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特許7345260情報表示装置、情報表示方法および情報表示プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】情報表示装置、情報表示方法および情報表示プログラム
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/32 20160101AFI20230908BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20230908BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20230908BHJP
   G09G 5/10 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
G09G3/32 A
G09G3/20 642E
G09G3/20 642F
G09G5/00 550C
G09G5/10 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019025608
(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2020134626
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-02-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000243881
【氏名又は名称】名古屋電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 茂
【合議体】
【審判長】濱野 隆
【審判官】濱本 禎広
【審判官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-117536(JP,A)
【文献】特開平01-169484(JP,A)
【文献】特開2010-199931(JP,A)
【文献】特開平11-257949(JP,A)
【文献】特開2007-286170(JP,A)
【文献】特開2015-56264(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/314763(US,A1)
【文献】特開2007-101702(JP,A)
【文献】特開2016-90848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00-5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子を平面状に配列した表示面と、
太陽高度を計測する太陽高度計測部と、
前記発光素子の発光を制御する発光制御部と、
を備え、
太陽光が前記表示面に反射することで前記表示面の正面で計測される反射輝度を前記反射輝度の最大値で除算した比が、予め設定された閾値以上となる太陽高度の範囲である高反射範囲が設定されており、
前記発光制御部は、
前記太陽高度計測部により計測された前記太陽高度が、前記高反射範囲内の値であり、かつ前記表示面の正面における前記反射輝度が第1輝度となる値である場合に、前記発光素子を第1発光輝度で発光させ、
前記太陽高度計測部により計測された前記太陽高度が、前記高反射範囲内の値であり、かつ前記表示面の正面における前記反射輝度が前記第1輝度未満の第2輝度となる値である場合に、前記発光素子を前記第1発光輝度よりも小さい第2発光輝度で発光させる、情報表示装置。
【請求項2】
前記発光制御部は、前記太陽高度が前記高反射範囲内の値である場合に、計測された前記太陽高度における前記反射輝度が高い程、前記発光素子の発光輝度を高くする、請求項1に記載の情報表示装置。
【請求項3】
前記高反射範囲に含まれる各太陽高度における太陽光が前記表示面で反射した反射輝度の計測値に応じて設定された前記発光素子の発光輝度と、各太陽高度と、を対応付けた太陽高度依存テーブルを記憶する記憶部をさらに備え、
前記発光制御部は、前記太陽高度が前記高反射範囲内の値である場合に、前記太陽高度依存テーブルを参照し、前記発光素子の発光輝度を決定する、請求項1または2の記載の情報表示装置。
【請求項4】
前記太陽高度計測部は、
予め決められた計測範囲内の前記太陽高度となる太陽が放射した太陽光を透過させる水平方向のスリットが形成されたスリット板と、
前記スリットを通過した太陽光を受光する光センサと、
