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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】岩石穿孔装置
(51)【国際特許分類】
   E21C 39/00 20060101AFI20230908BHJP
   E21B 49/00 20060101ALI20230908BHJP
   E21C 25/02 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
E21C39/00
E21B49/00
E21C25/02
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019149285
(22)【出願日】2019-08-16
(65)【公開番号】P2020051246
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】18192037.2
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515277780
【氏名又は名称】サンドヴィック マイニング アンド コンストラクション オーワイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハマーライネン, パシ
(72)【発明者】
【氏名】セタラ, ティモ
(72)【発明者】
【氏名】プルシモ, ユハ
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特公平05-088344(JP,B2)
【文献】米国特許第06791469(US,B1)
【文献】国際公開第2014/206471(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21C 25/00-51/00
E21B 1/00-49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩石穿孔を監視する方法であって、
打撃岩石穿孔装置の衝撃機構(5)によって、前記打撃岩石穿孔装置の工具(9)内を伝播する応力波を発生させること、
前記工具(9)内を伝播する前記応力波を計測すること、
穿孔貫入速度(DPR)を示す穿孔パラメータを計測すること
を含む方法において、
前記衝撃機構(5)によって発生させ、前記工具(9)内を伝播する、前記計測した応力波から、穿孔する岩石(12)から前記工具(9)に反射された反射応力波の圧縮応力波および引張り応力波の少なくとも1つを識別すること、
前記反射応力波の前記圧縮応力波および前記引張り応力波の前記少なくとも1つの、少なくとも1つの特性を判断すること、
前記圧縮応力波および前記引張り応力波の前記少なくとも1つの、前記少なくとも1つの特性における変化に基づいて、前記工具(9)が前記岩石(12)の空洞(16)に近づいていることを、前記工具(9)が実際に前記空洞(16)に入る前に検知すること、ならびに
前記工具(9)が前記空洞(16)に近づいていることを検知することに呼応して、少なくとも1つの、空洞に関連した行為を開始すること
を特徴とする、岩石穿孔を監視する方法。
【請求項2】
前記穿孔貫入速度(DPR)を示す前記穿孔パラメータにおける変化、ならびに前記圧縮応力波および前記引張り応力波の前記少なくとも1つの、前記少なくとも1つの特性における変化に基づいて、前記工具(9)が前記岩石(12)の中の前記空洞(16)に近づいていることを、前記工具(9)が実際に前記空洞(16)に入る前に検知すること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工具(9)が前記空洞(16)に近づいていることを、前記工具(9)が実際に前記空洞(16)に入る前に検知することに呼応して、前記打撃岩石穿孔装置の少なくとも1つの動作パラメータを制御すること
を特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記穿孔貫入速度(DPR)を示す前記穿孔パラメータと、前記反射応力波の前記圧縮応力波および前記引張り応力波の前記少なくとも1つの、前記少なくとも1つの特性の間の比率を決定すること、および
前記穿孔貫入速度(DPR)を示す前記穿孔パラメータと、前記反射応力波の前記圧縮応力波および前記引張り応力波の前記少なくとも1つの、前記少なくとも1つの特性の間の前記決定した比率における変化に基づいて、前記工具(9)が前記空洞(16)に近づいていることを検知すること
