(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】電気化学素子、電気化学モジュール、電気化学装置及びエネルギーシステム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0258 20160101AFI20230908BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20230908BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20230908BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20230908BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20230908BHJP
H01M 8/1213 20160101ALI20230908BHJP
H01M 8/2432 20160101ALI20230908BHJP
H01M 8/248 20160101ALI20230908BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20230908BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
H01M8/0606
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/1213
H01M8/2432
H01M8/248
H01M8/2483
(21)【出願番号】P 2019069392
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】越後 満秋
(72)【発明者】
【氏名】大西 久男
(72)【発明者】
【氏名】神家 規寿
(72)【発明者】
【氏名】曽木 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】南 和徹
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-207509(JP,A)
【文献】特開2017-183177(JP,A)
【文献】特開2017-041404(JP,A)
【文献】特表2002-518794(JP,A)
【文献】特開2009-277539(JP,A)
【文献】国際公開第2018/088701(WO,A1)
【文献】特開平09-082352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に内部流路を有する板状支持体を備え、
前記板状支持体は、
第1板状体と、
第2板状体と、
前記内部流路と前記板状支持体の外側とに亘って気体を透過できる気体通流許容部と、
少なくとも膜状の電極層と膜状の電解質層と膜状の対極電極層とが、前記板状支持体の外面において、前記気体通流許容部の全部又は一部を被覆する状態で順に所定の積層方向に積層されて形成されている電気化学反応部と、を有し、
前記気体通流許容部は、前記第1板状体に形成されており、
前記電気化学反応部は、前記第1板状体の一方の外面に形成されており、
前記内部流路は、前記第1板状体と前記第2板状体との対向面間に形成されており、
前記内部流路には、還元性成分ガス及び酸化性成分ガスのうちの一方である第1ガスが通流し、かつ、前記第1ガスの乱流状態を形成する乱流形成体が設けられており、
前記内部流路は、前記板状支持体の板状面に沿う方向において第1方向に延び、かつ、前記板状面に沿う方向において前記第1方向と交差する第2方向に互いに離隔し、同方向に気体が通流する複数の副流路を有しており、
前記乱流形成体は
、
前記複数の流路のうち少なくとも1つの副流路に配置されている、前記第1ガスの乱流状態を形成する乱流形成部を有して
おり、
前記第1板状体の他方の外面のうち、前記気体通流許容部が形成された部分に隣接して設けられた平板状の網状体であり、
導電性材料を用いて形成されている電気化学素子。
【請求項2】
前記板状支持体が導電性材料を用いて形成されている、請求項
1に記載の電気化学素子。
【請求項3】
前記板状支持体が金属材料を用いて形成されている、請求項1
又は2に記載の電気化学素子。
【請求項4】
前記乱流形成体が金属材料を用いて形成されている、請求項1~
3のいずれか1項に記載の電気化学素子。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の電気化学素子の複数が所定の積層方向に積層されている電気化学素子積層体と、
前記積層方向における前記電気化学素子積層体の第1平面を押圧する第1挟持体、及び前記第1平面とは反対の第2平面を押圧する第2挟持体を含む挟持体と、
を備える電気化学モジュール。
【請求項6】
前記電気化学素子積層体は、複数の前記電気化学素子が前記第1ガスを通流するための環状シール部を介して前記積層方向に積層されている、請求項
5に記載の電気化学モジュール。
【請求項7】
前記板状支持体の内部流路には、前記環状シール部を介して前記第1ガスが導入され、
前記積層方向に隣接する電気化学素子間に、前記還元性成分ガス及び前記酸化性成分ガスのうちの他方である第2ガスが通流する通流部が形成されている、請求項
6に記載の電気化学モジュール。
【請求項8】
複数の前記電気化学素子では、第1電気化学素子と第2電気化学素子とが互いに隣接して積層されており、
前記板状支持体の内部流路には、前記環状シール部を介して前記第1ガスが導入され、
前記第1電気化学素子を構成する前記板状支持体と、前記第2電気化学素子を構成する前記板状支持体とが対向する形態で、且つ、前記第1電気化学素子を構成する前記板状支持体における電気化学反応部が配置される外面と、前記第2電気化学素子を構成する前記板状支持体における前記電気化学反応部が配置される側とは別の外面とが電気的に接続されており、且つ、これら両外面どうしの隣接間に、当該両外面に沿って還元性成分ガス及び酸化性成分ガスのうちの他方である第2ガスが通流する通流部が形成されている、請求項
6又は
7に記載の電気化学モジュール。
【請求項9】
各電気化学素子の板状支持体は、前記第1ガスが通流する供給路を形成する第1貫通部を有し、
各電気化学素子の第1貫通部は、隣接する電気化学素子の間に介在する環状シール部の環状孔と連通している、請求項
8に記載の電気化学モジュール。
【請求項10】
前記通流部内において、前記両外面に夫々形成される前記第1貫通部を前記通流部と区画する前記環状シール部としての第1環状シール部を備え、
前記第1貫通部及び前記第1環状シール部により、前記内部流路との間に前記第1ガスを流通する前記供給路が形成される請求項
9に記載の電気化学モジュール。
【請求項11】
前記板状支持体は、前記内部流路を通流する前記第1ガスを前記板状支持体の表面貫通方向外方と流通させる排出路を形成する第2貫通部を備え、
前記通流部内において、前記両外面に夫々形成される前記第2貫通部を前記通流部と区画する前記環状シール部としての第2環状シール部を備え、
前記第2貫通部及び前記第2環状シール部により、前記内部流路を通流する前記第1ガスが流通する前記排出路が形成される請求項
9又は
10に記載の電気化学モジュール。
【請求項12】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の電気化学素子もしくは請求項
5~
11のいずれか1項に記載の電気化学モジュールと燃料変換器とを少なくとも有し、前記電気化学素子もしくは前記電気化学モジュールに対して燃料変換器からの還元性成分ガスを流通する、あるいは前記電気化学素子もしくは前記電気化学モジュールから燃料変換器に還元性成分ガスを流通する燃料供給部を有する電気化学装置。
【請求項13】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の電気化学素子もしくは請求項
5~
11のいずれか1項に記載の電気化学モジュールと、前記電気化学素子もしくは前記電気化学モジュールから電力を取り出すあるいは前記電気化学素子もしくは前記電気化学モジュールに電力を流通する電力変換器とを少なくとも有する電気化学装置。
【請求項14】
請求項
12または
13に記載の電気化学装置と、前記電気化学装置もしくは燃料変換器から排出される熱を再利用する排熱利用部とを有するエネルギーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学素子、電気化学モジュール、電気化学装置及びエネルギーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池セルと、多孔質材で構成されたセパレータとが交互に積層された燃料電池スタックが開示されている。燃料電池セルは、電解質膜と、酸化剤極と、燃料極とを備えて構成されている。電解質膜の一方に酸化剤極が形成されており、他方の面に燃料極が形成されている。酸化剤極と面するセパレータには酸化剤ガス流路が平面方向に沿って形成されており、酸化剤ガスが当該酸化剤ガス通流路を通流する。同様に、燃料極と面するセパレータには燃料ガス流路が平面方向に沿って形成されており、燃料ガスが当該燃料ガス通流路を通流する。このように形成された積層体は、水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の燃料電池セルでは、電解質膜と、酸化剤極と、燃料極とが順に積層され、その平面方向に沿って酸化剤ガス及び燃料ガスが層流状態で通流する。層流状態では、流れの乱れが抑制された状態でガスが通流する。
【0005】
近年、燃料電池セルにおける発電効率の向上のため、新たな積層体の構造も検討されている。さらに当該積層体により構成される燃料電池セル内の酸化剤ガス及び燃料ガス等のガスの通流状態の検討も期待されている。
【0006】
そこで、本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、発電効率の向上が可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[構成]
本発明に係る電気化学素子の特徴構成は、
内側に内部流路を有する板状支持体を備え、
前記板状支持体は、
第1板状体と、
第2板状体と、
前記内部流路と前記板状支持体の外側とに亘って気体を透過できる気体通流許容部と、
少なくとも膜状の電極層と膜状の電解質層と膜状の対極電極層とが、前記板状支持体の外面において、前記気体通流許容部の全部又は一部を被覆する状態で順に所定の積層方向に積層されて形成されている電気化学反応部と、を有し、
前記気体通流許容部は、前記第1板状体に形成されており、
前記電気化学反応部は、前記第1板状体の一方の外面に形成されており、
前記内部流路は、前記第1板状体と前記第2板状体との対向面間に形成されており、
前記内部流路には、還元性成分ガス及び酸化性成分ガスのうちの一方である第1ガスが通流し、かつ、前記第1ガスの乱流状態を形成する乱流形成体が設けられており、
前記内部流路は、前記板状支持体の板状面に沿う方向において第1方向に延び、かつ、前記板状面に沿う方向において前記第1方向と交差する第2方向に互いに離隔し、同方向に気体が通流する複数の副流路を有しており、
前記乱流形成体は、
前記複数の流路のうち少なくとも1つの副流路に配置されている、前記第1ガスの乱流状態を形成する乱流形成部を有しており、前記第1板状体の他方の外面のうち、前記気体通流許容部が形成された部分に隣接して設けられた平板状の網状体であり、
導電性材料を用いて形成されている点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、板状支持体の内部流路を第1ガスが通流する。内部流路には第1ガスの乱流状態を形成する乱流形成体が設けられているため、第1ガスは内部流路内で乱流状態となり易い。乱流状態では、流体は、少なくともその一部が渦を巻いた状態で流路内を通流する。よって、乱流状態の流体は、流路内を主にその流路方向に沿って通流するとともに、流路方向とは異なる方向にも流れようとする。そのため、第1ガスは、内部流路を形成する板状支持体の平面に沿って進むとともに、板状支持体に形成された気体通流許容部を内部流路から外側に亘って透過し易くなる。これにより、板状支持体の外面に形成された電気化学反応部への第1ガスの供給効率が向上し、電気化学反応部での電気化学反応が促進され、発電効率が向上される。
【0009】
特に、電気化学素子の小型化に伴い、内部流路が偏平となって幅や高さが狭まり、第1ガスが板状支持体の平面に沿って進む層流状態となる場合があるが、乱流形成体の存在によって第1ガスが乱流状態となり易い。また、電気化学反応部を備える電気化学素子の発電出力を低下させる場合には、内部流路への第1ガスの供給量が少なく調整される。このように内部流路内を通流する第1ガスが少ない場合、第1ガスは板状支持体の平面に沿って進む層流状態となる場合がある。しかし、乱流形成体の存在によって第1ガスが乱流状態となり易い。よって、第1ガスが内部流路から気体通流許容部を介して電気化学反応部へ供給される効率が向上する。
【0011】
また、上記特徴構成によれば、板状支持体の内部流路には、板状支持体の板状面に沿う方向において第1方向に延びる複数の副流路が形成されている。複数の副流路の少なくとも1つには、乱流形成体を構成する乱流形成部が配置されている。乱流形成部が設けられている副流路では、第1ガスは、副流路内を板状支持体の平面に沿って第1方向に沿って層流状態で流れるだけでなく、乱流状態となり易い。よって、乱流状態の第1ガスは、内部流路を形成する板状支持体の平面に沿って進むだけでなく、板状支持体に形成された気体通流許容部を内部流路から外側に亘って透過し易くなる。これにより、電気化学反応部への第1ガスの供給効率が向上し、電気化学反応部での電気化学反応が促進され、発電効率が向上される。
【0013】
また、上記特徴構成によれば、乱流形成体は板状支持体の板状面に沿った網状体で構成することもできる。網状体を第1ガスが通流することで、第1ガスを乱流状態にすることができる。
網状体の乱流形成体としては、例えば金属メッシュ、エキスパンドメタル、ポーラスメタル(発泡金属)、金属フェルト、パンチングメタル、3Dファブリック等の部材を挙げることができる。
【0014】
更に、上記特徴構成によれば、乱流形成体が導電性材料を用いて形成されているため、電気化学反応部との電気の流れが円滑になり、電気化学素子の内部抵抗を小さくできる。結果として、高性能な電気化学素子を得ることができる。
【0017】
[構成]
本発明に係る電気化学素子の更なる特徴構成は、前記板状支持体が導電性材料を用いて形成されている点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、板状支持体が導電性材料を用いて形成されているため、電気化学反応部との電気の流れが円滑になり、電気化学素子の内部抵抗を小さくできる。結果として、高性能な電気化学素子を得ることができる。
【0019】
[構成]
本発明に係る電気化学素子の更なる特徴構成は、前記板状支持体が金属材料を用いて形成されている点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、板状支持体が金属材料を用いて形成されているため、導電性を有する上に、強靭で加工性に優れる。よって、コンパクトで軽量、低コストな電気化学素子が得られる。
【0023】
[構成]
本発明に係る電気化学素子の更なる特徴構成は、前記乱流形成体が金属材料を用いて形成されている点にある。
【0024】
上記特徴構成によれば、乱流形成体が金属材料を用いて形成されているため、導電性を有する上に、強靭で加工性に優れる。よって、コンパクトで軽量、低コストな電気化学素子が得られる。
【0025】
[構成]
本発明に係る電気化学モジュールの特徴構成は、
上記の電気化学素子の複数が所定の積層方向に積層されている電気化学素子積層体と、
前記積層方向における前記電気化学素子積層体の第1平面を押圧する第1挟持体、及び前記第1平面とは反対の第2平面を押圧する第2挟持体を含む挟持体と、
を備える点にある。
【0026】
上記特徴構成によれば、上記電気化学素子積層体を第1挟持体と第2挟持体とにより挟み込んで電気化学モジュールを構成できる。
【0027】
[構成]
本発明に係る電気化学モジュールの更なる特徴構成は、
前記電気化学素子積層体は、複数の前記電気化学素子が前記第1ガスを通流するための環状シール部を介して前記積層方向に積層されている点にある。
【0028】
上記構成によれば、複数の電気化学素子が環状シール部を介して所定の積層方向に積層されているため、第1ガスが複数の電気化学素子間において漏洩するのを抑制できる。
【0029】
