IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソマール株式会社の特許一覧

特許7345298成形品取出し装置、成形品取出し方法、この成形品取出し装置を用いた成形品の製造方法、および付属部除去装置
<>
  • 特許-成形品取出し装置、成形品取出し方法、この成形品取出し装置を用いた成形品の製造方法、および付属部除去装置 図1
  • 特許-成形品取出し装置、成形品取出し方法、この成形品取出し装置を用いた成形品の製造方法、および付属部除去装置 図2
  • 特許-成形品取出し装置、成形品取出し方法、この成形品取出し装置を用いた成形品の製造方法、および付属部除去装置 図3
  • 特許-成形品取出し装置、成形品取出し方法、この成形品取出し装置を用いた成形品の製造方法、および付属部除去装置 図4
  • 特許-成形品取出し装置、成形品取出し方法、この成形品取出し装置を用いた成形品の製造方法、および付属部除去装置 図5
  • 特許-成形品取出し装置、成形品取出し方法、この成形品取出し装置を用いた成形品の製造方法、および付属部除去装置 図6
  • 特許-成形品取出し装置、成形品取出し方法、この成形品取出し装置を用いた成形品の製造方法、および付属部除去装置 図7
  • 特許-成形品取出し装置、成形品取出し方法、この成形品取出し装置を用いた成形品の製造方法、および付属部除去装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】成形品取出し装置、成形品取出し方法、この成形品取出し装置を用いた成形品の製造方法、および付属部除去装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/42 20060101AFI20230908BHJP
   B29C 33/44 20060101ALI20230908BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20230908BHJP
   B29C 45/38 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
B29C45/42
B29C33/44
B29C45/17
B29C45/38 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019126845
(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公開番号】P2021011076
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000108454
【氏名又は名称】ソマール株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 裕久
(72)【発明者】
【氏名】落合 明
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-130730(JP,A)
【文献】実開昭58-194019(JP,U)
【文献】特開2013-193453(JP,A)
【文献】国際公開第2016/171099(WO,A1)
【文献】特開2019-034444(JP,A)
【文献】特開平07-037919(JP,A)
【文献】特開2004-001324(JP,A)
【文献】特開平07-214607(JP,A)
【文献】特開昭60-240421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動金型と固定金型からなる成形型の内部において成形された熱硬化性樹脂組成物の成形品を、該成形型から取り出す成形品取出し装置であって、
前記成形型の内部において成形された半硬化状態の前記成形品を保持する成形品保持部と、
成形品保持部が装着されたアームと、
アームに取り付けられ、成形品保持部により保持された成形品の付属部に対してエアを吹きかけるエア噴射部を備えた付属部除去装置と、を有し、
成形品保持部により成形品が保持された状態で、付属部除去装置のエア噴射部から吹きかけられるエアによって成形品から付属部を吹き飛ばすように構成した成形品取出し装置。
【請求項2】
型開きした可動金型と固定金型の間の第1の位置と、成形型の外部において成形品を取り出す第2の位置との間に加え、第1の位置と、可動金型から押し出される成形品の離脱位置との間で、成形品保持部が移動可能となるようアームの動きを制御するように構成した請求項1に記載の成形品取出し装置。
【請求項3】
成形品保持部が、吸着によって成形品を保持する吸着手段からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の成形品取出し装置。
