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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】X線発生装置およびX線CT装置
(51)【国際特許分類】
   H05G 1/26 20060101AFI20230908BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
H05G1/26 T
A61B6/03 330Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019183962
(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公開番号】P2021061138
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 早苗
(72)【発明者】
【氏名】田島 英樹
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-189200(JP,A)
【文献】特開平11-283789(JP,A)
【文献】特開2004-022439(JP,A)
【文献】特開2014-147692(JP,A)
【文献】特開2001-145625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 1/00-2/00
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線管と、
前記X線管での放電を検出する放電検出部と、
前記X線管に印加する管電圧を発生する高電圧発生部と、
前記高電圧発生部を制御することで前記X線管から出力されるX線を制御し、前記放電が検出された場合には前記X線の出力を止めるように制御するX線制御部と、
前記管電圧を検出する管電圧検出部と、
前記管電圧検出部で検出された前記管電圧に関する情報にもとづいて、前記放電の発生後のX線の再出力のタイミングを決定する決定部と、
を備え
前記決定部は、
前記放電の検出時点から所定時間が経過するまでの間において、前記管電圧検出部で検出された前記管電圧の値が閾値以下となった時点を前記X線の再出力のタイミングとする、
X線発生装置。
【請求項2】
前記X線制御部は、
決定された前記X線の再出力のタイミングにもとづいてX線を出力するように前記高電圧発生部を制御する、
請求項1記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記決定部は、
前記管電圧の値が前記閾値より大きいまま前記所定時間が経過すると、前記管電圧の値が前記放電の検出の直前における前記管電圧の値以下となった時点を前記X線の再出力のタイミングとする、
請求項1または2記載のX線発生装置。
【請求項4】
前記決定部は、
前記管電圧検出部で検出された前記管電圧の値の時間微分値にもとづいて、前記放電の発生後の前記X線の再出力のタイミングを決定する、
請求項1ないしのいずれか1項に記載のX線発生装置。
【請求項5】
前記決定部は、
前記管電圧の前記時間微分値が閾値以上となった時点を前記X線の再出力のタイミングとする、
請求項記載のX線発生装置。
【請求項6】
前記X線制御部は、前記X線管に印加される管電流をさらに制御し、
前記管電流を検出する管電流検出部、
をさらに備え、
前記決定部は、
前記管電流検出部で検出された前記管電流の値にさらにもとづいて、前記放電の発生後の前記X線の再出力のタイミングを決定する、
請求項1ないしのいずれか1項に記載のX線発生装置。
【請求項7】
前記X線制御部は、前記X線管に印加される管電流をさらに制御し、
前記管電流を検出する管電流検出部、
をさらに備え、
前記決定部は、
前記放電の検出時点から前記所定時間よりも短い他の所定時間経過後における前記管電圧の値および前記管電流の値が、それぞれ前記放電の検出の直前における前記管電圧の値および前記管電流の値以下であると、前記他の所定時間経過の時点を前記X線の再出力のタイミングに決定する、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のX線発生装置。
【請求項8】
前記X線制御部は、前記X線管の陰極に印加されるフィラメント電流をさらに制御し、
前記フィラメント電流を検出するフィラメント電流検出部と、
前記放電の検出の直前における前記管電圧の値、前記管電流の値、および前記フィラメント電流の値と、前記決定部が決定した前記X線の再出力のタイミングと、にもとづいて、前記X線の再出力の開始時における前記管電圧の値、前記管電流の値、および前記フィラメント電流の値を設定する設定部と、
をさらに備えた請求項またはに記載のX線発生装置。
【請求項9】
前記設定部は、
前記X線の再出力のタイミングにおける前記管電圧の値で前記X線の再出力を開始した場合に、前記X線の再出力の開始時点から前記放電の検出の直前における前記管電圧の値に到達する復帰時点までの立ち上がり時間にもとづいて、前記X線の再出力の開始時における前記管電流の値と前記フィラメント電流の値を設定する、
請求項記載のX線発生装置。
【請求項10】
前記設定部は、
前記放電の検出の直前における前記管電流の値と、前記立ち上がり時間と、にもとづいて、前記放電が非発生と仮定した場合における前記復帰時点の前記管電流の予測値を求め、この予測値を前記X線の再出力の開始時における前記管電流の値に設定する、
請求項記載のX線発生装置。
【請求項11】
前記設定部は、
前記管電流の値と前記フィラメント電流の値とを関連付けたテーブルから、前記復帰時点の前記管電流の予測値に対応する前記フィラメント電流の値を抽出し、前記X線の再出力の開始時における前記フィラメント電流の値に設定する、
請求項10記載のX線発生装置。
【請求項12】
前記設定部は、
前記放電の検出の直前における前記管電流の値に対応する前記テーブル上の前記フィラメント電流の値と、前記放電の検出の直前における前記フィラメント電流の値と、の関係にもとづいて、前記テーブルから抽出した前記復帰時点の前記管電流の予測値に対応する前記フィラメント電流の値を補正し、この補正した前記フィラメント電流の値を前記X線の再出力の開始時における前記フィラメント電流の値に設定する、
請求項11記載のX線発生装置。