[構成]
本発明に係る電気化学モジュールの更なる特徴構成は、
前記板状支持体の内部流路には、前記環状シール部を介して前記第1ガスが導入され、
前記積層方向に隣接する電気化学素子間に、前記還元性成分ガス及び前記酸化性成分ガスのうちの他方である第2ガスが通流する通流部が形成されている点にある。
【0030】
上記特徴構成によれば、各電気化学素子は、板状支持体の内部に第1ガスが通流する内部流路が形成されており、隣接する電気化学素子間には第2ガスが通流する通流部が形成されている。よって、各電気化学素子は、内部流路から供給された第1ガスと通流部から供給された第2ガスとにより電気化学反応を行わせることができる。
【0031】
より具体的には、電気化学素子を「燃料等の化学的エネルギーを電気エネルギーに変換する」燃料電池(電気化学発電セル)として機能させる場合には、第1ガスは、電気化学反応により消費される水素ガス等の還元性成分ガス及び空気等の酸化性成分ガスのうちの一方であり、第2ガスは他方である。
【0032】
電気化学素子を「電気エネルギーを燃料等の化学的エネルギーに変換する」電解セルとして機能させる場合には、第1ガスは、電気化学反応により生成される水素ガス等の還元性成分ガス及び酸素等の酸化性成分ガスのうちの一方であり、第2ガスは他方である。
【0033】
また、板状支持体は、板状支持体の内側である内部流路と外側とに亘って気体を透過できる気体通流許容部と、気体通流許容部の全部又は一部を被覆する状態で、電極層と電解質層と対極電極層と有する電気化学反応部とを備える。よって、電気化学素子を燃料電池(電気化学発電セル)として機能させる場合には、第1ガスと第2ガスとは、基板の外方側からの経路と、内部流路から板状支持体の気体通流許容部を通じる経路とから、電気化学反応部に達し、電極層および対極電極層において互いに反応することによって、たとえば電気を生成するなどの電気化学反応を生起することができる。
【0034】
電気化学素子を電解セルとして機能させる場合には、電気化学反応部に電気を供給することにより、水などの電気分解反応により第1ガスと第2ガスとが生じ、板状支持体の外方側の経路と、板状支持体の気体通流許容部から内部流路を通じる経路から排出することができる。
【0035】
[構成]
本発明に係る電気化学モジュールの更なる特徴構成は、
複数の前記電気化学素子では、第1電気化学素子と第2電気化学素子とが互いに隣接して積層されており、
前記板状支持体の内部流路には、前記環状シール部を介して前記第1ガスが導入され、 前記第1電気化学素子を構成する前記板状支持体と、前記第2電気化学素子を構成する前記板状支持体とが対向する形態で、且つ、前記第1電気化学素子を構成する前記板状支持体における電気化学反応部が配置される外面と、前記第2電気化学素子を構成する前記板状支持体における前記電気化学反応部が配置される側とは別の外面とが電気的に接続されており、且つ、これら両外面どうしの隣接間に、当該両外面に沿って還元性成分ガス及び酸化性成分ガスのうちの他方である第2ガスが通流する通流部が形成されている点にある。
【0036】
上記特徴構成によれば、電気化学素子は、板状支持体の内部の内部流路を有しており、内部流路には第1ガスが通流する。一方、内部流路と区画された通流部には第2ガスが通流する。よって、第1ガスと第2ガスとを分配して通流させることができる。
【0037】
[構成]
本発明に係る電気化学モジュールの更なる特徴構成は、
各電気化学素子の板状支持体は、前記第1ガスが通流する供給路を形成する第1貫通部を有し、
各電気化学素子の第1貫通部は、隣接する電気化学素子の間に介在する環状シール部の環状孔と連通している点にある。
【0038】
上記特徴構成によれば、第1ガスは各電気化学素子の第1貫通部及び環状シール部を介して複数の電気化学素子が積層された積層体に供給される。
【0039】
[構成]
本発明に係る電気化学モジュールの更なる特徴構成は、
前記通流部内において、前記両外面に夫々形成される前記第1貫通部を前記通流部と区画する前記環状シール部としての第1環状シール部を備え、
前記第1貫通部及び前記第1環状シール部により、前記内部流路との間に前記第1ガスを流通する前記供給路が形成される点にある。
【0040】
第1環状シール部を設けることにより、積層体における互いに積層される電気化学素子の第1貫通部どうしを通流部と区画して連通接続することができる。そのため、隣接する電気化学素子の第1貫通部どうしを密に接続するだけの極めて簡単な構成で、それぞれの電気化学素子が第1ガス、第2ガスにより適正に動作する形態に接続することができ、作製容易かつ信頼性の高い電気化学モジュールとなり、電気化学モジュールを作製するにあたって、取り扱い容易な構造となる。
【0041】
なお環状シール部は、貫通部どうしを連通させてガスの漏洩を防止できる構成であれば形状は問わない。つまり、環状シール部は、内部に貫通部に連通する開口部を有する無端状の構成で、隣接する電気化学素子どうしの間をシールする構成あればよい。環状シール部は例えば環状である。環状には、円形、楕円形、方形、多角形状等いかなる形状でもよい。
【0042】
[構成]
本発明に係る電気化学モジュールの更なる特徴構成は、
前記板状支持体は、前記内部流路を通流する前記第1ガスを前記板状支持体の表面貫通方向外方と流通させる排出路を形成する第2貫通部を備え、
前記通流部内において、前記両外面に夫々形成される前記第2貫通部を前記通流部と区画する前記環状シール部としての第2環状シール部を備え、
前記第2貫通部及び前記第2環状シール部により、前記内部流路を通流する前記第1ガスが流通する前記排出路が形成される点にある。
【0043】
すなわち、例えば、電気化学素子を燃料電池(電気化学発電セル)として機能させる場合には、第1貫通部から内部流路に進入した第1ガスは、内部流路を通って、気体通流許容部を介して電気化学反応部に流通されつつ、残部は排出路を形成する第2貫通部に通流することになる。排出路は第2貫通部が、第2ガスと区画された状態で形成されているので、第1ガスは、第2ガスと区別された状態で排出路から回収できる状態とすることができる。この排出路は第1貫通部における供給路と同様にシール部で構成されているから、隣接する電気化学素子の第2貫通部どうしを密に接続するだけの極めて簡単な構成で、通流部を区画した状態で連通接続でき、それぞれの電気化学素子が第1ガス、第2ガスにより適正に動作する形態に接続することができ、作製容易かつ信頼性の電気化学モジュールとなり、電気化学モジュールを作製するにあたって、取り扱い容易な構造となる。
【0044】
[構成]
本発明に係る電気化学装置の特徴構成は、
上記の電気化学素子もしくは上記の電気化学モジュールと燃料変換器とを少なくとも有し、前記電気化学素子もしくは前記電気化学モジュールに対して燃料変換器からの還元性成分ガスを流通する、あるいは前記電気化学素子もしくは前記電気化学モジュールから燃料変換器に還元性成分ガスを流通する燃料供給部を有する点にある。
【0045】
上記の特徴構成によれば、電気化学素子もしくは電気化学モジュールと燃料変換器とを有し電気化学素子もしくは電気化学モジュールと燃料変換器との間で還元性成分を含有するガスを流通する燃料供給部を有するので、電気化学素子もしくは電気化学モジュールを燃料電池として動作させる場合、都市ガス等の既存の原燃料供給インフラを用いて供給される天然ガス等より改質器などの燃料変換器により水素を生成する構成とすると、耐久性・信頼性および性能に優れた電気化学素子もしくは電気化学モジュールを備えた電気化学装置を実現することができる。また、電気化学素子もしくは電気化学モジュールから排出される未利用の燃料ガスをリサイクルするシステムを構築し易くなるため、高効率な電気化学装置を実現することができる。
【0046】
電気化学素子もしくは電気化学モジュールを電解セルとして動作させる場合は、電極層に水蒸気や二酸化炭素を含有するガスが流通され、電極層と対極電極層との間に電圧が印加される。そうすると、電極層において電子e-と水分子H2Oや二酸化炭素分子CO2が反応し水素分子H2や一酸化炭素COと酸素イオンO2-となる。酸素イオンO2-は電解質層を通って対極電極層へ移動する。対極電極層において酸素イオンO2-が電子を放出して酸素分子O2となる。以上の反応により、水分子H2Oが水素H2と酸素O2とに、二酸化炭素分子CO2を含有するガスが流通される場合は一酸化炭素COと酸素O2とに電気分解される。
水蒸気と二酸化炭素分子CO2を含有するガスが流通される場合は上記電気分解により電気化学素子もしくは電気化学モジュールで生成した水素及び一酸化炭素等から炭化水素などの種々の化合物を合成する燃料変換器を設けることができる。燃料供給部により、この燃料変換器が生成した炭化水素等を電気化学素子もしくは電気化学モジュールに流通したり、本システム・装置外に取り出して別途燃料や化学原料として利用することができる。
【0047】
[構成]
本発明に係る電気化学装置の特徴構成は、
上記の電気化学素子もしくは上記の電気化学モジュールと、前記電気化学素子もしくは前記電気化学モジュールから電力を取り出すあるいは前記電気化学素子もしくは前記電気化学モジュールに電力を流通する電力変換器とを少なくとも有する点にある。
【0048】
上記の特徴構成によれば、電力変換器は、電気化学素子もしくは電気化学モジュールが発電した電力を取り出し、あるいは、電気化学素子もしくは電気化学モジュールに電力を流通する。これにより、上記のように電気化学素子もしくは電気化学モジュールは、燃料電池として作用し、あるいは、電解セルとして作用する。よって、上記構成によれば、燃料等の化学的エネルギーを電気エネルギーに変換する、あるいは電気エネルギーを燃料等の化学的エネルギーに変換する効率を向上できる電気化学素子等を提供することができる。
なお、例えば、電力変換器としてインバータを用いる場合、耐久性・信頼性および性能に優れた電気化学素子もしくは電気化学モジュールから得られる電気出力を、インバータによって昇圧したり、直流を交流に変換したりすることができるため、電気化学素子もしくは電気化学モジュールで得られる電気出力を利用しやすくなるので好ましい。
【0049】
[構成]
本発明に係るエネルギーシステムの特徴構成は、
上記の電気化学装置と、前記電気化学装置もしくは燃料変換器から排出される熱を再利用する排熱利用部とを有する点にある。
【0050】
上記の特徴構成によれば、電気化学装置と、電気化学装置もしくは燃料変換器から排出される熱を再利用する排熱利用部を有するので、耐久性・信頼性および性能に優れ、かつエネルギー効率にも優れたエネルギーシステムを実現することができる。なお、電気化学装置もしくは燃料変換器から排出される未利用の燃料ガスの燃焼熱を利用して発電する発電システムと組み合わせてエネルギー効率に優れたハイブリットシステムを実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図8】
図5におけるVIII-VIII断面図である。
【
図12】
図5におけるXII-XII断面図である。
【
図13】
図5におけるXIII-XIII断面図である。
【
図16】別の乱流形成体を有する電気化学素子における、
図9と同じ
図5におけるIX-IX断面図である。
【
図17】別の乱流形成体を有する電気化学素子における、
図10と同じ
図5におけるX-X断面図である。
【
図18】別の乱流形成体を有する電気化学素子における、
図13と同じ
図5におけるXIII-XIII断面図である。
【
図19】別の形態に係る電気化学モジュールの説明図である。
【
図27】
図21におけるXXVII-XXVII断面図である。
【
図28】
図21におけるXXVIII-XXVIII断面図である。
【
図32】
図21におけるXXXII-XXXII断面図である。
【
図33】
図21におけるXXXIII-XXXIII断面図である。
【
図34】
図21におけるXXXIV-XXXIV断面図である。
【
図36】
図21におけるXXXVI-XXXVI断面図である。
【
図38】供給構造体及び排出構造体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
〔実施形態〕
以下に、本発明の実施形態に係る電気化学モジュールM及び電気化学モジュールMの組立方法について説明する。なお、層の位置関係などを表す際、例えば電極層から見て電解質層の側を「上」「上側」、第1板状体の側を「下」「下側」などと呼ぶ。また、本発明は電気化学モジュールMを垂直あるいは水平方向に設置しても同じ効果が得られるため、「上」「下」をそれぞれ「左」「右」と読み替えても構わない。
【0053】
(1)電気化学モジュールMの全体構成
以下に、電気化学モジュールMの全体構成を説明する。
図1に示すように、電気化学モジュールMは、電気化学素子積層体(積層体)Sと、電気化学素子積層体Sを内装する概ね直方体状の容器(筐体、第1挟持体、第2挟持体)200とを備えている。電気化学素子A(
図4)は発電を行う素子であり、
図1の断面視において紙面手前から紙面奥方向に沿って延びる板状に形成されている。そして、電気化学素子積層体Sは、複数の平板状の電気化学素子Aが
図1の断面視において上下の積層方向に積層されて構成されている。本実施形態では、電気化学素子AとしてSOFC(Solid Oxide Fuel Cell)を例に挙げて説明する。
【0054】
また、電気化学モジュールMは、容器200の外部から、第1ガスを電気化学素子積層体Sに供給する第1ガス供給部61と、電気化学素子積層体Sにおいて反応後の第1ガスを排出する第1ガス排出部62とを備えている。
【0055】
容器200には、
図1~
図3に示すように、第2ガス供給部71が設けられており、容器200の外部から電気化学素子積層体Sに第2ガスを供給する。電気化学素子積層体Sにおいて反応後の第2ガスは、容器200に設けられた第2ガス排出部72から外部に排出される。
【0056】
ここでは、第1ガスは例えば燃料ガス等の還元性成分ガスであり、第2ガスは空気等の酸化性成分ガスである。
【0057】
また、電気化学モジュールMは、
図1の断面視において、電気化学素子積層体Sの両側面に開口付板部材240を備えている。開口付板部材240は、電気化学素子積層体Sの両側面に対応して、電気化学素子Aの積層方向に沿って延びる板状部材であり、電気化学モジュールMにおける電気的短絡(ショート)を防止するため、マイカやアルミナなどの絶縁材料が好ましい。開口付板部材240には、電気化学素子積層体Sの平面方向に沿って貫通する複数の開口240aが形成されている。
【0058】
よって、電気化学素子積層体Sは、第1ガス供給部61から燃料ガスの供給を受け、第2ガス供給部71から開口付板部材240の開口240aを介して空気の供給を受け、燃料ガス及び空気中の酸素を電気化学反応させて発電する。電気化学反応後の燃料ガスは第1ガス排出部62から外部に排出される。また、電気化学反応後の空気は、開口付板部材240の開口240aを介して第2ガス排出部72に導かれ、第2ガス排出部72から外部に排出される。
【0059】
なお、ここでは、電気化学素子積層体Sの両側面に隣接して開口付板部材240が設けられているが、必須ではなく、いずれか一方が設けられていてもよいし、両方が省略されてもよい。
【0060】
また、電気化学モジュールMは、電気化学素子積層体Sの上部に、電気化学素子積層体S側から外側に向かって順に、上部絶縁体210T、上部プレート(第1挟持体)230Tを備えている。同様に、電気化学モジュールMは、電気化学素子積層体Sの下部に、電気化学素子積層体S側から外側に向かって順に、下部絶縁体210B、下部プレート(第2挟持体)230Bを備えている。
【0061】
電気化学素子積層体Sについては、後で詳述する。
【0062】
(2)絶縁体、プレート及び容器
以下に、絶縁体(上部及び下部絶縁体210T及び210B)210、プレート(上部及び下部プレート230T及び230B)230、容器200についてさらに説明する。
【0063】
上部絶縁体210Tは、板状部材であり、電気化学素子積層体Sの上部平面(第1平面)を覆うように配置されている。上部絶縁体210Tは、例えば硬質マイカから形成されており、電気化学素子積層体Sを外部から電気的に絶縁している。
【0064】
上部プレート230Tは、板状部材であり、上部絶縁体210Tの上部に配置されており、高温における曲げ強度の高いセラミックス系材料、例えば99アルミナから形成されている。
【0065】
上部プレート230Tは、下部プレート230Bとともに、容器200から所定の締め付け圧力を受けて、電気化学素子積層体Sと、一対の上部及び下部絶縁体210T及び210Bとを挟みこんでいる。ここで、締め付け圧力とは、例えば1mm2当たり等の単位面積当たりの圧力である。
【0066】