【請求項4】
成形材料を、磁性粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物とし、
吸着手段として電磁石を用い、電磁石の磁性によって成形品を吸着保持することを特徴とする請求項3に記載の成形品取出し装置。
【請求項5】
前記成形品が射出成形法により製造されたものであることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の成形品取出し装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の成形品取出し装置によって前記成形型から前記成形品を取り出す成形品取出し方法であって、
前記成形型の内部において成形された半硬化状態の成形品を成形品保持部により保持する工程と、
成形品を成形品保持部にて保持した状態によって、成形品の付属部に対してエアを吹きかけ、成形品から付属部を吹き飛ばすエア噴射工程と、
を有する成形品取出し方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の成形品取出し装置を用いて、熱硬化性樹脂組成物の成形品を製造する方法であって、
成形型を用いて半硬化状態の成形品を成形する工程と、
成形品を成形品保持部により保持する工程と、
前記成形品を成形品保持部にて保持した状態で、成形品の付属部にエアを吹きかけ、成形品から付属部を吹き飛ばすエア噴射工程と、
を有する成形品の製造方法。
【請求項8】
成形時において熱硬化性樹脂組成物の成形品と一体に形成される付属を、該成形品から除去する付属部除去装置であって、
成形型の内部において成形された半硬化状態の前記成形品を保持する成形品保持部を装着するアームに取り付けられ、成形品保持部により保持された、半硬化状態の成形品の付属部に対してエアを吹きかけるエア噴射部を有し、
成形品保持部により成形品が保持された状態で、エア噴射部から吹きかけられるエアによって成形品から付属部を吹き飛ばすように構成した付属部除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物の成形品を成形型から取り出す成形品取出し装置、成形品取出し方法、この成形品取出し装置を用いた成形品の製造方法、および成形品から付属部を除去する付属部除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形用の金型装置を用いて成形品を製造する場合、まず金型装置が有する射出成形装置における一対の成形型を分割面で組み合わせることにより内部に形成されるキャビティに、成形材料(熱硬化性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物)を注入して成形品を射出成形する。続いて、金型装置における成形品押出装置によって該成形品を成形型から離脱させた後、金型装置の付属部除去装置によって成形時において成形品と一体に形成される付属部(ランナー、スプルー、ゲートなど)を除去する。さらに、金型装置の成形品取出し装置を用いて成形品を金型装置から取り出すことにより、成形品を製造するようになっている。
【0003】
このような成形品から付属部を除去する付属部除去装置としては、切削刃によって所定部分を旋削してゲート部などの付属部を除去したり(特許文献1)、カット機構によってゲートを切断して樹脂製品とランナーとに分離することによりゲートを切断する装置(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-174245号公報
【文献】特開2018-134769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、近年、熱硬化性樹脂組成物を連続的に射出成形できるとともに、成形時に成形品の付属部を再利用できる射出成形方法として、キャビティ内において射出成形された熱硬化性樹脂組成物の成形品を半硬化状態で取り出すことが行われている(例えば、国際公開番号WO2016/171099参照)。このような射出成形方法によれば、成形型から取り出した半硬化状態の成形品から付属部を除去した後、製品となる成形品の部分を加熱して熱硬化性樹脂組成物の熱硬化反応を進行させるとともに、除去された付属部は再生原料として用いることができる。
【0006】
しかし、成形型から取り出した半硬化状態の成形品から付属部を除去するにあたり、従来のような切削や切断により付属部を除去しようとすると、半硬化成形品は強度が低いために適切に付属部を切削、切断することができず、付属部が成形品に残ってしまったり、さらには半硬化成形品と付属部との境界が変形してしまうなどのおそれがあり、付属部の除去が困難であった。
