(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】調光装置、および照明コントロールシステム
(51)【国際特許分類】
H05B 45/31 20200101AFI20230908BHJP
H05B 47/10 20200101ALI20230908BHJP
【FI】
H05B45/31
H05B47/10
(21)【出願番号】P 2023083700
(22)【出願日】2023-05-22
【審査請求日】2023-05-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523190480
【氏名又は名称】株式会社イー・ティー・エル
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】小林 篤
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-156730(JP,A)
【文献】特開2022-168285(JP,A)
【文献】特開2017-212095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 39/00-39/10
45/00-45/58
47/00-47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源および負荷が直列に接続された前記負荷/電源側電流通路に設けられる調光装置であって、
前記負荷/電源側電流通路における一端と他端との間に設けられて、前記交流電源からの交流電流を整流する整流回路と、
前記一端と前記他端との間に設けられ、前記交流電源の正方向電圧に基づいて前記一端の側から前記他端の側に向けて電流を流通させる第一スイッチング素子と、
前記一端と前記他端との間に前記第一スイッチング素子と並列に設けられ、前記交流電源の逆方向電圧に基づいて前記他端の側から前記一端の側に向けて電流を流通させる第二スイッチング素子と、
前記第一スイッチング素子における導通状態と非導通状態とを切り換える第一ゲート駆動回路と、
前記第二スイッチング素子における導通状態と非導通状態とを切り換える第二ゲート駆動回路と、
前記整流回路の出力に基づき、前記交流電源の電圧のゼロクロス信号を生成するゼロクロス信号生成回路と、
前記第一スイッチング素子の前記正方向電圧における前記非導通状態の期間(以下、第一非導通期間)および前記導通状態の期間(以下、第一導通期間)、並びに、前記第二スイッチング素子の前記逆方向電圧における前記非導通状態の期間(以下、第二非導通期間)および前記導通状態の期間(以下、第二導通期間)を調整する導通調整器と、
前記第一ゲート駆動回路および前記第二ゲート駆動回路を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記ゼロクロス信号を検出するゼロクロス信号検出部と、
前記正方向電圧の始点となる前記ゼロクロス信号を検出した場合、前記第一非導通期間の経過後に、前記第一スイッチング素子を前記導通状態とするための第一ゲート駆動信号を前記第一ゲート駆動回路で生成させる第一信号生成指示部と、
前記逆方向電圧の始点となる前記ゼロクロス信号を検出した場合、前記第二非導通期間の経過後に、前記第二スイッチング素子を前記導通状態とするための第二ゲート駆動信号を前記第二ゲート駆動回路で生成させる第二信号生成指示部と、
を有する調光装置。
【請求項2】
前記コントローラは、さらに、
前記第一ゲート駆動回路において、前記第一スイッチング素子の出力電圧の上昇速度を調整可能となるように、該第一ゲート駆動信号を調整させる第一信号調整指示部と、
前記第二ゲート駆動回路において、前記第二スイッチング素子の出力電圧の上昇速度を調整可能となるように、該第二ゲート駆動信号を調整させる第二信号調整指示部と、
を有する請求項1に記載の調光装置。
【請求項3】
前記コントローラにおける前記第一信号調整指示部は、前記第一スイッチング素子の出力電圧が前記第一導通期間の開始時点よりも予め定めた所定の立ち上がり時間だけ遅れた時点での値となるまで、前記第一スイッチング素子の出力電圧を漸次上昇させることが可能となるように、前記第一ゲート駆動信号を調整させ、
前記コントローラにおける前記第二信号調整指示部は、前記第二スイッチング素子の出力電圧が前記第二導通期間の開始時点よりも前記立ち上がり時間だけ遅れた時点での値となるまで、前記第二スイッチング素子の出力電圧を漸次上昇させることが可能となるように、前記第二ゲート駆動信号を調整させる請求項2に記載の調光装置。
【請求項4】
前記コントローラにおける前記第一信号調整指示部は、予め定めた所定の立ち上がり時間で、前記第一ゲート駆動信号の電圧を最大値まで上昇させ、
前記コントローラにおける前記第二信号調整指示部は、前記立ち上がり時間で、前記第二ゲート駆動信号の電圧を最大値まで上昇させる請求項2に記載の調光装置。
【請求項5】
前記第一ゲート駆動回路は、
第一ゲート駆動信号(以下、調整前第一ゲート駆動信号)を生成可能な第一信号生成回路部と、
前記調整前第一ゲート駆動信号の電圧の上昇速度を調整して調整後第一ゲート駆動信号とし、該調整後第一ゲート駆動信号を出力可能な第一信号調整回路部と、
を有し、
前記第二ゲート駆動回路は、
前記第二ゲート駆動信号(以下、調整前第二ゲート駆動信号)を生成可能な第二信号生成回路部と、
前記調整前第二ゲート駆動信号の電圧の上昇速度を調整して調整後第二ゲート駆動信号とし、該調整後第二ゲート駆動信号を出力可能な第二信号調整回路部と、
を有し、
前記第一信号調整回路部および前記第二信号調整回路部のそれぞれは
、抵抗器、コンデンサ、およびコイルのうちの一種以上の素子を含む信号遅延回路を有し、
前記コントローラにおける前記第一信号調整指示部は、前記第一信号調整回路部の前記信号遅延回路における
少なくとも一種の前記素子の物性値を調整し、
前記コントローラにおける前記第二信号調整指示部は、前記第二信号調整回路部の前記信号遅延回路における
少なくとも一種の前記素子の物性値を調整し、
前記物性値は、
前記抵抗器においては抵抗値であり、前記コンデンサにおいては静電容量値であり、前記コイルにおいてはインダクタンス値である請求項2から4のいずれか一項に記載の調光装置。
