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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】切削工具、工具ホルダ及び工具固定構造
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/00 20060101AFI20230908BHJP
   B23B 27/00 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
B23B29/00 C
B23B27/00 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019115541
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021000695
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000100827
【氏名又は名称】アイシン機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】小出 好朗
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-043328(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0363243(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0031019(US,A1)
【文献】特開2017-196692(JP,A)
【文献】特開2017-177307(JP,A)
【文献】特開2007-152552(JP,A)
【文献】特開2003-266207(JP,A)
【文献】特開平09-207009(JP,A)
【文献】特開平07-276130(JP,A)
【文献】特開平07-185903(JP,A)
【文献】実開平04-112707(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00-29/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スカイビング加工を行う旋盤の工具ホルダに切削工具を固定する工具固定構造であって、
少なくとも前記工具ホルダと前記切削工具とに設けられ、前記切削工具の刃筋と直交する第1方向を向いた第1作用力を前記切削工具に作用させる締結機構と、
前記工具ホルダに形成され、前記第1方向の一方に向かうに従って互いに接近しかつ前記刃筋と平行な1対のV字内側面を有するV字溝と、
前記切削工具に形成され、前記第1作用力によって前記1対のV字内側面に押し付けられる1対のV字外側面と、を有し、
前記工具ホルダに設けられる前記締結機構は、前記V字溝のうち前記1対のV字内側面の間に挟まれる底面に形成される工具固定構造。
【請求項2】
前記締結機構には、
ボルトと、
前記切削工具を前記第1方向に貫通し、前記ボルトが挿通される締結部品挿通孔と、
前記V字溝の前記底面に形成され、前記ボルトと螺合する螺子孔と、を備えてなる請求項1に記載の工具固定構造。
【請求項3】
前記V字溝は、前記旋盤によって回転駆動されるワークの回転軸と前記工具ホルダの前記ワークに対する送り方向との両方に直交する第2方向に向かって開口し、
前記工具ホルダには、前記V字溝より前記切削工具の送り方向の送り先側で、前記V字溝から離れるに従って前記ワークの回転軸から徐々に離れるように傾斜する切り屑ガイド面が形成されている請求項1又は2に記載の工具固定構造。
【請求項4】
前記切り屑ガイド面は、前記旋盤のうちワークをチャックするチャック部から離れるに従って前記ワークの回転軸から徐々に離れるように傾斜している請求項3に記載の工具固定構造。
【請求項5】
前記切削工具は、前記刃筋と直交する断面形状が左右対称になっている請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の工具固定構造。
【請求項6】
前記切削工具は、90度の回転対称形状になるように4つの刃部を有する請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載の工具固定構造。
【請求項7】
前記切削工具は、前記V字外側面から前記第1方向との平行に近くなる側に屈曲して、前記切削工具の刃先まで平坦に形成された刃先側外側面を有する請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載の工具固定構造。
【請求項8】
スカイビング加工を行う旋盤の工具ホルダに固定される切削工具であって、
刃筋と直交する第1方向に前記切削工具を貫通し、前記工具ホルダに前記切削工具を締結するためのボルトその他の締結部品が挿通される締結部品挿通孔と、
