(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力変換装置の検査方法
(51)【国際特許分類】
H02P 9/04 20060101AFI20230908BHJP
H02M 3/00 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
H02P9/04 A
H02M3/00 G
(21)【出願番号】P 2020092992
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】山川 智之
(72)【発明者】
【氏名】川村 弥
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-221030(JP,A)
【文献】特開平06-070546(JP,A)
【文献】特開2006-094671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/04
H02M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子によってコンデンサを充電し、放電して、電力変換する変換回路と、
前記複数のスイッチング素子を制御する制御回路と、
前記複数のスイッチング素子を冷却する冷却媒体を通流する配管と、
前記配管内を通流する前記冷却媒体によってタービンを駆動して発電電力を生成する発電機と、
前記発電電力を入力し前記発電電力にもとづいて第1電圧を生成して前記制御回路に供給する第1電源回路と、
前記コンデンサに蓄積されたエネルギを入力し蓄積された前記エネルギにもとづいて第2電圧を生成して前記制御回路に供給する第2電源回路と、
を備え、
前記制御回路は、前記変換回路の起動時および前記第2電源回路の故障時に前記第1電圧で動作し、前記変換回路の起動時および前記第2電源回路の故障時以外の場合には前記第2電圧で動作
し、
前記タービンは、前記冷却媒体の通流を受けて回転に変換する羽根を含み、
前記羽根は、
前記変換回路の起動時および前記第2電源回路の故障時に前記冷却媒体の通流を受ける角度に設定されて回転し、
前記変換回路の起動時および前記第2電源回路の故障時以外の場合には、前記冷却媒体の通流を受けない角度に設定されて回転を停止する電力変換装置。
【請求項2】
複数のスイッチング素子によってコンデンサを充電し、放電して、電力変換する変換回路と、
前記複数のスイッチング素子を制御する制御回路と、
前記複数のスイッチング素子を冷却する冷却媒体を通流する配管と、
前記配管内を通流する前記冷却媒体によってタービンを駆動して発電電力を生成する発電機と、
前記発電電力を入力し前記発電電力にもとづいて第1電圧を生成して前記制御回路に供給する第1電源回路と、
前記コンデンサに蓄積されたエネルギを入力し蓄積された前記エネルギにもとづいて第2電圧を生成して前記制御回路に供給する第2電源回路と、
前記第
1電圧と前記第
2電圧との値を比較し
、前記第
1電圧の値が前記第
2電圧の値以上の場合には、前記第1電圧を前記制御回路に供給し
、前記第1電圧の値が前記第2電圧の値よりも低い場合には、前記第2電圧を前記制御回路に供給する電源選択回路と、
を備え、
前記制御回路は、前記変換回路の起動時および前記第2電源回路の故障時に前記第1電圧で動作し、前記変換回路の起動時および前記第2電源回路の故障時以外の場合には前記第2電圧で動作する電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、主回路給電方式を採用した電力変換装置および電力変換装置の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主回路給電方式は、電力変換器の主回路に接続されたコンデンサに蓄積されたエネルギを主回路の動作およびその制御のために利用する電源方式である。コンデンサに蓄積されたエネルギは、主回路給電回路によって適切な形式の電源に変換されて、電力変換器の駆動回路等へ供給される。
【0003】