を含む請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の情報表示装置。
【請求項5】
前記計測範囲は、前記反射輝度が最大となる前記太陽高度を含む、
請求項4に記載の情報表示装置。
【請求項6】
前記太陽高度計測部は、水平方向の偏光を透過させる偏光フィルタを備える、
請求項5に記載の情報表示装置。
【請求項7】
前記太陽高度計測部は、予め決められた波長域の光を透過させるカラーフィルタを備える、
請求項5または請求項6のいずれかに記載の情報表示装置。
【請求項8】
前記表示面に照射される太陽光の照度を計測する照度計測部をさらに備え、
前記発光制御部は、前記照度と前記太陽高度とに基づいて前記発光素子の発光輝度を設定する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の情報表示装置。
【請求項9】
表示面において平面状に配列した複数の発光素子の発光輝度を制御する情報表示方法であって、
太陽高度を計測する太陽高度計測工程と、
前記発光素子の発光を制御する発光制御工程と、
を含み、
太陽光が前記表示面に反射することで前記表示面の正面で計測される反射輝度を前記反射輝度の最大値で除算した比が、予め設定された閾値以上となる太陽高度の範囲である高反射範囲が設定されており、
前記発光制御工程では、
前記太陽高度計測工程で計測された前記太陽高度が、前記高反射範囲内の値であり、かつ前記表示面の正面における前記反射輝度が第1輝度となる値である場合に、前記発光素子を第1発光輝度で発光させ、
前記太陽高度計測工程で計測された前記太陽高度が、前記高反射範囲内の値であり、かつ前記表示面の正面における前記反射輝度が前記第1輝度未満の第2輝度となる値である場合に、前記発光素子を前記第1発光輝度よりも小さい第2発光輝度で発光させる、情報表示方法。
【請求項10】
表示面において平面状に配列した複数の発光素子の発光輝度を制御する情報表示装置としてコンピュータを機能させる情報表示プログラムであって、
前記コンピュータを、
太陽高度を計測する太陽高度計測部、及び
前記発光素子の発光を制御する発光制御部、
として機能させ、
太陽光が前記表示面に反射することで前記表示面の正面で計測される反射輝度を反前記射輝度の最大値で除算した比が、予め設定された閾値以上となる太陽高度の範囲である高反射範囲が設定されており
記発光制御部は、
前記太陽高度計測部により計測された前記太陽高度が、前記高反射範囲内の値であり、かつ前記表示面の正面における前記反射輝度が第1輝度となる値である場合に、前記発光素子を第1発光輝度で発光させ、
前記太陽高度計測部により計測された前記太陽高度が、前記高反射範囲内の値であり、かつ前記表示面の正面における前記反射輝度が前記第1輝度未満の第2輝度となる値である場合に、前記発光素子を前記第1発光輝度よりも小さい第2発光輝度で発光させる、情報表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示装置、情報表示方法および情報表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
情報表示板の前面に照度値検出手段を設け、照度値検出手段の出力が予め設定した値以上である場合には、情報表示板のLEDを点滅する技術が知られている(特許文献1、参照)。これにより、情報表示板の前面に照射される太陽光の照度が大きくなる状態において、点滅したLEDによって情報を目立つように表示できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-301207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、情報表示板の前面に照射される太陽光の照度が大きくなる状態において、必ずしもLEDによる視認性が低下するわけではない。具体的に、情報表示板の前面に太陽光が強く照射されていても、情報表示板の前面において太陽光が視認者の方向に反射されなければ、LEDが発する光の視認性が大きく低下する可能性が低くなる。逆に、情報表示板の前面に太陽光が強く照射されていなくても、情報表示板の前面において太陽光が視認者の方向に反射されれば、LEDが発する光の視認性が大きく低下する可能性が高くなる。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、表示面における太陽光の反射の影響が大きいときに発光素子の発光輝度を大きくした状態で情報を表示できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するため、本発明の情報表示装置は、複数の発光素子を平面状に配列した表示面と、太陽高度を計測する太陽高度計測部と、表示面における太陽光の反射輝度が第1輝度となる太陽高度が計測された場合に発光素子を第1発光輝度で発光させ、反射輝度が第1輝度未満の第2輝度となる太陽高度が計測された場合に発光素子を第1発光輝度よりも小さい第2発光輝度で発光させる発光制御部と、を備える。