【請求項13】
X線を発生するX線管と、
前記X線管での放電を検出する放電検出部と、
前記X線管に印加する管電圧を発生する高電圧発生部と、
前記高電圧発生部を制御することで前記X線管から出力されるX線を制御し、前記放電が検出された場合には前記X線の出力を止めるように制御するX線制御部と、
前記管電圧を検出する管電圧検出部と、
前記管電圧検出部で検出された前記管電圧に関する情報にもとづいて、前記放電の発生後のX線の再出力のタイミングを決定する決定部と、
を備え
前記決定部は、
前記管電圧検出部で検出された前記管電圧の値の時間微分値にもとづいて、前記放電の発生後の前記X線の再出力のタイミングを決定する、
X線発生装置。
【請求項14】
X線を発生するX線管と、
前記X線管での放電を検出する放電検出部と、
前記X線管に印加する管電圧を発生する高電圧発生部と、
前記高電圧発生部を制御することで前記X線管から出力されるX線を制御し、前記放電が検出された場合には前記X線の出力を止めるように制御するX線制御部と、
前記管電圧を検出する管電圧検出部と、
前記管電圧検出部で検出された前記管電圧に関する情報にもとづいて、前記放電の発生後のX線の再出力のタイミングを決定する決定部と、
を備え
前記決定部は、
前記管電圧検出部で検出された前記管電圧の値の時間微分値にもとづいて、前記放電の発生後の前記X線の再出力のタイミングを決定し、
前記X線制御部は、前記X線管に印加される管電流をさらに制御し、
前記管電流を検出する管電流検出部、
をさらに備え、
前記決定部は、
前記管電流検出部で検出された前記管電流の値にさらにもとづいて、前記放電の発生後の前記X線の再出力のタイミングを決定する、
X線発生装置。
【請求項15】
X線を発生するX線管と、
前記X線管での放電を検出する放電検出部と、
前記X線管に印加する管電圧を発生する高電圧発生部と、
前記高電圧発生部を制御することで前記X線管から出力されるX線を制御し、前記放電が検出された場合には前記X線の出力を止めるように制御するX線制御部と、
前記管電圧を検出する管電圧検出部と、
前記管電圧検出部で検出された前記管電圧に関する情報にもとづいて、前記放電の発生後のX線の再出力のタイミングを決定する決定部と、
を有するX線発生装置と、
被検体を通過した前記X線を検出するX線検出器と、
を備え
前記決定部は、
前記放電の検出時点から所定時間が経過するまでの間において、前記管電圧検出部で検出された前記管電圧の値が閾値以下となった時点を前記X線の再出力のタイミングとする、
X線CT装置。
【請求項16】
X線を発生するX線管と、
前記X線管での放電を検出する放電検出部と、
前記X線管に印加する管電圧を発生する高電圧発生部と、
前記高電圧発生部を制御することで前記X線管から出力されるX線を制御し、前記放電が検出された場合には前記X線の出力を止めるように制御するX線制御部と、
前記管電圧を検出する管電圧検出部と、
前記管電圧検出部で検出された前記管電圧に関する情報にもとづいて、前記放電の発生後のX線の再出力のタイミングを決定する決定部と、
を有するX線発生装置と、
被検体を通過した前記X線を検出するX線検出器と、
を備え、
前記決定部は、
前記管電圧検出部で検出された前記管電圧の値の時間微分値にもとづいて、前記放電の発生後の前記X線の再出力のタイミングを決定する、
X線CT装置。
【請求項17】
X線を発生するX線管と、
前記X線管での放電を検出する放電検出部と、
前記X線管に印加する管電圧を発生する高電圧発生部と、
前記高電圧発生部を制御することで前記X線管から出力されるX線を制御し、前記放電が検出された場合には前記X線の出力を止めるように制御するX線制御部と、
前記管電圧を検出する管電圧検出部と、
前記管電圧検出部で検出された前記管電圧に関する情報にもとづいて、前記放電の発生後のX線の再出力のタイミングを決定する決定部と、
を有するX線発生装置と、
被検体を通過した前記X線を検出するX線検出器と、
を備え、
前記決定部は、
前記管電圧検出部で検出された前記管電圧の値の時間微分値にもとづいて、前記放電の発生後の前記X線の再出力のタイミングを決定し、
前記X線制御部は、前記X線管に印加される管電流をさらに制御し、
前記管電流を検出する管電流検出部、
をさらに備え、
前記決定部は、
前記管電流検出部で検出された前記管電流の値にさらにもとづいて、前記放電の発生後の前記X線の再出力のタイミングを決定する、
X線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書等に開示の実施形態は、X線発生装置およびX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置(Computed Tomography)には、被検体のスキャンプラン実行中にX線管の管内で放電が発生すると、スキャンプランを継続したまま、X線出力を一旦停止して放電の消滅を待ってからX線出力を再開する、いわゆる自動放電復帰機能を有するものがある。この種の自動放電復帰機能を有するX線CT装置は、一般に、X線管に放電が発生すると、放電の持続を避けるために一定の待機時間(たとえば数十ms)の間だけX線出力を停止する。
【0003】
この一定の待機時間は、X線の再出力時までに放電が消滅するために十分な時間が設定される。しかし、X線出力を停止する一定の待機時間が長いほど、放電を確実に消滅させることができる一方でX線出力の停止がX線CT画像に及ぼす悪影響が大きくなってしまい、X線CT画像が診断に使用することができない異常画像となってしまう場合がある。
【0004】
この異常画像の発生を抑制する方法として、一定の待機時間の長さを短くする方法が考えられるが、この方法の採用は難しい。これは、放電が発生したときの放電の持続時間や、管電圧と管電流の立ち下りかたが、放電のモードにより違うためである。
【0005】
たとえば、大きな放電電流が流れる放電モードの場合は、管電圧の立ち下りは早いが、管電圧が立ち下がってからも放電が持続することがある。一方、大きな放電電流が流れず放電がすぐに消滅する放電モードの場合、管電圧の立ち下りは遅い。このため、X線の再出力までの一定の待機時間を短くすると、前者の放電モードの場合は放電が消滅する前にX出力開始となってしまう場合がある。また、後者の放電モードの場合は管電圧が十分に低くなる前にX線の再出力が開始されてしまうために、X線の立上り時の管電圧および管電流が不安定になってしまう場合がある。
