有する樹脂材料を含んで構成され、前記各熱伝導部を接合する接合部とを備える熱伝導体の製造方法であって、
前記樹脂材料は、柔軟性エポキシ樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマー、又は、環状分子と直鎖状の分子構造を有し前記環状分子を串刺し状に包接する第1のポリマーと前記第1のポリマーの両端付近に設けられた封鎖基とを有するポリロタキサン及び第2のポリマーを含み前記環状分子を介して前記ポリロタキサンと前記第2のポリマーとが結合しているものであり、
前記熱伝導部の形成に用いる長尺の熱伝導部形成用部材を用意する熱伝導部形成用部材用意工程と、
前記熱伝導部形成用部材の表面に、前記接合部の形成に用いる接合部形成用組成物を付着させる接合部形成用組成物付着工程と、
前記接合部形成用組成物が付着した前記熱伝導部形成用部材を、トラバース巻きで、ロールの周面に巻回して筒状の巻回体を得る巻回工程と、
前記巻回体を、前記ロールの軸方向に対して非垂直な方向で切り開き、切開体を得る切開工程とを有し、
前記熱伝導体は、前記熱伝導部及び前記接合部が存在していない空隙部を有するものであり、
第1の方向から平面視した際の前記熱伝導体の面積をS0[cm ]とし、前記第1の方向から0.2MPaで押圧した押圧状態で前記第1の方向から平面視した際の前記熱伝導体の面積をS1[cm ]とした場合に、0.5≦[(S1-S0)/S0]×100≦20の条件を満たす前記熱伝導体を製造することを特徴とする熱伝導体の製造方法。
【請求項22】
前記熱伝導部形成用部材は、主面に凹凸を有する帯状をなすものである請求項21に記載の熱伝導体の製造方法。
【請求項23】
前記熱伝導部形成用部材は、前記熱伝導部形成用部材の長手方向に延在する繊維束を含むものである請求項21に記載の熱伝導体の製造方法。
【請求項24】
前記巻回工程において、1つの前記ロールの周面に、前記接合部形成用組成物が付着した前記熱伝導部形成用部材を複数本巻回し、これらにより1つの巻回体を得る請求項21~23のいずれか一項に記載の熱伝導体の製造方法。
【請求項25】
前記接合部形成用組成物が硬化性樹脂材料を含むものであり、
前記切開工程の後に、前記切開体中に含まれる前記硬化性樹脂材料を硬化させる硬化工程を有する請求項21~24のいずれか一項に記載の熱伝導体の製造方法。
【請求項26】
前記硬化性樹脂材料は、前記硬化工程においてガスを発生するものである請求項25に記載の熱伝導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導体及び熱伝導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や車両用ヘッドライト、車載電池等の発熱部材に対する放熱対策が急務となっている。例えば、コンピューターの中央演算処理装置、画像処理用演算プロセッサ、スマートフォンのSoC、組み込み機器のDSPやマイコン、あるいはトランジスタ等の半導体素子、発光ダイオードやエレクトロルミネッセンス、液晶等の発光体といった電子部品の小型化、高集積化により、発熱量が大きくなる傾向にある。これらの電子部品の発熱による装置やシステムの寿命低下、誤作動が問題となってきており、電子部品の放熱対策への要求は、年々高まってきている。
【0003】
このような発熱部材等の高温部材に対する対策として、空冷ファンを用いた強制冷却の他、金属製の放熱フィンやペルチェ素子等の放熱部材が使用されている。このような放熱部材は、発熱体と熱的に接続する面において、界面に断熱層となる空気層が形成されるのを防ぐために、グリスが塗布されてきた。しかしながら、一般的なグリスは、熱伝導性が高くない。そのため、熱伝導率が比較的高いダイヤモンドを分散させたダイヤモンドグリスも用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、ダイヤモンドグリスは、高価である。また、ダイヤモンドグリスを用いた場合でも、十分な熱伝導性を得ることは、困難であった。
【0005】
また、熱伝導体が、上述したような電子部品において高温部材と放熱部材との間に配される場合に、圧力をかけて圧縮した状態で配される場合がある。これにより、熱伝導体の、高温部材及び放熱部材に対する密着性を向上させ、界面熱抵抗を低く抑えて実質的な熱伝導率を高めることができる。
【0006】
熱伝導体の、高温部材及び放熱部材に対する密着性を向上させるには、熱伝導体は、比較的柔らかい材料で構成されることが好ましい。
【0007】
しかしながら、熱伝導体が柔らかすぎると、熱伝導体が押圧されたときに過度に変形してしまい、はみ出した部分が、露出した配線等に接触して、配線の電気的な短絡(ショート)が発生する問題があった。
【0008】
熱伝導体が比較的硬い材料から構成されていれば、押圧されても変形は少なく、上述したような、はみ出し部分による短絡の問題は防止されるが、熱伝導体の、高温部材及び放熱部材に対する密着性を十分に優れたものとすることが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2017-530220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、使用時において接触する部材に対する密着性の確保と圧縮時の過度な変形の抑制とを両立した熱伝導体、及び、使用時において接触する部材に対する密着性の確保と圧縮時の過度な変形の抑制とを両立した熱伝導体を効率よく製造できる熱伝導体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の熱伝導体は、複数の熱伝導部と、柔軟性を有する樹脂材料を含んで構成され、前記各熱伝導部を接合する接合部とを備える熱伝導体であって、
前記樹脂材料は、柔軟性エポキシ樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマー、又は、環状分子と直鎖状の分子構造を有し前記環状分子を串刺し状に包接する第1のポリマーと前記第1のポリマーの両端付近に設けられた封鎖基とを有するポリロタキサン及び第2のポリマーを含み前記環状分子を介して前記ポリロタキサンと前記第2のポリマーとが結合しているものであり、
前記熱伝導部及び前記接合部が存在していない空隙部を有し、
第1の方向から平面視した際の熱伝導体の面積をS0[cm]とし、前記第1の方向から0.2MPaで押圧した押圧状態で前記第1の方向から平面視した際の熱伝導体の面積をS1[cm]とした場合に、0.5≦[(S1-S0)/S0]×100≦20の条件を満たすことを特徴とする。
【0012】
本発明では、熱伝導体は、シート状をなすものであることが好ましい。
【0013】
本発明では、熱伝導体の厚さが0.15mm以上20mm以下であることが好ましい。
【0014】
本発明では、複数の前記熱伝導部のうち少なくとも一部は、熱伝導体の内部に連続して設けられるとともに、熱伝導体の異なる2つの面に露出していることが好ましい。
【0015】
本発明では、熱伝導体は、少なくとも一組の平行な表面を有しており、
複数の前記熱伝導部のうち少なくとも一部が、熱伝導体の内部に連続して設けられるとともに、平行な2つの前記表面に露出している貫通熱伝導部であり、
前記表面の法線方向と、前記貫通熱伝導部の延在方向とのなす角が、3°以上45°以下であることが好ましい。
【0016】
本発明では、熱伝導体中に占める前記熱伝導部の割合が15体積%以上80体積%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明では、熱伝導体中に占める前記接合部の割合が15体積%以上70体積%以下であることが好ましい。
【0018】
本発明では、熱伝導体中に占める前記空隙部の割合が5体積%以上65体積%以下であることが好ましい。
【0019】
本発明では、熱伝導体中に占める前記熱伝導部の割合をVC[体積%]、熱伝導体中に占める前記接合部の割合をVJ[体積%]、熱伝導体中に占める前記空隙部の割合をVV[体積%]としたとき、25≦[(VJ+VV)/(VC+VJ+VV)]×100≦90の関係を満たすことが好ましい。
【0020】
本発明では、前記熱伝導部は、黒鉛を含む材料で構成されていることが好ましい。
【0021】
本発明では、前記熱伝導部は、実質的に単一成分で構成されたものであることが好ましい。
【0022】
本発明では、前記第1の方向から平面視した際に、複数個の前記熱伝導部が、島状に設けられていることが好ましい。
【0023】
本発明では、前記第1の方向から平面視した際に、複数個の前記熱伝導部が、千鳥状に配置されていることが好ましい。
【0024】
本発明では、前記第1の方向から平面視した際の隣り合う前記熱伝導部の間隔が、1μm以上2000μm以下であることが好ましい。
【0025】
本発明では、前記押圧状態とする前の状態における熱伝導体の密度が0.6g/cm以上2.5g/cm以下であることが好ましい。
【0026】
本発明では、前記第1の方向と直交する第2の方向から平面視した際の熱伝導体の面積をS3[cm]とし、
前記第1の方向から0.2MPaで押圧した押圧状態で前記第2の方向から観察した際の熱伝導体の面積をS4[cm]とした場合に、5≦[(S3-S4)/S3]×100≦50の条件を満たすことが好ましい。
【0027】
本発明では、前記第1の方向についての初期状態の熱伝導体の長さをL0[mm]、前記第1の方向から1.0MPaで1分間押圧した後に、押圧状態から解放し、1分間放置する操作を、繰り返し1000回行った時点での前記第1の方向についての熱伝導体の長さをL1[mm]としたとき、0.70≦L1/L0の関係を満たすことが好ましい。
【0028】
本発明では、前記第1の方向から0.2MPaで押圧した押圧状態での前記第1の方向での熱伝導率の実測値が50W/(m・K)以上であることが好ましい。
【0029】
本発明の熱伝導体の製造方法は、複数の熱伝導部と、柔軟性を有する樹脂材料を含んで構成され、前記各熱伝導部を接合する接合部とを備える熱伝導体の製造方法であって、
前記樹脂材料は、柔軟性エポキシ樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマー、又は、環状分子と直鎖状の分子構造を有し前記環状分子を串刺し状に包接する第1のポリマーと前記第1のポリマーの両端付近に設けられた封鎖基とを有するポリロタキサン及び第2のポリマーを含み前記環状分子を介して前記ポリロタキサンと前記第2のポリマーとが結合しているものであり、
前記熱伝導部の形成に用いる熱伝導部形成用部材を用意する熱伝導部形成用部材用意工程と、
前記熱伝導部形成用部材の表面に、前記接合部の形成に用いる接合部形成用組成物を付着させる接合部形成用組成物付着工程とを有し、
前記熱伝導体は、前記熱伝導部及び前記接合部が存在していない空隙部を有するものであり、
第1の方向から平面視した際の前記熱伝導体の面積をS0[cm]とし、前記第1の方向から0.2MPaで押圧した押圧状態で前記第1の方向から平面視した際の前記熱伝導体の面積をS1[cm]とした場合に、0.5≦[(S1-S0)/S0]×100≦20の条件を満たす前記熱伝導体を製造することを特徴とする。
【0030】
本発明では、前記接合部形成用組成物付着工程において、前記熱伝導部形成用部材と前記接合部形成用組成物との間に、気泡を含ませることが好ましい。
【0031】
本発明の熱伝導体の製造方法は、複数の熱伝導部と、柔軟性を有する樹脂材料を含んで構成され、前記各熱伝導部を接合する接合部とを備える熱伝導体の製造方法であって、
前記樹脂材料は、柔軟性エポキシ樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマー、又は、環状分子と直鎖状の分子構造を有し前記環状分子を串刺し状に包接する第1のポリマーと前記第1のポリマーの両端付近に設けられた封鎖基とを有するポリロタキサン及び第2のポリマーを含み前記環状分子を介して前記ポリロタキサンと前記第2のポリマーとが結合しているものであり、
前記熱伝導部の形成に用いる長尺の熱伝導部形成用部材を用意する熱伝導部形成用部材用意工程と、
前記熱伝導部形成用部材の表面に、前記接合部の形成に用いる接合部形成用組成物を付着させる接合部形成用組成物付着工程と、
前記接合部形成用組成物が付着した前記熱伝導部形成用部材を、トラバース巻きで、ロールの周面に巻回して筒状の巻回体を得る巻回工程と、
前記巻回体を、前記ロールの軸方向に対して非垂直な方向で切り開き、切開体を得る切開工程とを有し、
前記熱伝導体は、前記熱伝導部及び前記接合部が存在していない空隙部を有するものであり、
第1の方向から平面視した際の前記熱伝導体の面積をS0[cm ]とし、前記第1の方向から0.2MPaで押圧した押圧状態で前記第1の方向から平面視した際の前記熱伝導体の面積をS1[cm ]とした場合に、0.5≦[(S1-S0)/S0]×100≦20の条件を満たす前記熱伝導体を製造することを特徴とする。
【0032】
本発明では、前記熱伝導部形成用部材は、主面に凹凸を有する帯状をなすものであることが好ましい。
【0033】
本発明では、前記熱伝導部形成用部材は、前記熱伝導部形成用部材の長手方向に延在する繊維束を含むものであることが好ましい。
【0034】
本発明では、前記巻回工程において、1つの前記ロールの周面に、前記接合部形成用組成物が付着した前記熱伝導部形成用部材を複数本巻回し、これらにより1つの巻回体を得ることが好ましい。
【0035】
本発明では、前記接合部形成用組成物が硬化性樹脂材料を含むものであり、
前記切開工程の後に、前記切開体中に含まれる前記硬化性樹脂材料を硬化させる硬化工程を有することが好ましい。
【0036】
本発明では、前記硬化性樹脂材料は、前記硬化工程においてガスを発生するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、使用時において接触する部材に対する密着性の確保と圧縮時の過度な変形の抑制とを両立した熱伝導体、及び、使用時において接触する部材に対する密着性の確保と圧縮時の過度な変形の抑制とを両立した熱伝導体を効率よく製造できる熱伝導体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の熱伝導体の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示す熱伝導体の縦断面図である。
図3】自然状態の熱伝導体を模式的に示す側面図及び上面図である。
図4】熱伝導体を第1の方向から押圧した状態を模式的に示す側面図及び上面図である。
図5】本発明の熱伝導体の他の一例を模式的に示す斜視図である。
図6】接合部を構成する樹脂材料の一例の概念図である。
図7】鱗片状黒鉛で構成された熱伝導部形成用部材を模式的に示す断面図である。
図8】接合部形成用組成物付着工程、巻回工程に用いる装置の一例を模式的に示す図である。
図9】巻回工程において、熱伝導部形成用部材を、トラバース巻きでロールの表面に巻回する様子を示す図である。
図10】切開工程で得られた切開体を模式的に示す図である。
図11】切開体を押圧して、切開体の平坦性をより高くした状態を模式的に示す図である。
図12】スライス工程の様子を模式的に示す図である。
図13図5に示す熱伝導体の使用形態の一例を模式的に示す図である。
図14図5に示す熱伝導体の使用形態の一例を模式的に示す図である。
図15図1に示す熱伝導体の使用形態の一例を模式的に示す図である。
図16図1に示す熱伝導体の使用形態の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0040】
[1]熱伝導体
まず、本発明の熱伝導体について説明する。
図1は、本発明の熱伝導体の一例を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示す熱伝導体の縦断面図であり、図2(a)は、切断線A-A’における断面図であり、図2(b)は、切断線B-B’における断面図である。図3は、自然状態の熱伝導体を模式的に示す側面図及び上面図であり、図3(a)は、第1の方向から見た側面図であり、図3(b)は、第2の方向から見た上面図である。図4は、熱伝導体を第1の方向から押圧した状態を模式的に示す側面図及び上面図であり、図4(a)は、第1の方向から見た側面図であり、図4(b)は、第2の方向から見た上面図である。図5は、本発明の熱伝導体の他の一例を模式的に示す斜視図である。図6は、接合部を構成する樹脂材料の一例の概念図である。
【0041】
なお、本明細書では、「自然状態」とは、重力以外の外力が付与されていない状態のことをいい、特に、24時間以内に重力以外の外力が付与された履歴の無い状態のことをいう。また、熱伝導体の製造後、0.1MPa以上の応力付与の履歴がないことが好ましい。
【0042】
また、本明細書で参照する図面においては、各部材間の関係をわかりやすくするために、一部を縮小あるいは拡大して示している場合があり、図面に示す各部材間での大きさの比率は、実際の各部材間での大きさの比率を表しているものではない。
【0043】
また、本明細書に記載する測定、処理については、特に温度条件を示していない場合は、20℃において行ったものとする。
【0044】
後に詳述するように、熱伝導体1は、所定の方向での熱伝導性に優れるものであり、例えば、熱伝導体1に冷却すべき部材等を接触させることにより用いられるものである。
【0045】
図1図2に示すように、熱伝導体1は、複数の熱伝導部10と、柔軟性を有する材料で構成され、各熱伝導部10を接合する接合部20とを備える。熱伝導体1は、熱伝導部10及び接合部20が存在していない空隙部2を有する。
【0046】
そして、図3図4に示すように、本発明の熱伝導体1は、第1の方向から平面視した際の熱伝導体1の面積をS0[cm]とし、第1の方向から0.2MPaで押圧した押圧状態で第1の方向から平面視した際の熱伝導体1の面積をS1[cm]とした場合に、0.5≦[(S1-S0)/S0]×100≦20の条件を満たすことを特徴とする。
【0047】