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明の情報表示方法は、表示面において平面状に配列した複数の発光素子の発光輝度を制御する情報表示方法であって、太陽高度を計測する太陽高度計測工程と、表示面における太陽光の反射輝度が基準値以上となる太陽高度が計測された場合に発光素子を第1発光輝度で発光させ、反射輝度が基準値未満となる太陽高度が計測された場合に発光素子を第1発光輝度よりも小さい第2発光輝度で発光させる発光制御工程と、を含む。
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明の情報表示プログラムは、表示面において平面状に配列した複数の発光素子の発光輝度を制御する情報表示装置としてコンピュータを機能させる情報表示プログラムであって、コンピュータを、太陽高度を計測する太陽高度計測部、表示面における太陽光の反射輝度が基準値以上となる太陽高度が計測された場合に発光素子を第1発光輝度で発光させ、反射輝度が基準値未満となる太陽高度が計測された場合に発光素子を第1発光輝度よりも小さい第2発光輝度で発光させる発光制御部、として機能させる。
【0008】
以上説明した本発明の構成において、太陽高度計測部が太陽高度を計測する。そして、発光制御部は、表示面における太陽光の反射輝度が大きくなる太陽高度となっている場合に、発光輝度が大きくなるように発光素子を制御する。これにより、表示面が太陽光を強く反射し、反射光に発光素子の光が紛れて視認され得る状況において、発光素子の発光輝度を大きくすることができる。従って、表示面における太陽光の反射の影響を低減した状態で情報を表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】情報表示装置のブロック図である。
図2図2Aは情報表示装置の正面図、図2Bは太陽高度計の正面図、図2Cは太陽高度計の断面模式図である。
図3図3Aは反射輝度の説明図、図3Bは反射輝度比のグラフ、図3Cは照度比のグラフである。
図4図4A図4Bは発光輝度のグラフである。
図5】情報表示処理のフローチャートである。
図6】発光輝度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)情報表示装置の構成:
(2)情報表示処理:
(3)他の実施形態:
【0011】
(1)情報表示装置の構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる情報表示装置10の構成を示すブロック図である。情報表示装置10は、制御部20と記録媒体30と表示板40と太陽高度計50と照度計60とを備えている。制御部20は、CPUとRAMとROM等を備えたコンピュータであり、記録媒体30等に記録された情報表示プログラム21を実行する。
【0012】
記録媒体30は、太陽高度依存テーブル30a1と照度依存テーブル30a2と表示画像データ30bとを記録している。太陽高度依存テーブル30a1と照度依存テーブル30a2は、表示板40に備えられた複数の発光素子Pの発光輝度を設定するためのルックアップテーブルである。太陽高度依存テーブル30a1と照度依存テーブル30a2の詳細については後述する。
【0013】
表示画像データ30bは、表示板40が表示する表示画像を示す画像データである。表示画像は、交通情報や気象情報等の各種情報を示す文字や図柄を含む画像である。表示画像データ30bは、予め記録媒体30に記録されたものであってもよいし、制御部20が動的に生成したものであってもよい。本実施形態の表示画像データ30bは、表示板40に備えられた複数の発光素子Pのそれぞれに対応する画素によって構成され、各画素が発光素子Pを発光させるか否かを示す画像データである。
【0014】
図2Aは、表示板40の正面図である。表示板40は、複数の発光素子Pを平面状に配列した表示面Tを備える矩形状の筐体である。道路上を走行する車両の運転者が表示面Tを視認できるように表示板40が設置される。すなわち、表示板40は、路面の上方において、表示面Tが鉛直方向となり、かつ、車両の進行方向に垂直となるように設置される。本実施形態において、複数の発光素子Pはそれぞれ赤、緑、青の3色(RGBチャネル)のLEDによって構成される。また、発光素子Pは単色のLEDであってもよい。むろん、発光素子Pは、LED以外の発光素子であってもよい。