【0006】
このため、待機時間の長さを一定の長さとする場合、放電のモードによらず確実に放電を消滅させるためには、待機時間の長さは余裕を持った長さに設定しなければならない。したがって、待機時間の長さを一定の長さとする場合、待機時間に起因する異常画像の発生を避けることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-145625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、X線管内の放電発生後、管電圧値に関する情報にもとづいてX線の再出力タイミングを決定することである。
【0009】
ただし、本明細書等に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を、本明細書等に開示の実施形態が解決する他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態に係るX線発生装置は、X線管と、放電検出部と、高電圧発生部と、X線制御部と、管電圧検出部と、決定部と、を備える。X線管は、X線を発生する。放電検出部は、X線管での放電を検出する。高電圧発生部は、X線管に印加する管電圧を発生する。X線制御部は、高電圧発生部を制御することでX線管から出力されるX線を制御し、放電が検出された場合にはX線の出力を止めるように制御する。管電圧検出部は、管電圧を検出する。決定部は、管電圧検出部で検出された管電圧に関する情報にもとづいて、放電の発生後のX線の再出力のタイミングを決定する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るX線CT装置の一構成例を示すブロック図。
図2】一実施形態に係るX線発生装置の一構成例を示すブロック図。
図3】従来復帰処理の手順の一例を示すフローチャート。
図4】従来復帰処理における管電圧と管電流とフィラメント電流とX線出力との関係を示す説明図。
図5】第1実施形態に係る自動復帰制御処理の手順の一例を示すフローチャート。
図6図5のステップS6で実行される第1復帰制御処理の手順の一例を示すサブルーチンフローチャート。
図7】第1復帰制御処理における管電圧値と管電流値とフィラメント電流値とX線出力との関係を示す説明図。
図8図5のステップS9で実行される第2復帰制御処理の手順の一例を示すサブルーチンフローチャート。
図9】第2復帰制御処理における管電圧値と管電流値とフィラメント電流値とX線出力との関係を示す説明図。
図10】直前管電圧値および直前管電流値の大きさと、管電圧閾値および管電流閾値の組との関係の一例を示す説明図。
図11図5のステップS11で実行される第3復帰制御処理の手順の一例を示すサブルーチンフローチャート。
図12】第3復帰制御処理における管電圧値と管電流値とフィラメント電流値とX線出力との関係を示す説明図。
図13】第2実施形態に係る自動復帰制御処理の手順の一例を示すフローチャート。
図14図13のステップS25で実行される第4帰制御処理の手順の一例を示すサブルーチンフローチャート。
図15】第4復帰制御処理における管電圧値とその時間微分と管電流値とフィラメント電流値とX線出力との関係を示す説明図。
図16図13のステップS27で実行される第5復帰制御処理の手順の一例を示すサブルーチンフローチャート。
図17】第5復帰制御処理における管電圧値とその時間微分と管電流値とフィラメント電流値とX線出力との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、X線発生装置およびX線CT装置の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
(全体構成)
図1は、一実施形態に係るX線CT装置1の一構成例を示すブロック図である。また、図2は、一実施形態に係るX線発生装置20の一構成例を示すブロック図である。なお、図1に示すX線CT装置1は、1つの架台装置10を有するものであるが、説明の都合上、図1には2つの架台装置10を複数描出した。
【0014】
図1に示すように、X線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。架台装置10は、X線発生装置20を含む。X線発生装置20は、X線管11とX線高電圧装置21を含む(図2参照)。なお、X線発生装置20は、歯科用のCT装置にも適用可能である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸または寝台装置30の天板33の長手方向をz軸方向、z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をx軸方向、z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をy軸方向とそれぞれ定義するものとする。
【0016】
X線CT装置1には、X線管と検出器とが一体として被検体の周囲を回転するRotate/Rotate-Type(第3世代CT)、リング状にアレイされた多数のX線検出素子が固定され、X線管のみが被検体の周囲を回転するStationary/Rotate-Type(第4世代CT)等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本実施形態へ適用可能である。以下の説明では、本実施形態に係るX線CT装置1として第3世代のRotate/Rotate-Typeを採用する場合の例を示す。
【0017】
架台装置10は、X線発生装置20に含まれるX線管11およびX線高電圧装置21のほか、X線検出器12、撮影領域が内在する開口部19を有する回転フレーム13、制御装置15、ウェッジ16、コリメータ17、およびデータ収集回路(DAS:Data Acquisition System)18を有する。
【0018】
X線管11は、X線高電圧装置21からの高電圧の印加により、フィラメント(陰極)11cからターゲット(陽極)11aに向けて熱電子を照射することでX線を発生する真空管である。図2には、X線管11が、回転する陽極11aに熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管である場合の例を示した。なお、本実施形態においては、一管球型のX線CT装置にも、X線管と検出器との複数のペアを回転リングに搭載した、いわゆる多管球型のX線CT装置にも適用可能である。
