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特許7345318多重SIM無線通信のための装置及びその方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】多重SIM無線通信のための装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 68/00 20090101AFI20230908BHJP
   H04W 4/00 20180101ALI20230908BHJP
   H04W 72/0453 20230101ALI20230908BHJP
   H04W 52/02 20090101ALI20230908BHJP
【FI】
H04W68/00
H04W4/00 111
H04W72/0453
H04W52/02 110
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019155441
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2020065247
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0123929
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】尹 菖鉉
(72)【発明者】
【氏名】李 岡奎
【審査官】永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/121920(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0042054(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0038154(US,A1)
【文献】特表2019-507977(JP,A)
【文献】特表2017-528950(JP,A)
【文献】Qualcomm Incorporated, ENESYS Technologies, one2many, Samsung, Ericsson,Avoidance of paging collisions to minimize outage of services[online],3GPP TSG SA WG2 #122 S2-174243,Internet<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_sa/WG2_Arch/TSGS2_122_Cabo/Docs/S2-174243.zip>,2017年06月20日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重SIM(subscriber identity module)無線通信方法であり、
第1SIMと係わる第1無線通信の遊休状態において、第1ページングを少なくとも受信するための第1ウィンドウを設定する段階と、
前記第1ウィンドウに基づいて、前記第1ページングと、第2SIMと係わる第2無線通信との衝突いかんを予測する段階と、
衝突予測に応答し、前記第1ページング及び前記第2無線通信の同時受信の可能性を判定する段階と、
同時受信は可能である旨の判定に応答し、前記第1ページング及び前記第2無線通信に、異なる搬送波に対応する少なくとも1つのRF経路をそれぞれ割り当てる段階と、を含む多重SIM無線通信方法。
【請求項2】
前記第1ウィンドウは、前記第1ページングを受信するために、ハードウェアを設定する前処理区間、前記第1ページングを受信する受信区間、及び受信された前記第1ページングを処理する後処理区間を含むことを特徴とする請求項1に記載の多重SIM無線通信方法。
【請求項3】
前記第1ウィンドウを設定する段階は、
前記前処理区間、前記受信区間及び前記後処理区間に係わる期間情報を獲得する段階と、
前記第1ウィンドウのタイミング情報を獲得する段階と、
前記期間情報及び前記タイミング情報に基づいて、前記第1ウィンドウを定義する段階と、を含むことを特徴とする請求項2に記載の多重SIM無線通信方法。
【請求項4】
前記タイミング情報は、前記第1ページングのページングフレーム及びページングオフセットを含むことを特徴とする請求項3に記載の多重SIM無線通信方法。
【請求項5】
前記第2SIMと係わる第2ページングを少なくとも受信するための第2ウィンドウを設定する段階をさらに含み、
前記衝突いかんを予測する段階は、前記第2無線通信が遊休状態であるとき、前記第1ウィンドウ及び前記第2ウィンドウが相互に重畳するか否かを判断する段階を含むことを特徴とする請求項1-4のうち何れか1項に記載の多重SIM無線通信方法。
【請求項6】
前記衝突いかんを予測する段階は、前記第2無線通信が連結状態であるとき、前記第2無線通信で信号を受信する区間、及び前記第1ウィンドウが相互に重畳するか否かを判断する段階を含むことを特徴とする請求項1-4のうち何れか1項に記載の多重SIM無線通信方法。
【請求項7】
前記第2無線通信が、CDRX(connected discontinuous RX)状態であるとき、オン期間を処理するための第2ウィンドウを設定する段階をさらに含み、
前記衝突いかんを予測する段階は、前記第2無線通信がCDRX状態であるとき、前記第1ウィンドウ及び前記第2ウィンドウが相互に重畳するか否かを判断する段階を含むことを特徴とする請求項1-4のうち何れか1項に記載の多重SIM無線通信方法。
【請求項8】
前記同時受信の可能性を判定する段階は、
前記第1無線通信及び前記第2無線通信のフレーム境界間の時間差を計算する段階と、
前記時間差が第1基準値以下である場合、キャリアアグリゲーション及び/または多重接続の構成を基に、前記同時受信の可能性を判定する段階と、を含むことを特徴とする請求項1-7のうち何れか1項に記載の多重SIM無線通信方法。
【請求項9】
前記同時受信の可能性を判定する段階は、前記時間差が前記第1基準値を超える場合、多重接続の構成に基づいて、前記同時受信の可能性を判定する段階を含むことを特徴とする請求項8に記載の多重SIM無線通信方法。
【請求項10】
前記第1基準値は、CP(cyclic prefix)長であることを特徴とする請求項8に記載の多重SIM無線通信方法。
【請求項11】
前記同時受信の可能性を判定する段階は、前記第1無線通信及び前記第2無線通信に使用される増幅利得間の差が第2基準値を超える場合、同時受信の不可能を判定する段階を含むことを特徴とする請求項1-7のうち何れか1項に記載の多重SIM無線通信方法。
【請求項12】
前記同時受信は不可能である旨の判定に応答し、前記第1ウィンドウにおいて、前記第2無線通信で信号の受信を保留する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1-7のうち何れか1項に記載の多重SIM無線通信方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのRF経路をそれぞれ割り当てる段階は、
前記第2無線通信に割り当てられた複数のRF経路のうち少なくとも1つのRF経路を剥奪し、剥奪された前記少なくとも1つのRF経路を前記第1ページングに割り当てる段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の多重SIM無線通信方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのRF経路をそれぞれ割り当てる段階は、前記第2無線通信に割り当てられた少なくとも1つのRF経路と異なる少なくとも1つのRF経路を追加し、追加された前記少なくとも1つのRF経路を、前記第1ページングに割り当てる段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の多重SIM無線通信方法。
【請求項15】
メモリと、
前記メモリに保存された命令語を実行することにより、請求項1ないし14のうちいずれか1項に記載の多重SIM無線通信方法を遂行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含むMSMS(multi-SIM multi-standby)装置。
【請求項16】
多重SIM無線通信方法であり、
キャリアアグリゲーション及び/または多重接続の構成に係わるRF資源情報を獲得する段階と、
前記RF資源情報に基づいて、第1SIMと係わる第1無線通信の第1ページング、及び第2SIMと係わる第2無線通信の同時受信の可能性を判定する段階と、
同時受信は可能である旨の判定に応答し、前記第1ページング及び前記第2無線通信に異なる搬送波に対応する少なくとも1つのRF経路をそれぞれ割り当てる段階と、を含む多重SIM無線通信方法。
【請求項17】
前記第1ページングを受信及び処理するための第1ウィンドウを設定する段階と、
前記第1ウィンドウに基づいて、前記第1ページングと前記第2無線通信との衝突いかんを予測する段階と、をさらに含み、
前記同時受信の可能性を判定する段階は、前記衝突いかんを予測する段階の衝突予測に応答して遂行されることを特徴とする請求項16に記載の多重SIM無線通信方法。
【請求項18】
メモリと、
前記メモリに保存された命令語を実行することにより、請求項16または17に記載の多重SIM無線通信方法を遂行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含むMSMS(multi-SIM multi-standby)装置。
【請求項19】
MSMS(multi-SIM multi-standby)を支援するユーザ機器であり、
第1SIM及び第2SIMと、
複数の搬送波に対応する複数のRF経路を形成するように構成された送受信器と、
前記送受信器、前記第1SIM及び第2SIMに連結された多重SIM装置と、であり、
前記送受信器が提供するRF資源に基づいて、前記第1SIMと係わる第1無線通信の第1ページング、及び第2SIMと係わる第2無線通信の同時受信の可能性を判定する段階と、
前記同時受信は可能である旨の判定に応答し、前記第1ページング及び前記第2無線通信に、前記複数のRF経路のうち少なくとも1つのRF経路をそれぞれ割り当てる段階と、を遂行するように構成された前記多重SIM装置を含むユーザ機器。
【請求項20】
前記多重SIM装置は、
前記第1ページングを受信及び処理するための第1ウィンドウを設定する段階と、