下部絶縁体210Bは、電気化学素子積層体Sの下部平面(第2平面)を覆うように配置されている。下部プレート230Bは下部絶縁体210Bの下部に配置されている。下部絶縁体210B及び下部プレート230Bは、それぞれ上部絶縁体210T及び上部プレート230Tと同様である。
【0067】
電気化学素子積層体Sを内装する容器200は、
図1~
図3に示すように、概ね直方体状の容器である。容器200は、下方が開口した箱状の上蓋(第1挟持体)201と、上方が開口した下蓋(第2挟持体)203とを含む。上蓋201の下蓋203と対向する端面には連結部202が設けられており、下蓋203の上蓋201と対向する端面には連結部205が設けられている。連結部202と連結部205とが、例えば溶接されることで、上蓋201と下蓋203とが連結され、内部に直方体状の空間が形成される。
【0068】
本実施形態では、
図1に示すように、下蓋203の上下方向(電気化学素子Aの積層方向)の深さは、上蓋201の深さよりも深い。ただし、上蓋201及び下蓋203は、一体として内部に空間を形成できればよく、深さの関係はこれに限定されない。例えば、上蓋201の深さが下蓋203のよりも深くてもよい。
【0069】
図1~
図3に示すように、容器200の上下方向の中央部において、下蓋203の対向する一対の側壁それぞれに第2ガス供給部71及び第2ガス排出部72が形成されている。
【0070】
なお、ここでは、下蓋203に第2ガス供給部71及び第2ガス排出部72が形成されている。しかし、第2ガス供給部71及び第2ガス排出部72の形成位置はこれに限定されず、容器200のいずれの位置に形成されてもよい。第2ガス供給部71及び第2ガス排出部72は、例えば上蓋201に形成されてもよい。
【0071】
上蓋201は、
図1、
図2に示すように、上蓋201の外縁よりも一回り小さい開口201cを有している。そして、
図1の断面視において、開口201cに隣接して、電気化学素子積層体Sに面する内方側の端部が第1端部201a及び第2端部201bに分岐している。そして、第1端部201aは容器200の内方に向かって平面方向に所定長さで延びており、第2端部201bは、第1端部201aから分岐して容器200の下方に所定長さで延びている。第1端部201aと第2端部201bとは、断面視において概ね90°を成しており、L字状の角部を構成している。このL字の角部は、
図2に示す上蓋201の上面視の外縁の内方側に、外縁に沿って形成されている。これにより、第1端部201aの終端により、
図1、
図2に示すように前述の通り上蓋201の外縁よりも一回り小さい開口201cが上蓋201の上面に形成されている。
【0072】
下蓋203は、上蓋201と同様に、
図1に示す断面視において、概ね90°を成すL字状の角部を構成する第1端部203a及び第2端部203bを有している。そして、第1端部203aの終端により、
図1に示すように、下蓋203の外縁よりも一回り小さい開口203cが形成されている。
【0073】
図1に示すように、上蓋201の第1端部201a及び第2端部201bが形成するL字の角部には、一対の開口付板部材240の上端と、上部絶縁体210Tと、上部プレート230Tとが嵌め込まれている。具体的には、電気化学素子積層体Sの平面方向に沿う上部プレート230Tは、その外周端部の上面が第1端部201aの下面(L字の角部の内面の一部)に接触して支持されている。また、電気化学素子積層体Sの側面沿った開口付板部材240は、その上端の外面が、第2端部201bの内方側面(L字の角部の内面の一部)に接触して支持されている。上部絶縁体210Tは、上部プレート230T及び開口付板部材240を介して、第1端部201a及び第2端部203bからなるL字の角部に支持されている。
【0074】
同様に、下蓋203の平面方向に対向する一対のL字の角部には、一対の開口付板部材240の下端と、下部絶縁体210Bと、下部プレート230Bとが嵌め込まれている。
【0075】
そして、電気化学素子積層体Sは、その上面が、上部プレート230T及び上部絶縁体210Tを介して上蓋201により支持されている。また、電気化学素子積層体Sは、その下面が、下部プレート230B及び下部絶縁体210Bを介して下蓋203により支持されている。
【0076】
このような構成で、上蓋201及び下蓋203は、電気化学素子積層体S、上部及び下部絶縁体210T及び210B、上部及び下部プレート230T及び230B等を上部及び下部から挟み込んだ状態で、連結部202と連結部205とが、例えば溶接されて連結される。この連結の際に、上蓋201及び下蓋203は、電気化学素子積層体S等に所定の締め付け圧力を負荷して連結される。つまり、上蓋201及び下蓋203が連結された状態において、電気化学素子積層体S、上部及び下部絶縁体210T及び210B、上部及び下部プレート230T及び230Bには、所定の締め付け圧力が負荷されている。
【0077】
なお、
図3に示すように下蓋203の側面には、開口203eが形成されている。よって、開口203eからは、電気化学素子積層体Sの側面の一部が露出している。そして、前述の開口201c、203cと、開口203eとが容器200に形成されることで、容器200を軽量化し、容器200に必要な材料を削減できる。なお、電気化学素子積層体Sの側面と、上蓋201あるいは下蓋203または両方が接触することで電気的に短絡(ショート)する可能性がある場合は、マイカなどの材料で構成された側面絶縁体245が、電気化学素子積層体Sと上蓋201あるいは下蓋203の側面の間に設置される。
【0078】
容器200の下蓋203と上蓋201とは、それらが結合されることで、電気化学素子積層体Sに締め付け圧力を負荷する。このような容器200の材料としては、例えば、フェライト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレス、又はこれらとセラミックスとの複合体等が挙げられる。これらの材料はオーステナイト系ステンレスよりも熱膨張率が小さく、フェライト系ステンレスの熱膨張率はSUS430が約11×10-6/℃である。また、マルテンサイト系ステンレスの熱膨張率はSUS403及びSUS420J1が約10.4×10-6/℃であり、SUS410及びSUS440Cが約10.1×10-6/℃である。また、容器200は耐腐食性に優れる材料が選択されると好ましい。
【0079】
電気化学素子積層体Sの材料は、容器200と同様の材料であるのが好ましい。言い換えれば、電気化学素子積層体S及び容器200の材料は、容器200と同程度の熱膨張率であるのが好ましい。この場合、電気化学素子積層体Sの基板、容器200が、例えば電気化学素子Aが高温となる発電時において同程度に熱膨張する。よって、例えば、電気化学素子Aの基板と容器200との熱膨張差を小さく抑えることにより、電気化学素子Sの破損や容器200との間での前記第1ガスや第2ガスの漏洩を抑制できる。
【0080】
(3)電気化学モジュールMの組立方法
次に、上記の電気化学モジュールMの組立方法について説明する。
【0081】
複数の電気化学素子Aを積層して電気化学素子積層体Sを準備する。電気化学素子積層体Sの構成及び製造方法については後述する。
【0082】
また、電気化学素子積層体Sを収容するための容器200を準備する。容器200は、これに限定されないが、例えばロストワックス鋳造法を用いて製造できる。ロストワックス鋳造法を用いる場合、例えば、蜜蝋や松脂等からなる熱可塑性物質により容器200の外形に対応する空洞する模型を製造する。この模型をケイ砂や石灰粉末等からなる耐火材料で被覆する。その後、耐火材料で被覆された模型を加熱し、熱可塑性物質で構成された模型を溶出する。これにより、耐火材料内部に、容器200の形状を模した模型に対応する空洞が形成される。この空洞に容器200の材料を注入して固化させた後に耐火材料を取り除く。これにより、ロストワックス鋳造法により、上蓋201及び下蓋203を有する容器200が製造される。なお、上蓋201及び下蓋203は別々に製造されてもよい。
【0083】
次に、例えば、一対の開口付板部材240が電気化学素子積層体Sの両側面に配置され、絶縁体210及びプレート230が、電気化学素子積層体Sの上部平面及び下部平面に、順に配置された状態で下蓋203内に収容される。この下蓋203を上蓋201で覆い、電気化学素子積層体Sに所定の締め付け圧力が負荷されるように位置調整を行い、下蓋203と上蓋201とを溶接等して結合する。これにより、電気化学モジュールMが組み立てられる。
【0084】
上記のように、ロストワックス鋳造法を用いて容器200を製造した場合には、薄肉化、精密化及び量産化による低コスト化を達成することができる。
【0085】
また、箱状の容器200を形成することで、本実施形態では、第2ガス供給部71から電気化学素子積層体Sに供給する空気のマニホールドの空間を設けることができる。
【0086】
(4)電気化学モジュールMの具体的構成
次に、
図1及び
図4を用いて、電気化学モジュールMの具体的構成について説明する。
図1の電気化学素子積層体Sの詳細が
図1に示されている。
【0087】
図1及び
図4に示すように、電気化学モジュールMは、電気化学素子積層体Sを内装する容器200(上蓋201及び下蓋203)と、容器200の外部から供給路4を介して内部流路A1に第1ガスを供給する第1ガス供給部61と、反応後の第1ガスを排出する第1ガス排出部62と、容器200の外部から通流部A2に第2ガスを供給する第2ガス供給部71と、反応後の第2ガスを排出する第2ガス排出部72と、電気化学反応部3における電気化学反応に伴う出力を得る出力部8とを備え、
容器200内に、第2ガス供給部71から供給される第2ガスを通流部A2に分配供給する分配室9を備えている。
【0088】
分配室9は、電気化学素子積層体Sに対して当該電気化学素子積層体Sへ第2ガスを供給する側に位置する空間であり、
通流部A2は、空間側に開口形成されて当該空間と連通している。
【0089】
電気化学素子積層体Sは、容器200に対して、一対の集電体81、82に挟持された状態で内装されており、この集電体81、82に出力部8が延設され、容器200外部の電力供給先に電力供給自在に接続されるとともに、集電体81,82は容器200に対して少なくとも一方が電気的に絶縁され、かつ、第1ガスが容器200に対して気密になるように収容されている。
【0090】
これにより電気化学モジュールMは、第1ガス供給部61から燃料ガスを供給するとともに、第2ガス供給部71から空気を供給することで、
図1、4破線矢印に示すように燃料ガスが進入し実線矢印に示すように空気が進入する。
【0091】
第1ガス供給部61から供給された燃料ガス(第1ガスという場合もある)は、電気化学素子積層体Sの最上部の電気化学素子Aの第1貫通部41より供給路4に誘導され、第1環状シール部42により区画される供給路4より、すべての電気化学素子Aの内部流路A1に通流する。また第2ガス供給部71から供給された空気(第2ガスという場合もある)は、分配室9に一時流入したのち、各電気化学素子A間に形成される通流部A2に通流する。
【0092】
ちなみに、第2板状体2(板状支持体10の一部)を基準にすると、波板状の第2板状体2部分が第1板状体1(板状支持体10の一部)から膨出する部分で第1板状体1と第2板状体2との間に内部流路A1が形成されるとともに、隣接する電気化学素子Aの電気化学反応部3に接触して電気接続可能にする。一方、波板状の第2板状体2が第1板状体1と接触する部分が第1板状体1と電気接続し、第2板状体2と隣接する電気化学素子Aの電気化学反応部3との間に通流部A2を形成する。
【0093】
内部流路A1には、内部流路A1を通流する燃料ガスの乱流状態を形成する乱流形成体90が設けられている。内部流路A1は、分配部A12及び副流路A11を有するが(
図4,
図9等参照)、乱流形成体90は副流路A11に設けられているのが好ましい。
【0094】
そして、乱流形成体90は、複数の副流路A11のうち少なくとも1つの副流路A11に設けられている乱流形成部91から構成される。つまり、各副流路A11に設けられている乱流形成部91を総称して乱流形成体90というものとする。前述のように少なくとも1つの副流路A11に乱流形成部91が設けられていればよいが、全ての副流路A11に乱流形成部91設けられているのが好ましい。以下では、各副流路A11それぞれに、各副流路A11を通流する燃料ガスを乱流状態に形成する乱流形成部91が設けられているものとする。
【0095】
図14の一部に内部流路A1を含む断面の現れる電気化学素子Aと、通流部A2を含む断面の現れる電気化学素子Aとを便宜的に並べて示す部分があるが、第1ガス供給部61から供給された燃料ガスは、分配部A12に達し(
図5,
図7,
図9参照)、分配部A12を介して一端部側の幅方向に沿って広がって流れ、内部流路A1のうち各副流路A11に達する(
図5,
図7,
図9参照)。この場合、分配部A12から複数の副流路A11に均等に第1ガスを分配でき、各電気化学素子において均等に電気化学出力を生成させることができる。
【0096】
すると、各副流路A11に進入した燃料ガスは、乱流形成部91(乱流形成体90を構成する)により乱流状態となって各副流路A11を通流する。そして、燃料ガスは、気体通流許容部1Aを介して電極層31、電解質層32に進入できる。また、燃料ガスは、電気化学反応済みの燃料ガスとともに、さらに内部流路A1を進み、合流部A13、第2貫通部51を介して、第2環状シール部52によって形成される排出路5に進み、他の電気化学素子Aからの電気化学反応済みの燃料ガスとともに第1ガス排出部62より容器200外に排出される。
【0097】
一方、第2ガス供給部71から供給された空気は、分配室9を介して通流部A2に進入し、対極電極層33、電解質層32に進入できる。また、空気は、電気化学反応済みの空気とともに、さらに電気化学反応部3に沿って通流部A2を進み第2ガス排出部72より容器200外に排出される。
【0098】
この燃料ガス及び空気の流れに従って電気化学反応部3で生じた電力は、隣接する電気化学素子Aの電気化学反応部3と第2板状体2との接触により集電体81,82どうしの間で直列に接続され、合成出力が出力部8より取り出される形態となる。
【0099】
電気化学素子積層体Sの構成については、後で詳述する。
【0100】
(5)電気化学素子積層体Sの具体的構成
次に、電気化学素子積層体Sの具体的構成を説明する。電気化学素子積層体Sは、複数の電気化学素子Aが積層されて形成されている。
【0101】
図5~
図14を用いて電気化学素子Aについて説明する。
【0102】
(電気化学素子)
図5~
図13に示すように、電気化学素子Aは、第1板状体1と第2板状体2との対向面間に形成された内部流路A1を有する板状支持体10を備えている。
【0103】
板状支持体10は、当該板状支持体10を構成する第1板状体1及び第2板状体2の少なくとも一部において、当該板状支持体10の内側である内部流路A1と外側とに亘って気体を透過できる気体通流許容部1Aと、気体通流許容部1Aの全部又は一部を被覆する状態で、膜状の電極層31と膜状の電解質層32と膜状の対極電極層33とを記載順に有する電気化学反応部3とを備える(
図9~
図13参照)。
【0104】
本実施形態では、内部流路A1のうち副流路A11に乱流形成部91(乱流形成体90を構成する)が設けられている。
【0105】
また、板状支持体10には、表面貫通方向外方から内部流路A1にたとえば燃料ガス等の還元性成分ガス及びたとえば空気等の酸化性成分ガスのうちの一方である第1ガスを供給する供給路4を形成する第1貫通部41を一端部側に備え、内部流路A1を通流した第1ガスを板状支持体の表面貫通方向外方へ排出する排出路5を形成する第2貫通部51を他端部側に備える(
図5、
図7,
図12,
図13参照、尚、供給路4等と排出路5等とは対称形にて同様の構造であることも理解される)。
【0106】
(板状支持体)
第1板状体1は、電極層31と電解質層32と対極電極層33とを有する電気化学反応部3を支持して電気化学素子Aの強度を保つ役割を担う。第1板状体1の材料としては、電子伝導性、耐熱性、耐酸化性および耐腐食性に優れた材料が用いられる。例えば、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、ニッケル基合金などが用いられる。特に、クロムを含む合金が好適に用いられる。本実施形態では、第1板状体1は、Crを18質量%以上25質量%以下含有するFe-Cr系合金を用いているが、Mnを0.05質量%以上含有するFe-Cr系合金、Tiを0.15質量%以上1.0質量%以下含有するFe-Cr系合金、Zrを0.15質量%以上1.0質量%以下含有するFe-Cr系合金、TiおよびZrを含有しTiとZrとの合計の含有量が0.15質量%以上1.0質量%以下であるFe-Cr系合金、Cuを0.10質量%以上1.0質量%以下含有するFe-Cr系合金であると特に好適である。