【0019】
X線検出器12は、X線管11から照射され、被検体Pを通過したX線を検出し、当該X線量に対応した電気信号をDAS18へと出力する。X線検出器12は、X線管11の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。また、X線検出器12は、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(列方向、row方向)に複数配列された構造を有する。
【0020】
また、X線検出器12は、たとえば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有し、シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータまたは2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、たとえば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。
【0021】
なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0022】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、後述する制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。なお、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12に加えて、高電圧装置14やDAS18をさらに備えて支持する。
【0023】
なお、DAS18が生成した検出データは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から光通信によって架台装置10の非回転部分(たとえば固定フレーム、図示せず)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置40へと転送される。図示しない固定フレームは回転フレーム13を回転可能に支持するフレームである。また、回転フレーム13から架台装置10の非回転部分への検出データの送信方法は、光通信に限らず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式を採用しても構わない。
【0024】
制御装置15は、制御基板に設けられたプロセッサと、記憶回路と、モータおよびアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置15は、コンソール装置40または架台装置10に取り付けられた後述する入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台装置10および寝台装置30の制御を行う機能を有する。たとえば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台装置10をチルトさせる制御、ならびに寝台装置30および天板33を動作させる制御を行う。なお、架台装置10をチルトさせる制御は、架台装置10に取り付けられた入力インターフェースによって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現される。なお、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられても構わない。
【0025】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線があらかじめ定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。たとえば、ウェッジ16(ウェッジフィルタ(wedge filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter))は、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。
【0026】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。コリメータ17は、X線可動絞りと呼ばれる場合もある。
【0027】
DAS18(Data Acquisition System)は、X線検出器12の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をアナログデジタル変換(AD変換)するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS18が生成した検出データは、コンソール装置40へと転送される。
【0028】
X線発生装置20は、上述の通り、X線管11とX線高電圧装置21を含む(図2参照)。X線高電圧装置21は、回転フレーム13に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム側に設けられても構わない。X線発生装置20の構成および動作の詳細については後述する。
【0029】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備える。
【0030】
基台31は、支持フレーム34を鉛直方向(y方向)に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を天板33の長軸方向(z方向)に移動するモータあるいはアクチュエータである。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。
【0031】
なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向(z方向)に移動してもよい。また、寝台駆動装置32は、寝台装置30の基台31ごと移動させてもよい。本発明を立位CTに応用可能な場合は、天板33に相当する患者移動機構を移動する方式であってもよい。
【0032】
コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、ネットワーク接続回路44と、処理回路45とを有する。なお、コンソール装置40は、架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40の構成要素の一部または全部が含まれてもよい。また、コンソール装置40が単一のコンソールにて全ての機能を実行するものとして以下説明するが、これらの機能は複数のコンソールが実行してもよい。
【0033】
メモリ41は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有する。また、メモリ41は、たとえば、投影データや再構成画像データ、あらかじめ取得した被検体Pのボリュームデータなどを記憶する。
【0034】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。たとえば、ディスプレイ42は、処理回路45によって生成された医用画像(CT画像)や、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。たとえば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等である。また、ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。また、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40の本体と無線通信可能なタブレット端末などで構成されてもよい。
【0035】
入力インターフェース43は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路45に出力する。たとえば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等をユーザから受け付ける。たとえば、入力インターフェース43は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行なうタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、および音声入力回路等により実現される。また、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40の本体と無線通信可能なタブレット端末などで構成されてもよい。
【0036】
ネットワーク接続回路44は、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワーク接続回路44は、この各種プロトコルに従ってX線CT装置1と画像サーバ等の他の機器とを接続する。この接続には、電子ネットワークを介した電気的な接続などを適用することができる。ここで電子ネットワークとは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、無線/有線の病院基幹LAN(Local Area Network)やインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワークなどを含む。
【0037】
処理回路45は、メモリ41に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、X線CT装置1の全体の動作を制御するプロセッサである。
【0038】
(X線発生装置の構成)
次に、X線発生装置20の構成について説明する。
【0039】
図2に示すように、X線発生装置20のX線高電圧装置21は、高電圧発生装置22、管電圧検出回路23、管電流検出回路24、フィラメント加熱電源25、フィラメント電流検出回路26、記憶回路27、および処理回路28を有する。
【0040】
高電圧発生装置22は、変圧器(トランス)および整流器等の電気回路を有し、X線管11の両極間に印加する高圧の管電圧を発生する機能を有し、処理回路28に出力電圧を制御される。高電圧発生装置22は、変圧器方式であってもよいしインバータ方式であっても構わない。以下の説明では、高電圧発生装置22がインバータ方式である場合の例を示す。高電圧発生装置22は、高電圧発生部の一例である。
【0041】
管電圧検出回路23は、X線管11の管電圧kVを検出し、検出した管電圧kVの値に応じた信号を出力して処理回路28に与える。管電流検出回路24は、X線管11の管電流mAを検出し、検出した管電流mAの値に応じた信号を出力して処理回路28に与える。管電圧検出回路23は管電圧検出部の一例である。また、管電流検出回路24は管電流検出部の一例である。
【0042】
フィラメント加熱電源25は、X線管11の陰極フィラメント11cに印加するフィラメント電流Ifを供給する電流源であり、処理回路28に出力電流を制御される。
【0043】
フィラメント電流検出回路26は、フィラメント電流Ifを検出し、検出したフィラメント電流Ifの値に応じた信号を出力して処理回路28に与える。フィラメント電流検出回路26はフィラメント電流検出部の一例である。
【0044】
記憶回路27は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、プログラムや各種データを記憶する。記憶回路27は、たとえば管電流mAの値とフィラメント電流Ifの値とを関連付けたテーブル(以下、Ifテーブルという)をあらかじめ記憶する。記憶回路27に記憶されるプログラムおよびデータの一部または全部は、電子ネットワークを介した通信によりダウンロードされてもよいし、光ディスクなどの可搬型記憶媒体を介して記憶回路に与えられてもよい。
【0045】
処理回路28は、記憶回路27に記憶された自動復帰制御プログラムを読み出して実行することにより、X線管11内の放電を検出した後、管電圧kVの値にもとづいてX線の再出力タイミングを決定するための処理を実行するプロセッサである。
【0046】
処理回路28のプロセッサは、図2に示すように、放電検出機能281、X線制御機能282、決定機能283、および設定機能284を実現する。これらの各機能はそれぞれプログラムの形態で記憶回路27に記憶されている。なお、処理回路28の機能281-284の一部は、X線高電圧装置21にデータ送受信可能に接続された他のプロセッサ(たとえばコンソール装置40の処理回路45のプロセッサや制御装置15のプロセッサや、外部のプロセッサなど)により実現されてもよい。
