(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】パレット搬送装置及びパレット搬送方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 7/00 20060101AFI20230908BHJP
B23Q 7/14 20060101ALN20230908BHJP
【FI】
B23Q7/00 E
B23Q7/14
(21)【出願番号】P 2019151021
(22)【出願日】2019-08-21
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000227537
【氏名又は名称】NITTOKU株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】杉本 進司
(72)【発明者】
【氏名】小野田 雅也
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特公昭48-044900(JP,B1)
【文献】特開2001-087973(JP,A)
【文献】特開2018-008337(JP,A)
【文献】特開2020-037161(JP,A)
【文献】特開2007-021629(JP,A)
【文献】特開2002-137136(JP,A)
【文献】特開平08-323570(JP,A)
【文献】特開平07-206124(JP,A)
【文献】特表平06-508092(JP,A)
【文献】米国特許第05450944(US,A)
【文献】特開平03-157992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/00-3/154
B23Q 7/00-7/18
B23Q 11/00-13/00
B65G 17/00-17/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧機器(26)が搭載された複数のパレット(21)を移動可能に搭載する搬送レール(31)と、前記搬送レール(31)に搭載された前記パレット(21)を搬送するパレット搬送手段(51)とを備えたパレット搬送装置(10)であって、
内部に流体通路(91d)が形成された流体レール(91)が前記搬送レール(31)に沿って設けられ、
前記流体通路(91d)に流体を供給し又は前記流体通路(91d)から流体を吸引する流体供給吸引手段(92)が前記流体通路(91d)に連通して設けられ、
前記流体通路(91d)を外部に連通させる通孔(91e)が前記流体レール(91)に複数形成され、
前記流体レール(91)に対向して一又は二以上の前記通孔(91e)を覆う凹部(93a)が形成された対向部材(93)が複数の前記パレット(21)にそれぞれ設けられ、
前記流体レール(91)上を転動して前記流体レール(91)に前記対向部材(93)を所定の隙間を空けて対向させるローラ(96)が前記対向部材(93)に枢支され、
前記凹部(93a)と前記流体圧機器(26)とを連通させる連通路(93c)が複数の前記パレット(21)にそれぞれ設けられた
ことを特徴とするパレット搬送装置。
【請求項2】
対向部材(93)を流体レール(91)上に押しつけるサスペンション装置(94)がパレット(21)に設けられた
請求項1記載のパレット搬送装置。
【請求項3】
対向部材(93)の流体レール(91)方向の長さ(W2)がパレット(21)の前記流体レール(91)方向
の長さ(W1)と同一又は長い
請求項1又は2記載のパレット搬送装置。
【請求項4】
搬送レール(31)に平行に設けられパレット(21)を移動可能に搭載する戻りレール(41)と、
前記戻りレール(41)に搭載された前記パレット(21)を搬送方向と逆方向に移動させるパレット戻し手段(61)と、
前記搬送レール(31)に搭載された前記パレット(21)を前記搬送レール(31)の先端から前記戻りレール(41)の先端に移載する戻りパレット移載機構(70)と、
前記戻りレール(41)に搭載された前記パレット(21)を前記戻りレール(41)の基端から前記搬送レール(31)の基端に移載する搬送パレット移載機構(80)と
を更に備えた請求項1
ないし3いずれか1項に記載のパレット搬送装置。
【請求項5】
パレット搬送手段(51)が、搬送レール(31)に沿って無端で設けられて循環する搬送ベルト(52)と、前記搬送ベルト(52)を循環させる循環手段(59)と、パレット(21)に設けられ前記パレット(21)と共に前記搬送ベルト(52)の幅方向に移動して前記搬送ベルト(52)に係止可能に構成された係止部材(24)とを備え、
パレット戻し手段(61)が、戻りレール(41)に沿って無端で設けられて循環する戻しベルト(62)と、前記戻しベルト(62)を循環させる循環手段(69)と、前記パレット(21)に設けられ前記パレット(21)と共に前記戻しベルト(62)の幅方向に移動して前記戻しベルト(62)に係止可能に構成された係止部材(24)とを備えた
請求項4記載のパレット搬送装置。
【請求項6】
流体圧機器(26)が搭載された複数のパレット(21)を搬送レール(31)に搭載して搬送するパレット搬送方法において、
内部に流体通路(91d)が形成され前記流体通路(91d)を外部に連通させる通孔(91e)が複数形成された流体レール(91)を前記搬送レール(31)に沿って設け、
前記流体通路(91d)に流体を供給し又は前記流体通路(91d)から流体を吸引し、
前記流体レール(91)上を転動するローラ(96)が枢支され一又は二以上の前記通孔(91e)を覆う凹部(93a)が形成された対向部材(93)を前記流体レール(91)に
所定の隙間を空けて対向させ、
前記凹部(93a)と前記パレット(21)に搭載された流体圧機器(26)を連通させて前記流体圧機器(26)を稼動させつつ前記対向部材(93)とともに前記パレット(21)を搬送する
ことを特徴とするパレット搬送方法。
【請求項7】
対向部材(93)を流体レール(91)上に押しつけつつパレット(21)を搬送する
請求項6記載のパレット搬送方法。
【請求項8】
複数のパレット(21)を搬送レール(31)に連続して搭載して、複数の前記パレット(21)の対向部材(93)を互いに近接させ又は接触させつつ前記パレット(21)を搬送する
請求項6又は7記載のパレット搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧機器が搭載された複数のパレットを搬送レールに搭載して搬送するパレット搬送装置及びパレット搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、製造ラインにおいて、ワークをコンベアにて搬送し、搬送先の工作機がワークに対して所定の加工を行う搬送装置がある。しかしながら、このような従来の搬送装置にあっては、例えばステータ等の重量の大きいワークをコンベアに載せて搬送する場合、ワークを停止させた際にワークに働く慣性力が大きいため、搬送速度を高めることが難しく、ストッパーを介して正確に位置決めすることが難しいという不具合があった。