前記第1ウィンドウに基づいて、前記第1ページングと前記第2無線通信との衝突いかんを予測する段階と、をさらに遂行するように構成され、
前記多重SIM装置は、前記衝突いかんを予測する段階の衝突予測に応答し、前記同時受信の可能または不可能を判定する段階を遂行するように構成されたことを特徴とする請求項19に記載のユーザ機器。
【請求項21】
前記第1ウィンドウは、前記第1ページングを受信するために、ハードウェアを設定する前処理区間、前記第1ページングを受信する受信区間、及び受信された前記第1ページングを処理する後処理区間を含み、
前記多重SIM装置は、前記RF資源に係わる情報を獲得して獲得された情報に基づいて、前記前処理区間、前記受信区間及び前記後処理区間を判定することにより、前記第1ウィンドウの期間を判定するように構成されたことを特徴とする請求項20に記載のユーザ機器。
【請求項22】
前記送受信器は、キャリアアグリゲーション及び/または多重接続により、前記複数のRF経路を形成するように構成されたことを特徴とする請求項19に記載のユーザ機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信に係り、詳細には、多重SIM(subscriber identity module)無線通信のための方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多重SIM無線通信は、端末により、異なる2個のネットワークサービスに接続することを可能にする。例えば、該端末は、複数のSIM(または、複数のSIMカード)を含み、該複数のSIMは、異なるアカウント及び/または電話番号などにそれぞれ対応する。該端末は、複数のSIMに対応する複数の無線通信を駆動するために、複数のプロトコルスタックを具現することができる。該端末において、複数のプロトコルスタックがRF(radio frequency)資源を相互排他的に使用する場合、一部プロトコルスタックによる無線通信が不可避的に保留にされてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、多重SIM無線通信において、同時受信のための装置及びその方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述のような目的を達成するために、本開示の技術的思想の一側面による多重SIM無線通信方法は、第1SIMと係わる第1無線通信の遊休又はアイドル(idle)状態において、第1ページング(paging)を受信及び処理するための第1ウィンドウを設定する段階、第1ウィンドウに基づいて、第1ページング(paging)と、第2SIMと係わる第2無線通信との衝突いかんを予測する段階、衝突予測に応答し、第1ページング及び第2無線通信の同時受信の可能性を判定する段階、及び同時受信は可能である旨の判定に応答し、第1ページング及び第2無線通信に異なる搬送波に対応する少なくとも1つのRF経路をそれぞれ割り当てる段階を含んでもよい。
【0005】
本開示の技術的思想の一側面による多重SIM無線通信方法は、キャリアアグリゲーション(carrier aggregation)及び/または多重接続(multi-connectivity)の構成に係わるRF(radio frequency)資源情報を獲得する段階、RF資源情報に基づいて、第1SIMと係わる第1無線通信の第1ページング、及び第2SIMと係わる第2無線通信の同時受信の可能性を判定する段階、及び同時受信は可能である旨の判定に応答し、第1ページング及び第2無線通信に異なる搬送波に対応する少なくとも1つのRF経路をそれぞれ割り当てる段階を含んでもよい。
【0006】
本開示の技術的思想の一側面によるMSMS(multi-SIM multi-standby)装置は、メモリ、及びメモリに保存された命令語を実行することにより、多重SIM無線通信方法を遂行する少なくとも1つのプロセッサを含んでもよい。
【0007】
本開示の技術的思想の一側面による、MSMSを支援するユーザ機器は、第1SIM及び第2SIM、複数の搬送波に対応する複数のRF経路を形成する送受信器、及び前述の送受信器、第1SIM及び第2SIMに連結された多重SIM装置を含んでもよい。該多重SIM装置は、送受信器が提供するRF資源に基づいて、第1SIMと係わる第1無線通信の第1ページング、及び第2SIMと係わる第2無線通信の同時受信の可能性を判定する段階、及び同時受信は可能である旨の判定に応答し、第1ページング及び第2無線通信に、複数のRF経路のうち少なくとも1つのRF経路をそれぞれ割り当てる段階を遂行するようにも構成される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の例示的実施形態による装置及びその方法によれば、多重SIM無線通信において、異なるSIMに係わる無線通信の同時受信が可能である。
【0009】
また、本開示の例示的実施形態による装置及びその方法によれば、多重SIM無線通信において、端末は、ページングを、抜けなしに受信及び処理することができる。
【0010】
また、本開示の例示的実施形態による装置及びその方法によれば、多重SIM無線通信において、ページング受信のために、他のSIMに係わる無線通信の保留が解消される。
【0011】
また、本開示の例示的実施形態による装置及びその方法によれば、追加的なハードウェアなしにも、異なるSIMに係わる無線通信の同時受信が可能である。
【0012】
本開示の例示的実施形態で得ることができる効果は、以上で言及した効果に制限されるものではなく、言及されていない他の効果は、以下の記載から、本開示の例示的実施形態が属する技術分野において当業者に明確に導き出されて理解されるであろう。すなわち、本開示の例示的実施形態の実施による意図しえない効果も、本開示の例示的実施形態から、当該技術分野の当業者によって導き出されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の例示的実施形態による無線通信システムを示すブロック図である。
図2】本開示の例示的実施形態によるプロトコルスタックシステムを示すブロック図である。
図3A】多重SIM無線通信において、発生可能な衝突の例示を示すタイミング図である。
図3B】多重SIM無線通信において、発生可能な衝突の例示を示すタイミング図である。
図3C】多重SIM無線通信において、発生可能な衝突の例示を示すタイミング図である。
図4】本開示の例示的実施形態による多重SIM無線通信のための方法を示す順序図である。
図5A】本開示の例示的実施形態による同時受信の例示を示すタイミング図である。
図5B】本開示の例示的実施形態による同時受信の例示を示すタイミング図である。
図6】本開示の例示的実施形態による、図4の段階S100の例示を示す順序図である。
図7A】本開示の例示的実施形態によるウィンドウの例示を示す図面である。
図7B】本開示の例示的実施形態によるウィンドウの例示を示す図面である。
図8】本開示の例示的実施形態による、図4の段階S300の例示を示す順序図である。
図9A】本開示の例示的実施形態による、推定された衝突の例示を示す図面である。
図9B】本開示の例示的実施形態による、推定された衝突の例示を示す図面である。
図10】本開示の例示的実施形態による、図4の段階S500の例示を示す順序図である。
図11】本開示の例示的実施形態による、同時受信の可能性を判定する方法を示す順序図である。
図12A】本開示の例示的実施形態による、同時受信の例示を示すタイミング図である。
図12B】本開示の例示的実施形態による、同時受信の例示を示すタイミング図である。
図13】本開示の例示的実施形態による、多重SIM無線通信のための方法を示す順序図である。
図14】本開示の例示的実施形態による、図1の多重SIM装置の例示を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本開示の例示的実施形態による無線通信システム10を示すブロック図である。図1に図示されているように、無線通信システム10は、第1ネットワーク210、第2ネットワーク220及びユーザ機器(UE:user equipment)100を含んでもよい。
【0015】
ユーザ機器100は、無線通信機器であり、固定されてもよいし、あるいは移動可能であってもよく、基地局221,222と無線通信し、データ及び/または制御情報を送受信することができる任意の機器を称する。例えば、ユーザ機器100は、端末(terminal)、端末機器(terminal equipment)、MS(mobile station)、MT(mobile terminal)、UT(user terminal)、SS(subscribe station)、無線装置(wireless device)、携帯装置(handheld device)などとも称される。図1に図示されているように、ユーザ機器100は、アンテナアレイ110、送受信器120、多重SIM(subscriber identity module)装置130、第1SIM141及び第2SIM142を含んでもよい。
【0016】
例えば、基地局211,222は、ユーザ機器100及び/または他の基地局と通信する固定局であってもよく、ユーザ機器100及び/または他の基地局と通信することにより、データ及び制御情報を交換することができる。例えば、基地局は、Node B、eNB(evolved Node B)、gNB(next generation Node B)、セクタ(sector)、サイト(site)、BTS(base transceiver system)、AP(access point)、リレーノード(relay node)、RRH(remote radio head)、RU(radio unit)、スモールセル(small cell)などとも称される。本明細書において、基地局またはセルは、CDMA(code division multiple access)でのBSC(base station controller)、WCDMA(登録商標(wideband code division multiple access))のNode B、LTEでのeNB、5GNRでのgNBまたはセクタ(サイト)などがカバーする一部の領域または機能を示す包括的な意味にも解釈され、メガセル、マクロセル、マイクロセル、ピコセル、フェムトセル、リレーノード、RRH、RU及びスモールセル通信範囲のような多様なカバレージ領域をいずれも包括することができる。
【0017】