【請求項6】
前記第一ゲート駆動回路は、前記第一ゲート駆動信号を生成し出力可能な第一D/Aコンバータを有し、
前記第二ゲート駆動回路は、前記第二ゲート駆動信号を生成し出力可能な第二D/Aコンバータを有し、
前記コントローラの前記第一信号生成指示部は、前記第一D/Aコンバータにおいて所定の電圧波形の前記第一ゲート駆動信号を生成させ、
前記コントローラの前記第二信号生成指示部は、前記第二D/Aコンバータにおいて所定の電圧波形の前記第二ゲート駆動信号を生成させる請求項1に記載の調光装置。
【請求項7】
前記コントローラにおける前記第一信号生成指示部は、前記第一スイッチング素子の出力電圧が前記第一導通期間の開始時点よりも予め定めた所定の立ち上がり時間だけ遅れた時点での値となるまで、前記第一スイッチング素子の出力電圧を漸次上昇させることが可能となるような前記第一ゲート駆動信号を生成させ、
前記コントローラにおける前記第二信号生成指示部は、前記第二スイッチング素子の出力電圧が前記第二導通期間の開始時点よりも前記立ち上がり時間だけ遅れた時点での値となるまで、前記第二スイッチング素子の出力電圧を漸次上昇させることが可能となるような前記第二ゲート駆動信号を生成させる請求項6に記載の調光装置。
【請求項8】
前記立ち上がり時間は、50〔μs〕以上1000〔μs〕以下となっている請求項3、4、および7のいずれか一項に記載の調光装置。
【請求項9】
前記負荷/電源側電流通路における前記一端と前記他端との間に設けられて前記第一スイッチング素子に直列接続され、自身のカソードが前記第一スイッチング素子の側に配置され、かつ自身のアノードが前記一端の側に配置された第一ダイオードと、
前記負荷/電源側電流通路における前記一端と前記他端との間に設けられて前記第二スイッチング素子に直列接続され、自身のカソードが前記第二スイッチング素子の側に配置され、かつ自身のアノードが前記他端の側に配置された第二ダイオードと、
をさらに備える請求項1から4、6、および7のいずれか一項に記載の調光装置。
【請求項10】
負荷と、
前記負荷を交流電源に直列に接続する負荷/電源側電流通路と、
負荷/電源側電流通路に設けられた請求項1から4、6、および7のいずれか一項に記載の調光装置と、
を備える照明コントロールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光装置、およびこれを備えた照明コントロールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED照明器具の調光装置が知られている。この調光装置には、交流電源の導通角をスイッチング素子で変化させる位相制御方式が用いられることがあり、このような位相制御方式の調光装置のスイッチング素子にはトライアックが通常使用される。しかしトライアックでは、交流電源電圧がゼロ以外の時に導通して電流が急に流れるためノイズが多く発生する。このためトライアックを用いた調光装置には、例えば雑音防止回路を組み込み、このようなノイズを抑えるようにしている。
【0003】
ところで逆位相制御方式を用いた調光装置も一般に知られている(例えば特許文献1)。逆位相制御方式の場合、スイッチング素子には急に電流が流れることがなくなり、上記のようなノイズの発生を抑えることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トライアックを用いた位相制御方式の調光装置の場合、雑音防止回路に含まれるコイルがLED照明器具と干渉することによって、さらなる可聴周波数(うなり音)を含むノイズが発生する可能性がある。また近年は照明器具の省電力化が進んで照明器具の消費電力が小さくなってきていることもあり、トライアックを用いた位相制御方式の調光装置には、保持電流を流すためのブリーダー抵抗が必要となってしまい、本来不要であった電力が消費されて省電力化が阻害されてしまうといった問題もある。
一方で逆位相制御方式の調光装置の場合には、トライアックのようなノイズの発生は抑えられ、かつ上記のようなブリーダー抵抗も必要ではないため省電力化を図ることができる。しかし逆位相制御方式の調光装置に対応していない照明器具(負荷)も一般に存在するため、汎用性が低いといった問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は、省電力化およびノイズの抑制を図りつつ、広く使用が可能な調光装置、およびこれを備えた照明コントロールシステムを提供する。
【0007】
本発明の一態様に係る調光装置は、交流電源および負荷が直列に接続された前記負荷/電源側電流通路に設けられる調光装置であって、前記負荷/電源側電流通路における一端と他端との間に設けられて、前記交流電源からの交流電流を整流する整流回路と、前記一端と前記他端との間に設けられ、前記交流電源の正方向電圧に基づいて前記一端の側から前記他端の側に向けて電流を流通させる第一スイッチング素子と、前記一端と前記他端との間に前記第一スイッチング素子と並列に設けられ、前記交流電源の逆方向電圧に基づいて前記他端の側から前記一端の側に向けて電流を流通させる第二スイッチング素子と、前記第一スイッチング素子における導通状態と非導通状態とを切り換える第一ゲート駆動回路と、前記第二スイッチング素子における導通状態と非導通状態とを切り換える第二ゲート駆動回路と、前記整流回路の出力に基づき、前記交流電源の電圧のゼロクロス信号を生成するゼロクロス信号生成回路と、前記第一スイッチング素子の前記正方向電圧における前記非導通状態の期間(以下、第一非導通期間)および前記導通状態の期間(以下、第一導通期間)、並びに、前記第二スイッチング素子の前記逆方向電圧における前記非導通状態の期間(以下、第二非導通期間)および前記導通状態の期間(以下、第二導通期間)を調整する導通調整器と、前記第一ゲート駆動回路および前記第二ゲート駆動回路を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記ゼロクロス信号を検出するゼロクロス信号検出部と、前記正方向電圧の始点となる前記ゼロクロス信号を検出した場合、前記第一非導通期間の経過後に、前記第一スイッチング素子を前記導通状態とするための第一ゲート駆動信号を前記第一ゲート駆動回路で生成させる第一信号生成指示部と、前記逆方向電圧の始点となる前記ゼロクロス信号を検出した場合、前記第二非導通期間の経過後に、前記第二スイッチング素子を前記導通状態とするための第二ゲート駆動信号を前記第二ゲート駆動回路で生成させる第二信号生成指示部と、を有する。