【0003】
このような不具合を解消するために、本出願人は工作機に対してワークを載せる複数のパレットを四角形の軌道で搬送するパレット搬送装置を提案した(例えば、特許文献1参照。)。この搬送装置では、複数のパレットをレールに搭載し、その複数のパレットを左パレット送り機構と右パレット送り機構の間に挟持し、そのように挟持された複数のパレットをその状態で一つのパレット分移動させて搬送するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、近年では、パレットに流体圧により稼動する流体圧機器を搭載し、その流体圧機器を稼動させた状態でパレットを搬送させようとする要望も高まってきている。
【0006】
しかし、パレットに流体圧機器を搭載すると、流体を供給し又は流体を吸引して流体圧機器を稼動させる流体供給吸引手段をもパレットに搭載する必要が生じ、パレットの重量が増加するとともに、パレットにおけるワークの搭載エリアが減少して、ワークの効率的な搬送が困難になるという不具合があった。
【0007】
また、複数のパレットを搬送レールに搭載して搬送する場合にあって、それら複数のパレットにそれぞれ流体圧機器を搭載すると、流体圧機器を稼動させる流体供給吸引手段をもそれら複数のパレットにそれぞれ搭載する必要が生じ、パレットの数と同数の流体供給吸引手段が必要となることから、パレット搬送装置の単価が押し上げられるという未だ解決すべき課題が残存していた。
【0008】
本発明の目的は、流体圧機器を稼動させる流体供給吸引手段のパレットへの搭載を回避し得るパレット搬送装置及びパレット搬送方法を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、複数のパレットを搬送する場合であっても、単一の流体供給吸引手段にて複数のパレットにそれぞれ搭載された流体圧機器を稼動し得るパレット搬送装置及びパレット搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のパレット搬送装置は、流体圧機器が搭載された複数のパレットを移動可能に搭載する搬送レールと、搬送レールに搭載されたパレットを搬送する搬送手段とを備えたパレット搬送装置の改良である。
【0011】
その特徴ある構成は、内部に流体通路が形成された流体レールが搬送レールに沿って設けられ、流体通路に流体を供給し又は流体通路から流体を吸引する流体供給吸引手段が流体通路に連通して設けられ、流体通路を外部に連通させる通孔が流体レールに複数形成され、流体レールに対向して一又は二以上の通孔を覆う凹部が形成された対向部材が複数のパレットにそれぞれ設けられ、凹部と流体圧機器とを連通させる連通路が複数のパレットにそれぞれ設けられたところにある。
【0012】
このパレット搬送装置では、流体レール上を転動して流体レールに対向部材を所定の隙間を空けて対向させるローラが対向部材に枢支されることが好ましく、その対向部材を流体レール上に押しつけるサスペンション装置がパレットに設けられることが更に好ましい。また、対向部材の流体レール方向の長さがパレットの流体レール方向の長さと同一又は長くすることもできる。
【0013】
また、搬送レールに平行に設けられパレットを移動可能に搭載する戻りレールと、戻りレールに搭載されたパレットを搬送方向と逆方向に移動させる戻し手段と、搬送レールに搭載されたパレットを搬送レールの先端から戻りレールの先端に移載する戻りパレット移載機構と、戻りレールに搭載されたパレットを戻りレールの基端から搬送レールの基端に移載する搬送パレット移載機構とを更に備えることもできる。
【0014】
この場合、搬送手段は、搬送レールに沿って無端で設けられて循環する搬送ベルトと、搬送ベルトを循環させる循環手段と、パレットに設けられパレットと共に搬送ベルトの幅方向に移動して搬送ベルトに係止可能に構成された係止部材とを備えたことが好ましく、戻し手段は、戻りレールに沿って無端で設けられて循環する戻しベルトと、戻しベルトを循環させる循環手段と、パレットに設けられパレットと共に戻しベルトの幅方向に移動して戻しベルトに係止可能に構成された係止部材とを備えたことが好ましい。
【0015】
別の本発明は、流体圧機器が搭載された複数のパレットを搬送レールに搭載して搬送するパレット搬送方法の改良である。
【0016】
その特徴有る点は、内部に流体通路が形成され流体通路を外部に連通させる通孔が複数形成された流体レールを搬送レールに沿って設け、流体通路に流体を供給し又は流体通路から流体を吸引し、一又は二以上の通孔を覆う凹部が形成された対向部材を流体レールに対向させ、凹部とパレットに搭載された流体圧機器を連通させて流体圧機器を稼動させつつ対向部材とともにパレットを搬送するところにある。
【0017】
このパレット搬送方法では、流体レール上を転動するローラを対向部材に枢支して、流体レールに対向部材を所定の隙間を空けて対向させつつパレットを搬送することが好ましく、対向部材を流体レール上に押しつけつつパレットを搬送することもできる。そして、複数のパレットを搬送レールに連続して搭載して、複数のパレットの対向部材を互いに近接させ又は接触させつつパレットを搬送することが更に好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のパレット搬送装置及びパレット搬送方法では、流体レールを搬送レールに沿って設け、その流体レールに流体供給吸引手段から流体を供給し又は吸引し、その流体レールにパレットに搭載された流体圧機器を連通させて流体圧機器を稼動させつつパレットを搬送するので、流体圧機器を稼動させる流体供給吸引手段のパレット毎への搭載を回避することができる。
【0019】
また、複数のパレットを搬送レールに搭載して搬送する場合であっても、流体レールを搬送レールに沿って設けることにより、それら複数のパレットに搭載された流体圧機器を流体レールにそれぞれ連結することができる。この結果、単一の流体供給吸引手段であっても、その流体圧供給吸引手段によりその流体レールに流体を供給し又は吸引することにより、複数のパレットにそれぞれ搭載された流体圧機器を同時に稼動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明実施形態のパレット搬送装置を示す正面図である。
【
図3】そのパレットの正面を示す
図1のE部拡大図である。
【
図4】その搬送レールに搭載されたパレットを上方から見た図である。
【
図5】そのパレットと循環ベルトとの係合状態を示す
図4のB-B線断面図である。
【
図6】そのパレット移載機構を示す
図9のD-D線拡大断面図である。
【
図7】そのパレット移載機構を示す
図10のC-C線拡大断面図である。
【
図8】そのパレットを搬送レールに沿って搬送する以前の状態を示す上面図である。
【
図9】そのパレットを搬送レールに沿って搬送した後であってそのパレットを戻りレールに移動する以前の状態を示す上面図である。