【0107】
第2板状体2は、第1板状体1と重ね合わされた状態で、周縁部1aを溶接一体化されて板状支持体10を構成する(
図6~
図13参照)。第2板状体2は、第1板状体1に対して複数に分割されていてもよく、逆に第1板状体1が第2板状体2に対して複数に分割された状態であってもよい。また、一体化するに際して、溶接に替え、接着、嵌合等他の手段を採用することができ、内部流路を外部と区画して形成できるのであれば、周縁部1a以外の部分で一体化してもよい。
【0108】
第1板状体1は、表側の面と裏側の面とを貫通して設けられる複数の貫通孔11を多数設けてなる気体通流許容部1Aを有する(
図9~
図13参照)。なお、例えば、貫通孔11は、レーザー加工などにより、第1板状体1に設けることができる。貫通孔11は、第1板状体1の裏側の面から表側の面へ気体を透過させる機能を有する。気体通流許容部1Aは、第1板状体1における電極層31が設けられる領域より小さい領域に設けられることが好ましい。
【0109】
第1板状体1にはその表面に、拡散抑制層としての金属酸化物層12(後述、
図14参照)が設けられる。すなわち、第1板状体1と後述する電極層31との間に、拡散抑制層が形成されている。金属酸化物層12は、第1板状体1の外部に露出した面だけでなく、電極層31との接触面(界面)にも設けられる。また、貫通孔11の内側の面に設けることもできる。この金属酸化物層12により、第1板状体1と電極層31との間の元素相互拡散を抑制することができる。例えば、第1板状体1としてクロムを含有するフェライト系ステンレスを用いた場合は、金属酸化物層12が主にクロム酸化物となる。そして、第1板状体1のクロム原子等が電極層31や電解質層32へ拡散することを、クロム酸化物を主成分とする金属酸化物層12が抑制する。金属酸化物層12の厚さは、拡散防止性能の高さと電気抵抗の低さを両立させることのできる厚みであれば良い。
【0110】
金属酸化物層12は種々の手法により形成されうるが、第1板状体1の表面を酸化させて金属酸化物とする手法が好適に利用される。また、第1板状体1の表面に、金属酸化物層12をスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、スパッタリング法やPLD法等のPVD法、CVD法などにより形成しても良いし、メッキと酸化処理によって形成しても良い。更に、金属酸化物層12は導電性の高いスピネル相などを含んでも良い。
【0111】
第1板状体1としてフェライト系ステンレス材を用いた場合、電極層31や電解質層32の材料であるYSZ(イットリア安定化ジルコニア)やGDC(ガドリニウムドープセリア、CGOとも呼ぶ)等と熱膨張係数が近い。従って、低温と高温の温度サイクルが繰り返された場合も電気化学素子Aがダメージを受けにくい。よって、長期耐久性に優れた電気化学素子Aを実現できるので好ましい。なお、第1板状体1は、表側の面と裏側の面とを貫通して設けられる複数の貫通孔11を有する。なお、例えば、貫通孔11は、機械的、化学的あるいは光学的穿孔加工などにより、第1板状体1に設けることができる。貫通孔11は、第1板状体1の裏側の面から表側の面へ気体を透過させる機能を有する。第1板状体1に気体透過性を持たせるために、多孔質金属を用いることも可能である。例えば、第1板状体1は、焼結金属や発泡金属等を用いることもできる。
【0112】
板状支持体(第1板状体1、第2板状体2)10の内部に内部流路A1を有する。内部流路A1は、第1板状体1と第2板状体2との間に形成される。内部流路A1には、第1板状体1の気体通流許容部1Aに対向する領域において、複数の副流路A11、A11………を備えている。複数の副流路A11、A11………は、第2板状体2を波板状に加工することで形成されている。複数の副流路A11、A11………は、板状支持体10の板状面に沿う方向において、一端部側から他端部側(第1方向側)、つまり第1ガスの通流方向に沿って延びている。また、複数の副流路A11、A11………は、板状支持体10の板状面に沿う方向において、一端部側から他端部側と交差する方向(第2方向)において互いに離隔している。
【0113】
また、第2板状体2は、表裏両面とも波板状に形成されており、内部流路A1を区画形成する面の反対面は、隣接する電気化学素子Aの電気化学反応部3に電気的に接続する。そして、波型形状の第2板状体2が第1板状体1と接触する部分の近傍に形成される通路が、通流部A2として機能する。
【0114】
さらに説明すると、この副流路A11は長方形状に形成される板状支持体10の長辺に沿って複数平行に設けられており、一端部に設けられる供給路4から他端部に設けられる排出路5に至る内部流路A1を構成する。また、第1貫通部41と内部流路A1との接続箇所は、第1板状体1との接触部分から下方に膨出させてなり、第1貫通部41ら供給される第1ガスを副流路A11の夫々に分配する分配部A12を備え(
図5参照)、第2貫通部51と内部流路A1の接続箇所は、第1板状体1との接触部分から下方に膨出させてなり、副流路A11のそれぞれを通流した第1ガスを集約して第2貫通部51に導く合流部A13を備える(
図5,
図7,
図8,
図10~
図13参照、尚、供給路4等と排出路5等とは対称形にて同様の構造であることも理解される)。また、第2板状体2の材料については、耐熱性の金属であることが好ましく、第1板状体1との熱膨張差の低減や、溶接などの接合性の信頼性確保の観点から、第1板状体1と同じ材料であれば、より好ましい。
【0115】
(乱流形成体)
乱流形成体90は、本実施形態では、
図4、
図9~
図14、
図16~
図18に示すように、内部流路A1に設けられている。また、乱流形成体90は、内部流路A1のうち、副流路A11に設けられている乱流形成部91により形成される。乱流形成部91は、副流路A11を通流する第1ガスを乱流状態に形成する。
【0116】
ここで、本実施形態にいう乱流状態とは、流路内の流体の流れが流路内壁に対して平行ではない乱れた状態であることを言う。そして、乱流状態では、流体は、少なくともその一部が渦を巻いた状態となっている。一方、層流状態とは、乱流状態とは異なり、流路内の流体の流れが流路内壁に対して平行で概ね規則的な流線をもつ。
【0117】
流路内の流動状態はレイノルズ数によって表すこともでき、レイノルズ数が高い場合は乱流であり、低い場合は層流状態である。レイノルズ数(Re)は下記式で定義される。
Re=D×u×ρ/μ
ここで、Dは流路径(m)、u:流体の平均流速(m/sec)、ρ:流体の密度(kg/m3)、μは流体の粘(kg/(m・sec))である。
【0118】
流体が、燃料ガス等の還元性成分ガス、空気等の酸化性成分ガスであることからすると、当該ガスが乱流状態である場合のReは、Re>2800程度であるが、この数値を常時上回ることは、コンパクトな設計をしようとすれば前記流路径Dが小さくなるため困難となる。
【0119】
乱流形成部91は、
図9~
図14、
図16~
図18に示すように、副流路A11において気体通流許容部1Aの下面に隣接して設けられている。ただし、副流路A11を通流する第1ガスを、副流路A11の延びる方向に沿って通流させつつ、乱流状態に形成できればよく、乱流形成部91の配置位置はこれに限定されない。例えば、乱流形成部91は、副流路A11に面する第2板状体2の上面に沿って設けられていてもよい。また、乱流形成部91は、気体通流許容部1Aの下面と、副流路A11に面する第2板状体2の上面との間の中央部に設けられていてもよい。また、第1ガスが副流路A11の延びる方向に沿って通流できるのであれば、乱流形成部91は、副流路A11内に充填される形態で設けられてもよい。
【0120】
乱流形成部91としては、これに限定されないが、
図9~
図14に示すように、第1板状体1の平面に沿って副流路A11に設けられた網状体が挙げられる。網状体を第1ガスが通流することで、第1ガスを乱流状態に形成できる。なお、網状体は、第1ガスを乱流状態に形成できるだけでなく、第1ガスを副流路A11に沿って通流できるように構成されている。
【0121】
網状体としては、例えば、金属メッシュ、エキスパンドメタル、ポーラスメタル(発泡金属)、金属フェルト、パンチングメタル、3Dファブリック等を挙げることができる。エキスパンドメタルは、平板状の金属に切り込みを入れ、引き伸ばす方法で例えば菱形の網目を有するように加工される。ポーラスメタルは、網目を構成する気泡を有し、かさ比重が比較的に小さい金属である。金属フェルトは、金属のファイバーを積層して焼結して形成されており、ファイバー間により網目を有するように加工される。パンチングメタルは、金属の平板にパンチにより穴を形成して網目状に加工される。3Dファブリックは、例えば一対の平板状の網目を有する金属と、これらの間に波形状に編みこまれた金属とにより網目を有するように加工される。
網状体によって第1ガスを乱流状態にできればよく、その形状は特に限定されない。網状体は、例えば平板状である。平板状の網状体は、平板状の板状支持体10に沿うように配置することができる。
【0122】
乱流形成部91としては、これに限定されないが、
図16~
図18に示すように、副流路A11に設けられた粒状体を挙げることができる。第1ガスが粒状体と衝突することで、第1ガスを乱流状態にすることができる。粒状体は、副流路A11内に規則的又は不規則的に配置される。なお、粒状体は、副流路A11内に挿入可能な大きさであるとともに、第1ガスが副流路A11の延びる方向に沿って通流できる大きさである。粒状体は、副流路A11内に充填したり、第2板状体2の上面に固定されてもよい。
【0123】
網状体及び粒状体等により形成される乱流形成部91の材料としては、例えばSUS316やSUS304などのオーステナイト系ステンレス、SUS430などのフェライト系ステンレス、あるいは、ニクロム系の耐熱合金等が用いられる。また、乱流形成部91の材料は板状支持体10の材料と同種類及び同一であってもよい。さらに、平板により形成される場合は金属に限らず、たとえば導電性ガラスなどの導電性の無機材料であっても構わない。粒状体等により形成される場合は、金属、導電性材料のほか、セラミックなどの被導電性材料でも構わない。
【0124】
さらに、乱流形成体90を構成する乱流形成部91の材料としては、電子伝導性、耐熱性、耐酸化性および耐腐食性に優れた材料が用いることができる。例えば、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、ニッケル基合金などが用いられる。特に、クロムを含む合金が好適に用いられる。本実施形態では、第1板状体1は、Crを18質量%以上25質量%以下含有するFe-Cr系合金を用いているが、Mnを0.05質量%以上含有するFe-Cr系合金、Tiを0.15質量%以上1.0質量%以下含有するFe-Cr系合金、Zrを0.15質量%以上1.0質量%以下含有するFe-Cr系合金、TiおよびZrを含有しTiとZrとの合計の含有量が0.15質量%以上1.0質量%以下であるFe-Cr系合金、Cuを0.10質量%以上1.0質量%以下含有するFe-Cr系合金であると特に好適である。
【0125】
上記特徴構成によれば、第1板状体1と第2板状体2との間の副流路A11を第1ガスが通流する。副流路A11には第1ガスの乱流状態を形成する乱流形成部91が設けられているため、第1ガスは副流路A11内において乱流状態となり易い。乱流状態では、流体は、少なくともその一部が渦を巻いた状態で流路内を通流する。よって、乱流状態の流体は、流路内を主にその流路方向に沿って通流するとともに、流路方向とは異なる方向にも流れようとする。そのため、第1ガスは、副流路A11内を、副流路A11を形成する第1板状体1の平面及び第2板状体2の平面に沿って進むとともに、第1板状体1に形成された気体通流許容部1Aを副流路A11から外側に亘って透過し易くなる。これにより、板状支持体10の外面に形成された電気化学反応部3への第1ガスの供給効率が向上し、電気化学反応部3での電気化学反応が促進され、発電効率が向上される。
【0126】
特に、電気化学素子Aの小型化に伴い、副流路A11を形成する第1板状体1と第2板状体2との間が狭まって偏平となり、第1ガスが板状支持体10の平面に沿って進む層流状態となる場合があるが、乱流形成部91の存在によって第1ガスが乱流状態となり易い。また、電気化学反応部3を備える電気化学素子Aの発電出力を低下させる場合には、副流路A11への第1ガスの供給量が少なく調整される。このように副流路A11内を通流する第1ガスが少ない場合、第1ガスは板状支持体10の平面に沿って進む層流状態となる場合がある。しかし、乱流形成部91の存在によって第1ガスが乱流状態となり易い。よって、第1ガスが副流路A11から気体通流許容部1Aを介して電気化学反応部3へ供給される効率が向上される。
【0127】
(電気化学反応部)
【0128】
(電極層)
電極層31は、
図9~
図14に示すように、第1板状体1の表側の面であって貫通孔11が設けられた領域より大きな領域に、薄層の状態で設けることができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは、5μm~50μmとすることができる。このような厚さにすると、高価な電極層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な電極性能を確保することが可能となる。貫通孔11が設けられた領域の全体が、電極層31に覆われている。つまり、貫通孔11は第1板状体1における電極層31が形成された領域の内側に形成されている。換言すれば、全ての貫通孔11が電極層31に面して設けられている。
【0129】
電極層31は、気体透過性を持たせるため、その内部および表面に複数の細孔を有する。
【0130】
すなわち電極層31は、多孔質な層として形成される。電極層31は、例えば、その緻密度が30%以上80%未満となるように形成される。細孔のサイズは、電気化学反応を行う際に円滑な反応が進行するのに適したサイズを適宜選ぶことができる。なお緻密度とは、層を構成する材料の空間に占める割合であって、(1-空孔率)と表すことができ、また、相対密度と同等である。
【0131】
電極層31の材料としては、例えばNiO-GDC、Ni-GDC、NiO-YSZ、Ni-YSZ、CuO-CeO2、Cu-CeO2などの複合材を用いることができる。これらの例では、GDC、YSZ、CeO2を複合材の骨材と呼ぶことができる。なお、電極層31は、低温焼成法(例えば1100℃より高い高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法やパルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能なプロセスにより、例えば1100℃より高い高温域での焼成を用いずに、良好な電極層31が得られる。そのため、第1板状体1を傷めることなく、また、第1板状体1と電極層31との元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子Aを実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
【0132】
(中間層)
中間層34は、電極層31を覆った状態で、電極層31の上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは2μm~50μm程度、より好ましくは4μm~25μm程度とすることができる。
このような厚さにすると、高価な中間層34の材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な性能を確保することが可能となる。中間層34の材料としては、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリニウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)等を用いることができる。特にセリア系のセラミックスが好適に用いられる。
【0133】
中間層34は、低温焼成法(例えば1100℃より高い高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能な成膜プロセスにより、例えば1100℃より高い高温域での焼成を用いずに中間層34が得られる。そのため、第1板状体1を傷めることなく、第1板状体1と電極層31との元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子Aを実現できる。また、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
【0134】