を特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記穿孔貫入速度(DPR)における減少、および前記反射応力波の前記圧縮応力波の振幅における減少に呼応して、前記工具(9)が前記空洞(16)に近づいていることを、前記工具(9)が前記空洞(16)に入る前に検知すること
を特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記穿孔貫入速度(DPR)における減少、および前記反射応力波の前記引張り応力波の振幅における増加に呼応して、前記工具(9)が前記空洞(16)に近づいていることを、前記工具(9)が前記空洞(16)に入る前に検知すること
を特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記打撃岩石穿孔装置の回転圧力(RP)をさらに計測すること、
前記穿孔貫入速度(DPR)における前記減少、前記打撃岩石穿孔装置の前記回転圧力(RP)における増加、ならびに、前記反射応力波の前記圧縮応力波の前記振幅における前記減少および前記反射応力波の前記引張り応力波の前記振幅における前記増加の少なくとも1つ、の組み合わせに呼応して、前記工具(9)が前記空洞(16)に近づいていることを検知すること
を特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記打撃岩石穿孔装置の前記少なくとも1つの動作パラメータが、打撃圧力、送り圧力、回転圧力、洗浄圧力、および打撃周波数の少なくとも1つであること
を特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
フレーム、
工具(9)、
前記工具(9)内を伝播する応力波を発生させるための衝撃機構(5)、
前記衝撃機構(5)によって発生させ前記工具内を伝播する前記応力波を計測するための計測手段、
穿孔貫入速度(DPR)を示す穿孔パラメータを計測するための計測手段(17)、および
少なくとも1つの計算ユニット(18)
を備えた打撃岩石穿孔装置において、
前記少なくとも1つの計算ユニット(18)が、
前記衝撃機構(5)によって発生させ、前記工具(9)内を伝播する、前記計測した応力波から、穿孔する岩石(12)から前記工具(9)に反射された反射応力波の圧縮応力波および引張り応力波の少なくとも1つを識別し、
前記反射応力波の前記圧縮応力波および前記引張り応力波の前記少なくとも1つの、少なくとも1つの特性を判断し、
前記圧縮応力波および前記引張り応力波の前記少なくとも1つの、前記少なくとも1つの特性における変化に基づいて、前記工具(9)が前記岩石(12)の空洞(16)に近づいていることを、前記工具(9)が実際に前記空洞(16)に入る前に検知するように設定され、
前記打撃岩石穿孔装置が、前記工具(9)が前記空洞(16)に近づいていることを検知することに呼応して、少なくとも1つの空洞に関連した行為を開始するための、少なくとも1つの制御ユニット(19)を含むこと
を特徴とする、打撃岩石穿孔装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの計算ユニット(18)がさらに、
前記穿孔貫入速度(DPR)を示す前記穿孔パラメータにおける変化、ならびに前記圧縮応力波および前記引張り応力波の前記少なくとも1つの、前記少なくとも1つの特性における変化に基づいて、前記工具(9)が前記岩石(12)の中の前記空洞(16)に近づいていることを、前記工具(9)が実際に前記空洞(16)に入る前に検知するように設定されること
を特徴とする、請求項9に記載の打撃岩石穿孔装置。
【請求項11】
前記制御ユニット(19)が、前記工具(9)が前記空洞(16)に近づいていることを、前記工具(9)が実際に前記空洞(16)に入る前に検知することに呼応して、前記打撃岩石穿孔装置の少なくとも1つの動作パラメータを制御するように設定されること
を特徴とする、請求項9または10に記載の打撃岩石穿孔装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの計算ユニット(18)が、
前記穿孔貫入速度(DPR)を示す前記穿孔パラメータと、前記反射応力波の前記圧縮応力波および前記引張り応力波の前記少なくとも1つの、前記少なくとも1つの特性との間の比率を決定し、
前記穿孔貫入速度(DPR)を示す前記穿孔パラメータと、前記反射応力波の前記圧縮応力波および前記引張り応力波の前記少なくとも1つの、前記少なくとも1つの特性との間の前記決定した比率における変化に基づいて、前記工具(9)が前記空洞(16)に近づいていることを検知するように設定されること