【
図10】そのパレットを戻りレールに移動した後であってそのパレットを戻りレールに沿って後退させる以前の状態を示す上面図である。
【
図11】そのパレットを戻りレールに沿って後退させた後であってそのパレットを搬送レールに移動する以前の状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1ないし
図8に、本発明におけるパレット搬送装置10を示す。各図において、互いに直交するX,Y,Zの3軸を設定し、X軸が略水平横方向、Y軸が略水平前後方向、Z軸が鉛直方向に延びるものとし、パレット搬送装置10の構成について説明する。
【0023】
図1及び
図8に示すように、この実施の形態におけるパレット搬送装置10は、比較的小さな製品を製造するラインに設けられるものを例示し、この製造ラインは3台の加工ステーション11~13がX軸方向に所定の間隔で一列に並ぶものを示す。各加工ステーション11~13は箱形形状を成し、内部には図示しない工作機が設置される。
【0024】
そして、各加工ステーション11~13における工作機は、パレット搬送装置10によって搬送されるワーク14(
図2)に対して穴開けやカシメ、溶接等の各種必要な加工を順に行い、図示しない製品を自動的に製造するものとする。このため、この3台の加工ステーション11~13を挟むように、その上流側にワーク供給機16が設けられ、下流側にはワーク14を回収するワーク回収機17が設けられるものとする。
【0025】
この実施の形態におけるパレット搬送装置10は、
図8~
図11に示すように、X方向に延びて設けられた搬送レール31と、その搬送レール31からY軸方向に離間してその搬送レール31と平行に設けられた戻りレール41と、搬送レール31に搭載されたパレット21を搬送させるパレット搬送手段51と、戻りレール41に搭載されたパレット21を搬送方向と逆方向に移動させるパレット戻し手段61と、搬送レール31に搭載されたパレット21を搬送レール31の先端から戻りレール41の先端に移載する戻りパレット移載機構70と、戻りレール41に搭載されたパレット21を戻りレール41の基端から搬送レール31の基端に移載する搬送パレット移載機構80とを備える。
【0026】
図2に示すように、この実施の形態における搬送レール31は、断面においてZ軸方向に長い方形を成す支持板32と、その支持板32の上縁にねじ止めにより固定された市販の直線運動ガイドレール33と、支持板32の下端に溶接された取付板34とを備える。
【0027】
図8に示す様に、戻りレール41にあっても、上記搬送レール31と同一の構造であって、搬送レール31における支持板32と同一の断面形状を有する支持板42と、その支持板42の上縁にネジ止めされた市販の直線運動ガイドレール43と、その支持板42の下端に溶接された取付板44とを備える。
【0028】
この搬送レール31及び戻りレール41は、3台の加工ステーション11~13を挟んで互いに平行になるように、その両端が架台71,81に取付けられるものとする。この架台71,81は、3台の加工ステーション11~13及びその両側に設けられたワーク供給機16とワーク回収機17を挟むように、X軸方向に離間して設置される。
【0029】
この架台71,81はY軸方向に長く形成され、搬送レール31及び戻りレール41におけるそれぞれの取付板34,44の長手方向の端部が、これらの架台71,81に直接ネジ止めされる。これにより、搬送レール31は、ワーク供給機16から3台の加工ステーション11~13を介してワーク回収機17までを連結するように、その両端部が架台71,81に取付けられる(
図1及び
図8)。
【0030】
搬送レール31と戻りレール41はそれぞれパレット21を移動可能に搭載するものであって、その搬送レール31や戻りレール41に搭載されるパレット21は、
図2に示すように、搬送レール31や戻りレール41における直線運動ガイドレール33,43を跨いでそれらの直線運動ガイドレール33,43上を移動可能に構成された直線運動ブロック22と、そのブロック22にねじ止めされた台座23とを有し、その台座23の下側であって、搬送レール31や戻りレール41に沿う両側には係止部材24がそれぞれ設けられる。
【0031】
この直線運動ブロック22は搬送レール31や戻りレール41における直線運動ガイドレール33,43と対に販売される市販のものであって、
図4に示すように、台座23に対して直線運動ブロック22が2個、X軸方向に離間して設けられる。この直線運動ブロック22を用いることにより、その幅方向(Y軸方向)の移動を禁止しつつパレット21が搬送レール31や戻りレール41上を移動する抵抗を軽減するものであり、これによりパレット21は搬送レール31や戻りレール41に移動可能に搭載されることになる。
【0032】
図2に示す様に、パレット21における台座23には流体圧機器26が搭載される。図に示す流体圧機器26は、ワーク14を吸着するためのものであって、パレット21における台座23に取付治具27を介して、その台座23の上方に鉛直方向に延びて設けられるものを例示する。これによりパレット21は、この流体圧機器26を介してワーク14を吸着して保持するように構成される。なお、図示しないワーク14は、各加工ステーション11~13において加工されるものであって、
図2では、流体圧機器26において吸着可能な平板を例示するものとする。
【0033】
図1及び
図8に示す様に、搬送レール31に搭載されたパレット21を搬送するこの実施の形態におけるパレット搬送手段51は、搬送レール31に搭載されたパレット21と係止可能に構成され、搬送レール31に沿って無端で設けられて循環する搬送ベルト52を備えるものを示す。
【0034】
即ち、搬送レール31の両端部を支持する架台71,81には、その搬送レール31の延長上に第1及び第2支持台53,54が設けられ、それらの第1及び第2支持台53,54には同形同大の第一及び第二プーリ55,56が設けられる。搬送ベルト52は、その第一及び第二プーリ55,56に掛け渡されて、その第一及び第二プーリ55,56の回転により搬送レール31に沿って循環可能に設けられる。
【0035】
このため、この搬送ベルト52は、
図1に示す様に、搬送レール31に沿って、上下に第一及び第二プーリ55,56の外径に略等しい間隔を開けて設けられることに成り、
図2に示す様に、搬送レール31には、第一及び第二プーリ55,56に掛け回された搬送ベルト52の下側における搬送ベルト52cを支持してその下側の搬送ベルト52cの弛みを抑制するベルトレール57と、上側の搬送ベルト52dが撓むことを防止する支持レール58とが設けられる。
【0036】
即ち、搬送レール31における支持板32には、ベルトレール57を搬送レール31に取付ける第一取付部材57aが、支持板32の長手方向に所定の間隔を空けて複数設けられ、この複数の第一取付部材57aを介してベルトレール57が搬送レール31に取付けられる。また、この支持板32には、支持レール58を搬送レール31に取付ける第二取付部材58aが、支持板32の長手方向に所定の間隔を空けて複数設けられ、この複数の第二取付部材58aを介して支持レール58が搬送レール31に取付けられる。