中間層34としては、酸素イオン(酸化物イオン)伝導性を有することが好ましい。また、酸素イオン(酸化物イオン)と電子との混合伝導性を有すると更に好ましい。これらの性質を有する中間層34は、電気化学素子Aへの適用に適している。
【0135】
(電解質層)
図9~
図14に示すように、電解質層32は、電極層31および中間層34を覆った状態で、前記中間層34の上に薄層の状態で形成される。また、厚さが10μm以下の薄膜の状態で形成することもできる。詳しくは、電解質層32は、中間層34の上と第1板状体1の上とにわたって(跨って)設けられる。このように構成し、電解質層32を第1板状体1に接合することで、電気化学素子全体として堅牢性に優れたものとすることができる。
【0136】
また電解質層32は、
図9に示すように、第1板状体1の表側の面であって貫通孔11が設けられた領域より大きな領域に設けられる。つまり、貫通孔11は第1板状体1における電解質層32が形成された領域の内側に形成されている。
【0137】
また電解質層32の周囲においては、電極層31および前記中間層(図示せず)からのガスのリークを抑制することができる。説明すると、電気化学素子AをSOFCの構成要素として用いる場合、SOFCの作動時には、第1板状体1の裏側から貫通孔11を通じて電極層31へガスが供給される。電解質層32が第1板状体1に接している部位においては、ガスケット等の別部材を設けることなく、ガスのリークを抑制することができる。なお、本実施形態では電解質層32によって電極層31の周囲をすべて覆っているが、電極層31および前記中間層34の上部に電解質層32を設け、周囲にガスケット等を設ける構成としてもよい。
【0138】
電解質層32の材料としては、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリニウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)、LSGM(ストロンチウム・マグネシウム添加ランタンガレート)等の酸素イオンを伝導する電解質材料や、ペロブスカイト型酸化物等の水素イオンを伝導する電解質材料を用いることができる。特にジルコニア系のセラミックスが好適に用いられる。電解質層32をジルコニア系セラミックスとすると、電気化学素子Aを用いたSOFCの稼働温度をセリア系セラミックスや種々の水素イオン伝導性材料に比べて高くすることができる。例えば電気化学素子AをSOFCに用いる場合、電解質層32の材料としてYSZのような650℃程度以上の高温域でも高い電解質性能を発揮できる材料を用い、システムの原燃料に都市ガスやLPG等の炭化水素系の原燃料を用い、原燃料を水蒸気改質等によってSOFCのアノードガスとするシステム構成とすると、SOFCのセルスタックで生じる熱を原燃料ガスの改質に用いる高効率なSOFCシステムを構築することができる。
【0139】
電解質層32は、低温焼成法(例えば1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD(化学気相成長)法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能な成膜プロセスにより、例えば1100℃を越える高温域での焼成を用いずに、緻密で気密性およびガスバリア性の高い電解質層32が得られる。そのため、第1板状体1の損傷を抑制し、また、第1板状体1と電極層31との元素相互拡散を抑制することができ、性能・耐久性に優れた電気化学素子Aを実現できる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、スプレーコーティング法を用いると、緻密で気密性およびガスバリア性の高い電解質層が低温域で容易に得られやすいので更に好ましい。
【0140】
電解質層32は、アノードガスやカソードガスのガスリークを遮蔽し、かつ、高いイオン伝導性を発現するために、緻密に構成される。電解質層32の緻密度は90%以上が好ましく、95%以上であるとより好ましく、98%以上であると更に好ましい。電解質層32は、均一な層である場合は、その緻密度が95%以上であると好ましく、98%以上であるとより好ましい。また、電解質層32が、複数の層状に構成されているような場合は、そのうちの少なくとも一部が、緻密度が98%以上である層(緻密電解質層)を含んでいると好ましく、99%以上である層(緻密電解質層)を含んでいるとより好ましい。このような緻密電解質層が電解質層の一部に含まれていると、電解質層が複数の層状に構成されている場合であっても、緻密で気密性およびガスバリア性の高い電解質層を形成しやすくできるからである。
【0141】
(反応防止層)
反応防止層35は、電解質層32の上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは2μm~50μm程度、より好ましくは3μm~15μm程度とすることができる。このような厚さにすると、高価な反応防止層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な性能を確保することが可能となる。前記反応防止層の材料としては、電解質層32の成分と対極電極層33の成分との間の反応を防止できる材料であれば良いが、例えばセリア系材料等が用いられる。また反応防止層35の材料として、Sm、GdおよびYからなる群から選ばれる元素のうち少なくとも1つを含有する材料が好適に用いられる。なお、Sm、GdおよびYからなる群から選ばれる元素のうち少なくとも1つを含有し、これら元素の含有率の合計が1.0質量%以上10質量%以下であるとよい。反応防止層35を電解質層32と対極電極層33との間に導入することにより、対極電極層33の構成材料と電解質層32の構成材料との反応が効果的に抑制され、電気化学素子Aの性能の長期安定性を向上できる。反応防止層35の形成は、1100℃以下の処理温度で形成できる方法を適宜用いて行うと、第1板状体1の損傷を抑制し、また、第1板状体1と電極層31との元素相互拡散を抑制でき、性能・耐久性に優れた電気化学素子Aを実現できるので好ましい。例えば、低温焼成法(例えば1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などを適宜用いて行うことができる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
【0142】
(対極電極層)
図9~
図14に示すように、対極電極層33を、電解質層32もしくは反応防止層35の上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは、5μm~50μmとすることができる。このような厚さにすると、高価な対極電極層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な電極性能を確保することが可能となる。対極電極層33の材料としては、例えば、LSCF、LSM等の複合酸化物、セリア系酸化物およびこれらの混合物を用いることができる。特に対極電極層33が、La、Sr、Sm、Mn、CoおよびFeからなる群から選ばれる2種類以上の元素を含有するペロブスカイト型酸化物を含むことが好ましい。以上の材料を用いて構成される対極電極層33は、カソードとして機能する。
【0143】
なお、対極電極層33の形成は、1100℃以下の処理温度で形成できる方法を適宜用いて行うと、第1板状体1の損傷を抑制し、また、第1板状体1と電極層31との元素相互拡散を抑制でき、性能・耐久性に優れた電気化学素子Aを実現できるので好ましい。例えば、低温焼成法(例えば1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PDV法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などを適宜用いて行うことができる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
【0144】
このような電気化学反応部3を構成することで、電気化学反応部3を燃料電池(電気化学発電セル)として機能させる場合には、電気化学素子Aを固体酸化物形燃料電池の発電セルとして用いることができる。例えば、第1板状体1の裏側の面から貫通孔11を通じて第1ガスとしての水素を含む燃料ガスを電極層31へ供給し、電極層31の対極となる対極電極層33へ第2ガスとしての空気を供給し、例えば700℃程度の作動温度に維持する。そうすると、対極電極層33において空気に含まれる酸素O2が電子e-と反応して酸素イオンO2-が生成される。その酸素イオンO2-が電解質層32を通って電極層31へ移動する。電極層31においては、供給された燃料ガスに含まれる水素H2が酸素イオンO2-と反応し、水H2Oと電子e-が生成される。
電解質層32に水素イオンを伝導する電解質材料を用いた場合には、電極層31において流通された燃料ガスに含まれる水素H2が電子e-を放出して水素イオンH+が生成される。その水素イオンH+が電解質層32を通って対極電極層33へ移動する。対極電極層33において空気に含まれる酸素O2と水素イオンH+、電子e-が反応し水H2Oが生成される。
以上の反応により、電極層31と対極電極層33との間に電気化学出力として起電力が発生する。この場合、電極層31は燃料電池の燃料極(アノード)として機能し、対極電極層33は空気極(カソード)として機能する。
【0145】
また、
図9~
図13にて省略したが、
図14に示すように、本実施の形態では、電気化学反応部3は電極層31と電解質層32との間に中間層34を備える。さらに、電解質層32と対極電極層33との間には反応防止層35が設けられる。
【0146】
(乱流形成体を備える電気化学素子Aの評価)
本実施形態の乱流形成体90を備える1つの電気化学素子Aにおいて、発電効率を評価した。比較例としては、乱流形成体90を備えない1つの電気化学素子を用いた。
【0147】
本実施形態の電気化学素子A及び比較例の電気化学素子ともに、18Wの発電出力で1つの電気化学素子を作動させた。比較例の乱流形成体90を備えない1つの電気化学素子では、燃料利用率が72.5%であった。一方、本実施形態の乱流形成体90を備える1つの電気化学素子Aでは、燃料利用率が80.0%であった。
【0148】
なお、燃料利用率は、電気化学素子に供給された燃料ガスに対して、電気化学素子での電気化学反応による発電によって消費された燃料ガスの割合から算出した。
【0149】
以上のとおり、乱流形成体90を備える本実施形態の電気化学素子Aでは、乱流形成体90を備えない比較例の電気化学素子に比べて燃料利用率が向上している。これは、内部流路を通流する燃料ガスが、内部流路A1の副流路A11から、気体通流許容部1Aを介して電気化学反応部3へ供給できているからと考えられる。よって、乱流形成体90を備えことで、電気化学素子での電気化学反応による発電効率を1割以上(10.3%)向上できた。
【0150】
(電気化学反応部の製造方法)
次に、電気化学反応部3の製造方法について説明する。尚、
図9~
図13においては、下記中間層34及び反応防止層35を省略した記述としているので、ここでは、主に
図14を用いて説明する。
【0151】
(電極層形成ステップ)
電極層形成ステップでは、第1板状体1の表側の面の貫通孔11が設けられた領域より広い領域に電極層31が薄膜の状態で形成される。第1板状体1の貫通孔11はレーザー加工等によって設けることができる。電極層31の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、第1板状体1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
【0152】
電極層形成ステップを低温焼成法で行う場合には、具体的には以下の例のように行う。まず電極層31の材料粉末と溶媒(分散媒)とを混合して材料ペーストを作成し、第1板状体1の表側の面に塗布し、800℃~1100℃で焼成する。
【0153】
(拡散抑制層形成ステップ)
上述した電極層形成ステップにおける焼成工程時に、第1板状体1の表面に金属酸化物層12(拡散抑制層)が形成される。なお、上記焼成工程に、焼成雰囲気を酸素分圧が低い雰囲気条件とする焼成工程が含まれていると元素の相互拡散抑制効果が高く、抵抗値の低い良質な金属酸化物層12(拡散抑制層)が形成されるので好ましい。電極層形成ステップを、焼成を行わないコーティング方法とする場合を含め、別途の拡散抑制層形成ステップを含めても良い。いずれにおいても、第1板状体1の損傷を抑制可能な1100℃以下の処理温度で実施することが望ましい。
【0154】
(中間層形成ステップ)
中間層形成ステップでは、電極層31を覆う形態で、電極層31の上に中間層34が薄層の状態で形成される。中間層34の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、第1板状体1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
【0155】
中間層形成ステップを低温焼成法で行う場合には、具体的には以下の例のように行う。
【0156】
まず、中間層34の材料粉末と溶媒(分散媒)とを混合して材料ペーストを作成し、第1板状体1の表側の面に塗布する。そして中間層34を圧縮成形し(中間層平滑化工程)、1100℃以下で焼成する(中間層焼成工程)。中間層34の圧延は、例えば、CIP(Cold Isostatic Pressing 、冷間静水圧加圧)成形、ロール加圧成形、RIP(Rubber Isostatic Pressing)成形などにより行うことができる。また、中間層34の焼成は、800℃以上1100℃以下の温度で行うと好適である。このような温度であると、第1板状体1の損傷・劣化を抑制しつつ、強度の高い中間層34を形成できるためである。また、中間層34の焼成を1050℃以下で行うとより好ましく、1000℃以下で行うと更に好ましい。これは、中間層34の焼成温度を低下させる程に、第1板状体1の損傷・劣化をより抑制しつつ、電気化学素子Aを形成できるからである。また、中間層平滑化工程と中間層焼成工程の順序を入れ替えることもできる。
【0157】
なお、中間層平滑化工程は、ラップ成形やレベリング処理、表面の切削・研磨処理などを施すことによって行うことでもできる。
【0158】
(電解質層形成ステップ)
電解質層形成ステップでは、電極層31および中間層34を覆った状態で、電解質層32が中間層34の上に薄層の状態で形成される。また、厚さが10μm以下の薄膜の状態で形成されても良い。電解質層32の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、第1板状体1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
【0159】
緻密で気密性およびガスバリア性能の高い、良質な電解質層32を1100℃以下の温度域で形成するためには、電解質層形成ステップをスプレーコーティング法で行うことが望ましい。その場合、電解質層32の材料を第1板状体1上の中間層34に向けて噴射し、電解質層32を形成する。
【0160】
(反応防止層形成ステップ)
反応防止層形成ステップでは、反応防止層35が電解質層32の上に薄層の状態で形成される。反応防止層35の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、第1板状体1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。なお反応防止層35の上側の面を平坦にするために、例えば反応防止層35の形成後にレベリング処理や表面を切削・研磨処理を施したり、湿式形成後焼成前に、プレス加工を施してもよい。
【0161】
(対極電極層形成ステップ)
対極電極層形成ステップでは、対極電極層33が反応防止層35の上に薄層の状態で形成される。対極電極層33の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、第1板状体1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
【0162】
以上の様にして、電気化学反応部3を製造することができる。
【0163】
なお電気化学反応部3において、中間層34と反応防止層35とは、何れか一方、あるいは両方を備えない形態とすることも可能である。すなわち、電極層31と電解質層32とが接触して形成される形態、あるいは電解質層32と対極電極層33とが接触して形成される形態も可能である。この場合に上述の製造方法では、中間層形成ステップ、反応防止層形成ステップが省略される。なお、他の層を形成するステップを追加したり、同種の層を複数積層したりすることも可能であるが、いずれの場合であっても、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