なお、本発明において、「第1の方向」は、任意の方向であるが、以下の説明では、第1の方向が、図1中の上下方向である場合について中心的に説明し、図1中の下から上に向かう方向をZ方向とする。また、第2の方向は、第1の方向と直交する任意の方向であり、図1に示すX方向及びY方向を含む。以下の説明では、熱伝導体が有する平面のうち最も面積の大きい平面の法線方向を第1の方向として説明する。熱伝導体1の上面から押圧する場合、S0、S1は、熱伝導体1を上面から観察した面積であり、後述するS1’も、熱伝導体1を上面から観察した面積である。また、熱伝導体1の上面から押圧する場合、後述するS3、S4は、熱伝導体1を側面から観察した面積である。また、第1の方向を上下方向とした場合、後述するL0、L1は、熱伝導体1の高さ(厚さ)である。
【0048】
また、図3図4では、熱伝導体1が有する熱伝導部10や接合部20の表示を省略している。後掲する図13図14においても同様である。また、熱伝導体1の押圧には、所定の加圧治具、例えば、2枚の平板が用いられるが、図4では、それらの表示も省略している。
【0049】
図3図4に示すように、熱伝導体1を第1の方向から押圧すると変形する。言い換えると、熱伝導体1は、押圧されることで、高さが低くなった分、平面方向(X方向、Y方向)に広がり、いわゆる、押しつぶされた状態となる。言い換えると、第1の方向から平面視した際に、押圧状態の熱伝導体1の面積S1は、自然状態の熱伝導体1の面積S0に比べて、大きくなる。
【0050】
なお、本明細書で説明する測定に関して、第1の方向から熱伝導体を押圧する場合には、押圧状態においても、測定対象の熱伝導体の大きさ、より具体的には、第1の方向から平面視した際の面積よりも、大きい押圧部材の平坦面により押圧するものである。
【0051】
また、測定対象の熱伝導体1の第1の方向を法線とする面が、40mm×40mmの正方形かそれを包含する大きさのものである場合、S0及びS1の値の測定は、第1の方向を法線とする面が、40mm×40mmの正方形の直方体となるように、大きさ、形状を調整した状態で行ってもよい。
【0052】
以下の説明では、「[(S1-S0)/S0]×100」の値を、「はみ出し量」として定義する。
【0053】
はみ出し量が前記範囲内の値であることにより、使用時において接触する部材に対する密着性の確保と圧縮時の過度な変形の抑制とを両立した熱伝導体を提供することができる。すなわち、熱伝導体1は適度な柔軟性を有するものとなり、熱伝導体1の押圧による過度な変形を抑制し、例えば、熱伝導体1が押圧された状態で、はみ出し部分が、電子部品や配線部分等の他の部材と不本意に接触することを効果的に防止しつつ、熱伝導体1が適用される部材(冷却すべき部材等)との密着性を優れたものとすることができ、前記部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性を優れたものとすることができる。したがって、例えば、短絡等の問題の発生を効果的に防止しつつ、熱伝導体1が適用される部材を効果的に冷却することができる。
【0054】
特に、本発明の熱伝導体1では、熱伝導部10及び接合部20が存在していない空隙部2を有することで、当該空隙部2がクッションとなり、熱伝導体1が押圧されたときの変形、特に、接合部20の変形を、この空隙部2で吸収することができ、熱伝導体1全体としての過度な変形を抑制することができる。また、熱伝導体1に適度な柔軟性を付与することが可能となり、はみ出し量について前記条件を満たすように好適に調整することができる。
【0055】
これに対し、上記のような条件を満たさないと満足のいく結果が得られない。例えば、熱伝導体が空隙部を有していないと、熱伝導体が押圧されたときの変形を吸収することができないため、熱伝導体を押圧した際のはみ出し量が大きくなり、前述したような問題を十分に防止することができない。
【0056】
また、[(S1-S0)/S0]×100の値が前記下限値未満であると、熱伝導体の柔軟性が不十分であり、熱伝導体が適用される部材との十分な密着性が得られない。
【0057】
また、[(S1-S0)/S0]×100の値が前記上限値を超えると、熱伝導体が押圧されたときの変形が過度になり、これにより、熱伝導体が不本意な部位に接触し、短絡等の問題が生じやすくなる。
【0058】
上記のように、本発明の熱伝導体1は、0.5≦[(S1-S0)/S0]×100≦20の条件を満たすが、特に、1.0≦[(S1-S0)/S0]×100≦15の条件を満たすことが好ましく、1.5≦[(S1-S0)/S0]×100≦10の条件を満たすことがより好ましく、2.0≦[(S1-S0)/S0]×100≦8.0の条件を満たすことがさらに好ましい。
これにより、前述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0059】
熱伝導体1では、例えば、熱伝導体1中に占める熱伝導部10の割合、接合部20の割合、及び空隙部2の割合を適宜調整すること、あるいは、接合部20の柔軟性、言い換えると、接合部20の材料を適宜選択すること等により、はみ出し量を好適に調整することができる。
【0060】
熱伝導体1は、第1の方向から平面視した際の熱伝導体1の面積をS0[cm]とし、第1の方向から所定の圧力で押圧し、厚さ方向の圧縮率が20%とした押圧状態で、第1の方向から平面視した際の熱伝導体1の面積をS1’[cm]とした場合に、1.0≦[(S1’-S0)/S0]×100≦15の条件を満たすことが好ましく、1.5≦[(S1’-S0)/S0]×100≦10の条件を満たすことがより好ましく、2.0≦[(S1’-S0)/S0]×100≦8.0の条件を満たすことがさらに好ましい。
これにより、上述した本発明の効果をより顕著なものとすることができる。
【0061】
図5に示す構成では、熱伝導体1は、シート状をなしている。
このように、熱伝導体1がシート状をなすものであると、熱伝導体1全体を好適に湾曲させることができ、例えば、熱伝導体1の体積を小さいものとしつつ、平面部や曲率が比較的小さい表面を有する部材に適用した場合の実質的な熱伝導性を特に優れたものとすることができる。なお、ここでの「平面部」は、微小な凹凸を有する面も含む概念である。また、熱伝導体1が適用される部材が表面に凹凸を有するもの等であっても、熱伝導体1が適用される表面全体にわたって、ミクロ的に、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1とをより好適に密着させることができる。言い換えると、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との微小領域における接触がより優れたものになる。このため、例えば、熱伝導体1が適用される部材が発熱部材である場合等における放熱性をより優れたものとすることができる。また、熱伝導体1の使用時において、熱伝導体1が配される空間(熱伝導体1に接触する複数の部材の間の幅)が狭い場合であっても、好適に熱伝導体1を配することができる。
【0062】
熱伝導体1がシート状をなすものである場合、自然状態での熱伝導体1の厚さ、すなわち、図5中Tで示す長さは、0.15mm以上20mm以下であることが好ましく、0.20mm以上10mm以下であることがより好ましく、0.25mm以上5mm以下であることがさらに好ましい。
【0063】
これにより、シート状の熱伝導体1が適用される部材の表面形状により好適に追従することができ、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0064】
図1に示す構成では、熱伝導体1は、ブロック状をなしている。
このように、本発明において、熱伝導体1は、シート状のものに限定されず、いかなる形状のものであってもよい。
【0065】
熱伝導体1がブロック状をなすものであると、例えば、熱伝導体1が適用される部材が複雑な表面形状を有するものである場合であっても、熱伝導体1と前記部材とを好適に密着させることができ、実質的な熱伝導性を特に優れたものとすることができる。また、熱伝導体1と熱伝導体1が適用される部材とを三次元的に好適に密着させることができるため、前記部材の熱伝導体1と接触させるべき領域が三次元方向の比較的広い領域にわたるものである場合であっても、好適に適用することができる。
【0066】
熱伝導体1がブロック状をなすものである場合、自然状態での熱伝導体1の厚さ、すなわち、図1中Tで示す長さは、30mm以上200mm以下であることが好ましく、50mm以上150mm以下であることがより好ましく、70mm以上120mm以下であることがさらに好ましい。
【0067】
このようなブロック状の熱伝導体1は、例えば、モーターのような比較的大きな部品の冷却に好適に用いられる。
【0068】
なお、本明細書で参照する図では、熱伝導部10と接合部20との界面を明確に示しているが、例えば、熱伝導部10の一部が接合部20に侵入していること等により、熱伝導部10と接合部20との界面が不明確なものとなっていても構わない。
【0069】
[1-1]熱伝導部
複数ある熱伝導部10は、熱伝導体1の全体における熱伝導性、特に、熱伝導部10の延在方向の熱伝導性に主に寄与する部分である。
【0070】
本明細書では、後に詳述する熱伝導部形成用部材10’の延在方向を熱伝導部10の延在方向と定義する。例えば、図1に示す構成では、YZ平面の方向が熱伝導部10の延在方向である。また、後述する図7中では、横の奥行方向が、熱伝導部形成用部材10’の延在方向、熱伝導部10の延在方向である。
【0071】
図1に示すように、熱伝導体1では、第1の方向から平面視した際に、複数個の熱伝導部10が、島状に設けられていることが好ましい。
【0072】
これにより、熱伝導体1の面内(図1に示すXY平面の方向)の各部位での熱伝導性のばらつきを抑えつつ、熱伝導体1全体としての柔軟性もより優れたものとしやすく、より確実に、上述した本発明による効果をより顕著に発揮させることができる。
【0073】
なお、本明細書において「島状」とは、接合部20中に、複数個の熱伝導部10が、連続せず点在している状態のことをいう。言い換えると、熱伝導部10は、X方向、Y方向のいずれにおいても、他の熱伝導部10とは独立した状態である。
【0074】
図1に示す熱伝導体1では、第1の方向から平面視した際に、複数個の熱伝導部10が、千鳥状に配置されている。言い換えると、複数個の熱伝導部10がY方向に並んだ第1の列10aと、第2の列10bとが、熱伝導部10が互い違いになるように、X方向に交互に配されている。
これにより、上述した効果をより顕著に発揮させることができる。
【0075】
第1の列10aの熱伝導部10と、第2の列10bの熱伝導部10とは、X方向において、少なくとも一部が重なりあっているものであることが好ましい。
これにより、上述した効果をさらに顕著に発揮させることができる。
【0076】
第1の方向から平面視した際の図1中のw10で示す熱伝導部10の幅は、1mm以上30mm以下であることが好ましく、5mm以上20mm以下であることがより好ましく、7mm以上15mm以下であることがさらに好ましい。
【0077】
また、図1中のt10で示す熱伝導部10の厚さは、5μm以上500μm以下であることが好ましく、10μm以上200μm以下であることがより好ましい。
【0078】
これにより、熱伝導体1中に占める熱伝導部10の割合を十分に高いものとしつつ、熱伝導体1全体としての柔軟性もより優れたものとしやすく、より確実に、上述した本発明による効果をより顕著に発揮させることができる。
【0079】
熱伝導体1を第1の方向から平面視した際の図1中のg10で示す隣り合う熱伝導部10の間隔は、1μm以上2000μm以下であることが好ましく、2μm以上1500μm以下であることがより好ましく、3μm以上1000μm以下であることがさらに好ましい。
【0080】
これにより、熱伝導体1中に占める熱伝導部10の割合を十分に高いものとしつつ、熱伝導体1全体としての柔軟性もより優れたものとしやすく、上述した本発明による効果をより顕著に発揮させることができる。ただし、図1中のg10で示す隣り合う熱伝導部10の間隔はなくてもよい。すなわち、g10は、ゼロであってもよい。このような場合、例えば、隣り合う熱伝導部10は、これらの側面で接触しあうものであってもよい。また、複数個の扁平状の熱伝導部10のうちの少なくとも一部は、当該熱伝導部10の幅方向の一部が接触するように重なり合っていてもよい。
【0081】
なお、本明細書において、「隣り合う熱伝導部10の間隔」は、隣り合う熱伝導部10間での最短距離としてのギャップを意味する。
【0082】
また、図1では、複数個の熱伝導部10が、千鳥状に配置されている場合を示しているが、複数個の熱伝導部10は、千鳥状以外の態様で配置されていてもよい。複数個の熱伝導部10は、規則的に配置されていてもよいし、ランダムに配置されていてもよい。
【0083】
複数の熱伝導部10のうち少なくとも一部は、熱伝導体1の内部、特に、熱伝導体1の使用時に押圧される方向(第1の方向)について、熱伝導体1の内部に連続して設けられるとともに、熱伝導体の異なる2つの面、特に、熱伝導体1の使用時に当該方向で他の部材と接触する異なる2つの面に露出していることが好ましい。
【0084】
これにより、前記方向についての実質的な熱伝導性をより優れたものとすることができる。
【0085】
特に、図示の構成の熱伝導体1は、少なくとも一組の平行な表面を有しており、複数の熱伝導部10のうち少なくとも一部が、熱伝導体1の内部に連続して設けられるとともに、平行な2つの表面に露出している貫通熱伝導部10cである。
【0086】
これにより、前記平行な2つの表面間での実質的な熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。
【0087】
なお、本明細書において、「平行」とは、数学的な意味での厳密な「平行」ではなく、若干のずれを許容するものである。
【0088】
図1図2に示す熱伝導体1において、貫通熱伝導部10cは、図2中e10で示す、その延在方向が、図2中V1で示す、表面の法線方向に対して傾斜している。言い換えると、貫通熱伝導部10cの延在方向は、熱伝導体1の使用時における押圧方向(第1の方向)に対して傾斜している。
【0089】
これにより、例えば、熱伝導体1に、比較的大きな荷重を加えた場合であっても、座屈等による熱伝導体1の崩壊等、熱伝導体1の不可逆的な変形をより効果的に抑制することができ、熱伝導体1の耐久性をより優れたものとすることができる。また、熱伝導体1を第1の方向から圧縮した際に、熱伝導体1に面圧がかかりやすくなり、熱伝導体1と熱伝導体1が適用される部材との密着性をより高めることができる。また、熱伝導体1の第1の方向の圧力が加わった際に、当該圧力には、熱伝導部10と接合部20とを押し付ける方向の力の成分が含まれ、これにより、熱伝導部10と接合部20との密着性もより高められたものとなる。
【0090】
なお、図2に示すように、熱伝導部10の第1の列10aと第2の列10bとでは、表面の法線方向V1に対する貫通熱伝導部10cの傾斜方向が、逆になっている。
【0091】
第1の列10aの貫通熱伝導部10cの、表面の法線方向V1に対する傾斜方向をプラス(+)方向とし、第2の列10bの貫通熱伝導部10cの、表面の法線方向に対する傾斜方向をマイナス(-)方向とする。
【0092】
すなわち、第1の列10aの貫通熱伝導部10cは、表面の法線方向V1に対しプラス方向にθ1だけ傾斜しており、第2の列10bの貫通熱伝導部10cは、表面の法線方向V1に対しマイナス方向にθ2だけ傾斜している。
【0093】
このように、互いに異なる方向に傾斜した貫通熱伝導部10cを備えること、特に、表面の法線方向V1に対してプラスの方向に傾斜する貫通熱伝導部10cとともに、表面の法線方向V1に対してマイナスの方向に傾斜する貫通熱伝導部10cを備えることにより、例えば、熱伝導体1に、比較的大きな荷重を加えた場合であっても、座屈等による熱伝導体1の崩壊等、熱伝導体1の不可逆的な変形をさらに効果的に抑制することができ、熱伝導体1の耐久性をさらに優れたものとすることができる。また、熱伝導体1を第1の方向から圧縮した際に、熱伝導体1に面圧がさらにかかりやすくなり、熱伝導体1と熱伝導体1が適用される部材との密着性をさらに高めることができる。また、熱伝導体1の第1の方向の圧力が加わった際に、当該圧力には、熱伝導部10と接合部20とを押し付ける方向の力の成分が含まれ、これにより、熱伝導部10と接合部20との密着性もさらに高められたものとなる。
【0094】
特に、表面の法線方向V1に対してプラスの方向に傾斜する貫通熱伝導部10cと、表面の法線方向V1に対してマイナスの方向に傾斜する貫通熱伝導部10cとが、交互に配されていることにより、前述した効果をより顕著に発揮させることができる。
【0095】
図2に示すように、表面の法線方向V1と、貫通熱伝導部10cの延在方向e10とのなす角θ1、θ2の絶対値は、3°以上45°以下であることが好ましく、5°以上40°以下であることがより好ましく、8°以上35°以下であることがさらに好ましい。
【0096】
これにより、熱伝導体1を第1の方向から圧縮した際に、熱伝導体1に面圧がかかりやすくなり、熱伝導体1と熱伝導体1が適用される部材との密着性をより高めることができる。また、熱伝導体1の第1の方向の圧力が加わった際に、当該圧力には、熱伝導部10と接合部20とを押し付ける方向の力の成分が含まれ、これにより、熱伝導部10と接合部20との密着性もより高められたものとなる。
【0097】
なお、角θ1と角θ2とは、その大きさが異なっていても構わないが、同じであることが好ましい。
【0098】
また、前記角度は、数学的な意味における厳密な数値ではなく、本発明の技術分野における、通常の誤差を含んでいてもよい。例えば、1°未満の差は、誤差として、同じ角度であると解釈される。
【0099】
熱伝導部10の傾斜方向は、特に限定されないが、熱伝導部10(熱伝導部形成用部材10’)が帯状をなすものである場合、熱伝導部10は、その面方向が、前記表面の法線方向V1に対して、傾斜しているのが好ましい。
【0100】