【0007】
本発明は、半硬化状態の成形品から適切かつ確実にランナーなどの再利用可能な付属部を除去することができる機能を備えた成形品取出し装置、成形品取出し方法、この成形品取出し装置を用いた成形品の製造方法、および成形品から付属部を除去する付属部除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下では、本発明の理解を容易にするために、本発明の実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0009】
上記目的を達成するために、第1発明に係る成形品取出し装置の特徴は、
成形型(21、22)の内部において成形された熱硬化性樹脂組成物の成形品を、該成形型(21、22)から取り出す成形品取出し装置(4)であって、
成形型(21、22)の内部において成形された半硬化状態の前記成形品を保持する成形品保持部(41)と、
成形品保持部(41)により保持された成形品の付属部に対してエアを吹きかけるエア噴射部(5)と、を有し、
エア噴射部(5)から吹きかけられるエアによって成形品から付属部を吹き飛ばすように構成した点にある。
【0010】
第1発明によれば、成形型(21、22)内部において成形された半硬化状態の成形品を成形品保持部(41)により保持し、成形品の付属部に対してエア噴射部(5)によってエアを吹きかけ成形品から付属部を吹き飛ばすことにより、付属部の残骸が成形品に残ってしまったり、成形品と付属部との境界を変形させてしまうなどの問題を発生させることなく、強度が低い半硬化状態の成形品からランナーなどの付属部を除去することができる。
【0011】
第1発明に係る成形品取出し装置(4)において、成形品保持部(41)が装着されたアーム(42)を備え、エア噴射部(5)がアーム(42)に取り付けられており、成形品保持部(41)により成形品が保持された状態でエア噴射部(5)から付属部に対しエアが吹きかけられるように構成してもよい。
このような構成を採用することにより、半硬化成形品を金型から取り出す工程の流れで半硬化状態の成形品から付属部を除去することができ、成形品の製造工程の円滑化を図ることができる。またアーム(42)に取り付けられたエア噴射部(5)からアーム(42)の成形品保持部(41)によって保持された成形品の付属部にエアを吹きかけるので、付属部にエアを吹きかけるためのエア噴射部(5)の向きを容易に調整することができる。
【0012】
第1発明に係る成形品取出し装置(4)において、成形品保持部(41)を、吸着によって成形品を保持する吸着手段(41)により構成してもよい。
このような構成を採用することにより、強度が弱く挟持が困難な半硬化状態の成形品や付属部を確実に保持して成形型(21、22)から取り出すことができ、ひいてはしっかりと保持しながら付属部にエアを噴射して半硬化状態の成形品から付属部を除去することができる。
【0013】
第1発明に係る成形品取出し装置(4)において、成形材料を、磁性粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物とし、吸着手段(41)として電磁石を用い、電磁石の磁性によって成形品を吸着保持するとよい。
このような構成を採用することにより、材料の種類や半硬化成形品の強度などを考慮して磁力による吸引力を調整することができるので、適切かつ確実に半硬化状態の成形品を保持することができる。
【0014】
第1発明に係る成形品取出し装置(4)において、成形品を射出成形法により製造したものとするとよい。これにより、射出成形法により成形された半硬化状態の成形品の付属部に対して、エア噴射部手段(5)によってエアを吹きかけ成形品から付属部を吹き飛ばすことにより、付属部の残骸が成形品に残ってしまったり、成形品と付属部との境界を変形させてしまうなどの問題を発生させることなく、強度が低い半硬化状態の成形品からランナーなどの付属部を除去することができる。
【0015】
第2発明に係る成形品取出し方法の特徴は、
成形品取出し装置(4)によって成形型(21、22)から成形品を取り出す成形品取出し方法であって、
成形型(21、22)の内部において成形された半硬化状態の成形品を成形品保持部(41)により保持する工程と、
成形品を成形品保持部(41)にて保持した状態によって、成形品の付属部に対してエアを吹きかけ、成形品から付属部を吹き飛ばすエア噴射工程と、を有する点にある。
【0016】
第3発明に係る成形品の製造方法の特徴は、
成形品取出し装置(4)を用いて、熱硬化性樹脂組成物の成形品を製造する方法であって、
成形型(21、22)を用いて半硬化状態の成形品を成形する工程と、
成形品を成形品保持部(41)により保持する工程と、
