(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】航空機
(51)【国際特許分類】
B64C 27/52 20060101AFI20230908BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20230908BHJP
B64C 27/26 20060101ALI20230908BHJP
B64C 29/00 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
B64C27/52
B64C27/08
B64C27/26
B64C29/00 A
(21)【出願番号】P 2023501932
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2021007226
(87)【国際公開番号】W WO2022180755
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-06-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518210225
【氏名又は名称】テトラ・アビエーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131428
【氏名又は名称】若山 剛
(72)【発明者】
【氏名】桑村 航矢
(72)【発明者】
【氏名】中井 佑
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/217117(WO,A1)
【文献】米国特許第09764833(US,B1)
【文献】特表2021-506655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/52
B64C 27/08
B64C 27/26
B64C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向にて飛行する離着陸状態と、水平方向にて飛行する巡航状態と、の間で動作状態が切り替わる航空機であって、
胴体と、
前記胴体から左右方向にて延在する、少なくとも1対の固定翼と、
前記少なくとも1対の固定翼に支持され且つ回転駆動されることにより前記航空機を鉛直上方向へ推進させる推力を発生する複数の第1回転翼と、
を備え、
前記複数の第1回転翼は、前記航空機の左右方向に直交し且つ前記航空機の重心を通る第1平面と、前記航空機の前後方向に直交し且つ前記航空機の重心を通る第2平面と、により区画される4個の象限領域のそれぞれにおいて、少なくとも2つが位置し、
前記動作状態が前記離着陸状態である場合において、前記4個の象限領域のそれぞれにおいて、当該象限領域に位置す
る少なくとも2つの第1回転翼のうちの少なくとも1つの第1回転翼は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜せず、且つ、当該少なくとも2つの第1回転翼のうちの他の第1回転翼は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する、航空機。
【請求項2】
請求項1に記載の航空機であって、
前記4個の象限領域のそれぞれにおいて、当該象限領域に位置する前記少なくとも2つの第1回転翼のうちの、前記航空機の重心からの距離が最も長い位置を有する第1回転翼は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜しない、航空機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の航空機であって、
前記4個の象限領域のそれぞれにおいて、当該象限領域に位置する前記少なくとも2つの第1回転翼のうちの、前記航空機の重心からの距離が最も短い位置を有する第1回転翼は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜しない、航空機。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の航空機であって、
前記複数の第1回転翼に対する回転中心ベクトルの和が前記航空機の前方向の成分を有し、
前記回転中心ベクトルは、前記第1回転翼の回転の中心軸に沿うとともに鉛直上方向の成分を有する方向を有する単位ベクトルである、航空機。
【請求項5】
請求項4に記載の航空機であって、
前記複数の第1回転翼は、前記回転中心ベクトルが前記航空機の前方向の成分を有する第1回転翼の数が、前記回転中心ベクトルが前記航空機の後方向の成分を有する第1回転翼の数よりも多い、航空機。
【請求項6】
請求項5に記載の航空機であって、
前記複数の第1回転翼は、前記回転中心ベクトルが前記航空機の後方向の成分を有する第1回転翼の数が0である、航空機。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の航空機であって、
前記少なくとも1対の固定翼は、前後方向における位置が互いに異なる2対の固定翼を備え、
前記2対の固定翼は、前記4個の象限領域にそれぞれ位置する、航空機。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の航空機であって、
前記4個の象限領域のそれぞれにおいて、当該象限領域に位置する前記少なくとも2つの第1回転翼のうちの少なくとも1つの第1回転翼は、回転の方向が第1回転方向であり、且つ、当該少なくとも2つの第1回転翼のうちの他の第1回転翼は、回転の方向が前記第1回転方向と逆方向である第2回転方向であり、
前記4個の象限領域のそれぞれにおいて、当該象限領域に位置し且つ回転の方向が同一である第1回転翼を、同一の回転数を有するように制御する制御装置を備える、航空機。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の航空機であって、
回転駆動されることにより前記航空機を前方向へ推進させる推力を発生する第2回転翼を備える、航空機
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直離着陸を行う航空機が知られている。例えば、特許文献1に記載の航空機は、胴体と、胴体から左右方向にて延在する1対の固定翼と、1対の固定翼に支持され且つ回転駆動されることにより航空機を鉛直上方向へ推進させる推力(換言すると、上方推力)を発生する複数の回転翼と、を備える。
【0003】
航空機は、ヨー方向における姿勢を制御するため、鉛直下方向へ向かって航空機を見た場合において、航空機を時計方向に回転させようとするトルク(換言すると、ヨー時計方向トルク)と、航空機を反時計方向に回転させようとするトルク(換言すると、ヨー反時計方向トルク)と、のそれぞれを生じさせるように、複数の回転翼のそれぞれの回転の中心軸を傾斜させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、航空機が鉛直方向にて飛行する場合(例えば、離着陸時)において、複数の回転翼の一部が動作を停止することがある。この場合、他の回転翼の回転数を高めることにより、動作の停止によって失われた上方推力が補われる。このとき、ヨー時計方向トルクの大きさと、ヨー反時計方向トルクの大きさと、が互いに一致するように、各回転翼の回転数が調整される。
【0006】
ところで、回転翼の回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜している場合、回転数の変化に伴って、当該回転翼が発生する、上方推力と、ヨー方向におけるトルクと、の両方が変化する。従って、複数の回転翼が発生する、ヨー時計方向トルクの大きさと、ヨー反時計方向トルクの大きさと、を互いに一致させながら、上方推力を補うためには、回転数が過度に高くなる回転翼が生じる虞があった。
【0007】
本発明の目的の一つは、回転翼の回転数が過度に高くなることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの側面では、航空機は、垂直離着陸を行う。
航空機は、胴体と、胴体から左右方向にて延在する、少なくとも1対の固定翼と、複数の第1回転翼と、を備える。
複数の第1回転翼は、少なくとも1対の固定翼に支持され且つ回転駆動されることにより航空機を鉛直上方向へ推進させる推力を発生する。
複数の第1回転翼は、航空機の左右方向に直交し且つ航空機の重心を通る第1平面と、航空機の前後方向に直交し且つ航空機の重心を通る第2平面と、により区画される4個の象限領域のそれぞれにおいて、少なくとも2つが位置する。
4個の象限領域のそれぞれにおいて、当該象限領域に位置する少なくとも2つの第1回転翼のうちの少なくとも1つの第1回転翼は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜せず、且つ、当該少なくとも2つの第1回転翼のうちの他の第1回転翼は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する。
【0009】
他の一つの側面では、航空機は、垂直離着陸を行う。
航空機は、胴体と、胴体から左右方向にて延在する、少なくとも1対の固定翼と、複数の第1回転翼と、を備える。
複数の第1回転翼は、少なくとも1対の固定翼に支持され且つ回転駆動されることにより航空機を鉛直上方向へ推進させる推力を発生する。
複数の第1回転翼のうちの少なくとも1つは、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する。
複数の第1回転翼に対する回転中心ベクトルの和は、航空機の前方向の成分を有する。
回転中心ベクトルは、第1回転翼の回転の中心軸に沿うとともに鉛直上方向の成分を有する方向を有する単位ベクトルである。
【発明の効果】
【0010】
回転翼の回転数が過度に高くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の航空機の構成を表す斜視図である。
【
図2】第1実施形態の航空機の概略構成を表す上面図である。
【
図3】第1実施形態の回転翼モジュールの概略構成を表すブロック図である。
【
図4】第1実施形態の航空機の第1回転翼の回転方向及び回転の中心軸の傾斜方向を表す説明図である。
【
