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  • 特許-真空ポンプ装置 図1
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  • 特許-真空ポンプ装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】真空ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20230908BHJP
【FI】
F04D19/04 G
F04D19/04 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019129673
(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2021014814
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】508275939
【氏名又は名称】エドワーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】榎本 良弘
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-093889(JP,A)
【文献】特開2001-304173(JP,A)
【文献】特開2003-071271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータとステータとを備え、吸気口に入ってくるガス分子を排気口から排出する真空ポンプ部と、
弁体と弁座とを備え、前記真空ポンプ部の回転軸方向に沿って前記弁体が前記弁座に対して昇降する昇降式ゲートバルブ部とを備え、
前記ステータは、前記真空ポンプ部の回転軸に沿った貫通孔を備え、
前記弁体を支持する支持部材の少なくとも一部が、前記貫通孔に配置されており、
前記ガス分子が前記貫通孔の上部開口部に入ることを防止するように略円筒形状のベローズが設けられていること、
を特徴とする真空ポンプ装置。
【請求項2】
前記支持部材を昇降させる昇降装置をさらに備え、
前記支持部材は、前記弁体の略中心に接続されており、
前記昇降装置は、前記貫通孔内部に配置されていること、
を特徴とする請求項記載の真空ポンプ装置。
【請求項3】
前記昇降式ゲートバルブ部が開状態であるとき、前記弁体と前記弁座との間の流路幅は、周方向において略均一であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の真空ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ装置および昇降式ゲートバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体製造装置などのプロセスチャンバの下部には、当該チャンバ内の圧力を調整するために、ゲートバルブと真空ポンプ装置が設けられている。
【0003】
ある真空ポンプ装置は、回転軸方向に弁体を昇降させる昇降式のゲートバルブを備えている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-62881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゲートバルブが開状態である場合、ゲートバルブの開度に拘わらず、チャンバ内のガスは、周方向において均等に排気されることが好ましい。そのため、周方向において不均一にガスの流れを阻害するような構造部材を配置せずに、真空ポンプの中心部分に、弁体を支持する支持部材を配置することが好ましい。
【0006】
しかしながら、真空ポンプの中心部分にそのような支持部材を配置しようとすると、上述の真空ポンプ装置のように、真空ポンプ装置のロータと支持部材との間の間隙からガスが漏洩しないように、封止のための設備や構造が必要となるため、真空ポンプ装置の構造が複雑になってしまう。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、比較的簡単な構造で均等排気を実現可能な真空ポンプ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る真空ポンプ装置は、ロータとステータとを備え、吸気口に入ってくるガス分子を排気口から排出する真空ポンプ部と、弁体と弁座とを備え、真空ポンプ部の回転軸に沿って弁体が弁座に対して昇降する昇降式ゲートバルブ部とを備える。そして、ステータは、真空ポンプ部の回転軸方向に沿った貫通孔を備え、弁体または弁座を支持する支持部材の少なくとも一部が、貫通孔に配置されており、上述のガス分子が上述の貫通孔の上部開口部に入ることを防止するように略円筒形状のベローズが設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、比較的簡単な構造で均等排気を実現可能な真空ポンプ装置および昇降式ゲートバルブが得られる。
【0011】
本発明の上記又は他の目的、特徴および優位性は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る真空ポンプ装置の構成を示す断面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態2に係る真空ポンプ装置の構成を示す断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態3に係る真空ポンプ装置の構成を示す断面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態4に係る真空ポンプ装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
実施の形態1.