【0015】
図1に示すように表示板40は、ドライバ回路Dを備えている。ドライバ回路Dは複数の発光素子Pの配列と同一の画素配列を有するRGBの各チャネルの画像データである発光画像データを制御部20から入力する。発光画像データの各画素は、RGBの各チャネルのそれぞれについて多階調の発光輝度の階調値を示す。ドライバ回路Dは、発光輝度の階調値の大きさに応じたデューティ比でRGBの各チャネルのLEDを発光させる。制御部20は、表示画像データ30bに基づいて発光画像データを生成する。発光画像データを生成するための構成については後述する。
【0016】
表示板40は、表示面Tの側方において、太陽高度計50と照度計60とを備えている。照度計60は、表示面Tに照射される光(おもに太陽光)の照度を計測し、当該照度を示す信号を制御部20に出力する。太陽高度計50は、本発明の太陽高度計測部Hの一部を構成する。太陽高度計50と照度計60は、必ずしも表示面Tの側方でなくてもよい。また、太陽高度計50は、表示板40と一体化されていなくてもよく、表示板40外に取り付けられてもよい。照度計60は、本発明の照度計測部に相当する。
【0017】
図2Bは、太陽高度計50の正面図(表示面Tの垂直前方から見た図)を示す。図2Cは太陽高度計50の断面模式図(表示面Tの垂直方向の断面図)である。図2B図2Cに示すように、太陽高度計50は表示板40の内部に埋め込まれている。太陽高度計50は、ケース51と透明カバー52と偏光フィルタ53とカラーフィルタ54とスリット板55と光センサ56と基板57と出力回路58とを備えている。
【0018】
表示板40の筐体を構成する前面板41とケース51を前後方向に貫通する矩形状の検出窓Wが形成されており、当該検出窓Wは透明カバー52の一部である。偏光フィルタ53は、検出窓Wに入射した光のうち水平方向の偏光を透過させるフィルタである。カラーフィルタ54は、予め決められた波長域の光を透過させるフィルタである。本実施形態において、カラーフィルタ54は、近赤外~赤外領域の透過させるフィルタであることとする。
【0019】
スリット板55は、透光性を有さない材料で形成されており、水平方向に細長いスリット55aが形成されている。スリット55aは、予め決められた計測範囲M(下限方向αL~上限方向αU)内の太陽高度αとなる太陽が放射した太陽光を透過させる水平方向の切り欠きである。スリット55aは、鉛直断面視において台形状となっている。本実施形態において、下限方向αLは、前面板41に直交する方向であり、水平方向である。上限方向αUは、下限方向αLから30度だけ傾いた方向である。
【0020】
光センサ56は、スリット55aを通過した太陽光を受光するセンサである。光センサ56は、多数の光電変換素子を鉛直平面上に配列したエリアイメージセンサである。光センサ56は、スリット55aを通過した計測範囲Mの全域の光を結像できるように配置されている。光センサ56は、太陽光が左右に10度振れてスリット55aを通過してもセンサの幅全体に光が当たるようにスリット55aより狭い幅を有する。光センサ56は、基板57の前方側に実装されている。基板57は、透光性を有さない材料で形成されており、ケース51の後方側に設けられた開口を塞いでいる。ケース51は透光性を有さない材料によって直方体状に形成されており、スリット55aを介してのみ外部からケース51の内部に光が進入可能となっている。
【0021】
出力回路58は、基板57の後方側に実装されている。出力回路58は、光センサ56が結像した画像の画像データである計測画像データを生成し、当該計測画像データを制御部20に出力する。計測画像データは、光センサ56が備える光電変換素子の鉛直方向と水平方向の座標が対応付けられた画素によって構成され、各画素が明度を示す画像データである。なお、偏光フィルタ53とカラーフィルタ54とスリット板55の前後方向の配置順序は図示した順序に限られない。
【0022】
次に、情報表示装置10のソフトウェア構成を説明する。情報表示プログラム21は、太陽高度計測モジュール21aと発光制御モジュール21bとを含む。太陽高度計50と太陽高度計測モジュール21aを実行する制御部20は、本発明の太陽高度計測部Hを構成する。発光制御モジュール21bを実行する制御部20は、本発明の発光制御部を構成する。
【0023】