【0037】
一方、この実施の形態における搬送ベルト52は、いわゆる歯付きベルトである。
図5に示すように、歯付きベルトである搬送ベルト52は、幅方向に延びる凹凸52a,52bが長手方向に交互に連続する搬送ベルト52であって、その凹凸52a,52bに係合可能な被凹凸24a,24bがパレット21における係止部材24に形成される。
【0038】
即ち、
図2及び
図5に示すように、搬送レール31にパレット21が搭載されると、支持レール58に支持された上側の搬送ベルト52dに係止部材24が上側から重合する様に構成され、その重合状態で、搬送ベルト52に形成された凹凸52a,52bが係止部材24における被凹凸24a,24bに係合する様に構成される。そして、支持レール58は、上側の搬送ベルト52dが撓んで、凹凸52a,52bと被凹凸24a,24bとの係合が解除されることを防止するように、ワーク供給機16とワーク回収機17の間の搬送方向の全長に亘って設けられる。
【0039】
図5に示す様に、パレット21における係止部材24は、長手方向に連続して形成された被凹凸24a,24bが搬送ベルト52における凹凸52a,52bに係合可能であるので、パレット21における被凹凸24a,24bがそれらの凹凸52a,52bに係合すると、搬送ベルト52と独立したパレット21の移動は禁止され、これによりパレット21は搬送ベルト52に係止される。
【0040】
図1及び
図8に示すように、パレット搬送手段51は、その搬送ベルト52を循環させる循環手段59を備える。この実施の形態における循環手段は、第1プーリ55を回転駆動する電気駆動式のサーボモータ59である。そして、その回転軸59aに第1プーリ55が取付けられたサーボモータ59が架台71に立設された支持台53に取付けられるものとする。
【0041】
このサーボモータ59には図示しないコントローラからの制御出力が接続され、このコントローラからの指令によりそのサーボモータ59が駆動すると、その回転軸59aとともに第1プーリ55が回転し、第1プーリ55と第2プーリ56の間に掛け回された搬送ベルト52を循環させ、そこに係止されたパレット21を搬送レール31に搭載した状態で搬送するように構成される。
【0042】
図8~
図11に示すように、戻りレール41に搭載されたパレット21を搬送方向と逆方向に移動させて戻すパレット戻し手段61にあっても、上記パレット搬送手段51と同一構造で有り、戻りレール41に搭載されたパレット21と係止可能に構成されて、戻りレール41に沿って無端で設けられて循環する戻しベルト62を備える。
【0043】
戻りレール41の両端部を支持する架台71,81には、その戻りレール41の延長上に第3及び第4支持台63,64が設けられ、その第3及び第4支持台63,64には第3及び第4プーリ65,66が設けられる。戻しベルト62は、戻りレール41の両端の延長上に設けられた第3及び第4プーリ65,66に掛け渡される。
【0044】
その戻しベルト62を循環させる循環手段にあっては、後退方向の基端における第4支持台64に取付けられた第4プーリ66を回転駆動するサーボモータ69であって、パレット搬送手段51と同様に、この戻りレール41には、下側のベルトを支持する図示しないベルトレールと、上側の戻しベルト62dが撓むことを防止する支持レール68とが設けられる。
【0045】
この戻しベルト62は、パレット搬送手段51における搬送ベルト52と同様ないわゆる歯付きベルトであり、この戻しベルト62は、幅方向に延びる凹凸62a,62bが長手方向に交互に連続して形成され、その凹凸62a,62bに係合可能な被凹凸24a,24bがパレット21における他方の係止部材24に形成される(
図7)。
【0046】
具体的に、
図2に示すように、係止部材24はパレット21における台座23の下側に直線運動ブロック22を挟むように両側に設けられるけれども、
図10に示す様に、パレット21が戻りレール41に連続すると、
図7に示す様に、その内の他方の係止部材24が戻しベルト62に対向するように設けられる。そして、この係止部材24の被凹凸部24a,24bは、戻しベルト62の幅方向に移動して、戻しベルト62の凹凸62a,62bに上方から係合するように形成される。
【0047】
図8~
図11に示す様に、搬送レール31と戻りレール41の先端側が取付けられた先端側の架台71には、搬送レール31に搭載されたパレット21を搬送レール31の先端から戻りレール41の先端に移載する戻りパレット移載機構70が設けられ、搬送レール31と戻りレール41の基端側が取付けられた基端側の架台81には、戻りレール41に搭載されたパレット21を戻りレール41の基端から搬送レール31の基端に移載する搬送パレット移載機構80が設けられる。
【0048】
両者は同一構造で有り、X軸方向に離間して設けられたそれぞれの架台71,81はY軸方向に延びて設けられる。搬送レール31及び戻りレール41の端縁とその延長上に設けられた支持台53,54,63,64との間の間隔L(
図8)は、パレット21における台座23の搬送方向における幅W1(
図8)より広くなるように形成される。そして、戻りパレット移載機構70と搬送パレット移載機構80は、搬送レール31及び戻りレール41の端縁とその延長上に設けられた支持台53,54,63,64との間の間隔Lを塞ぐ可動体72,82をそれぞれ備える。
【0049】
可動体72,82は、搬送レール31及び戻りレール41の端縁と支持台53,54,63,64との間に収容された状態で、その搬送レール31や戻りレール41における支持板32,42に連続する台板72a,82aと、それらの台板72a,82aの上縁に取付けられてガイドレール33,43に連続する短レール72b,82bとをそれぞれ備える。
【0050】
短レール72b,82bはガイドレール33,43と同一の断面形状を有し、搬送レール31及び戻りレール41の端縁と支持台53,54,63,64との間を可動体72,82が塞いた状態で、ガイドレール33,43上を移動したパレット21が短レール72b,82bにまで移動可能に構成され、これにより、これらの可動体72,82はそのように移動したパレット21を搭載可能に構成される。
【0051】
戻りパレット移載機構70と搬送パレット移載機構80は同一構造であり、それぞれの架台71,81上にY軸方向に延びて可動体72,82を搭載可能に設けられた一対のレール73,83と、その一対のレール73,83に移動可能に設けられた台部材74,84と、その台部材74,84に螺合されてレール73,83に平行に設けられたボールネジ75,85と、そのボールネジ75,85を回転させるモータ76,86とをそれぞれ備える。そして、それぞれの台部材74,84に可動体72,82における台板72a,82aが立設される。
【0052】