このような主回路給電方式では、主回路給電回路自体が故障した場合には、駆動回路や制御回路等への電源供給ができなくなる。駆動回路や制御回路等が動作不能になると、電力変換器の動作を安全に停止し、電力変換器を適切に保護したい場合であっても、停止状態や所望の保護動作を継続することが困難になるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態は、主回路給電回路(第2電源回路)が故障時であっても、安全かつ確実に電力変換器を保護できる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る電力変換装置は、複数のスイッチング素子によってコンデンサを充電し、放電して、電力変換する変換回路と、前記複数のスイッチング素子を制御する制御回路と、前記複数のスイッチング素子を冷却する冷却媒体を通流する配管と、前記配管内を通流する前記冷却媒体によってタービンを駆動して発電電力を生成する発電機と、前記発電電力を入力し前記発電電力にもとづいて第1電圧を生成して前記制御回路に供給する第1電源回路と、前記コンデンサに蓄積されたエネルギを入力し蓄積された前記エネルギにもとづいて第2電圧を生成して前記制御回路に供給する第2電源回路と、を備える。前記制御回路は、前記変換回路の起動時および前記第2電源回路の故障時に前記第1電圧で動作し、前記変換回路の起動時および前記第2電源回路の故障時以外の場合には前記第2電圧で動作する。前記タービンは、前記冷却媒体の通流を受けて回転に変換する羽根を含む。前記羽根は、前記変換回路の起動時および前記第2電源回路の故障時に前記冷却媒体の通流を受ける角度に設定されて回転し、前記変換回路の起動時および前記第2電源回路の故障時以外の場合には、前記冷却媒体の通流を受けない角度に設定されて回転を停止する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態では、主回路給電回路(第2電源回路)が故障時であっても、安全かつ確実に電力変換器を保護できる電力変換装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置を例示する模式的なブロック図である。
【
図2】第1の実施形態の電力変換装置の動作を説明するための模式的なブロック図である。
【
図3】第1の実施形態の電力変換装置の動作を説明するための模式的なブロック図である。
【
図4】第1の実施形態の電力変換装置の動作を説明するための模式的なブロック図である。
【
図5】第1の実施形態の変形例に係る電力変換装置を例示する模式的なブロック図である。
【
図6】第1の実施形態の他の変形例に係る電力変換装置を例示する模式的なブロック図である。
【
図7】第2の実施形態の電力変換装置の検査方法を説明するためのフローチャートの例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る電力変換装置を例示する模式的なブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の電力変換装置10は、変換回路20と、発電機30と、補助電源回路40と、制御回路50と、コンデンサ60と、主回路給電回路70と、を備える。電力変換装置10は、交流を直流に変換し、あるいは、直流を交流に変換して、変換回路20に接続された負荷等に電力を供給する。変換回路は、交流-直流間の電力変換に限らず、交流-交流間の電力変換や、直流-直流間の電力変換を行うものであってもよい。
【0011】
本実施形態では、電力変換装置10は、主回路給電方式を採用した電力変換装置である。主回路給電方式とは、変換回路に接続されたエネルギ蓄積デバイス(この例では、コンデンサ60)から電力供給を受けて動作する電源回路を備えた電力変換装置をいうものとする。この例では、エネルギ蓄積デバイスは、コンデンサ60であり、エネルギ蓄積デバイスによって動作する電源回路は、主回路給電回路70である。
【0012】
変換回路20は、たとえば電源と負荷との間に接続される。上述のような電力変換の形式にしたがって、変換回路20は、供給された電源の電力変換を行って、負荷に供給する。
【0013】
変換回路20の回路形式は、並列に接続されたコンデンサ60に、外部の回路から充電し、外部に放電することができるように構成されている。変換回路20の回路形式は、たとえばハーフブリッジ回路やフルブリッジ回路である。コンデンサ60は、これらのブリッジ回路を構成するスイッチング素子を介して、充電され、放電される。
【0014】
変換回路20は、ハーフブリッジ回路等を構成する複数のスイッチング素子を有している。スイッチング素子は、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等である。変換回路20は、スイッチング素子を冷却するために、冷却システムに接続されている。
【0015】
冷却システムは、配管36,37と電磁弁32,34とを含んでいる。冷却媒体は、配管36,37中を流れる。冷却媒体は、たとえば純水である。冷却媒体を純水とすることによって、メンテナンス等を容易にするとともに、十分な絶縁耐量を有することができる。以下では、冷却媒体は、純水であるものとし、冷却水と呼ぶことがある。
【0016】
