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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20230908BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
H01F37/00 A
H01F27/24 H
H01F27/24 K
H01F37/00 M
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018243907
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020107687
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592032636
【氏名又は名称】学校法人トヨタ学園
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】吉竹 徹真
(72)【発明者】
【氏名】吉川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】進藤 裕司
(72)【発明者】
【氏名】藤▲崎▼ 敬介
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-031122(JP,A)
【文献】特開平08-115825(JP,A)
【文献】特開2006-140243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体からなるコアと前記コアに巻回されたコイルとを備えるリアクトルであって、
前記コアには、当該コアを貫通する貫通部が細長く形成されており、
前記貫通部が前記コアを貫通する貫通方向で見たときに、当該貫通部の開口輪郭は閉じており、
前記貫通方向で見たときの当該貫通部の形状は、細長い形状であって、その長手方向の少なくとも一側の端部は、前記長手方向の中間部の幅よりも広い幅を有し、
前記コアは、円筒状に形成され、
前記貫通部は、前記コアの軸方向で当該コアを貫通するように形成されており、
前記貫通部は、前記コアの周方向で等間隔に並べて複数形成されており、
前記貫通部の前記中間部は、前記貫通方向及び前記長手方向と垂直な方向である短手方向における幅が一定であることを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
請求項に記載のリアクトルであって、
前記貫通方向で見たときに、前記貫通部の開口輪郭のうち前記長手方向に概ね沿って延びる部分は、曲線及び又は直線が滑らかに連なった形状であることを特徴とするリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクトルが備えるコアの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コアの全体的な形状を良好に維持するために、ギャップの代わりにコアに貫通孔を設ける構成が知られている。特許文献1は、この種のコアを有するリアクトルを開示する。
【0003】
特許文献1のリアクトルは、コイルとコアとを有し、コイルが捲回されるコアの領域に、ギャップを構成するための、相互に開口断面形状が異なる複数の貫通孔が設けられている構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-351920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の構成は、貫通孔を複数設けているので、1つの貫通孔を設ける場合に比べて、貫通孔同士の間に複数のブリッジ部が形成されることになる。このため、結局、ブリッジ部を通過する磁束の全量が増え、コアに生じる鉄損が増大してしまう。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、ブリッジ部での磁束の集中を緩和でき、コアに生じる鉄損を低減できるリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点の1つによれば、以下の構成のリアクトルが提供される。即ち、このリアクトルは、コアとコイルとを備える。前記コアは、磁性体からなる。前記コイルは、前記コアに巻回されている。前記コアには、当該コアを貫通する貫通部が細長く形成されている。前記貫通部が前記コアを貫通する貫通方向で見たときに、当該貫通部の開口輪郭は閉じている。前記貫通方向で見たときの当該貫通部の形状は、細長い形状であって、その長手方向の少なくとも一側の端部は、前記長手方向の中間部の幅よりも広い幅を有する。前記貫通部は、前記コアの軸方向で当該コアを貫通するように形成されている。前記貫通部は、前記コアの周方向で等間隔に並べて複数形成されている。前記貫通部の前記中間部は、前記貫通方向及び前記長手方向と垂直な方向である短手方向における幅が一定である。