このような構成の戻りパレット移載機構70と搬送パレット移載機構80では、モータ76,86を駆動させてボールネジ75,85を回転させることにより、一対のレール73,83に搭載された台部材74,84を可動体72,82とともに、そのレール73,83に沿って移動可能に構成されたものとなる。
【0053】
このため、戻りパレット移載機構70では、搬送レール31の先端に連続する可動体72を戻りレール41の先端に連続する位置まで移動可能となり、
図6及び
図9に示す様に、搬送レール31の先端から飛び出したパレット21を可動体72に移動して搭載し、
図7及び
図10に示す様に、その可動体72をY軸方向にパレット21とともに搬送レール31の先端から戻りレール41の先端にまで移動させ、その可動体72から戻りレール41の先端にパレット21を再び移動させることにより、パレット21を、搬送レール31の先端から戻りレール41の先端に移載するように構成される。
【0054】
一方、搬送パレット移載機構80では、戻りレール41の基端に連続する可動体72を、搬送レール31の基端に連続する位置まで移動となり、
図11に示す様に、戻りレール41の基端から飛び出したパレット21を可動体82に移動して搭載し、
図8に示す様に、その可動体82をY軸方向にパレット21とともに戻りレール41の基端から搬送レール31の基端にまで移動させ、その可動体82から搬送レール31の基端にパレット21を再び移動させることにより、パレット21を、戻りレール41の基端から搬送レール31の基端に移載するように構成される。
【0055】
図8に示す様に、この実施の形態では、3台の加工ステーション11~13を挟むようにワーク供給機16とワーク回収機17とが設けられ、このワーク供給機16とワーク回収機17は加工ステーション11~13と同一のピッチPで設けられるものとする。そして、搬送レール31及び戻りレール41の端縁に連続して設けられた可動体72,82にあっても、ワーク供給機16やワーク回収機17から同一のピッチPで設けられるものとする。
【0056】
図1~
図4に示すように、このパレット搬送装置10は、内部に流体通路91dが形成された流体レール91を備える。この流体レール91は搬送レール31に沿って設けられるものであって、長尺上の基材91aと、その基材91a上に取付けられた蓋板91bとを備える。
【0057】
図2及び
図3に詳しく示す様に、支持板32には支持具91cが設けられ、この支持具91cを介して基材91aが搬送レール31に平行に取付けられる。この基材91aの蓋板91bにより覆われる上面には長手方向に延びる凹溝91dが形成され、
図1に示すように、基端側の架台81には、この凹溝91dに流体を供給し又はこの凹溝91dから流体を吸引する流体供給吸引手段92が設けられる。
【0058】
この実施の形態における流体供給吸引手段92は、流体であるエアを吐出又は吸引する流体ポンプ92であり、この流体ポンプ92の吐出吸引口には連通管92aの一端が取付けられ、この連通管92aの他端が凹溝91dに開放するように基材91aに取付けられる。これにより流体供給吸引手段92である流体ポンプは、蓋板91bにより覆われる基材91aの流体通路を構成する凹溝91dに流体を供給し又はその凹溝91dから流体を吸引する様に構成される。
【0059】
そして、
図1の拡大図に示すように、蓋板91bには、凹溝91dに連通する通孔91eが上下に貫通して形成される。この通孔91eは流体レール91の長手方向に所定の間隔Tを開けて連続して複数形成される。
【0060】
一方、
図2及び
図3に詳しく示すように、流体レール91に対向して一又は二以上の通孔91eを覆う凹部93aが形成された対向部材93が複数のパレット21にそれぞれ設けられる。
図3に示すように、この対向部材93の長さW2は、パレット21における台座23の搬送レール31方向の幅W1より長い棒状部材であって、その断面は方形を成して、流体レール91に対向する側に、長手方向に延びて複数の通孔91eの間隔Tより長い長さMの凹部93aが形成される。
【0061】
図における対向部材93は、サスペンション装置94を介してパレット21における台座23に設けられる。このサスペンション装置94は、対向部材93を流体レール91に押しつけるように付勢するものであって、パレット21における台座23の係止部材24が取付けられた外側には、鉛直方向に向けて支持軸94aが貫通して軸方向に移動可能に設けられる。
【0062】
図3に示す様に、支持軸94aは、その下端に対向部材93が取付けられるものであって、単一の対向部材93は2本の支持軸94aにより支持されるものとする。単一の対向部材93を支持する台座23の側縁には、その搬送レール31の長手方向に所定に間隔を開けて2本の支持軸94aが設けられ、この2本の支持軸94aの下端に単一の対向部材93が取付けられるものとする。ここで、図の符号94bは、台座23に設けられて、支持軸94aを軸方向に移動可能に支持するスライドブッシュ94bを示す。
【0063】
対向部材93と台座23の間の支持軸94aには、付勢手段となるコイルスプリング94cが圧縮された状態で介装され、このコイルスプリング94cの伸長しようとする力は、パレット21における台座23から対向部材93を離間させる方向に作用して、その対向部材93が流体レール91に対向していたのであれば、その対向部材93を流体レール91に押しつけるように構成される。
【0064】
このため、
図6及び
図7に示すように、対向部材93に流体レール91が対向していないと、支持軸94aはコイルスプリング94cの付勢力によりZ軸方向下方に移動することになる。けれども、パレット21における台座23を貫通した支持軸94aの上部にはリング状物94dが取付けられる。このリング状物94dは、支持軸94aが対向部材93と共に下昇して、このリング状物94dがパレット21における台座23の上面に当接すると、支持軸94aのそれ以上の下昇を禁止するように構成される。よって、このリング状物94dは、対向部材93における可動範囲を制限するものとなる。
【0065】
図3及び
図4に示すように、対向部材93の流体レール91方向の長さW2は、パレット21における台座23の流体レール91方向の長さW1より長く形成され、この実施の形態では、対向部材93の長さW2は、加工ステーション11~13が設けられるピッチPと同一又は僅かに小さくなるように形成される。
【0066】
そして、この対向部材93には、流体レール91上を転動してその流体レール91に対向部材93を所定の隙間を空けて対向させるローラ96が枢支され、
図1の拡大図に示す様に、流体レール91の基端側の上面には、このローラ96が転動して、対向部材93を流体レール91の上面に案内する傾斜面91fが形成される。そして、この実施の形態では、一対のローラ96が支持軸94a近傍の対向部材93に枢支されるものとし、所定の隙間とは0~0.1mm程度とされるものとする。
【0067】