成形品を成形品保持部(41)にて保持した状態で、成形品の付属部にエアを吹きかけ、成形品から付属部を吹き飛ばすエア噴射工程と、を有する点にある。
【0017】
第2発明および第3発明によれば、成形型(21、22)のうち可動金型(21)から取り出された半硬化状態の成形品の付属部に対して、エアを吹きかけ、成形品から付属部を吹き飛ばすことにより、付属部の残骸が成形品に残ってしまったり、成形品と付属部との境界を変形させてしまうなどの問題を発生させることなく、強度が低い半硬化成形品からランナーなどの付属部を除去することができる。
【0018】
第4発明に係る付属部除去装置(5)の特徴は、
成形時において熱硬化性樹脂組成物の成形品と一体に形成される付属部を、該成形品から除去する付属部除去装置(5)であって、
半硬化状態の成形品の付属部に対してエアを吹きかけるエア噴射部(53)を有し、
エア噴射部(53)から吹きかけられるエアによって成形品から付属部を吹き飛ばす点にある。
【0019】
第4発明によれば、半硬化状態の成形品の付属部にエアを吹きかけて成形品から付属部を吹き飛ばすことにより、付属部の残骸が成形品に残ってしまったり、成形品と付属部との境界を変形させてしまうなどの問題を発生させることなく、強度が低い半硬化成形品からランナーなどの付属部を除去することができる。
【発明の効果】
【0020】
第1~4発明に係る成形品取出し装置、成形品の取出し方法、成形品の製造方法、および付属部除去装置によれば、半硬化状態の成形品のランナー、スプルー、ゲートなどの付属部を適切かつ確実に成形品から除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る成形品取出し装置を備えた金型装置の一状態(型締め状態)を示す断面概略図である。
図2図1に示す金型装置の一状態(型開き状態)を示す断面概略図である。
図3図1に示す金型装置の一状態(押出工程)を示す断面概略図である。
図4図1に示す金型装置の一状態(保持工程)を示す断面概略図である。
図5図1に示す金型装置の一状態(付属部除去工程)を示す断面概略図である。
図6図1に示す金型装置の一状態(成形品の取出工程)を示す断面概略図である。
図7図1図6に示す金型装置を用いて樹脂組成物からなる成形品を製造する工程を示すフローチャートである。
図8図7の取り出し工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1図8に基づき、本発明に係る成形品取出し装置および付属部除去装置の一例を説明する。
【0023】
図1図6に示すように、本実施形態に係る成形品取出し装置4および付属部除去装置5は、成形品を製造する金型装置1に備えられており、本実施形態における金型装置1は、成形品取出し装置4および付属部除去装置5のほか、成形材料としての、熱硬化性樹脂組成物の成形品を射出成形する射出成形装置2、射出成形された成形品を金型から離脱させる成形品押出装置3を有している。
【0024】
射出成形装置2は、成形品を成形するための成形型21、22として可動金型21および固定金型22を有しており、本実施形態において可動金型21は図示しない金型駆動装置による駆動により、図1に示す固定金型22に圧接された型締め状態の位置と、図2に示す固定金型22から離間する型開き状態との位置を接離移動するようにされている。
【0025】
可動金型21と固定金型22とを分割面で組み合わせることによりできる内部には、固定金型22と可動金型21との型締め状態において成形材料が充填されるキャビティ23が形成されるようになっており、固定金型22には、固定金型22外からキャビティ23に成形材料を射出する注入路24が形成されている。
【0026】
本実施形態で用いる成形材料としての熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも、熱硬化性樹脂と、硬化剤を含有する。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、硬化剤としては、特に限定されず、例えば、アミン系化合物、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、尿素系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、ヒドラジド系化合物、フェノール系化合物、ポリスルフィド系化合物などが挙げられる。硬化剤を用いる場合、硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂に対して、0.05質量%~1質量%が好ましく、0.2質量%~0.5質量%の範囲がより好ましい。硬化剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