図5】第1実施形態の回転翼モジュールの回転の中心軸の傾斜方向及び回転中心ベクトルを表す説明図である。
【
図6】第1実施形態の第1変形例の航空機の第1回転翼の回転方向及び回転の中心軸の傾斜方向を表す説明図である。
【
図7】第1実施形態の第2変形例の航空機の第1回転翼の回転方向及び回転の中心軸の傾斜方向を表す説明図である。
【
図8】第1実施形態の第3変形例の航空機の第1回転翼の回転方向及び回転の中心軸の傾斜方向を表す説明図である。
【
図9】第1実施形態の第4変形例の航空機の第1回転翼の回転方向及び回転の中心軸の傾斜方向を表す説明図である。
【
図10】第2実施形態の回転翼モジュールの回転の中心軸の傾斜方向及び回転中心ベクトルを表す説明図である。
【
図11】第2実施形態の第1変形例の航空機の第1回転翼の回転方向及び回転の中心軸の傾斜方向を表す説明図である。
【
図12】第2実施形態の第2変形例の航空機の第1回転翼の回転方向及び回転の中心軸の傾斜方向を表す説明図である。
【
図13】第2実施形態の第3変形例の航空機の第1回転翼の回転方向及び回転の中心軸の傾斜方向を表す説明図である。
【
図14】第2実施形態の第4変形例の航空機の第1回転翼の回転方向及び回転の中心軸の傾斜方向を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の航空機に関する各実施形態について
図1乃至
図14を参照しながら説明する。
【0013】
<第1実施形態>
(概要)
第1実施形態の航空機は、垂直離着陸を行う。
航空機は、胴体と、胴体から左右方向にて延在する、少なくとも1対の固定翼と、複数の第1回転翼と、を備える。
複数の第1回転翼は、少なくとも1対の固定翼に支持され且つ回転駆動されることにより航空機を鉛直上方向へ推進させる推力を発生する。
【0014】
複数の第1回転翼は、航空機の左右方向に直交し且つ航空機の重心を通る第1平面と、航空機の前後方向に直交し且つ航空機の重心を通る第2平面と、により区画される4個の象限領域のそれぞれにおいて、少なくとも2つが位置する。
【0015】
4個の象限領域のそれぞれにおいて、当該象限領域に位置する少なくとも2つの第1回転翼のうちの少なくとも1つの第1回転翼は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜せず、且つ、当該少なくとも2つの第1回転翼のうちの他の第1回転翼は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する。
【0016】
これによれば、各象限領域において、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜しない第1回転翼が存在する。当該第1回転翼は、回転数の変化に伴って、上方推力のみが変化する。これにより、各象限領域において、ヨー方向におけるトルクと独立に上方推力を調整できる。この結果、回転翼の回転数が過度に高くなることを抑制できる。
次に、第1実施形態の航空機について、より詳細に説明する。
【0017】
(構成)
図1及び
図2に表されるように、航空機1は、垂直離着陸を行う。本例では、航空機1は、電力によって航空機を飛行させるeVTOL(electric Vertical Take-Off and Landing)である。航空機1は、鉛直方向にて飛行する(換言すると、鉛直方向にて上昇又は下降する)鉛直飛行を行う状態(換言すると、離着陸状態)と、水平方向にて飛行する(換言すると、巡航する)水平飛行を行う状態(換言すると、巡航状態)と、の間で動作状態が切り替わる。
【0018】
本例では、後述の各方向(例えば、上下方向、前後方向、又は、左右方向)は、巡航状態における方向である。なお、各方向は、離着陸状態における方向であってもよい。上方向、及び、下方向は、それぞれ、鉛直上方向、及び、鉛直下方向である。
【0019】
航空機1は、胴体10と、1対の前方固定翼20-1,20-2と、1対の後方固定翼20-3,20-4と、を備える。なお、航空機1が備える固定翼の対の数は、1対、又は、3対以上であってもよい。本例では、1対の前方固定翼20-1,20-2、及び、1対の後方固定翼20-3,20-4のそれぞれは、単に、固定翼20-j(jは、1乃至4の整数を表す)とも表される。
【0020】
胴体10は、航空機1の左右方向における中央部において、航空機1の前後方向にて延在する。本例では、胴体10は、航空機1の上下方向における位置、及び、航空機1の前後方向における位置のそれぞれが互いに異なる2個の棒状体又は柱状体が、航空機1の前後方向における中央部にて互いに連結された形状を有する。
【0021】
本例では、胴体10は、航空機1の前方向における端部の鉛直下方向における端面が、航空機1の後方向における端部の鉛直下方向における端面よりも鉛直下方に位置する。本例では、胴体10は、航空機1の前方向における端部の鉛直上方向における端面が、航空機1の後方向における端部の鉛直上方向における端面よりも鉛直下方に位置する。
【0022】
なお、胴体10は、航空機1の前方向にて延在する棒状又は柱状であってもよい。例えば、胴体10は、航空機1の前後方向における両端部のそれぞれにおいて、先端に近づくほど細くなる形状(換言すると、先細形状)を有してよい。
例えば、胴体10の前後方向における長さは、1m乃至15mの長さであってよい。
【0023】
1対の前方固定翼20-1,20-2は、航空機1の左方向、及び、航空機1の右方向へ、胴体10からそれぞれ延在する板状である。1対の前方固定翼20-1,20-2のそれぞれは、航空機1の左右方向に直交する平面によって切断された断面において、翼型形状を有する。
【0024】
1対の前方固定翼20-1,20-2は、航空機1の左右方向に直交し、且つ、胴体10の左右方向における中央を通る平面に対して、互いに面対称である。例えば、1対の前方固定翼20-1,20-2のそれぞれの左右方向における長さは、0.5m乃至10mの長さであってよい。
【0025】
1対の前方固定翼20-1,20-2は、航空機1の前後方向における胴体10の中央よりも前方に位置する。本例では、1対の前方固定翼20-1,20-2は、胴体10の前方向における端部に位置する。例えば、1対の前方固定翼20-1,20-2は、航空機1の前後方向において、胴体10の前方向における端から1対の前方固定翼20-1,20-2の後方向における端までの距離の、航空機1の前後方向における胴体10の長さに対する比が、0.01乃至0.4(本例では、0.1乃至0.3)の値である位置を有する。
【0026】
1対の前方固定翼20-1,20-2は、航空機1の上下方向における胴体10の中央よりも下方に位置する。本例では、1対の前方固定翼20-1,20-2は、胴体10の下方向における端部に位置する。例えば、1対の前方固定翼20-1,20-2は、航空機1の上下方向において、胴体10の下方向における端から1対の前方固定翼20-1,20-2の上方向における端までの距離の、航空機1の上下方向における胴体10の高さ(本例では、後述の尾翼11-1,11-2を除いた航空機1の上下方向における胴体10の高さの最大値)に対する比が、0.01乃至0.4(本例では、0.05乃至0.2)の値である位置を有する。
【0027】
1対の後方固定翼20-3,20-4は、航空機1の左方向、及び、航空機1の右方向へ、胴体10からそれぞれ延在する板状である。1対の後方固定翼20-3,20-4のそれぞれは、航空機1の左右方向に直交する平面によって切断された断面において、翼型形状を有する。
【0028】
1対の後方固定翼20-3,20-4は、航空機1の左右方向に直交し、且つ、胴体10の左右方向における中央を通る平面に対して、互いに面対称である。1対の後方固定翼20-3,20-4のそれぞれの左右方向における長さは、1対の前方固定翼20-1,20-2のそれぞれの左右方向における長さと略等しい。本例では、1対の後方固定翼20-3,20-4のそれぞれの左右方向における長さは、1対の前方固定翼20-1,20-2のそれぞれの左右方向における長さよりも僅かに長い。例えば、1対の後方固定翼20-3,20-4のそれぞれの左右方向における長さは、0.5m乃至10mの長さであってよい。
【0029】
1対の後方固定翼20-3,20-4は、航空機1の前後方向における胴体10の中央よりも後方に位置する。本例では、1対の後方固定翼20-3,20-4は、胴体10の後方向における端部に位置する。例えば、1対の後方固定翼20-3,20-4は、航空機1の前後方向において、胴体10の後方向における端から1対の後方固定翼20-3,20-4の前方向における端までの距離の、航空機1の前後方向における胴体10の長さに対する比が、0.01乃至0.4(本例では、0.1乃至0.3)の値である位置を有する。
【0030】
1対の後方固定翼20-3,20-4は、航空機1の上下方向における胴体10の中央よりも上方に位置する。本例では、1対の後方固定翼20-3,20-4は、胴体10の上方向における端部に位置する。例えば、1対の後方固定翼20-3,20-4は、航空機1の上下方向において、胴体10の上方向における端から1対の後方固定翼20-3,20-4の下方向における端までの距離の、航空機1の上下方向における胴体10の高さに対する比が、0.01乃至0.4(本例では、0.05乃至0.2)の値である位置を有する。
【0031】
このように、本例では、航空機1は、航空機1の前後方向における位置が互いに異なるとともに、航空機1の上下方向における位置が互いに異なる2対の固定翼20-1~20-4を備える。
【0032】
本例では、1対の前方固定翼20-1,20-2、及び、1対の後方固定翼20-3,20-4は、4個の象限領域にそれぞれ位置する。4個の象限領域は、航空機1の左右方向に直交し且つ航空機1の重心CGを通る第1平面P1と、航空機1の前後方向に直交し且つ航空機1の重心CGを通る第2平面P2と、により区画される。
【0033】
航空機1は、1対の前方固定翼20-1,20-2、及び、1対の後方固定翼20-3,20-4に固定される、複数(本例では、16個)の回転翼モジュール40-1~40-16を備える。なお、航空機1が備える回転翼モジュールの数は、2乃至15個であってもよく、17個以上であってもよい。例えば、航空機1が備える回転翼モジュールの数は、8個、12個、16個、20個、又は、24個である。
【0034】