を特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の打撃岩石穿孔装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの計算ユニット(18)が、
前記穿孔貫入速度(DPR)における減少、および前記反射応力波の前記圧縮応力波の振幅における減少に呼応して、前記工具(9)が前記空洞(16)に近づいていることを、前記工具(9)が前記空洞(16)に入る前に検知するように設定されること
を特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の打撃岩石穿孔装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの計算ユニット(18)が、
前記穿孔貫入速度(DPR)における減少、および前記反射応力波の前記引張り応力波の振幅における増加に呼応して、前記工具(9)が前記空洞(16)に近づいていることを、前記工具(9)が前記空洞(16)に入る前に検知するように設定されること
を特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の打撃岩石穿孔装置。
【請求項15】
前記打撃岩石穿孔装置がさらに、前記打撃岩石穿孔装置の回転圧力(RP)を計測するための計測手段(20)を含み、
前記少なくとも1つの計算ユニット(18)が、前記穿孔貫入速度(DPR)における前記減少、前記打撃岩石穿孔装置の前記回転圧力(RP)における増加、ならびに前記反射応力波の前記圧縮応力波の前記振幅における前記減少および前記反射応力波の前記引張り応力波の前記振幅における前記増加の少なくとも1つ、の組み合わせに呼応して、前記工具(9)が前記空洞(16)に近づいていることを検知するように設定されること
を特徴とする、請求項13または14に記載の打撃岩石穿孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩石穿孔装置、および岩石穿孔を監視する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
岩石穿孔では、穴は打撃岩石穿孔機によって岩石に穿孔される。ここで、用語の「岩石」は、巨岩、岩材、地殻、および他の相対的に堅い物質をも包含すると広く理解されたい。
【0003】
岩石穿孔機は打撃装置を備え、この打撃装置は、直接、またはシャンクを介してのいずれかで工具に衝撃パルスを与え、それによって工具内を伝わる応力波を発生させる。工具またはシャンクに対する打撃装置の衝撃は、工具内に圧縮応力波を与え、波は工具の最も遠い端部へ伝播する。圧縮応力波が工具の最も遠い端部に到達すると、工具は波の作用によって岩石の中へ貫入する。打撃装置により発生させた圧縮応力波のエネルギーの一部が反射波として反射され、その反射波は工具内を反対方向に、すなわち打撃装置に向かって伝播する。状況によって、反射波は圧縮応力波または引張り応力波のみを含むことがある。しかし、反射波は典型的に、引張り応力波成分および圧縮応力波成分の両方を含む。工具内を伝わる応力波は計測することができ、計測結果は、たとえば米国特許第4,671,366号に記述されているように、岩石破砕装置の制御に利用することができる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、新しい岩石破砕装置、および岩石穿孔の進行を監視する方法を提供することである。
【0005】
本発明は、独立請求項の主要点を特徴とする。
【0006】
本発明は、岩石穿孔の進行を監視するとの概念に基づいて、特に岩石破砕装置の工具が岩石の中の空洞に近づいていることを、工具が実際に空洞の中に入る前に検知するために、穿孔を監視するとの概念に基づく。
【0007】
開示した本発明では、岩石穿孔装置の工具が空洞に近づいていることを、工具が実際に空洞に入る前に先回りして検知することができ、その結果、工具が空洞に全穿孔出力で入ることを防止するように、岩石穿孔装置の動作を制御することができる。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態を従属請求項に開示する。
【0009】
以下、添付図面を参照して、好ましい実施形態により、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】岩石穿孔リグおよびその中の岩石穿孔機を概略的に示す側面図である。