本実施形態に用いる成形材料としての熱硬化性樹脂組成物は、さらに上記の成分に加え、本実施形態における効果を損なわない範囲で、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、磁性粒子、非磁性粒子、硬化促進剤、離型剤、発泡剤、顔料、充填剤、老化防止剤、加工助剤などが挙げられる。また磁性粒子は、表面の少なくとも一部が分散剤で被覆されていてもよい。磁性粒子としては、例えば、マグネタイト、γ酸化鉄、マンガンフェライト、コバルトフェライト、若しくはこれらと亜鉛、ニッケルとの複合フェライトやバリウムフェライトなどの強磁性酸化物、又は鉄、コバルト、希土類などの強磁性金属、窒化金属などの磁性粒子が挙げられる。分散剤としては、公知の界面活性剤や高分子分散剤などが挙げられる。以降、磁性粒子が含有されている場合を例示して説明する。
【0028】
そして、射出成形装置2は、磁性粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物を、注入路24を介して可動金型21および固定金型22内のキャビティ23に充填させて半硬化状態の成形品を成形するようになっている。
【0029】
ここで半硬化状態とは、ある種の熱硬化性樹脂の反応において,材料がある種の液体に接触する場合には膨潤しかつ加熱する場合には軟化するが、しかし完全には溶解または溶融しない中間段階を意味し、例えば、全硬化発熱量の20%以上~60%未満の発熱を終えた状態である。一方、本硬化状態とは、熱硬化性樹脂の硬化の最終状態であり、不溶不融性であり、完全に硬化した熱硬化性樹脂はこの状態にある。例えば、全硬化発熱量の60%以上~100%の発熱を終えた状態が本硬化状態といえる。
【0030】
なお、半硬化状態の前に初期状態がある。初期状態とは、熱硬化性樹脂の生成反応の初期の状態であり、溶剤に完全に溶け、加熱すると溶融する状態である。発熱量がゼロの場合の他、例えば、全硬化発熱量の20%未満の発熱状態の場合も初期状態に含まれる。全硬化発熱量や発熱量は、示差走査熱分析(DSC)を用いて測定される。
【0031】
また、本実施形態に係る金型装置1の成形品押出装置3は、キャビティ23に連通するように可動金型21の内部に形成されたピン挿通用の第1通路31を備えており、第1通路31には、押出ピン32が第1通路31内の収納位置と第1通路31におけるキャビティ23側の第1開口部から突き出される押出位置との間を進退自在に移動可能に挿通されている。押出ピン32の他端部(後端部)は、伝達部材34を介して押出ピン32を駆動するピン駆動装置33に接続されており、押出ピン32は、ピン駆動装置33による駆動により収納位置と押出位置との間を進退移動するようになっている。
【0032】
なお、本実施形態においては、固定金型22に成形材料を供給する注入路24が形成され、可動金型21に押出ピン32が挿通される第1通路31が形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
さらに、本実施形態に係る金型装置1の成形品取出し装置4は、射出成形装置2の固定金型22が固定されている図示しない固定側プラテンの上面に、固定して取り付けられている。
【0034】
成形品取出し装置4は、成形品を保持する成形品保持部41として、吸着により成形品を保持する吸着手段41を有している。吸着手段41は、図示しない通電制御装置による通電によって磁力の発生が制御されるようになっており、アーム42の先端に取り付けられている。
【0035】
アーム42は、例えばフレームに沿って走行する走行体や該走行体を駆動する電動モータなどからなる図示しないアーム駆動装置による駆動により、アーム42の先端に取り付けられた吸着手段41が型開き状態の両金型21、22間に位置するように昇降移動したり、両金型21、22間においてアームの先端が、成形品が押出ピン32により可動金型21から押し出される離脱位置に対して近離する方向に移動したり、さらには射出成形装置2の外部における成形品を取り出す取出し位置に移動するようになっている。そして、成形品取出し装置4は、図4に示すように、アーム42の先端が離脱位置に位置し成形品に近づいた状態で、通電制御装置による通電により吸着体に磁力を発生させると、吸着手段41の磁力による吸引力により成形品が吸着手段41に吸着することとなる。また、図6に示すように、吸着手段41によって成形品を保持した状態で、アーム駆動装置による駆動によりアーム42の先端が取出し位置に移動することにより、成形品が両金型21、22間から取り出されるようになっている。また、成形品取出し装置4は、通電制御装置による通電を解除して吸着手段41の磁力による吸引力をなくすことにより、成形品が所定の位置に収納されるように、吸着手段41から取り外されるようになっている。
【0036】