図1に図示されているように、第1基地局211は、第1ネットワーク210にも含まれ、第2基地局221は、第2ネットワーク220にも含まれる。ユーザ機器100は、第1基地局211を介して、第1ネットワーク210に接続することができる一方、第2基地局221を介して、第2ネットワーク220に接続することができる。ユーザ機器100は、第1ネットワーク210及び第2ネットワーク220と、任意のRAT(radio access technology)によって通信することができる。例えば、ユーザ機器100は、非制限的な例示として、5G(5th generation)システム、5G NR(5G new radio)システム、LTE(long-term evolution)システム、CDMAシステム、GSM(登録商標(global system for mobile communications))システム、WLAN(wireless local area network)システム、または他の任意のRATにより、第1ネットワーク210及び第2ネットワーク220と通信することができる。ユーザ機器100は、一部実施形態において、同一RATにより、第1ネットワーク210及び第2ネットワーク220と通信することもでき、一部実施形態において、異なるRATにより、第1ネットワーク210及び第2ネットワーク220と通信することもできる。
【0018】
ユーザ機器100は、多重SIM無線通信をサポートすることができる。例えば、図1に図示されているように、ユーザ機器100は、第1ネットワーク210に含まれた第1基地局211と、第1SIM141と係わる第1コードレス通信11を行うことができ、第2ネットワーク220に含まれた第2基地局221と、第2SIM142と係わる第2コードレス通信12を行うことができる。この場合における「コードレス」は「ワイヤレス」と同義に使用されてもよい。特に、2個のSIM141,142と係わる2個の無線通信を行う場合、ユーザ機器100は、二重SIM機器とも称される。第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12は、第1接続及び第2接続とも称され、第1加入及び第2加入とも称される。また、本開示の例示的実施形態は、図1に図示されているように、2個のSIM141,142、すなわち、二重SIM無線通信を主に参照して説明されが、本開示の例示的実施形態が3個以上のSIMを含む多重SIM無線通信にも適用可能な点は、理解されるであろう。一部実施形態において、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12は、ユーザ機器100、及び同一基地局間にも形成される。例えば、ユーザ機器100は、図1の無線通信12’及び第1コードレス通信11を基地局210と行うことができる。
【0019】
一部実施形態において、ユーザ機器100は、MSMS(multi-SIM multi-standby)を支援することができる。すなわち、ユーザ機器100において送受信器120が提供するRF資源は、第1SIM141及び第2SIM142によっても共有される。それにより、図3Aないし図3Cを参照して後述されるように、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12が、送受信器120を相互排他的に使用する場合、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12のうち一つは、保留(suspend)にされる。例えば、第1コードレス通信11が、遊休(idle)状態である場合、第1基地局211は、周期的にページング(paging)(本明細書において、第1ページングとも称される)を送信することができ、そのようなページングは、MTコール(call)に係わるものであり、高い優先順位を有することができる。後述されるように、異なる優先順位を有する無線通信が衝突すると予測され、無線通信を同時に受信する方法がない場合、高い優先順位を有する無線通信が許容され、低い優先順位を有する無線通信は、衝突期間の間、保留にされる。
【0020】
第1ページングを有効に受信して処理するために、ユーザ機器100において、第2コードレス通信12が保留にされる場合、第2ネットワーク220との通信効率が低下してしまう。さらに、第2ネットワーク220(または、第2基地局221)は、第2コードレス通信12の保留が、第2コードレス通信12の良好ではないチャネル状態によるものであると認識することができ、結果として、第2ネットワーク220との通信効率が顕著に低下してしまう。また、第2コードレス通信12も、遊休状態である場合、第1ページング及び第2基地局221から送信されるページング(本明細書において、第2ページングとも称される)のうち一つだけが有効に受信される場合が発生する。ユーザ機器100に含まれた多重SIM装置(または、MSMS装置)130は、図4などを参照して後述されるように、追加的なハードウェアなしに、すなわち、送受信器120の変更なしに、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12の同時受信が可能になり、結果として、第1ネットワーク210及び第2ネットワーク220のシグナリングを落とさずに、両者いずれも通信効率を向上させることができる。
【0021】
アンテナアレイ110は、少なくとも1つのアンテナを含んでもよく、第1基地局211及び第2基地局221からRF信号を受信したり、第1基地局211及び第2基地局221にRF信号を送信したりすることができる。一部実施形態において、アンテナアレイ110は、MIMOのために複数のアンテナを含んでもよい。
【0022】
送受信器120は、アンテナアレイ110及び多重SIM装置130と連結(couple)されたハードウェアであり、無線通信のためのRF資源を提供することができる。例えば、送受信器120は、アンテナアレイ110から受信されるRF信号を処理することにより、ベースバンド信号として、受信信号RXを多重SIM装置130に提供することもでき、ベースバンド信号として、送信信号TXを処理することにより、RF信号をアンテナアレイ110に提供することもできる。送受信器120は、多重SIM装置130によっても制御され、非制限的な例示として、スイッチ、マッチング回路、フィルタ、増幅器、ミキサなどを含んでもよい。
【0023】
一部実施形態において、送受信器120は、複数の搬送波を使用するキャリアアグリゲーション(CA:carrier aggregation)を支援することができる。例えば、ユーザ機器100は、第1基地局211及び/または第2基地局221と、コンポーネントキャリア(CC:component carrier)とそれぞれ称される2以上の搬送波を同時に使用し、データを伝送したり受信したりすることができる。送受信器120は、キャリアアグリゲーションに使用されるコンポーネントキャリアに対応するRF経路を形成することができ、該RF経路を介して送受信される信号を処理することができる。例えば、送受信器120は、コンポーネントキャリアにそれぞれ対応するn個の受信経路122-1ないし122-nを含んでもよい(nは、1より大きい整数)。n個の受信経路122-1ないし122-nそれぞれは、低ノイズ増幅器、及び他の構成要素を含んでもよい。n個の受信経路122-1ないし122-nそれぞれは、対応するコンポーネントキャリア(CC)を中心にする周波数帯域に係わる信号を受信することができる。類似して、送受信器120は、コンポーネントキャリアにそれぞれ対応するn個の送信経路122-1ないし122-nを含んでもよい。一部実施形態において、受信経路のうち少なくとも一部は、回路及び部分経路を共有することもできる。例えば、第1受信経路122-1及び第2受信経路122-nは、同一低ノイズ増幅器を使用することができる一方、帯域通過フィルタのための別個の経路を有することができる。
【0024】
一部実施形態において、送受信器120は、多重接続(MC:multi-connectivity)を支援することができ、それにより、相互独立的な複数のRF経路を形成することもできる。本明細書において、多重接続(MC)は、ユーザ機器100とのデータ通信が、異なる基地局及び/またはネットワークと行われるということを称する。例えば、多重接続(MC)を使用する場合、音声あるいはデータコールのようなデータ通信の第1部分は、第1基地局とも交換され、データ通信の第2部分は、第2基地局とも交換され、データ通信の第1部分及び第2部分は、重複データを含んでもよいし、含まなくともよい。ユーザ機器100は、2個の基地局から受信されたデータを結合することができる。多重接続(MC)により、第1基地局とのデータ通信に使用された第1周波数帯域は、第2基地局とのデータ通信に使用された第2周波数帯域と顕著に異なっていてもよい。例えば、第1基地局は、6GHz未満の周波数帯域を使用することができる一方、第2基地局は、ミリメートル波(mm wave)、例えば、30GHz以上の周波数帯域を使用することができる。また、第2基地局によって使用される第2周波数帯域は、第1基地局で使用される第1周波数帯域の3倍以上広くてもよい。多重接続(MC)の場合に、送受信器120が、相互独立的な2個のRF経路を形成する場合、送受信器120は、二重接続(DC:dual connectivity)をサポートしてもよい。そのように、送受信器120は、RF経路(例えば、122-1ないし122-n)をRF資源として提供することができる。
【0025】
多重SIM装置130は、送受信器120と、ベースバンド信号RX,TXを介して通信することができ、第1SIM141及び第2SIM142と結合することができる。第1SIM141は、第1コードレス通信11により、第1ネットワーク210に接続するための情報を含んでもよく、第2SIM142は、第2コードレス通信12により、第2ネットワーク220に接続するための情報を含んでもよい。図2を参照して後述されるように、多重SIM装置130は、第1SIM141に係わる接続、及び第2SIM142に係わる接続を処理するための構造(architecture)を有することができる。また、図4などを参照して後述されるように、多重SIM装置130は、ハードウェア構成、すなわち、送受信器120が提供するRF資源に基づいて、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12の同時受信の可能性を判定することができる。多重SIM装置130は、同時受信可能の判定時、送受信器120を制御することにより、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12に、少なくとも1つのRF経路をそれぞれ割り当てることができる。一部実施形態において、多重SIM装置130は、論理合成を介して設計されるハードウェアブロック、一連の命令語(instructions)を含むソフトウェアブロックと、一連の命令語を実行する少なくとも1つのプロセッサを含むプロセッシングユニット、及びそれらの組み合わせを含んでもよい。一部実施形態において、多重SIM装置130は、モデムまたはベースバンドプロセッサとも称される。