図2図1に示した岩石穿孔機の工具を概略的に示す側面図である。
図3】岩石穿孔中に現れる応力波を概略的に示す図である。
図4】岩石穿孔機の動作中の、反射応力波成分のエネルギー振幅、穿孔貫入速度、および回転圧力を概略的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図は、開示した解決法のいくつかの実施形態を、見やすいように単純化した形態で示している。図では、同じ参照数字は同様の要素を識別している。
【0012】
岩石の穿孔は、少なくとも1つの岩石穿孔機を備えた岩石穿孔装置によって、岩石の中に穴を穿孔することにより行われる。ここで、用語の「岩石」は巨岩、岩材、地殻、および他の相対的に堅い物質をも包含すると広く理解されたい。岩石穿孔機は衝撃機構を備え、この衝撃機構は、直接、またはドリルシャンクなどのアダプタを介してのいずれかで、工具に衝撃パルスを与える。衝撃パルスは応力波を発生させ、応力波は工具内を伝播する。応力波が、穿孔する岩石に向かい合う工具の端部に到達すると、工具は波の作用によって岩石の中へ貫入する。応力波のエネルギーの一部が反射波として反射され、この反射波は、工具内を反対方向に、すなわち衝撃機構に向かって伝播する。状況によって、反射応力波は、圧縮応力波または引張り応力波のみを含むことがある。しかし、反射応力波は典型的に、引張りおよび圧縮の両方の応力波成分を含む。
【0013】
図1は、著しく単純化した岩石穿孔リグ1の側面図を概略的に示す。岩石穿孔リグ1は、可動式キャリア2およびブーム3を備え、ブーム3の端部には、フレーム8’、衝撃機構5、および回転機構6を有する岩石穿孔機8を備えた送りビーム4がある。さらに図1の岩石穿孔リグ1は工具9を備え、工具9の近位の端部9’が岩石穿孔機8に連結され、その遠位の端部9”が穿孔する岩石12に向かって配置されている。工具9の近位の端部9’は、図1では破線によって概略的に示されている。
【0014】
図1の岩石穿孔リグ1の工具9は、ドリル棒10a、10b、10c、ドリル軸10a、10b、10c、またはドリル管10a、10b、10cと、工具9の近位の端部9’にあるドリルシャンク14と、工具9の遠位の端部9”にあるドリルビット11とを備える。ドリルビット11は、ボタン11aを備えてよいが、他のドリルビット構造とすることも可能である。相互に接続されたドリル棒、ドリル軸、またはドリル管は、ドリル列(string)を形成する。図1の実施形態、ならびに図3では、ドリル列、ドリルシャンク14、およびドリルビット11は、岩石穿孔機8の工具9を形成し、ドリル棒、ドリル軸、またはドリル管と、ドリルシャンク14と、ドリルビット11とは、工具9の部品を成している。長尺穴穿孔としても知られる、組み合わせ式ドリル棒を用いての穿孔では、穿孔する穴の深さによって、ドリルビット11と岩石穿孔機8の間にいくつかのドリル棒が取り付けられる。話を簡単にするために、この説明では以後、工具9はドリル棒10a~10c、ドリルシャンク14、およびドリルビット11を備えると仮定するが、工具9の実際の施工によっては、工具9はドリル棒の代わりにドリル軸またはドリル管を備えてよい。図2は、図1に示した岩石穿孔機8の工具9の側面図を概略的に示す。
【0015】
図1の実施形態では、送りビーム4に取り付けられた、工具9を支持するための案内サポート13も開示している。さらに、図1の岩石穿孔リグ1は、送り機構7も備えており、送り機構7は送りビーム4に配置され、送りビーム4に対して岩石穿孔機8が移動可能に配置されている。穿孔中、送り機構7は、送りビーム4上で岩石穿孔機8を前方へ押し、したがってドリルビット11を岩石12に対して押すように配置されている。
【0016】
図1では、岩石穿孔リグ1を、岩石穿孔機8の構造に対して、実際よりも相当に小さく示している。図1の岩石穿孔リグ1は、見やすいように、ただ1つのブーム3、送りビーム4、岩石穿孔機8、および送り機構7を有するが、岩石穿孔リグは、送りビーム4、岩石穿孔機8、および送り機構7を有した複数のブーム3を備えてもよいことは明らかである。通常岩石穿孔機8は、ドリルビット11がブロックされてしまうことを防止するための洗浄手段を含むことも明らかである。見やすいように、図1には洗浄手段は示していない。穿孔機8は油圧式で動作させることができるが、空圧式で、または電気的に動作させてもよい。
【0017】
上に開示した岩石穿孔装置または岩石穿孔機は、トップハンマ型穿孔装置である。岩石穿孔装置または岩石穿孔機は上に説明した以外の構造を有してもよい。ダウンザホール穿孔に使用される穿孔機では、衝撃機構は穿孔穴の底にドリルビットに隣接して設置され、ドリルビットはドリル棒を介して穿孔穴の上に設置された回転機構に接続される。