【0008】
上記調光装置では、前記コントローラは、さらに、前記第一ゲート駆動回路において、前記第一スイッチング素子の出力電圧の上昇速度を調整可能となるように、該第一ゲート駆動信号を調整させる第一信号調整指示部と、前記第二ゲート駆動回路において、前記第二スイッチング素子の出力電圧の上昇速度を調整可能となるように、該第二ゲート駆動信号を調整させる第二信号調整指示部と、を有していてもよい。
【0009】
上記調光装置では、前記コントローラにおける前記第一信号調整指示部は、前記第一スイッチング素子の出力電圧が前記第一導通期間の開始時点よりも予め定めた所定の立ち上がり時間だけ遅れた時点での値となるまで、前記第一スイッチング素子の出力電圧を漸次上昇させることが可能となるように、前記第一ゲート駆動信号を調整させ、前記コントローラにおける前記第二信号調整指示部は、前記第二スイッチング素子の出力電圧が前記第二導通期間の開始時点よりも前記立ち上がり時間だけ遅れた時点での値となるまで、前記第二スイッチング素子の出力電圧を漸次上昇させることが可能となるように、前記第二ゲート駆動信号を調整させてもよい。
【0010】
上記調光装置では、前記コントローラにおける前記第一信号調整指示部は、予め定めた所定の立ち上がり時間で、前記第一ゲート駆動信号の電圧を最大値まで上昇させ、前記コントローラにおける前記第二信号調整指示部は、前記立ち上がり時間で、前記第二ゲート駆動信号の電圧を最大値まで上昇させてもよい。
【0011】
上記調光装置では、前記第一ゲート駆動回路は、第一ゲート駆動信号(以下、調整前第一ゲート駆動信号)を生成可能な第一信号生成回路部と、前記調整前第一ゲート駆動信号の電圧の上昇速度を調整して調整後第一ゲート駆動信号とし、該調整後第一ゲート駆動信号を出力可能な第一信号調整回路部と、を有し、前記第二ゲート駆動回路は、前記第二ゲート駆動信号(以下、調整前第二ゲート駆動信号)を生成可能な第二信号生成回路部と、前記調整前第二ゲート駆動信号の電圧の上昇速度を調整して調整後第二ゲート駆動信号とし、該調整後第二ゲート駆動信号を出力可能な第二信号調整回路部と、を有し、前記第一信号調整回路部および前記第二信号調整回路部のそれぞれは信号遅延回路を有し、前記コントローラにおける前記第一信号調整指示部は、前記第一信号調整回路部の前記信号遅延回路における素子の物性値を調整し、前記コントローラにおける前記第二信号調整指示部は、前記第二信号調整回路部の前記信号遅延回路における素子の物性値を調整してもよい。
【0012】
上記調光装置では、前記第一ゲート駆動回路は、前記第一ゲート駆動信号を生成し出力可能な第一D/Aコンバータを有し、前記第二ゲート駆動回路は、前記第二ゲート駆動信号を生成し出力可能な第二D/Aコンバータを有し、前記コントローラの前記第一信号生成指示部は、前記第一D/Aコンバータにおいて所定の電圧波形の前記第一ゲート駆動信号を生成させ、前記コントローラの前記第二信号生成指示部は、前記第二D/Aコンバータにおいて所定の電圧波形の前記第二ゲート駆動信号を生成させてもよい。
【0013】
上記調光装置では、前記コントローラにおける前記第一信号生成指示部は、前記第一スイッチング素子の出力電圧が前記第一導通期間の開始時点よりも予め定めた所定の立ち上がり時間だけ遅れた時点での値となるまで、前記第一スイッチング素子の出力電圧を漸次上昇させることが可能となるような前記第一ゲート駆動信号を生成させ、前記コントローラにおける前記第二信号生成指示部は、前記第二スイッチング素子の出力電圧が前記第二導通期間の開始時点よりも前記立ち上がり時間だけ遅れた時点での値となるまで、前記第二スイッチング素子の出力電圧を漸次上昇させることが可能となるような前記第二ゲート駆動信号を生成させてもよい。
【0014】
上記調光装置では、前記立ち上がり時間は、50〔μs〕以上1000〔μs〕以下となっていてもよい。
【0015】
上記調光装置では、前記負荷/電源側電流通路における前記一端と前記他端との間に設けられて前記第一スイッチング素子に直列接続され、自身のカソードが前記第一スイッチング素子の側に配置され、かつ自身のアノードが前記一端の側に配置された第一ダイオードと、前記負荷/電源側電流通路における前記一端と前記他端との間に設けられて前記第二スイッチング素子に直列接続され、自身のカソードが前記第二スイッチング素子の側に配置され、かつ自身のアノードが前記他端の側に配置された第二ダイオードと、をさらに備えてもよい。
【0016】
本発明の一態様に係る照明コントロールシステムは、負荷と、前記負荷を交流電源に直列に接続する負荷/電源側電流通路と、負荷/電源側電流通路に設けられた上記の調光装置と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
上記の調光装置、および照明コントロールシステムによれば、省電力化およびノイズの抑制を図りつつ、広く使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る照明コントロールシステムの全体構成図である。
【
図2】上記照明コントロールシステムのコントローラの機能ブロック図である。
【
図3】上記照明コントロールシステムの調光装置の各回路、および各構成部品における電圧の波形図である。
【
図4】上記照明コントロールシステムの調光装置における制御フローを示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態の変形例に係る照明コントロールシステムの全体構成図である。
【
図6】上記照明コントロールシステムの実施例の実験結果を示す図であって、調光装置のスイッチング素子からの出力電圧の波形を示す。そして(a)は上記照明コントロールシステムの調光装置における波形を、(b)は上記照明コントロールシステムの調光装置において仮に逆位相制御を用いた調光装置での波形を示す。
【