【0015】
図1は、本発明の実施の形態1に係る真空ポンプ装置の構成を示す断面図である。図1に示す真空ポンプ装置は、真空ポンプ部1と、昇降式ゲートバルブ部2とを備える。
【0016】
真空ポンプ部1は、インナステータ11とアウタロータ12とを備える。インナステータ11は、ステータ翼11aを備え、アウタロータ12は、ロータ翼12aを備える。ステータ翼11aとロータ翼12aとによりターボ分子ポンプ部13が構成され、ターボ分子ポンプ部13の後段にネジ溝ポンプ部14が形成されている。なお、ネジ溝ポンプ部14は形成されていなくてもよい。
【0017】
また、インナステータ11には、コイル11bが設けられており、アウタロータ12には、コイル12bが設けられており、コイル11b,12bによってモータが形成され、このモータによってアウタロータ12が回転する。また、インナステータ11およびアウタロータ12の一方または両方において、軸受15およびシール部16が設けられている。
【0018】
真空ポンプ部1の上端の吸気口17は、略円環状の形状を有し、周方向において略均一な幅を有する。吸気口17に入ってくるガス分子が真空ポンプ部1によって下部の排気口18から排出される。
【0019】
さらに、インナステータ11は、真空ポンプ部1の回転軸方向(つまり、アウタロータ12の回転軸であり、インナステータ11の中心軸)に沿った貫通孔11cを備える。つまり、インナステータ11は、真空ポンプ部1の中央に配置されており、貫通孔11cは、インナステータ11の中央に形成されている。
【0020】
他方、昇降式ゲートバルブ部2は、弁体21と弁座22とを備え、真空ポンプ部1の回転軸方向に沿って弁体21が弁座22に対して昇降する。弁座22は、チャンバ3に接続可能となっている。
【0021】
そして、実施の形態1では、弁体21を支持する支持部材23の少なくとも一部が、貫通孔11cに配置されている。
【0022】
具体的には、円柱状の支持部材23は、略円盤状の弁体21の略中心に接続されており、インナステータ11の中心部分における上部開口部11dを介して、貫通孔11cの内部に延びている。
【0023】
そして、貫通孔11cの内部には昇降装置24が配置されており、昇降装置24は、支持部材23を昇降させる。例えば、支持部材23および昇降装置24は、シャフトモータなどといったアクチュエータであり、昇降装置24は、電気的に制御され、電磁力によって支持部材23を昇降させ、これにより、弁体21を昇降させる。
【0024】
さらに、弁体21とインナステータ11との間には、回転軸方向に伸縮自在なベローズ25が設けられており、ベローズ25は、略円筒蛇腹形状を有し、貫通孔11cの上部開口部11dを気密封止する。
【0025】
昇降装置24によって弁体21が降下して弁座22に接触することで、昇降式ゲートバルブ部2が閉状態となり、昇降装置24によって弁体21が上昇して弁座22から離間することで、昇降式ゲートバルブ部2が開状態となり、さらに、昇降装置24によって、弁体21の位置を調整することで、昇降式ゲートバルブ部2の開度が調整される。
【0026】
また、弁座22の開口部は弁体21の形状に合わせた形状を有し、昇降式ゲートバルブ部2が閉状態であるとき、弁体21と弁座22との間の空隙がなくなり、昇降式ゲートバルブ部2が開状態であるとき、弁体21と弁座22との間の流路幅は、周方向において略均一となっている。これにより、均等排気が実現される。
【0027】
次に、実施の形態1に係る真空ポンプ装置の動作について説明する。
【0028】
当該真空ポンプ装置はチャンバ3に接続され、図示せぬ制御装置は、昇降装置24を制御して、弁体21を上昇または降下させ、昇降式ゲートバルブ部2の開度を調整する。このとき、弁体21の昇降に合わせてベローズ25が伸縮する。
【0029】
昇降式ゲートバルブ部2が開状態であるとき、円盤状の弁体21の周囲が開口しており、周方向において均一な吸気口17まで、周方向において均一なガス流路が形成される。これにより、真空ポンプ部1によって均等排気が実現される。
【0030】
例えば、弁体21の上方に円盤状のステージが配置されステージ上にプロセス対象物が載置されている場合、周方向において周囲のガス圧分布が略均一になり、チャンバ3内のプロセスで不要となったガスが真空ポンプ部1によって均等に排気される。
【0031】
以上のように、上記実施の形態1によれば、真空ポンプ部1は、アウタロータ12とインナステータ11とを備え、昇降式ゲートバルブ部2は、弁体21と弁座22とを備え、真空ポンプ部1の回転軸方向に沿って弁体21が弁座22に対して昇降する。そして、インナステータ11は、真空ポンプ部1の回転軸方向に沿った貫通孔11cを備え、弁体21を支持する支持部材23の少なくとも一部が、貫通孔11cに配置されている。
【0032】
これにより、回転しないインナステータ11に貫通孔11cを形成することで、真空ポンプ部1の中心部分に支持部材23を配置することができるため、比較的簡単な構造で均等排気が実現される。
【0033】
実施の形態2.