【0026】
図2は、本開示の例示的実施形態によるプロトコルスタックシステム20を示すブロック図である。具体的には、図2は、プロトコルスタックシステム20に含まれた第1プロトコルスタック21及び第2プロトコルスタック22の制御プレーン(control plane)を示す。一部実施形態において、図2のプロトコルスタックシステム20は、図1の多重SIM装置130によっても具現され、多重SIM装置130は、図2のプロトコルスタックシステム20により、無線通信のための動作を遂行することができる。図2に図示されたブロックのうち少なくとも一部は、一部実施形態において、ハードウェアロジックによっても具現され、一部実施形態において、少なくとも1つのプロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールによっても具現される。以下において、図2は、図1を参照して説明される。
【0027】
図2を参照すれば、プロトコルスタックシステム20は、第1SIM141及び第2SIM142とそれぞれ係わる第1プロトコルスタック21及び第2プロトコルスタック22を含んでもよい。図1を参照して説明されたように、第1プロトコルスタック21及び第2プロトコルスタック22それぞれは、任意のRATを支援することができる。一部実施形態において、第1プロトコルスタック21及び第2プロトコルスタック22は、共有された上位階層、例えば、アプリケーション階層と相互作用することができ、該上位階層は、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12に係わる情報を獲得したり、コマンドを提供するプログラムに係わるインターフェースを提供したりすることができる。該上位階層は、多重SIM装置130によっても具現され、多重SIM装置130と分離された他の装置によっても具現される。また、プロトコルスタックシステム20は、第1プロトコルスタック21及び第2プロトコルスタック22によって共有されたハードウェアインターフェース24を含んでもよい。ハードウェアインターフェース24は、ハードウェア、すなわち、図1の送受信器120に係わるインターフェースを提供することができ、第1プロトコルスタック21及び第2プロトコルスタック22は、ハードウェアインターフェース24を介して、送受信器120に信号を提供したり、送受信器120から獲得したりすることができる。一部実施形態において、ハードウェアインターフェース24は、送受信器120のドライバとも称される。
【0028】
制御プレーンのための第1プロトコルスタック21及び第2プロトコルスタック22それぞれは、複数の階層を含んでもよい。図2に図示されているように、第1プロトコルスタック21は、第1階層L1、第2階層L2及び第3階層L3を含んでもよく、第1階層L1、第2階層L2及び第3階層L3は、OSI(open system interconnection)モデルの下位3層階層に対応する。例えば、LTEまたは5GNRなどにおいて、PHY(physical)階層は、第1階層L1にも含まれ、MAC(media access control)階層、RLC(radio link control)階層及びPDCP(packet data convergence protocol)階層は、第2階層L2にも含まれ、RRC(radio resource control)階層及びNAS(non-access stratum)階層は、第3階層L3にも含まれる。第2プロトコルスタック22また第1プロトコルスタック21と類似し、第1階層L1、第2階層L2及び第3階層L3を含んでもよい。
【0029】
後述されるように、RRC階層及びRRC遊休状態と係わるユーザ機器100によって遂行されるように説明される動作は、多重SIM装置130によっても遂行され、多重SIM装置130は、そのような動作を遂行するためにメモリから読み取られた命令語を実行するプロセッサを含んでもよい。ユーザ機器100のRRC階層は、多重SIM装置130のRRC階層とも称される。第3階層L3のRRC階層は、無線資源(radio resource)を制御することができ、RRCメッセージを、例えば、基地局211,221のRRC階層と交換することができる。ユーザ機器100(または、多重SIM装置130)のRRC階層、及び、例えば、基地局211,221)のRRC階層の間でRRC接続が成立される場合、ユーザ機器100(または、多重SIM装置130)は、RRC接続状態(RRC connected state)(または、RRC接続モード)にも転換される。他方、RRC接続が解除される場合、ユーザ機器100(または、多重SIM装置130)は、RRC遊休状態(RRC idle state)(または、RRC遊休モード)にも転換される。本明細書において、RRC接続状態は、無線通信の接続状態とも称される一方、RRC遊休状態は、無線通信の遊休状態とも称される。例えば、第1プロトコルスタック21に含まれたRRC階層により、RRC接続状態が維持される場合、第1コードレス通信11は、接続状態にあるとも称される一方、第1プロトコルスタック21に含まれたRRC階層により、RRC遊休状態が維持される場合、第1コードレス通信11は、遊休状態にあるとも称される。類似して、第2コードレス通信12も、第2プロトコルスタック22に含まれたRRC階層により、接続状態あるいは遊休状態にあるとも称される。
【0030】
RRC遊休状態において、例えば、基地局211,221は、周期的にページングを送信することができる。該基地局は、ユーザ機器100のためにページングが伝送される時点、すなわち、ページング機会(paging occasion)に係わる情報を、ユーザ機器100に提供することができる。ユーザ機器100(または、多重SIM装置130)は、ページングをモニタリングすることにより、自身の識別子(identifier)が含まれたページングが受信されたか否かということをチェックすることができる。ユーザ機器100(または、多重SIM装置130)は、RRC遊休状態において、消費電力を低減させるために、ページング機会に対応する区間でのみパケットを受信して処理することができる。図1を参照して説明されたように、RRC遊休状態で送信されるページングは、高い優先順位を有することができる。以下、図3Aないし図3Cを参照し、多重SIM無線通信において、1つのSIMに係わるページングと、他のSIMに係わる無線通信との衝突が発生する例示について説明する。
【0031】
衝突ハンドラ23は、第1プロトコルスタック21による第1コードレス通信11と、第2プロトコルスタック22による第2コードレス通信12との衝突を推定することができ、衝突が推定された場合、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12の同時受信が可能であるか否かということを判定することができる。例えば、衝突ハンドラ23は、第1プロトコルスタック21の第1階層L1、及び第2プロトコルスタック22の第2階層L2から提供される情報に基づいて、第1コードレス通信11と第2コードレス通信12との衝突を推定することができる。衝突推定時、衝突ハンドラ23は、ハードウェアインターフェース24から提供される情報に基づいて、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12の同時受信が可能であるか否かということを判定することができる。また、衝突ハンドラ23は、同時受信が可能であると判定された場合、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12の同時受信のために、ハードウェアインターフェース24を介して、ハードウェア、すなわち、送受信器120を設定することができる。衝突ハンドラ23は、一部実施形態において、図14を参照して後述されるように、少なくとも1つのプロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールとしてもメモリに保存され、一部実施形態において、論理合成によって設計されるハードウェアモジュールでもある。
【0032】
図3Aないし図3Cは、多重SIM無線通信で発生可能な衝突の例示を示すタイミング図である。また、図3Aないし図3Cは、本開示の例示的実施形態により、ページング、あるいは他の通信(例えば、CDRX(connected discontinuous RX)のオン期間)のために指定されたスロット以前、その間及びその後を示す。そのような時間区間は、通信の保留(suspension)を回避するために、衝突を予測するためのウィンドウの設定にも使用される。例えば、図3Aは、遊休状態である第1無線通信と、第2無線通信との衝突の例示を示し、図3Bは遊休状態である第1無線通信と、接続状態である第2無線通信との衝突例示を示し、図3Cは、遊休状態である第1無線通信と、CDRX状態である第2無線通信との衝突例示を示す。図3Aないし図3Cにおいて、第1無線通信及び第2無線通信は、図1の第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12であると仮定され、図3Aないし図3Cは、図1を参照して説明される。図3Aないし図3Cに係わる説明において、重複内容は、省略される。
【0033】
多重SIM無線通信において、異なるSIMにそれぞれ対応する無線通信間の衝突は、RF資源が、無線通信によって相互排他的に占有(occupy)されるとき、2以上の無線通信が、同一時点でRF資源を占有する状況を称することができる。例えば、MSMSまたはDSDSにおいては、1つのSIMに係わる無線通信がRF資源を占有することができ、SIMに対応するプロトコルスタックが遂行しようとするプロセスの優先順位により、RF資源が当該プロトコルスタックに先に割り当てられる。それにより、高い優先順位を有する動作、例えば、第1コードレス通信11の第1ページングが、他の無線通信、例えば、第2コードレス通信12と衝突する場合、第2コードレス通信12の受信動作は、第1ページを受信して処理する間、保留にされる。
【0034】