【0009】
これにより、コアを切断せずに、リアクトルのインダクタンス(性能)を良好に調整でき、コアの磁束飽和を回避することができる。また、貫通部の長手方向端部の幅を広くすることで、当該端部の近傍における磁束の集中を緩和することができ、コアに生じる鉄損及びコアでの発熱量を低減することができる。また、コアが完全に分断されていないため、ある程度の機械的強度を確保することができる。従って、コアの形状を良好に維持することができ、運送等の取扱いも容易である。更に、コアが完全に分断されていないので、コアから生じる唸り(騒音)を軽減することができる。良好な性能を有する円筒状のリアクトルを提供することができる。貫通部の形状がシンプルになり、リアクトルのインダクタンスを容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ブリッジ部での磁束の集中を緩和でき、コアに生じる鉄損を低減できるリアクトルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るリアクトルの全体的な構成を示す斜視図。
図2】(a)ギャップ付きコアの構成を示す模式図。(b)ギャップ付きコアの構成を示す斜視図。
図3】コアの構成を示す断面斜視図。
図4】スリット部を示す部分平面図。
図5】(a)単純形状のスリット部の近傍における磁束の流れを示す模式図。(b)本実施形態のスリット部の近傍における磁束の流れを示す模式図。
図6】スリット部の変形例を示す平面図。
図7】スリット部の変形例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るリアクトル100の全体的な構成を示す斜視図である。図2は、比較例としてのギャップ付きコアを説明する図である。図3は、コア1の構成を示す断面斜視図である。図4は、スリット部10を示す部分平面図である。
【0013】
図1に示すリアクトル100は、電力変換装置(例えばインバータやDC/DCコンバータ等)に接続される。リアクトル100は、例えば、電力変換装置が備える図略の半導体デバイスのスイッチングにより発生する電流の脈動(リプル)を抑制するために用いられる。
【0014】
リアクトル100は、図1に示すように、主として、磁性体からなるコア1と、コア1に巻回されたコイル2と、から構成されている。コイル2は、例えば、コイル状に巻かれた巻線から構成される。
【0015】
コア1は、図1に示すように、コイル2の巻回軸であって、コイル2の内側を貫通して配置されている。コア1は、図1及び図3に示すように、軸方向両端が開放された円筒状に形成されている。コア1は、例えば、既知の方法により、円環状のケイ素鋼板を軸方向に積層して構成されている。
【0016】
従来から、高電圧の電力変換装置に使用されたリアクトル100xのコア1xにギャップ(空隙)20を形成することで、リアクトル100xのインダクタンスを調整し、コア1xの磁束飽和を防止することが知られている。このギャップ20は、図2に示すように、コア1xを切断することによって形成された隙間である。ギャップ20は、ループ状のコア1xを完全に分断するように形成される。
【0017】
ギャップ20を埋めるように、例えば、絶縁紙などが設けられる。これにより、このギャップ20(ひいてはコア1x)の形状を維持することができる。
【0018】
ここで、ギャップ20によるリアクトル100のインダクタンスの調整について、下記の式(1)、(2)及び(3)を用いて、簡単に説明する。
【数1】
【数2】
【数3】
ただし、μ0は、真空の透磁率である。μsは、コア1xの材料の比透磁率である。Sは、コア1xの断面積である。Nは、コイル2の巻回数である。gは、磁束が流れる磁路におけるギャップ20の長さである。lは、磁束が流れる磁路の長さである。Lgは、コア1xのうちギャップ20の部分のみにおけるインダクタンスである。Lcは、コア1xのうち材料の部分のみにおけるインダクタンスである。
【0019】