図7】上記照明コントロールシステムの実施例の実験結果を示す図であって、スイッチング素子における突入電流発生の抑制効果を示す。そして(a)は上記照明コントロールシステムの調光装置によってゲート駆動信号の電圧の上昇速度を調整した場合の、(b)は仮にゲート駆動信号の電圧の上昇速度を調整しない場合のスイッチング素子の出力電圧、電流の波形を示す。
【
図8】上記照明コントロールシステムの実施例の実験結果を示す図であって、調光装置のノイズ発生の抑制効果を示す。そして(a)は上記照明コントロールシステムの調光装置によってゲート駆動信号の電圧の上昇速度を調整した場合の、(b)は仮にゲート駆動信号の電圧の上昇速度を調整しない場合のノイズレベルを周波数毎に示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(全体構成)
図1に示すように照明コントロールシステム100は、負荷となるLED照明器具1と、LED照明器具1を交流電源(商用電源)Eに接続する負荷/電源側電流通路2と、負荷/電源側電流通路2に設けられた調光装置3とを備えている。
【0020】
(LED照明器具)
LED照明器具1は例えば発光ダイオード(Light-Emitting Diode)を用いた照明器具である。設置位置は特に限定されない。なお本実施形態では負荷がLED照明器具1である場合について説明するが、負荷はこれに限定されるのものではなく、例えば白熱電球やクリプトン電球等であってもよい。
【0021】
(負荷/電源側電流通路)
負荷/電源側電流通路2は、LED照明器具1を交流電源Eに接続する配線である。ここで交流電源Eの周波数は50Hzであってもよいし60Hzであってもよく、当該周波数は特に限定されるものではない。負荷/電源側電流通路2は、交流電源Eの側の第一端子(一端)2a、およびLED照明器具1の側に第二端子(他端)2bを有している。
【0022】
(調光装置)
次に調光装置3について詳細に説明する。調光装置3は、負荷/電源側電流通路2の第一端子2aと第二端子2bとの間にわたって設けられている。よって本実施形態の調光装置3は二線式調光器である。具体的に調光装置3は、負荷/電源側電流通路2に接続される主電流通路10と、主電流通路10に設けられる第一スイッチング素子11、第二スイッチング素子12、第一ゲート駆動回路13、第二ゲート駆動回路14、整流回路15、ゼロクロス信号生成回路16、導通調整器17、およびコントローラ18とを備えている。
【0023】
(主電流通路)
主電流通路10は、負荷/電源側電流通路2の第一端子2aと第二端子2bとを接続する配線となっている。よって主電流通路10は、第一端子2aと第二端子2bとの間に設けられている。
【0024】
(第一スイッチング素子および第二スイッチング素子)
第一スイッチング素子11は、交流電源Eからの正方向電圧に基づいて、主電流通路10において第一端子2aの側から第二端子2bの側に向けて電流を流通させる。より具体的には、主電流通路10の中途位置の二点間を接続するように、すなわち負荷/電源側電流通路2の第一端子2aの側と第二端子2bの側とを接続するように第一電流通路21となる配線が設けられている。そしてこの第一電流通路21の中途位置に第一スイッチング素子11が設けられている。第一スイッチング素子11は、本実施形態では例えばnチャネル型の電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)となっている。
【0025】
また第一電流通路21においては、第一スイッチング素子11とは別体の第一ダイオード31が第一スイッチング素子11と直列に接続されている。第一ダイオード31は第一端子2aの側から第二端子2bの側に向けて電流を流通させるように、自身のカソード31aが第一スイッチング素子11の側に配置され、自身のアノード31bが第一端子2aの側に配置されている。
【0026】
第二スイッチング素子12は、主電流通路10において第一スイッチング素子11と並列に設けられており、交流電源Eからの逆方向電圧に基づいて、第二端子2bの側から第一端子2aの側に向けて電流を流通させる。より具体的には、第一電流通路21に対して並列に、主電流通路10の中途位置の二点間を接続するように、すなわち負荷/電源側電流通路2の第一端子2aの側と第二端子2bの側とを接続するように第二電流通路22となる配線が設けられている。そしてこの第二電流通路22の中途位置に第二スイッチング素子12が設けられている。第二スイッチング素子12は、本実施形態では例えば第一スイッチング素子11と同じチャネル型(nチャネル型)の電界効果トランジスタとなっている。なお第一スイッチング素子11および第二スイッチング素子12は特に限定されるものではなく、例えばバイポーラトランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等であってもよい。
【0027】
また第二電流通路22においては、第二スイッチング素子12とは別体の第二ダイオード32が第二スイッチング素子12と直列に接続されている。第二ダイオード32は第二端子2bの側から第一端子2aの側に向けて電流を流通させるように、自身のカソード32aが第二スイッチング素子12の側に配置され、自身のアノード32bが第二端子2bの側に配置されている。
【0028】
(第一ゲート駆動回路および第二ゲート駆動回路)
第一ゲート駆動回路13は、第一スイッチング素子11における導通状態と非導通状態とを切り換える回路である。第一ゲート駆動回路13は、フォトカプラによって構成された第一信号生成回路部41と、第一信号生成回路部41と第一スイッチング素子11との間に介在された第一信号調整回路部42とを有している。
【0029】
第一信号生成回路部41におけるフォトカプラは、不図示のフォトダイオードおよびフォトトランジスタを含み、フォトダイオードは詳しく後述するコントローラ18に電気的に接続され、フォトトランジスタは第一信号調整回路部42に接続されている。第一信号生成回路部41は、第一スイッチング素子11を導通状態とするための第一ゲート駆動信号(以下、調整前第一ゲート駆動信号)を生成する。
【0030】