本例では、複数の回転翼モジュール40-1~40-16は、1対の前方固定翼20-1,20-2、及び、1対の後方固定翼20-3,20-4に取り外し可能に固定される。なお、複数の回転翼モジュール40-1~40-16は、1対の前方固定翼20-1,20-2、及び、1対の後方固定翼20-3,20-4に取り外し不能に固定(例えば、一体に形成)されていてもよい。
【0035】
4個の回転翼モジュール40-1~40-4は、1対の前方固定翼20-1のうちの、胴体10の左方に位置する前方固定翼20-1に固定される。4個の回転翼モジュール40-5~40-8は、1対の前方固定翼20-1のうちの、胴体10の右方に位置する前方固定翼20-2に固定される。4個の回転翼モジュール40-9~40-12は、1対の後方固定翼20-3,20-4のうちの、胴体10の左方に位置する後方固定翼20-3に固定される。4個の回転翼モジュール40-13~40-16は、1対の後方固定翼20-3,20-4のうちの、胴体10の右方に位置する後方固定翼20-4に固定される。
【0036】
胴体10の左方に位置する8個の回転翼モジュール40-1~40-4,40-9~40-12と、胴体10の右方に位置する8個の回転翼モジュール40-5~40-8,40-13~40-16と、は、航空機1の左右方向に直交し、且つ、胴体10の左右方向における中央を通る平面に対して、互いに面対称である。
【0037】
例えば、固定翼20-jに固定される回転翼モジュール40-i(iは、1乃至16の整数を表す。)は、航空機1の左右方向において、当該固定翼20-jの先端から当該回転翼モジュール40-iまでの距離の、航空機1の左右方向における当該固定翼20-jの長さに対する比が、0乃至0.9(本例では、0乃至0.8)の値である位置を有する。
【0038】
本例では、固定翼20-jに固定される4個の回転翼モジュール40-k~40-l(kは、1、5、9、又は、13の整数を表す。lは、k+3の整数を表す。)は、航空機1の左右方向において、等間隔にて位置する。なお、固定翼20-jに固定される4個の回転翼モジュール40-k~40-lは、航空機1の左右方向において、異なる間隔を有していてもよい。
【0039】
例えば、固定翼20-jに固定される4個の回転翼モジュール40-k~40-lは、航空機1の左右方向において、当該4個の回転翼モジュール40-k~40-lのうちの、互いに隣り合う2個の回転翼モジュール間の距離の、航空機1の左右方向における当該固定翼20-jの長さに対する比が、0.1乃至0.4(本例では、0.2乃至0.3)の値である位置を有してよい。
【0040】
本例では、航空機1の左右方向において、前方固定翼20-1に固定される4個の回転翼モジュール40-1~40-4のうちの、互いに隣り合う2個の回転翼モジュール間の距離と、後方固定翼20-3に固定される4個の回転翼モジュール40-9~40-12のうちの、互いに隣り合う2個の回転翼モジュール間の距離と、は、互いに等しい。なお、両者の距離は、互いに異なっていてもよい。
【0041】
本例では、航空機1の左右方向において、前方固定翼20-1に固定される4個の回転翼モジュール40-1~40-4の位置と、後方固定翼20-3に固定される4個の回転翼モジュール40-9~40-12の位置と、は、互いに一致する。なお、両者の位置は、互いに異なっていてもよい。
【0042】
図3に表されるように、固定翼20-jに固定される回転翼モジュール40-iは、支持体401と、1対の第1回転翼402-1,402-2と、1対の電動機403-1,403-2と、1対の速度制御器404-1,404-2と、1対の制御器405-1,405-2と、1対の第1制御信号線406-1,406-2と、を備える。
【0043】
支持体401は、航空機1の前後方向において(換言すると、航空機1を鉛直方向にて見た場合において)、固定翼20-jの前方と固定翼20-jの後方とに亘って、航空機1の前後方向にて延在する棒状又は柱状である。支持体401は、航空機1の前後方向における中央部が固定翼20-jに取り外し可能に固定される。
【0044】
本例では、支持体401は、固定翼20-jの下方に位置する。これによれば、航空機1の重心を下方に位置させることができるので、航空機の姿勢の変動が生じた場合であっても、当該変動を迅速に抑制できる。なお、支持体401は、固定翼20-jの上方に位置していてもよい。
【0045】
1対の第1回転翼402-1,402-2のそれぞれは、回転の中心軸が航空機1の上下方向が主成分である方向にて延在するように回転可能に支持体401に支持される。1対の第1回転翼402-1,402-2は、1対の電動機403-1,403-2によってそれぞれ回転駆動されることにより航空機1を上方向へ推進させる推力を発生する。
【0046】
1対の第1回転翼402-1,402-2は、航空機1の前後方向において、固定翼20-jの前方と固定翼20-jの後方とにそれぞれ位置する。換言すると、第1回転翼402-1は、航空機1の前後方向において、固定翼20-jの前方に位置するとともに、第1回転翼402-2は、航空機1の前後方向において、固定翼20-jの後方に位置する。本例では、1対の第1回転翼402-1,402-2は、航空機1の前後方向における支持体401の両端部にそれぞれ位置する。
【0047】
1対の第1回転翼402-1,402-2は、航空機1の前後方向における1対の第1回転翼402-1,402-2間の距離の、航空機1の前後方向における固定翼20-jの長さに対する比が、1.2乃至4.5(本例では、2乃至3)の値である位置を有してよい。
本例では、第1回転翼402-1,402-2は、ロータと表されてもよい。
なお、1対の第1回転翼402-1,402-2の回転方向、及び、回転の中心軸の詳細については後述される。
【0048】
以下、第1回転翼402-1を回転駆動するための構成(本例では、電動機403-1、速度制御器404-1、制御器405-1、及び、第1制御信号線406-1)が説明される。なお、第1回転翼402-2を回転駆動するための構成(本例では、電動機403-2、速度制御器404-2、制御器405-2、及び、第1制御信号線406-2)は、第1回転翼402-1を回転駆動するための構成と同様に説明されるため、当該説明が省略される。
【0049】
本例では、速度制御器404-1、及び、制御器405-1は、支持体401の内部に収容される。なお、電動機403-1の少なくとも一部も、支持体401の内部に収容されていてもよい。
【0050】
電動機403-1は、速度制御器404-1から供給される電力に従って、第1回転翼402-1を回転駆動する。
【0051】
速度制御器404-1は、制御器405-1から第1制御信号線406-1を通って伝送される制御信号に従って、電動機403-1によって回転駆動される第1回転翼402-1の回転速度(換言すると、回転数)を制御するように、電動機403-1へ供給する電力を制御する。
【0052】
本例では、速度制御器404-1は、ESC(Electric Speed Controller)と表されてもよい。
本例では、電動機403-1、及び、速度制御器404-1は、第1回転駆動部に対応する。
【0053】
本例では、速度制御器404-1には、図示されない蓄電池から電力が供給される。例えば、蓄電池は、支持体401に固定される。なお、蓄電池は、固定翼20-j、又は、胴体10に固定されていてもよい。
【0054】
制御器405-1は、後述の制御装置13から第2制御信号線14を通って伝送される制御信号に従って、速度制御器404-1を制御する。
【0055】
このような構成により、航空機1は、複数の回転翼モジュール40-1~40-16のそれぞれが備える1対の第1回転翼402-1,402-2のそれぞれが発生する、航空機1を上方向へ推進させる推力によって、垂直離着陸を行う。
【0056】
胴体10は、輸送対象を収容する内部空間を有する。本例では、内部空間は、航空機1の前後方向において、1対の前方固定翼20-1,20-2と、1対の後方固定翼20-3,20-4と、の間に位置する。例えば、内部空間は、航空機1の前後方向における中央部に位置する。
【0057】
輸送対象は、人、及び、物体のうちの、少なくとも1つを含む。例えば、輸送対象に含まれる人は、搭乗者と表されてもよい。例えば、搭乗者は、航空機1を操縦してよい。また、航空機1が自動操縦により飛行するように構成されている場合、搭乗者は、航空機1を操縦しなくてもよい。例えば、輸送対象に含まれる物体は、貨物又は荷物である。
【0058】
例えば、胴体10が有する内部空間は、1人乃至5人の搭乗者を収容可能であってよい。本例では、胴体10が有する内部空間は、1人又は2人の搭乗者を収容可能である。
例えば、航空機1の最大離陸重量は、120kg乃至3000kgの重量であってよい。本例では、航空機1の最大離陸重量は、150kg乃至460kgの重量である。胴体10は、収容空間を開閉可能な扉(本例では、カウル)を備える。
【0059】
図2に表されるように、胴体10は、1対の尾翼11-1,11-2と、第2回転翼12と、制御装置13と、第2制御信号線14と、を備える。なお、胴体10が備える尾翼の数は、1個、又は、3個以上であってもよい。
【0060】
1対の尾翼11-1,11-2は、胴体10の後方向における端部に位置する。1対の尾翼11-1,11-2は、航空機1の上方向、及び、航空機1の左右方向の成分を有し、且つ、航空機1の上方向へ向かうにつれて航空機1の左右方向における互いの距離が長くなる方向へ胴体10から延在する板状である。1対の尾翼11-1,11-2は、航空機1の左右方向に直交し、且つ、胴体10の左右方向における中央を通る平面に対して、互いに面対称である。
【0061】
第2回転翼12は、回転の中心軸が航空機1の前後方向が主成分である方向にて延在するように回転可能に胴体10に支持される。第2回転翼12は、図示されない第2回転駆動部によって回転駆動されることにより航空機1を前方向へ推進させる推力を発生する。
【0062】
このような構成により、航空機1は、第2回転翼12が発生する、航空機1を前方向へ推進させる推力と、1対の前方固定翼20-1,20-2、及び、1対の後方固定翼20-3,20-4が発生する揚力と、によって、水平方向にて飛行する。
【0063】
本例では、第2回転翼12は、胴体10の後方向における端部に位置する。なお、第2回転翼12は、胴体10の後方向における端部以外の部分(例えば、胴体10の前方向における端部、又は、胴体10の前後方向における中央部等)に位置してもよい。