リアクトル100xのインダクタンスLは、知られているように、コア1xのギャップ20の部分のインダクタンスLgとコア1xの材料の部分のインダクタンスLcを並列接続したものに相当する。従って、上記式(1)及び(2)から、上記式(3)を容易に得ることができる。
【0020】
知られているように、コア1xを構成するケイ素鋼板の比透磁率μsは4000程度である。磁束が流れる磁路の長さlを例えば20~100mmとした場合、l/μsは、0.005~0.025の範囲になる。よって、gがl/μsに比べて非常に大きいため、l/μsはgに対して無視することができる。即ち、上記の式(1)及び(3)から、リアクトル100xのインダクタンスLは、ギャップ20のみの場合におけるインダクタンスLgとほぼ等しい。従って、コア1xにギャップ20を形成することで、リアクトル100のインダクタンスを所望範囲内となるように容易に調整することができる。
【0021】
なお、図2(b)に示すようにコア1xに複数のギャップ20が形成された場合、コア1xは複数の部材に完全に分断される。従って、コア1xの全体の形状(言い換えれば、ギャップ20の長さ等)を維持するために、コア1xを外部から保持する構造を別途に設ける必要がある。これは、製造工数及びコストの増加を招く。
【0022】
また、完全分断型のギャップ20の場合、ギャップ20に磁力が発生することで唸りが生じ、騒音の原因になる。
【0023】
この点を考慮して、本実施形態のリアクトル100のコア1には、上記ギャップ20の代わりに、スリット部10が形成されている。スリット部10は、コア1の軸方向に平行な向きで当該コア1を貫通するように形成されている。この貫通方向で見たときに、スリット部10の開口輪郭は閉じており、スリット部10は、円筒状に形成されたコア1の内壁にも外壁にも接続しないように形成される。これにより、コア1を完全に分断せずに、リアクトル100のインダクタンスを適切に調整できる。この結果、コア1の機械的強度をある程度確保できるので、コア1の全体的な形状を良好に維持できるとともに、製造工数の削減も図ることができる。また、コア1が完全に分断されないため、騒音の低減を実現することができる。
【0024】
本実施形態のコア1には、スリット部10が複数形成されている。当該複数のスリット部10は、コア1の円周方向に等間隔で並べて配置されている。
【0025】
それぞれのスリット部10は、図3及び図4に示すように、円筒状に形成されたコア1の内壁と外壁との間の中間部(径方向の中間部)に配置されている。これにより、スリット部10と、コア1の内壁及び外壁のそれぞれとの間に、ブリッジ部3が形成される。
【0026】
ブリッジ部3は、スリット部10の幅方向両側に位置するコア1の部分のそれぞれを互いに接続する部分である。スリット部10の長手方向でのブリッジ部3の長さ(図4に示すブリッジ幅W)は、インダクタンスに与える影響を小さくするため、通過する磁束が飽和するよう所定の値となっている。このブリッジ部3の存在により、上記で説明したように、コア1の全体的な形状を良好に維持することができるとともに、騒音を低減することができる。
【0027】
それぞれのスリット部10は、コア1の軸方向(即ち、コア1を構成するケイ素鋼板の積層方向)において、当該コアを貫通するように形成されている。言い換えれば、それぞれのケイ素鋼板に、同じ形状のスリットが対応する位置に形成されている。このケイ素鋼板を積層することにより、複数のスリットが接合されて、上記のスリット部10が形成される。
【0028】
スリット部10は、コア1の軸方向で見たとき、コア1の径方向(言い換えれば、軸方向に垂直な方向)に延びるように細長く形成されている。スリット部10が延びる方向は、コア1を構成する2つの壁(内壁と外壁)が向かい合う方向ということもできる。スリット部10は、中間部11と、2つの端部12と、を有する。なお、以下の説明においては、2つの端部12のそれぞれを特定するために、コア1の内周側に近い側の端部12を内周端部12aと呼び、コア1の外周側に近い側の端部12を外周端部12bと呼ぶことがある。
【0029】
中間部11は、図4に示すように、スリット部10の長手方向において2つの端部12の間に位置する。コア1の軸方向で見たとき、中間部11は、全長(スリット部10の長手方向における中間部11の長さ全体)にわたって同じ幅を有するように形成されている。即ち、中間部11は、スリット部10の長手方向と垂直な方向における幅L2が一定である。これにより、スリット部10の形状がシンプルになり、リアクトル100のインダクタンスを容易に調整することができる。