図3Aを参照すれば、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12がいずれも遊休状態である場合、第1コードレス通信11の第1ページング、及び第2コードレス通信12の第2ページングが衝突してしまう。図3Aの上端に図示されているように、第1ページングの受信前、第1ページングを受信するために、区間TPRE1の間、ハードウェア、例えば、送受信器120及び/または多重SIM装置130が設定される。例えば、送受信器120は、区間TPRE1の間、第1ページング受信のための少なくとも1つのRF経路を形成することができ、かつ/または多重SIM装置130は、送受信器120から提供される受信信号RXを処理するためのパラメータなどの設定を行うことができる。その次に、区間TPG1の間、第1ページングが受信され、受信された第1ページングの処理、例えば、復調、デコーディング、RRC階層でのページングメッセージ処理などが、区間TPOST1の間、遂行される。それにより、ユーザ機器100において、第1ページングを受信して処理するのに所要する区間は、「TPRE1+TPG1+TPOST1」に対応する。類似して、第2コードレス通信12の第2ページングを受信して処理する区間は、「TPRE2+TPG2+TPOST2」に対応する。
【0035】
本明細書において、ページングを受信して処理するための区間は、ページングウィンドウとも称され、第1ページングを受信して処理するための区間は、第1ページングウィンドウ、第2ページングを受信して処理するための区間は、第2ページングウィンドウともそれぞれ称される。また、区間TPRE1のように、ページングウィンドウにおいて、ページングを受信する前に要求される区間は、前処理(pre-processing)区間とも称され、区間TPG1のように、ページングを受信する区間は、ページング受信区間または受信区間とも称され、区間TPOST1のように、ページングを受信した後で要求される区間は、後処理(post-processing)区間とも称される。それにより、該ページングウィンドウは、前処理区間、受信区間及び後処理区間を含んでもよい。
【0036】
当該の第1ページングと第2ページングとの衝突は、第1ページングウィンドウ及び第2ページングウィンドウが時間軸で重畳する場合に発生する。当該の第1ページングウィンドウ及び第2ページングウィンドウが重畳する場合、第1ページング及び第2ページングのうち一つだけが有効に受信されて処理される。それにより、図3Aに図示されているように、第1ページングが先に受信されて処理され、その次に、第2ページングが受信されて処理される。結果として、第1ページングまたは第2ページングの抜け落ちが発生してしまう。
【0037】
図3Bを参照すれば、第1コードレス通信11が遊休状態であり、第2コードレス通信12が接続状態である場合、第1コードレス通信11の第1ページング、及び第2コードレス通信12のデータ受信が衝突しうる。すなわち、第2コードレス通信12を介してデータを受信する間、第1ページングが発生する場合、第1コードレス通信11と第2コードレス通信12との衝突が発生しうる。第1ページングの高い優先順位に起因し、図3Bに図示されているように、第1ページングを受信して処理するための区間、すなわち、第1ページングウィンドウにおいて、第2コードレス通信12を介したデータの受信は、保留にされ、第1ページングウィンドウが終わった後、第2コードレス通信12を介したデータの受信が再開される。結果として、第2コードレス通信12のデータ伝送量(throughput)が減少し、特に、例えば、基地局221をして、チャネルコンディションが良好ではないと認識させることにより、基地局がデータ速度を遅くするために、データ送信を調節し、それにより、データ伝送量の減少が加重される。
【0038】
図3Cを参照すれば、第1コードレス通信11が遊休状態であり、第2コードレス通信12がCDRX状態である場合、第1コードレス通信11の第1ページングと、第2コードレス通信12のオン期間(on-duration)とが衝突しうる。ユーザ機器100は、CDRX状態において、接続状態を維持しながらも、例えば、基地局211,221から提供されるCDRX情報により、電力消費を減らすことができる。例えば、該基地局は、CDRXのために、ユーザ機器100がデータを受信する区間に対応するオン期間のタイミング及び期間を、CDRX情報として提供することができる。図3Cの下端に図示されているように、オン期間前、データ受信のために、区間TPRE2の間、ハードウェア、例えば、送受信器120及び/または多重SIM装置130が設定される。その次に、区間TON2の間、オン期間が維持され、該オン期間に受信されたデータの処理が、区間TPOST2の間、行われる。それにより、ユーザ機器100において、第2コードレス通信12のオン期間の間、データを受信して処理するのに所要される必区間は、「TPRE2+TON2+TPOST2」に対応する。図3Cの区間TPRE2及び区間TPOST2は、一部実施形態において、図3Aの区間TPRE2、及び区間TPOST2とそれぞれ同一であってもよく、一部実施形態において、図3Aの区間TPRE2及び区間TPOST2とそれぞれ異なっていてもよい。
【0039】
本明細書において、CDRX状態において、オン期間においてデータを受信して処理するための区間は、CDRXウィンドウとも称される。また、第1コードレス通信11と係わるウィンドウ、例えば、第1ページングウィンドウ及び第1CDRXウィンドウは、総括的に、第1ウィンドウとも称される一方、第2コードレス通信12と係わるウィンドウ、例えば、第2ページングウィンドウ及び第2CDRXウィンドウは、総括的に第2ウィンドウとも称される。
【0040】
第1ページング及び第2オン期間の間、衝突は、第1ページングウィンドウ及び第2CDRXウィンドウが時間軸で重畳する場合に発生しうる。第1ページングウィンドウ及び第2CDRXウィンドウが重畳する場合、第1ページング及び第2コードレス通信12のオン期間のうち一つだけが有効に処理される。それにより、図3Cに図示されているように、第1ページングが先に受信されて処理され、その次に、第2コードレス通信12のオン期間において、データが受信されて処理される。結果として、第1ページングまたは第2コードレス通信12のオン期間の抜け落ちが発生しうる。
【0041】
図4は、本開示の例示的実施形態による、多重SIM無線通信のための方法を示す順序図である。例えば、図4の方法は、図1の多重SIM装置130(または、図2の衝突ハンドラ23)によって遂行され、以下において、図4は、図1を参照して説明される。
【0042】
段階S100において、ウィンドウを設定する動作が遂行される。図3Aないし図3Cを参照して説明されたように、該ウィンドウは、ページングを受信して処理するためのページングウィンドウとも称され、遊休状態において、オン期間においてデータを受信して処理するためのCDRXウィンドウとも称される。該ウィンドウは、ページングまたはデータを受信する区間だけではなく、前処理区間及び後処理区間を含んでもよい。例えば、多重SIM装置130は、第1SIM141に係わる第1コードレス通信11の第1ウィンドウとして、第1ページングウィンドウ及び第1CDRXウィンドウを設定することができ、第2SIM142に係わる第2コードレス通信12の第2ウィンドウとして、第2ページングウィンドウ及び第2CDRXウィンドウを設定することができる。
【0043】
一部実施形態において、多重SIM装置130は、並列処理能を有することができ、2以上の通信からのデータを同時に後処理することができる。その場合、ウィンドウ重畳を考慮するとき、後処理時間は、非常に短い時間区間において、効果的に短縮されたり無視されたりする。すなわち、多重SIM装置130による効果的な並列処理に起因し、ウィンドウ長は、例えば、前処理区間TPRE1及び、例えば、受信区間TPG1の和に基づいても設定される。
【0044】
段階S300において、第1コードレス通信11と第2コードレス通信12との衝突いかんを予測する動作が遂行される。例えば、多重SIM装置130は、段階S100で設定されたウィンドウに基づいて、衝突または非衝突を予測することができる。多重SIM装置130は、第1コードレス通信11の第1ウィンドウ、及び第2コードレス通信12の第2ウィンドウが重畳する場合、衝突を予測することができる一方、そうではない場合、非衝突を予測することができる。また、第1ウィンドウが、第2コードレス通信12のデータ受信区間と重畳するか、あるいは第2ウィンドウが、第1コードレス通信11のデータ受信区間と重畳する場合、多重SIM装置130は、衝突を予測することができる。図4に図示されているように、衝突予測時、段階S500が後続して遂行される一方、非衝突予測時、図4の方法は、終了する。段階S300の例示は、図8を参照して後述される。
【0045】
段階S500において、同時受信の可能性を判定する動作が遂行される。段階S300において、非衝突予測時の場合と異なるように、段階S300において、衝突予測時、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12の同時受信の可能性が判断される。例えば、多重SIM装置130は、ハードウェア構成、例えば、送受信器120が提供するRF資源に基づいて、同時受信の可能性を判定することができる。一部実施形態において、送受信器120のキャリアアグリゲーション(CA)及び/または多重接続(MC)のサポートいかん、そして現在送受信器120が提供するキャリアアグリゲーション(CA)及び/または多重接続(MC)の構成などに基づいて、同時受信の可能性を判定することができる。図4に図示されているように、同時受信は可能である旨の判定に応じて、段階S700が後続して遂行される一方、同時受信は不可能である旨の判定に応じて、段階S900が後続して遂行される。段階S500の例示は、図10を参照して後述される。
【0046】
段階S700において、RF経路を割り当てる動作が遂行される。段階S500において、同時受信が可能であると判定される場合、同時受信のために、無線通信にRF経路を割り当てる動作が遂行される。例えば、多重SIM装置130は、送受信器120が、キャリアアグリゲーション(CA)を支援する場合、少なくとも1つのコンポーネントキャリアを、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12にそれぞれ割り当てることができる。それにより、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12それぞれは、少なくとも1つのコンポーネントキャリアによって形成されるRF経路を介して、送受信器120によって処理され、処理された信号が、有効に多重SIM装置130に提供される。また、多重SIM装置130は、送受信器120が多重接続(MC)を支援する場合、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12に異なる2個の接続をそれぞれ割り当てることができる。