第一信号調整回路部42は、第一信号生成回路部41および第一スイッチング素子11に電気的に接続され、調整前第一ゲート駆動信号の電圧の上昇速度を調整して調整後第一ゲート駆動信号とし、この調整後第一ゲート駆動信号を第一スイッチング素子11のゲート電極G1へ向けて出力可能となっている。具体的に第一信号調整回路部42は、信号遅延回路を有しており、本実施形態においてこの信号遅延回路は、素子として抵抗器およびコンデンサを含んでおり、詳しく後述するコントローラ18によって当該抵抗器の抵抗値(抵抗器の物性値)、および/または当該コンデンサの静電容量値(コンデンサの物性値)が調整されることによって調整前第一ゲート駆動信号の電圧の上昇速度が調整可能となっている。そしてこのように電圧の上昇速度を調整した調整後第一ゲート駆動信号によって、第一スイッチング素子11の出力電圧の上昇速度(時定数)を調整可能となっている。
なお第一信号生成回路部41および第一信号調整回路部42は、上記構成に限定されるものではなく、適宜変形可能である。具体的には第一信号調整回路部42は、例えば上記抵抗器に代えてコイルを含む信号遅延回路や、上記抵抗器を含まない信号遅延回路を有していてもよい。
【0031】
第二ゲート駆動回路14は、第一ゲート駆動回路13と同様の構成を有し、第二スイッチング素子12における導通状態と非導通状態とを切り換える回路である。すなわち第二ゲート駆動回路14は、フォトカプラによって構成された第二信号生成回路部45と、第二信号生成回路部45と第二スイッチング素子12との間に介在された第二信号調整回路部46とを有している。第二信号生成回路部45は、第二スイッチング素子12を導通状態とするための第二ゲート駆動信号(以下、調整前第二ゲート駆動信号)を生成する。
【0032】
また第二信号調整回路部46は、第一信号調整回路部42と同様に抵抗器およびコンデンサを含む信号遅延回路を有し、第二信号生成回路部45および第二スイッチング素子12に電気的に接続されている。そして第二信号調整回路部46では、第一信号調整回路部42と同様に抵抗器の抵抗値、および/またはコンデンサの静電容量値の調整によって調整前第二ゲート駆動信号の電圧の上昇速度が調整されて調整後第二ゲート駆動信号が生成され、この調整後第二ゲート駆動信号を第二スイッチング素子12のゲート電極G2に向けて出力可能となっている。そしてこのように電圧の上昇速度を調整した調整後第二ゲート駆動信号によって、第二スイッチング素子12の出力電圧の上昇速度(時定数)を調整可能となっている。
なお第二信号生成回路部45および第二信号調整回路部46は、上記構成に限定されるものではなく、第一信号生成回路部41および第一信号調整回路部42と同様に適宜変形可能である。
【0033】
(整流回路)
整流回路15は、主電流通路10における中途位置に配置され、第一スイッチング素子11および第二スイッチング素子12とは並列に設けられている。整流回路15は例えば不図示のブリッジダイオードによって構成され、第一端子2aと第二端子2bとの間の交流電圧を全波整流する。
【0034】
ここで整流回路15には、例えば不図示のコンデンサによって構成されたレギュレータ回路19が接続され、整流回路15によって全波整流された出力電圧を例えば平滑化し、直流電圧を生成する。レギュレータ回路19から出力された直流電圧は、詳しく後述する導通調整器17およびコントローラ18の電力として供給されるようになっている。
【0035】
(ゼロクロス信号生成回路)
ゼロクロス信号生成回路16は整流回路15に接続され、整流回路15によって全波整流された状態の直流電圧に基づき、第一端子2aと第二端子2bとの間の交流電圧のゼロクロス信号を生成する。ゼロクロス信号生成回路16は、整流回路15からの出力電圧が所定の閾値電圧Vthより低下してから当該閾値電圧Vthを超えるまでの期間に対応するパルス信号であるゼロクロスパルスPを生成する。そしてゼロクロスパルスPは、端子2a、2b間の上記正方向電圧、および上記逆方向電圧の始点となる。ゼロクロスパルスPは詳しく後述するコントローラ18に入力される。
【0036】
(導通調整器)
導通調整器17は、レギュレータ回路19と、詳しく後述するコントローラ18との間に介在されている。導通調整器17は例えば可変抵抗器によって構成され、導通調整器17における入力側端子17aがレギュレータ回路19に電気的に接続され、導通調整器17における摺動子に接続された摺動子側端子17bはコントローラ18に電気的に接続されている。導通調整器17では、入力側端子17aと摺動子側端子17bとの間の抵抗値が調整されることで、当該抵抗値に応じた出力電圧をコントローラ18に入力し、コントローラ18によって第一スイッチング素子11および第二スイッチング素子12における導通角(調光角ともいう)、すなわち後述する導通期間Tonを調整可能となっている。
【0037】
導通調整器17は例えばボリューム式の可変抵抗器を備え、照明コントロールシステム100の使用者によって操作されることで、第一スイッチング素子11および第二スイッチング素子12の導通角が調整されるようになっている。そしてゼロクロスから最小導通角(最小調光角)までの時間Tminと、ゼロクロスから最大導通角(最大調光角)までの時間Tmaxとの差分は、導通調整器17における抵抗値の可変範囲に対応している。
【0038】
(コントローラ)
コントローラ18は、ゼロクロス信号生成回路16からのゼロクロスパルスP、および導通調整器17からの出力電圧に基づき、第一ゲート駆動回路13および第二ゲート駆動回路14を制御する。コントローラ18は例えばマイクロプロセッサによって構成されている。
【0039】
そして
図2に示すようにコントローラ18は、ゼロクロス信号検出部50と、電源周波数判定部51と、タイミング定数補正部52と、導通期間算出部53と、検出禁止調整値算出部54と、第一信号生成指示部55と、第一信号調整指示部56と、第二信号生成指示部57と、第二信号調整指示部58とを有している。
【0040】
ゼロクロス信号検出部50は、ゼロクロス信号生成回路16からのゼロクロス信号、すなわちゼロクロスパルスP(
図3参照)を検出する。
【0041】
電源周波数判定部51は、ゼロクロス信号検出部50において検出したゼロクロスパルスPの立ち下がりから、次のゼロクロスパルスPの立ち下がりまでの時間(以下、ゼロクロスパルス周期)Ts(