なお、吸着手段41は上記構成に限定されない。吸着手段41が、例えば、非磁性体からなる伝達体と、電磁石などの磁性体からなる吸着体と、を有し、吸着体が伝達体に対して接離可能に移動するようにして、吸着体と伝達体との距離によって吸着体の磁力による吸引力を調整することにより成形品を吸着手段41に吸着させたり、吸着手段41から取り外すようにしてもよい。
【0037】
また、本実施形態の成形材料は、磁性粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物であって磁性を有しており、成形品取出し装置4は、磁力による吸引力によって成形品を保持部としての吸着手段41に吸着させることにより両金型21、22間から取り出すようになっているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、エア吸引や真空吸着により成形品を吸着手段41に吸着させたり、あるいは成形品を、例えば粘着体からなる吸着手段41により吸着手段41に吸着させて、両金型21、22間から取り出すようにしてもよい。
【0038】
ここで、成形品の強度を考慮すると、磁性を有する成形品であれば磁性によって吸着手段41に吸着させることが好ましい。このような成形品取出し装置4によれば、吸着体の接離や通電によって吸着手段41の吸引力を容易に調整することができ、成形品を確実かつ安定して保持し、可動金型21から取り出すことができる。
【0039】
さらにまた、本実施形態に係る成形品取出し装置4は付属部除去装置5を有している。付属部除去装置5は、成形品の付属部に対して圧縮空気を噴射するエア噴射口51が形成されたエアノズル52を備えるエア噴射部53と、エアノズル52に空気を供給する図示しない空気供給部と、エアノズル52および空気供給部を連結するボディ54と、空気供給部からエアノズル52への圧縮空気の供給を制御する図示しないバルブと、を有している。
【0040】
エア噴射部53は、成形品取出し装置4のアーム42に取り付けられており、吸着手段41によって半硬化状態の成形品を保持している状態のときに、エア噴射口51が成形品の付属部(本実施形態においてはゲートG)に対向するように配置されている。そして、エア噴射部53においては、図5に示すように、成形品取出し装置4の吸着手段41によって保持される成形品の付属部に対してエアが吹きかけられるようになっており、これにより、付属部が成形品の製品本体から吹き飛ばされて成形品から除去されるようになっている。ここでエア噴射部53がアーム42に取り付けられているとは、エア噴射部53がアーム42自体に直接取り付けられる場合に限らず、アーム42の先端に装着されている成型品保持部41に取り付けられることにより、この成形品保持部41を介してアーム42に取り付けられてもよく、さらにアーム42自体に直接および成型品保持部41の双方に取り付けられてもよい。また、図1図6において、2つのエア噴射部53が、取り付けられているが、エア噴射部53の数は本実施形態のものに限定されず、射出成形装置2によって成形される成形品および付属部の形状に応じて適宜決定される。
【0041】
エアノズル52は、エア噴射口51から噴射されるエアの噴射方向を変更することができるようにボディ54に対して角度や位置を調整可能に連結されているとよい。これにより、エア噴射部53は、成形品や付属部の形状、位置、大きさに応じて、エア噴射口51を付属部に向けることができるようになっている。エア噴射部53は、付属部のうちゲートGの部分に対してエアを吹き付けることが好ましい。ゲートGの厚みは、スプルーSやランナーRの厚みと比較し薄いため、より低いエア圧で付属部を除去することができるからである。なお、本実施形態においてはエアノズル52をボディ54に対して角度・位置を調整可能に連結することによって、エアの噴射方向を変更するようになっているが、例えば、エア噴射部53をアーム42に対して角度・位置を調整可能に取り付けることにより、エアの噴射方向を変更するようにしてもよい。

【0042】
エア噴射部53から噴射されるエア圧力は、例えば0.6~1.0MPaである。エアの圧力や噴射時間は、成形品における付属部の形状や強度に基づき設定される。
【0043】
続いて、図7に基づき、本実施形態における成形品取出し装置4を備える金型装置1を用いた磁性粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物の成形品の製造方法、および図8に基づき成形品取出し装置4を用いた成形品の取出し方法について説明する。
【0044】
まず、金型駆動装置による駆動により可動金型21を固定金型22との分割面において接する位置に移動させ、可動金型21と固定金型22とを分割面で組み合わせて型締め状態とすることにより、可動金型21と固定金型22との間にキャビティ23を形成する(STEP1)。