【0047】
段階S900において、一部無線通信を保留する動作が遂行される。段階S500において、同時受信が不可能であると判定される場合、相対的に低い優先順位を有する無線通信(例えば、図3Bの第2コードレス通信)を保留する動作が遂行される。保留にされた無線通信は、相対的に高い優先順位を有する無線通信において、受信及び処理の動作が完了した後にも再開される。
【0048】
図5A及び図5Bは、本開示の例示的実施形態による、同時受信の例示を示すタイミング図である。具体的には、図5Aは、遊休状態である第1無線通信及び第2無線通信の同時受信を示し、図5Bは、遊休状態である第1無線通信、及びCDRX状態であるか、あるいは接続状態である第2無線通信の同時受信を示す。図3Aないし図3Cを参照して説明された例示と異なり、図4の方法により、第1無線通信及び第2無線通信は、同時受信され、それにより、多重SIM通信の通信効率が改善される。図5A及び図5Bにおいて、第1無線通信及び第2無線通信は、図1の第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12であると仮定され、図5A及び図5Bは、図1を参照して説明される。図5A及び図5Bに係わる説明において、重複内容は、省略される。
【0049】
図5Aを参照すれば、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12がいずれも遊休状態である場合、第1コードレス通信11の第1ページング、及び第2コードレス通信12の第2ページングは、同時に受信される。例えば、図5Aに図示されているように、第1ページングを受信する区間TPG1、及び第2ページングを受信する区間TPG2が重畳する場合にも、第1ページング及び第2ページングは、有効に受信されて処理される。また、図5Aに図示されているものと異なり、第1ページングの前処理区間及び/または後処理区間が、第2ページングの前処理区間及び/または後処理区間と重畳する場合にも、第1ページング及び第2ページングは、有効に受信されて処理される。
【0050】
図5Bを参照すれば、第1コードレス通信11が遊休状態であり、第2コードレス通信12が、CDRX状態であるか、あるいは接続状態である場合、第1ページング及び第2コードレス通信12を介したデータは、同時に受信される。例えば、図5Bに図示されているように、第1ページングを受信する区間TPG1が、第2コードレス通信12を介してデータを受信する区間と重畳する場合にも、第1ページング及び第2コードレス通信12を介したデータは、同時に受信される。また、図5Bに図示されているものと異なり、第1ページングの前処理区間及び/または後処理区間が、第2コードレス通信12を介したデータの受信及び処理のための前処理区間、受信区間及び/または後処理区間と重畳する場合にも、第1ページング及び第2コードレス通信12を介したデータは、同時に受信される。
【0051】
図6は、本開示の例示的実施形態による、図4の段階S100の例示を示す順序図であり、図7A及び図7Bは、本開示の例示的実施形態によるウィンドウの例示を示す図面である。図4を参照して説明されたように、図6の段階S100’において、ウィンドウを設定する動作が遂行される。以下において、図6図7A及び図7Bは、図1及び図4を参照して説明される。
【0052】
図6を参照すれば、段階S100’は、複数の段階(段階S120,S140,S160)を含んでもよい。段階S120において、期間情報を獲得する動作が遂行される。該期間情報は、前処理区間、受信区間及び後処理区間に係わる情報を含んでもよい。例えば、多重SIM装置130は、送受信器120の特性に依存する前処理区間に係わる情報を獲得することができる。多重SIM装置130は、前処理区間に係わる情報を、一部実施形態において、送受信器120から受信することもでき、一部実施形態において、前処理区間に係わる情報を保存するメモリから読み取ることもできる。一部実施形態において、多重SIM装置130は、複数の送受信器に対応する前処理区間に係わる情報を保存するメモリにアクセスすることができ、送受信器120から提供された送受信器120の識別子により、複数の前処理区間のうち一つに係わる情報を、メモリから読み取ることもできる。一部実施形態において、多重SIM装置130は、前処理区間を、一部マージンを含む固定された値として、送受信器120に独立して使用することもできる。
【0053】
多重SIM装置130は、RATによって定義されるページングの受信区間に係わる情報を獲得することができる。例えば、LTE及び5GNRなどにおいて、該ページングは、サブフレーム(sub-frame)において伝達することができ、それにより、ページングの受信区間は、近似的に1msに対応する。
【0054】
多重SIM装置130は、送受信器120の特性及び/またはプロトコルスタックの性能に依存する後処理区間に係わる情報を獲得することができる。受信区間の間に受信されたページングまたは信号は、送受信器120によって処理され、多重SIM装置130は、送受信器120から提供される受信信号RXを処理することができる。例えば、ページングが受信された場合、ページングメッセージは、第3階層L3に含まれたRRC階層で最終的に処理され、それにより、下位階層からRRC階層までページングメッセージが処理されるのに所要される時間が、後処理区間にも含まれる。一部実施形態において、多重SIM装置130は、受信対象に依存する後処理区間に係わる情報を獲得することができる。一部実施形態において、多重SIM装置130は、複数の後処理区間を保存するメモリから、1つの後処理区間に係わる情報を読み取ることもできる。また、一部実施形態において、多重SIM装置130は、受信区間を、一部マージンを含む固定された値として使用することもできる。
【0055】
段階S140において、タイミング情報を獲得する動作が遂行される。タイミング情報は、ウィンドウの発生時点に係わる情報を含んでもよい。例えば、基地局211,221は、ユーザ機器100に、ページング機会に係わる情報として、ページングフレーム(PF:paging frame)及びページングオフセット(PO:paging offset)を提供することができる。例えば、LTE及び5GNRなどにおいて、フレームは、10msの長さを有することができ、1msの長さを有する10個のサブフレームを含んでもよく、ページング機会は、1個のサブフレーム、すなわち、1ms区間にも限定される。ページングフレーム(PF)は、ページング機会に対応するフレームを示すことができ、ページングオフセット(PO)は、フレームに含まれた10個のサブフレームのうちいずれのサブフレームであるかということに基づいて、ページングが伝達されるか否かということ示すことができる。多重SIM装置130は、ページングフレーム(PF)及びページングオフセット(PO)をウィンドウのタイミング情報として獲得することができ、それにより、ウィンドウの発生時点を判定することができる。
【0056】
段階S140において、ウィンドウを定義する動作が遂行される。該ウィンドウは、段階S120で獲得された期間情報、及び段階S140で獲得されたタイミング情報に基づいても定義される。例えば、図7Aに図示されているように、ページングを受信するためのページングウィンドウは、期間情報に基づいて、前処理区間TPRE、ページングの受信区間TPG及び後処理区間TPOSTを含む長さを有するとも定義され、タイミング情報に基づいて、時点tPGで始まるとも定義される。また、図7Bに図示されているように、CDRX状態において、オン期間にデータを受信して処理するためのCDRXウィンドウは、期間情報に基づいて、前処理区間TPRE、オン期間に対応する受信区間TON、及び後処理区間TPOSTを含む長さを有するとも定義され、タイミング情報に基づいて、時点tONで始まるとも定義される。一部実施形態において、図7Aの前処理区間TPRE、及び図7Bの前処理区間TPREは、同一長を有することができ、図7Aの後処理区間TPOST、及び図7Bの後処理区間TPOSTは、同一長を有することができる。
【0057】
図8は、本開示の例示的実施形態による、図4の段階S300の例示を示す順序図であり、図9A及び図9Bは、本開示の例示的実施形態による、推定された衝突の例示を示す図面である。図4を参照して説明されたように、図8の段階S300’において、多重SIM無線通信において、無線通信間、衝突いかんを予測する動作が遂行される。具体的には、図8の段階S300’は、図1の第1SIM 141及び第2SIM 142にそれぞれ対応する第1コードレス通信11と第2コードレス通信12との衝突いかんを予測する動作を示し、図8において、第1コードレス通信11は、遊休状態にあると仮定される。以下において、図8図9A及び図9Bは、図1及び図4を参照して説明される。
【0058】
図8を参照すれば、段階S300’は、複数の段階(段階S310,S330,S350,S370,S390)を含んでもよい。段階S310において、第2SIM142に対応する第2コードレス通信12の状態を判定する動作が遂行される。図8に図示されているように、第2コードレス通信12が遊休状態またはCDRX状態である場合、段階S330が後続して遂行される一方、第2コードレス通信12が接続状態である場合、段階S350が後続して遂行される。
【0059】
段階S330において、第1ウィンドウ及び第2ウィンドウが重畳するか否かということを判定する動作が遂行される。第1コードレス通信11が遊休状態であるので、第1ウィンドウは、第1ページングウィンドウに対応する一方、第2ウィンドウは、第2コードレス通信12が遊休状態である場合、第2ページングウィンドウでもあり、第2コードレス通信12がCDRX状態である場合、第2CDRXウィンドウでもある。例えば、図9Aを参照すれば、第1ウィンドウWIN1及び第2ウィンドウWIN2は、時間軸上で重畳したり、重畳しなかったりする。第1ウィンドウ及び第2ウィンドウが重畳する場合、段階S370において、衝突が予測される一方、第1ウィンドウ及び第2ウィンドウが重畳しない場合、段階S390において、非衝突が予測される。そのように、多重SIM装置130は、図4の段階S200で設定された第1ウィンドウWIN1及び第2ウィンドウWIN2が、時間軸上で重畳するか否かということを判定することにより、第1コードレス通信11と第2コードレス通信12との衝突いかんを予測することができる。