【0018】
衝撃機構5には、衝撃ピストンが備えられてよく、衝撃ピストンは、圧力媒体の作用下で往復運動をして、工具に対して直接、または、工具9と衝撃ピストンの間の、ドリルシャンクもしくは別の種類のアダプタなどの中間部品を介してのいずれかで、打撃を与える。当然、別の構造の衝撃機構も可能である。したがって、衝撃機構5の動作は、電磁気の使用、または機械的に往復運動する衝撃ピストンを何も用いない油圧の使用に基づいてもよく、ここで、衝撃機構の用語は、そのような特徴に基づく衝撃機構も指す。
【0019】
衝撃機構5により発生した応力波は、ドリルシャンク14、およびドリル棒10aから10dに沿って、工具9の遠位の端部9”にあるドリルビット11へ届く。応力波がドリルビット11に当たると、ドリルビット11およびそのボタン11aが穿孔する岩石をたたき、それによって岩石12に強い応力を生じさせ、それによって岩石12の中にクラックを形成させる。典型的に、岩石12に加えられ、または、作用した応力波の一部が、工具9へ、そして工具9に沿って衝撃機構5に向かって反射される。穿孔中、回転機構6は連続した回転力を工具9へ伝え、したがってドリルビット11のボタン11aは、衝撃の後にその位置が変わり、次の衝撃では岩石12の新しい箇所を打撃するようになる。
【0020】
図3は応力波を概略的に示しており、穿孔する岩石12へと伝播する応力波を参照記号Siで示し、岩石12から工具9へ反射された応力波を参照記号Srで示している。上述の通り、工具内へ発生させ、破砕する岩石へと伝わる応力波のエネルギーの一部は、反射応力波として反射される。反射応力波は、圧縮応力波および引張り応力波の少なくとも1つから成り、すなわち反射応力波は、圧縮応力波および/または引張り応力波から成る。反射応力波の圧縮応力波および引張り応力波は、工具9に接続して、または工具9の中間付近に配置された計測手段15によって計測してよい。計測手段15の動作は、たとえば工具9内を伝わる応力波に呼応した、工具9の磁化の変化を計測することに基づいてよい。様々な異なる適切な計測手段が岩石破砕の当業者には知られており、これらの計測手段のより詳細な設定、または動作については、本明細書では考慮しない。図2に、計測手段15を概略的に示す。
【0021】
本明細書に開示した解決法によって、反射応力波の圧縮応力波および引張り応力波の少なくとも1つを用いることで、工具9が、穿孔する岩石12の中の空洞16に近づいていることを、工具9が実際に空洞16に入る前に検知することができる。空洞16は岩石の中の空いた空間、または空いた隙間であり、応力波は実質的に、この空間または隙間を貫通しない。空洞16も、図2に概略的に示している。
【0022】
本明細書に開示した、岩石穿孔の監視のための解決法では、工具9内に応力波を発生させ、応力波は穿孔する岩石12へ向かって工具9内を伝播する。工具9内を伝播する応力波は、計測手段15によって計測する。さらに、穿孔貫入速度、すなわち工具9が岩石12の中へ貫入する速度を示す穿孔パラメータを計測する。
【0023】
穿孔貫入速度DPRを示す穿孔パラメータは、穿孔貫入速度DPRを間接的に示すパラメータであってよい。このようなパラメータは、たとえば送りモータまたは送りシリンダなどの、送りアクチュエータへの送り油流れのような、別の穿孔パラメータであってよい。穿孔貫入速度DPRは、位置、速度、および/または加速度のセンサに基づいて、直接的に与えてもよい。穿孔貫入速度を直接的または間接的のいずれかで示す穿孔パラメータは、計測手段17で計測してよく、計測手段17も図2に非常に概略的に示している。
【0024】
計測した、工具9内を伝播する応力波、ならびに穿孔貫入速度DPRまたは穿孔貫入速度を示す別の穿孔パラメータは、それぞれの計測手段15、17から、少なくとも1つの計算ユニット18へ転送され、計算ユニット18は、少なくとも動作上で岩石穿孔機8の一部を形成し、計算ユニット18は、計測した、工具9内を伝播する応力波、および穿孔貫入速度を示す穿孔パラメータを分析して、工具9が岩石12の中の空洞16に近づいているかどうかを決定するように設定される。岩石穿孔リグ1およびその中の岩石穿孔機8について考えれば、計算ユニット18は、岩石穿孔リグ1および/または岩石穿孔機8の任意の適切な位置に配置してよい。計算ユニット18は、クラウドサービスシステムによって実現してもよい。
【0025】