前記締結部品挿通孔を間に挟んだ両側に配置され、前記第1方向で前記切削工具の刃先から離れるに従って互いに接近しかつ前記刃筋と平行な1対のV字外側面と、を有する切削工具。
【請求項9】
前記刃筋と直交する断面形状が左右対称になっている請求項8に記載の切削工具。
【請求項10】
90度の回転対称形状になるように4つの刃部を有する請求項8又は9に記載の切削工具。
【請求項11】
前記V字外側面から前記第1方向との平行に近くなる側に屈曲して、前記刃先まで平坦に形成された刃先側外側面を有する請求項8乃至10の何れか1の請求項に記載の切削工具。
【請求項12】
スカイビング加工を行う旋盤の切削工具を保持する工具ホルダであって、
前記切削工具を、その刃筋と直交する第1方向に貫通するボルトと、
前記ボルトが螺合する螺子孔と、
前記第1方向の一方に向かうに従って互いに接近しかつ前記刃筋と平行な1対のV字内側面を有するV字溝と、を備え
前記1対のV字内側面は、前記螺子孔を間に挟んだ両側に配置される工具ホルダ。
【請求項13】
前記V字溝は、前記旋盤によって回転駆動されるワークの回転軸と前記工具ホルダの前記ワークに対する送り方向との両方に直交する第2方向に向かって開口し、
前記工具ホルダには、前記V字溝より前記切削工具の送り方向の送り先側で、前記V字溝から離れるに従って前記ワークの回転軸から徐々に離れるように傾斜する切り屑ガイド面が形成されている請求項12に記載の工具ホルダ。
【請求項14】
前記切り屑ガイド面は、前記旋盤のうちワークをチャックするチャック部から離れる側に従って前記ワークの回転軸から徐々に離れるように傾斜している請求項13に記載の工具ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スカイビング加工を行う旋盤に備えられる工具ホルダと、その工具ホルダに固定される切削工具と、工具ホルダに切削工具を固定する工具固定構造とに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な旋盤が行う所謂「一般的な旋盤加工」では、ワークの回転軸と平行な方向に切削工具を移動してワークを切削する。これに対し、近年、ワークの回転軸と直交する方向に切削工具を移動してワークを切削する「スカイビング加工」の技術開発が進んでいる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-14037号公報(段落[0010],図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スカイビング加工によれば、一般的な旋盤加工に比べて加工面の面粗度を高くすることができるので、一般的な旋盤加工の加工品からスカイビング加工の加工品への切り替えが近年進んできている。また、その分、スカイビング加工の加工精度の更なる向上の要請が高くなってきている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、スカイビング加工を行う旋盤の工具ホルダに切削工具を固定する工具固定構造であって、少なくとも前記工具ホルダと前記切削工具とに設けられ、前記切削工具の刃筋と直交する第1方向を向いた第1作用力を前記切削工具に作用させる締結機構と、前記工具ホルダに形成され、前記第1方向の一方に向かうに従って互いに接近しかつ前記刃筋と平行な1対のV字内側面を有するV字溝と、前記切削工具に形成され、前記第1作用力によって前記1対のV字内側面に押し付けられる1対のV字外側面と、を有し、前記工具ホルダに設けられる前記締結機構は、前記V字溝のうち前記1対のV字内側面の間に挟まれる底面に形成される工具固定構造である。
【0006】
請求項2の発明は、前記締結機構には、ボルトと、前記切削工具を前記第1方向に貫通し、前記ボルトが挿通される締結部品挿通孔と、前記V字溝の前記底面に形成され、前記ボルトと螺合する螺子孔と、を備えてなる請求項1に記載の工具固定構造である。
【0007】
請求項3の発明は、前記V字溝は、前記旋盤によって回転駆動されるワークの回転軸と前記工具ホルダの前記ワークに対する送り方向との両方に直交する第2方向に向かって開口し、前記工具ホルダには、前記V字溝より前記切削工具の送り方向の送り先側で、前記V字溝から離れるに従って前記ワークの回転軸から徐々に離れるように傾斜する切り屑ガイド面が形成されている請求項1又は2に記載の工具固定構造である。
【0008】
請求項4の発明は、前記切り屑ガイド面は、前記旋盤のうちワークをチャックするチャック部から離れるに従って前記ワークの回転軸から徐々に離れるように傾斜している請求項3に記載の工具固定構造である。
【0009】
請求項5の発明は、前記切削工具は、前記刃筋と直交する断面形状が左右対称になっている請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の工具固定構造である。
【0010】