【0064】
なお、胴体10が備える第2回転翼12の数は、2個以上であってもよい。この場合、例えば、複数の第2回転翼12は、胴体10の前方向における端部、及び、胴体10の後方向における端部の両方にそれぞれ位置していてもよいし、いずれか一方のみに位置していてもよい。また、例えば、複数の第2回転翼12は、1対の前方固定翼20-1,20-2、及び、1対の後方固定翼20-3,20-4の少なくとも1つに位置していてもよい。
本例では、第2回転翼12は、プロペラと表されてもよい。
【0065】
制御装置13は、電力によって動作することにより航空機1を制御する。制御装置13は、航空機1の状態を表す情報(例えば、高度、経度、緯度、及び、速度等)を取得する電子機器を含む。本例では、制御装置13は、アビオニクス(例えば、通信機器、航法システム、又は、飛行管理システム等)を含む。
【0066】
本例では、制御装置13は、搭乗者の操縦に従って制御信号を生成し、生成された制御信号に基づいて、複数の回転翼モジュール40-1~40-16の第1回転翼402-1,402-2、及び、第2回転翼12のそれぞれの回転数を制御する。
【0067】
本例では、制御装置13には、図示されない蓄電池から電力が供給される。例えば、蓄電池は、胴体10に固定される。なお、蓄電池は、固定翼20-jに固定されていてもよい。
なお、制御装置13の詳細については後述される。
【0068】
ここで、1対の第1回転翼402-1,402-2の回転方向、及び、回転の中心軸の詳細について説明を加える。
【0069】
図4に表されるように、4個の回転翼モジュール40-1~40-4がそれぞれ備える4対の第1回転翼402-1,402-2は、4個の象限領域のうちの、航空機1の前方側であり且つ航空機1の左方側である象限領域(換言すると、第1象限領域)に位置する。4個の回転翼モジュール40-5~40-8がそれぞれ備える4対の第1回転翼402-1,402-2は、4個の象限領域のうちの、航空機1の前方側であり且つ航空機1の右方側である象限領域(換言すると、第2象限領域)に位置する。
【0070】
4個の回転翼モジュール40-9~40-12がそれぞれ備える4対の第1回転翼402-1,402-2は、4個の象限領域のうちの、航空機1の後方側であり且つ航空機1の左方側である象限領域(換言すると、第3象限領域)に位置する。4個の回転翼モジュール40-13~40-16がそれぞれ備える4対の第1回転翼402-1,402-2は、4個の象限領域のうちの、航空機1の後方側であり且つ航空機1の右方側である象限領域(換言すると、第4象限領域)に位置する。
【0071】
本例では、第1回転翼402-1,402-2が象限領域に位置することは、当該第1回転翼402-1,402-2の回転面における回転の中心軸が象限領域に位置することに対応する。
【0072】
本例では、複数の回転翼モジュール40-1~40-16のそれぞれにおいて、1対の第1回転翼402-1,402-2は、回転方向が互いに異なる。
図4において、黒塗りの円弧状の矢印により表されるように、例えば、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-1は、鉛直下方向へ向かって航空機1を見た場合において、反時計方向(本例では、第1回転方向)へ回転する。また、
図4において、白塗りの円弧状の矢印により表されるように、例えば、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-2は、鉛直下方向へ向かって航空機1を見た場合において、時計方向(本例では、第2回転方向)へ回転する。
【0073】
本例では、航空機1の左右方向にて隣接する2個の第1回転翼402-1は、回転方向が互いに異なるとともに、航空機1の左右方向にて隣接する2個の第1回転翼402-2は、回転方向が互いに異なる。また、本例では、航空機1の上下方向にて隣接する2個の第1回転翼402-1,402-2は、回転方向が互いに異なる。
【0074】
図5に表されるように、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-1は、回転の中心軸CAが鉛直方向に対して傾斜しない(本例では、回転の中心軸CAが鉛直方向に沿って延在する)。本例では、
図5における上方向及び下方向は、鉛直上方向及び鉛直下方向にそれぞれ対応する。本例では、
図5における左方向及び右方向は、航空機1の前方向及び後方向にそれぞれ対応する。
【0075】
図5において、符号CVが付された矢印は、回転中心ベクトルを表す。回転中心ベクトルCVは、第1回転翼402-1の回転の中心軸CAに沿うとともに鉛直上方向の成分を有する方向を有する単位ベクトルである。
【0076】
本例では、回転の中心軸CAが鉛直方向に対して傾斜しないことは、回転の中心軸CAが鉛直方向に対して僅かに傾斜することを含む。本例では、回転の中心軸CAが鉛直方向に対して僅かに傾斜することは、回転の中心軸CAが鉛直方向に対して傾斜する角度が3度以下であることに対応する。
【0077】
図4に表されるように、第1回転翼402-1,402-2(例えば、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-1)の回転の中心軸上に、符号NDが付された白塗りの円が描画されることは、当該第1回転翼402-1,402-2の回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜しないことを表す。
【0078】
本例では、
図4に表されるように、4個の象限領域のそれぞれにおいて、当該象限領域に位置する4対の第1回転翼402-1,402-2のうちの、航空機1の重心CGからの距離が最も長い位置を有する第1回転翼(本例では、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-8の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-9の第1回転翼402-2、及び、回転翼モジュール40-16の第1回転翼402-2)は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜しない。
【0079】
更に、本例では、
図4に表されるように、4個の象限領域のそれぞれにおいて、当該象限領域に位置する4対の第1回転翼402-1,402-2のうちの、航空機1の重心CGからの距離が最も短い位置を有する第1回転翼(本例では、回転翼モジュール40-4の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-5の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-12の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-13の第1回転翼402-1)は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜しない。
【0080】
図5に表されるように、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-2は、回転の中心軸CAが鉛直方向に対して傾斜する。本例では、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-2は、回転の中心軸CAが鉛直方向に対して、航空機1の上方へ向かうにつれて航空機1の後方の位置を有するように傾斜する(換言すると、航空機1の後方に傾斜する)。換言すると、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-2の回転中心ベクトルCVは、航空機1の後方向の成分と、航空機1の上方向の成分と、からなる。
【0081】
本例では、回転の中心軸CAが鉛直方向に対して傾斜することは、回転の中心軸CAが鉛直方向に対して傾斜する角度(換言すると、傾斜角度)が5度乃至20度の角度であることに対応する。なお、傾斜角度が5度未満である場合、ヨー方向におけるトルクが過小となる。また、傾斜角度が20度よりも大きい場合、上方推力が過小となる。傾斜角度が8度以上である場合、ヨー方向におけるトルクを十分に大きくすることができる。また、傾斜角度が16度以下である場合、上方推力を十分に大きくすることができる。
【0082】
図4に表されるように、第1回転翼402-1,402-2(例えば、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-2)の回転の中心軸上に、符号BDが付された白塗りの下向き矢印が描画されることは、当該第1回転翼402-1,402-2の回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1の後方に傾斜することを表す。
【0083】
本例では、
図4に表されるように、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-3の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-6の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-8の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-10の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-15の第1回転翼402-1は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1の後方に傾斜する。
【0084】
また、
図4に表されるように、第1回転翼402-1,402-2(例えば、回転翼モジュール40-2の第1回転翼402-2)の回転の中心軸上に、符号FDが付された白塗りの上向き矢印が描画されることは、当該第1回転翼402-1,402-2の回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1の上方へ向かうにつれて航空機1の前方の位置を有するように傾斜する(換言すると、航空機1の前方に傾斜する)ことを表す。換言すると、回転翼モジュール40-2の第1回転翼402-2の回転中心ベクトルCVは、航空機1の前方向の成分と、航空機1の上方向の成分と、からなる。