【0034】
実施の形態2に係る真空ポンプ装置では、真空ポンプ部1のターボ分子ポンプ部13の構造が実施の形態1と異なる。
【0035】
図2は、本発明の実施の形態2に係る真空ポンプ装置の構成を示す断面図である。図2に示すように、実施の形態2では、インナステータ11は、中間筒11eを備え、中間筒11eの内周側と外周側の両方に、ステータ翼11aおよびロータ翼12aが配置されており、実施の形態1のシール部16のようなシール部が設けられていない。
【0036】
なお、実施の形態2に係る真空ポンプ装置のその他の構成および動作については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0037】
実施の形態3.
【0038】
図3は、本発明の実施の形態3に係る真空ポンプ装置の構成を示す断面図である。
【0039】
図3に示すように、実施の形態3における昇降式ゲートバルブ部2では、弁座41は、略円盤状の形状を有し、弁体42は、略円筒状の形状を有し、弁座41を支持する支持部材43が弁座41の略中心に接続されており、支持部材43の少なくとも一部が、インナステータ11の貫通孔11cに配置されている。貫通孔11cは上部開口部31を備え、支持部材43は、貫通孔11cの上部開口部31を貫通しており、支持部材43は、昇降しないため固定されており、上部開口部31の壁面と支持部材43との間隙は固定的に気密封止されている。
【0040】
また、この実施の形態3では、弁座41は、チャンバ3内に配置されるステージとして使用される。
【0041】
そして、実施の形態3では、弁体42は、真空ポンプ部1の外側に配置され、真空ポンプ部1の回転軸方向に沿って昇降する。
【0042】
また、真空ポンプ部1の外周部には、弁体42を収容可能な外周収容部44が設けられており、外周収容部44内に、弁体42を昇降させる昇降装置45が設けられている。
【0043】
昇降装置45は、電気的に制御され、例えばシャフトモータと同様の原理で、電磁力によって弁体42を昇降させるアクチュエータである。
【0044】
この実施の形態3では、昇降装置45によって弁体42が上昇して弁座41に接触することで、昇降式ゲートバルブ部2が閉状態となり、昇降装置45によって弁体42が降下して弁座41から離間することで、昇降式ゲートバルブ部2が開状態となり、さらに、昇降装置45によって、弁体42の位置を調整することで、昇降式ゲートバルブ部2の開度が調整される。
【0045】
なお、弁座41の底面に突起を設け、弁座41と弁体42との接触面をテーパ状としてもよい。また、弁座41の側面に弁体42が接触することで流路を閉塞し、昇降式ゲートバルブ部2を閉状態とするようにしてもよい。その場合も、弁座41と弁体42との接触面をテーパ状としてもよい。
【0046】
また、弁体42の上部開口部は弁座41の形状(この実施の形態では、弁座41の底面の形状、ここでは平面)に合わせた形状を有し、昇降式ゲートバルブ部2が閉状態であるとき、弁座41と弁体42との間の空隙がなくなり、昇降式ゲートバルブ部2が開状態であるとき、弁座41と弁体42との間の流路幅は、周方向において略均一となっている。これにより、均等排気が実現される。
【0047】
なお、実施の形態3における真空ポンプ部1の構成は、実施の形態1と同様である。また、実施の形態3における真空ポンプ部1の構成は、実施の形態2と同様としてもよい。
【0048】
次に、実施の形態3に係る真空ポンプ装置の動作について説明する。
【0049】
図示せぬ制御装置は、昇降装置45を電気的に制御して、弁体42を上昇または降下させ、昇降式ゲートバルブ部2の開度を調整する。