対向部材93には、その凹部93aに連通する連通部材93bが設けられ、この連通部材93bと流体圧機器26とは連通管93cにより連通される。即ち、連通管93cは、その一端が連通部材93bを介して凹部93aに開放するように取付けられ、その他端は流体圧機器である吸着ノズル26に連結されるものとする。このようにして、パレット21には、搬送レール31に搭載された状態で流体レール91と流体圧機器26とを連通させる連通路が形成される。
【0068】
従って、流体供給吸引手段であるポンプ92(
図1)を駆動させ、例えば、蓋板91bにより覆われる凹溝91d内のエアを吸引して負圧にすると、
図2に示す様に、その凹溝91dに通孔91eを介して対向する対向部材93の凹部93aにおける流体は吸引されることになる。そして、凹部93aには連通管93cを介して流体圧機器26が連通しているので、凹部93aにおける流体が吸引されると、連通管93cを介して連通する流体圧機器26は、ワーク14をその下端において吸着する様に構成される。
【0069】
そして、歯付きベルトである搬送ベルト52は、搬送レール31に搭載されたパレット21が係止可能に構成されているので、サーボモータ59(
図8)を駆動させてパレット21が係止された搬送ベルト52を循環させると、ワーク14をその下端において吸着する流体圧機器26が設けられたパレット21を、搬送ベルト52が沿う搬送レール31に沿って搬送するように構成される。
【0070】
次に、上記パレット搬送装置を用いた本発明におけるパレット搬送方法を説明する。
【0071】
本発明におけるパレット搬送方法は、流体圧機器26が搭載された複数のパレット21を搬送レール31に搭載して搬送するパレット搬送方法である。
【0072】
上記パレット搬送装置10では、
図8に示す様に、戻りレール41が搬送レール31と平行に設けられているので、搬送レール31に搭載されたパレット21を搬送させた後には、その搬送レール31の先端からパレット21を戻りレール41の先端に移載した後に戻りレール41の基端側まで後退させ、その後に、そのパレット21を搬送レール31の基端側に戻すことにより、複数のパレット21を循環するように搬送する方法となる。
【0073】
また、上記パレット搬送装置10では、
図3に示すように、内部に形成された流体通路91dを外部に連通させる通孔91eが搬送レール31方向に所定に間隔Tを開けて複数形成された流体レール91を搬送レール31に沿って設けているので、搬送レール31に搭載したパレット21の搬送にあっては、凹溝91dからなる流体通路に流体を供給し又はその流体通路91dから流体を吸引し、一又は二以上の通孔91eを覆う凹部93aが形成された対向部材93を流体レール91に対向させ、凹部93aとパレット21に搭載された流体圧機器26を連通させて流体圧機器26を稼動させつつパレット21を対向部材93とともに搬送することを特徴とする。
【0074】
循環するように複数のパレット21を搬送させることから説明すると、先ず、搬送レール31に複数のパレット21を搭載することから始められる。このパレット21の搭載にあっては、先ずパレット21を搬送レール31の基端側、即ち基端側架台81において搭載するけれども、パレット21を搬送レール31に搭載すると、パレット71における係止部材24が搬送ベルト52に重合することになる。
【0075】
このように搬送レール31の基端側からパレット21を搭載した後には、搬送ベルト52を循環させて既に搭載されたパレット21を所定のピッチPだけ搬送する。そして、搬送レール31の基端側から新たにパレット21を搬送レール31に搭載する。このようなことを繰り返して、
図8に示す様に、複数のパレット21(この実施の形態では6台)を搬送レール31に加工ステーション11~13のピッチPと同一のピッチPで搭載する。
【0076】
ここで、パレット21に設けられた対向部材93の長さが所定のピッチPと同一又は僅かに小さいようなものであるならば、この対向部材93を接触させるようにパレット21を搬送レール31に順次搭載することにより、比較的容易にパレット21を所定のピッチPで搭載することが可能となる。
【0077】
次に、複数のパレット21が循環するように搬送される状態を説明する。
【0078】
図8に示す状態から搬送レール31に沿う搬送ベルト52を循環させると、所定のピッチPを保った状態で複数のパレット21は前進し、所定のピッチPだけ前進すると、
図9に示す様に、先頭のパレット21は搬送レール31の先端から飛び出す。このため、搬送レール31の先端に可動体72が連続していると、
図6に示す様に、搬送レール31におけるガイドレール33上を移動したパレット21は可動体72の短レール72bにまで移動して先頭のパレット21は可動体72に搭載される。
【0079】
次に、戻りパレット移載機構70により、
図7及び
図10に示す様に、可動体72に搭載されたパレット21を戻りレール41の先端にまで移動させる。具体的には、モータ76を駆動させてボールネジ75を回転させて、可動体72をY軸方向に移動させ、その可動体72を搬送レール31の先端に連続する
図6に示す状態から、
図7に示す様に、戻りレール41の先端に連続する位置まで移動させる。その後、その可動体72から戻りレール41の先端にパレット21を再び移動させることにより、パレット21を、搬送レール31の先端から戻りレール41の先端に移載する。
【0080】
ここで、パレット21が搭載された可動体72をパレット21と共に、搬送ベルト52に直交するY軸方向に移動させると、パレット21の係止部材24における被凹凸24a,24bは搬送ベルト52の幅方向に延びる凹凸52a,52bからその幅方向にずれて外れるので、パレット21と搬送ベルト52の係合は解消される。
【0081】
そして、そのパレット21を可動体72と共にY軸方向に移動させて戻りレール41に連続させ、その可動体72,82を戻りレール41と一直線上にすると、戻しベルト62の幅方向にパレット21が移動することから、そのパレット21における係止部材24は戻りレール41に沿って設けられた戻しベルト62に新たに係止されることになる。
【0082】
このため、いわゆる歯付きベルトからなる搬送ベルト52や戻しベルト62を用いることにより、そのパレット21を可動体72と共にY軸方向に移動させることに支障を生じさせずに、パレット21の搬送ベルト52や戻しベルト62との新たな係合を容易にすることが可能となる。
【0083】
次に、そのパレット21を搬送方向と逆方向に移動させて戻りレール41に搭載させる。そのために、パレット戻し機構61におけるサーボモータ69を駆動させて、戻しベルト62を循環させると、可動体72に搭載されたパレット21は、戻りレール41の先端縁からその先端部に移動するので、これにより、パレット21は、搬送レール31の先端から戻りレール41の先端に移載されることになる。
【0084】
このように、パレット21が戻りレール41の先端に移載された後にあっても、パレット戻し機構61が戻しベルト62の循環を継続させると、可動体72から戻りレール41上に移動したパレット21は、その戻りレール41上を更に後退することになり、このパレット21の後退は、そのパレット21が戻りレール41の基端に達するまで行われる。
【0085】