【0060】
段階S350において、第1ウィンドウ及び第2SIM142の受信区間が重畳するか否かということを判定する動作が遂行される。第2SIM142の受信区間は、第2SIM142に係わる第2コードレス通信12が接続状態において、データを受信する区間を称する。例えば、図9Bを参照すれば、接続状態である第2コードレス通信12において、データを受信する受信区間、及び第1ウィンドウが、時間軸上で重畳する。図8に図示されているように、第1ウィンドウ及び第2SIM142の受信区間が重畳する場合、段階S370において、衝突が予測される一方、第1ウィンドウ及び第2SIM142の受信区間が重畳していない場合、段階S390において、非衝突が予測されることができる。
【0061】
図10は、本開示の例示的実施形態による、図4の段階S500の例示を示す順序図である。図4を参照して説明されたように、図4の段階S400において、衝突予測時、図10の段階S500’において、同時受信の可能性を判定する動作が遂行される。図10に図示されているように、段階S500’は、複数の段階(段階S520,S540,S560,S580)を含んでもよく、以下において、図10は、図1及び図4を参照して説明される。
【0062】
段階S520において、フレーム境界の間、時間差を計算する動作が遂行される。該フレーム境界は、複数のSIMにそれぞれ係わる無線通信で伝送されるフレームのタイミングに対応し、該フレーム境界の間、該時間差は、同時受信が可能であるか否かということを判断することを基にも使用される。例えば、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12のフレーム境界の間、時間差が相対的に大きい場合、キャリアアグリゲーション(CA)により、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12を同時受信することは容易ではない。すなわち、近似的に同一タイミングで受信されるフレームは、同時に処理される一方、そうではないフレームは、同時に処理されることが制限される。それにより、段階S520において、異なる無線通信に対応するフレーム境界の間、時間差が計算され、同時受信の可能性を判断するのにも利用される。
【0063】
段階S540において、時間差と第1閾値(THR1)とを比較する動作が遂行される。図10に図示されているように、段階S520で計算された時間差が、第1閾値(THR1)より大きい場合、段階S560が後続して遂行される一方、時間差が、第1閾値(THR1)以下である場合、段階S580が後続して遂行される。一部実施形態において、図10に図示されているものと異なり、時間差が、第1閾値(THR1)以上である場合、段階S560が後続して遂行され、時間差が、第1閾値(THR1)未満である場合、段階S580が後続して遂行される。
【0064】
一部実施形態において、第1閾値(THR1)は、CP(cyclic prefix)に基づいても決定される。例えば、1つのフレームは、複数のサブフレームを含んでもよく、1つのサブフレームは、複数のスロット(slot)を含んでもよく、1つのスロットは、複数のシンボル、例えば、複数のOFDM(orthogonal frequency division multiplexing)シンボルを含んでもよい。該スロットに含まれたOFDMシンボルは、CPの構成によっても変動し、該CPは、拡張(extended)CP及び正常(normal)CPを含んでもよい。例えば、正常CPの場合、1つのスロットは、7個のOFDMシンボルを含む一方、拡張CPの場合、1つのスロットは、6個のOFDMシンボルを含んでもよい。ユーザ機器100が移動中である場合のように、無線通信のためのチャネル状態が不安定な場合、シンボル間干渉(ISI:inter-symbol interference)を低減させるために、拡張CPが使用される。一部実施形態において、正常CPは、約5.1μsの長さを有することができる一方、拡張CPは、約16.7μsの長さを有することができ、本明細書において、CPの長さは、単にCPとも称される。フレーム境界の間、時間差がCPより大きい場合、キャリアアグリゲーション(CA)による同時受信は、容易ではないので、第1閾値(THR1)は、CPに基づいても決定される。
【0065】
段階S560において、多重接続(MC)の構成に基づいて、同時受信いかんを判定する動作が遂行される。段階S540において、時間差が、第1閾値(THR1)より大きいと判定された場合、キャリアアグリゲーション(CA)による同時受信は、容易ではない。それにより、多重SIM装置130は、RF資源として、送受信器120が多重接続(MC)を支援するか否かということ、及び送受信器120の現在状態において、多重接続(MC)によるRF経路を追加することができるか否かということにより、同時受信いかんを判定することができる。すなわち、多重SIM装置130は、送受信器120が、多重接続(MC)を支援する場合、段階S520で計算された時間差に無関係に、送受信器120の現在状態に基づいて、同時受信いかんを判定することができる。
【0066】
段階S580において、キャリアアグリゲーション(CA)及び多重接続(MC)の構成に基づいて、同時受信いかんを判定する動作が遂行される。段階S540において、時間差が第1閾値(THR1)以下であると判定された場合、キャリアアグリゲーション(CA)による同時受信が可能である。それにより、多重SIM装置130は、RF資源として、多重接続(MC)だけではなく、キャリアアグリゲーション(CA)の構成に基づいて、同時受信いかんを判定することができる。例えば、多重SIM装置130は、送受信器120が、キャリアアグリゲーション(CA)を支援するか否かということ、及び送受信器120の現在状態において、使用可能なコンポーネントキャリアがあるか否かということにより、同時受信いかんを判定することができる。一部実施形態において、送受信器120が、多重接続(MC)を支援しない場合、多重SIM装置130は、キャリアアグリゲーション(CA)の構成に基づいて、同時受信いかんを判定することができる。一部実施形態において、送受信器120が、キャリアアグリゲーション(CA)及び多重接続(MC)をいずれも支援する場合、多重SIM装置130は、キャリアアグリゲーション(CA)及び多重接続(MC)の構成に基づいて、同時受信いかんを判定することができる。
【0067】
図11は、本開示の例示的実施形態による、同時受信いかんを判定する方法を示す順序図である。一部実施形態において、図11の段階S510は、図4の段階S500にも含まれ、図10の段階S520以前にも遂行される。図11に図示されているように、段階S510は、複数の段階(段階S512,S514,S516)を含んでもよく、以下において、図11は、図1図4及び図5を参照して説明される。
【0068】
一部実施形態において、複数のSIMにそれぞれ係わる無線通信の同時受信いかんは、無線通信のチャネルの状態に基づいても判定される。例えば、無線通信で信号を受信するのに使用される増幅利得間の差が、キャリアアグリゲーション(CA)による同時受信いかんを判定するのにも使用される。第1コードレス通信11で信号を受信するのに使用される第1増幅利得と、第2コードレス通信12で信号を受信するのに使用される第2増幅利得との差が大きい場合、キャリアアグリゲーション(CA)により、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12の同時受信が容易ではない。すなわち、第1増幅利得が第2増幅得より顕著に大きく、第2コードレス通信12で受信された信号を、第1増幅利得によって増幅する場合、第2コードレス通信12で受信されたノイズが増幅されるか、あるいは有効信号の範囲が、増幅器の動的範囲(dynamic range)を外れてしまう。それにより、無線通信の増幅利得間の差が、同時受信いかんを判定するのにも使用される。一部実施形態において、増幅利得差は、同時受信の可能性を判定する因子のうち一つでもある。例えば、チャネル状態に基づいて、同時受信の可能性を判定するために、後述される増幅利得、及びそれと異なる因子(例えば、変調次数(modulation order)など)のうち少なくとも一つが使用され、良好なチャネルと、良好ではないチャネルとの格差が大きい場合、同時受信が不可能であるとあらかじめ判定される。
【0069】
段階S512において、無線通信の増幅利得間の差を計算する動作が遂行される。例えば、多重SIM装置130は、送受信器120において、アンテナアレイ110を介して受信されるRF信号を増幅するのに使用される増幅利得を設定することができる。それにより、多重SIM装置130は、第1コードレス通信11に対応する第1増幅利得、及び第2コードレス通信12に対応する第2増幅利得を獲得することができ、第1増幅利得と第2増幅利得との差を計算することができる。
【0070】
段階S514において、増幅利得差と第2閾値(THR2)とを比較する動作が遂行される。図11に図示されているように、段階S512で計算された増幅利得差が、第2閾値(THR2)より大きい場合、段階S516が後続して遂行される一方、増幅利得差が、第2閾値(THR2)以下である場合、図10の段階S520が後続して遂行される。一部実施形態において、図11に図示されているところと異なるように、増幅利得差が、第2閾値(THR2)以上である場合、段階S516が後続して遂行され、増幅利得差が、第2閾値(THR2)未満である場合、図10の段階S520が後続して遂行される。
【0071】
段階S516において、同時受信の不可能を判定する動作が遂行される。段階S514において、増幅利得差が、第2閾値(THR2)を超えると判定された場合、同時受信が不可能であるとも事前に判定され、フレーム境界の間、時間差に基づいて、同時受信いかんを判定する、図10の段階(段階S520,S540,S560,S580)の遂行は、省略される。
【0072】
図12A及び図12Bは、本開示の例示的実施形態による、同時受信の例示を示すタイミング図である。具体的には、図12A及び図12Bは、キャリアアグリゲーション(CA)により、図1の第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12の同時受信の例示を示す。例えば、図4の段階S700において、図12A及び図12Bに図示されているように第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12にRF経路が割り当てられる。以下において、図12A及び図12Bは、図1を参照して説明される。