【0045】
続いて、図1に示すように固定金型22の注入路24から磁性粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物を供給しキャビティ23に充填させ、成形品を成形する(STEP2)。ここで得られる成形品の硬化の状態は、半硬化状態である。半硬化状態であれば、不要となる付属部を再利用することが可能である。さらに、半硬化状態であれば、本硬化状態である場合と比較して、磁性粒子に付着している界面活性剤などからなる分散剤のガス化による爆発の懸念もなく、可動金型21から容易に成型品を剥離することができるというメリットも期待される。
【0046】
次に、キャビティ23内に充填された熱硬化性樹脂組成物が半硬化状態において、図2に示すように金型駆動装置による駆動により可動金型21を固定金型22から離間する位置に相対移動させ可動金型21と固定金型22とを型開き状態とする(STEP3)。これにより、固定金型22は、可動金型21およびキャビティ23内に成形された半硬化成形品から離間し、半硬化成形品は可動金型21内に残ることとなる。
【0047】
熱硬化性樹脂組成物の温度が硬化温度よりも50℃以上低い温度、好ましくは75~100℃低い温度になったら、図3に示すように押出ピン32をキャビティ23内に突き出すことにより、押出ピン32の先端を半硬化成形品自体に当接させて半硬化成形品を可動金型21から押し出す。これにより、半硬化成形品を可動金型21から離脱させる(STEP4)。熱硬化性樹脂組成物を前述の温度に冷却させた後に可動金型21から離脱させることにより、熱硬化性樹脂組成物の型離れが良好となる。なお、本実施形態においては押出ピン32を半硬化成形品自体に当接させて可動金型21から押し出すようになっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ランナーRやゲートGに当接させるようにしてもよい。
【0048】
続いて、成形品取出し装置4により、可動金型21から離脱した成形品を、金型装置1から取り出す(STEP5)。
【0049】
取り出し工程(STEP5)は、図4に示すようにまずアーム駆動装置による駆動によりアーム42の先端を離脱位置に移動させて吸着手段41を半硬化成形品に近づけるとともに、通電制御装置により吸着手段41に通電して吸着手段41の磁力による吸引力を発生させることにより、半硬化成形品を吸着手段41に吸着させて保持する(STEP51)。
【0050】
このように吸着手段41によって半硬化成形品を保持した状態において、図5に示すようにエア噴射部53の空気供給部からバルブを介してエアノズル52に圧縮空気を供給し、エア噴射口51からエアを噴射する。ここで、エアノズル52は、予め半硬化成形品や付属部の大きさ、形状などに応じてエア噴射口51が吸着手段41に保持された半硬化成形品の付属部に向くように配置されており、エア噴射口51からエアを噴射して付属部に対して吹きかけることにより付属部を吹き飛ばして、半硬化成形品から付属部を除去する(STEP52)。本実施形態において、成形品の付属部は連続して形成されており、付属部の一部(本実施形態においてはゲートG)にエアを吹きかけることにより、付属部全体(ゲートG、ランナーR、スプルーS)を成形品から除去することができる。
【0051】
その後、吸着手段41によって半硬化成形品を保持した状態で、図6に示すようにアーム駆動装置による駆動によりアーム42の先端を取出し位置に移動させて、半硬化成形品を両金型21、22の間から離間させ(STEP53)、所定の位置において吸着手段41の磁力を弱めて吸着手段41から半硬化成形品を取り外す(STEP54)。
【0052】
本実施形態においては、可動金型21から押し出された半硬化成形品を保持して取り出す工程の流れで、成形品取出し装置4の吸着手段41に保持された半硬化成形品の付属部に対し、付属部除去装置5によってエアを噴射するようになっている。このように取出し工程の一連の流れで付属部除去の工程を行うことにより、製造工程を円滑に進めることができる。
【0053】
なお、本発明は本実施形態の工程に限定されるものではなく、例えば、前述の付属部除去工程(STEP52)を、成形品を両金型21、22の間から取り出す離間工程(STEP53)の後であって、吸着手段41から取り外される取り外し工程(STEP54)の前に行うなど、固定金型22から離脱した半硬化成形品の付属部に対してエアを噴射するものであればよい。
【0054】
その後、付属部が除去された成形品を加熱して、半硬化状態の成形品を硬化させる(STEP6)。一方、成形品から除去された付属部は、粉砕されて再生原料として射出成形に用いられる(STEP7)。
【0055】