図11に示す様に、戻りレール41の基端側に搬送パレット移載機構80における可動体82を収容させてパレット21を後退させると、戻りレール41に搭載されて後退するパレット21は搬送パレット移載機構80における可動体82にまで移動してそこに搭載されることになる。
【0086】
次に、搬送パレット移載機構80により、戻りレール41から移動して可動体82に搭載されたパレット21を戻りレール41の基端から搬送レール31の基端に移動させる。具体的には、搬送パレット移載機構80におけるモータ86を駆動させてボールネジ85を回転させて、可動体82をY軸方向に移動させ、可動体82を戻りレール41の基端に連続する
図11に示す状態から、
図8に示すように、搬送レール31の基端に連続する位置まで移動させる。
【0087】
その後、その可動体82から搬送レール31の基端にパレット21を再び移動させることにより、パレット21を、戻りレール41の基端から搬送レール31の基端に移載する。即ち、搬送レール31に可動体82が連続する状態で、その可動体82は搬送レール31と一直線上になり、そのパレット21は搬送レール31に沿って設けられた搬送ベルト52に新たに係止することになる。従って、搬送レール31に連続する可動体82に搭載されたパレット21は、搬送ベルト52の循環により再び搬送可能となり、このパレット21を搬送レール31の基端に移載する。これにより、このパレット21を含む複数のパレット21は平面内で方形に循環することになる。
【0088】
次に、流体圧機器を稼動させつつパレットを搬送させることを説明する。
【0089】
即ち、
図1に示す様に、搬送レール31に搭載されたパレット21の搬送にあっては、それに沿うように設けられた搬送ベルト52を循環させつつ、流体レール91の流体通路である凹溝91dに流体を供給し又はその凹溝91dから流体を吸引し、その凹溝91dにパレット21に搭載された流体圧機器26を連通させて流体圧機器26を稼動させつつパレット21を搬送することになる。
【0090】
具体的に、
図1の拡大図に示す様に、ワーク供給機16に対峙する流体レール91には、流体通路である凹溝91dが形成されており、その凹溝91dを覆うように基材91aに載置された蓋板91bには複数の通孔91eが形成されているので、先ず、流体供給吸引手段92である流体ポンプを駆動させて、蓋板91bにより覆われる凹溝91dの内部のエアを吸引して、その凹溝91dの内部を負圧にさせておく。
【0091】
この状態で、パレット21をワーク供給機16に対峙させると、パレット21には、複数の通孔91eを覆う凹部93aが形成された対向部材93が設けられるので、流体レール91における通孔91eを介してその通孔91eを覆う凹部93aのエアを吸引して、その凹部93aが負圧になる。そして、
図2に示す様に、この凹部93aと流体圧機器26は連通管93cにより連結されているので、その連通管93cを介して凹部93aに連通するパレット21の流体圧機器26からエアは吸引されることになる。このため、ワーク供給機16により供給されるワーク14を、その流体圧機器26である吸引ノズルの下端に吸着させることが可能になるのである。
【0092】
ワーク14を吸着させた後に、搬送レール31に沿う搬送ベルト52を再び循環させて、パレット21をワーク14を吸着させた状態で前進させると、
図1に示す様に、そのパレット21は次に第3加工ステーション13に対峙することになる。
【0093】
すると、その段階でパレット21の搬送は停止されて、この第3加工ステーション13において、パレット21における流体圧機器26である吸引ノズルに吸着されたワーク14に対して定められた加工が行われる。そして、その加工が終了した後には、再び、搬送ベルト52を循環させてパレット21を再び搬送する。このようなことを繰り返して、搬送されるパレット21を順次各加工ステーション11~13に対峙させて、パレット21における流体圧機器26である吸引ノズルに吸着されたワーク14に対して順次加工を施す。
【0094】
ここで、搬送レール13に沿って設けられた流体レール91には、その長手方向に複数の通孔91eが所定の間隔Tを開けて連続して形成されているので、搬送途中のパレット21及び各加工ステーション11~13に対峙したパレット21の対向部材93における凹部93aは流体レール91におけるいずれかの通孔91eを覆うことに成る。
【0095】
このため、流体供給吸引手段92である流体ポンプが駆動していると、搬送途中であるか否かにかかわらず、パレット21における対向部材93における凹部93aに連通する流体圧機器26から常にエアは吸引されることになり、流体圧機器26である吸引ノズルの下端へのワーク14の吸着状態は維持されることになる。
【0096】
そして、全ての加工ステーション11~13による加工が終了した後に、更に搬送されたパレット21はワーク回収機17に対峙することになり、パレット21が対峙したワーク回収機17では、一連の加工が成されたワーク14を、流体圧機器26である吸引ノズルから取り外して回収することになる。
【0097】
ワーク14が回収された後に、更に搬送されたパレット21は、
図6及び
図9に示す様に、搬送レール31の先端から飛び出すので、そのパレット21は戻りパレット移載機構70における可動体72に移動して搭載されることになる。
【0098】
ここで、流体レール91は、可動体72において消滅しているために、流体供給吸引手段92である流体ポンプを駆動させても、流体レール91が消滅した段階でパレット21の流体圧機器26からのエアの吸引は無くなり、パレット21の戻りレール41への移載が可能となる。
【0099】
また、搬送レール31の先端側に連続する可動体72は、X軸方向に並ぶ各加工ステーション11~13と同一のピッチPにおいて、Y軸方向に移動可能に設けられているので、搬送レール31にこのピッチPと同一のピッチPで複数のパレット21を搭載し、先頭のパレット21が可動体72に達すると、他のパレット21も各加工ステーション11~13に対峙するので、各加工ステーション11~13においてワーク14の加工のために、パレット21の搬送は一旦停止することになる。
【0100】
この加工のための停止中に、搬送レール31の先端側における可動体72に達した先頭のパレット21を戻りレール41の先端に移載し、その戻りレール41を後退させてその基端から搬送レール31の基端側に再び移載させることになる。
【0101】
このように、搬送レール31の先端からその基端にパレット21を戻すようなことが1回行われると、搬送レール31に搭載された複数のパレット21をそれぞれ1個分づつ反時計回り方向に搬送することができる。
【0102】
そして、このようなサイクルが1回行われる毎に、パレット搬送装置10の動作を停止した状態で、各加工ステーション11~13を稼動させ、搬送レール31に並ぶ各パレット21の流体圧機器である吸引ノズル26に吸着された各ワーク14に対して各種の加工や、そのワーク14の吸着や回収が並行して行われることになる。
【0103】