【0085】
本例では、
図4に表されるように、回転翼モジュール40-2の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-7の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-9の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-11の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-14の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-16の第1回転翼402-1は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1の前方に傾斜する。
【0086】
また、
図4に表されるように、第1回転翼402-1,402-2(例えば、回転翼モジュール40-2の第1回転翼402-1)の回転の中心軸上に、符号LDが付された白塗りの左向き矢印が描画されることは、当該第1回転翼402-1,402-2の回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1の上方へ向かうにつれて航空機1の左方の位置を有するように傾斜する(換言すると、航空機1の左方に傾斜する)ことを表す。換言すると、回転翼モジュール40-2の第1回転翼402-1の回転中心ベクトルCVは、航空機1の左方向の成分と、航空機1の上方向の成分と、からなる。
【0087】
本例では、
図4に表されるように、回転翼モジュール40-2の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-4の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-6の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-10の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-12の第1回転翼402-2、及び、回転翼モジュール40-14の第1回転翼402-2は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1の左方に傾斜する。
【0088】
また、
図4に表されるように、第1回転翼402-1,402-2(例えば、回転翼モジュール40-3の第1回転翼402-1)の回転の中心軸上に、符号RDが付された白塗りの右向き矢印が描画されることは、当該第1回転翼402-1,402-2の回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1の上方へ向かうにつれて航空機1の右方の位置を有するように傾斜する(換言すると、航空機1の右方に傾斜する)ことを表す。換言すると、回転翼モジュール40-3の第1回転翼402-1の回転中心ベクトルCVは、航空機1の右方向の成分と、航空機1の上方向の成分と、からなる。
【0089】
本例では、
図4に表されるように、回転翼モジュール40-3の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-5の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-7の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-11の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-13の第1回転翼402-2、及び、回転翼モジュール40-15の第1回転翼402-2は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1の右方に傾斜する。
【0090】
このように、本例では、第1回転翼402-1,402-2の回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する場合、当該第1回転翼402-1,402-2の回転中心ベクトルCVは、当該第1回転翼402-1,402-2が発生する推力によって、当該第1回転翼402-1,402-2の回転の方向と逆方向に航空機1を回転させようとするトルクが発生する方向を有する。
【0091】
ここで、制御装置13の詳細について説明を加える。
制御装置13は、航空機1の動作状態が離着陸状態である場合、以下のように航空機1を制御する。
制御装置13は、4個の象限領域のそれぞれにおいて、当該象限領域に位置し且つ回転の方向が同一である第1回転翼402-1,402-2を、同一の回転数を有するように制御する。
【0092】
従って、本例では、制御装置13は、第p(pは、1乃至4の整数を表す。)象限領域に位置し、且つ、回転の方向が反時計方向である、回転翼モジュール40-q(qは、4p-3の整数を表す。)の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-r(rは、4p-2の整数を表す。)の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-s(sは、4p-1の整数を表す。)の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-t(tは、4pの整数を表す。)の第1回転翼402-2を、第u(uは、2p-1の整数を表す。)回転数を有するように制御する。
【0093】
また、制御装置13は、第p象限領域に位置し、且つ、回転の方向が時計方向である、回転翼モジュール40-qの第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-rの第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-sの第1回転翼402-2、及び、回転翼モジュール40-tの第1回転翼402-1を、第v(vは、2pの整数を表す。)回転数を有するように制御する。
【0094】
本例では、制御装置13は、16個の回転翼モジュール40-1~40-16がそれぞれ備える16対の第1回転翼402-1,402-2が発生する、ヨー時計方向トルクの大きさと、ヨー反時計方向トルクの大きさと、が互いに一致するように、第1回転数乃至第8回転数を決定する。
本例では、制御装置13は、16個の回転翼モジュール40-1~40-16がそれぞれ備える16対の第1回転翼402-1,402-2の少なくとも1つの第1回転翼が動作を停止した場合であっても、上述の制御を行う。
【0095】
(動作)
次に、航空機1の動作について説明する。
先ず、搭乗者は、航空機1の左方の位置から、前方固定翼20-1と後方固定翼20-3との間を通って、胴体10の内部空間に搭乗する。なお、搭乗者は、航空機1の右方の位置から、前方固定翼20-2と後方固定翼20-4との間を通って、胴体10の内部空間に搭乗してもよい。
【0096】
次いで、航空機1は、16個の回転翼モジュール40-1~40-16がそれぞれ備える16対の第1回転翼402-1,402-2のそれぞれを回転駆動する。これにより、航空機1を上方向へ推進させる推力が発生する。この結果、航空機1は、鉛直上方向へ飛行(換言すると、上昇)することにより離陸する。
【0097】
その後、航空機1は、第2回転翼12を回転駆動する。これにより、航空機1を前方向へ推進させる推力が発生する。この結果、1対の前方固定翼20-1,20-2、及び、1対の後方固定翼20-3,20-4は、揚力を発生する。次いで、航空機1は、16個の回転翼モジュール40-1~40-16がそれぞれ備える16対の第1回転翼402-1,402-2のそれぞれの回転駆動を停止する。この結果、航空機1は、水平方向へ飛行(換言すると、巡航)する。
【0098】
その後、航空機1は、16個の回転翼モジュール40-1~40-16がそれぞれ備える16対の第1回転翼402-1,402-2のそれぞれを回転駆動する。これにより、航空機1を上方向へ推進させる推力が発生する。次いで、航空機1は、第2回転翼12の回転駆動を停止する。この結果、航空機1は、鉛直下方向へ飛行(換言すると、下降)することにより着陸する。
【0099】
次に、航空機1の動作状態が離着陸状態である場合において、16個の回転翼モジュール40-1~40-16がそれぞれ備える16対の第1回転翼402-1,402-2の少なくとも1つの第1回転翼が動作を停止した場合について説明する。
【0100】
この場合、航空機1は、16個の回転翼モジュール40-1~40-16がそれぞれ備える16対の第1回転翼402-1,402-2のうちの、動作が停止した第1回転翼402-1,402-2以外の第1回転翼402-1,402-2の中の少なくとも一部の回転数を増加させることにより、動作の停止によって失われた上方推力を補う。このとき、航空機1は、ヨー時計方向トルクの大きさと、ヨー反時計方向トルクの大きさと、が互いに一致するように各第1回転翼402-1,402-2の回転数を制御する。これにより、航空機1は、鉛直飛行を継続できる。
【0101】
以上、説明したように、第1実施形態の航空機1は、垂直離着陸を行う。航空機1は、胴体10と、胴体10から左右方向にて延在する、少なくとも1対の固定翼20-1~20-4と、複数の第1回転翼402-1,402-2と、を備える。
【0102】
複数の第1回転翼402-1,402-2は、少なくとも1対の固定翼20-1~20-4に支持され且つ回転駆動されることにより航空機1を鉛直上方向へ推進させる推力を発生する。
複数の第1回転翼402-1,402-2は、航空機1の左右方向に直交し且つ航空機1の重心CGを通る第1平面P1と、航空機1の前後方向に直交し且つ航空機1の重心CGを通る第2平面P2と、により区画される4個の象限領域のそれぞれにおいて、少なくとも2つが位置する。
【0103】
4個の象限領域のそれぞれにおいて、当該象限領域に位置する少なくとも2つの第1回転翼402-1,402-2のうちの少なくとも1つの第1回転翼402-1,402-2は、回転の中心軸CAが鉛直方向に対して傾斜せず、且つ、当該少なくとも2つの第1回転翼402-1,402-2のうちの他の第1回転翼402-1,402-2は、回転の中心軸CAが鉛直方向に対して傾斜する。