請求項6の発明は、前記切削工具は、90度の回転対称形状になるように4つの刃部を有する請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載の工具固定構造である。
【0011】
請求項7の発明は、前記切削工具は、前記V字外側面から前記第1方向との平行に近くなる側に屈曲して、前記切削工具の刃先まで平坦に形成された刃先側外側面を有する請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載の工具固定構造である。
【0012】
請求項8の発明は、スカイビング加工を行う旋盤の工具ホルダに固定される切削工具であって、刃筋と直交する第1方向に前記切削工具を貫通し、前記工具ホルダに前記切削工具を締結するためのボルトその他の締結部品が挿通される締結部品挿通孔と、前記締結部品挿通孔を間に挟んだ両側に配置され、前記第1方向で前記切削工具の刃先から離れるに従って互いに接近しかつ前記刃筋と平行な1対のV字外側面と、を有する切削工具である。
【0013】
請求項9の発明は、前記刃筋と直交する断面形状が左右対称になっている請求項8に記載の切削工具である。
【0014】
請求項10の発明は、90度の回転対称形状になるように4つの刃部を有する請求項8又は9に記載の切削工具である。
【0015】
請求項11の発明は、前記V字外側面から前記第1方向との平行に近くなる側に屈曲して、前記刃先まで平坦に形成された刃先側外側面を有する請求項8乃至10の何れか1の請求項に記載の切削工具である。
【0016】
請求項12の発明は、スカイビング加工を行う旋盤の切削工具を保持する工具ホルダであって、前記切削工具を、その刃筋と直交する第1方向に貫通するボルトと、前記ボルトが螺合する螺子孔と、前記第1方向の一方に向かうに従って互いに接近しかつ前記刃筋と平行な1対のV字内側面を有するV字溝と、を備え、前記1対のV字内側面は、前記螺子孔を間に挟んだ両側に配置される工具ホルダである。
【0017】
請求項13の発明は、前記V字溝は、前記旋盤によって回転駆動されるワークの回転軸と前記工具ホルダの前記ワークに対する送り方向との両方に直交する第2方向に向かって開口し、前記工具ホルダには、前記V字溝より前記切削工具の送り方向の送り先側で、前記V字溝から離れるに従って前記ワークの回転軸から徐々に離れるように傾斜する切り屑ガイド面が形成されている請求項12に記載の工具ホルダである。
【0018】
請求項14の発明は、前記切り屑ガイド面は、前記旋盤のうちワークをチャックするチャック部から離れる側に従って前記ワークの回転軸から徐々に離れるように傾斜している請求項13に記載の工具ホルダである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の工具固定構造では、締結機構によって切削工具の刃筋と直交する第1方向を向いた第1作用力が切削工具に作用する。また、工具ホルダには、第1方向の一方に向かうに従って互いに接近しかつ刃筋と平行な1対のV字内側面を有するV字溝が形成されている。そして、第1作用力によって切削工具の1対のV字外側面が1対のV字内側面に押し付けられる。これらにより、切削工具は、刃筋と直交する架空の刃筋直交面内において互いに異なる3方向から押されて固定され、ワークから様々な方向を向いた負荷を受けても固定が安定し、スカイビング加工の加工精度が向上する。なお、切削工具及び工具ホルダを、従前にはない請求項8及び12の構成とすることで上記した請求項1の工具固定構造とすることができる。
【0020】
また、締結機構は、第1作用力を間接的に切削工具に作用させてもよいし、直接的に切削工具に作用させてもよい。具体的には、第1作用力を間接的に切削工具に作用させる一例としては、締結機構により第1方向と直交する方向に楔を押し込んでその楔にて切削工具を第1方向に押圧する構成が挙げられ、第1作用力を直接的に切削工具に作用させる一例として、請求項2の構成が挙げられる。
【0021】
V字溝は、工具ホルダのワークに対する送り方向の前向きに開口していてもよいし、送り方向の後向きに開口していてもよい。また、請求項3及び13の構成ように、V字溝は、ワークの回転軸と工具ホルダのワークに対する送り方向との両方に直交する第2方向に向かって開口していてもよい。その場合、請求項3及び13の構成によれば、スカイビング加工による切り屑が切り屑ガイド面に案内されて飛散方向が安定し、切り屑の回収が容易になる。また、請求項4及び14の構成によれば、切り屑ガイド面は、旋盤のチャック部から離れる側に切り屑が案内され、チャック部の清掃が容易になる。
【0022】
請求項5及び9の構成では、切削工具を180度角度を変更して工具ホルダに取り付けることで、2つの刃部を使用することができる。
【0023】
請求項6及び10の構成では、切削工具を90度ずつ角度を変更して工具ホルダに取り付けることで、4つの刃部を使用することができる。
【0024】