【0047】
放電検出機能281は、X線管11での放電を検出する。放電が発生すると、管電圧が低下し、管電流が急上昇することが知られている。このため、放電検出機能281は、たとえば、管電圧検出回路23の出力信号にもとづいて管電圧kVの値があらかじめ設定した閾値電圧以下となった場合に、および/または、管電流検出回路24の出力信号にもとづいて管電mAの値があらかじめ設定した閾値電流以上となった場合に、X線管11で放電が発生したことを検出するとよい。放電検出機能281は、放電検出部の一例である。
【0048】
X線制御機能282は、高電圧発生装置22を制御することで、X線管11から出力されるX線を制御する。また、X線制御機能282は、放電が検出された場合には、X線の出力を止めるように高電圧発生装置22を制御する。本実施形態では、高電圧発生装置22がインバータ方式である場合の例を示す。この場合、X線制御機能282は、放電が検出された場合には、高電圧発生装置22のインバータに交流の供給を停止させることによりX線出力を停止させる。X線制御機能282は、X線制御部の一例である。
【0049】
また、X線制御機能282は、決定機能283により決定されたX線の再出力のタイミングにもとづいてX線を出力するように、高電圧発生装置22を制御する。
【0050】
また、X線制御機能282は、フィラメント加熱電源25を制御することにより、X線管11のフィラメント11cに印加されるフィラメント電流Ifを制御する。
【0051】
決定機能283は、管電圧検出回路23で検出された管電圧kVに関する情報にもとづいて、放電の発生後のX線の再出力のタイミングを決定する。管電圧kVに関する情報は、管電圧kVの値そのものと、管電圧kVの値の時間微分ΔkVとを含む。
【0052】
また、決定機能283は、管電流検出回路24で検出された管電流mAの値にさらにもとづいて、放電の発生後のX線の再出力のタイミングを決定してもよい。決定機能283は、決定部の一例である。
【0053】
設定機能284は、放電の検出の直前における管電圧kVの値(以下、直前管電圧値という)kV0、管電流mAの値(以下、直前管電流値という)mA0、およびフィラメント電流Ifの値(以下、直前If値という)If0と、決定機能283が決定したX線の再出力のタイミングと、にもとづいて、X線の再出力の開始時における管電圧kVの値、管電流mAの値、およびフィラメント電流Ifの値を設定する。設定機能284は、設定部の一例である。
【0054】
(従来復帰処理)
ここで、X線管11の管内で放電が発生した場合にスキャンプランを継続したままX線照射を継続させる処理(以下、自動復帰制御処理という)の従来の処理(従来復帰処理)について説明する。
【0055】
図3は、従来復帰処理の手順の一例を示すフローチャートである。図3を含め、以下のフローチャートにおいて、Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。また、図4は、従来復帰処理における管電圧kVと管電流mAとフィラメント電流IfとX線出力との関係を示す説明図である。
【0056】
従来の自動復帰制御処理では、まず、ステップS1001において放電が検出されたか否かを判定する。放電が検出されない場合はステップS1001の判定を繰り返す。一方、放電が検出されると(ステップS1001のYES)、X線出力を停止させる(ステップS1002、図4の時間t=0参照)。
【0057】
次に、ステップS1003において、X線出力の停止後、放電の消滅を待つために、あらかじめ設定された一定の待機時間tp(たとえば数十ms)が経過したか否かを判定する。
【0058】
一定の待機時間tpの経過まで待機し(ステップS1003のNO)、一定の待機時間tpが経過すると(ステップS1003のYES)、ステップS1004に進む。一般に、一定の待機時間tpは、管電圧kVおよび管電流mAがゼロになるために十分な時間が設定される(図4参照)。この待機時間tpが、X線の再出力のタイミングとなる。
【0059】
次に、ステップS1004において、復帰後の管電流値mApと復帰後のフィラメント電流値Ifpが取得される。具体的には、まず、時間t=tpでX線再出力した場合に、現在の管電圧kV=0からもとの管電圧kVに到達するまでの立ち上がり時間が計算される。求めた立ち上がり時間を時間t=tpに加算した時間における管電流値mApを、復帰後の管電流値mApとして求める。
【0060】
そして、ステップS1005において、時間t=tpでX線の再出力が開始される。このとき、管電圧kVの初期値はゼロ、管電流mAの初期値はmAp、フィラメント電流Ifの初期値はIfpに設定される。
【0061】
以上の従来復帰処理の手順では、放電の発生後、あらかじめ設定された一定の待機時間tpが経過してからX線の再出力を開始することになる。上述の通り、一定の待機時間tpは放電が消滅するために十分な時間が設定される。このため、放電を確実に消滅させることができる一方で、X線出力の停止によって線状のアーティファクト(ストリークアーティファクト)などがX線CT画像に発生してしまい、X線CT画像が診断に使用することができない異常画像となってしまう場合がある。
【0062】
(自動復帰制御処理の第1実施形態)
続いて、第1実施形態に係るX線発生装置20の処理回路28による自動復帰制御処理について図5図12を参照して説明する。
【0063】
図5は、第1実施形態に係る自動復帰制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0064】
まず、ステップS1において、放電検出機能281は、放電を検出したか否かを判定する。放電が検出されない場合はステップS1の判定を繰り返す。一方、放電を検出すると(ステップS1のYES)、放電検出機能281は、その旨の情報をX線制御機能282に与える。
【0065】
次に、ステップS2において、X線制御機能282は、高電圧発生装置22のインバータに交流の供給を停止させることによりX線出力を停止させる(時間t=0)。
【0066】