図3参照)をカウントし、交流電源Eの周波数を判定する。
【0042】
タイミング定数補正部52は、電源周波数判定部51で判定された交流電源Eの周波数に基づいて、コントローラ18内の不図示のクロック信号のクロック周波数や、
図3に示す各種タイミング定数(ゼロクロスパルス周期Ts、上記時間Tmin、Tmax、および後述する時間Tz)を補正する。
【0043】
導通期間算出部53は、第一スイッチング素子11および第二スイッチング素子12のそれぞれをターンオフする時間(非導通状態となる時間)である非導通期間Toffと、ターンオンする時間(導通状態となる時間)である導通期間Tonを算出する。これら非導通期間Toffおよび導通期間Tonは、上記の導通調整器17によって調整された入力側端子17aと摺動子側端子17bとの間の抵抗値に基づき算出される。
【0044】
なお後述するように第一スイッチング素子11と第二スイッチング素子12とが交互にターンオンされるため、第一スイッチング素子11および第二スイッチング素子12のうちの一方の素子がターンオンされている間も他方の素子のターンオフが継続されることになり(
図3参照)、この各々の素子におけるターンオフが継続される期間が非導通期間となる。しかしながら以下では説明の便宜上、非導通期間Toffは、上記正方向電圧におけるゼロクロスパルスPの立ち下がりから第一スイッチング素子11がターンオンされるまでの期間と定義し、同様に上記逆方向電圧におけるゼロクロスパルスPの立ち下がりから第二スイッチング素子12がターンオンされるまでの期間と定義する。
【0045】
ここで非導通期間Toffとして、第一スイッチング素子11の上記正方向電圧における非導通期間である第一非導通期間、および第二スイッチング素子12の上記逆方向電圧における非導通期間である第二非導通期間がそれぞれ算出されるが、本実施形態では第一非導通期間と第二非導通期間は同じ時間となっている。また導通期間Tonとして、第一スイッチング素子11の上記正方向電圧における導通期間である第一導通期間、および第二スイッチング素子12の上記逆方向電圧における導通期間である第二導通期間がそれぞれ算出されるが、本実施形態では第一導通期間と第二導通期間は同じ時間となっている。よって、以下では、第一非導通期間および第二非導通期間は共通して「非導通期間」とし、第一導通期間および第二導通期間は共通して「導通期間」と呼称して説明を行う。
【0046】
検出禁止調整値算出部54は、ゼロクロスパルスPの検出禁止期間Tiを調整するための調整期間Taを算出する。
図3に示すように調整期間Taは、交流電源EのゼロボルトからゼロクロスパルスPが立ち下がるまでの時間Tz、および予め設定されたゼロクロスパルスPの検出可能期間Teに基づき、以下の式(1)によって算出される。
Ta=Tz-Te/2・・・(1)
【0047】
そしてゼロクロスパルスPの検出禁止期間Tiは、ゼロクロス信号検出部50でゼロクロスパルスPが検出された後、第一スイッチング素子11(第二スイッチング素子12)の導通期間Tonが経過し、さらに調整期間Taが経過するまでの期間となり、以下の式(2)によって規定されることになる。
Ti=Toff+Ton+Ta・・・(2)
【0048】
第一信号生成指示部55は、ゼロクロス信号検出部50においてゼロクロスパルスPを検出した場合において、非導通期間Toffの経過後に、第一スイッチング素子11を導通状態とするための調整前第一ゲート駆動信号を第一ゲート駆動回路13の第一信号生成回路部41において生成させる。
【0049】
第一信号調整指示部56は、第一信号生成回路部41で調整前第一ゲート駆動信号が生成された後に、この調整前第一ゲート駆動信号の電圧の上昇速度を第一信号調整回路部42で調整させて調整後第一ゲート駆動信号とし、この調整後第一ゲート駆動信号を第一スイッチング素子11のゲート電極G1に向けて出力させる。
【0050】
本実施形態では、第一信号調整指示部56は予め定めた所定の立ち上がり時間Ttの間に、電圧が最大値VG1maxまで上昇するような調整後第一ゲート駆動信号を生成させるようになっている。立ち上がり時間Ttは例えば50〔μs〕以上1000〔μs〕以下であるとよく、好ましくは100〔μs〕以上1000〔μs〕以下であるとよい。なお第一信号調整指示部56は、調整後第一ゲート駆動信号の電圧をリニアに漸次上昇させてもよいし、段階的に漸次上昇させてもよいし、上昇と降下を繰り返しつつ最終的に最大値VG1maxまで上昇させてもよく、上昇方法は特に限定されない。ここで第一ゲート駆動信号の電圧の最大値VG1maxとは、第一スイッチング素子11における出力電圧が、導通調整器17によって調整された導通期間(導通角)Tonの開始時点よりも立ち上がり時間Ttだけ遅れた時点での値Vs1となるような最大電圧を示す。
換言すると、第一信号調整指示部56は、第一スイッチング素子11の出力電圧が導通期間Tonの開始時点よりも立ち上がり時間Ttだけ遅れた時点での値Vs1となるまで、第一スイッチング素子11の出力電圧を漸次上昇させることが可能となるように、第一ゲート駆動信号を調整させる。
【0051】
第二信号生成指示部57は、第一スイッチング素子11における導通期間Tonの経過後にゼロクロス信号検出部50においてゼロクロスパルスPを検出した場合において、さらに非導通期間Toffの経過後に、第二スイッチング素子12を導通状態とするための調整前第二ゲート駆動信号を第二ゲート駆動回路14において生成させる。
【0052】
第二信号調整指示部58は、第二ゲート駆動回路14で調整前第二ゲート駆動信号が生成された後に、この調整前第二ゲート駆動信号の電圧VG2の上昇速度を第二信号調整回路部46で調整させて調整後第二ゲート駆動信号とし、この調整後第二ゲート駆動信号を第二スイッチング素子12のゲート電極G2に向けて出力させる。本実施形態では、第二信号調整指示部58は上記の立ち上がり時間Ttの間に、電圧が最大値VG2maxまで上昇するような調整後第二ゲート駆動信号を生成させるようになっている。
【0053】