配管36(第1配管)の一部は、変換回路20内でスイッチング素子等の発熱部品に熱的に結合するように設けられている。たとえば、変換回路20内の配管36の一部は、ヒートシンクに熱的に結合されている。ヒートシンクは、スイッチング素子等の発熱部品に熱的に結合されている。
【0017】
配管36は、図示しないポンプによって冷却水を循環させる。冷却水を通流する配管36は、配管36に熱的に結合されたヒートシンクおよびスイッチング素子を冷却する。
【0018】
配管36には、発電機30が設けられている。発電機30は、たとえばこの例のように、配管36の変換回路20からの出側に設けられる。発電機30は、水力発電用の発電機であり、配管36中を流れる冷却水によって回転するタービンを有する。タービンは、冷却水によって回転し、タービンの回転数に応じた交流電力を発電する。
【0019】
発電機30が設けられた配管36には、発電機30をバイパスする配管37(第2配管)が設けられている。配管36,37には、電磁弁32,34がそれぞれ設けられている。電磁弁32,34の開閉は、排他的に制御される。つまり、発電機30によって交流電力を発電する場合には、電磁弁32を開けて、電磁弁34を閉じる。発電機30による発電を停止する場合には、電磁弁32を閉じて、電磁弁34を開ける。電磁弁32,34の開閉制御は、たとえば、図示しない制御装置によって行われる。
【0020】
補助電源回路(第1電源回路)40は、発電機30の交流出力に電気的に接続されている。補助電源回路40の出力は、制御回路50に接続されている。補助電源回路40の出力は、主回路給電回路70に接続されている。補助電源回路40は、発電機30が出力する交流電圧を、制御回路50および主回路給電回路70が動作するための適切な直流電圧(第1電圧)に変換する。補助電源回路40は、発電機30が交流電力を発電し出力している場合には、制御回路50および主回路給電回路70に電源をそれぞれ供給する。
【0021】
制御回路50は、変換回路20のスイッチング素子等を制御するための制御信号を生成する。また、この例や以下で説明する他の例については、制御回路50は、電圧値や電流値等を検出する検出器や、制御信号にもとづいて、スイッチング素子を駆動するための駆動信号を生成する駆動回路等を含むものとする。
【0022】
制御回路50は、補助電源回路40または主回路給電回路70から電源の供給を受けて動作する。補助電源回路40は、電力変換装置10の起動時および主回路給電回路70の故障時に制御回路50に電源を供給する。主回路給電回路70は、起動後および通常の動作時に制御回路50に電源を供給する。
【0023】
主回路給電回路(第2電源回路)70は、コンデンサ60に接続されている。主回路給電回路70は、コンデンサ60に蓄積されたエネルギを入力して、直流電圧(第2電圧)に変換して出力する。出力された直流電圧は、制御回路50に供給される。
【0024】
本実施形態では、主回路給電回路70は、補助電源回路40が動作することによって、起動する。一般的な主回路給電回路は、たとえば、起動回路を有しており、主回路給電回路に設けられた起動回路は、変換回路およびコンデンサを介して、主回路給電回路70を起動する。本実施形態では、補助電源回路40を設けることによって、主回路給電回路における起動回路を削減することができる。
【0025】
このように、制御回路50は、いかなる場合であっても、電源供給が遮断されることがないので、変換回路20を正常に動作させ、安全かつ確実に保護動作を実行することができる。
【0026】
本実施形態の電力変換装置10の動作について詳細に説明する。
図2~
図4は、本実施形態の電力変換装置の動作を説明するための模式的なブロック図である。
図2~
図4のいずれの場合についても、冷却システムは、稼働しており、冷却水は、配管36または配管36,37中を循環している。
図2~
図4では、冷却水が通流している配管を太実線で表しており、冷却水が通流していない配管を太破線で示している。
図2は、電力変換装置10の起動時の電源供給の状態を表す図である。
図3は、起動後の電源供給の状態を表す図である。
図4は、主回路給電回路70が故障した場合の電源供給の状態を表す図である。
【0027】
図2に示すように、電力変換装置10の起動時には、電磁弁32が開かれ、電磁弁34が閉じられる。そのため、図の太実線で示したように、冷却水は、配管36を通流して、発電機30のタービンを駆動する。なお、配管37の破線は、冷却水が通流していないことを示している。したがって、発電機30は、交流電力を発電し、太実線で示したように、補助電源回路40に発電した交流電力を供給する。
【0028】
太実線で示したように、補助電源回路40は、主回路給電回路70を起動し、制御回路50に電源を供給する。補助電源回路40が主回路給電回路70に電源を供給することによって、主回路給電回路70を起動することができる。