これにより、例えば、熱伝導体1に、比較的大きな荷重を加えた場合であっても、座屈等による熱伝導体1の崩壊等、熱伝導体1の不可逆的な変形をさらに効果的に抑制することができ、熱伝導体1の耐久性をさらに優れたものとすることができる。また、熱伝導体1を第1の方向から圧縮した際に、熱伝導体1に面圧がさらにかかりやすくなり、熱伝導体1と熱伝導体1が適用される部材との密着性をさらに高めることができる。また、熱伝導体1の第1の方向の圧力が加わった際に、当該圧力には、熱伝導部10と接合部20とを押し付ける方向の力の成分が含まれ、これにより、熱伝導部10と接合部20との密着性もさらに高められたものとなる。
【0101】
熱伝導部10は、熱伝導性を有していれば、特に限定されるものではないが、熱伝導部10を構成する材料としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ等のセラミックス材料、黒鉛、炭素繊維等の炭素材料、銅、アルミニウム等の金属材料等が挙げられるが、炭素材料で構成されていることが好ましく、黒鉛を含む材料で構成されていることがより好ましい。
【0102】
これにより、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体1の製造コストを抑制することができる。
【0103】
[1-1-1]炭素材料
特に、熱伝導部10が、黒鉛や炭素繊維のような炭素材料を含む熱伝導部形成用部材10’により形成されたものであると、前述した効果に加え、さらに、以下のような効果が得られる。すなわち、熱伝導体1のしなやかさ、柔軟性をより優れたものとすることができ、例えば、熱伝導体1が折れ曲がった時の復元力、さらには、内部の空隙によるクッション性、熱伝導体1が適用される部材と接触したときの適度な変形による接触性の向上等をより優れたものとすることができる。特に、このような効果は、炭素材料として黒鉛を用いた場合に、より顕著に発揮される。
【0104】
[1-1-2]金属材料
また、熱伝導部10が金属材料で構成された熱伝導部形成用部材10’により形成されたものであると、前述した効果に加え、さらに、以下のような効果が得られる。すなわち、金属材料内部の結合力の強さから熱伝導体1の発塵性をより低くすることができる。また、熱伝導体1に、比較的大きな荷重を加えた場合であっても、座屈等による熱伝導体1の崩壊等、熱伝導体1の不可逆的な変形がより効果的に防止される。
【0105】
熱伝導部10を構成する金属材料としては、各種の単体金属や合金等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、Al、Cu、Ag、Au、Mg及びZnよりなる群から選択される1種又は2種以上を含むものであることが好ましい。
【0106】
これにより、熱伝導部10の熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。
【0107】
前記群を構成する金属元素を含む合金としては、例えば、Al、Cu及びMgを含むアルミニウム合金であるジュラルミン等が挙げられる。
【0108】
熱伝導部10は、実質的に単一成分で構成されていることが好ましい。
これにより、熱伝導部10の熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。また、一般に、熱伝導体1の製造コストを抑制する上でも有利である。
【0109】
なお、「実質的に単一成分から構成される」とは、対象となる部位での主成分の割合が、95重量%以上であることをいうものとする。主成分の割合は、97重量%以上であることが好ましく、99重量%以上であることがより好ましい。
【0110】
ただし、熱伝導部10中に、空気等のガスが含まれる場合は、当該ガスの含有量は無視することとする。また、熱伝導部10が金属材料から構成される場合、その表面には不動態膜のような、熱伝導部10を構成する金属の酸化被膜が形成されていても構わない。このような酸化被膜が形成されている場合も、「実質的に単一成分から構成される」ものとして取り扱うものとする。後に詳述する熱伝導部形成用部材10’についても同様である。
熱伝導体1中に占める熱伝導部10の割合(自然状態での割合。以下同様。)は、15体積%以上80体積%以下であることが好ましく、20体積%以上75体積%以下であることがより好ましく、25体積%以上70体積%以下であることがさらに好ましく、30体積%以上65体積%以下であることが最も好ましい。
【0111】
これにより、熱伝導体1中に占める熱伝導部10の割合を十分に高いものとしつつ、熱伝導体1全体としての柔軟性もより優れたものとしやすく、より確実に、上述した本発明による効果をより顕著に発揮させることができる。
【0112】
[1-2]接合部
接合部20は、熱伝導体1を第1の方向から平面視した際に島状に配された複数の熱伝導部10の間に配されて、熱伝導部10同士を接合するものであり、柔軟性を有する樹脂材料21を含んで構成される。樹脂材料21は、後述する硬化性樹脂材料21’の硬化物である。
【0113】
接合部20が柔軟性を有する樹脂材料21を含むことで、熱伝導体1は、熱伝導体1が適用される部材、例えば、冷却すべき部材等の表面形状への形状適合性に優れたものとなる。
【0114】
また、接合部20が柔軟性を有する樹脂材料21を含むことで、熱伝導体1が変形した際に、熱伝導体1が破損することを好適に防止することができる。
【0115】
[1-2-1]樹脂材料
接合部20を構成する樹脂材料21としては、柔軟性を有するものであれば特に限定されず、例えば、柔軟性エポキシ樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられるが、樹脂材料21は、図6に示すように、環状分子51と、直鎖状の分子構造を有し環状分子51を串刺し状に包接する第1のポリマー52と、第1のポリマー52の両端付近に設けられた封鎖基53とを有するポリロタキサン50、及び、第2のポリマー60を含み、環状分子51を介して、ポリロタキサン50と第2のポリマー60とが結合しているものであることが好ましい。
【0116】
これにより、熱伝導体1における熱伝導部10と接合部20との接合強度等をより優れたものとすることができるとともに、熱伝導体1を比較的大きな力で繰り返し押圧した場合や、比較的大きな力で長時間押圧し続けた場合でも、熱伝導体1の不可逆的な変形をより効果的に抑制することができ、熱伝導体1の耐久性をより優れたものとすることができる。また、熱伝導体1の柔軟性、耐熱性等を特に優れたものとすることができる。
【0117】
特に、図6(A)に示すような状態の樹脂材料21に、矢印方向の応力が付加された場合、樹脂材料21は、図6(B)に示すような形態を採ることができる。すなわち、樹脂材料21では、環状分子51が第1のポリマー52に沿って移動可能であるため、すなわち、第1のポリマー52が環状分子51内を移動可能であるため、変形の応力を樹脂材料21中で効率よく吸収することができる。したがって、ひねり変形力等の大きな外力が加わった場合であっても、接合部20が破壊されたり、熱伝導部10同士の接合が破壊されてしまったりすることが効果的に防止される。
【0118】
以下、ポリロタキサン50と第2のポリマー60とを含む樹脂材料21について詳細に説明する。
【0119】
ポリロタキサン50を構成する環状分子51は、第1のポリマー52に沿って移動可能なものであればよいが、置換されていてもよいシクロデキストリン分子であることが好ましく、当該シクロデキストリン分子がα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリン、並びにその誘導体からなる群から選択されるものであることが特に好ましい。
【0120】
ポリロタキサン50中の環状分子51の少なくとも一部は、上述のように、第2のポリマー60の少なくとも一部と結合する。
【0121】
環状分子51が有する官能基(第2のポリマー60と結合する官能基)としては、例えば、-OH基、-NH基、-COOH基、エポキシ基、ビニル基、チオール基及び光架橋基等が挙げられる。なお、光架橋基としては、例えば、ケイ皮酸、クマリン、カルコン、アントラセン、スチリルピリジン、スチリルピリジニウム塩、スチリルキノリウム塩等が挙げられる。
【0122】
環状分子51が第1のポリマー52により串刺し状に包接される際に環状分子51が最大限に包接される量を1とした場合、第1のポリマー52に串刺し状に包接されている環状分子51の量は、0.001以上0.6以下であることが好ましく、0.01以上0.5以下であることがより好ましく、0.05以上0.4以下であることがさらに好ましい。なお、異なる2種以上の環状分子51を用いてもよい。
【0123】
ポリロタキサン50を構成する第1のポリマー52としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/又はこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びその他オレフィン系単量体との共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル-スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-メチルアクリレート共重合樹脂等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ナイロン等のポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、並びにこれらの誘導体が挙げられ、特にポリエチレングリコールであることが好ましい。
【0124】
第1のポリマー52の重量平均分子量は、1万以上であることが好ましく、2万以上であることがより好ましく、3.5万以上であることがさらに好ましい。なお、異なる2種以上の第1のポリマー52を用いてもよい。
【0125】
環状分子51と第1のポリマー52との組み合わせとしては、環状分子51が置換されていてもよいα-シクロデキストリンであり、第1のポリマー52がポリエチレングリコールであることが好ましい。
【0126】
ポリロタキサン50を構成する封鎖基53は、環状分子51が第1のポリマー52から脱離することを防止する機能を有する基であれば特に限定されないが、例えば、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニル等が挙げられる。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類、ステロイド類等が挙げられる。
【0127】
置換ベンゼン類、置換多核芳香族類を構成する置換基としては、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニル等が挙げられる。置換基は1つ又は複数存在してもよい。なお、異なる2つ以上の封鎖基53を用いてもよい。
【0128】
樹脂材料21中において、少なくとも一部のポリロタキサン50が、環状分子51を介して、第2のポリマー60と結合しているが、樹脂材料21中には、第2のポリマー60と結合していないポリロタキサン50が含まれていてもよいし、ポリロタキサン50同士が結合していてもよい。
【0129】
第2のポリマー60は、環状分子51を介して、ポリロタキサン50と結合するものである。第2のポリマー60が有する環状分子51と結合する官能基としては、例えば、-OH基、-NH基、-COOH基、エポキシ基、ビニル基、チオール基、光架橋基等が挙げられる。なお、光架橋基としては、例えば、ケイ皮酸、クマリン、カルコン、アントラセン、スチリルピリジン、スチリルピリジニウム塩、スチリルキノリウム塩等が挙げられる。
【0130】
第2のポリマー60としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/又はこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びその他オレフィン系単量体との共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル-スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-メチルアクリレート共重合樹脂等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ナイロン等のポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類の各種樹脂の骨格を有し、前述した官能基を有するものが挙げられる。
【0131】
また、第2のポリマー60と環状分子51とは、架橋剤により化学結合されていてもよい。
【0132】
架橋剤の分子量は、2000未満であることが好ましく、1000未満であることがより好ましく、600未満であることがさらに好ましく、400未満であることが最も好ましい。
【0133】
架橋剤としては、例えば、塩化シアヌル、トリメソイルクロリド、テレフタロイルクロリド、エピクロロヒドリン、ジブロモベンゼン、グルタールアルデヒド、フェニレンジイソシアネート、ジイソシアン酸トリレイン、ジビニルスルホン、1,1’-カルボニルジイミダゾール、アルコキシシラン類等が挙げられる。なお、異なる2種以上の架橋剤を用いてもよい。
【0134】
また、第2のポリマー60は、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。樹脂材料21中において、少なくとも一部の第2のポリマー60が、環状分子51を介して、ポリロタキサン50と結合しているが、樹脂材料21中、ポリロタキサン50と結合していない第2のポリマー60が含まれていてもよいし、第2のポリマー60同士が結合していてもよい。なお、異なる2種以上の第2のポリマー60を用いてもよい。
【0135】
樹脂材料21中における第2のポリマー60の含有量に対するポリロタキサン50の含有量の比率は、重量比で、1/1000以上であることが好ましい。
【0136】
[1-2-2]その他の成分
接合部20は、樹脂材料以外の成分を含んでいてもよい。
【0137】
このような成分としては、例えば、金属粒子、セラミックス粒子、スペーサー、不織布、織布等の繊維性基材、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、改質剤、防錆剤、充填剤、フェライト等の電磁波吸収材、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、プライマー、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、レベリング剤、増粘剤、分散剤、老化防止剤、難燃剤、加水分解防止剤、腐食防止剤等が挙げられる。
【0138】
接合部20が金属粒子を含んでいると、以下のような効果が得られる。
すなわち、前述したように、熱伝導体1の熱伝導性に主に寄与する部分は、熱伝導部10であるが、金属粒子は、一般に、接合部20を構成する樹脂材料21よりも高い熱伝導性を有しているため、接合部20中に金属粒子が含まれることにより、接合部20についての熱伝導性を向上させることができ、熱伝導体1全体としての熱伝導性のさらなる向上を図ることができる。
【0139】
特に、接合部20に含まれる1個又は複数個の金属粒子により、隣り合う熱伝導部10が接続されている場合、当該金属粒子が熱伝導部10間を熱的につなぐ「熱パス」となり、熱伝導体1全体としての熱伝導性をさらに向上させることができる。
【0140】
さらに、電磁波シールド性を有する金属材料で構成された金属粒子を含むことで、熱伝導体1に電磁波シールド機能も付与することができる。特に、例えば、第5世代移動通信で用いられるような高周波の電磁波に対するシールド機能を好適に付与することができる。
【0141】
金属粒子としては、Fe、Ag、Pt、Cu、Sn、Al及びNiよりなる群から選択される1種又は2種以上を含むものであることが好ましく、Feを含むものであることがより好ましい。
【0142】
金属粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状が好ましく、真球状がより好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
【0143】
より具体的には、金属粒子の形状係数SF-2は、100以上150以下であることが好ましく、100以上125以下であることがより好ましく、100以上120以下であることがさらに好ましい。
【0144】
形状係数SF-2は、粒子の投影周囲長を2乗した値を当該粒子の投影面積で割った値を4πで除し、さらに100倍して得られる数値であり、粒子の形状が球に近いほど100に近い値になる。
【0145】
形状係数SF-2は、例えば、以下のような測定により求めることができる。
すなわち、例えば、FE-SEMを用いた観察で、金属粒子100個について、投影面積S[μm]及び投影周囲長L[μm]を求め、下記式より算出される値を形状係数SF-2とする。そして、各金属粒子についての形状係数SF-2の平均値を、金属粒子の形状係数SF-2として採用する。
SF-2=((L/S)/4π)×100
【0146】
金属粒子の平均粒径は、特に限定されるものではないが、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3.0μm以下であることがより好ましい。
【0147】
これにより、上述した効果をさらに顕著なものとすることができる。
【0148】
なお、本明細書において、平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される重量基準の粒度分布において、小径側から累積50%になるときの粒径のことを言う。
【0149】
金属粒子としては、鉄粒子が好ましい。
鉄粒子としては、例えば、Fe(CO)を熱分解することにより製造される鉄粒子が挙げられる。
【0150】
このような鉄粒子は、非常に高純度であり、前述したような真球状をなすものであり、平均粒径も微細であることから、上述した効果を特に顕著なものとすることができる。