次に、ステップS3において、決定機能283は、放電の検出の直前における管電圧kVの値(直前管電圧値)kV0、管電流mAの値(直前管電流値)mA0、およびフィラメント電流Ifの値(直前If値)If0を取得する。ここで、直前の値は、放電検出の所定時間前の値でもよいし、サンプリング間隔で一つ前の値でもよいし、サンプリング間隔で1つ前の値から所定個(たとえば5個)前の値までの加算平均値または重み付け平均値でもよい。管電圧kV、管電流mA、およびフィラメント電流Ifの値の実測値は、直近の値、または直近から所定期間前までの複数の値、または直近から所定のサンプリング数の複数の値が、記憶回路27などの記憶媒体に記憶されている。決定機能283は、この記憶媒体に記憶された実測値にもとづいて、直前管電圧値kV0、直前管電流値mA0、および直前If値If0を取得する。
【0067】
次に、ステップS4において、決定機能283は、放電検出から第1所定時間T1が経過したか否かを判定する。第1所定時間T1は、他の所定時間の一例である。
【0068】
第1所定時間T1が経過した場合は(ステップS4のYES)、ステップS5において、決定機能283は、t=T1において管電圧kVの実測値kV(t=T1)が直前管電圧値kV0以下かつ管電流の実測値kV(t=T1)が直前管電流値mA0以下となっているか否かを判定する。t=T1において管電圧kVの実測値kV(T1)が直前管電圧値kV0以下かつ管電流の実測値kV(T1)が直前管電流値mA0以下となっている場合は、ステップS6において決定機能283と設定機能284は第1復帰制御処理を行い、一連の手順は終了となる。第1復帰制御処理では、決定機能283は、X線の再出力のタイミングをt=T1と決定する。
【0069】
一方、t=T1において管電圧kVの実測値kV(T1)が直前管電圧値kV0以下となっていない、または管電流の実測値kV(T1)が直前管電流値mA0以下となっていない場合は(ステップS5のNO)、ステップS7において、決定機能283は、放電検出から第2所定時間Tthが経過したか否かを判定する。第2所定時間Tthは、所定時間の一例である。
【0070】
第2所定時間Tthが経過していない場合(ステップS7のYES)、管電圧kVの実測値kV(t)が管電圧閾値kVth以下であれば(ステップS8のYES)、ステップS9において決定機能283と設定機能284は第2復帰制御処理を行い、一連の手順は終了となる。第2復帰制御処理では、決定機能283は、X線の再出力のタイミングをステップS8でYESと判定されたタイミング(t=T2)に決定する。
【0071】
一方、管電圧kVの実測値kV(t)が管電圧閾値kVthより大きいと(ステップS8のNO)、ステップS7に戻る。なお、ステップS8において、決定機能283は、さらに管電流値mA(t)が管電流閾値mAth以下である場合にだけステップS9に進むよう制御してもよい。
【0072】
他方、管電圧kVの実測値kV(t)が管電圧閾値kVthより大きいまま第2所定時間Tthが経過した場合は(ステップS7のYES)、ステップS10に進む。
【0073】
ステップS10において、決定機能283は、現在の管電圧kVの実測値kV(t)が直前管電圧値kV0以下であるか否かを判定する。現在の管電圧kVの実測値kV(t)が直前管電圧値kV0以下であると、ステップS11において決定機能283と設定機能284は第3復帰制御処理を行い、一連の手順は終了となる。第3復帰制御処理では、決定機能283は、X線の再出力のタイミングをステップS10でYESと判定されたタイミング(t=T3)に決定する。
【0074】
一方、管電圧kVの実測値kV(t)が管電圧閾値kVthより大きいと(ステップS10のNO)、ステップS10を繰り返す。なお、ステップS10において、決定機能283は、さらに管電流値mA(t)が直前管電流値mA0以下である場合にだけステップS11に進むよう制御してもよい。
【0075】
以上の手順により、X線管11の放電検出後、管電圧値kV(t)にもとづいてX線の再出力タイミングを決定することができる。
【0076】
(第1復帰制御処理)
図6は、図5のステップS6で決定機能283と設定機能284により実行される第1復帰制御処理の手順の一例を示すサブルーチンフローチャートである。また、図7は、第1復帰制御処理における管電圧値kV(t)と管電流値mA(t)とフィラメント電流値If(t)とX線出力との関係を示す説明図である。
【0077】
第1復帰制御処理は、時間t=T1において管電圧kVの実測値kV(T1)が直前管電圧値kV0以下かつ管電流の実測値kV(T1)が直前管電流値mA0以下である場合に実行される。第1復帰制御処理では、X線の再出力のタイミングは、決定機能283によりt=T1に決定されている。
【0078】
ステップS61において、設定機能284は、X線出力停止(t=0)からの経過時間t(=T1)と、現在の管電圧値kV(T1)=kV1と、を管電圧検出回路23から取得する。
【0079】
次に、ステップS62において、設定機能284は、X線の再出力のタイミングであるt=T1における管電圧値kV(T1)=kV1でX線の再出力を開始した場合に、再出力の開始時点から管電圧値kV(t)がkV1から直前管電圧値kV0に到達する復帰時点までの立ち上がり時間tr1を求める。
【0080】
次に、ステップS63において、設定機能284は、放電が生じておらずX線出力を停止していないと仮定した場合における、X線の出力停止時間t=0から、現在の時間t=T1と立ち上がり時間tr1とを加算した時間が経過した時間t=T1+tr1における管電流mA(T1+tr1)の予測値とフィラメント電流If(T1+tr1)を取得する。
【0081】
たとえば、管電流変調制御を行っている場合は、管電流変調制御における管電流の変調情報にもとづいて、放電が生じておらずX線出力を停止していないと仮定した場合における、立ち上がり時間trを現在の時間T1に加算した時間T1+trにおける管電流mA(T1+tr1)の予測値を求める。
【0082】
また、フィラメント電流If(T1+tr1)の値は、求めた管電流mA(T1+tr1)の値にもとづいて決定される。たとえば、管電流mAの値とフィラメント電流Ifの値とを関連付けたテーブルを利用可能な場合は、求めた管電流mAに対応するフィラメント電流Ifの値をテーブルから抽出し、この抽出した値をフィラメント電流If(T1+tr1)の値として取得する。
【0083】