【0164】
(電気化学素子積層体)
図4に示すように、電気化学素子積層体Sは、複数の電気化学素子Aが所定の積層方向に積層されて構成されている。隣接する電気化学素子Aに関して、一つの電気化学素子A(第1電気化学素子A)を構成する板状支持体10と、他の一つの電気化学素子A(第2電気化学素子A)を構成する板状支持体10とが対向する形態で配置されている。
【0165】
例えば、一つの電気化学素子A(第1電気化学素子A)は、電気化学反応部3が配置される第1板状体1と第2板状体2とを有する板状支持体10を備えている。同様に、第1電気化学素子Aの下方向(第1方向)及び上方向(第2方向)に隣接する第2電気化学素子Aの板状支持体10は、電気化学反応部3が配置される第1板状体1と第2板状体2とを有する板状支持体10を備えている。
【0166】
第1電気化学素子Aの第2板状体2の外面と、上方向に隣接する第2電気化学素子Aの第1板状体1の外面とが電気的に接続される。また、第1電気化学素子Aの第2板状体2の外面と上方向に隣接する第2電気化学素子Aの第1板状体1の外面との間に、当該両外面に沿って第2ガスが通流する通流部A2が形成される。
【0167】
また、第1電気化学素子Aの第1板状体1の外面と、下方向に隣接する第2電気化学素子Aの第2板状体2の外面とが電気的に接続される。また、第1電気化学素子Aの第1板状体1の外面と下方向に隣接する第2電気化学素子Aの第2板状体2の外面との間に、当該両外面に沿って第1ガスが通流する副流路A11(内部流路A1の一部)が形成される。
電気的に接続させるためには、電気伝導性表面部同士を単純に接触させる他、接触面に面圧を印可したり、高電気伝導性の材料を介在させて接触抵抗を下げる方法などが採用可能である。
【0168】
この副流路A11には、上述の通り乱流形成部91が設けられている。
【0169】
このような複数の電気化学素子Aが積層配置されている。具体的には、長方形状の各電気化学素子が一端部の第1貫通部41と他端部の第2貫通部51とを揃えた状態で、それぞれの電気化学素子の電気化学反応部が上向きになる状態で整列されて積層される。そして、各第1貫通部41どうしの間に第1環状シール部42が介在し、第2貫通部51どうしの間に第2環状シール部52が介在している。
【0170】
板状支持体10には、表面貫通方向外方から内部流路A1に還元性成分ガス及び酸化性成分ガスのうちの一方である第1ガスを供給する供給路4を形成する第1貫通部41が、長方形状の板状支持体10の長手方向一端部側に備えられている。通流部A2内において、板状支持体10の両外面に夫々形成される第1貫通部41が、通流部A2と区画する環状シール部としての第1環状シール部42を備えている。また、第1貫通部41及び第1環状シール部42により、第1ガスを内部流路A1に供給する供給路4が形成される。尚、第1板状体1における第1環状シール部42の接当する部位の周囲には第1板状体1における前記内部流路A1とは反対側面に環状の膨出部aを設けており、第1環状シール部42の第1板状体1の面に沿う方向での位置決めを容易にしてある。
【0171】
また、板状支持体10には、内部流路A1を通流した第1ガスを板状支持体10の表面貫通方向外方へ排出する排出路5を形成する第2貫通部51が他端部側に備えられている。第2貫通部51は、第2ガスと区画された状態で第1ガスを通流させる構成である。第2貫通部51は、通流部A2内において、板状支持体10の両外面に夫々形成される第2貫通部51を通流部A2と区画する環状シール部としての第2環状シール部52を備えている。第2貫通部51及び第2環状シール部52により、内部流路A1を通流した第1ガスを排出する排出路5が形成される。
【0172】
第1、第2環状シール部42,52は、アルミナなどのセラミクスア材料や、マイカ、もしくはこれらを被覆した金属等の絶縁性材料からなり、隣接する電気化学素子どうしを電気的に絶縁する絶縁シール部として機能する。
【0173】
(6)エネルギーシステム、電気化学装置
次に、エネルギーシステム、電気化学装置について
図15を用いて説明する。
【0174】
エネルギーシステムZは、電気化学装置100と、電気化学装置100から排出される熱を再利用する排熱利用部としての熱交換器190とを有する。
【0175】
電気化学装置100は、電気化学モジュールMと、脱硫器101と改質器102からなる燃料変換器を有し、電気化学モジュールMに対して還元性成分を含有する燃料ガスを供給する燃料供給部103と、電気化学モジュールMから電力を取り出す出力部8としてのインバータ(電力変換器の一例)104とを有する。
【0176】
詳しくは電気化学装置100は、脱硫器101、改質水タンク105、気化器106、改質器102、ブロア107、燃焼部108、インバータ104、制御部110、および電気化学モジュールMを有する。
【0177】
脱硫器101は、都市ガス等の炭化水素系の原燃料に含まれる硫黄化合物成分を除去(脱硫)する。原燃料中に硫黄化合物が含有される場合、脱硫器101を備えることにより、硫黄化合物による改質器102あるいは電気化学素子Aに対する悪影響を抑制することができる。気化器106は、改質水タンク105から供給される改質水から水蒸気を生成する。改質器102は、気化器106にて生成された水蒸気を用いて脱硫器101にて脱硫された原燃料を水蒸気改質して、水素を含む改質ガスを生成する。
【0178】
電気化学モジュールMは、改質器102から供給された改質ガスと、ブロア107から供給された空気とを用いて、電気化学反応させて発電する。燃焼部108は、電気化学モジュールMから排出される反応排ガスと空気とを混合させて、反応排ガス中の可燃成分を燃焼させる。
【0179】
インバータ104は、電気化学モジュールMの出力電力を調整して、商用系統(図示省略)から受電する電気と同じ電圧および同じ周波数にする。制御部110は電気化学装置100およびエネルギーシステムZの運転を制御する。
【0180】
改質器102は、燃焼部108での反応排ガスの燃焼により発生する燃焼熱を用いて原燃料の改質処理を行う。
【0181】
原燃料は、昇圧ポンプ111の作動により原燃料供給路112を通して脱硫器101に供給される。改質水タンク105の改質水は、改質水ポンプ113の作動により改質水供給路114を通して気化器106に供給される。そして、原燃料供給路112は脱硫器101よりも下流側の部位で、改質水供給路114に合流されており、容器200外にて合流された改質水と原燃料とが気化器106に供給される。
【0182】
改質水は気化器106にて気化され水蒸気となる。気化器106にて生成された水蒸気を含む原燃料は、水蒸気含有原燃料供給路115を通して改質器102に供給される。改質器102にて原燃料が水蒸気改質され、水素ガスを主成分とする改質ガス(還元性成分を有する第1ガス)が生成される。改質器102にて生成された改質ガスは、燃料供給部103を通して電気化学モジュールMに供給される。
【0183】
反応排ガスは燃焼部108で燃焼され、燃焼排ガスとなって燃焼排ガス排出路116から熱交換器190に送られる。燃焼排ガス排出路116には燃焼触媒部117(例えば、白金系触媒)が配置され、燃焼排ガスに含有される一酸化炭素や水素等の還元性成分を燃焼除去される。
【0184】
熱交換器190は、燃焼部108における燃焼で生じた燃焼排ガスと、供給される冷水とを熱交換させ、温水を生成する。すなわち熱交換器190は、電気化学装置100から排出される熱を再利用する排熱利用部として動作する。
【0185】
なお、排熱利用部の代わりに、電気化学モジュールMから(燃焼されずに)排出される反応排ガスを利用する反応排ガス利用部を設けてもよい。また、第1ガス排出部62より容器200外に流通される反応排ガスの少なくとも一部を
図15中の100,101,103,106,112,113,115の何れかの部位に合流させリサイクルしても良い。反応排ガスには、電気化学素子Aにて反応に用いられなかった残余の水素ガスが含まれる。反応排ガス利用部では、残余の水素ガスを利用して、燃焼による熱利用や、燃料電池等による発電が行われ、エネルギーの有効利用がなされる。
【0186】
〔他の実施形態〕
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0187】
(1)上記実施形態では、内部流路A1に乱流形成体90、より具体的には副流路A11に乱流形成部91が設けられている。しかし、乱流形成体90は、通流部A2に設けられていてもよい。通流部A2に乱流形成体90が設けられることで、通流部A2を流れる第2ガスを乱流状態とし、電極層31との接触時間を長くすることができる。
【0188】
乱流形成体90の配置の態様としては、乱流形成体90が副流路A11にのみ設けられている場合、乱流形成体90が通流部A2にのみ設けられている場合、乱流形成体90が副流路A11及び通流部A2の両方に設けられている場合が挙げられる。
【0189】
(2)上記の実施形態では、電気化学素子Aを電気化学装置100としての固体酸化物形燃料電池に用いたが、電気化学素子Aは、固体酸化物形電解セルや、固体酸化物を利用した酸素センサ等に利用することもできる。また、電気化学素子Aは、電気化学素子積層体Sや電気化学モジュールMとして複数組み合わせて用いるのに限らず、単独で用いることも可能である。
すなわち、上記の実施形態では、燃料等の化学的エネルギーを電気エネルギーに変換する効率を向上できる構成について説明した。
つまり、上記の実施形態では、電気化学素子A及び電気化学モジュールMを燃料電池として動作させ、電極層31に水素ガスが流通され、対極電極層33に酸素ガスが流通される。そうすると、対極電極層33において酸素分子O
2が電子e
-と反応して酸素イオンO
2-が生成される。その酸素イオンO
2-が電解質層32を通って電極層31へ移動する。電極層31においては、水素分子H
2が酸素イオンO
2-と反応し、水H
2Oと電子e
-が生成される。以上の反応により、電極層31と対極電極層33との間に起電力が発生し、発電が行われる。
一方、電気化学素子A及び電気化学モジュールMを電解セルとして動作させる場合は、電極層31に水蒸気や二酸化炭素を含有するガスが流通され、電極層31と対極電極層33との間に電圧が印加される。そうすると、電極層31において電子e
-と水分子H
2O、二酸化炭素分子CO
2が反応し水素分子H
2や一酸化炭素COと酸素イオンO
2-となる。酸素イオンO
2-は電解質層32を通って対極電極層33へ移動する。対極電極層33において酸素イオンO
2-が電子を放出して酸素分子O
2となる。以上の反応により、水分子H
2Oが水素H
2と酸素O
2とに、二酸化炭素分子CO
2を含有するガスが流通される場合は一酸化炭素COと酸素O
2とに電気分解される。
水蒸気と二酸化炭素分子CO
2を含有するガスが流通される場合は上記電気分解により電気化学素子A及び電気化学モジュールMで生成した水素及び一酸化炭素等から炭化水素などの種々の化合物などを合成する燃料変換器25(
図20)を設けることができる。燃料供給部(図示せず)により、この燃料変換器25が生成した炭化水素等を電気化学素子A及び電気化学モジュールMに流通したり、本システム・装置外に取り出して別途燃料や化学原料として利用することができる。
【0190】
図20には、電気化学反応部3を電解セルとして動作させる場合のエネルギーシステムZおよび電気化学装置100の一例が示されている。本システムでは供給された水と二酸化炭素が電気化学反応部3において電気分解され、水素及び一酸化炭素等を生成する。更に燃料変換器25において炭化水素などが合成される。
図20の熱交換器24を、燃料変換器25で起きる反応によって生ずる反応熱と水とを熱交換させ気化させる排熱利用部として動作させるとともに、
図20中の熱交換器23を、電気化学素子Aによって生ずる排熱と水蒸気および二酸化炭素とを熱交換させ予熱する排熱利用部として動作させる構成とすることにより、エネルギー効率を高めることが出来る。
また、電力変換器93は、電気化学素子Aに電力を流通する。これにより、上記のように電気化学素子Aは電解セルとして作用する。
よって、上記構成によれば、電気エネルギーを燃料等の化学的エネルギーに変換する効率を向上できる電気化学装置100及びエネルギーシステムZ等を提供することができる。
【0191】
(3)上記の実施形態では、電極層31の材料として例えばNiO-GDC、Ni-GDC、NiO-YSZ、Ni-YSZ、CuO-CeO2、Cu-CeO2などの複合材を用い、対極電極層33の材料として例えばLSCF、LSM等の複合酸化物を用いた。このように構成された電気化学素子Aは、電極層31に水素ガスを供給して燃料極(アノード)とし、対極電極層33に空気を供給して空気極(カソード)とし、固体酸化物形燃料電池セルとして用いることが可能である。この構成を変更して、電極層31を空気極とし、対極電極層33を燃料極とすることが可能なように、電気化学素子Aを構成することも可能である。すなわち、電極層31の材料として例えばLSCF、LSM等の複合酸化物を用い、対極電極層33の材料として例えばNiO-GDC、Ni-GDC、NiO-YSZ、Ni-YSZ、CuO-CeO2、Cu-CeO2などの複合材を用いる。このように構成した電気化学素子Aであれば、電極層31に空気を供給して空気極とし、対極電極層33に水素ガスを供給して燃料極とし、電気化学素子Aを固体酸化物形燃料電池セルとして用いることができる。
【0192】
(4)上述の実施形態では、第1板状体1と電解質層32との間に電極層31を配置し、電解質層32からみて第1板状体1と反対側に対極電極層33を配置した。電極層31と対極電極層33とを逆に配置する構成も可能である。つまり、第1板状体1と電解質層32との間に対極電極層33を配置し、電解質層32からみて第1板状体1と反対側に電極層31を配置する構成も可能である。この場合、電気化学素子Aへの気体の供給についても変更する必要がある。
【0193】
すなわち、電極層31と対極電極層33の順や第1ガス、第2ガスのいずれが還元性成分ガス及び酸化性成分ガスの一方または他方であるかについては、電極層31と対極電極層33に対して第1ガス、第2ガスが適正に反応する形態で供給されるよう配置されていれば、種々形態を採用しうる。
【0194】
(5)また、上述の実施形態では、気体通流許容部1Aを覆って電気化学反応部3を、第1板状体1の第2板状体2とは反対側に設けたが、第1板状体1の第2板状体2側に設けてもよい。すなわち、電気化学反応部3は内部流路A1に配置される構成であっても本発明は成り立つ。
【0195】
(6)上記実施の形態では、第1貫通部41、第2貫通部51を長方形状の板状支持体の両端部に一対設ける形態としたが、両端部に設ける形態に限らず、また、2対以上設ける形態であってもよい。また、第1貫通部41、第2貫通部51は、対で設けられている必要はない。よって、第1貫通部41、第2貫通部51それぞれが、1個以上設けられることができる。
【0196】
さらに、板状支持体は長方形状に限らず、正方形状、円形状等種々形態を採用することができる。
【0197】
(7)上記では、電気化学モジュールMは、絶縁性を有する絶縁体210などの機能層が設けられている。電気化学モジュールMは、上記に示す機能層に加えて、あるいは、代えて別途の機能層を設けてもよい。
【0198】
(8)上記では、下蓋203と上蓋201とは溶接により結合している。しかし、下蓋203と上蓋201との結合は溶接に限られず、例えば、ボルト等により結合されてもよい。
【0199】
(9)また、上記では、上蓋201には開口201cが形成されており、下蓋203には開口203cが形成されている。しかし、開口201c及び開口203cは形成されていなくてもよい。ただし、第1ガス供給部61及び第1ガス排出部62が外部と連通可能な開口は、上蓋201に形成されている。開口201c及び開口203cが設けられていないため、電気化学素子積層体Sは、上蓋201及び下蓋203からなる容器200内に収容された状態で、第1ガス供給部61及び第1ガス排出部62を介して電気化学素子積層体Sに第1ガスが通流され、第2ガス供給部71及び第2ガス排出部72を介して電気化学素子積層体Sに第2ガスが通流される。
【0200】
なお、この場合、第1ガス供給部61に連通して上蓋201から突出する供給用突出部が形成されていてもよい。同様に、第1ガス排出部62に連通して上蓋201から突出する排出用突出部が形成されていてもよい。
【0201】
(10)上記では、容器(第1挟持体、第2挟持体)200により電気化学素子積層体Sを挟持している。しかし電気化学素子積層体Sが挟持できれば、容器200を用いる必要はない。例えば、エンドプレート(第1挟持体、第2挟持体)等で電気化学素子積層体Sを挟持してもよい。
【0202】