【0151】
接合部20中に金属粒子が含まれる場合、接合部20中における金属粒子の含有率(自然状態での含有率)は、1体積%以上50体積%以下であることが好ましく、10体積%以上30体積%以下であることがより好ましい。
【0152】
これにより、上述したような樹脂材料21を含むことによる効果と金属粒子を含むことによる効果とをバランスよく発揮することができる。
【0153】
接合部20がセラミックス粒子を含んでいると、接合部20の組織を安定化、均一化させることができ、接合部20中の空隙の割合や大きさも安定化できる。その結果、熱伝導体1の各部位での特性の不本意なばらつきをより効果的に防止することができる。
【0154】
セラミックス粒子の構成材料としては、各種セラミックスが挙げられるが、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物系セラミックス、炭化ケイ素等の炭化物系セラミックス、アルミナ等の酸化物系セラミックス等のセラミックス材料を用いた場合、熱伝導体1全体としての熱伝導性のさらなる向上を図ることができる。特に、接合部20に含まれる1個又は複数個のセラミックス粒子により、隣り合う熱伝導部10が接続されている場合、当該セラミックス粒子が熱伝導部10間を熱的につなぐ「熱パス」となり、熱伝導体1全体としての熱伝導性をさらに向上させることができる。
【0155】
接合部20がセラミックス粒子に加え、前述した金属粒子を含んでいる場合、前記熱パスは、セラミックス粒子及び金属粒子で形成されていてもよい。
【0156】
なお、セラミックス粒子は、シリカで構成されたものであってもよい。これにより、熱伝導体1の生産コストを抑制しつつ、前述した接合部20の組織の安定化、均一化等の効果が得られる。
【0157】
セラミックス粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状が好ましく、真球状がより好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
【0158】
セラミックス粒子の平均粒径は、特に限定されるものではないが、5μm以上200μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましく、20μm以上70μm以下であることがさらに好ましい。
【0159】
これにより、上述した効果をさらに顕著なものとすることができる。
【0160】
接合部20中におけるセラミックス粒子の含有率(自然状態での含有率)は、1体積%以上50体積%以下であることが好ましく、10体積%以上30体積%以下であることがより好ましい。
【0161】
これにより、上述したような樹脂材料21を含むことによる効果とセラミックス粒子を含むことによる効果とをバランスよく発揮することができる。
【0162】
ただし、接合部20中における樹脂材料、金属粒子、セラミックス粒子以外の成分の含有率は、5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましい。
【0163】
接合部20がスペーサーを含んでいると、接合部20の厚さの不本意なばらつきを好適に抑制することができる。また、接合部20を構成する樹脂材料21とスペーサーとの間に、空隙部2を好適に形成することができる。特に、スペーサーが後述するような大きさ、形状である場合に、このような効果はより顕著に発揮される。また、熱伝導体1の製造時に、端部から、接合部20を構成する樹脂材料21がはみ出すことを効果的に防止することができ、その結果、熱伝導体1が適用される部材に対して、接合部20が優先的に接触してしまい、熱伝導部10での接触が妨げられるという問題を効果的に防止することができ、実質的な熱伝導性をより確実に優れたものとすることができる。
【0164】
スペーサーの形状としては、例えば、回転楕円体状、円柱状、角柱状、針状等であってもよいが、球状であるのが好ましく、真球状であるのがより好ましい。
【0165】
これにより、接合部20の厚さの不本意なばらつきをより好適に抑制することができる。また、接合部20を構成する樹脂材料21とスペーサーとの間に、空隙部2をより好適に形成することができる。
【0166】
スペーサーが球状、特に真球状をなすものである場合、当該スペーサーの形状係数SF-2は、100以上150以下であることが好ましく、100以上125以下であることがより好ましく、100以上120以下であることがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0167】
スペーサーが球状、特に真球状をなすものである場合、当該スペーサーの平均粒径は、特に限定されないが、0.1μm以上100μm以下であることが好ましく、1μm以上50μm以下であることがより好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0168】
スペーサーは、いかなる材料で構成されたものであってもよく、例えば、金属材料、セラミックス材料、ガラス等で構成されたものであってもよいが、樹脂材料で構成されたものであるのが好ましい。
【0169】
これにより、スペーサーと樹脂材料21との密着性をより優れたものとすることができ、熱伝導体1の耐久性、信頼性をより優れたものとすることができる。
【0170】
スペーサーを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、フェノール系樹脂(ベークライトを含む)、フッ素系樹脂等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂(ベークライトを含む)、フッ素系樹脂が耐熱性の点で優れている。また、アクリル系樹脂は、加工時の柔らかさについても特に優れている。
【0171】
接合部20がスペーサーを含むものである場合、接合部20中におけるスペーサーの含有率は、0.1体積%以上20体積%以下であるのが好ましく、0.5体積%以上10体積%以下であるのがより好ましい。
【0172】
接合部20が繊維性基材を含んでいると、接合部20の厚さの不本意なばらつきを好適に抑制することができる。また、接合部20を構成する樹脂材料21と繊維性基材との間に、空隙部2を好適に形成することができる。また、熱伝導体1の製造時に、端部から、接合部20を構成する樹脂材料21がはみ出すことを効果的に防止することができ、その結果、熱伝導体1が適用される部材に対して、接合部20が優先的に接触してしまい、熱伝導部10での接触が妨げられるという問題を効果的に防止することができ、実質的な熱伝導性をより確実に優れたものとすることができる。
【0173】
上述したように、繊維性基材としては、例えば、不織布、織布等が挙げられるが、不織布が好ましい。
【0174】
繊維性基材を構成する繊維の構成材料としては、例えば、ガラス、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、合成ゴム等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、ポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0175】
これにより、繊維性基材の強度をより優れたものとすることができるとともに、繊維性基材と樹脂材料21との密着性をより優れたものとすることができ、熱伝導体1の耐久性、信頼性をより優れたものとすることができる。
【0176】
接合部20が繊維性基材を含むものである場合、当該繊維性基材の厚さは、3μm以上300μm以下であるのが好ましく、5μm以上100μm以下であるのがより好ましい。
【0177】
図1中、tで示す接合部20の厚さは、1μm以上2000μm以下であることが好ましく、2μm以上1500μm以下であることがより好ましく、3μm以上1000μm以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0178】
熱伝導体1中に占める接合部20の割合(自然状態での割合。以下同様。)は、15体積%以上70体積%以下であることが好ましく、20体積%以上65体積%以下であることがより好ましく、25体積%以上60体積%以下であることがさらに好ましく、30体積%以上60体積%以下であることが最も好ましい。
【0179】
これにより、熱伝導体1中に占める熱伝導部10の割合を十分に高いものとしつつ、熱伝導体1全体としての柔軟性もより優れたものとしやすく、より確実に、上述した本発明による効果をより顕著に発揮させることができる。
【0180】
[1-3]空隙部
空隙部2は、熱伝導体1において、熱伝導部10及び接合部20が存在していない部分である。空隙部2には、通常、空気や、接合部20を構成する樹脂材料21が硬化した際に発生するガス等の気体が含まれている。
【0181】
熱伝導体1が空隙部2を有することで、熱伝導体1が押圧された際に、空隙部2がクッションとなり、熱伝導体1が押圧されたときの変形、特に、接合部20の変形を、この空隙部2で吸収することができ、過度な変形を抑制することができる。また、熱伝導体1に適度な柔軟性を付与することが可能となり、はみ出し量について前記条件を満たすように好適に調整することができる。
【0182】
熱伝導体1中において、空隙部2は、少なくとも接合部20と隣接する部位に設けられている。
【0183】
熱伝導体1中に占める空隙部2の割合(自然状態での割合。以下同様。)は、5体積%以上65体積%以下であることが好ましく、5体積%以上50体積%以下であることがより好ましく、6体積%以上40体積%以下であることがさらに好ましく、7体積%以上32体積%以下であることが最も好ましい。
これにより、上述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0184】
熱伝導体1中に占める熱伝導部10の割合をVC[体積%]、熱伝導体1中に占める接合部20の割合をVJ[体積%]、熱伝導体1中に占める空隙部2の割合をVV[体積%]としたとき、25≦[(VJ+VV)/(VC+VJ+VV)]×100≦90の関係を満たすことが好ましく、25≦[(VJ+VV)/(VC+VJ+VV)]×100≦85の関係を満たすことがより好ましく、31≦[(VJ+VV)/(VC+VJ+VV)]×100≦80の関係を満たすことがさらに好ましく、37≦[(VJ+VV)/(VC+VJ+VV)]×100≦75の関係を満たすことが最も好ましい。
これにより、上述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0185】
押圧状態とする前の状態(自然状態)における熱伝導体1の密度は、0.6g/cm以上2.5g/cm以下であることが好ましく、0.9g/cm以上2.0g/cm以下であることがより好ましい。
【0186】
従来の熱伝導体、例えば、ヒートシンクといった放熱部材に多く用いられているアルミニウムの密度は、約2.7g/cmである。
【0187】
熱伝導体1における熱伝導部10及び接合部20を構成する材料として、上述したような材料を用いることにより、全体としての密度を、従来の熱伝導体よりも低くすることができる。
【0188】
これにより、熱伝導体1を特に軽量なものとすることができる。そして、熱伝導体1が電子機器等に搭載された場合に、該電子機器等の軽量化を妨げない。すなわち、電子機器等をより軽量なものとすることができる。
【0189】
また、熱伝導体1は、図3図4に示すように、第1の方向と直交する第2の方向から平面視した際の熱伝導体1の面積をS3[cm]とし、第1の方向から0.2MPaで押圧した押圧状態で第2の方向から観察した際の熱伝導体1の面積をS4[cm]とした場合に、5≦[(S3-S4)/S3]×100≦50の条件を満たすことが好ましく、7≦[(S3-S4)/S3]×100≦40の条件を満たすことがより好ましく、10≦[(S3-S4)/S3]×100≦25の条件を満たすことがさらに好ましい。
【0190】
図3図4に示すように、熱伝導体1を第2の方向から平面視した際に、押圧状態の熱伝導体1の面積S4は、自然状態の熱伝導体1の面積S3に比べて、小さくなる。
【0191】
面積S3、S4が、前記条件を満たすことにより、上述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0192】
なお、S3、S4の値としては、第1の方向と直交する複数の方向から観察される面積の平均値、例えば、x方向から観察される面積とy方向から観察される面積との平均値のように、第1の方向と直交するとともに、相互に直交する2方向から観察される面積の平均値を採用することができる。後述する実施例においても、S3、S4の値としては、この値を採用するものとする。
【0193】
第1の方向についての初期状態、言い換えると、自然状態の熱伝導体1の長さをL0[mm]、第1の方向から1.0MPaで1分間押圧した後に、押圧状態から解放し、1分間放置する操作を、繰り返し1000回行った時点での第1の方向についての熱伝導体1の長さをL1[mm]としたとき、0.70≦L1/L0の関係を満たすことが好ましく、0.75≦L1/L0の関係を満たすことがより好ましく、0.80≦L1/L0≦1.00の関係を満たすことがさらに好ましい。
【0194】
これにより、熱伝導体1は、押圧状態と開放とを繰り返しても、十分に復元するものとなり、熱伝導体1の耐久性が特に優れたものとなる。また、熱伝導体1は、好適に再利用できるものとなる。
【0195】
熱伝導部10が黒鉛シートで構成されたものである場合、0.80≦L1/L0であることが好ましく、0.83≦L1/L0であることがより好ましく、0.85≦L1/L0≦1.00であることがさらに好ましい。
これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
【0196】
熱伝導部10がアルミニウムで構成されたものである場合、0.70≦L1/L0であることが好ましく、0.73≦L1/L0であることがより好ましく、0.75≦L1/L0≦1.00であることがさらに好ましい。
これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
【0197】
熱伝導体1を第1の方向から0.2MPaで押圧した押圧状態での、第1の方向での熱伝導率の実測値は、50W/(m・K)以上であることが好ましく、70W/(m・K)以上1200W/(m・K)以下であることがより好ましく、100W/(m・K)以上800W/(m・K)以下であることがさらに好ましい。
【0198】
これにより、押圧状態での熱伝導体1と適用される部材との密着性が向上し、界面熱抵抗を低く抑えて実質的な熱伝導率を特に高いものとすることができる。
【0199】
ここで、熱伝導率の実測値は、例えば、米国規格 ASTM D5470に準拠した方法により測定することができる。
【0200】
また、熱伝導率の実測値は、例えば、熱拡散率・熱伝導率測定装置(アイフェイズ社製、ai-Phase Mobile M3シリーズ)を用いた測定により求めることもできる。測定時における温度は、50℃とすることができる。
【0201】
本実施形態では、熱伝導体1を押圧される面が40mm×40mmの正方形となるように形状を調整したサンプルを用いて測定した値を、熱伝導率の実測値とする。
【0202】
[2]熱伝導体の製造方法
次に、本発明の熱伝導体の製造方法について説明する。
【0203】
図7は、鱗片状黒鉛で構成された熱伝導部形成用部材を模式的に示す断面図である。図8は、接合部形成用組成物付着工程、巻回工程に用いる装置の一例を模式的に示す図である。図9は、巻回工程において、熱伝導部形成用部材を、トラバース巻きでロールの表面に巻回する様子を示す図であり、図9(a)は、巻取りロールR2に対し、熱伝導部形成用部材10’の一巻き目(一層目)の状態を示す図であり、図9(b)は、熱伝導部形成用部材10’の二巻き目(二層目)の状態を示す図である。図10は、切開工程で得られた切開体を模式的に示す図である。図11は、切開体を押圧して、切開体の平坦性をより高くした状態を模式的に示す図である。図12は、スライス工程の様子を模式的に示す図である。
【0204】
本発明の熱伝導体の製造方法は、複数の熱伝導部10と、各熱伝導部10を接合する接合部20とを備える熱伝導体1の製造方法であって、熱伝導部10の形成に用いる熱伝導部形成用部材10’を用意する熱伝導部形成用部材用意工程と、熱伝導部形成用部材10’の表面に、接合部20の形成に用いる接合部形成用組成物20’を付着させる接合部形成用組成物付着工程とを有する。そして、熱伝導体1は、熱伝導部10及び接合部20が存在していない空隙部2を有するものであり、第1の方向から平面視した際の熱伝導体1の面積をS0[cm]とし、第1の方向から0.2MPaで押圧した押圧状態で第1の方向から平面視した際の熱伝導体1の面積をS1[cm]とした場合に、0.5≦[(S1-S0)/S0]×100≦20の条件を満たす。
【0205】
これにより、使用時において接触する部材に対する密着性の確保と圧縮時の過度な変形の抑制とを両立した熱伝導体1を効率よく製造できる熱伝導体1の製造方法を提供することができる。
【0206】
また、本発明の熱伝導体の製造方法は、複数の熱伝導部10と、各熱伝導部10を接合する接合部20とを備える熱伝導体1の製造方法であって、熱伝導部10の形成に用いる長尺の熱伝導部形成用部材10’を用意する熱伝導部形成用部材用意工程と、熱伝導部形成用部材10’の表面に、接合部20の形成に用いる接合部形成用組成物20’を付着させる接合部形成用組成物付着工程と、接合部形成用組成物20’が付着した熱伝導部形成用部材10’を、トラバース巻きで、ロール(巻取りロールR2)の周面に巻回して筒状の巻回体30を得る巻回工程と、巻回体30を、ロールの軸方向に対して非垂直な方向で切り開き、切開体40を得る切開工程とを有することを特徴とする。
【0207】