太陽高度計測モジュール21aの機能により制御部20は、太陽高度αを計測する。具体的に、太陽高度計測モジュール21aの機能により制御部20は、太陽高度計50から出力された計測画像データを取得し、当該計測画像データに基づいて太陽高度αを算出する。制御部20は、光センサ56上において水平方向に並ぶ画素列のそれぞれについて平均明度を算出し、平均明度が最大となる画素列の鉛直方向の座標に基づいて太陽高度αを算出する。
【0024】
具体的に、制御部20は、平均明度が最大となる画素列の光センサ56上における位置とスリット55aの位置とを接続する直線と、水平線とがなす角を太陽高度αとして算出する。平均明度が最大の画素列の鉛直方向の位置が低くなるほど、太陽高度αが大きくなる。ここで、太陽高度αは、スリット55aの位置から太陽を見上げた場合の仰角である。なお、光センサ56は、少なくとも高さ方向に光電変換素子を配列したセンサであればよく、ラインセンサであってもよい。
【0025】
制御部20は、平均明度が最大となる画素列の平均明度が予め決められた閾値未満である場合、太陽高度αが計測不能であると判定する。本実施形態において、スリット55aの幅が光センサ56の幅より広く、水平方向において太陽が表示面Tの正面方向から左右10度の振れ角の範囲に存在する場合に限り、太陽高度αが計測可能となる。また、夜間や悪天候において日照が乏しい場合には、太陽高度αが計測不能であると判定されることとなる。
【0026】
発光制御モジュール21bの機能により制御部20は、表示面Tにおける太陽光の反射輝度が第1輝度となる太陽高度αが計測された場合に発光素子Pを第1発光輝度で発光させ、反射輝度が第1輝度未満の第2輝度となる太陽高度αが計測された場合に発光素子Pを第1発光輝度よりも小さい第2発光輝度で発光させる。具体的に、発光制御モジュール21bの機能により制御部20は、計測した太陽高度αに対応する発光輝度を太陽高度依存テーブル30a1から取得し、当該発光輝度で発光素子Pを発光させる。
【0027】
以下、太陽高度依存テーブル30a1の作成理論と構成について説明する。図3Aは、表示面Tの鉛直断面図であり、発光素子Pの詳細な構成を示す。発光素子Pは、LED実装部P1とレンズP2とを備える。LED実装部P1は、金属や半導体等を含んでおり、高い反射率を有する。上下方向に隣接する発光素子Pの間において、透光性を有さないルーバ42が前方側に突出している。ルーバ42は、発光素子Pに入射する光と、発光素子Pから放射される光の方向を鉛直方向付近(例えば20度以内)に制限する。
【0028】
発光素子Pに対して入射光Sが入射すると、おもにLED実装部P1において入射光Sが反射し、水平方向の反射光Fが生じ得る。図3Aにおいては、LED実装部P1の形状を単に矩形状で示したが、LED実装部P1は凹凸を有する複雑な反射面を構成する。また、レンズP2の形状も上下対称形状とは限らない。そのため、斜め上方から入射光Sが入射しても水平方向の反射光Fが生じ得る。水平方向の反射光Fの輝度が最大となる太陽高度αは発光素子Pの形状に依存することとなる。また、必ずしも表示面Tは鉛直方向の面でなくてもよく、例えば表示面Tが鉛直方向から下方向に数度(例えば3度)だけ傾くように表示板40が取り付けられてもよい。従って、水平方向の反射光Fの強度が最大となる太陽高度αは、表示板40の取り付け角(俯角)にも依存することとなる。
【0029】
本実施形態においては、表示面Tが水平方向から視認されることを想定し、計測光軸Qの方向が水平方向となるように表示面Tの正面に輝度計Bを設置し、各太陽高度αにおける反射輝度を計測した。なお、水平方向において太陽が常に表示面Tの正面に位置することとした。反射輝度の計測は、実際の太陽を追跡するように表示面Tを水平方向に回転させながら行われてもよいし、表示面Tを固定して太陽を模した光源を鉛直方向に移動させることによって行われてもよい。
【0030】
図3Bは、各太陽高度αにおける反射輝度を示すグラフである。図3Bの横軸は太陽高度αを示し、縦軸は反射輝度比RRを示す。反射輝度比RRは、各太陽高度αにおける反射輝度を、反射輝度の最大値で除算した比である。図3Bにおいて、太陽高度αがα1となるときに反射輝度が最大となり、反射輝度比RRが100%となる。
【0031】
図3Aに示すように、表示面Tにはルーバ42が設けられるため、入射光Sの方向が水平に近くなる太陽高度αにおいて、反射輝度比RRが大きくなる。反射輝度比RRが予め決められた閾値RRT以上となる太陽高度αの範囲を高反射範囲Kと定義する。むろん、反射範囲Kには、反射輝度が最大となる太陽高度α1が含まれることとなる。また、太陽高度αを計測可能な計測範囲Mが高反射範囲Kを含むように、スリット55aの形状が設定されている。従って、計測範囲Mは、反射輝度が最大となる太陽高度α1を含む。本実施形態において反射輝度が最大となる太陽高度α1は10度程度であり、高反射範囲Kの上限値は20度程度である。そのため、日の入りに近い時間帯に高反射範囲Kの太陽高度αが計測されることとなる。