請求項7及び11の構成のように、切削工具に、V字外側面から屈曲して刃先まで平坦に形成された刃先側外側面に設けることで切削工具をコンパクトな構造にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本開示の第1実施形態に係る旋盤の斜視図
図2】工具ホルダの斜視図
図3】切削工具と工具ホルダの斜視図
図4】切削工具と工具ホルダの側断面図
図5】切削工具がワークから受ける負荷を説明するための概念図
図6】第2実施形態の切削工具及び工具ホルダの側断面図
図7】工具ホルダの分解斜視図
図8】(A)切削工具及び工具ホルダの正面図、(B)工具ホルダの正面図、(C)工具ホルダの後面図
図9】(A)第3実施形態の切削工具及び工具ホルダの平面図,(B)それら切削工具及び工具ホルダの側面図,
図10】(A)切削工具及び工具ホルダの正面図、(B)工具ホルダの正面図、(C)切削工具及び工具ホルダの後面図
図11】第4実施形態の切削工具及び工具ホルダの斜視図
図12】実験結果を示すグラフ
図13】変形例に係る切削工具の(A)正面図、(B)側面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
以下、図1図5を参照して本開示に係る切削工具30A、工具ホルダ10A及びそれらを固定する工具固定構造を含んだ旋盤100の本実施形態について説明する。この旋盤100は、スカイビング加工を行うものであって、切削工具30A及び工具ホルダ10A以外は公知な構造になっている。即ち、旋盤100は、水平な回転軸を有する主軸101にチャック部102を備え、棒状のワークWがチャック部102により芯出しされた状態に保持される。また、主軸101の前方には、ワークWの先端に突き当てられ、ワークWと共に回転する図示しないセンターツールが備えられている。そして、ワークWがセンターツール側から見て例えば時計回り方向に回転駆動される。
【0027】
切削工具30Aは、それを保持する工具ホルダ10Aと共に、ワークWの回転軸J1と直交する方向において、ワークWの周速方向とは逆向きに進んでワークWに接近し、ワークWのうち回転軸J1からずれた位置に押し付けられる。ここで、工具ホルダ10Aの送り方向は、上下方向、水平方向、斜め上下方向の何れでもよく、また、ワークWにおける切削工具30Aの当接位置は、回転軸J1からずれていれば、回転軸J1の上方、下方、側方、斜め側方の何れでもよいが、本実施形態の旋盤100では、送り方向が例えば回転軸J1に直交する水平方向であり、ワークWにおける切削工具30Aの当接位置が、回転軸J1より下側部分になっている。
【0028】
以下、工具ホルダ10A、切削工具30Aを詳説するために、回転軸J1と平行な水平方向を「X方向」といい、回転軸J1と直交する水平方向を「Y方向」といい、X,Yの両方向と直交する上下方向を「Z方向」という。また、Z方向に関しては、適宜、上下方向ともいう。さらに、Y方向に関しては、工具ホルダ10AがY方向でワークWから離れた状態で、ワークWに近い側を「前側」、その反対側を「後側」と呼ぶこととする。
【0029】
図2には、工具ホルダ10Aの詳細な形状が示されている。工具ホルダ10Aは、平面形状がY方向に長い直方体を一部を切除した構造をなしている。工具ホルダ10Aの四隅には、Z方向に貫通する座ぐり孔12が形成されている。そして、図4に示すように、座ぐり孔12に通されたボルトB1によって、旋盤100の制御出力部105に固定されている。その制御出力部105は、XYZのそれぞれの方向に対して任意の位置に位置決め制御されるようになっている。
【0030】
図2に示すように、工具ホルダ10Aの上面には、Y方向とX方向とに対して傾斜して水平方向に延びるV字溝13が形成されている。V字溝13は、主軸101に近い側の一端部がワークWに近くなるようにX方向及びY方向に対して傾斜し、そのV字溝13の一端部は、工具ホルダ10Aの外縁の一方の長辺部分の途中に位置している。また、V字溝13の他端部は、工具ホルダ10Aの一角部に位置し、そのV字溝13の他端部内で座ぐり孔12が開口している。なお、その座ぐり孔12は、ボルトB1がV字溝13内に突出しない深さに形成されている。
【0031】
V字溝13は、工具ホルダ10Aの水平な上面11Aに開口している。その上面11Aは、V字溝13より後側の全体と、V字溝13より前側でV字溝13に沿った一定幅の範囲に形成されている。そして、上面11Aより前側部分が、V字溝13と平行な稜線11Rを中心に上面11Aに対して下方に折れ曲がるように屈曲して切り屑ガイド面11Eが形成されている。また、工具ホルダ10Aの前端部の1対の座ぐり孔12は、切り屑ガイド面11Eに開口している。
【0032】
図4には、V字溝13の長手方向と直交しかつZ方向と平行な切断面における工具ホルダ10Aの断面形状が示されている。V字溝13は、上面11Aから折れ曲がり、下方に向かうに従って互いに接近するように傾斜した1対のV字内側面13Aと、それら1対のV字内側面13Aの下端部から鉛直下方に垂下した1対の垂直面13Bと、1対の垂直面13Bの下端部の間を連絡する水平な底面13Cとを有する。また、底面13Cの幅方向の中央には、長手方向の複数位置に螺子孔14が穿孔されて底面13Cから鉛直下方に延びている。