【0030】
端部12は、図4に示すように、スリット部10の長手方向において、中間部11の両端のそれぞれに設けられている。端部12は、中間部11の両端のそれぞれに滑らかに接続されている。この接続部分では、スリット部10の開口輪郭は、角部が形成されないように、曲線及び/又は直線が滑らかに連なって形成された形状となっている。
【0031】
端部12は、コア1の軸方向で見たとき、中間部11との接続箇所(あるいは、スリット部10の長手方向中間部)から離れるのに従って、スリット部10の長手方向と垂直な方向における幅L1が広がるラッパ状に形成されている。
【0032】
これにより、図4に示すように、端部12の幅L1は、中間部11の幅L2より長い(L1>L2)。
【0033】
具体的には、内周端部12aは、中間部11との接続箇所から、コア1の内壁に近づくにつれて、スリット部10の幅を漸増させるように、広がっている。外周端部12bは、中間部11との接続箇所から、コア1の外壁に近づくにつれて、スリット部10の幅を漸増させるように、広がっている。
【0034】
このように、両側の端部12から中間部11に向かって窄まるスリット部10が形成される。そして、中間部11と端部12とが滑らかに接続されているので、コア1の軸方向で見たとき、スリット部10は、滑らかな形状で細長く延びている。これにより、スリット部10を容易に形成することができるとともに、磁束が集中し易い角部の形成を回避することができる。
【0035】
続いて、本実施形態のスリット部10と単純形状のスリット部30とを比較して、本実施形態のスリット部10による効果について、図5を参照して説明する。図5(a)は、単純形状のスリット部30の近傍における磁束の流れを示す模式図である。図5(b)は、本実施形態のスリット部10の近傍における磁束の流れを示す模式図である。
【0036】
単純形状のスリット部30は、図5(a)に示すように、スリット部30の全長にわたって、同じ幅となっている。即ち、スリット部30には、本実施形態のような広い幅の端部12が形成されていない。
【0037】
図5(a)に示すように単純形状のスリット部30をコア1に形成した場合、当該スリット部30における磁気抵抗がコア1における磁気抵抗に比べて大きくなる。従って、スリット部30の両端においては、磁束がスリット部30を避けて、ブリッジ部3を通るようになる。従って、スリット部30の両端と、コア1の内壁及び外壁のそれぞれと、の間に形成されたブリッジ部3に磁束が集中する。知られているように、コア1で発生する鉄損は、磁束密度の2乗に比例する。この結果、磁束の集中により磁束密度が増大し、鉄損が多く発生してしまう。鉄損が大きいと、リアクトル100の性能が低下するとともに、発熱量の増大を招き、その結果、冷却等の対策が必要となる。
【0038】
この点、図5(b)に示す本実施形態のスリット部10には、上記で説明したように、コア1の円周方向(即ち、図5に示す磁束の流れ方向)において、中間部11の幅L2より長い幅L1を有する端部12が形成されている。
【0039】
知られているように、磁気抵抗は、磁束が流れる磁路の長さに比例する。従って、上記で説明したように、端部12における磁束が流れる磁路の長さ(即ちL1)が、中間部11における磁束が流れる磁路の長さ(即ちL2)より長いので、端部12は、中間部11より大きい磁気抵抗を有する。
【0040】
このように、端部12は、コア1の径方向における当該端部12の両側の部分(即ち、ブリッジ部及び中間部11)のそれぞれよりも高い磁気抵抗を有するようになる。これにより、図5(b)に示すように、端部12付近の磁束の一部がブリッジ部3から中間部11側に回避するように流れるので、ブリッジ部3における磁束の集中を緩和することができる。
【0041】
従って、本実施形態のリアクトル100は、コア1に生じる鉄損及びコア1における発熱量を低減することができる。よって、コア1を冷却するための冷却構造の簡素化も図ることができる。
【0042】
本願発明者は、本実施形態のリアクトル100による効果を確認するために、単純形状のスリット部30及び本実施形態のスリット部10のそれぞれに対するシミュレーション計算を行った。なお、シミュレーションを行うときの条件として、ブリッジ部3の長さ(ブリッジ幅W)をコア1の径方向の長さの5%とし、端部12の幅L1を中間部11の幅L2とブリッジ幅Wの2倍(2×W)の和(即ち、L1=L2+2×W)とした。
【0043】