【0032】
上述したように、水平方向において太陽が表示面Tの正面方向に近い方向に存在する場合に限り、太陽高度αが計測可能となる。そのため、表示面Tが北向きや南向きに近くなるように設置される場合、一日中、太陽高度αが高反射範囲K内とならないこととなる。表示面Tが東向きに近くなるように設置される場合、日の出に近い時間帯に太陽高度αが高反射範囲K内となり得る。また、表示面Tが西向きに近くなるように設置される場合、日の入りに近い時間帯に太陽高度αが高反射範囲K内となり得る。
【0033】
図3Cは、照度計60が計測する照度を示すグラフである。図3Cの横軸は太陽高度αを示し、縦軸は照度比IRを示す。照度比IRは、各太陽高度αにおいて照度計60が計測した照度を、当該照度の最大値で除算した比である。図3Cにおいて、太陽高度αがα3となるときに照度が最大となり、照度比IRが100%となる。照度が最大となる太陽高度α3は、反射輝度比RRが大きくなる高反射範囲Kよりも大きく、約30~35度となっている。従って、照度比IRが大きくなる太陽高度αにおいて、必ずしも反射輝度比RRが大きくなるわけではないことが図3B図3Cから理解できる。
【0034】
図4Aは、太陽高度依存テーブル30a1に規定された発光輝度Lを示すグラフである。図4Aの横軸は太陽高度αを示し、縦軸は発光輝度Lを示す。太陽高度依存テーブル30a1においては、高反射範囲Kに属する各太陽高度αについて発光輝度Lの階調値が規定されている。太陽高度依存テーブル30a1は、図3Bに示す反射輝度の測定結果に基づいて予め作成されている。太陽高度依存テーブル30a1は、図3Bにおいて反射輝度比RRが大きくなる太陽高度αであるほど、発光輝度Lが大きくなるように作成されている。制御部20は、計測した太陽高度αに対応する発光輝度Lの階調値を太陽高度依存テーブル30a1から取得し、当該発光輝度Lの階調値で発光素子Pを発光させる。なお、反射輝度比RRが最大(100%)となる太陽高度α1において発光輝度Lが最大値Lmaxとなり、反射輝度比RRが閾値RRTとなる太陽高度αにおいて発光輝度Lが最小値Lminとなる。
【0035】
ここで、太陽高度依存テーブル30a1は、表示面Tが水平方向以外の方向から視認されることを想定して作成されてもよい。具体的に、視認者が表示面Tを視認する際の仰角と、計測光軸Qの方向とが一致するように輝度計Bを設置することにより、太陽高度依存テーブル30a1を作成するための反射輝度が計測されてもよい。
【0036】
制御部20は、表示する対象の表示画像データ30bを取得すると、表示画像データ30bを発光画像データに変換する。上述したように、表示画像データ30bの各画素は、各発光素子Pに対応しており、RGBの各チャネルのLEDを発光させるか否かを示す。制御部20は、表示画像データ30bを構成する画素のうち、発光することを示す画素については、太陽高度依存テーブル30a1において計測した太陽高度αに対応する発光輝度Lの階調値を設定する。一方、制御部20は、表示画像データ30bを構成する画素のうち、発光しないことを示す画素については発光輝度Lの階調値を0に設定する。制御部20は、RGBの各チャネルについて発光輝度Lの階調値を設定する。
【0037】
発光制御モジュール21bの機能により制御部20は、照度と太陽高度αとに基づいて発光素子Pの発光輝度Lを設定する。具体的に、制御部20は、計測した太陽高度αが高反射範囲K内であった場合には太陽高度αに基づいて発光輝度Lの階調値を設定し、計測した太陽高度αが高反射範囲K内でなかった場合には照度計60が計測した照度に対応する発光輝度Lの階調値を設定する。なお、太陽高度αが高反射範囲K内でなかった場合には、太陽高度αが計測できなかった場合も含まれる。
【0038】
図4Bは、照度依存テーブル30a2に規定された発光輝度Lを示すグラフである。図4Bの横軸は照度Iを示し、縦軸は発光輝度Lを示す。照度依存テーブル30a2においては、各照度Iについて発光輝度Lの階調値が規定されている。照度依存テーブル30a2は、照度Iが大きくなるほど、発光輝度Lが大きくなるように作成されている。制御部20は、計測した太陽高度αが高反射範囲K内でなかった場合、計測した照度Iに対応する発光輝度Lの階調値を照度依存テーブル30a2から取得し、当該発光輝度Lの階調値で発光素子Pを発光させる。
【0039】