【0033】
図3に示すように、切削工具30Aは、V字溝13と略同じ長さの長尺形状をなしている。図4に示すように、切削工具30Aは、V字溝13の1対のV字内側面13Aに面当接する1対のV字外側面33と、それら1対のV字外側面33の下端部の間を連絡し、V字溝13の底面13Cと平行な下面38とを有する。また、後側のV字外側面33(図4における右側のV字外側面33)は、前側のV字外側面33(図4における左側のV字外側面33)より上下幅が小さくなっている。そして、後側のV字外側面33の上端部は、V字内側面13Aの上端部より下方に位置し、前側のV字外側面33の上端部は、V字内側面13Aの上端部と略重なる。また、切削工具30Aには、前側のV字外側面33の上端部から鉛直状に立ち上がった刃先側外側面34と、その刃先側外側面34の上端部から斜め下後方に屈曲した上部第1傾斜面35とが形成され、それら刃先側外側面34と上部第1傾斜面35とが交差する稜線を刃筋31とした刃部39が備えられている。切削工具30Aの上面には、上部第1傾斜面35の後部から鉛直下方に垂下した段差面36と、上部第1傾斜面35と平行になって段差面36の下端部と後側のV字外側面33の上端部との間を連絡する上部第2傾斜面37が備えられている。なお、本実施形態では、刃先側外側面34は、刃部39のすくい面をなし、上部第1傾斜面35は刃部39の逃げ面になっている。
【0034】
また、図3に示すように、切削工具30Aには、長手方向の複数位置に上下方向に貫通する複数の座ぐり孔32が形成され、それら座ぐり孔32に通したボルトB2が図4に示すように工具ホルダ10Aの螺子孔14に締め付けられて切削工具30Aが工具ホルダ10Aに固定されている。
【0035】
なお、前記段差面36は、座ぐり孔32より前側に位置している。また、切削工具30Aのうち刃部39は、切削工具30Aの全体より硬度が高い部材(例えば、cBN(立方晶型窒化硼素)粒子の焼結体)で構成されている。
【0036】
本実施形態の構成に関する説明は以上である。次に、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態の工具固定構造では、ボルトB2の締め付けによって切削工具30Aの刃筋31と直交するZ方向(特許請求の範囲の「第1方向」に相当する)を向いた第1作用力が切削工具30Aに作用する。また、工具ホルダ10Aには、Z方向の一方に向かうに従って互いに接近しかつ刃筋31と平行な1対のV字内側面13Aを有するV字溝13が形成されている。そして、第1作用力によって切削工具30Aの1対のV字外側面33が1対のV字内側面13Aに押し付けられる。これらにより、切削工具30Aは、刃筋31と直交する架空の刃筋直交面内において互いに異なる3方向から押されて固定され(図4の力F11,F12,F13参照)、ワークWから様々な方向を向いた負荷を受けても固定が安定する。換言すれば、異なる方向を向いた3つの面で負荷を受けることができるので切削工具30Aの固定が安定する。これにより、スカイビング加工の加工精度が向上する。
【0037】
詳細には、図5(A)から図5(B)への変化に示すように、スカイビング加工では、切削工具30Aが、回転しているワークWに向けて送られ、その送り方向(本実施形態では「Y方向」)と反対方向を向いた力成分を含む第1負荷F1を受けると共に、ワークWに当接した当初は、図5(B)に示すように、送り方向(即ち、Y方向)及びワークWの回転軸J1の両方に直交する第2方向(本実施形態では、Z方向)でワークWに引っ張られる力成分を含んだ第2負荷F2を受ける。そして、切削が始まると図5(C)に示すように切削の背分力により第2方向(即ち、Z方向)でワークWに押される力成分を含んだ第3負荷F3を受ける。なお、第2負荷F2は、一般的な旋盤加工では切削工具30Aが受けない負荷である。
【0038】
本実施形態の工具固定構造では、このようにスカイビング加工によって第1~第3の負荷F1,F2,F3を含む様々な方向から切削工具30Aが負荷を受けても、上述の通り、切削工具30Aが工具ホルダ10Aによって刃筋直交面内の互いに異なる3方向から押されて固定されているので安定し、スカイビング加工の加工精度が向上する。また、切削工具30A及び工具ホルダ10Aを従前にはない上記構造にすることで、上記した工具固定構造とすることが可能になる。
【0039】
また、本実施形態の工具ホルダ10Aでは、V字溝13より前側に備えた切り屑ガイド面11Eにより、スカイビング加工による切り屑が旋盤100のチャック部102から離れる側に案内され、チャック部102の清掃が容易になる。
【0040】