【0029】
図3に示すように、主回路給電回路70が起動した後には、電磁弁32が閉じられ、電磁弁34が開かれる。そのため、太実線で示したように、冷却水は、配管37にバイパスされ、発電機30のタービンは停止する。
【0030】
破線で示したように、発電機30による電源供給が停止したことによって、補助電源回路40は、制御回路50および主回路給電回路70への電源供給を停止する。制御回路50への電源供給は、太実線で示したように、主回路給電回路70が担うことになる。
【0031】
図4に示すように、主回路給電回路70が故障した場合には、主回路給電回路70は、故障したことを表す故障信号を図示しない制御装置に送信する。制御装置は、故障信号を受信し、故障信号にもとづいて、電磁弁32を開き、電磁弁34を閉じる。そのため、太実線で示したように、冷却水は、配管36を介して発電機30のタービンを駆動する。これによって、発電機30は、交流電力を発電する。
【0032】
太実線で示したように、補助電源回路40は、発電機30から電源供給を受けて、制御回路50に電源を供給する。このとき、たとえば制御装置は、故障信号にもとづいて、補助電源回路40に主回路給電回路70への電源供給を禁止させる禁止信号を補助電源回路40に送信する。補助電源回路40は、禁止信号にもとづいて、主回路給電回路70への電源供給を停止する。主回路給電回路70への電源供給遮断の方法は、このほか、補助電源回路40と主回路給電回路70との間に設けたスイッチを故障信号または禁止信号にもとづいて開放する等してもよい。
【0033】
制御回路50は、補助電源回路40からの電源供給を受けて、動作を継続し、たとえば、変換回路20がコンデンサ60の放電を停止し、保護動作を継続するように動作する。保護動作は、たとえば、ハーフブリッジ回路の低電圧側のスイッチング素子のオン状態を維持し、高電圧側のスイッチング素子のオフ状態を維持すること等である。
【0034】
上述したように、起動時や主回路給電回路70の故障時には、配管36の冷却水は、発電機30のタービンを駆動する。そのため、冷却システムにはヘッドロスが生じ、冷却水の流量が低下して、発熱部品の冷却効果は低下する。一方で、電力変換装置10の起動時や主回路給電回路70の故障時には、変換回路20内のスイッチング素子等の発熱部品は、一般的に、正常運転時に比べて、発熱が少ない。そのため、一時的にヘッドロスが生じても、放熱不足等の問題は生じない。
【0035】
なお、上述では、電磁弁を2つ設けて、一方を開いたときには、他方を閉じるように制御することとしたが、電磁弁を1つにして、より簡素にしてもよい。たとえば、電磁弁32を配管36に設け、配管37には電磁弁を設けずに、常時通流の状態とした場合には、電磁弁32は、起動時や主回路給電回路70の故障時に開放し、その他の場合に閉じるようにしてもよい。
【0036】
本実施形態の電力変換装置10の効果について説明する。
本実施形態の電力変換装置10では、冷却システムに設けられた発電機30によって、発電し、電源を確保することができる。
【0037】
補助電源回路40は、主回路給電回路70を起動する。補助電源回路40は、スイッチング制御方式等とすることによって、小型化が可能である。一方、一般的な主回路給電回路における起動回路は、抵抗器やコンデンサ等の受動部品等によって構成される。変換回路が扱う電力容量が大きい場合には、起動回路の許容電力も大きくなり、構成部品が大型化する等の問題がある。本実施形態では、補助電源回路40によって、主回路給電回路70を起動することができるので、大型部品からなる起動回路を削減することが可能になり、装置の小型化、省スペース化等を図ることができる。
【0038】
発電機30は、主回路給電回路70の故障時にも発電させて、補助電源回路40を介して、制御回路50に給電することができる。そのため、制御回路50の動作を継続することができ、必要な保護動作を維持することができる。
【0039】
電力変換器を複数台、カスケード接続してアームを構成するモジュラーマルチレベルコンバータ(MMC)の場合には、複数の電力変換器は互いに冗長構成とされている。いずれかの電力変換器が故障した場合には、故障した電力変換器は、バイパスされ、コンデンサはアームから切り離される。
【0040】
電力変換器のバイパス状態は、低電圧側のスイッチング素子を駆動回路によってオン状態に維持する必要がある。駆動回路によってスイッチング素子のオン状態を維持するために、駆動回路には、電源の供給が必要となる。この場合に、主回路給電方式を採用した電力変換器では、電力変換器がバイパスによって、コンデンサを他の電力変換器から切り離しているので、駆動回路や制御回路等に電力供給し続けることができなくなる。そのため、従来、他の電力変換器のための主回路給電回路から電源供給したり、駆動時に電源供給の必要のないノーマリオン型のリレーを用いたりする必要がある。