これにより、使用時において接触する部材に対する密着性の確保と圧縮時の過度な変形の抑制とを両立した熱伝導体1を効率よく製造できる熱伝導体1の製造方法を提供することができる。特に、接合部形成用組成物20’が付着した熱伝導部形成用部材10’を、トラバース巻きで、ロールの周面に巻回することで、例えば、枚葉のシート状原料を用いる場合等に比べて、熱伝導体1をより効率よく製造することができる。
【0208】
また、本実施形態の熱伝導体の製造方法は、接合部形成用組成物付着工程に先立って、接合部20の形成に用いる接合部形成用組成物20’を用意する接合部形成用組成物用意工程を有している。
【0209】
[2-1]熱伝導部形成用部材用意工程
熱伝導部形成用部材用意工程では、熱伝導部10の形成に用いる熱伝導部形成用部材10’を用意する。
【0210】
[2-1-1]熱伝導部形成用部材
接合部形成用組成物付着工程で用いる熱伝導部形成用部材10’は、熱伝導体1において、熱伝導部10となるべきものである。
【0211】
本工程で用意する熱伝導部形成用部材10’の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、長尺形状である。
【0212】
これにより、熱伝導体1の生産性をより優れたものとすることができる。また、製造される熱伝導体1の各部位での不本意な特性のばらつきをより効果的に抑制することができる。
【0213】
熱伝導部形成用部材10’は、実質的に単一成分から構成されることが好ましい。
これにより、形成される熱伝導部10の熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。また、一般に、熱伝導体1の製造コストを抑制する上でも有利である。
【0214】
熱伝導部形成用部材10’としては、形成すべき熱伝導部10に対応する材料で構成されたシート材を用いることができる。特に、長尺(テープ状)のシート材を用いることができる。
【0215】
熱伝導部形成用部材10’として長尺(テープ状)のシート材を用いる場合、熱伝導部形成用部材10’は、主面に凹凸を有する帯状をなすものであることが好ましい。
【0216】
これにより、熱伝導部形成用部材10’の表面に、接合部形成用組成物20’を好適に付着させることができる。また、熱伝導部形成用部材10’と接合部形成用組成物20’との間に好適に気泡を含ませることができる。そして、樹脂材料21の硬化後においては、熱伝導部10からの接合部20の脱落も好適に抑制される。また、空隙部2を好適に形成することができる。
【0217】
具体的には、熱伝導部形成用部材10’の最大高さ粗さRzは、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.5μm以上30μm以下であることがより好ましく、5.0μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
【0218】
なお、熱伝導部形成用部材10’の最大高さ粗さRzは、例えば、JIS B 0601-2013に準拠した方法により測定することができる。
【0219】
熱伝導部形成用部材10’として長尺(テープ状)のシート材を用いる場合、熱伝導部形成用部材10’の厚さは、5μm以上500μm以下であることが好ましく、10μm以上200μm以下であることがより好ましい。
【0220】
これにより、熱伝導体1中に占める熱伝導部10の割合を十分に高いものとしつつ、熱伝導体1全体としての柔軟性もより優れたものとしやすく、より確実に、上述した本発明による効果をより顕著に発揮させることができる。
【0221】
熱伝導部形成用部材10’として長尺(テープ状)のシート材を用いる場合、その幅は、2mm以上70mm以下であることが好ましく、5mm以上50mm以下であることがより好ましい。
【0222】
これにより、熱伝導体1中に占める熱伝導部10の割合を十分に高いものとしつつ、熱伝導体1全体としての柔軟性もより優れたものとしやすく、より確実に、上述した本発明による効果をより顕著に発揮させることができる。また、熱伝導部形成用部材10’の取り扱いのしやすさをより優れたものとすることができ、熱伝導体1の生産性をより向上させるうえで有利である。
【0223】
熱伝導部形成用部材10’として長尺(テープ状)のシート材を用いる場合、熱伝導部形成用部材10’として黒鉛を含むシート材(黒鉛シート材)を用いることにより、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体1の製造コストを抑制することができる。また、熱伝導体1のしなやかさ、柔軟性をより優れたものとすることができ、例えば、熱伝導体1が折れ曲がった時の復元力、さらには内部の空隙によるクッション性、過熱部と接触したときの適度な変形による接触性の向上等をより優れたものとすることができる。
【0224】
また、熱伝導部形成用部材10’として長尺(テープ状)のシート材を用いる場合、例えば、熱伝導部形成用部材10’として炭素繊維を用いて抄紙したシート材(炭素繊維抄紙シート材)を用いることができる。これにより、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体1の製造コストを抑制することができる。また、熱伝導体1のしなやかさ、柔軟性をより優れたものとすることができ、例えば、熱伝導体1が折れ曲がった時の復元力、さらには内部の空隙によるクッション性、過熱部と接触したときの適度な変形による接触性の向上等をより優れたものとすることができる。
【0225】
また、熱伝導部形成用部材10’として長尺(テープ状)のシート材を用いる場合、例えば、熱伝導部形成用部材10’として金属材料で構成されたシート材(金属シート材)を用いることができる。これにより、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体1の製造コストを抑制することができる。また、金属材料内部の結合力の強さから熱伝導体1の発塵性をより低くすることができる。また、熱伝導体1に、比較的大きな荷重を加えた場合であっても、座屈等による熱伝導体1の崩壊等、熱伝導体1の不可逆的な変形がより効果的に防止される。
【0226】
また、熱伝導部形成用部材10’としては、熱伝導性の材料で構成され、熱伝導部形成用部材10’の長手方向に延在する繊維を用いることができる。
【0227】
熱伝導部形成用部材10’として繊維を用いる場合、熱伝導部形成用部材10’は、熱伝導部形成用部材10’の長手方向に延在する繊維束を含むものを用いることができる。
【0228】
これにより、繊維束の隙間に接合部形成用組成物20’を好適に付着させることができ、熱伝導部形成用部材10’への接合部形成用組成物20’の付着量を適切なものとすることができる。また、熱伝導部形成用部材10’と接合部形成用組成物20’との間に好適に気泡を含ませることができる。そして、樹脂材料21の硬化後においては、熱伝導部10からの接合部20の脱落も好適に抑制される。また、空隙部2を好適に形成することができる。
【0229】
繊維束は、単繊維が数十本集まって束ねられた第1次線維束であってもよいし、さらに、その第1次線維束が数十本集合してより大きな束になった第2次線維束であってもよい。
【0230】
熱伝導部形成用部材10’として繊維を用いる場合、炭素繊維を好適に用いることができる。これにより、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体1の製造コストを抑制することができる。また、熱伝導体1のしなやかさ、柔軟性をより優れたものとすることができ、例えば、熱伝導体1が折れ曲がった時の復元力、さらには内部の空隙によるクッション性、過熱部と接触したときの適度な変形による接触性の向上等をより優れたものとすることができる。
【0231】
また、熱伝導部形成用部材10’として繊維を用いる場合、金属繊維を用いてもよい。これにより、熱伝導体1が適用される部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体1の製造コストを抑制することができる。また、金属材料内部の結合力の強さから熱伝導体1の発塵性をより低くすることができる。また、熱伝導体1に、比較的大きな荷重を加えた場合であっても、座屈等による熱伝導体1の崩壊等、熱伝導体1の不可逆的な変形がより効果的に防止される。
【0232】
[2-1-1-1]黒鉛シート材
黒鉛シート材としては、黒鉛に加えて、黒鉛以外の成分、例えば、バインダーや樹脂繊維を含むものを用いることもできるが、実質的に黒鉛のみで構成されるもの、すなわち、実質的に単一成分から構成されるものであることが好ましい。
【0233】
黒鉛は、鱗片状黒鉛であることが好ましい。
これにより、鱗片状黒鉛を熱伝導部10の延在方向に好適に配向させることができ、熱伝導部10の延在方向への熱伝導性を特に優れたものとすることができる。
より具体的には、鱗片状黒鉛をシート状に押し固めた場合、図7に示すように、鱗片状黒鉛FGは、シートの面内方向に配向される。すなわち、鱗片状黒鉛FGの厚さ方向がシートの厚さ方向に沿って、好適に配向する。そして、熱伝導体1とされた場合には熱伝導部10の延在方向への熱伝導性を特に優れたものとすることができる。
【0234】
黒鉛シート材は、例えば、鱗片状の黒鉛を加圧してシート状に成形する加圧工程と、シート状に形成した黒鉛を乾燥する乾燥工程と、シート状に形成した黒鉛を加熱加圧(熱プレス)する加熱加圧工程とを有する方法により製造されることが好ましい。
【0235】
加圧工程では、黒鉛を加圧してシート状に成形する。加圧工程は、例えば、10℃以上35℃以下で好適に行うことができる。このときのプレス圧力は、例えば、1MPa以上30MPa以下とすることができる。このとき、成形に用いる組成物は、黒鉛に加えて、水分やバインダー等を含んでいてもよい。また、加圧工程には、黒鉛に加えて、バインダー等の他の成分を含む組成物を用いてもよい。このような成分は、加熱等の処理により、除去又は炭化することができ、最終的に得られる黒鉛シート材中に残留することが好適に防止される。
【0236】
乾燥工程では、シート状に成形した黒鉛に乾燥処理を施す。これにより、余分な水分等の揮発成分を除去することができ、取り扱い性が向上する。また、黒鉛シート材の形状の安定性、強度が向上する。
【0237】
乾燥工程は、減圧、加熱、自然乾燥により行うことができる。加熱により行う場合、加熱温度は、40℃以上100℃以下とすることができる。
【0238】
加熱加圧工程では、シート状に成形した黒鉛を、シートの厚さ方向に、加熱加圧処理を施す。これにより、繊維状の黒鉛をより好適に配向させることができる。また、黒鉛シート材の形状の安定性、強度が向上する。
【0239】
加熱加圧工程における加熱温度は、例えば、100℃以上400℃以下とすることができる。これにより、最終的に得られる黒鉛シート材中に、水分やバインダー等が不本意に残存することをより効果的に防止することができる。また、加熱加圧工程におけるプレス圧力は、例えば、10MPa以上40MPa以下とすることができる。
【0240】
なお、図7に示すように、鱗片状黒鉛FGを押し固めてシート状とした場合、黒鉛シート材の表面付近では、鱗片状黒鉛FGが緻密に押し固められて固くなっている一方で、黒鉛シート材の厚さ方向の中心部付近では、鱗片状黒鉛FGは、粗く固められ比較的柔らかく、空隙部を有するものとなっている。
【0241】
このように、熱伝導部形成用部材10’が内部、特に、厚さ方向の中心部付近に空隙部を有していると、熱伝導部形成用部材10’内部の前記空隙部にも硬化性樹脂材料21’を侵入させることができ、製造される熱伝導体1における熱伝導部10と接合部20との密着性、熱伝導体1の耐久性等をさらに優れたものとすることができる。
【0242】
黒鉛シート材全体としての密度は、0.3g/cm以上2.1g/cm以下であることが好ましく、0.6g/cm以上1.8g/cm以下であることがより好ましく、0.9g/cm以上1.5g/cm以下であることがさらに好ましい。
【0243】
これにより、黒鉛シート材単独での面方向での熱伝導性や強度を特に優れたものとすることができる。
【0244】
このような条件を満たす黒鉛シート材としては、例えば、グラフォイル(NeoGraf社製)、PERMA FOIL(東洋炭素社製)、カーボンシート(東京窯業社製)、PGSグラファイトシート(パナソニック社製)、グラフィニティ(カネカ社製)等が挙げられる。
【0245】
[2-1-1-2]金属シート材
金属シート材としては、金属材料に加えて、金属材料以外の成分、例えば、バインダーや樹脂繊維を含むものを用いることもできるが、実質的に金属材料のみで構成されるもの、すなわち、実質的に単一成分から構成されるものであることが好ましい。
【0246】
金属シート材としては、例えば、金属材料をシート状に圧延した金属箔を好ましく用いることができる。
【0247】
金属シート材を構成する金属材料としては、各種の単体金属や合金等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、Al、Cu、Ag、Au、Mg及びZnよりなる群から選択される1種又は2種以上を含むものであることが好ましい。
【0248】
これにより、形成される熱伝導部10の熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。
【0249】
[2-1-1-3]炭素繊維
また、熱伝導部形成用部材10’を構成する炭素繊維としては、例えば、ピッチ系、PAN系等が挙げられるが、ピッチ系の炭素繊維が好ましい。
【0250】
ピッチ系炭素繊維としては、例えば、等方性ピッチ系、メソフェーズピッチ系が挙げられるが、メソフェーズピッチ系が好ましい。
【0251】
また、炭素繊維は、黒鉛を含んでいてもよい。
【0252】
炭素繊維の太さ(熱伝導部形成用部材10’が繊維束を含むものである場合、当該繊維束を構成する単繊維の太さ)は、特に限定されないが、1μm以上20μm以下であることが好ましく、3μm以上15μm以下であることがより好ましく、5μm以上12μm以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
【0253】
熱伝導部形成用部材10’がその長手方向に延在する繊維束を含むものである場合、当該繊維束(炭素繊維の繊維束)の太さは、1.0mm以上30mm以下であることが好ましく、1.5mm以上20mm以下であることがより好ましく、2.0mm以上15mm以下であることがさらに好ましい。
【0254】
これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。また、熱伝導部形成用部材10’の取り扱いのしやすさをより優れたものとすることができ、熱伝導体1の生産性をより向上させるうえで有利である。
【0255】
[2-2]接合部形成用組成物用意工程
接合部形成用組成物用意工程では、接合部20の形成に用いる接合部形成用組成物20’を用意する。
【0256】
[2-2-1]接合部形成用組成物
接合部形成用組成物付着工程で用いる接合部形成用組成物20’は、熱伝導体1において、接合部20となるべきものであり、硬化性樹脂材料21’を含む組成物である。
【0257】
硬化性樹脂材料21’としては、当該硬化性樹脂材料21’を硬化させて得られる樹脂材料21が柔軟性を有するものであれば特に限定されず、前述した樹脂材料21の前駆体、例えば、未硬化物、半硬化物を用いることができる。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
【0258】
また、硬化性樹脂材料21’は、後述する硬化工程においてガスを発生するものであることが好ましい。
これにより、熱伝導体1中に空隙部2を好適に形成することができる。
【0259】
接合部形成用組成物20’は、例えば、金属粒子、セラミックス粒子、スペーサー等を含んでいてもよい。
【0260】
これにより、これらの成分を含む接合部20を形成することができ、前述したような効果が得られる。
【0261】
接合部形成用組成物20’がこれらの成分を含む場合、最終的に得られる熱伝導体1の接合部20における含有率が前述した範囲内の値となるように、接合部形成用組成物20’中での含有率を調製するのが好ましい。
【0262】
接合部形成用組成物20’は、上述した成分以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、改質剤、防錆剤、充填剤、フェライト等の電磁波吸収材、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、プライマー、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、レベリング剤、増粘剤、分散剤、老化防止剤、難燃剤、加水分解防止剤、腐食防止剤等が挙げられる。
ただし、接合部形成用組成物20’中におけるこれらの成分の含有率は、5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましい。
【0263】
また、接合部形成用組成物20’は、溶媒成分を含んでいないことが好ましい。これにより、最終的に得られる熱伝導体1中に、溶媒成分が不本意に残存することを防止することができ、熱伝導体1の信頼性をより優れたものとすることができる。
【0264】
[2-3]接合部形成用組成物付着工程
接合部形成用組成物付着工程では、熱伝導部形成用部材10’の表面に、接合部20の形成に用いる接合部形成用組成物20’を付着させる。
本実施形態では、接合部形成用組成物20’は、硬化性樹脂材料21’を含む。
【0265】
接合部形成用組成物20’を熱伝導部形成用部材10’の表面に付着させる方法としては、例えば、各種塗布法、転写法、浸漬法等を用いることができ、より具体的には、例えば、バーコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、キスコーター、ロッドコーター、ディップコーター、スプレーコーターのいずれかを用いて塗布する方法等が挙げられる。
【0266】
これにより、熱伝導部形成用部材10’の表面に、接合部形成用組成物20’を連続的に適切に付着させることができ、製造される熱伝導体1の信頼性、熱伝導体1の生産性を向上させるうえで有利である。