計算ユニット18は、計測した、工具9内を伝播する応力波から、穿孔する岩石12から工具9へ反射された反射応力波の圧縮応力波および引張り応力波の少なくとも1つを識別するように設定される。さらに計算ユニット18は、反射応力波の圧縮応力波および引張り応力波の少なくとも1つの、少なくとも1つの特性を決定するように設定される。反射応力波の圧縮応力波および/または引張り応力波の少なくとも1つの付加的特性は、たとえば圧縮または引張り応力波のエネルギー、圧縮または引張り応力波の減衰もしくは持続時間、圧縮または引張り応力波の振幅、圧縮または引張り応力波の形状、およびそれらの任意の相関の少なくとも1つであってよい。圧縮または引張り応力波の形状は、たとえば反射応力波の圧縮または引張り応力波の周波数要素を計測することによって、決定することができる。
【0026】
計算ユニット18はさらに、少なくとも、反射応力波の圧縮応力波および引張り応力波の少なくとも1つにおける変化に基づいて、工具9が岩石12の中の空洞16に近づいていることを、工具9が実際に空洞16に入る前に検知するように設定される。
【0027】
工具9が空洞16に近づいた時、岩石の中の、穿孔方向から見て空洞16の前にある岩材が湾曲または振動し、それによって、工具9内に発生させた応力波が、岩材を、空洞のない岩材を通るのと同程度に貫通することを妨げる。この現象は、圧縮応力波および引張り応力波の少なくとも1つの、少なくとも1つの特性のレベルを、同一の少なくとも1つの特性の、応力波計測開始時点のレベルと比較した場合の変化に呼応して、検知することができる。圧縮応力波および引張り応力波の少なくとも1つの、少なくとも1つの特性の、応力波計測開始時点のレベル、または少なくとも1つの特性の以前の一定のレベルが、工具9がもしかすると空洞16に近づいていることを、工具9が実際に空洞16に入る前に検知するための応力波の計測中に、圧縮応力波および引張り応力波の少なくとも1つの、少なくとも1つの特性のレベルを比較するための基準レベルとなる。工具9が空洞16に近づくことを中断する、圧縮応力波および引張り応力波の少なくとも1つの少なくとも1つの特性のレベルにおける変化は、5、10または20パーセントといった、レベルにおける著しい変化であってよい。
【0028】
工具9が空洞16に近づいていることを検知した時、工具9が空洞16に近づいていることの検知に呼応して、少なくとも1つの、空洞に関連した行為を開始することができる。少なくとも1つの、空洞に関連した行為を開始するために、計算ユニット18は、少なくとも動作上で岩石穿孔機8の一部を形成する制御ユニット19へ、それぞれのトリガ信号TSを送ってよい。制御ユニット19は、岩石穿孔リグ1および/または岩石穿孔機8の任意の適切な位置に配置してよい。制御ユニット19は、計算ユニット18の一部を形成してもよく、あるいは言い換えれば、計算ユニット18は制御ユニット19を含んでもよく、または制御ユニット19の機能を提供してもよい。
【0029】
制御ユニット19は、トリガ信号TSの受信に呼応して、少なくとも1つの、空洞に関連した行為を開始するように設定される。空洞に関連した行為は、工具が空洞に近づいていることを、工具が実際に空洞に入る前に検知することに呼応して、たとえば、岩石穿孔機の打撃圧力、送り圧力、回転圧力、洗浄圧力、および打撃周波数の少なくとも1つのような、少なくとも1つの動作パラメータを制御することであってよい。工具もしくは岩石穿孔機の損傷を引き起こすか、または穿孔する穴の方向をその意図した方向から変化させるかのいずれかの可能性がある、穿孔すなわち工具9が全出力で空洞の中に入ることを、この方法によって防止できる可能性がある。あるいは空洞に関連する行為は、たとえば岩石穿孔機の操作者に対して有効な警報信号を設け、その結果、操作者が彼/彼女の思考によって、空洞16に起因した取り得る制御行為を開始できるようにすることでよい。
【0030】
一実施形態によれば、計算ユニット18は、穿孔貫入速度を示す穿孔パラメータにおける変化、ならびに圧縮応力波および引張り応力波の少なくとも1つの、少なくとも1つの特性における変化に基づいて、工具が岩石内の空洞に近づいていることを、工具が実際に空洞に入る前に検知するように設定される。穿孔貫入速度を示す穿孔パラメータにおける変化とは、その穿孔パラメータの実際の値における特定の変化、またはその穿孔パラメータの支配的な全般のレベルを、計測期間の開始時におけるレベル、または以前の定常レベルと比較した場合の変化を指してよい。レベルにおける変化は、たとえば5、10、または20パーセントであってよい。
【0031】
一実施形態によれば、計算ユニット18は、穿孔貫入速度DPRにおける減少、および反射応力波の圧縮応力波の振幅における減少に呼応して、工具9が空洞16に近づいていることを、工具9が空洞16に入る前に検知するように設定される。