さらに、切削工具30Aは、V字外側面33から屈曲して刃筋31まで平坦に形成された刃先側外側面34に備えたことで、その刃先側外側面34を備えずにV字外側面33を刃筋31まで延長した場合に比べて切削工具30Aがコンパクトになる。
【0041】
なお、本実施形態の切削工具30Aは、V字溝13と略同一の長さであったが、V字溝13より短く2つの座ぐり孔32を備えたものや、さらに短く1つの座ぐり孔32を備えたものを工具ホルダ10Aに固定して使用してもよい。また、本実施形態の工具固定構造では、ボルトB2の締め付け力を直接的に切削工具30Aに作用させる締結機構を備えた一例を示したが、締結機構としては、ボルトB2の締め付け力を間接的に切削工具30Aに作用させる構成としてもよい。具体的には、例えば、特開2016-203286号の図3の開示された構造のように、ボルトの締め付けにより楔を切削工具と工具ホルダの壁面の間に押し込み、ボルトの締め付け力と直交する方向に切削工具を押圧し、その押圧方向で切削工具の1対のV字外側面と工具ホルダの1対のV字内側面とが押し付けられるようにしてもよい。
【0042】
[第2実施形態]
以下、図6図8を参照して本開示の第2実施形態に係る工具ホルダ40及び切削工具30Bについて説明する。本実施形態の工具ホルダ40は、回転ベース部50と固定ベース部41とを備えてなる。回転ベース部50は、ヘッド部52から断面円形のシャフト51が垂下した構造をなしている。
【0043】
ヘッド部52は、略直方体状をなし、ヘッド部52の下面は、シャフト51の中心軸でもある旋回軸に対して直交する平坦面になっている。
【0044】
ヘッド部52の前面には、前述した第1実施形態のV字溝13と断面形状が略同一のV字溝13が水平に横切っている。また、図8(B)に示すように、V字溝13の上側のV字内側面13Aは、下側のV字内側面13Aより上下幅が小さい。そして、図6に示すように、上側のV字内側面13Aの前端縁は、下側のV字内側面13Aの前端縁より後方に位置している。また、図8(B)に示すように、底面13Cの上下左右の中央には、底面13Cに直交してヘッド部52を水平に貫通する貫通孔52Aが形成されている。また、図6に示すように、ヘッド部52の後面55は、貫通孔52Aと直交する平面になっている。
【0045】
ヘッド部52の上部には、前側部分に水平上面54Aが備えられると共に、その水平上面54Aの後部から下方に屈曲して後面55まで傾斜する傾斜上面54Bが備えられている。また、傾斜上面54Bと両側面との両角部には、後端から前端寄り位置に向かうに従って徐々に面取り幅が小さくなるように面取りされた1対の三角形の面取り面53が備えられている(図8(C)参照)。
【0046】
図7に示すように、固定ベース部41は、平面形状が正方形の直方体の上に角錐台を重ねた形状をなし、その角錐台部分の傾斜した側面が切り屑ガイド面41Bになっている。また、固定ベース部41の四隅を座ぐり孔41Fが上下に貫通していて、図6に示すように、それら座ぐり孔41Fに通したボルトB5を前述した制御出力部105の図示しない螺子孔に螺合して固定ベース部41が制御出力部105に固定されている。
【0047】
また、固定ベース部41の平面形状の中心部には、支持孔42が上下に貫通している。図6に示すように、支持孔42は、小径部42Bと大径部42Aとを上下に並べて備え、それらの間に水平な段差面42Cを有する。また、支持孔42の内部には、嵌合スリーブ49と押え蓋48とが嵌合されている。嵌合スリーブ49は、大径部42A内に丁度嵌合される大径スリーブ49Aと、小径部42B内に丁度嵌合される小径スリーブ49Bとを有し、それら大径スリーブ49Aと小径スリーブ49Bの内面が面一に連続している。また、押え蓋48は、嵌合スリーブ49と略同一の形状をなして大径部42A内で大径スリーブ49Aの下方に嵌合されている。そして、固定ベース部41が制御出力部105に取り付けられることで、押え蓋48を介して大径スリーブ49Aの上面が、支持孔42の段差面42Cに押し付けられている。
【0048】
図7に示すように、嵌合スリーブ49には、小径スリーブ49B側の内部に、流体を収容する図示しない収容部屋が備えられている。また、大径スリーブ49Aには、前記収容部屋に連通する図示しない螺子孔と、その螺子孔に螺合した螺合操作部B4とが備えられている。また、固定ベース部41には、外部から螺合操作部B4を操作するための貫通孔41Eが形成されている。そして、螺合操作部B4を締め込む螺合操作によって流体の内圧が増加して小径スリーブ49Bが内外に膨出するようになっている。
【0049】
図6に示すように、回転ベース部50は、シャフト51が嵌合スリーブ49の内側に嵌合され、ヘッド部52の下面を固定ベース部41の上面41Aに重ねた状態にして固定ベース部41に組み付けられている。そして、螺合操作部B4を緩めた状態では、固定ベース部41に対して回転ベース部50が任意の旋回位置に旋回可能であると共に、回転ベース部50を固定ベース部41から抜き取ることができる。また、螺合操作部B4が締め込まれると、回転ベース部50が固定ベース部41に対して回転不能かつ上下に移動不能に固定される。なお、図7に示すように、固定ベース部41の上面41Aには、固定ベース部41に対するヘッド部52の旋回角を示す目盛り41Mが刻印されている。