【0267】
本工程は、例えば、図8に示す装置(ディップコーター)を用いて行うことができる。より具体的には、予め作製された熱伝導部形成用部材10’をロール状に巻き取った原反ロールR1を準備しておく。そして、原反としての熱伝導部形成用部材10’は、原反ロールR1から引き出されて、ガイドロールR3によりガイドされて搬送される。そして、例えば、液体状の接合部形成用組成物20’を溜めた液受け槽Mに、熱伝導部形成用部材10’を浸漬させる。これにより、液受け槽M内の接合部形成用組成物20’が、熱伝導部形成用部材10’の表面に付着する。
【0268】
ディップコーターを用いることによって、熱伝導部形成用部材10’の両面に、接合部形成用組成物20’を付着させることができるため、付着工程において、連続して接合部形成用組成物20’を効率よく付着させることが可能となる。
【0269】
接合部形成用組成物付着工程において、熱伝導部形成用部材10’と接合部形成用組成物20’との間に、気泡を含ませることが好ましい。
【0270】
これにより、樹脂材料21の硬化後において、熱伝導部10と接合部20との間に、好適に空隙部2を形成することができる。
【0271】
熱伝導部形成用部材10’と接合部形成用組成物20’との間に、気泡を含ませる方法としては、例えば、熱伝導部形成用部材10’の表面形状、接合部形成用組成物20’の粘度や、熱伝導部形成用部材10’に対する濡れ性を調整すること、及び、後述する巻回工程において、長尺状の熱伝導部形成用部材10’をトラバース巻きする際のピッチ、巻取速度等を調整すること等が挙げられる。
【0272】
また、熱伝導部形成用部材10’に接合部形成用組成物20’を付着させた後、硬化反応時に発生するガスを気泡の形成(空隙部2の形成)に利用することもできる。
【0273】
本工程は、接合部形成用組成物20’の粘度が、室温(20℃)での粘度より低くなるように、加熱された接合部形成用組成物20’を用いて行うことが好ましい。
【0274】
これにより、本工程において熱伝導部形成用部材10’に接合部形成用組成物20’をより好適に付着させることができるとともに、本工程終了後、例えば、巻回工程において、熱伝導部形成用部材10’に付着された接合部形成用組成物20’が冷却され、接合部形成用組成物20’の粘度を、本工程での粘度よりも低いものとすることができる。その結果、接合部形成用組成物付着工程よりも後の工程で、熱伝導部形成用部材10’に付着された接合部形成用組成物20’が不本意に流失することをより効果的に防止することができる。また、前述したような気泡が、後の工程で(例えば、巻回工程での押圧により)不本意に消失してしまうことをより好適に防止することができ、好適に空隙部2が形成された熱伝導体1をより確実に得ることができる。
【0275】
本工程での接合部形成用組成物20’の加熱温度は、特に限定されないが、接合部形成用組成物20’の粘度が以下の条件を満たすように設定することが好ましい。
【0276】
熱伝導部形成用部材10’に接合部形成用組成物20’を付着させる際の接合部形成用組成物20’の粘度は、500mPa・s以上50000mPa・s以下であることが好ましく、1500mPa・s以上45000mPa・s以下であることがより好ましく、2000mPa・s以上40000mPa・s以下であることがさらに好ましい。
【0277】
これにより、接合部形成用組成物20’を、熱伝導部形成用部材10’に所定の厚さ、所定の割合でより好適に付着させることができる。また、熱伝導部形成用部材10’と接合部形成用組成物20’との間に、より好適に気泡を含ませることができる。
【0278】
なお、接合部形成用組成物20’の粘度は、JIS Z8803:2011に準じた測定により求めることができる。
【0279】
また、例えば、本工程では、複数種の接合部形成用組成物20’を用いてもよいし、前述した接合部形成用組成物20’の構成成分の一部のみを含む材料と、他の一部の構成成分を含む材料とを、別々に組み合わせて用いてもよい。より具体的には、例えば、本工程では、硬化性樹脂材料21を含み、かつ、スペーサーを含まない接合部形成用組成物20’を用い、本工程と巻回工程との間に、接合部形成用組成物20’が付着した熱伝導部形成用部材10’に対して、スペーサーを付与してもよい。
【0280】
[2-4]巻回工程
巻回工程では、接合部形成用組成物20’が付着した熱伝導部形成用部材10’を、トラバース巻きで、巻取りロールR2の周面に巻回し、筒状の巻回体30を得る。
【0281】
[2-4-1]トラバース巻き
図9は、本発明で採用されるトラバース巻きの状態を模式的に示した図である。図9では、2つの方向にトラバース巻きする様子を例に挙げて示している。
なお、図9では、接合部形成用組成物20’の表示は省略し、熱伝導部形成用部材10’についてのみを示している。
【0282】
図9(a)に示すように、巻取りロールR2に対して一巻き目(一層目)の状態では、表面に接合部形成用組成物20’が付着した熱伝導部形成用部材10’が、巻取りロールR2に対し傾斜した状態で、矢印D1で示す向きに巻き取られている。具体的に、巻取りロールR2の中心軸cに垂直の線vに対し、プラス方向に角θ3だけ傾斜した方向d1に、熱伝導部形成用部材10’が巻き取られている。
【0283】
熱伝導部形成用部材10’は、例えば、巻取りロールR2の長手方向の一方の端部から、他方の端部に向かってトラバース巻きされるが、必ずしも、一方の端部から巻き始める必要はなく、例えば、巻取りロールR2の長手方向の中心部付近から巻き始めてもよい。
【0284】
このように、熱伝導部形成用部材10’を巻き取る方法としては、公知の方法を採用できる。例えば、熱伝導部形成用部材10’を一定の方向から供給するのに対して、巻取りロールR2を回転させながら、その巻き取る角度を適宜変更することで実施することができる。本実施形態においては、熱伝導部形成用部材10’が巻取りロールR2に巻き取られるに際して、隣接する熱伝導部形成用部材10’間で隙間gを維持して巻き取られていることが好ましい。このように、隙間をもってトラバース巻きすることで、熱伝導部形成用部材10’の歪みをより効果的に抑制できる。さらに、隙間をもってトラバース巻きすることで、二巻き目以上に巻き取った時に、下側(巻取りロールR2により近い側)の熱伝導部形成用部材10’の乱れを効果的に抑制できる。
【0285】
巻き取り方法は、例えば、巻取りロールR2を固定し、熱伝導部形成用部材10’の搬送をガイドする、図示しないガイドを振ってトラバース巻きする方法や、ガイドを固定し、巻取りロールR2を振ってトラバース巻きする方法が挙げられる。
【0286】
熱伝導部形成用部材10’が帯状(扁平状)の形状である場合には、巻取りロールR2を振ってトラバース巻きする方法が好ましい。巻取りロールR2を振ってトラバース巻きすることにより、帯状(扁平状)の形状を維持しやすくなる。さらに、熱伝導部形成用部材10’を巻き取る際に、熱伝導部形成用部材10’が歪まないように巻き取ることが好ましい。
【0287】
本実施形態において、トラバース巻きする際の熱伝導部形成用部材10’の隙間gは、20μm以上2000μm以下であることが好ましく、30μm以上1500μm以下であることがより好ましく、40μm以上1000μm以下であることがさらに好ましい。
【0288】
これにより、製造される熱伝導体1中に占める熱伝導部10の割合を十分に高いものとしつつ、熱伝導体1全体としての柔軟性もより優れたものとしやすく、上述した本発明による効果をより顕著に発揮させることができる。また、熱伝導体1の製造時における熱伝導部形成用部材10’のずり落ちや乱れをより効果的に抑制できる。
【0289】
図9(b)に示すように、巻取りロールR2に対して二巻き目(二層目)の状態では、熱伝導部形成用部材10’が、巻取りロールR2の中心軸cに垂直の線vに対し、マイナス方向に角θ4で傾斜した方向d2に、矢印D2で示す向きに巻き取られている。すなわち、垂直の線vに対する方向d2の傾斜方向は、一巻き目の方向d1の傾斜方向と反対側とされている。
【0290】
これにより、熱伝導体1の製造時における熱伝導部形成用部材10’の不本意な移動(ずれ)をより効果的に防止することができ、所望の携帯の熱伝導体1を容易かつ確実に製造することができる。また、例えば、製造される熱伝導体1に、比較的大きな荷重を加えた場合であっても、座屈等による熱伝導体1の崩壊等、熱伝導体1の不可逆的な変形をさらに効果的に抑制することができ、熱伝導体1の耐久性をさらに優れたものとすることができる。また、熱伝導体1を第1の方向から圧縮した際に、熱伝導体1に面圧がさらにかかりやすくなり、熱伝導体1と熱伝導体1が適用される部材との密着性をさらに高めることができる。また、熱伝導体1の第1の方向の圧力が加わった際に、当該圧力には、熱伝導部10と接合部20とを押し付ける方向の力の成分が含まれ、これにより、熱伝導部10と接合部20との密着性もさらに高められたものとなる。
【0291】
二巻き目においても、熱伝導部形成用部材10’は、隣接する熱伝導部形成用部材10’間で隙間gを維持して巻き取られている。
【0292】
二巻き目のトラバース巻きする隙間gは、一巻き目(一層目)の隙間gと同じであっても異なっていてもよい。隙間gの好ましい範囲としては、隙間gと同じである。
【0293】
トラバース巻きする角θ3、θ4の絶対値は、0.3°以上20°以下であることが好ましく、0.5°以上10°以下であることがより好ましく、0.7°以上10°以下であることがさらに好ましい。
【0294】
これにより、巻取りロールR2の端部で熱伝導部形成用部材10’を折り返す際に、歪みをより効果的に抑制できる。また、最終的に得られる熱伝導体1において、θ1、θ2の値(前記表面の法線方向と貫通熱伝導部10cの延在方向とのなす角)を前述した範囲の値に調整することが容易となり、前述した効果をより確実に得ることができる。
【0295】
なお、トラバース巻きの角度は、数学的な意味における厳密な数値ではなく、本発明の技術分野における、通常の誤差を含んでいてもよい。例えば、1°未満の差は、誤差として、同じ方向にトラバース巻きされていると解釈される。
【0296】
熱伝導部形成用部材10’をトラバース巻きする際の巻取り速度は、特に限定されないが、1.0m/分以上100m/分以下であることが好ましく、1.5m/分以上50.0m/分以下であることがより好ましく、2.0m/分以上15.0m/分以下であることがさらに好ましい。
【0297】
これにより、熱伝導部形成用部材10’の歪みを抑制しつつ、より好適にトラバース巻きできるとともに、接合部形成用組成物20’の付着量をより好適に制御しやすくなる。また、熱伝導部形成用部材10’と接合部形成用組成物20’との間により好適に気泡を含ませることができ、樹脂材料21の硬化後において、熱伝導体1中に空隙部2をより好適に形成することができる。
【0298】
熱伝導部形成用部材10’をトラバース巻きする際の巻取り張力は、特に限定されないが、1N以上100N以下であることが好ましく、5N以上50N以下であることがより好ましく、5N以上20N以下であることがさらに好ましい。
【0299】
これにより、熱伝導部形成用部材10’の歪みを抑制しつつ、より好適にトラバース巻きできるとともに、接合部形成用組成物20’の付着量をより好適に制御しやすくなる。また、熱伝導部形成用部材10’と接合部形成用組成物20’との間により好適に気泡を含ませることができ、樹脂材料21の硬化後において、熱伝導体1中に空隙部2をより好適に形成することができる。
【0300】
巻回工程において、1つの巻取りロールR2の周面に、1本の熱伝導部形成用部材10’(接合部形成用組成物20’が付着した熱伝導部形成用部材10’)を巻回してもよいが、1つの巻取りロールR2の周面に、接合部形成用組成物20’が付着した熱伝導部形成用部材10’を複数本巻回し、これらにより1つの巻回体30を得ることが好ましい。
【0301】
接合部形成用組成物20’が付着した熱伝導部形成用部材10’を複数本、1本の巻取りロールR2の長手方向に沿って配する。すなわち、巻取りロールR2の周面を、長手方向で複数の領域に分割して、それぞれの領域の周面に対して、1本の熱伝導部形成用部材10’をトラバース巻きする。
【0302】
1本の熱伝導部形成用部材10’が巻回される領域は、隣接する熱伝導部形成用部材10’がされる巻回される領域と、一部が重なっていてもよい。
【0303】
これにより、装置を大型化することなく、トラバース巻きする際の熱伝導部形成用部材10’の歪みを抑えるとともに、より効率よく巻回体30を得ることができ、熱伝導体1の生産性をより優れたものとすることができる。また、同一ロットで製造される複数個の熱伝導体1について、個体間での特性差の発生をより好適に抑制することができる。
【0304】
このようにして得られる巻回体30は、その中心から外周方向に向かって、熱伝導部形成用部材10’で構成された部分と、接合部形成用組成物20’で構成された部分とが、交互に配置された構造を有する。
【0305】
なお、図8では、熱伝導部形成用部材10’を、ガイドロールR3によりガイドして搬送する場合を示しているが、熱伝導部形成用部材10’は、ガイドロールR3以外の、図示しないガイドロールによって搬送されてもよいし、また、必要に応じて、ガイドロールによって搬送方向を変えてもよい。
【0306】
接合部形成用組成物20’が付着した熱伝導部形成用部材10’が巻回される巻取りロールR2の直径は、特に限定されないが、10cm以上100cm以下であることが好ましく、20cm以上60cm以下であることがより好ましい。
【0307】
これにより、熱伝導部形成用部材10’の歪みを抑制しつつ、より好適にトラバース巻きできるとともに、後の切開工程で巻回体30を切り開いて切開体40としたときに、巻回体30の内周と外周とでの曲率の差に起因するひずみを抑制しつつ、より効率よく巻回体30を得ることができる。
【0308】
なお、図示の構成では、接合部形成用組成物20’が付着した熱伝導部形成用部材10’を、断面が真円状の巻取りロールR2の周面に巻回しているが、これに限定されず、断面が楕円状や多角形状、トラック形状等のロールの周面に巻回してもよい。
【0309】
また、接合部20を前述した繊維性基材を含むものとして形成する場合、巻回工程で、前述した熱伝導部形成用部材10’とともに、繊維性基材を、巻取りロールR2に巻回してもよい。
【0310】
この場合、繊維性基材は、前述したのと同様の方法で接合部形成用組成物20’が付与されたものであってもよいし、接合部形成用組成物20’が付与されていないものであってもよい。
【0311】
繊維性基材として接合部形成用組成物20’が付与されたものを用いる場合、熱伝導部形成用部材10’としては、前述したようにして接合部形成用組成物20’が付与されたものを用いてもよいし、接合部形成用組成物20’が付与されていないものを用いてもよい。言い換えると、接合部形成用組成物付着工程において、熱伝導部形成用部材10’の代わりに、繊維性基材に対して、接合部形成用組成物20’を付着させてもよい。
【0312】
また、繊維性基材を用いる場合、少なくともその表面の一部に接着剤を塗布した状態で用いてもよい。
【0313】
[2-5]切開工程
切開工程では、巻回体30を、巻取りロールR2の軸方向に対して非垂直な方向で切り開き、切開体40を得る。
【0314】
硬化性樹脂材料21’を硬化させる硬化工程より前に、巻回体30を切開することにより、硬化性樹脂材料21’の硬化物である樹脂材料21を含む接合部20に比べて、より柔らかい状態で切開することができる。
【0315】
本工程では、円柱状の巻取りロールR2の軸方向に対して非垂直な方向であって、巻取りロールR2の軸方向の一方の端部から他方の端部にわたって、巻回体30の巻回方向に切り込みを入れ、切り込み部分で巻回体30を開きつつ巻取りロールR2から取り外し、切開体40とする。
【0316】
巻回体30を切り開く方向としては、巻取りロールR2の軸方向に対して非垂直な方向であれば、特に限定されず、例えば、巻取りロールR2の軸方向に対して略平行な方向であってもよいし、ロールの軸方向に対して斜め方向であってもよい。また、巻回体30を切り開く方向が異なる部位を有していてもよい。例えば、巻取りロールR2の軸方向に対して略平行な方向で切り開く部位と、ロールの軸方向に対して斜め方向に切り開く部位とを有していてもよい。
【0317】
巻回体30の切開方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、バンドソー、のこぎり、カッター、トリミングカッター、レーザー、超音波カッター、ウォーターカッター等を用いる方法が挙げられる。
【0318】
[2-6]硬化工程
硬化工程では、切開体40において、接合部形成用組成物20’に含まれる硬化性樹脂材料21’を硬化させる。
【0319】
本実施形態では、切開工程の後に、切開体40中に含まれる硬化性樹脂材料21’を硬化させる硬化工程を行う。
【0320】
図10に示すように、巻回体30を切り開いて切開体40とした時点では、通常、切開体40は、湾曲した状態である。巻回体30を切開する前に硬化性樹脂材料21’を硬化させた場合、湾曲した切開体40の平坦性を高めようとすると、切開体40の内周と外周とでの曲率の差に起因するひずみが生じてしまい、熱伝導部10と接合部20との間での剥離や密着性の低下、接合部20の破壊、熱伝導部10同士の接合の破壊等が生じやすい。これに対し、巻回体30を切開して平坦性を高めた切開体40に対して硬化性樹脂材料21’を硬化させる処理を施すことにより、前記のような問題の発生を効果的に防止することができる。
【0321】
本工程は、例えば、切開体40の内周側及び外周側を、それぞれ、平面に接触させた状態で、硬化性樹脂材料21’を硬化させることにより行うことができる。
【0322】
より具体的には、例えば、図11に示すように、切開体40を2枚の平板90の間に挟み込み、圧力をかけることで、熱伝導部10及び接合部20の平坦性を高めた状態で、硬化性樹脂材料21’を硬化させて樹脂材料21とすることができる。
【0323】