なお第一信号調整指示部56と同様に、第二信号調整指示部58は、調整後第二ゲート駆動信号の電圧をリニアに漸次上昇させてもよいし、段階的に漸次上昇させてもよいし、上昇と降下を繰り返しつつ最終的に最大値VG2maxまで上昇させてもよく、上昇方法は特に限定されない。ここで第二ゲート駆動信号の電圧の最大値VG2maxとは、第二スイッチング素子12における出力電圧が、導通調整器17によって調整された導通期間(導通角)Tonの開始時点よりもTtだけ遅れた時点での値Vs2となるような最大電圧を示す。
換言すると、第二信号調整指示部58は、第二スイッチング素子12の出力電圧が導通期間Tonの開始時点よりも立ち上がり時間Ttだけ遅れた時点での値Vs2となるまで、第二スイッチング素子12の出力電圧を漸次上昇させることが可能となるように、第二ゲート駆動信号を調整させる。
【0054】
次に
図4を参照してコントローラ18における制御フローについて説明する。
まず、カウントしたゼロクロスパルスP間の時間から交流電源Eの周波数を判定する(ステップS1)。交流電源Eの周波数は日本国内では例えば50Hzや60Hzとなる。
【0055】
次に交流電源Eの周波数が変化した際に生じる上記の各種タイミング定数の誤差を、交流電源Eの周波数に基づき補正する(ステップS2)。
【0056】
そして第一スイッチング素子11における非導通期間Toffおよび導通期間Tonを算出するとともに、ゼロクロスパルスPの検出禁止期間Tiを調整するための調整期間Taを算出する(ステップS3)。
【0057】
その後、ゼロクロスパルスPの検出可能期間Te(
図3参照)において、ゼロクロスパルスPの立ち下がりが検出されたか否かを判定する(ステップS4)。ゼロクロスパルスPの立ち下がりが検出されない場合には「No」と判定されてステップS4を繰り返す。
【0058】
一方でゼロクロスパルスPの立ち下がりが検出された場合には「Yes」と判断され、第一スイッチング素子11における非導通期間Toffが経過した後に調整前第一ゲート駆動信号を生成させる(ステップS5)。
【0059】
その後、調整前第一ゲート駆動信号の電圧の上昇速度を調整し、すなわち上昇速度を遅らせて緩やかに電圧が上昇するように、予め定めた所定の立ち上がり時間tの間に、予め定めた上昇方法で電圧が上昇するような調整後第一ゲート駆動信号を生成して出力し、第一スイッチング素子11のゲート電極G1(
図1参照)に入力させ、第一スイッチング素子11を導通状態とする(ステップS6)。
【0060】
そして導通期間Tonが経過した後、第一スイッチング素子11への調整後第一ゲート駆動信号の入力を停止し、第一スイッチング素子11が非導通状態となる(ステップS7)。
【0061】
次に、ゼロクロスパルスの検出禁止期間Tiを調整するための調整期間Taが経過したか否かが判定される(ステップS8)。調整期間Taが経過していない場合には「No」と判定されてステップS8を繰り返す。
【0062】
一方で調整期間Taが経過している場合、「Yes」と判定されてステップS2に戻り、第二スイッチング素子12に対して上記制御フローを実行する。
【0063】
このようにして第一スイッチング素子11と第二スイッチング素子12とを交互にターンオンして導通状態とし、位相制御による調光が行われる。
【0064】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の照明コントロールシステム100によれば、調光装置3が互いに並列に設けられ、交互にターンオンされる二つのスイッチング素子11、12を備えている。そして各々のスイッチング素子11、12では、ゼロクロス信号が検出された場合において、非導通期間の経過後に導通状態とされる位相制御(正位相制御)が実行される。したがって、トライアックによって構成された調光装置と比べて、ブリーダー抵抗が不要となることによる省電力化が可能であるとともに、雑音防止回路が不要となることによるノイズの抑制を図ることができる。さらには、逆位相制御ではなく位相制御による調光を採用していることによって様々な種類の負荷(例えばLED照明器具1)に広く本実施形態の調光装置3を使用することができ、汎用性が非常に高い。
【0065】
また本実施形態では、調光装置3における第一信号生成回路部41で調整前第一ゲート駆動信号を生成した後に、この調整前第一ゲート駆動信号の電圧の上昇速度を第一信号調整回路部42で調整し、予め定めた所定の立ち上がり時間Ttの間に、電圧が最大値VG1maxまで上昇するような調整後第一ゲート駆動信号を生成させるようになっている。したがって、第一スイッチング素子11をターンオンする時間を緩やかにでき、ターンオン時の突入電流の発生を抑制することができる。同様に、第二スイッチング素子12においても、ターンオンする時間を緩やかにでき、ターンオン時の突入電流の発生を抑制することができる。この結果、突入電流に起因するノイズを低減することができる。そしてノイズ低減が可能となることで、調光装置3に別途ノイズを防止する回路を組み込む必要がなくなり、調光装置3の製造コストを抑えることも可能になる。
【0066】
特に本実施形態では、立ち上がり時間Ttを50〔μs〕以上1000〔μs〕以下に設定することで調光制御への影響を抑えつつ、突入電流の発生を抑制することができる。
【0067】
また第一信号調整回路部42および第二信号調整回路部46は、それぞれ抵抗器およびコンデンサを含み、抵抗器の抵抗値の調整、またはコンデンサの静電容量値の調整によって、スイッチング素子11、12をターンオンする時間を調整することができる。すなわち、非常に簡易な構造で、上記突入電流の発生を抑えることが可能となる。
【0068】
ここで例えば、二つのスイッチング素子を逆向きに直列接続した調光装置の場合、交流電源の正側および負側において、二つのスイッチング素子のうちの一方スイッチング素子がターンオンしているとき、他方のスイッチング素子はダイオードとして機能し、逆方向の電流を流している。このため二つのスイッチング素子のトータルの発熱量が大きくなり、十分な放熱対策を施す必要が生じる。したがって二つのスイッチング素子を逆向きに直列接続した場合、装置が大型化してしまう可能性がある。しかもこの場合、熱容量が大きく高価なスイッチング素子を必要とするため、定格負荷容量を確保するために装置の大型化および製造コストの高騰を伴う。しかし本実施形態によれば、このような装置の大型化および製造コストの高騰を抑制することが可能である。