ここで、本実施形態において、成形品を半硬化状態で可動金型21から離脱させ、金型装置1から取り出す理由としては、以下の点が挙げられる。
【0056】
まず、半硬化状態で成形品から付属部を除去することにより、半硬化状態の成形品を粉砕して再生原料として改めて射出成形に用いることができる。このため、廃棄物を減少させることができるとともに、射出成形による成形品の製造コストの低廉化を図ることができる。
【0057】
また、本実施形態のように、成形材料として少なくとも一部が分散剤によって表面が被覆されている磁性粒子が含有された熱硬化性樹脂組成物を用いた場合には、可動金型21、固定金型22の温度を高温に設定すると、磁性粒子の表面を被覆する分散剤が消失して、磁性粒子が凝集を引き起こし、磁気特性が低下してしまう場合があるからである。
【0058】
ここで、樹脂組成物をキャビティ23内において射出温度よりも高い温度であって分散剤が消失しない温度に加熱して本硬化させてしまうと、可動金型21、固定金型22を加熱後、金型装置1を冷却することが必要となるので、作業性が低下するとともに、温度コントロールも困難である。さらに、熱硬化性樹脂組成物を本硬化させる温度に加熱すると、温度の調整によっては磁性粒子の表面を被覆する分散剤由来のガスが大量に発生し、このガスにより成形品がキャビティ23内において歪んでしまったり、さらには40t程度の圧力で型締めされている可動金型21、固定金型22が型開きしてしまい、金型装置1が破損してしまうおそれもある。
【0059】
このような理由により、成形品を半硬化状態で可動金型21から離脱させ、成形品から付属部を除去している。
【0060】
本実施形態に係る金型装置1によれば、可動金型21から取り出された半硬化状態の成形品の付属部に、付属部除去装置5のエア噴射部53によってエアを吹きかけることにより、成形品から付属部を吹き飛ばすことができる。これにより、強度が足りず切削や切断に適しない半硬化成形品から、付属部が成形品に残ってしまったり、さらには半硬化成形品と付属部との境界が変形してしまうなどの問題を発生させることなく、ランナーなどの付属部を適切かつ確実に除去することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、エア噴射部53を成形品取出し装置4のアーム42に取り付けることにより、取り出し工程の流れで半硬化成形品から付属部を除去することができ、半硬化成形品の製造工程を円滑に行うことができる。また、アーム42に取り付けられたエア噴射部53のエア噴射口51からアーム42の先端部に設けられている吸着手段41によって保持された半硬化成形品の付属部にエアを吹きかけるので、付属部にエアを吹きかけるためのエア噴射口51の向きの角度調整を容易に行うことができる。
【0062】
成形品取出し装置4の保持部を、吸着によって半硬化成形品を保持する吸着手段41とすることにより、強度が弱く挟持が困難な半硬化成形品や付属部を確実に保持して可動金型21から取り出すことができ、ひいてはしっかりと保持しながら付属部にエアを噴射して半硬化成形品から付属部を除去することが可能となる。
【0063】
さらに、成形対象として磁性粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物を用い、吸着手段41として電磁石を用いて、電磁石の磁性によって成形品を吸着保持することにより、材料の種類や半硬化成形品の強度などを考慮して磁力による吸引力を調整することができるので、適切かつ確実に半硬化成形品を保持することができる。
【0064】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、前記実施形態に対し当業者の通常の知識に基づいて適宜変更・改良が加えられたものも本発明範囲に含まれる。
【0065】
例えば、成形品取出し装置4や付属部除去装置5に、付属部が除去されていることを確認するためのセンサなどの検知手段や、該検知手段の結果を成形品にマーキングするためのレーザーマーキングユニットなどの印字手段を設けてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1… 金型装置
2… 射出成形装置
21… 可動金型(成形型)
22… 固定金型(成形型)
23… キャビティ
24… 注入路
3… 成形品押出装置
31… ピン挿通用通路
32… 押出ピン
33… ピン駆動装置
34… 伝達部材
35… スプリング
4… 成形品取出し装置
41… 吸着手段(成形品保持部)
42… アーム
5… 付属部除去装置
51… エア噴射口
52… エアノズル
53… エア噴射部
54… ボディ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8