このときの圧力としては、特に限定されるものではないが、0MPa超100MPa以下とすることが好ましく、1MPa以上80MPa以下とすることがより好ましく、10MPa以上50MPa以下とすることがさらに好ましい。
【0324】
圧力が前記下限値未満であると、熱伝導部10及び接合部20の平坦性を十分に高めることが困難になる可能性がある。一方、圧力が前記上限値を超えると、隣り合う熱伝導部形成用部材10’間から、硬化性樹脂材料21’の流失が顕著となり、所望の厚さの接合部20を形成することが困難になる可能性がある。また、熱伝導部形成用部材10’と接合部形成用組成物20’との間に含まれた気泡が潰されたり、硬化性樹脂材料21’の硬化時に発生するガスが放出されたりしてしまい、樹脂材料21の硬化後において、熱伝導体1中に空隙部2を好適に形成することが困難になる可能性がある。
【0325】
また、切開体40を押圧しつつ硬化工程を行うことで、熱伝導部10と接合部20との間での剥離や密着性の低下、接合部20の破壊、熱伝導部10同士の接合の破壊等をより効果的に防止することができ、熱伝導体1の耐久性をより優れたものとすることができる。
【0326】
硬化性樹脂材料21’が熱硬化性樹脂である場合、加熱温度は、硬化性樹脂材料21’の条件等により異なるが、80℃以上220℃以下であることが好ましく、100℃以上190℃以下であることがより好ましい。
これにより、硬化性樹脂材料21’をより好適に硬化させることができる。
【0327】
以上のような各工程を経て、必要に応じて、所定の形状に加工することにより、熱伝導体1が得られる。
【0328】
[2-7]スライス工程
製造すべき熱伝導体1が、シート状をなすものである場合、前述した硬化工程の後に、両面において、熱伝導部10及び接合部20が表出するシート状にスライスするスライス工程を行う。
【0329】
これにより、例えば、所望の厚さを有するシート状の熱伝導体1を得ることができる。
【0330】
硬化工程の後に、例えば、図12中の切断線C-C’及び切断線D-D’に沿ってスライスすることで、厚さTのシート状の熱伝導体1を得ることができる。
【0331】
ここで、製造すべきシート状の熱伝導体1の厚さTが比較的小さいものであっても、硬化工程を経て、硬化性樹脂材料21’が、形状の安定性がより高い樹脂材料21となっているため、容易に、熱伝導体1をスライスすることができる。
【0332】
スライス方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、カッター、トリミングカッター、レーザー、超音波カッター、ウォーターカッター等を用いる方法が挙げられる。
【0333】
スライス方向は、切開体40の厚さ方向に略平行であってもよいし、切開体40の厚さ方向に対して斜め方向であってもよいが、切開体40の厚さ方向に対して斜め方向であるのが好ましい。
【0334】
これにより、最終的に得られる熱伝導体1において、θ1、θ2の値(前記表面の法線方向と貫通熱伝導部10cの延在方向とのなす角)を前述した範囲の値に調整することが容易となり、前述した効果をより確実に得ることができる。
【0335】
スライス方向と、切開体40の厚さ方向とのなす角の絶対値は、2°以上45°以下であることが好ましく、3°以上40°以下であることがより好ましく、4°以上35°以下であることがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0336】
また、スライス方向は、特に限定されないが、巻回方向(巻取りロールR2の軸方向)に対して、略平行であるのが好ましい。より具体的には、スライス方向と巻回方向(巻取りロールR2の軸方向)とのなす角の絶対値は、0°以上10°以下であるのが好ましく、0°以上7°以下であるのがより好ましく、0°以上5°以下であるのがさらに好ましい。
【0337】
熱伝導体1の表面、特に、熱伝導部10及び接合部20が表出している面に対して、研磨処理を施してもよい。これにより、熱伝導体1の表面粗さを好適に調整することができる。
【0338】
自然状態での、熱伝導体1の表面粗さRaは、0.1μm以上80μm以下であることが好ましく、0.1μm以上30μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
【0339】
これにより、熱伝導体1が適用される部材の表面形状により好適に追従することができ、前記部材と熱伝導体1との間での実質的な熱伝導性をより優れたものとすることができる。
【0340】
なお、熱伝導体1の表面粗さRaは、例えば、JIS B 0601-2013に準拠した方法により測定することができる。
【0341】
[3]熱伝導体の使用形態
次に、熱伝導体1の使用形態について説明する。
図13は、図5に示す熱伝導体の使用形態の一例を模式的に示す図である。図14は、図5に示す熱伝導体の使用形態の一例を模式的に示す図である。図15は、図1に示す熱伝導体の使用形態の一例を模式的に示す図である。図16は、図1に示す熱伝導体の使用形態の一例を模式的に示す図である。
【0342】
熱伝導体1は、例えば、各種の放熱部材や、高温部材と放熱部材とに接触し、高温部材の熱を放熱部材に伝達し、放熱部材から効率よく放熱させるための伝熱部材、加熱されるべき加熱対象物と当該加熱対象物よりも温度の高い高温部材とに接触し、高温部材から熱エネルギーを加熱対象物に伝達し、加熱対象物を効率よく加熱させるための伝熱部材等として用いられる。
【0343】
前述したように、熱伝導体1の形状は、特に限定されず、熱伝導体1の用途等に応じて、例えば、図1に示すようなブロック状、図5に示すようなシート状等にすることができる。
【0344】
以下の説明では、熱伝導体1が、発熱体である高温部材の表面の少なくとも一部に接触して用いられる場合について、中心的に説明する。
【0345】
高温部材としては、周囲雰囲気よりも高温になるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、各種の電子部品、電気部品等が挙げられ、より具体的には、コンピューターの中央演算処理装置(CPU)、画像処理用演算プロセッサ(GPU)、パワーデバイス、FPGA、ASIC、スマートフォンのSoC、組み込み機器のDSPやマイコン、あるいはトランジスタ等の半導体素子、レーザーダイオード、発光ダイオード(LED)やエレクトロルミネッセンス、液晶等の発光体、CCD、イメージセンサー(例えば、8K)等の撮像素子、スイッチングレギュレーター、モーターコイルやプリンターヘッド等が挙げられる。また、高温部材は、例えば、リレー、バッテリー、変圧器、電源系ユニット、軸受け、電子銃、真空管、高周波発信器等であってもよい。また、高温部材としては、例えば、内部に高温流体が存在する管体や容器等であってもよい。
【0346】
高温部材としては、その表面の最高温度が40℃以上250℃以下のものが好ましく、50℃以上200℃以下のものがより好ましく、60℃以上180℃以下のものがさらに好ましい。
【0347】
熱伝導体1がこのような高温部材に適用される場合に、より好適に熱伝導、放熱することができ、本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0348】
図13は、シート状の熱伝導体1を中央演算処理装置に適用した場合を示す。
マザーボード120上のサブストレート130上に、中央演算処理装置100のダイ(die)が設けられており、サブストレート130の、ダイが配された以外の部位に、配線140(ファーストキャッシュ)が設けられている。配線140は、アンダーフィル150により保護されているものの、アンダーフィル150の塗布範囲は、ダイの外周から幅1mm程度の範囲であり、配線140の一部は露出している。
【0349】
発熱体である高温部材としての中央演算処理装置100と、放熱部材である冷却フィン110との間に、シート状の熱伝導体1が配され、熱的に結合されている。このとき、熱伝導体1は、例えば、0.2MPa程度の圧力で押圧された状態で、中央演算処理装置100と冷却フィン110との間に配されている。
【0350】
前述したように、熱伝導体1は、熱伝導性に優れる材料で構成されるとともに、柔軟性にも優れ、高温部材及び放熱部材の表面への形状適合性に優れている。したがって、高温部材及び放熱部材の表面に比較的大きな凹凸がある場合等であっても、熱伝導体1は、これらの部材と好適に密着することができ、界面熱抵抗を低く抑え、高温部材から熱伝導体1への実質的な熱伝導性を優れたものとすることができる。
【0351】
これにより、高温部材である中央演算処理装置100からの熱を効果的に放熱することができ、熱による中央演算処理装置100の故障や誤作動といった不具合の発生を抑制することができ、中央演算処理装置100の製品寿命をより長いものとすることができる。
【0352】
また、本発明の熱伝導体1では、空隙部2を有することで、熱伝導体1が押圧されたときの過度な変形が抑制されているので、押圧された熱伝導体1のはみ出し部分が、露出している配線140に接触することによる、電子回路の電気的な短絡等の問題の発生を好適に防止することができる。
【0353】
熱伝導体1は、例えば、高温部材に対向する面側に、段差加工が施され、段差200が形成されたものであってもよい。
【0354】
段差加工は、例えば、熱伝導体1が適用される高温部材の表面形状に合わせて施されたものとすることができる。
【0355】
これにより、熱伝導体1を、例えば、複雑な表面形状を有している高温部材である部材に対しても、より確実に接触させることができ、このような部材の冷却に適用されるTIM(Thermal Interface Material)として好適に用いることができる。
【0356】
複雑な表面形状を有している部材としては、例えば、CCD、LED、小型センサーモジュール等が挙げられる。
【0357】
また、例えば、熱伝導体1が、基板上に設置された複数個の高温部材(部材210)を冷却するものである場合(複数個の高温部材(部材210)に跨るようにして配置して利用されるものである場合)において、これらの高温部材に対向する面側に、当該複数個の高温部材の表面を含む面形状に対応する段差加工が施されていることが好ましい。
これにより、これらの複数個の高温部材を同時に好適に冷却することができる。
【0358】
また、段差加工は、図14に示すように、熱伝導体1が複数の部品を有する部材に適用される場合に、一部の部品、例えば、電子部品のような高温部材(部材210)には接触し、他の一部の部品、例えば、基板のような非高温部材には接触しないように、高低差を設けたものであってもよい。
【0359】
段差加工、すなわち、段差200の形成タイミングは、特に限定されない。例えば、段差200は、熱伝導体1の製造過程において形成されるものであってもよいし、熱伝導体1の製造後において、ユーザー等により形成されるものであってもよい。
【0360】
また、熱伝導体1は、図15に示すように、有底凹部70を有するものであってもよく、この場合、例えば、有底凹部70内に、図示しない高温部材を設置して用いることができる。
【0361】
有底凹部70の形成タイミングは、特に限定されない。例えば、有底凹部70は、熱伝導体1の製造過程において形成されるものであってもよいし、熱伝導体1の製造後において、ユーザー等により形成されるものであってもよい。
【0362】
図15に示す構成では、高温部材が設置される有底凹部70は、その深さ方向が、図1に示す熱伝導体1のX方向と一致しているが、有底凹部70の方向は、これに限定されない。
【0363】
図15に示す構成で、適用される高温部材としては、例えば、マイクロモーターや高輝度LEDユニット、センサー発熱部、CCDカメラユニット等が挙げられる。
【0364】
熱伝導体1の外表面、特に、熱伝導部10と接合部20とが表出している面において、熱伝導体1を、図示しない放熱部材と接触させてもよい。
これにより、高温部材からの放熱効率をより優れたものとすることができる。
【0365】
熱伝導体1は、柔軟性に優れているため、有底凹部70の内面が変形して、有底凹部70内に設置された高温部材の表面形状により好適に追従し、密着性を十分に担保することができる。
【0366】
有底凹部70の大きさは、特に限定されないが、有底凹部70に部材が設置されておらず、外力が付与されていない自然状態での有底凹部70の幅(有底凹部70が円形の場合にはその直径)は、有底凹部70に設置される部材の幅よりも小さいものとすることが好ましい。
【0367】
これにより、熱伝導体1と有底凹部70に設置される部材との密着性をより優れたものとすることができ、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0368】
なお、有底凹部70は、スリットであってもよく、特に、有底凹部70に部材が設置されておらず、外力が付与されていない自然状態においては、実質的に閉塞したものであってもよい。
【0369】
また、熱伝導体1は、図16に示すように、貫通する凹部である孔部80を有するものであってもよく、この場合、例えば、孔部80に、高温部材を挿入して用いることができる。図16では、孔部80に、高温部材としての管体180を挿入して用いる構成を示している。
孔部80に、高温部材としての管体180を挿入して用いることにより、例えば、管体180の内部に、高温流体HFが存在する場合、管体180を冷却するだけでなく、管体180及び熱伝導体1を介して、高温流体HFも効率よく冷却することができる。すなわち、図16に示す構成では、冷却される高温部材は、管体180及び高温流体HFであると言うことができ、さらに言い換えると、熱伝導体1と直接接触しない高温流体HFも、熱伝導体1により効率よく冷却することができる。
【0370】
孔部80の形成タイミングは、特に限定されない。例えば、孔部80は、熱伝導体1の製造過程において形成されるものであってもよいし、熱伝導体1の製造後において、ユーザー等により形成されるものであってもよい。
【0371】
図16に示す構成では、高温部材が挿入される孔部80は、図1に示す熱伝導体1のX方向と一致するように設けられているが、孔部80の方向は、これに限定されない。
【0372】
熱伝導体1の外表面、特に、熱伝導部10と接合部20とが表出している面において、熱伝導体1を、図示しない放熱部材と接触させてもよい。
これにより、高温部材からの放熱効率をより優れたものとすることができる。
【0373】
熱伝導体1は、柔軟性に優れているため、孔部80の内周面が変形して、孔部80に通された管体180の表面形状により好適に追従し、密着性を十分に担保することができる。
【0374】
孔部80の大きさは、特に限定されないが、孔部80に部材が挿入されておらず、外力が付与されていない自然状態での孔部80の幅(孔部80が円形の場合にはその直径)は、孔部80に挿入される部材の幅(当該部材が円筒形又は円柱形のものの場合にはその外径)よりも小さいものとすることが好ましい。
【0375】
これにより、熱伝導体1と孔部80に挿入される部材との密着性をより優れたものとすることができ、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0376】
なお、孔部80は、スリットであってもよく、特に、孔部80に部材が挿入されておらず、外力が付与されていない自然状態においては、実質的に閉塞したものであってもよい。
【0377】
前述した本発明の熱伝導体を、電子機器に適用することもできる。このような電子機器は、例えば、電子部品と、放熱部材又は上述したような伝熱部材として本発明の熱伝導体とを有する。
【0378】
本発明の熱伝導体が適用される電子機器として、例えば、小型電子機器等が挙げられる。
【0379】
小型電子機器としては、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯通信端末機器、携帯電話、スマートフォン、携帯音楽プレーヤー、携帯ラジオ、携帯テレビ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯型ゲーム機器、電子書籍端末、携帯型医療機器等が挙げられる。
【0380】
このような電子機器は、実質的な伝熱性に優れた熱伝導体を備えているので、発熱部材である電子部品からの熱をより効率よく放熱することができ、装置やシステムの寿命低下、誤作動等のリスクをより効果的に低減することができる。また、押圧された際の過度な変形が抑えられた熱伝導体を備えているので、例えば、電子部品の配線の短絡による故障を防止することができ、電子機器の信頼性をさらに高いものとすることができる。
【0381】
特に、より高周波の電磁波を用いた第5世代移動通信に対応した携帯通信端末機器においては、電子部品のさらなる高集積化及び高速化により、発熱量が大きくなる傾向にあるため、本発明の熱伝導体を好適に適用することができる。これにより、上述した効果を特に顕著なものとすることができる。
【0382】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0383】
例えば、熱伝導体の製造方法においては、前述した工程に加え、他の工程(前処理工程、中間処理工程、後処理工程等)をさらに有していてもよい。
【0384】
また、熱伝導体の製造方法においては、前述した工程の順序の少なくとも一部を入れ替えてもよい。
【0385】
本発明の熱伝導体の製造方法は、複数の熱伝導部と、前記各熱伝導部を接合する接合部とを備える熱伝導体の製造方法であって、前記熱伝導部の形成に用いる熱伝導部形成用部材を用意する熱伝導部形成用部材用意工程と、前記熱伝導部形成用部材の表面に、前記接合部の形成に用いる接合部形成用組成物を付着させる接合部形成用組成物付着工程とを有し、前記熱伝導体は、前記熱伝導部及び前記接合部が存在していない空隙部を有するものであり、第1の方向から平面視した際の前記熱伝導体の面積をS0[cm]とし、前記第1の方向から0.2MPaで押圧した押圧状態で前記第1の方向から平面視した際の前記熱伝導体の面積をS1[cm]とした場合に、0.5≦[(S1-S0)/S0]×100≦20の条件を満たす前記熱伝導体を製造する方法、又は、複数の熱伝導部と、前記各熱伝導部を接合する接合部とを備える熱伝導体の製造方法であって、前記熱伝導部の形成に用いる長尺の熱伝導部形成用部材を用意する熱伝導部形成用部材用意工程と、前記熱伝導部形成用部材の表面に、前記接合部の形成に用いる接合部形成用組成物を付着させる接合部形成用組成物付着工程と、前記接合部形成用組成物が付着した前記熱伝導部形成用部材を、トラバース巻きで、ロールの周面に巻回して筒状の巻回体を得る巻回工程と、前記巻回体を、前記ロールの軸方向に対して非垂直な方向で切り開き、切開体を得る切開工程とを有する方法であればよく、これら2つの方法の条件を同時に満たすものでなくてもよい。