このように、本発明におけるパレット搬送装置10及びパレット搬送方法では、複数のパレット21を循環させるようなかたちで搬送することが可能となり、搬送レール31に平行に流体レール91を用いることにより、単一の流体供給吸引手段92であっても、その複数のパレット21の流体圧機器26をそれぞれ稼動させた状態で、その複数のパレット21を同時に搬送することが可能となるのである。
【0104】
そして、流体レール91の流体通路を形成する凹溝91dは流体レール91の長手方向、即ち、パレット21の搬送方向に延びて形成されているので、搬送レール31に搭載されたパレット21が搬送されても、対向部材93が覆う流体レール91のいずれかの通孔91eは凹部93aに必ず連通することに成り、その対向部材93とともにパレット21が移動するので、いずれかの通孔91eと対向部材93の凹部93aとは必ず連通することになる。この結果、パレット21が移動しても、その流体圧機器26である吸引ノズルの下端におけるワーク14の吸着(
図2)も持続される。
【0105】
よって、このパレット搬送装置10では、流体圧機器26を稼動させつつパレット21を移動させることが可能となり、流体圧機器26を稼動させる流体供給吸引手段92のパレット21への搭載を回避することが可能となるのである。
【0106】
ここで、流体通路を構成する凹溝91dのエアを流体供給吸引手段92により吸引し、通孔91eを介して対向部材93における凹部93aのエアを吸引すると、その対向部材93は流体レール91の上面に吸着されて、パレット21の搬送における抵抗となり得る。
【0107】
けれども、この実施の形態における対向部材93には、流体レール91上を転動するローラ96が枢支されており、対向部材93が流体レール91の上面に吸着されることは防止されるので、対向部材93を流体レール91の上面に対向させることが、パレット21の搬送における抵抗となるようなことはない。
【0108】
一方、対向部材93を流体レール91の上面から所定の隙間を空けて対向させると、その隙間から流体であるエアが凹部93aに流入し、凹部93aに連通する流体圧機器26からのエアの吸引が困難になるとも考えられる。けれども、その隙間が0~0.1mmであれば、流体圧機器26からのエアの吸引が困難になるような量のエアが凹部93aに流入するようなことは少なく、そのような隙間からのエアの流入を考慮して、十分な凹溝91dの断面積や通孔91eの数や大きさを確保しておくことにより、流体圧機器26からのエアの吸引を継続させることができる。
【0109】
また、対向部材93が覆うことのない通孔91eが生じるようであれば、その通孔91eから流体であるエアが凹溝91dに流入し、対向部材93に覆われた他の通孔91eを介して凹溝91dに連通する凹部93aのエアの吸引が困難になるとも考えられる。けれども、複数のパレット21を搬送レール31に連続して搭載して、それら複数のパレット21の対向部材93を互いに近接させ又は接触させつつ搬送することにより、対向部材93が覆うことのない通孔91eが生じるようなことを回避することができる。
【0110】
そして、対向部材93はパレット21にサスペンション装置94を介して取付けられているので、そのサスペンション装置94により、対向部材93は常に流体レール91に押しつけられることになる。このため、搬送レール31における長さが比較的長い場合には、それに平行に設けられる流体レール91も長くなり、パレット21が搭載して搬送される搬送レール31に対して流体レール91がゆがむ場合も考えられるけれども、そのようなゆがみはサスペンション装置94により吸収されて、対向部材93の流体レール91の上面から所定の隙間を維持しつつパレット21を搬送することが可能となる。
【0111】
なお、上述した実施の形態では、対向部材93の流体レール91方向の長さW2がパレット21の台座23の流体レール91方向の長さW1より長い場合を説明した。けれども、対向部材93の流体レール91方向の長さW2は、パレット21の台座23の流体レール91方向の長さW1と同一であっても良い。この場合であっても、複数のパレット21を搬送レール31に連続して搭載して、それら複数のパレット21の対向部材93を互いに近接させ又は接触させつつ搬送することにより、対向部材93が覆うことのない通孔91eが生じるようなことを回避することができる。
【0112】
また、上述した実施の形態では、電気駆動式のサーボモータ59,69によりプーリ55,66を回転させて循環ベルト52や戻しベルト62を循環させる場合を説明したが、プーリ55,66を回転可能である限り、サーボモータに代えて流体圧シリンダや流体圧モータを用いても良い。
【0113】
また、上述した実施の形態では、戻りレール41に流体レール91を沿わせることはせずに、戻りレール41に搭載されたパレット21では、その流体圧機器26を稼動させない場合を説明した。けれども、パレット21を後退させる戻りレール41にも流体レール91を沿わせて形成するようにしても良い。この場合には、戻りレール41に沿って設けられた流体レール91に対向部材を対向させることにより、戻りレール41に搭載されたパレット21においても、流体圧機器26を稼動させることが可能となる。
【0114】
また、上述した実施の形態では、流体圧機器26が流体であるエアの吸引によりワーク14を吸着させる吸着ノズルである場合を説明した。けれども、流体圧機器26は流体により稼動する限り、これに限られるものではなく、例えば、流体の吸引によりワーク14を回転させるようなものやワーク14を加工するようなものであっても良い。
【0115】
また、上述した実施の形態では、流体レール91の流体通路を構成する凹溝91dのエアを流体供給吸引手段である流体ポンプ92により吸引して負圧とし、これにより流体圧機器26を稼動させるようにした。けれども、流体通路を構成する凹溝91dに流体を供給して加圧し、その凹溝91dから供給される流体により稼動する流体圧機器26をパレット21に設けるようにしても良い。
【0116】
凹溝91dに流体を供給して加圧すると、この凹溝91dに連通する通孔91eを覆う対向部材93が浮き上がってその流体の漏洩が考えられる。けれども、対向部材93を流体レール91上に押しつけるサスペンション装置94をパレット21に設ければ、対向部材93の流体レール91からの浮き上がりを防止して、その流体の漏洩を抑制し、流体圧機器26の稼動を確保することが可能となる。
【符号の説明】
【0117】
10 パレット搬送装置
21 パレット
24 係止部材
26 流体圧機器
31 搬送レール
41 戻りレール
51 パレット搬送手段
52 搬送ベルト
59 サーボモータ(循環手段)
61 パレット戻し手段
62 戻しベルト
69 サーボモータ(循環手段)
70 戻りパレット移載機構
80 搬送パレット移載機構
91 流体レール
91d 凹溝(流体通路)
91e 通孔
92 流体ポンプ(流体供給吸引手段)
93 対向部材
93a 凹部
93c 連通路
94 サスペンション装置
96 ローラ
W1 パレットの長さ
W2 対向部材の長さ