【0050】
図6及び図8(A)には、工具ホルダ40に固定される切削工具30Bの一例が示されている。この切削工具30Bは、90度の回転対称形状である略角錐台形状になっている。ここで、90度の回転対称形状とは、90度回転させても同じ形状に見えるものをいう。詳細には、切削工具30Bの正面形状は正方形をなしかつ、図6に示すように、後方に向かって窄んだ略角錐台形状になっている。なお、切削工具30Bの後面38Bは、前面35Bと平行になっている。
【0051】
切削工具30Bには、正面形状である正方形の中心部分を座ぐり孔32が貫通している。そして、その座ぐり孔32の中心軸回りに切削工具30Bを90度回転させても同じ形状に見えるようになっている。また、切削工具30Bの四方を向いた各斜面は、V字溝13のV字内側面13Aに面当接可能なV字外側面33Bと、V字外側面33Bの前端縁と前面35Bとの間を連絡する刃先側外側面34Bとからなる。そして、前面35Bと各刃先側外側面34Bとが交差する稜線を刃筋31とした4つの刃部39が備えられている。
【0052】
なお、本実施形態では、刃先側外側面34Bが刃部39の逃げ面をなす一方、前面35Bが刃部39のすくい面になっている。
【0053】
切削工具30Bの座ぐり孔32に通されたボルトB3は、工具ホルダ40のヘッド部52における貫通孔52Aにも通され、ヘッド部52の後面55に宛われた工具ホルダ40の一部としてのナットNの螺子孔N1に螺合されている。これにより、切削工具30Bが4つのV字外側面33Bのうちの対向する1対のV字外側面33BがV字溝13の1対のV字内側面13Aに押し付けられ、第1実施形態の工具ホルダ10Aと同様に、切削工具30Bが、刃筋31と直交する刃筋直交面内において互いに異なる3方向から押されて工具ホルダ40に固定される。そして、切削工具30Bの上部に位置する刃部39がヘッド部52より上方に突出した状態になってスカイビング加工に使用される。即ち、切削工具30Bの前面35BがワークW側に向けられ、切削工具30Bの上部の刃部39の刃筋31がY方向に対して傾斜した状態にされて工具ホルダ40がY方向に前進し、切削工具30Bの刃部39がワークWに押し付けられてスカイビング加工が行われる。
【0054】
ここで、本実施形態の切削工具30Bも、前述の通り、刃筋直交面内において互いに異なる3方向から押されて工具ホルダ40に固定されるので、スカイビング加工によって回転しているワークWから様々な方向を向いた負荷を受けても固定が安定し、スカイビング加工の加工精度が向上する。
【0055】
本実施形態の工具ホルダ40では、シャフト51を中心にして切削工具30Bを旋回させて加工条件を調整することができ、この点においてもスカイビング加工の加工精度を向上させることができる。また、嵌合スリーブ49の螺合操作部B4の回転操作によって固定ベース部41に対する回転ベース部50の固定及びその解除を容易に行うことができる。さらには、固定ベース部41に対して回転ベース部50を抜くことができるので、複数の回転ベース部50に予め切削工具30Bを固定しておき、固定ベース部41に取り付ける回転ベース50を交換することで、切削工具30Bの交換を迅速に行うことができる。その際、後述する第3及び第4の実施形態の回転ベース部50B,50Cを本実施形態の回転ベース部50に代えて固定ベース部41に取り付けてもよい。また、本実施形態の切削工具30Bは、90度の回転対象形状をなしているので、90度ずつ角度を変更して工具ホルダ40に取り付けることで、工具ホルダ40の4つの刃部39を使用することができる。
【0056】
[第3実施形態]
以下、図9及び図10を参照して本開示の第3実施形態に係る回転ベース部50B及び切削工具30Cについて説明する。本実施形態の回転ベース部50Bは、前記第2実施形態の回転ベース部50とシャフト51が共通し、ヘッド部52Bが異なる。そして、図9(B)に示すように、第2実施形態で説明した固定ベース部41に組み付けて工具ホルダ40Bとして使用される。
【0057】
具体的には、図10(B)に示すように、回転ベース部50Bのヘッド部52Bの前面は、正面から見た形状が横長の長方形をなし、横長のV字溝13を備える。そのV字溝13は、図9(B)に示すように、1対のV字内側面13Aに対して中心に位置する架空の中心面50Zが前下がりに傾斜するようにV字溝13が傾斜している。また、ヘッド部52Bの後面55は、V字溝13の底面13Cと平行になってシャフト51の旋回軸に対して傾斜している。さらに、ヘッド部52Bには、図10(B)に示した1対の貫通孔52Aが、図9(B)に示すように、底面13Cと後面55とに直交した状態に形成されている。
【0058】