【0386】
より具体的には、例えば、0.5≦[(S1-S0)/S0]×100≦20の条件を満たす熱伝導体を製造する方法であれば、トラバース巻き以外の方法、例えば、平巻き等で接合部形成用組成物が付着した熱伝導部形成用部材を巻回してもよいし、接合部形成用組成物が付着した枚葉の熱伝導部形成用部材を積層して積層体とし、切開工程を有さない方法としてもよい。
【0387】
また、本発明の熱伝導体は、前述したように、複数の熱伝導部と、柔軟性を有する材料で構成され、前記各熱伝導部を接合する接合部とを備える熱伝導体であって、前記熱伝導部及び前記接合部が存在していない空隙部を有し、[(S1-S0)/S0]×100の値が所定の範囲内のものであれば、いかなる方法で製造されたものであってもよい。
【0388】
また、上述した説明では、熱伝導体を平面矩形状とした場合について中心的に説明したが、熱伝導体と接触する部材の形状等に応じて、熱伝導体の形状を適宜設定することができる。
【0389】
また、上述した説明では、熱伝導体を構成する熱伝導部及び接合部が平面状のものである場合について中心的に説明したが、熱伝導体を構成する熱伝導部、接合部のうちの少なくとも一部は、非平面状をなすもの、例えば、湾曲面状のもの、屈曲面状のもの等であってもよい。
【0390】
また、熱伝導体は、前述した熱伝導部、接合部、空隙部以外の構成を有するものであってもよい。
【実施例
【0391】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、特に温度条件を示していない処理については、20℃で行った。
【0392】
[4]熱伝導体の製造
各実施例及び各比較例の熱伝導体を以下のようにして製造した。
(実施例1)
まず、長尺(テープ状)の熱伝導部形成用部材として、厚さが127μm、幅が19mmの長尺状であり、鱗片状の黒鉛が、当該黒鉛シート材の厚さ方向に沿うように配向した黒鉛シート材を用意するとともに、接合部形成用組成物として、無溶媒一液型のエラストマー生地であるセルム・エラストマーを用意した。
【0393】
本実施例で用いた黒鉛シート材は、その表面付近では、鱗片状黒鉛が緻密に押し固められた状態となっており、黒鉛シート材の厚さ方向の中心部付近には、比較的多くの空隙部を有するものとなっていた。また、黒鉛シート材の密度は、1.1g/cmであった。また、JIS R 2616-2000に準拠した非定常熱線法により測定された20℃における黒鉛シート材の面内方向の熱伝導率は、160W/(m・K)であった。また、本実施例で用いた黒鉛シート材は、主面に凹凸を有する帯状をなすものであり、JIS B 0601-2013に準拠した方法により測定した、黒鉛シート材の最大高さ粗さRzは、70μmであった。
【0394】
本実施例で用いた接合部形成用組成物としてのセルム・エラストマーは、環状分子と、直鎖状の分子構造を有し環状分子を串刺し状に包接する第1のポリマーと、第1のポリマーの両端付近に設けられた封鎖基とを有するポリロタキサン、及び、第2のポリマーを含み、環状分子を介して、ポリロタキサンと第2のポリマーとが結合しているものである。
【0395】
次に、図8に示すような装置を用いて、ディップコーターにより、接合部形成用組成物を熱伝導部形成用部材の両面に付着させた。なお、熱伝導部形成用部材に付着させる接合部形成用組成物は、50℃に加温した状態とし、粘度が3000mPa・sとなるように調整した。
【0396】
その後、接合部形成用組成物が付着した熱伝導部形成用部材を、直径20cm、長さ20cmの巻取りロールの周面に、10Nの張力をかけつつ、2m/分の速度でトラバース巻きすることにより、巻回体を得た。
【0397】
このとき、巻取りロールの長さ方向に、10本の熱伝導部形成用部材(接合部形成用組成物が付着した熱伝導部形成用部材)を1mmの等間隔で配置し、熱伝導部形成用部材を、巻取りロールの軸に対して2°傾斜させた状態で、傾斜の向きを1巻き毎に反転(プラス方向、マイナス方向)させながら巻回した。熱伝導部形成用部材の傾斜角は、巻取りロールの軸に対してプラス方向、マイナス方向ともに同じとした。また、トラバース巻きする際の熱伝導部形成用部材(接合部形成用組成物が付着した熱伝導部形成用部材)の温度が30℃となるように調整した。
【0398】
次に、カッターを用いて、巻取りロールの軸方向と平行に切り込みを入れて巻回体を切り開くとともに、巻取りロールから取り外すことにより、切開体を得た。得られた切開体は、自然状態では湾曲している状態であったが、切開体の内周面、すなわち、巻取りロールと接触していた面の曲率は、巻取りロールと接触していたときよりも小さく、切開体は、巻回体よりも平坦性の高いものであった。
【0399】
次に、得られた切開体を2枚の平板の間に挟み、120℃に加熱しつつ、20MPaで1時間押圧した。このとき、巻回体の外周面に相当する部位全体が一方の平板に接触するようにして、巻回体の内周面に相当する部位全体が他方の平板に接触するようにした。
【0400】
その後、この押圧状態を維持しつつ、加熱温度を180℃に上昇させて12時間の加熱処理を行い、接合部形成用組成物を構成する硬化性樹脂材料を硬化させて、熱伝導体を得た。このようにして得られた熱伝導体は、加圧状態から解放した後も、平板と接触していた2つの面は、いずれも平坦面で、これらの面は、平行になっていた。
【0401】
次に、熱伝導体を、スライス方向と、切開体の厚さ方向とのなす角が30°で、かつ、巻取りロールの軸方向と平行な方向に沿って、1.0mmの厚さに切断した後、40mm×40mmの正方形状に切断し、さらに両主面を紙やすりで研磨することにより、後述する各種測定用、各種評価用に、図5に示すようなシート状の熱伝導体を複数個得た。
【0402】
このようにして得られたシート状の熱伝導体は、図5に示すように、複数の熱伝導部と接合部とを有するものであり、両主面において、熱伝導部及び接合部が表出したものであった。そして、熱伝導部は、黒鉛で構成され、接合部は、柔軟性を有する樹脂材料で構成されたものであった。また、熱伝導体は、熱伝導部及び接合部が存在していない空隙部を、接合部と隣接する部位に有していた。当該空隙部は、巻回工程において熱伝導部形成用部材と接合部形成用組成物との間に取り込まれた空気による気泡、及び、セルム・エラストマーの硬化反応時に発生したガスによるものであった。
【0403】
熱伝導体は、上面から平面視した際に、複数個の熱伝導部が、千鳥状に配置されているものであった。複数の熱伝導部のうち、少なくとも一部は、熱伝導体の内部に連続して設けられるとともに、平行な2つの表面に露出している貫通熱伝導部であった。
【0404】
熱伝導体において、熱伝導部形成用部材により得られた熱伝導部の厚さは127μmであり、樹脂材料で構成された接合部の厚さは、85μmであった。また、隣り合う熱伝導部の間隔は、1mmであった。
【0405】
熱伝導体に占める熱伝導部の割合は、60体積%であり、熱伝導体に占める接合部の割合は、33体積%であり、熱伝導体中に占める空隙部の割合は、7体積%であった。
【0406】
そして、熱伝導体中に占める熱伝導部の割合をVC[体積%]、熱伝導体中に占める接合部の割合をVJ[体積%]、熱伝導体中に占める空隙部の割合をVV[体積%]としたとき、[(VJ+VV)/(VC+VJ+VV)]×100の値は、40であった。
【0407】
また、自然状態における熱伝導体の密度は、1.1g/cmであった。
また、熱伝導体の両主面について、JIS B 0601-2013に準拠した方法により測定した表面粗さRaは、いずれも、1.5μmであった。
【0408】
(実施例2~6)
熱伝導部形成用部材の条件、接合部形成用組成物の条件、巻取り条件を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にしてシート状の熱伝導体を製造した。
【0409】
(実施例7)
熱伝導部形成用部材として、黒鉛シートの代わりに、メソフェーズピッチ系の炭素繊維の繊維束を用い、巻取り速度を変更した以外は、前記実施例1と同様にしてシート状の熱伝導体を製造した。
【0410】
本実施例で用いた炭素繊維の繊維束は、厚さが100μm、幅が19mmであり、当該繊維束を構成する炭素繊維の太さは、8μmであった。
【0411】
(比較例1、2)
熱伝導部形成用部材及び接合部形成用組成物の条件を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にしてシート状の熱伝導体を製造した。
【0412】
(比較例3)
本比較例では、市販の黒鉛シート材であるグラフォイル(NeoGraf社製)を40mm×40mmの正方形状に切断し、これを熱伝導シートとして用いた。
すなわち、本比較例の熱伝導体は、接合部を有さないものであった。
本比較例で用いた黒鉛シート材は、厚さが127μmであり、鱗片状の黒鉛が、当該黒鉛シート材の厚さ方向に沿うように配向したものであった。また、黒鉛シート材の表面付近では、鱗片状黒鉛が緻密に押し固められた状態となっており、黒鉛シート材の厚さ方向の中心部付近には、比較的多くの空隙部を有するものとなっていた。また、黒鉛シート材の密度は、1.1g/cmであった。また、JIS R 2616-2000に準拠した非定常熱線法により測定された20℃における黒鉛シート材の面内方向の熱伝導率は、160W/(m・K)であった。
【0413】
前記各実施例及び各比較例の熱伝導体の製造条件、熱伝導体の構成を表1にまとめて示す。また、表1には、自然状態での熱伝導体を、上面側(第1の方向)から平面視した際の熱伝導体の面積をS0[cm]、上面側(第1の方向)から0.2MPaで押圧した押圧状態で上面側(第1の方向)から平面視した際の熱伝導体の面積をS1[cm]、自然状態での熱伝導体を、側面側(第2の方向)から観察した際の熱伝導体の面積をS3[cm]、上面側(第1の方向)から0.2MPaで押圧した押圧状態で側面側(第2の方向)から観察した際の熱伝導体の面積をS4[cm]、上面側(第1の方向)から所定の圧力で押圧し、厚さ方向の圧縮率が20%とした押圧状態で、第1の方向から平面視した際の熱伝導体の面積をS1’[cm]とした場合の[(S1-S0)/S0]×100、[(S3-S4)/S3]×100、及び、[(S1’-S0)/S0]×100の値も示す。なお、S3、S4の値としては、前記正方形の1辺の方向(x方向)から観察される面積と、前記1辺と直交する方向(y方向)から観察される面積との平均値を採用した。
【0414】
【表1】
【0415】
[5]評価
前記のようにして得られた各実施例及び各比較例のシート状の熱伝導体について、以下の評価を行った。
【0416】
[5-1]押圧状態での実質的な熱伝導率
各熱伝導体を10mm×10mmの正方形に形状を調整した後、第1の方向(厚さ方向)に0.2MPaで押圧した状態で、米国規格 ASTM D5470に準拠した方法により、第1の方向での熱伝導率を測定した。測定時における熱伝導体の上下面の温度が約50℃になるように加熱ヒータを調整した。
【0417】
[5-2]非定常法による熱伝導性の測定
各熱伝導体の測定箇所に直径10mmのカーボンスプレーを施した状態で、レーザーフラッシュ法に準拠した非定常熱線法により、熱伝導率の測定を行った。
【0418】
[5-3]短絡防止の評価
まず、業務用大型サーバーのCPUを搭載したマザーボードを用意した。
【0419】
このマザーボード上のサブストレート上には、CPUのダイ(die)が設けられており、サブストレートの、ダイが配された以外の部位に、配線(ファーストキャッシュ)が設けられた構造を有している。配線の一部は、アンダーフィルで覆われてはおらず、露出した状態であった。
サブストレートの大きさは、40mm×28mmであり、ダイの大きさは、16mm×14mmであり、ダイの厚さは、0.14mmであった。
【0420】
次に、CPU上に、40mm×28mmの長方形に形状を調整した熱伝導体を設置し、当該熱伝導体に冷却フィンを固定した。
このとき、ダイと冷却フィンとの間に配された熱伝導体は、0.2MPaの圧力で押圧された状態であった。
【0421】
その後、電源を投入し、熱伝導体のはみ出し部分による、サブストレート上に設けられた配線の電気的な短絡(ショート)の発生の有無についても評価した。
〇:配線の短絡が発生しなかった。
×:配線の短絡が発生した。
【0422】
[5-4]耐久性の評価
厚さ方向(第1の方向)についての初期状態(自然状態)の熱伝導体の長さ(厚さ)をL0[mm]、第1の方向から1.0MPaで1分間押圧した後に、押圧状態から解放し、1分間放置する操作を、繰り返し1000回行った時点での第1の方向についての熱伝導体の長さをL1[mm]としたときのL1/L0の値を求め、以下の基準に従い評価した。L1/L0の値が大きいほど、耐久性に優れていると言える。
【0423】
A:L1/L0の値が0.90以上である。
B:L1/L0の値が0.80以上0.90未満である。
C:L1/L0の値が0.70以上0.80未満である。
D:L1/L0の値が0.70未満である。
【0424】
これらの結果を表2に示す。
【0425】
【表2】
【0426】
表2から明らかなように、各実施例に係る熱伝導体、すなわち、本発明に係る熱伝導体は、いずれも、実質的な熱伝導性に優れているとともに、押圧時の過度な変形が抑えられ、短絡等の問題の発生が好適に防止されていた。また、本発明に係る熱伝導体は、耐久性にも優れていた。これに対し、各比較例に係る熱伝導体では満足のいく結果が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0427】
本発明の熱伝導体は、複数の熱伝導部と、柔軟性を有する材料で構成され、前記各熱伝導部を接合する接合部とを備える熱伝導体であって、前記熱伝導部及び前記接合部が存在していない空隙部を有し、第1の方向から平面視した際の熱伝導体の面積をS0[cm]とし、前記第1の方向から0.2MPaで押圧した押圧状態で前記第1の方向から平面視した際の熱伝導体の面積をS1[cm]とした場合に、0.5≦[(S1-S0)/S0]×100≦20の条件を満たすことを特徴とする。そのため、使用時において接触する部材に対する密着性の確保と圧縮時の過度な変形の抑制とを両立した熱伝導体を提供することができる。また、本発明の熱伝導体の製造方法は、複数の熱伝導部と、前記各熱伝導部を接合する接合部とを備える熱伝導体の製造方法であって、前記熱伝導部の形成に用いる熱伝導部形成用部材を用意する熱伝導部形成用部材用意工程と、前記熱伝導部形成用部材の表面に、前記接合部の形成に用いる接合部形成用組成物を付着させる接合部形成用組成物付着工程とを有し、前記熱伝導体は、前記熱伝導部及び前記接合部が存在していない空隙部を有するものであり、第1の方向から平面視した際の前記熱伝導体の面積をS0[cm]とし、前記第1の方向から0.2MPaで押圧した押圧状態で前記第1の方向から平面視した際の前記熱伝導体の面積をS1[cm]とした場合に、0.5≦[(S1-S0)/S0]×100≦20の条件を満たす前記熱伝導体を製造することを特徴とする。そのため、使用時において接触する部材に対する密着性の確保と圧縮時の過度な変形の抑制とを両立した熱伝導体を効率よく製造できる熱伝導体の製造方法を提供することができる。また、本発明の熱伝導体の製造方法は、複数の熱伝導部と、前記各熱伝導部を接合する接合部とを備える熱伝導体の製造方法であって、前記熱伝導部の形成に用いる長尺の熱伝導部形成用部材を用意する熱伝導部形成用部材用意工程と、前記熱伝導部形成用部材の表面に、前記接合部の形成に用いる接合部形成用組成物を付着させる接合部形成用組成物付着工程と、前記接合部形成用組成物が付着した前記熱伝導部形成用部材を、トラバース巻きで、ロールの周面に巻回して筒状の巻回体を得る巻回工程と、前記巻回体を、前記ロールの軸方向に対して非垂直な方向で切り開き、切開体を得る切開工程とを有することを特徴とする。そのため、使用時において接触する部材に対する密着性の確保と圧縮時の過度な変形の抑制とを両立した熱伝導体を効率よく製造できる熱伝導体の製造方法を提供することができる。したがって、本発明の熱伝導体及び熱伝導体の製造方法の製造方法は、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0428】
1:熱伝導体,2:空隙部,10:熱伝導部,10a:第1の列,10b:第2の列,10c:貫通熱伝導部,10’:熱伝導部形成用部材,20:接合部,20’:接合部形成用組成物,21:樹脂材料,21’:硬化性樹脂材料,30:巻回体,40:切開体,50:ポリロタキサン,51:環状分子,52:第1のポリマー,53:封鎖基,60:第2のポリマー,70:有底凹部,80:孔部,90:平板,100:中央演算処理装置,110:冷却フィン,120:マザーボード,130:サブストレート,140:配線,150:アンダーフィル,180:管体,200:段差,210:部材,FG:鱗片状黒鉛,HF:高温流体,R1:原反ロール,R2:巻取りロール,R3:ガイドロール,M:液受け槽,t10:厚さ,t:厚さ,w10:幅,g10:間隔,L0:長さ,L1:長さ,T:厚さ,T:厚さ,T:厚さ,S0:面積,S1:面積,S3:面積,S4:面積,θ1:角,θ2:角,θ3:角,θ4:角,A-A':切断線,B-B':切断線,C-C':切断線,D-D':切断線,c:中心軸,D1:矢印,D2:矢印,d1:方向,d2:方向,e10:延在方向,g:隙間,g:隙間,v:垂直の線,V1:法線方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16