【0041】
本実施形態の電力変換装置10では、故障を検出した場合に、発電機30を用いて電源を生成し、制御回路50に電源供給することができる。そのため、複雑な冗長電源方式にすることなく、また、追加部品となるリレー等を用いることなく、制御回路50に電源供給することができる。
【0042】
MMCでは、多段に接続された電力変換器ごとの冷却用配管に発電機30を設けることが好ましい。電力変換器ごとに発電機を設けることによって、バイパス動作等の保護動作している電力変換器以外の冷却能力を低下させることなく、確実に保護動作を行うことができる。
【0043】
本実施形態では、電力変換装置10は、発電機30による発電の有無選択用に、バイパス用の配管37および配管36,37の選択用の電磁弁32,34を有しており、制御装置によって、これらを適時に切り替えることができる。冷却水によって発電機30のタービンを駆動すると、ヘッドロスを生じるが、起動時や主回路給電回路70の故障時等以外の通常の運転では、発電機30のタービンの駆動を停止することができる。そのため、ヘッドロスの増加は抑制される。したがって、変換回路20内の発熱部品の発熱状況に応じて冷却することが可能である。
【0044】
(変形例1)
図5は、本実施形態の変形例に係る電力変換装置を例示するブロック図である。
本実施形態では、発電機30aの構成が上述の実施形態の場合と相違する。
図5に示すように、電力変換装置10aは、発電機30aを備える。発電機30aは、配管36に設けられている。発電機30aを設ける配管36の位置は、上述の実施形態の場合と同様に変換回路20からの出側とすることができる。
【0045】
発電機30aは、図示しない制御装置からの指令によって、発電し、発電を停止することができる。本変形例では、発電機30aのタービンは、冷却水の水流に対する角度を可変とする羽根を有している。発電機30aのタービンの羽根は、アクチュエータによって水流に対する角度を切り替えることができる。
【0046】
発電機30aが制御装置からの発電有効化の指令を受けたときには、アクチュエータは、タービンの羽根を、水流に対して角度を有するように設定する。したがって、タービンは水流によって駆動され、発電機30aは、交流電力を発電する。発電機30aが制御装置からの発電無効化の指令を受けたときには、アクチュエータは、タービンの羽根を水流に対して角度をほぼ0になるように設定する。そのため、タービンは停止し、発電は停止する。
【0047】
本変形例においても、起動時や主回路給電回路70の故障時に発電機30aを運転し、その他の場合には発電機30aの運転を停止する。発電機30aの運転停止時には、タービンの回転によるヘッドロスはほとんど生じないため、変換回路20内の発熱部品に対する冷却効果を損なうことはない。この例では、上述の実施形態の場合のようなバイパス用の配管37(
図1)を設ける必要がないので、既存の配管の設置状況を変えることなく、少ない変更で導入することが可能である。
【0048】
(変形例2)
図6は、本実施形態の他の変形例に係る電力変換装置を例示するブロック図である。
図6に示すように、本変形例の電力変換装置10bは、電源選択回路42を備える。電源選択回路42は、補助電源回路40の出力および主回路給電回路70の出力にそれぞれ接続され、これらの出力は、電源選択回路42を介して、制御回路50に接続されている。電源選択回路42は、この例では、制御回路50への給電に補助電源回路40の出力と、主回路給電回路70の出力とのワイアードORをとるように構成されている。
【0049】
電源選択回路42は、たとえばこの例のように、ダイオードのカソード端子を突き合せたダイオードOR回路である。電源選択回路42の一方のダイオードのアノード端子には、補助電源回路40の出力が接続されている。電源選択回路42の他方のダイオードのアノード端子には、主回路給電回路70の出力が接続されている。
【0050】
補助電源回路40の制御回路50への電源出力の電圧値は、主回路給電回路70の電源出力の電圧値よりも低く設定されている。好ましくは、補助電源回路40の制御回路50への電源出力の電圧値は、電源選択回路42のダイオードの順方向電圧分、主回路給電回路70の電源出力の電圧値よりも低く設定されている。
【0051】
電力変換装置10bの起動時には、主回路給電回路70の出力は立ち上がっていない。一方、補助電源回路40の出力は、発電機30による発電電力によって、制御回路50を動作させるだけの電圧値を出力している。