(11)第1、第2環状シール部42,52は、第1、第2貫通部41、51どうしを連通させてガスの漏洩を防止できる構成であれば形状は問わない。つまり、第1、第2環状シール部42,52は、内部に貫通部に連通する開口部を有する無端状の構成で、隣接する電気化学素子Aどうしの間をシールする構成あればよい。第1、第2環状シール部42,52は例えば環状である。環状には、円形、楕円形、方形、多角形状等いかなる形状でもよい。
【0203】
(12)上記では、板状支持体10は、第1板状体1及び第2板状体2により構成されている。ここで、第1板状体1と第2板状体2とは、別体の板状体から構成されていてもよいし、
図19に示すように一の板状体から構成されていてもよい。
図19の場合、一の板状体が折り曲げられることで、第1板状体1と第2板状体2とが重ね合される。そして、周縁部1aが溶接等されることで第1板状体1と第2板状体2とが一体化される。なお、第1板状体1と第2板状体2とは一連の継ぎ目のない板状体から構成されていてもよく、一連の板状体が折り曲げられることで
図19のように成型されてもよい。
【0204】
また、後述しているが、第2板状体2が一の部材から構成されていてもよいし、2以上の部材から構成されていてもよい。同様に、第1板状体1が一の部材から構成されていてもよいし、2以上の部材から構成されていてもよい。
【0205】
(13)上記の第2板状体2は、第1板状体1とともに内部流路A1を形成する。内部流路A1は、分配部A12、複数の副流路A11、合流部A13を有している。分配部A12に供給された第1ガスは、
図5に示すように、複数の副流路A11それぞれに分配して供給され、複数の副流路A11の出口で合流部A13において合流する。よって、第1ガスは、分配部A12から合流部A13に向かうガス流れ方向に沿って流れる。
【0206】
複数の副流路A11は、第2板状体2のうち分配部A12から合流部A13以外の部分を波板状に形成することで構成されている。そして、
図9に示すように、複数の副流路A11は、第1ガスのガス流れ方向に交差する流れ交差方向での断面視において波板状に構成されている。このような複数の副流路A11は、
図5に示すガス流れ方向に沿って波板が延びて形成されている。複数の副流路A11は、分配部A12と合流部A13との間で一連の波状の板状体から形成されていてもよいし、2以上の波状の板状体から構成されていてもよい。複数の副流路A11は、例えば、ガス流れ方向に沿う方向に沿って分離した2以上の波状の板状体から構成されていてもよいし、流れ交差方向に沿う方向に沿って分離した2以上の波状の板状体から構成されていてもよい。
【0207】
また、複数の副流路A11は、
図9に示すように同一形状の山及び谷が繰り返し形成されることで波形に構成されている。しかし、第2板状体2は、複数の副流路A11が形成される領域において板状部分を有していてもよい。例えば、複数の副流路A11は、板状部分と突状部分とが交互に形成されることで構成されていてもよい。そして、突状部分を第1ガス等の流体が通流する部分とすることができる。
【0208】
(14)上記の第2板状体2において複数の副流路A11に相当する部分は、全面が波板状に形成されている必要はなく、少なくとも一部が波板状に形成されていればよい。第2板状体2は、例えば、分配部A12と合流部A13との間において、ガス流れ方向の一部が平板状であり、残りが波板状であってもよい。また、第2板状体2は、流れ交差方向の一部が平板状であり、残りが波板状であってもよい。
【0209】
(15)上記の内部流路A1には、発電効率の向上が可能な構造体を設けることができる。このような構成について以下に説明する。上記実施形態と重複する部分は記載を簡略化するか省略する。
【0210】
(I)電気化学モジュールMの具体的構成
次に、
図21~
図38等を用いて、電気化学モジュールMの具体的構成について説明する。電気化学モジュールMには
図4に示す電気化学素子積層体Sが含まれる。
ここで、
図21~
図38等に示すように、電気化学素子積層体Sの積層方向は+Z方向及び-Z方向(Z方向)である。また、第1板状体1及び第2板状体2の間において第1ガスが第1ガス供給部61側から第1ガス排出部62側に通流する方向、同様に第1板状体1及び第2板状体2の間において第2ガスが第2ガス供給部71側から第2ガス排出部72側に通流する方向は、+Z方向及び-Z方向(Z方向)に交差する+X方向及び-X方向(X方向)である。また、+Z方向及び-Z方向(Z方向)及び+X方向及び-X方向(X方向)に交差する方向は、+Y方向及び-Y方向(Y方向)である。そして、XZ平面とXY平面とYZ平面とは互いに概ね直交している。
【0211】
図4及び
図21等に示すように、電気化学モジュールMは、供給路4を介して内部流路A1に第1ガスを供給する第1ガス供給部61と、反応後の第1ガスを排出する第1ガス排出部62と、外部から通流部A2に第2ガスを供給する第2ガス供給部71と、反応後の第2ガスを排出する第2ガス排出部72と、電気化学反応部3における電気化学反応に伴う出力を得る出力部8とを備え、容器200内に、第2ガス供給部71から供給される第2ガスを通流部A2に分配供給する分配室9を備えている。
【0212】
これにより電気化学モジュールMは、第1ガス供給部61から燃料ガス(第1ガスという場合もある)を供給するとともに、第2ガス供給部71から空気(第2ガスという場合もある)を供給することで、
図4、
図21等の破線矢印に示すように燃料ガスが進入し実線矢印に示すように空気が進入する。
【0213】
第1ガス供給部61から供給された燃料ガスは、電気化学素子積層体Sの最上部の電気化学素子Aの第1貫通部41より供給路4に誘導され、第1環状シール部42により区画される供給路4より、すべての電気化学素子Aの内部流路A1に通流する。また第2ガス供給部71から供給された空気は、分配室9に一時流入したのち、各電気化学素子A間に形成される通流部A2に通流する。本実施形態では、燃料ガスが内部流路A1を板状支持体10の平面に沿って通流する通流方向は、+X方向から-X方向に向かう方向である。同様に、空気が通流部A2を板状支持体10の平面に沿って通流する通流方向は、+X方向から-X方向に向かう方向である。
【0214】
ちなみに、第2板状体2(板状支持体10の一部)を基準にすると、波板状の第2板状体2部分が第1板状体1(板状支持体10の一部)から膨出する部分で第1板状体1と第2板状体2との間に内部流路A1が形成されるとともに、隣接する電気化学素子Aの電気化学反応部3に接触して電気接続可能にする。一方、波板状の第2板状体2が第1板状体1と接触する部分が第1板状体1と電気接続し、第2板状体2と隣接する電気化学素子Aの電気化学反応部3との間に通流部A2を形成する。
【0215】
図37等の一部に内部流路A1を含む断面の現れる電気化学素子Aと、通流部A2を含む断面の現れる電気化学素子Aとを便宜的に並べて示す部分があるが、第1ガス供給部61から供給された燃料ガスは、分配部A12に達し(
図21~
図24等参照)、分配部A12を介して一端部側の幅方向に沿って広がって流れ、内部流路A1のうち各副流路A11に達する(
図21~
図24等参照)。
【0216】
ここで、
図21等に示すように、内部流路A1は、分配部A12と、複数の副流路A11と、後述の合流部A13とを有している。また、内部流路A1は、分配部A12と複数の副流路A11との間の供給バッファ部144と、複数の副流路A11と合流部A13との間の排出バッファ部154とを有している。
この内部流路A1は、第1板状体1と第2板状体2とが対向する空間により形成されている。本実施形態では、第1板状体1は平板状であり、後述の気体通流許容部1Aが形成されている。第2板状体2は、積層方向に対して上方向に突出する部分と、下方向に凹む部分とを有している。よって、第1板状体1と第2板状体2とが対向して組み合わされることで、第2板状体2の上方向に突出する部分が第1板状体1と当接する。そして、第2板状体2の下方向に凹む部分と第1板状体1とにより、分配部A12、供給バッファ部144、複数の副流路A11、排出バッファ部154及び合流部A13等の各部が仕切られた空間が形成される。
【0217】
後で詳述するが、燃料ガスの通流方向に沿う方向(+X方向及び-X方向(X方向))において、分配部A12と複数の副流路A11との間に供給構造体140が設けられている。供給構造体140は、分配部A12に燃料ガスを一時的に貯留させ、分配部A12から複数の副流路A11への燃料ガスの供給を制限する。
また、燃料ガスの通流方向に沿う方向において、複数の副流路A11と合流部A13との間に排出構造体150が設けられている。排出構造体150は、複数の副流路A11から合流部A13への燃料ガスの排出を制限する。
【0218】
燃料ガスは、第1ガス供給部61、第1環状シール部42、第1貫通部41等を通流し、各電気化学素子Aの分配部A12に供給される。分配部A12に供給され燃料ガスは、供給構造体140によって分配部A12に一時的に貯留される。その後、燃料ガスは、分配部A12から複数の副流路A11に導入される。
各副流路A11に進入した燃料ガスは、各副流路A11を通流するとともに、気体通流許容部1Aを介して電極層31、電解質層32に進入する。また、燃料ガスは、電気化学反応済みの燃料ガスとともに、さらに副流路A11を進む。複数の副流路A11の通流方向の終端にまで到達した燃料ガスは、排出構造体150により合流部A13への通流が部分的に制限された状態で、合流部A13に進む。合流部A13に進んだ燃料ガスは、合流部A13、第2貫通部51、第2環状シール部52等を通流する。そして、他の電気化学素子Aからの電気化学反応済みの燃料ガスとともに第1ガス排出部62より外に排出される。
【0219】
一方、第2ガス供給部71から供給された空気は、分配室9を介して通流部A2に進入し、対極電極層33、電解質層32に進入できる。また、空気は、電気化学反応済みの空気とともに、さらに電気化学反応部3に沿って通流部A2を進み第2ガス排出部72より外に排出される。
【0220】
この燃料ガス及び空気の流れに従って電気化学反応部3で生じた電力は、隣接する電気化学素子Aの電気化学反応部3と第2板状体2との接触により集電体81,82どうしの間で直列に接続され、合成出力が出力部8より取り出される形態となる。
電気化学素子積層体Sの構成については、後で詳述する。
【0221】
(II)内部流路及び第2板状体の構成
第1板状体1と第2板状体2とが対向して形成される内部流路A1の構成についてさらに説明する。
本実施形態では、平板状の第1板状体1と、積層方向に沿って上方(+Z方向)に突出するように、あるいは、積層方向に沿って下方(-Z方向)に凹むように凹凸に形成された第2板状体2とが互いに対向して組み合わされた内面に内部流路A1が形成される。内部流路A1には、分配部A12、供給バッファ部144、複数の副流路A11、排出バッファ部154及び合流部A13が含まれる。また、内部流路A1には、第1ガスが通過する、供給通過部141(供給構造体140の一部)及び排出通過部151(排出構造体150の一部)も含まれる。
【0222】
なお、第1ガス供給部61、第1環状シール部42、第1貫通部41等が設けられている供給路4側と、第1ガス排出部62、第2環状シール部52、第2貫通部51等が設けられている排出路5側とは対称の構造である。
図22~
図24、
図26~
図29等においては、第1ガス排出部62、第2環状シール部52、第2貫通部51等が設けられている排出路5側の断面図を示している。一方、
図30~
図36等においては、第1ガス供給部61、第1環状シール部42、第1貫通部41等が設けられている供給路4側の断面図を示している。そして、
図22~
図24、
図26~
図29等の排出路5側の断面図では、第1ガスは複数の副流路A11から合流部A13を経て第2貫通部51等に排出される方向に通流する。一方、
図30~
図36等の供給路4側の断面図では、第1ガスは第1貫通部41等を経て分配部A12から複数の副流路A11に供給される方向に通流する。
【0223】
分配部A12は、各電気化学素子Aに対応して設けられている。分配部A12は、供給路4側に設けられており、各電気化学素子Aに第1ガスを供給するためのバッファ部である。また、分配部A12は、第1ガスの通流方向(+X方向から-X方向に向かう方向)において、内部流路A1のうち複数の副流路A11の上流側に設けられている。
図21、
図38等に示すように、分配部A12には、通流方向との交差方向(+Y方向及び-Y方向(Y方向))及び通流方向(+X方向及び-X方向(X方向))の概ね中央部に、第2板状体2を貫通する第1貫通部41が形成されている。第1ガスは、第1ガス供給部61、第1環状シール部42、第1貫通部41等を通流し、各電気化学素子Aの分配部A12に供給される。
【0224】
第1板状体1と第2板状体2とは、
図22~
図36等に示すように、第1板状体1の縁部と第2板状体2の縁部とが周縁部1aにおいて溶接されることで一体化されている。分配部A12は、周縁部1aよりも積層方向の下方(-Z方向)に凹むように第2板状体2を加工することで形成されている。さらに言えば、分配部A12は、供給阻止部142(供給構造体140の一部)において積層方向において位置が異なるように形成されている。つまり、
図33等に示すように、積層方向において、分配部A12の上面は供給阻止部142の上面よりも下方に位置する。そして、供給阻止部142の上面は第1板状体1の下面に当接している。これにより、分配部A12に導入された第1ガスは、積層方向の上方に突出する供給阻止部142により分配部A12からの排出が制限され、凹状に形成された分配部A12に一時的に貯留される。
【0225】
また、分配部A12は、上面視において、
図21等に示すように+Y方向及び-Y方向(Y方向)に長い。そして、分配部A12のY方向の長さは、Y方向に間隔をおいて平行に並んで配置されている複数の副流路A11の領域のY方向の長さに対応している。
【0226】
第1ガスが通流する複数の副流路A11は、
図21~
図38等に示すように、通流方向に沿って、つまり+X方向及び-X方向(X方向)に沿って延びている。そして、複数の副流路A11は、前述の通り、Y方向に間隔をおいて平行に並んで配置されている。第2板状体2は、
図21~
図38等に示すように、複数の副流路A11それぞれを形成する複数の副流路形成部160と、隣接する副流路形成部160の間に設けられ、隣接する副流路A11それぞれを仕切る複数の仕切部161とを有している。
図37等に示すように、副流路形成部160は底面を有する凹状に形成されており、仕切部161の上面は副流路形成部160の底面よりも積層方向の上方に位置している。そして、仕切部161の上面は第1板状体1の下面に当接している。これにより、各副流路A11が分離されており、各副流路A11内それぞれを第1ガスが通流方向に沿って通流する。
【0227】
なお、副流路A11は、
図21等では、供給構造体140の近傍から排出構造体150の近傍まで、通流方向に沿って延びている。しかしこれに限定されず、副流路A11は、供給構造体140の近傍から排出構造体150の近傍までの一部にのみ形成されていてもよい。つまり、副流路A11を形成する副流路形成部160は、供給構造体140の近傍から排出構造体150の近傍までの一部にのみ配置されていてもよい。
【0228】
図37、
図38に示すように、+Y方向及び-Y方向(Y方向、通流方向と交差する交差方向)において、仕切部161の長さL3は副流路形成部160の長さL4より小さい(L3<L4)。L3<L4の場合、
図37等に示すように、仕切部161の上面と第1板状体1の下面との当接面積を小さくできる。つまり、気体通流許容部1Aが形成された第1板状体1に面する副流路A11の空間を大きくでき、副流路A11から電気化学反応部3に向かう第1ガスの量を多くできる。
【0229】
第2板状体2は、
図21、
図30~
図38等に示すように、通流方向に沿う方向(+X方向及び-X方向(X方向))において、分配部A12と複数の副流路A11との間に供給構造体140を有している。供給構造体140は、分配部A12に第1ガスを一時的に貯留させるとともに、分配部A12から複数の副流路A11への第1ガスの供給を制限する。
【0230】
供給構造体140は、複数の供給通過部141及び複数の供給阻止部142を有している。供給通過部141は、第1ガスを分配部A12から複数の副流路A11に通過させる。供給阻止部142は、第1ガスの分配部A12から複数の副流路A11への通過を阻止する。
図32等に示すように、供給阻止部142の上面は供給通過部141の上面よりも積層方向の上方に位置しており、第1板状体1の下面に当接している。よって、分配部A12内の第1ガスは、供給阻止部142によって通流方向への通流が阻止される一方、供給通過部141を介して通流方向に通流し、複数の副流路A11へ流れる。
【0231】
本実施形態では、各供給阻止部142は、例えば