【0069】
さらには、第一スイッチング素子11および第二スイッチング素子12を交流電源Eに対して並列に設けているので、交流電源Eの正側および負側の導通角が個別に交互に制御され、すなわち第一スイッチング素子11および第二スイッチング素子12が同時に制御されることがない。よって第一スイッチング素子11および第二スイッチング素子12が同時に制御される場合に比べて一つのスイッチング素子あたりの発熱量を抑えることができる。このためスイッチング素子11、12に定格電流の小さい安価なスイッチング素子を使用することが可能となる。またこの結果、定格負荷を増大させることができ、一つの調光装置3によって調光を行うことのできるLED照明器具1(負荷)の台数を増大させることができる。すなわち、調光装置3の設置数量を低減でき、照明コントロールシステム100の全体のコストを抑えることができる。
【0070】
ここで本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば
図5に示すように、第一ゲート駆動回路13Aは、第一ゲート駆動信号を生成し出力可能な第一D/Aコンバータ61を有し、第二ゲート駆動回路14Aは、第二ゲート駆動信号を生成し出力可能な第二D/Aコンバータ62を有していてもよい。なお第一D/Aコンバータ61、および第二D/Aコンバータ62は、コントローラ18から入力されるデジタル信号をアナログ信号に変換する装置であって、任意の電圧波形を有するゲート駆動信号を生成可能となっている。
【0071】
そして、コントローラ18における第一信号生成指示部55は、第一D/Aコンバータ61で所定の電圧波形の第一ゲート駆動信号を生成するように指示する。同様に、コントローラ18の第二信号生成指示部57は、第二D/Aコンバータ62で所定の電圧波形の第二ゲート駆動信号を生成するように指示する。すなわち各スイッチング素子11、12の出力電圧が導通期間Tonの開始時点よりも上記立ち上がり時間Ttだけ遅れた時点での値となるまで、各スイッチング素子11、12の出力電圧を漸次上昇させることが可能となるような第一ゲート駆動信号および第二ゲート駆動信号が生成される。このような構成によっても、スイッチング素子11、12をターンオンした際の突入電流を抑えることが可能となる。
【実施例】
【0072】
ここで、上記実施形態の照明コントロールシステム100の調光装置3を使用し、位相制御の効果について確認する実験を行った結果を説明する。
図6(a)に示すように上記実施形態の調光装置3では、位相制御(正位相制御)によって調光を行うため、スイッチング素子の出力電圧波形が非常にきれいな形で現れ、正確な調光が可能となる。その一方で仮に逆位相調制御を用いた調光装置の場合、
図6(b)に示すように残留電荷が発生し、調光装置の誤動作の原因となり得る。したがって、位相制御による調光を行うことで安定した調光制御が可能となることが確認できた。
【0073】
次に、上記実施形態の照明コントロールシステム100の調光装置3を使用し、スイッチング素子11、12のターンオン時の突入電流、およびノイズを計測した結果について説明する。
図7(a)に示すように、上述の調光装置3を用いてゲート駆動信号の電圧の上昇速度を緩やかにした場合には突入電流が発生していないことが確認できた。一方で
図7(b)に示すようにゲート駆動信号の電圧の上昇速度を調整しない場合には、スイッチング素子11、12のターンオン時に大きな突入電流が発生している。
【0074】
また
図8(a)に示すように、上述の調光装置3を用いてゲート駆動信号の電圧の上昇速度を緩やかにした場合にはノイズが抑えられ、EMC(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)の試験の国際規格であるCISPRJ15におおよそ合致していることが確認できた。一方で
図8(b)に示すようにゲート駆動信号の電圧の上昇速度を調整しない場合には、突入電流によってノイズの大きさが、特に低周波数領域においてCISPRJ15の規格の数値を大幅に超え、当該規格に合致しないことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の調光装置等によれば、省電力化およびノイズの抑制を図りつつ、広く使用が可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1…LED照明器具
2…負荷/電源側電流通路
2a…第一端子(一端)
2b…第二端子(他端)
3…調光装置
10…主電流通路
11…第一スイッチング素子
12…第二スイッチング素子
13、13A…第一ゲート駆動回路
14、14A…第二ゲート駆動回路
15…整流回路
16…ゼロクロス信号生成回路
17…導通調整器
18…コントローラ
19…レギュレータ回路
21…第一電流通路
22…第二電流通路
31…第一ダイオード
32…第二ダイオード
41…第一信号生成回路部
42…第一信号調整回路部
45…第二信号生成回路部
46…第二信号調整回路部
50…ゼロクロス信号検出部
51…電源周波数判定部
52…タイミング定数補正部
53…導通期間算出部
54…検出禁止調整値算出部
55…第一信号生成指示部
56…第一信号調整指示部
57…第二信号生成指示部
58…第二信号調整指示部
61…第一D/Aコンバータ
62…第二D/Aコンバータ
100…照明コントロールシステム
E…交流電源(商用電源)
【要約】
【課題】省電力化およびノイズの抑制を図りつつ、広く使用が可能な調光装置等を提供する。
【解決手段】
第一ゲート駆動回路13および第二ゲート駆動回路14を制御するコントローラ18が、ゼロクロス信号を検出するゼロクロス信号検出部と、正方向電圧の始点となるゼロクロス信号を検出した場合、第一非導通期間の経過後に、第一スイッチング素子11を導通状態とするための第一ゲート駆動信号を第一ゲート駆動回路13で生成させる第一信号生成指示部と、逆方向電圧の始点となるゼロクロス信号を検出した場合、第二非導通期間の経過後に、第二スイッチング素子12を導通状態とするための第二ゲート駆動信号を第二ゲート駆動回路14で生成させる第二信号生成指示部と、を有する。
【選択図】
図1