計測した太陽高度αが高反射範囲K内でなかった場合、制御部20は、表示画像データ30bを構成する画素のうち、発光することを示す画素については計測した照度Iに対応する発光輝度Lの階調値を設定する。一方、制御部20は、表示画像データ30bを構成する画素のうち、発光しないことを示す画素については発光輝度Lの階調値を0に設定する。
【0040】
以上のようにして、各画素が発光輝度Lの階調値を示す発光画像データを生成すると、制御部20は、発光画像データをドライバ回路Dに出力する。これにより、ドライバ回路Dは、発光輝度Lの階調値の大きさに応じたデューティ比で発光素子Pが備えるRGBの各チャネルのLEDを発光させることとなる。
【0041】
以上説明した本発明の構成において、制御部20は、表示面Tにおける太陽光の反射輝度比RRが第1輝度比RR1となる太陽高度α1が計測された場合に発光素子Pを第1発光輝度L1で発光させ、反射輝度比RRが第1輝度比RR1未満の第2輝度比RR2となる太陽高度α2が計測された場合に発光素子Pを第1発光輝度L1よりも小さい第2発光輝度L2で発光させる(図3B図4A)。すなわち、制御部20は、表示面Tにおける太陽光の反射輝度が大きくなる太陽高度αとなっている場合に、発光輝度Lが大きくなるように発光素子Pを発光制御する。これにより、表示面Tが太陽光を強く反射し、反射光Fに発光素子Pの光が紛れて視認され得る状況において、発光素子Pの発光輝度を大きくすることができる。従って、表示面Tにおける太陽光の反射の影響を低減した状態で情報を表示できる。
【0042】
また、太陽高度計測部Hは、予め決められた計測範囲M内の太陽高度αとなる太陽が放射した太陽光を透過させるスリット55aが形成されたスリット板55を備えるため、反射輝度が大きくなる範囲においてのみ太陽高度αを計測できる。また、スリット55aの水平方向の幅を制限することにより、水平方向において太陽が表示面Tの正面近くに存在する場合に太陽高度αを計測できる。従って、表示面Tを正面から視認する場合に、表示面Tにおける太陽光の反射の影響を低減できる。この計測範囲Mは、反射輝度比RRが最大となる太陽高度α1を含むため、表示面Tにおける反射光によって最も情報の視認性が低下する際の太陽高度α1を計測できる。
【0043】
また、太陽高度計測部Hは、水平方向の偏光を透過させる偏光フィルタ53を備えるため、水平方向以外の偏光によるノイズの影響を低減でき、太陽高度αを精度よく計測できる。さらに、太陽高度計測部Hは、予め決められた波長域の光を透過させるカラーフィルタ54を備えるため、光センサ56に入射する太陽光の光量を適度に調整できる。また、制御部20は、照度Iと太陽高度αとに基づいて発光素子Pの発光輝度Lを設定するため、照度Iと太陽高度αの双方に適した発光輝度Lで発光素子Pを発光させることができる。
【0044】
(2)情報表示処理:
図5は、情報表示処理のフローチャートである。まず、太陽高度計測モジュール21aの機能により制御部20は、太陽高度計50から計測画像データを取得する(ステップS100)。具体的に、制御部20は、太陽高度計50の光センサ56が撮像した計測画像データを取得する。
【0045】
次に、太陽高度計測モジュール21aの機能により制御部20は、計測画像データに基づいて太陽高度αを算出する(ステップS110)。具体的に、制御部20は、平均明度が最大となる画素列の光センサ56上における位置とスリット55aの位置とを接続する直線と、水平線とがなす角を太陽高度αとして算出する。ただし、制御部20は、平均明度が最大となる画素列の平均明度が予め決められた閾値未満である場合、太陽高度αが計測不能であると判定する。
【0046】
次に、発光制御モジュール21bの機能により制御部20は、計測した太陽高度αが高反射範囲K内であるか否かを判定する(ステップS120)。すなわち、制御部20は、太陽高度αが計測可能であり、かつ、反射輝度比RRが閾値RRT以上となる太陽高度αとなっているか否かを判定する。
【0047】
計測した太陽高度αが高反射範囲K内であると判定した場合(ステップS120:Y)、発光制御モジュール21bの機能により制御部20は、計測した太陽高度αに基づいて発光輝度Lを設定する(ステップS130)。すなわち、制御部20は、表示画像データ30bを構成する画素のうち、発光することを示す画素については、太陽高度依存テーブル30a1において太陽高度αに対応する発光輝度Lの階調値を設定する。つまり、制御部20は、反射輝度比RRが大きくなる太陽高度αであるほど、大きい発光輝度Lの階調値を設定する。
【0048】