【0032】
一実施形態によれば、計算ユニット18は、穿孔貫入速度における減少、および反射応力波の引張り応力波の振幅における増加に呼応して、工具9が空洞16に近づいていることを、工具9が空洞16に入る前に検知するように設定される。
【0033】
一実施形態によれば、計算ユニット18は、穿孔貫入速度を示す穿孔パラメータと、反射応力波の圧縮応力波および引張り応力波の少なくとも1つの、少なくとも1つの特性との間の比率を決定し、決定した、穿孔貫入速度を示す穿孔パラメータと、反射応力波の圧縮応力波および引張り応力波の少なくとも1つの、少なくとも1つの特性との間の比率における変化に基づいて、工具9が空洞16に近づいていることを検知するように設定される。決定した比率における変化とは、その比率の実際の値における特定の変化、または決定した比率の支配的な全般のレベルを、計測期間の開始時におけるレベル、または以前の定常レベルと比較した場合の変化を指してよい。レベルにおける変化は、たとえば5、10、または20パーセントであってよい。
【0034】
一実施形態によれば、岩石穿孔機はさらに、岩石穿孔機の回転圧力RPを計測するための計測手段20を備え、少なくとも1つの計算ユニット18は、穿孔貫入速度における減少、岩石穿孔機の回転圧力RPにおける増加、ならびに、反射応力波の圧縮応力波の振幅における減少および反射応力波の引張り応力波の振幅における増加の少なくとも1つ、の組み合わせに呼応して、工具9が空洞16に近づいていることを検知するように設定される。回転圧力を計測する計測手段20は、たとえば回転モータにある圧力センサを含んでよい。
【0035】
図4の例は、工具9が最終的に岩石12の空洞16に入る穿孔状態での、反射応力波の圧縮応力波および引張り応力波のエネルギー振幅、ならびに穿孔貫入速度および回転圧力を示すグラフを概略的に開示している。
【0036】
図4の概略の例において、約90秒から約110秒までの時間は通常の穿孔動作に関係し、ここで通常の穿孔動作とは、この場合は、穿孔する岩石の岩材に実質的に空洞のない動作状態を指す。
【0037】
約110秒の時刻では、反射応力波の引張り応力波のエネルギー振幅のレベルに、ゆっくりとした、しかし実質的に連続的な増加の始まり、ならびに圧縮応力波のエネルギー振幅のレベルおよび回転圧力のレベルにわずかな増加、そして穿孔貫入速度に減少の始まりを見ることができる。計測値の動きは、工具9が岩石12の空洞16に近づくことに呼応して起こり、それによって、岩石の中の、穿孔方向から見て空洞の前にある岩材が湾曲または振動し、それによって、工具内に発生させた応力波が、岩材を、空洞のない岩材を通るのと同程度に貫通することを妨げる。
【0038】
約120秒の時刻では、工具は空洞に入り、それによって反射応力波の引張り応力波および穿孔貫入速度のレベルに著しく急速な増加を見ることができる。この計測値の動きは、工具が最終的に空洞に入ったことの表れである。
【0039】
図4の例から、開示した解決法によって、岩石穿孔機の工具が空洞に近づいていることを、工具が実際に空洞に入る前に先回りして検知でき、その結果、工具が全穿孔出力で空洞に入ることを防止するように、岩石穿孔機の動作を制御するための時間があることがわかる。図4の例において、その時間は約5から10秒であり、この時間は岩石穿孔機の動作を、しかるべく制御するのに十分である。
【0040】
図4に開示した穿孔状態は、工具が空洞に近づきつつある穿孔状態、およびそれぞれの計測値の動きの例を提供している。計測値の動きは、穿孔する岩石の種類、穿孔に使用する工具の種類、および穿孔する岩石の中の空洞の性質によって、図4に例として開示したものとは異なる可能性がある。
【0041】
技術の進歩につれて、この創意に富んだ概念が様々な方法で実施可能であることが、当業者には明らかとなろう。本発明およびその実施形態は、上述の例に限定されず、特許請求の範囲の中で変更可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 岩石穿孔リグ
2 可動式キャリア
3 ブーム
4 送りビーム
5 衝撃機構
6 回転機構
7 送り機構
8 岩石穿孔機
8’ フレーム
9 工具
9’ 近位の端部
9” 遠位の端部
10a ドリル棒、ドリル軸、ドリル管
10b ドリル棒、ドリル軸、ドリル管
10c ドリル棒、ドリル軸、ドリル管
11 ドリルビット
11a ボタン
12 岩石
13 案内サポート
14 ドリルシャンク
15 計測手段
16 空洞
17 計測手段
18 計算ユニット
19 制御ユニット
20 計測手段
図1
図2
図3
図4