【0104】
これによれば、各象限領域において、回転の中心軸CAが鉛直方向に対して傾斜しない第1回転翼402-1,402-2が存在する。当該第1回転翼402-1,402-2は、回転数の変化に伴って、上方推力のみが変化する。これにより、各象限領域において、ヨー方向におけるトルクと独立に上方推力を調整できる。この結果、第1回転翼402-1,402-2の回転数が過度に高くなることを抑制できる。
【0105】
更に、第1実施形態の航空機1において、4個の象限領域のそれぞれにて、当該象限領域に位置する少なくとも2つの第1回転翼402-1,402-2のうちの、航空機1の重心CGからの距離が最も長い位置を有する第1回転翼402-1,402-2は、回転の中心軸CAが鉛直方向に対して傾斜しない。
【0106】
ところで、航空機の重心からの距離が最も長い位置を有する第1回転翼の回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する場合、当該第1回転翼が発生する、ヨー方向におけるトルクが大きくなりやすい。このため、当該第1回転翼が動作を停止した場合、動作の停止によって失われる、ヨー方向におけるトルクも大きくなりやすい。従って、この場合、航空機の姿勢がヨー方向において比較的大きく変動する虞があった。
【0107】
これに対し、航空機1によれば、航空機1の重心CGからの距離が最も長い位置を有する第1回転翼402-1,402-2の回転の中心軸CAが鉛直方向に対して傾斜しない。従って、当該第1回転翼402-1,402-2が動作を停止した場合であっても、動作の停止によって失われる、ヨー方向におけるトルクを抑制できる。この結果、航空機1の姿勢の、ヨー方向における変動を抑制できる。
【0108】
更に、第1実施形態の航空機1において、4個の象限領域のそれぞれにて、当該象限領域に位置する少なくとも2つの第1回転翼402-1,402-2のうちの、航空機1の重心CGからの距離が最も短い位置を有する第1回転翼402-1,402-2は、回転の中心軸CAが鉛直方向に対して傾斜しない。
【0109】
ところで、航空機の重心からの距離が最も短い位置を有する第1回転翼の回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する場合、比較的大きく傾斜させないと、当該第1回転翼が発生する、ヨー方向におけるトルクを十分に大きくすることができない。しかしながら、第1回転翼の回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する程度が大きくなるほど、当該第1回転翼が発生する上方推力は小さくなる。
【0110】
これに対し、航空機1によれば、航空機1の重心CGからの距離が最も短い位置を有する第1回転翼402-1,402-2の回転の中心軸CAが鉛直方向に対して傾斜する場合と比較して、複数の第1回転翼402-1,402-2が発生する上方推力を大きくすることができる。
【0111】
更に、第1実施形態の航空機1において、少なくとも1対の固定翼20-1~20-4は、前後方向における位置が互いに異なる2対の固定翼20-1~20-4を備える。2対の固定翼20-1~20-4は、4個の象限領域にそれぞれ位置する。
【0112】
これによれば、複数の第1回転翼402-1,402-2を航空機1の前後方向にて分散できる。これにより、航空機1が鉛直方向にて飛行する場合において、航空機1の姿勢が変動することを抑制できる。
【0113】
なお、第1実施形態の変形例の航空機1は、4個の象限領域のそれぞれにて、当該象限領域に位置する第1回転翼402-1,402-2のうちの、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜しない第1回転翼402-1,402-2の数は、1つであってもよく、3つ乃至7つであってもよい。
【0114】
また、第1実施形態の変形例の航空機1は、電力に代えて、又は、電力に加えて、内燃機関が生成する動力によって第2回転翼12が回転駆動されるように構成されていてもよい。また、第1実施形態の変形例の航空機1は、第2回転翼12に代えて、又は、第2回転翼12に加えて、ジェットエンジンを備えていてもよい。
【0115】
また、第1実施形態の変形例の航空機1は、第2回転翼12に代えて、又は、第2回転翼12に加えて、複数の第1回転翼402-1,402-2の少なくとも一部が、航空機1を前方向へ推進させる推力を発生してもよい。この場合、複数の第1回転翼402-1,402-2の少なくとも一部は、回転の中心軸の方向を変更可能に構成されていてもよい。
【0116】
また、第1実施形態の変形例の航空機1は、発電装置を備え、発電装置が生成した電力を蓄電池に充電するように構成されていてもよい。
【0117】
<第1実施形態の第1変形例>
次に、第1実施形態の第1変形例の航空機について説明する。第1実施形態の第1変形例の航空機は、第1実施形態の航空機に対して、各象限領域において航空機の重心からの距離が最も短い位置を有する第1回転翼の回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する点において相違している。以下、相違点を中心として説明する。なお、第1実施形態の第1変形例の説明において、第1実施形態にて使用した符号と同じ符号を付したものは、同一又は略同様のものである。
【0118】
図6に表されるように、第1実施形態の第1変形例の航空機1Aにおいて、4個の象限領域のそれぞれにて、当該象限領域に位置する4対の第1回転翼402-1,402-2のうちの、航空機1Aの重心CGからの距離が最も短い位置を有する第1回転翼(本例では、回転翼モジュール40-4の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-5の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-12の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-13の第1回転翼402-1)は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する。
【0119】
本例では、回転翼モジュール40-4の第1回転翼402-2、及び、回転翼モジュール40-5の第1回転翼402-2は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Aの前方に傾斜する。また、回転翼モジュール40-12の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-13の第1回転翼402-1は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Aの後方に傾斜する。
【0120】
第1実施形態の第1変形例の航空機1Aによっても、第1実施形態の航空機1と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0121】
<第1実施形態の第2変形例>
次に、第1実施形態の第2変形例の航空機について説明する。第1実施形態の第2変形例の航空機は、第1実施形態の航空機に対して、各象限領域において航空機の重心からの距離が最も長い位置を有する第1回転翼の回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する点において相違している。以下、相違点を中心として説明する。なお、第1実施形態の第2変形例の説明において、第1実施形態にて使用した符号と同じ符号を付したものは、同一又は略同様のものである。
【0122】
図7に表されるように、第1実施形態の第2変形例の航空機1Bにおいて、4個の象限領域のそれぞれにて、当該象限領域に位置する4対の第1回転翼402-1,402-2のうちの、航空機1Bの重心CGからの距離が最も長い位置を有する第1回転翼(本例では、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-8の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-9の第1回転翼402-2、及び、回転翼モジュール40-16の第1回転翼402-2)は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する。
【0123】
本例では、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-9の第1回転翼402-2は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Bの右方に傾斜する。また、回転翼モジュール40-8の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-16の第1回転翼402-2は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Bの左方に傾斜する。
【0124】
第1実施形態の第2変形例の航空機1Bによっても、第1実施形態の航空機1と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0125】
<第1実施形態の第3変形例>
次に、第1実施形態の第3変形例の航空機について説明する。第1実施形態の第3変形例の航空機は、第1実施形態の航空機に対して、回転中心ベクトルが回転翼モジュールの中央部へ向かう成分を有しないように傾斜の方向が変更されている点において相違している。以下、相違点を中心として説明する。なお、第1実施形態の第3変形例の説明において、第1実施形態にて使用した符号と同じ符号を付したものは、同一又は略同様のものである。
【0126】
図8に表されるように、第1実施形態の第3変形例の航空機1Cにおいて、回転翼モジュール40-2の第1回転翼402-2、及び、回転翼モジュール40-10の第1回転翼402-1は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Cの右方に傾斜する。また、回転翼モジュール40-7の第1回転翼402-2、及び、回転翼モジュール40-15の第1回転翼402-1は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Cの左方に傾斜する。