また、図9(A)、図10(A)及び図10(C)に示すように、切削工具30Cは、V字溝13より僅かに長い長尺状をなし、V字溝13の1対のV字内側面13Aに当接する1対のV字外側面33を有すると共に、ヘッド部52Bの1対の貫通孔52Aに対向する1対の貫通孔32Bを備えている。そして、ワッシャBWに通されたボルトB3が、1対の貫通孔32Bと1対の貫通孔52Aとに通されて後面55側のナットNに螺合されている。また、切削工具30Cは、上側に配置される一方の角部のみに刃部39を備え、その刃部39の刃筋31と上側のV字外側面33との間は、V字外側面33よりボルトB3の中心軸と平行に近づく側に寝た刃先側外側面34になっている。
【0059】
図9(B)に示すように、ヘッド部52Bの下部からは後面55より後方に回転当接部59が張り出している。図9(A)に示すように、回転当接部59は、平面形状が円弧状をなし、回転当接部59の下面はヘッド部52Bの下面と面一になって固定ベース部41の上面41Aに当接する。
【0060】
本実施形態の回転ベース部50Bによれば、回転当接部59がシャフト51から側方に張り出して固定ベース部41の上面41Aに当接するので、ワークWからの負荷に対して回転ベース部50Bが曲がり難くなり、切削工具30Cの固定が安定する。これにより、切削工具30Cによるスカイビング加工の形状が安定する。
【0061】
[第4実施形態]
以下、図11を参照して本開示の第4実施形態に係る回転ベース部50Cについて説明する。本実施形態の回転ベース部50Cは、ヘッド部52Cの構造のみが第3実施形態と異なる。そして、第2実施形態で説明した固定ベース部41に組み付けられて工具ホルダ40Cとして使用される。具体的には、回転ベース部50Cは、シャフト部51から側方に張り出す回転当接部70を備えると共に、回転当接部70から上方の突出する支持ブロック71を有する。そして、その支持ブロック71のうちシャフト51の旋回中心側を向いた面にV字溝13を備え、そこに前述の切削工具30Cが固定されている。
【0062】
本実施形態の回転ベース部50Cでも、第3実施形態と同様に、負荷を受けて曲げ変形し難くなり、切削工具30Cによるスカイビング加工の形状が安定する。
【0063】
[実施例]
前記第3実施形態で説明した工具ホルダ40B及び切削工具30Cを使用し、ワークWを一定の外径となるようにスカイビング加工した実施品と、特開2016-203286号の図3の開示されているように平板状の上端部に刃部を有する切削工具を、工具ホルダに挟んで摩擦係合によってZ方向への抜け止めを行ったもので、実施品と同じ条件でスカイビング加工を行った比較品とを製作し、ワークWの長手方向における外径の均一度を測定して図12に示したグラフ化にした。
【0064】
同グラフによれば、比較品は、加工開始直後の外径の均一度が悪いことを確認することができる。これは、加工開始直前に切削工具がワークWから前述の第2負荷F2(図5(B)参照)を受けてZ方向で工具ホルダとの当接面から浮いてしまい、加工開始後に切削工具が工具ホルダとの当接位置まで戻るためと推測される。これに対し、実施品では、比較品に比べて、加工開始直後の外径の均一度が大幅に改善されていることを確認することができる。
【0065】
[他の実施形態]
(1)前記第2~第4の実施形態のV字溝13は、工具ホルダ40のワークWに対する送り方向の前向きに開口していたが、送り方向の後向きに開口していてもよい。
【0066】
(2)前記第2実施形態の切削工具30Bは、ボルトB3を中心とした90度の回転対称形状をなしていたが、図13に示した切削工具30Dのように複数の貫通孔32Dを切削工具30Dの中心軸の回りに備えて、ボルト以外の部位を中心とする90度の回転対称形状としてもよい。
【0067】
(3)前記実施形態の1対のV字内側面13A及び1対のV字外側面33は、ボルトB2,B3の中心軸に対して左右対称に傾斜していたが、左右非対象であってもよく、一方のV字内側面13A,V字外側面33がボルトB2,B3の中心軸と平行であってもよい。
【0068】
(4)前記第2実施形態の工具ホルダ40は、回転ベース50と、固定ベース部41とが別部品で構成されていたが、これら回転ベース50と固定ベース41とが一体的に構成されていてもよい。なお、第3~第4実施形態の工具ホルダ40B、40Cについても同様である。
【符号の説明】
【0069】
10A,40 工具ホルダ
11E,41B 切り屑ガイド面
13 V字溝
13A V字内側面
14 螺子孔
30A,30B,30C,30D 切削工具
31 刃筋
33,33B V字外側面
34,34B 刃先側外側面
40,40B,40C 工具ホルダ
41 固定ベース部
42 支持孔
49 嵌合スリーブ
50,50B,50C 回転ベース部
51 シャフト
52,52B,52C ヘッド部
100 旋盤
101 主軸
102 チャック部
B1~B3,B5 ボルト
B4 螺合操作部
N1 螺子孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13