【0050】
昇降式ゲートバルブ部2が開状態であるとき、円盤状のステージである弁座41の周囲が開口しており、周方向において均一な吸気口17まで、周方向において均一なガス流路が形成される。これにより、真空ポンプ部1によって均等排気が実現される。
【0051】
つまり、ステージとしての弁座41の周辺のガス圧分布が周方向において略均一になり、チャンバ3内のプロセスで不要となったガスが真空ポンプ部1によって均等に排気される。
【0052】
以上のように、上記実施の形態3によれば、真空ポンプ部1は、アウタロータ12とインナステータ11とを備え、昇降式ゲートバルブ部2は、弁体42と弁座41とを備え、真空ポンプ部1の回転軸方向に沿って弁体42が弁座41に対して昇降する。そして、インナステータ11は、真空ポンプ部1の回転軸方向に沿った貫通孔11cを備え、弁座41を支持する支持部材43の少なくとも一部が、貫通孔11cに配置されている。
【0053】
これにより、回転しないインナステータ11に貫通孔11cを形成することで、真空ポンプ部1の中心部分に支持部材43を配置することができるため、比較的簡単な構造で均等排気が実現される。
【0054】
実施の形態4.
【0055】
図4は、本発明の実施の形態4に係る真空ポンプ装置の構成を示す断面図である。
【0056】
実施の形態4では、昇降式ゲートバルブ部2は、略円環状の形状を有する弁体61を備え、また、実施の形態3と同様の弁座41および支持部材43を備える。
【0057】
また、真空ポンプ部1の外周部には、弁体61の支持部材62を収容可能な外周収容部63が設けられており、外周収容部63内に、支持部材62、つまり弁体61を昇降させる昇降装置64が設けられている。支持部材62および昇降装置64は、例えばシャフトモータであって、昇降装置64は、電気的に制御され、電磁力によって支持部材62を昇降させるアクチュエータである。
【0058】
実施の形態4では、弁体61は、真空ポンプ部1の外側に配置され、真空ポンプ部1の回転軸方向に沿って昇降し、上昇すると、弁座41とチャンバ3の内壁3aとに接触しガス流路を閉塞する。なお、弁座41と弁体61との接触面をテーパ状としてもよい。同様に、チャンバ3の内壁3aに突起を設け、チャンバ3の内壁3aと弁体61との接触面をテーパ状としてもよい。
【0059】
また、弁体61が降下し昇降式ゲートバルブ部2が開状態であるとき、弁座41と弁体61との間の流路幅は、周方向において略均一となっている。これにより、均等排気が実現される。
【0060】
なお、実施の形態4に係る真空ポンプ装置のその他の構成および動作については実施の形態3と同様であるので、その説明を省略する。
【0061】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0062】
例えば、上記実施の形態1~4に係る真空ポンプ装置は、アウターローター型の真空ポンプ装置であるが、インナーローター型の真空ポンプ装置としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、例えば、真空ポンプ装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 真空ポンプ部
2 昇降式ゲートバルブ部(昇降式ゲートバルブの一例)
3 チャンバ
11 インナステータ(ステータの一例)
11c 貫通孔
12 アウタロータ(ロータの一例)
21,42,61 弁体
22,41 弁座
23,43 支持部材
24,45,64 昇降装置
25 ベローズ
図1
図2
図3
図4