【0127】
第1実施形態の第3変形例の航空機1Cによっても、第1実施形態の航空機1と同様の作用及び効果を奏することができる。
ところで、回転中心ベクトルCVが、航空機1Cの前後方向における回転翼モジュール40-1~40-16の中央部へ向かう成分を有する場合、第1回転翼402-1,402-2が支持体401と接触することを回避するために、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する角度を十分に大きくすることができない虞がある。
【0128】
これに対し、航空機1Cによれば、いずれの第1回転翼402-1,402-2においても、回転中心ベクトルCVが、航空機1Cの前後方向における回転翼モジュール40-1~40-16の中央部へ向かう成分を有しない。従って、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する角度を十分に大きくすることができる。
【0129】
<第1実施形態の第4変形例>
次に、第1実施形態の第4変形例の航空機について説明する。第1実施形態の第4変形例の航空機は、第1実施形態の航空機に対して、航空機が備える回転翼モジュールの数において相違している。以下、相違点を中心として説明する。なお、第1実施形態の第4変形例の説明において、第1実施形態にて使用した符号と同じ符号を付したものは、同一又は略同様のものである。
【0130】
図9に表されるように、第1実施形態の第4変形例の航空機1Dは、第1実施形態の航空機1が備える、16個の回転翼モジュール40-1~40-16に代えて、8個の回転翼モジュール40-1~40-8を備える。
【0131】
本例では、2個の回転翼モジュール40-1,40-2は、前方固定翼20-1に固定される。2個の回転翼モジュール40-3,40-4は、前方固定翼20-2に固定される。2個の回転翼モジュール40-5,40-6は、後方固定翼20-3に固定される。2個の回転翼モジュール40-7,40-8は、後方固定翼20-4に固定される。
【0132】
本例では、4個の象限領域のそれぞれにおいて、当該象限領域に位置する2対の第1回転翼402-1,402-2のうちの、航空機1Dの重心CGからの距離が最も長い位置を有する第1回転翼(本例では、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-4の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-5の第1回転翼402-2、及び、回転翼モジュール40-8の第1回転翼402-2)は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜しない。
【0133】
本例では、4個の象限領域のそれぞれにおいて、当該象限領域に位置する2対の第1回転翼402-1,402-2のうちの、航空機1Dの重心CGからの距離が最も短い位置を有する第1回転翼(本例では、回転翼モジュール40-2の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-3の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-6の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-7の第1回転翼402-1)は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜しない。
【0134】
本例では、回転翼モジュール40-2の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-6の第1回転翼402-2は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Dの左方に傾斜する。また、回転翼モジュール40-3の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-7の第1回転翼402-2は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Dの右方に傾斜する。
【0135】
本例では、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-2、及び、回転翼モジュール40-4の第1回転翼402-2は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Dの後方に傾斜する。また、回転翼モジュール40-5の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-8の第1回転翼402-1は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Dの前方に傾斜する。
【0136】
第1実施形態の第4変形例の航空機1Dによっても、第1実施形態の航空機1と同様の作用及び効果を奏することができる。
なお、4個の象限領域のそれぞれにおいて、当該象限領域に位置する2対の第1回転翼402-1,402-2のうちの、航空機1Dの重心CGからの距離が最も長い位置を有する第1回転翼402-1,402-2は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜していてもよい。
また、4個の象限領域のそれぞれにおいて、当該象限領域に位置する2対の第1回転翼402-1,402-2のうちの、航空機1Dの重心CGからの距離が最も短い位置を有する第1回転翼402-1,402-2は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜していてもよい。
【0137】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の航空機について説明する。第2実施形態の航空機は、第1実施形態の航空機に対して、回転中心ベクトルが航空機の後方向の成分を有しないように傾斜の方向が変更されている点において相違している。以下、相違点を中心として説明する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態にて使用した符号と同じ符号を付したものは、同一又は略同様のものである。
【0138】
図10に表されるように、第2実施形態の航空機1Eにおいて、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-3の第1回転翼402-2、及び、回転翼モジュール40-10の第1回転翼402-1は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Eの左方に傾斜する。また、回転翼モジュール40-6の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-8の第1回転翼402-2、及び、回転翼モジュール40-15の第1回転翼402-1は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Eの右方に傾斜する。
【0139】
このような構成により、航空機1Eは、回転中心ベクトルCVが航空機1Eの前方向の成分を有する第1回転翼402-1,402-2の数(本例では、6個)が、回転中心ベクトルCVが航空機1Eの後方向の成分を有する第1回転翼402-1,402-2の数(本例では、0個)よりも多い。従って、航空機1Eが備えるすべての第1回転翼402-1,402-2に対する回転中心ベクトルCVの和は、航空機1Eの前方向の成分を有する。
【0140】
本例では、航空機1Eは、動作状態が離着陸状態である場合、動作状態が巡航状態である場合よりも機首を上げた(換言すると、ピッチアップ)状態にて飛行する。換言すると、航空機1Eは、動作状態が離着陸状態である場合、航空機1Eの重心CGに対する航空機1Eの前方向における端の位置が、動作状態が巡航状態である場合よりも鉛直上方の位置を有するように、水平面に対して傾斜する。
【0141】
ところで、航空機が鉛直上方向へ飛行する状態(換言すると、離陸状態)から、航空機が水平方向にて飛行する状態(換言すると、巡航状態)へ動作状態が移行する際、航空機の前方向への速度が高くなるまで比較的長い時間を要する。換言すると、離陸状態から巡航状態へ動作状態を迅速に移行できないという課題があった。
【0142】
これに対し、航空機1Eによれば、複数の第1回転翼402-1,402-2は、航空機1Eを前方向へ推進させる推力を発生できる。これにより、離陸状態から巡航状態へ動作状態が移行する際、航空機1Eの前方向への速度を迅速に高めることができる。この結果、離陸状態から巡航状態へ動作状態を迅速に移行できる。
【0143】
第2実施形態の航空機1Eによっても、第1実施形態の航空機1と同様の作用及び効果を奏することができる。
更に、第2実施形態の航空機1Eにおいて、複数の第1回転翼402-1,402-2に対する回転中心ベクトルCVの和は、航空機1Eの前方向の成分を有する。
【0144】
これによれば、離陸状態から巡航状態へ動作状態が移行する際、航空機1Eの前方向への速度を迅速に高めることができる。この結果、離陸状態から巡航状態へ動作状態を迅速に移行できる。
【0145】
<第2実施形態の第1変形例>
次に、第2実施形態の第1変形例の航空機について説明する。第2実施形態の第1変形例の航空機は、第2実施形態の航空機に対して、各象限領域において航空機の重心からの距離が最も短い位置を有する第1回転翼の回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する点において相違している。以下、相違点を中心として説明する。なお、第2実施形態の第1変形例の説明において、第2実施形態にて使用した符号と同じ符号を付したものは、同一又は略同様のものである。
【0146】