次に、発光制御モジュール21bの機能により制御部20は、設定した発光輝度Lで発光素子Pを発光させる(ステップS140)。すなわち、制御部20は、各画素が発光輝度Lの階調値を示す発光画像データをドライバ回路Dに出力する。これにより、ドライバ回路Dは、発光輝度Lの階調値の大きさに応じたデューティ比でRGBチャネルの各LEDを発光させることとなる。
【0049】
一方、計測した太陽高度αが高反射範囲K内であると判定しなかった場合(ステップS120:N)、発光制御モジュール21bの機能により制御部20は、照度Iを計測する(ステップS150)。すなわち、制御部20は、照度計60が計測した照度Iを取得する。
【0050】
次に、発光制御モジュール21bの機能により制御部20は、計測した照度Iに基づいて発光輝度Lを設定する(ステップS160)。すなわち、制御部20は、表示画像データ30bを構成する画素のうち、発光することを示す画素については、照度依存テーブル30a2において照度Iに対応する発光輝度Lの階調値を設定する。つまり、制御部20は、照度Iが大きくなるほど、大きい発光輝度Lの階調値を設定する。そして、発光制御モジュール21bの機能により制御部20は、設定した発光輝度Lで発光素子Pを発光させる(ステップS140)。
【0051】
(3)他の実施形態:
図6は、太陽高度αと照度Iとの組み合わせごとに発光輝度Lを規定した3次元ルックアップテーブルの一例を示すグラフである。図6に示す3次元ルックアップテーブルにおいて、太陽高度αと照度Iとの組み合わせに基づいて発光輝度Lが予め規定されている。図6においては、太陽高度αが高反射範囲K内である場合には太陽高度αと照度Iの双方に依存して発光輝度Lが変化し、太陽高度αが高反射範囲K内でない場合には照度Iに依存して発光輝度Lが変化することとなる。
【0052】
以上例示したような3次元ルックアップテーブルを制御部20が参照することより、太陽高度αと照度Iの組み合わせに応じて柔軟に発光輝度Lを設定できる。ただし、本発明において、ルックアップテーブルを使用することは必須ではなく、少なくとも太陽高度αから発光輝度Lを導出可能な関数が使用されてもよい。
【0053】
前記実施形態において、図3Aは、砲弾形状のLEDからなる発光素子Pに対して斜め上方から入射した入射光SがレンズP2によって屈折し、LED実装部P1に反射して水平方向の反射光Fが生じる場合を例示したが、LED実装部とレンズとを別体に配置したドットマトリックス状のLED表示ユニットやレンズの無いLED表示ユニットにおいても水平方向の反射光が生じる。よって、太陽光の照射によって表示面から水平方向の反射光が生じる発光素子であればマイクロLEDやOLEDであってもよく、発光素子の形状および種類には限定されない。
【0054】
さらに、表示画像データ30bは、2値画像データであったが、多階調の画像データであってもよい。この場合、制御部20は、表示画像データ30bが示す階調値を太陽高度αに応じて補正することにより、発光輝度Lを設定すればよい。例えば、制御部20は、太陽高度依存テーブル30a1から太陽高度αに対応するゲインを取得し、当該ゲインを表示画像データ30bが示す階調値に乗算することにより発光輝度Lを設定してもよい。
【0055】
さらに、太陽高度計50から偏光フィルタ53が省略されてもよいし、カラーフィルタ54が省略されてもよい。カラーフィルタ54は、赤外光を透過させるフィルタに限らず、他の波長域の光を透過させてもよい。また、表示面Tが既知の波長域のノイズ光源(例えば信号機等)の近くに設置される場合、ノイズ光源の波長域の光を遮断するカラーフィルタ54が使用されてもよい。
【0056】
さらに、本発明のように、太陽高度に基づいて表示板の発光制御を行う手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0057】
10…情報表示装置、20…制御部、21…情報表示プログラム、21a…太陽高度計測モジュール、21b…発光制御モジュール、30…記録媒体、30a1…太陽高度依存テーブル、30a2…照度依存テーブル、30b…表示画像データ、40…表示板、41…前面板、42…ルーバ、50…太陽高度計、51…ケース、52…透明カバー、53…偏光フィルタ、54…カラーフィルタ、55…スリット板、55a…スリット、56…光センサ、57…基板、58…出力回路、60…照度計、B…輝度計、D…ドライバ回路、F…反射光、H…太陽高度計測部、I…照度、IR…照度比、K…高反射範囲、L…発光輝度、M…計測範囲、P…発光素子、P1…LED実装部、P2…レンズ、RR…反射輝度比、T…表示面、W…検出窓、α…太陽高度
図1
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図5
図6