【0073】
図12Aの左側を参照すれば、第2コードレス通信12は、第1コンポーネントキャリアCC2、第2コンポーネントキャリアCC2及び第3コンポーネントキャリアCC3を含むキャリアアグリゲーション(CA)を使用することができる。たとえ図12Aにおいて、第1コンポーネントキャリアCC2、第2コンポーネントキャリアCC2及び第3コンポーネントキャリアCC3は、相互隣接(または、連続)しているように図示されているにしても、一部実施形態において、第2コードレス通信12は、図12Bに図示されているように、相互離隔(または、非連続)コンポーネントキャリアを含むキャリアアグリゲーション(CA)を使用することもできる。また、一部実施形態において、第2コードレス通信12は、1つの周波数帯域内において、コンポーネントキャリアを含むイントラバンド(intra-band)キャリアアグリゲーション(CA)、または2以上の周波数帯域内において、コンポーネントキャリアを含むインターバンド(inter-band)キャリアアグリゲーション(CA)を使用することもできる。また、第2コードレス通信12は、3個未満あるいは3個超過のコンポーネントキャリアを含むキャリアアグリゲーション(CA)を使用することもできる。
【0074】
一部実施形態において、図4の段階S300において、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12が衝突すると予測され、段階S500において、同時受信が可能であると判定された場合、段階S700において、第2コードレス通信12に割り当てられた複数のRF経路のうち少なくとも1つのRF経路を剥奪し、剥奪された少なくとも1つのRF経路を、第1コードレス通信11に割り当てる動作が遂行される。例えば、図12Aの右側に図示されているように、第3コンポーネントキャリア(CC3)が、第2コードレス通信12から剥奪され、第1コードレス通信11、例えば、第1コードレス通信11が遊休状態である場合、第1ページングに割り当てられる。それにより、第1コードレス通信11(または、第1ページング)及び第2コードレス通信12で受信されるデータは、キャリアアグリゲーション(CA)によっても同時受信される。
【0075】
図12Bの左側を参照すれば、第2コードレス通信12は、第1コンポーネントキャリアCC1及び第3コンポーネントキャリアCC3を含むキャリアアグリゲーション(CA)を使用することができる。一部実施形態において、図4の段階S300において、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12が衝突すると予測され、段階S500において、同時受信が可能であると判定された場合、段階S700において、第2コードレス通信12に割り当てられた少なくとも1つのRF経路と異なる少なくとも1つのRF経路を追加し、追加された少なくとも1つのRF経路を、第1コードレス通信11に割り当てる動作が遂行される。例えば、図12Bの右側に図示されているように、第2コードレス通信12に割り当てられた第1コンポーネントキャリアCC1及び第3コンポーネントキャリアCC3は、維持され、第2コンポーネントキャリアCC2が、第1コードレス通信11、例えば、第1コードレス通信11が遊休状態である場合、第1ページングにも割り当てられる。それにより、図12Aと類似し、第1コードレス通信11(または、第1ページング)及び第2コードレス通信12で受信されるデータは、キャリアアグリゲーション(CA)によっても同時受信される。
【0076】
図13は、本開示の例示的実施形態による、多重SIM無線通信のための方法を示す順序図である。具体的には、図4の方法と比較するとき、図13の方法は、複数のSIMにそれぞれ係わる複数の無線通信間の衝突を予測する段階が省略される。例えば、図13の方法は、図1の多重SIM装置130によっても遂行され、以下において、図13は、図1を参照して説明され、図13に係わる説明のうち図4に係わる説明と重複する内容は、省略される。
【0077】
段階S20において、RF資源情報を獲得する動作が遂行される。RF資源情報は、送受信器120が提供するRF資源、すなわち、RF経路に係わる情報を含んでもよく、例えば、キャリアアグリゲーション(CA)及び/または多重接続(MC)の構成に係わる情報を含んでもよい。一部実施形態において、RF経路に係わる情報の少なくとも一部は、送受信器120から多重SIM装置130に提供され、多重SIM装置130の内部保存所にも保存され、多重SIM装置130の外部保存所にも保存されている。
【0078】
段階S40において、同時受信が可能であるか否かということを判定する動作が遂行される。例えば、多重SIM装置130は、段階S20で獲得されたRF経路情報に基づいて、同時受信が可能であるか否かということを判定することができる。多重SIM装置130は、図4の例示と異なるように、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12は、衝突いかんと無関係に、RF資源情報に基づいて、同時受信が可能であるか否かということを判定することができる。第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12に、少なくとも1つのRF経路が割り当てられる場合、同時受信が可能であると判定され、段階S60において、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12に、RF経路を割り当てる動作が後続して遂行される。他方、第1コードレス通信11及び第2コードレス通信12のうち一つに、RF経路が割り当てられない場合、同時受信が不可能であると判定され、段階S80において、一部無線通信を保留する動作が後続して遂行される。
【0079】
図14は、本開示の例示的実施形態による、図1の多重SIM装置130の例示を示すブロック図である。図14に図示されているように、多重SIM装置130’は、少なくとも1つのプロセッサ132及びメモリ134を含んでもよく、少なくとも1つのプロセッサ132及びメモリ134は、通信可能に相互連結される。
【0080】
少なくとも1つのプロセッサ132は、命令語を含むプログラムコードを実行することにより、所望動作を遂行することができる。少なくとも1つのプロセッサ132は、例えば、プログラムに含まれたコード及び/または命令語によって表現された動作を含む、所望動作を実行するように物理的に構造化された回路を含むハードウェア具現データ処理装置を指すことができる。一部実施形態において、そのようなハードウェア具現データ処理装置は、非制限的な例示であり、マイクロプロセッサ、CPU(central processing unit)、プロセッサコア、マルチコアプロセッサ、マルチプロセッサ、AP(application processor)、CP(communication processor)、ASIC(application specific integrated circuit)及びFPGA(field programmable gate array)を含んでもよい。
【0081】
メモリ134は、少なくとも1つのプロセッサ132によってアクセスされ、図14に図示されているように、衝突ハンドラ134_2及びハードウェア構成134_1を保存することができる。メモリ134は、非制限的な例示として、RAM(random access memory)、ROM(read-only memory)、テープ、磁気ディスク、光学ディスク、揮発性メモリ、非揮発性メモリ、及びそれらの組み合わせのように、少なくとも1つのプロセッサ132によってアクセス可能な任意類型のメモリを含んでもよい。一部実施形態において、衝突ハンドラ134_2及びハードウェア構成134_1は、分離されたメモリ装置にそれぞれ保存されてもよい。
【0082】
少なくとも1つのプロセッサ132は、メモリ134に保存された衝突ハンドラ134_2を実行することにより、図面を参照して説明された多重SIM装置130’の動作のうち少なくとも一部を遂行することができる。例えば、少なくとも1つのプロセッサ132は、衝突ハンドラ134_2を実行することにより、無線通信に対応するウィンドウを設定することができ、該ウィンドウに基づいて、無線通信間の衝突を推定することができる。また、少なくとも1つのプロセッサ132は、衝突ハンドラ134_2を実行することにより、メモリ134に保存されたハードウェア構成134_1を参照することができ、無線通信間の衝突推定時、ハードウェア構成134_1に基づいて、同時受信が可能であるか否かということを判定することができる。例えば、ハードウェア構成134_1は、図1の送受信器120が提供するRF資源に係わる情報として、キャリアアグリゲーション(CA)及び/または多重接続(MC)の構成を含んでもよい。
【0083】
以上のように、図面と明細書とで例示的な実施形態が開示された。本明細書において、特定用語を使用して実施形態について説明したが、それらは、単に本開示の技術的思想についての説明目的に使用されたものであり、意味限定や、特許請求の範囲に記載された本開示の範囲制限のために使用されたものではない。従って、本技術分野の当業者であるならば、それらから多様な変形、及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解するであろう。従って、本開示の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の、多重SIM無線通信のための装置及びその方法は、例えば、通信関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 無線通信システム
20 プロトコルスタックシステム
21 第1プロトコルスタック
22 第2プロトコルスタック
23,134_2 衝突ハンドラ
24 ハードウェアインターフェース
100 ユーザ機器
110 アンテナアレイ
120 送受信器
130,130’ 多重SIM装置
132 プロセッサ
134 メモリ
134_1 ハードウェア構成
141 第1SIM
142 第2SIM
210 第1ネットワーク
211 第1基地局
221 第2基地局
220 第2ネットワーク
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14