図11に表されるように、第2実施形態の第1変形例の航空機1Fにおいて、4個の象限領域のそれぞれにて、当該象限領域に位置する4対の第1回転翼402-1,402-2のうちの、航空機1Fの重心CGからの距離が最も短い位置を有する第1回転翼(本例では、回転翼モジュール40-4の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-5の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-12の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-13の第1回転翼402-1)は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する。
【0147】
本例では、回転翼モジュール40-4の第1回転翼402-2、及び、回転翼モジュール40-5の第1回転翼402-2は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Fの前方に傾斜する。また、回転翼モジュール40-12の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-13の第1回転翼402-1は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Fの後方に傾斜する。
【0148】
第2実施形態の第1変形例の航空機1Fによっても、第2実施形態の航空機1Eと同様の作用及び効果を奏することができる。
【0149】
<第2実施形態の第2変形例>
次に、第2実施形態の第2変形例の航空機について説明する。第2実施形態の第2変形例の航空機は、第2実施形態の航空機に対して、各象限領域において航空機の重心からの距離が最も長い位置を有する第1回転翼の回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する点において相違している。以下、相違点を中心として説明する。なお、第2実施形態の第2変形例の説明において、第2実施形態にて使用した符号と同じ符号を付したものは、同一又は略同様のものである。
【0150】
図12に表されるように、第2実施形態の第2変形例の航空機1Gにおいて、4個の象限領域のそれぞれにて、当該象限領域に位置する4対の第1回転翼402-1,402-2のうちの、航空機1Gの重心CGからの距離が最も長い位置を有する第1回転翼(本例では、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-8の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-9の第1回転翼402-2、及び、回転翼モジュール40-16の第1回転翼402-2)は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する。
【0151】
本例では、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-9の第1回転翼402-2は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Gの右方に傾斜する。また、回転翼モジュール40-8の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-16の第1回転翼402-2は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Gの左方に傾斜する。
【0152】
第2実施形態の第2変形例の航空機1Gによっても、第2実施形態の航空機1Eと同様の作用及び効果を奏することができる。
【0153】
<第2実施形態の第3変形例>
次に、第2実施形態の第3変形例の航空機について説明する。第2実施形態の第3変形例の航空機は、第2実施形態の航空機に対して、すべての第1回転翼の回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する点において相違している。以下、相違点を中心として説明する。なお、第2実施形態の第3変形例の説明において、第2実施形態にて使用した符号と同じ符号を付したものは、同一又は略同様のものである。
【0154】
図13に表されるように、第2実施形態の第3変形例の航空機1Hにおいて、4個の象限領域のそれぞれにて、当該象限領域に位置する4対の第1回転翼402-1,402-2のうちの、航空機1Hの重心CGからの距離が最も短い位置を有する第1回転翼(本例では、回転翼モジュール40-4の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-5の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-12の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-13の第1回転翼402-1)は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する。
【0155】
本例では、回転翼モジュール40-4の第1回転翼402-2、及び、回転翼モジュール40-5の第1回転翼402-2は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Hの前方に傾斜する。また、回転翼モジュール40-12の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-13の第1回転翼402-1は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Hの後方に傾斜する。
【0156】
更に、第2実施形態の第3変形例の航空機1Hにおいて、4個の象限領域のそれぞれにて、当該象限領域に位置する4対の第1回転翼402-1,402-2のうちの、航空機1Hの重心CGからの距離が最も長い位置を有する第1回転翼(本例では、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-8の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-9の第1回転翼402-2、及び、回転翼モジュール40-16の第1回転翼402-2)は、回転の中心軸が鉛直方向に対して傾斜する。
【0157】
本例では、回転翼モジュール40-1の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-9の第1回転翼402-2は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Hの右方に傾斜する。また、回転翼モジュール40-8の第1回転翼402-1、及び、回転翼モジュール40-16の第1回転翼402-2は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Hの左方に傾斜する。
【0158】
第2実施形態の第3変形例の航空機1Hによっても、第2実施形態の航空機1Eと同様の作用及び効果を奏することができる。
【0159】
<第2実施形態の第4変形例>
次に、第2実施形態の第4変形例の航空機について説明する。第2実施形態の第4変形例の航空機は、第2実施形態の航空機に対して、回転中心ベクトルが航空機の前方向の成分を有する第1回転翼の数において相違している。以下、相違点を中心として説明する。なお、第2実施形態の第4変形例の説明において、第2実施形態にて使用した符号と同じ符号を付したものは、同一又は略同様のものである。
【0160】
図14に表されるように、第2実施形態の第4変形例の航空機1Iにおいて、回転翼モジュール40-3の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-6の第1回転翼402-1、回転翼モジュール40-10の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-12の第1回転翼402-2、回転翼モジュール40-13の第1回転翼402-2、及び、回転翼モジュール40-15の第1回転翼402-2は、回転の中心軸が鉛直方向に対して、航空機1Iの前方に傾斜する。
【0161】
このような構成により、航空機1Iは、回転中心ベクトルCVが航空機1Iの前方向の成分を有する第1回転翼402-1,402-2の数(本例では、12個)が、回転中心ベクトルCVが航空機1Iの後方向の成分を有する第1回転翼402-1,402-2の数(本例では、0個)よりも多い。従って、航空機1Iが備えるすべての第1回転翼402-1,402-2に対する回転中心ベクトルCVの和は、航空機1Iの前方向の成分を有する。
【0162】
第2実施形態の第4変形例の航空機1Iによっても、第2実施形態の航空機1Eと同様の作用及び効果を奏することができる。
【0163】
更に、第2実施形態の第4変形例の航空機1Iによれば、第2実施形態の航空機1Eよりも、回転中心ベクトルCVが航空機1Iの前方向の成分を有する第1回転翼402-1,402-2の数と、回転中心ベクトルCVが航空機1Iの後方向の成分を有する第1回転翼402-1,402-2の数と、の差を大きくすることができる。
【0164】
この結果、航空機1Iが備えるすべての第1回転翼402-1,402-2に対する回転中心ベクトルCVの和が有する、航空機1Iの前方向の成分を大きくすることができる。従って、航空機1Iによれば、複数の第1回転翼402-1,402-2が発生する、航空機1Iを前方向へ推進させる推力を大きくすることができる。
【0165】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、上述した実施形態に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において当業者が理解し得る様々な変更が加えられてよい。
【符号の説明】
【0166】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1I 航空機
10 胴体
11-1,11-2 尾翼
12 第2回転翼
13 制御装置
14 第2制御信号線
20-1,20-2 前方固定翼
20-3,20-4 後方固定翼
40-1~40-16 回転翼モジュール
401 支持体
402-1,402-2 第1回転翼
403-1,403-2 電動機
404-1,404-2 速度制御器
405-1,405-2 制御器
406-1,406-2 第1制御信号線
CA 中心軸
CG 重心
CV 回転中心ベクトル
P1 第1平面
P2 第2平面