【0052】
主回路給電回路70の出力電圧が立ち上り、補助電源回路40の出力電圧を上回ると、制御回路50への電源供給は、主回路給電回路70からされる。補助電源回路40の出力は、ほぼ無負荷となる。
【0053】
したがって、発電機30の出力もほぼ無負荷となる。そのため、発電機30のタービンの駆動による冷却水のヘッドロスは低減される。
【0054】
本変形例では、電源選択回路42を備えているので、発電機30は、常時運転するように構成されている。補助電源回路40も発電機30の発電電力を受けて、常時動作するように構成されている。
【0055】
したがって、本変形例では、発電機の発電有無を設定する機構を必要としないため、簡便にシステムを構築することができるとのメリットがある。
【0056】
(第2の実施形態)
冷却システムを用いた電力変換装置では、冷却システムに発電機を追加することによって、必要な電力を容易に得ることができる。本実施形態は、電力変換装置を新たに設置した場合や、電力変換装置の運転を一時的に停止して機能的な検査等を行う検査方法を提供するものである。
図7は、本実施形態の電力変換装置の検査方法を説明するためのフローチャートの例である。
なお、本実施形態では、電力変換装置の構成は、上述した第1の実施形態あるいはその変形例のいずれであってもよい。
図7に示すように、ステップS1において、冷却システムは、運転を開始する。
図1に示した第1の実施形態の場合には、制御装置によって、電磁弁32を開き、電磁弁34を閉じる。
【0057】
ステップS2において、発電機30は、冷却水の通流によって発電し、補助電源回路40に電力を供給する。補助電源回路40は、制御回路50に電力を供給する。なお、制御装置は、補助電源回路40に対して、主回路給電回路70への電力供給を停止するように禁止信号を供給するようにしてもよい。つまり、本実施形態は、変換回路20には、高電圧の電源入力することなく、制御回路50の動作確認を行うものである。
【0058】
ステップS3において、制御装置は、テストモードに設定される。テストモードは、制御回路50を動作させて、変換回路20の運転確認のためのテストパターンを実行する。たとえば、あらかじめ設定された直流電力指令値に対する制御信号や駆動信号の動作波形等を確認する等である。
【0059】
ステップS4において、制御回路50は、たとえば制御装置あるいは制御回路50内の記憶回路にあらかじめ格納され、設定されたテストパターンによって運転確認動作する。テスト結果は、たとえば、制御回路50内の記憶回路に記憶される。制御装置内の記憶回路に記憶させるようにしてもよい。
【0060】
本実施形態の電力変換装置の効果について説明する。
本実施形態では、冷却システムを運転し、発電機30による電力供給によって制御回路50を動作させる。主回路給電回路70を動作させることがないので、コンデンサ60に高電圧となり得る電圧を充電することなく、安全に電力変換装置の検査を行うことができる。
【0061】
コンデンサ60は、非常に大きな静電容量を有する場合があり、検査のたびごとに充電していたのでは、検査時間が長くなり、生産性が低下するおそれがある。また、MMCの場合には、多数の電力変換器を順次検査するのに、変換回路20ごとにコンデンサ60を充電し、安全のために検査終了ごとにコンデンサ60を放電させていたのでは、さらに検査時間が長くなってしまう。
【0062】
さらに、本実施形態では、制御回路50に直接電力供給して、制御回路50を動作させることができるので、コンデンサ60をテストのたびに充電することを省略することができる。また、電力変換器のテストにおいては、コンデンサ60等のような高電圧に充電される部品への充放電等は、手動で行われる場合があり、手順の誤り等による不測の事故等を生じるおそれがある。本実施形態では、コンデンサ60等への充放電等することなく制御回路50のテストを行うことができるので、不測の事故等を防止することもできる。
【0063】
本実施形態では、コンデンサ60を充電することなく、制御回路50を動作させることができるので、MMCのような多数の変換回路20を検査する場合であっても、効率よく安全に検査を行うことができる。
【0064】
以上説明した実施形態によれば、主回路給電回路が故障時であっても、安全かつ確実に電力変換器を保護できる電力装置を実現することができる。
【0065】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
10,10a,10b 電力変換装置、20 変換回路、30,30a 発電機、32,34 電磁弁、36,37 配管、40 補助電源回路、42 電源選択回路、50 制御回路、60 コンデンサ、70 主回路給電回路