図21、
図38等に示すように概ね長方形状に形成されている。そして、長方形状の各供給阻止部142は、長辺が+Y方向及び-Y方向(Y方向)に沿うようにY方向に沿って配置されている。隣接する供給阻止部142の間に供給通過部141が設けられている。つまり、供給通過部141は、隣接する供給阻止部142の短辺が対向する区間に設けられている。
【0232】
図38に示すように、+Y方向及び-Y方向(Y方向、通流方向と交差する交差方向)において、供給阻止部142の長さL2は供給通過部141の長さL1よりも大きい(L2>L1)。また、供給通過部141の長さL1は、仕切部161の長さL3より小さいのが好ましい(L1<L3)。これにより、分配部A12から供給通過部141を介して押し出された第1ガスを仕切部161の+X方向側の端部に衝突させることでき、後述の供給バッファ部144に一時的に貯留させることができる、
L1とL2との関係は、例えば、分配部A12に単位時間に供給される第1ガスの量、複数の副流路A11に単位時間に供給すべき第1ガスの量、供給阻止部142の数、仕切部161のY方向の長さL3、副流路A11のY方向の長さL4等によって決まる。
【0233】
上述の通り、各副流路A11は各仕切部161によって仕切られている。通流方向(+X方向及び-X方向(X方向))において、供給通過部141には、複数の仕切部161のうちいずれかの仕切部161が対応して配置されている。
また、通流方向において、供給阻止部142には、複数の副流路A11のうち少なくとも1つの副流路A11が対応して配置されている。
【0234】
ここで、第1ガスは、分配部A12から供給通過部141を経て複数の副流路A11に導かれる。上記構成によれば、通流方向において供給通過部141にはいずれかの仕切部161が対応して配置されているため、分配部A12から供給通過部141に押し出された第1ガスは、通流方向に沿って進むことで積層方向の上方に突出している仕切部161に衝突する。仕切部161との衝突によって、第1ガスは通流方向と交差する交差方向に進む。つまり、分配部A12から供給通過部141を経て通流してきた第1ガスは、即座に複数の副流路A11に導入されるのではなく、副流路A11の手前で仕切部161と衝突して交差方向に進む。さらに、交差方向に進んだ第1ガスは、積層方向の上方に突出している供給阻止部142によって分配部A12に戻らず、供給構造体140と複数の副流路A11との間で一時的に貯留される。その後、第1ガスは、分配部A12からの押し出しに沿って、複数の副流路形成部160が形成する複数の副流路A11に導入される。
なお、第1ガスが供給構造体140と複数の副流路A11との間で一時的に貯留される領域が、供給バッファ部144である。
【0235】
本実施形態では、通流方向において、1つの供給通過部141に対応して1つの仕切部161が配置されている。しかし、これに限定されず、1つの供給通過部141に対応して複数の仕切部161が配置されていてもよい。また、1つの供給通過部141に対応して仕切部161が配置されておらず、別の1つの供給通過部141に対応して仕切部161が配置されていてもよい。
【0236】
また、通流方向において、第1貫通部41に対応して供給阻止部142が設けられている。これにより、第1貫通部41から分配部A12に導入された第1ガスが即座に複数の副流路A11に向かうのを抑制できる。よって、分配部A12に第1ガスを一時的に貯留可能である。
【0237】
供給阻止部142の数は、これに限定されないが、例えば2個以上である。また、複数の副流路A11の数に応じて供給阻止部142の数が設定されるのが好ましい。
また、供給阻止部142は、上記では、通流方向の交差方向に一列に配置されている。しかし、第1ガスを分配部A12に一時的に貯留し、複数の副流路A11に概ね均一に第1ガスを供給できるのであれば、この配置に限定されない。例えば、複数の供給阻止部142は、交差方向からずれて配置されてもよい。また、複数の供給阻止部142が交差方向に沿って、あるいは交差方向からずれて配置されてもよい。
また、上記では、供給阻止部142は長方形状である。しかし、分配部A12から複数の副流路A11に均一にガスを供給できるのであれば、供給阻止部142の形状はこれに限定されない。例えば、供給阻止部142は、正方形状、円形状、楕円形状、三角形状など種々の形状に形成されていてもよい。
【0238】
また、これに限定されないが、
図21、
図38等の上記実施形態に示すように、複数の供給阻止部142のうち2つは、分配部A12の+Y方向の端部及び-Y方向の端部に対応する位置にそれぞれ設けられているのが好ましい。第1ガスは、分配部A12の第1貫通部41から分配部A12の空間を広がるように分配部A12に行き亘り、分配部A12の端面に衝突する。よって、分配部A12の端面に衝突した第1ガスは、端面で方向を変えて複数の副流路A11に向かって流れる場合がある。よって、分配部A12の端部に対応する位置に供給阻止部142を設けておくことで、分配部A12から複数の副流路A11に即座に第1ガスが流れ出るのを抑制できる。これにより、後述の通り、分配部A12から各副流路A11に概ね均一に第1ガスを供給できる。
【0239】
次に、合流部A13及び排出構造体150について説明する。合流部A13及び排出構造体150は、それぞれ分配部A12及び供給構造体140と同様の構成である。
合流部A13は、排出路5側に設けられており、複数の副流路A11を通流した第1ガスを排出するためのバッファ部である。合流部A13は、第1ガスの通流方向において、内部流路A1のうち複数の副流路A11の下流側に設けられている。
図21、
図38等に示すように、合流部A13には、通流方向及びその交差方向の概ね中央部に、第2板状体2を貫通する第2貫通部51が形成されている。複数の副流路A11を通過した第1ガスは、合流部A13に導入され、第2貫通部51、第2環状シール部52、第1ガス排出部62等を介して外部に排出される。
【0240】
また、合流部A13は、排出阻止部152(排出構造体150の一部)において積層方向において位置が異なるように形成されている。つまり、
図26等に示すように、積層方向において、合流部A13の上面は排出阻止部152の上面よりも下方に位置する。そして、排出阻止部152の上面は第1板状体1の下面に当接している。これにより、複数の副流路A11から合流部A13に向かった第1ガスは、積層方向の上方に突出した排出阻止部152により合流部A13への排出が制限され、複数の副流路A11に一時的に貯留される。
【0241】
また、合流部A13は、上面視において、
図21等に示すように+Y方向及び-Y方向(Y方向)に長い。そして、合流部A13のY方向の長さは、Y方向に間隔をおいて平行に並んで配置されている複数の副流路A11の領域のY方向の長さに対応している。
【0242】
第2板状体2は、
図21、
図25~
図29、
図38等に示すように、通流方向に沿う方向(+X方向及び-X方向(X方向))において、複数の副流路A11と合流部A13との間に排出構造体150を有している。排出構造体150は、複数の副流路A11から合流部A13への第1ガスの排出を制限する。
【0243】
排出構造体150は、複数の排出通過部151及び複数の排出阻止部152を有している。排出通過部151は、第1ガスを複数の副流路A11から合流部A13に通過させる。排出阻止部152は、第1ガスの複数の副流路A11から合流部A13への通過を阻止する。
図26等に示すように、排出阻止部152の上面は排出通過部151の上面よりも積層方向の上方に位置しており、第1板状体1の下面に当接している。よって、複数の副流路A11内の第1ガスは、排出阻止部152によって通流方向への通流が阻止される一方、排出通過部151を介して通流方向に通流し、合流部A13へ流れる。
【0244】
本実施形態では、排出阻止部152は、供給阻止部142と同様に、例えば
図21、
図38等に示すように概ね長方形状に形成されている。そして、長方形状の各排出阻止部152は、長辺が+Y方向及び-Y方向(Y方向)に沿うようにY方向に沿って配置されている。隣接する排出阻止部152の間に排出通過部151が設けられている。つまり、排出通過部151は、隣接する排出阻止部152の短辺が対向する区間に設けられている。
【0245】
図38に示すように、+Y方向及び-Y方向(Y方向、通流方向と交差する交差方向)において、排出阻止部152の長さL12は排出通過部151の長さL11よりも大きい(L12>L11)。また、排出阻止部152の長さL12は副流路形成部160の長さL4より大きいのが好ましい(L12>L3)。これにより、複数の副流路A11から合流部A13に向かう第1ガスを排出阻止部152に衝突させることでき、後述の排出バッファ部154に一時的に貯留させることができる、
L11とL12との関係は、例えば、複数の副流路A11に単位時間に供給される第1ガスの量、合流部A13から単位時間に排出すべき第1ガスの量、排出阻止部152の数、仕切部161のY方向の長さL3、副流路A11のY方向の長さL4等によって決まる。
【0246】
通流方向において、排出阻止部152には、複数の副流路A11のうち少なくとも1つの副流路A11が対応して配置されている。
また、通流方向において、排出通過部151には、複数の仕切部161のうちいずれかの仕切部161が対応して配置されている。
【0247】
上記構成によれば、複数の副流路A11から押し出された第1ガスは、通流方向に沿って進むことで積層方向の上方に突出している排出阻止部152に衝突する。排出阻止部152との衝突によって、第1ガスは通流方向と交差する交差方向に進む。つまり、複数の副流路A11から通流してきた第1ガスは、即座に合流部A13に導入されるのではなく、合流部A13の手前で排出阻止部152と衝突して交差方向に進む。その後、第1ガスは、複数の副流路A11からの押し出しに沿って、排出通過部151を通過して合流部A13に導入される。
なお、第1ガスが複数の副流路A11と排出構造体150との間で一時的に貯留される領域が、排出バッファ部154である。
【0248】
また、通流方向において、第2貫通部51に対応して排出阻止部152が設けられている。これにより、複数の副流路A11を通流した第1ガスが即座に合流部A13に導入され、第2貫通部51から排出されるのを抑制できる。よって、複数の副流路A11に第1ガスを一時的に貯留可能である。
【0249】
排出通過部151及び排出阻止部152の形状、大きさ、配置、数等は、供給通過部141及び供給阻止部142と同様である。例えば、
図38において、+Y方向及び-Y方向(Y方向、通流方向と交差する交差方向)における、排出阻止部152の長さL12及び排出通過部151の長さL11は、上述の供給阻止部142の長さL1及び供給通過部141の長さL2と同一である。
ただし、排出通過部151及び排出阻止部152の形状、大きさ、配置、数等は、供給通過部141及び供給阻止部142と異ならせてもよい。例えば、排出通過部151の大きさを供給通過部141よりも大きくしてもよい。これにより、分配部A12から複数の副流路A11に第1ガスを供給する際の供給圧よりも、複数の副流路A11から合流部A13への排出圧を小さくしてもよい。分配部A12から複数の副流路A11にある程度の供給圧で第1ガスを供給して複数の副流路A11間での流れ分布を一定にしつつ、第1ガスを排出する際にはスムーズに合流部A13に導入できる。
【0250】
(a)供給構造体及び排出構造体の作用
(a1)供給構造体の作用
次に、供給構造体140の作用について説明する。
上記構成の供給構造体140の供給阻止部142は、分配部A12と複数の副流路A11との間に設けられており、分配部A12から複数の副流路A11への第1ガスの流れの障壁となる。よって、分配部A12から複数の副流路A11に通流する際の第1ガスの圧力損失が高くなり、分配部A12に導入された第1ガスは分配部A12に充満するように行き亘り、一時的に貯留される。そのため、分配部A12内全体が概ね均一な圧力(均圧)となる。つまり、分配部A12と複数の副流路A11それぞれとの差圧が略同一となる。その上で、分配部A12から供給通過部141を介して複数の副流路A11に第1ガスが供給されるため、第1ガスが各副流路A11に概ね均圧な状態で供給される。これにより、各副流路A11間において、通流方向に沿う第1ガスの流れ分布(流速、流量及び圧力等)が概ね均一となる。
また、第1ガスは、分配部A12から複数の副流路A11に分かれて流れる。このように複数の流路に分かれて流れることによる整流作用によっても、第1ガスは、複数の流路が形成されていない内部流路を流れる場合に比べて、流れ分布(流速、流量及び圧力等)が概ね一定となる。
【0251】
以上の通り、各副流路A11間において、通流方向に沿う第1ガスの流れ分布が概ね均一となる。例えば、各副流路A11間において通流方向のある一の位置を見た場合、当該一の位置に交差する交差方向では、各副流路A11の第1ガスの流速、流量及び圧力等が概ね一定である。これにより、電気化学反応部3において、第1ガスが不足する部分と、過剰に第1ガスが通流される部分との差を小さくし、電気化学素子A全体における第1ガスの利用率を向上して電気化学反応の反応効率を向上できる。
【0252】
なお、上記の分配部A12、複数の副流路A11及び供給構造体140等の構成を採用しない場合、各副流路A11における第1ガスの流れ分布が異なり、ある副流路A11では第1ガスの流速が速く、別の副流路A11では第1ガスの流速が遅くなる場合がある。第1ガスの流速が遅い副流路A11では電気化学反応により第1ガスが消費され、第1ガスが不足する。これにより、第1ガスの濃度が低下してしまい、電気化学反応部3の電極層が酸化劣化し、電極性能や機械的強度が低下する恐れがある。一方、第1ガスの流速が速い副流路でA11は第1ガスが電気化学反応において消費される前に排出される。つまり、第1ガスが水素等の燃料ガスである場合には、濃度が高いままの第1ガスが排出され、燃料利用率が低下する。ここで、第1ガスの流速が遅い副流路A11における第1ガスの不足に対して、各副流路A11に供給する第1ガスの供給量を増加させることも考えられる。しかし、この場合、第1ガスの流速が速い副流路A11では、電気化学反応において消費される前に排出される第1ガスの量がさらに増加し、燃料利用率がさらに低下してしまう。これらのことから、各副流路A11での第1ガスの流れ分布が異なる場合には、電気化学反応の反応効率が低下し、発電効率が低下してしまう。
(a2)排出構造体の作用
次に、排出構造体150の作用について説明する。
上記構成によれば、分配部A12から複数の副流路A11に第1ガスを概ね均一な流れ分布で供給するための供給構造体140だけでなく、複数の副流路A11から第1ガスを合流部A13に合流させる部分に排出構造体150が設けられている。複数の副流路A11が供給構造体140と排出構造体150とに挟まれているため、複数の副流路A11内での第1ガスの流れ分布(流速、流量及び圧力等)を概ね均一にしつつ、電気化学反応の反応効率を向上できる。
より具体的に説明すると、上記構成の排出構造体150の排出阻止部152は、複数の副流路A11と合流部A13との間に設けられており、副流路A11から合流部A13への第1ガスの流れの障壁となる。よって、複数の副流路A11から合流部A13に通流する際の第1ガスの圧力損失が高くなる。そのため、複数の副流路A11に導入された第1ガスは、複数の副流路A11から即座に合流部A13に導入されにくく、複数の副流路A11に充満するように行き亘る。これにより、各副流路A11間において、通流方向に沿う第1ガスの流れ分布(流速、流量及び圧力等)を概ね均一にできる。また、第1ガスが複数の副流路A11に充満するように行き亘るため、複数の副流路A11内において電気化学反応が十分に行われる。これらにより、電気化学反応の反応効率を向上できる。
【0253】
(16)上記実施形態において、電気化学装置は、複数の電気化学素子Aを備える電気化学モジュールMを備えている。しかし、上記実施形態の電気化学装置は1つの電気化学素子を備える構成にも適用可能である。
【符号の説明】
【0254】
1 :第1板状体
1A :気体通流許容部
2 :第2板状体
3 :電気化学反応部
9 :分配室
10 :板状支持体
31 :電極層
32 :電解質層
33 :対極電極層
41 :第1貫通部
42 :第1環状シール部
51 :第2貫通部
52 :第2環状シール部
90 :乱流形成体
91 :乱流形成部
100 :電気化学装置
200 :容器
201 :上蓋
203 :下蓋
210 :絶縁体
230 :プレート
A :電気化学素子
A :第1電気化学素子
A :第2電気化学素子
A1 :内部流路
A11 :副流路
A12 :分配部
A13 :合流部
A2 :通流部
M :電気化学モジュール
S :電気化学素子積層体
Z :エネルギーシステム