シミュレーション結果によると、スリット部を単純形状とした図5(a)の場合と比べて、スリット部を本実施形態の形状とした図5(b)の場合では、鉄損を14%低減することができた。さらに、図5(b)の場合は図5(a)の場合と比べてブリッジ部3を通過する磁束が減少した分、インダクタンスの値が6%改善した。
【0044】
このように、本実施形態のスリット部10が形成されたコア1は、単純形状のスリット部30の場合よりも、鉄損の発生を低減できることが確かめられた。
【0045】
以上に説明したように、本実施形態のリアクトル100は、コア1とコイル2とを備える。コア1は、磁性体からなる。コイル2は、コア1に巻回されている。コア1には、当該コア1を貫通するスリット部10が細長く形成されている。スリット部10がコア1を貫通する貫通方向で見たときに、スリット部10の開口輪郭は閉じている。貫通方向で見たときのスリット部10の形状は、細長い形状であって、その長手方向の両側の端部12は、長手方向の中間部11の幅L2よりも広い幅L1を有する。
【0046】
これにより、コア1を切断せずに、リアクトル100のインダクタンス(性能)を良好に調整でき、コア1の磁束飽和を回避することができる。また、スリット部10の長手方向端部の幅を広くすることで、当該端部12の近傍における磁束の集中を緩和することができ、コア1に生じる鉄損及びコア1での発熱量を低減することができる。また、コア1が完全に分断されていないため、ある程度の機械的強度を確保することができる。従って、コア1の形状を良好に維持することができ、運送等の取扱いも容易である。更に、コア1が完全に分断されていないので、コア1から生じる唸り(騒音)を軽減することができる。
【0047】
また、本実施形態のリアクトル100において、スリット部10の中間部11は、貫通方向及び長手方向と垂直な方向である短手方向における幅が一定である。
【0048】
これにより、スリット部10の形状がシンプルになり、リアクトル100のインダクタンスを容易に調整することができる。
【0049】
また、本実施形態のリアクトル100において、貫通方向で見たときに、スリット部10の開口輪郭のうち当該スリット部10の長手方向に概ね沿って延びる部分は、曲線及び/又は直線が滑らかに連なった形状である。
【0050】
これにより、磁束が集中する角部の形成を回避できるとともに、スリット部10を容易に形成することができる。
【0051】
また、本実施形態のリアクトル100において、コア1は、円筒状に形成される。スリット部10は、コア1の軸方向で当該コア1を貫通するように形成されている。スリット部10は、コア1の周方向で等間隔に並べて複数形成されている。
【0052】
これにより、良好な性能を有する円筒状のリアクトルを提供することができる。
【0053】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0054】
スリット部10は、コア1の径方向で当該コア1を貫通するように(言い換えれば、筒状のコア1の内壁と外壁とを接続するように)形成されても良い。なお、スリット部10は、コア1を構成するケイ素鋼板の積層方向でコア1を貫通することが好ましい。
【0055】
スリット部10は、図6に示すように、コア1の軸方向で見たとき、内周端部12aが外周端部12bより広い面積を有するように形成されても良い。このように、磁束が集中し易いコア1の内側において、内周端部12aを外周端部12bより大きい磁気抵抗を有するように内周端部12aを形成することで、コア1の内壁側に近いブリッジ部3における磁束集中の緩和効果を向上することができる。
【0056】
スリット部10の2つの端部12を何れも広い幅に形成することに代えて、1つだけを広い幅に形成しても良い。例えば、コア1の内壁側に近い端部12だけを広い幅に形成しても良いし、外壁側に近い端部だけを広い幅に形成しても良い。
【0057】
スリット部10は、長手方向の端部が中間部より広く形成できれば、例えば、図7に示すような様々な形状に変更しても良い。即ち、端部12の形状は、ラッパ状の他に、例えば、円形、四角形、台形等に形成されても良い。スリット部10の中間部11において、幅が一様でなくても良い。
【0058】
コア1は、円筒状に形成されることに限定されず、例えば、角筒状に形成されても良い。
【符号の説明】
【0059】
1 コア
2 コイル
10 スリット部(貫通部)
11 中間部
12 端部
100 リアクトル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7