このとき、設定機能284はさらに、テーブルから抽出した値を、直前管電流値mA0に対応するテーブル上のフィラメント電流値と、直前If値If0と、にもとづいて補正した値をフィラメント電流If(T1+tr1)の値として求めてもよい。たとえば、直前管電流値mA0が300mA、直前If値If0が4.13A、求めた管電流mA(T1+tr1)が305mAである場合を考える。この場合において、テーブル上で、管電流値300mAにIf値4.10Aが関連付けられ、管電流値305mAにIf値4.12Aが関連付けられているとする。この場合、直前管電流値mA0が300mAにテーブル上で対応するIf値は4.10Aであるのに対し、実際の直前If値If0は4.13Aであり、その差は0.03A、比は4.13/4.10である。そこで、求めた管電流mA(T1+tr1)である305mAにテーブル上で対応するIf値4.12Aをそのまま用いるのではなく、この4.12Aに上記差の0.03Aを加えて補正した4.15A、あるいは上記比を乗じて補正した4.15Aを、フィラメント電流If(T1+tr1)の値として取得してもよい。
【0084】
次に、ステップS64において、時間t=T1でX線の再出力が開始される。このとき、管電圧kV(t)の初期値はkV1、管電流mA(t)の初期値mAset1はmA(T1+tr1)、フィラメント電流Ifの初期値Ifset1はIf(T1+tr1)に設定される。
【0085】
そして、ステップS65において、決定機能283は、X線制御機能282を制御し、設定機能284により設定された各初期値でX線の出力を再開させる。
【0086】
以上の手順により、時間t=T1において管電圧kVの実測値kV(T1)が直前管電圧値kV0以下かつ管電流の実測値kV(T1)が直前管電流値mA0以下である場合に、時間t=T1において適切な初期値でX線の出力を開始することができる。
【0087】
なお、図5のステップS5で第1復帰制御処理に移行すると判定されたタイミングt=T1と、実際の再出力タイミングとは、厳密には、図6のステップS62-S64の処理に要する時間だけずれると考えられるが、簡単のため本明細書等においては両者が一致するものとして説明する。この点において、第2-5復帰制御処理も同様である。
【0088】
第1復帰制御処理によれば、X線出力停止から第1所定時間T1経過した時点で、管電圧値および管電流値のそれぞれが直前管電圧値kV0以下および直前管電流値mA0以下であれば、時間t=T1をX線再出力タイミングとして速やかに適切な初期値でX線の出力を開始することができる。このため、従来復帰処理のように一定の待機時間tpの間X線出力を停止する場合にくらべ、X線出力の停止がX線CT画像に与える影響を大幅に抑制することができる。
【0089】
(第2復帰制御処理)
図8は、図5のステップS9で決定機能283と設定機能284により実行される第2復帰制御処理の手順の一例を示すサブルーチンフローチャートである。また、図9は、第2復帰制御処理における管電圧値kV(t)と管電流値mA(t)とフィラメント電流値If(t)とX線出力との関係を示す説明図である。
【0090】
第2復帰制御処理は、第1所定時間T1より長く第2所定時間Tth時間より短い時間tにおいて管電圧値kV(t)が管電圧閾値kVth以下である場合に実行される。第2復帰制御処理では、X線の再出力のタイミングは、決定機能283により、図5のステップS8で管電圧値kV(t)が管電圧閾値kVth以下であると判定されたタイミングt=T2に決定されている。なお、第1復帰制御処理を省略する場合、放電の検出時点t=t0から第2所定時間Tthが経過するまでの間において、管電圧値kV(t)が管電圧閾値kVth以下となった時点をX線の再出力のタイミングT2に決定されてもよい。
【0091】
ステップS91において、設定機能284は、X線出力停止(t=0)からの経過時間t(=T2)と、現在の管電圧値kV(T2)=kV2と、を管電圧検出回路23から取得する。
【0092】
次に、ステップS92において、設定機能284は、X線の再出力のタイミングであるt=T2における管電圧値kV(T2)=kV2でX線の再出力を開始した場合に、管電圧値kV(t)がkV2から直前管電圧値kV0に到達する復帰時点までの立ち上がり時間tr2を求める。なお、図9には、管電圧kV(T2)が管電圧閾値kVthに等しい場合の例を示した。
【0093】
次に、ステップS93において、放電が生じておらずX線出力を停止していないと仮定した場合における、X線の出力停止時間t=0から、現在の時間t=T2(<Tth)と立ち上がり時間tr2とを加算した時間が経過した時間t=T2+tr2における管電流mA(T2+tr2)の値とフィラメント電流If(T2+tr2)を取得する。
【0094】
このとき、図6のステップS63と同様に、設定機能284はさらに、テーブルから抽出した値を、直前管電流値mA0に対応するテーブル上のフィラメント電流値と、直前If値If0と、にもとづいて補正した値を、フィラメント電流If(T2+tr2)の値として求めてもよい。
【0095】
次に、ステップS94において、時間t=T2でX線の再出力が開始される。このとき、管電圧kV(t)の初期値はkV2、管電流mA(t)の初期値mAset2はmA(T2+tr2)、フィラメント電流Ifの初期値Ifset2はIf(T2+tr2)に設定される。
【0096】
そして、ステップS95において、決定機能283は、X線制御機能282を制御し、設定機能284により設定された各初期値でX線の出力を再開させる。
【0097】
以上の手順により、時間t=T2(<Tth)において管電圧値kV(T2)が管電圧閾値kVth以下である場合に、時間t=T2において適切な初期値でX線の出力を開始することができる。
【0098】
なお、図10に示すように、図5のステップS8における判定で利用される管電圧閾値kVthおよび管電流閾値mAthの組は、直前管電圧値kV0および直前管電流値mA0の大きさに応じて複数の組を適宜利用いてもよい。図10には、直前管電圧値kV0と直前管電流値mA0の大きさをそれぞれ3段階に分類し、9種の管電圧閾値kVthおよび管電流閾値mAthの組を利用可能とする場合における、直前管電圧値kV0および直前管電流値mA0の大きさと、管電圧閾値kVthおよび管電流閾値mAthの組との関係の一例を示した。たとえば、図5のステップS8で管電流値の判定を行うか否かは、管電圧閾値kVthの値に応じて決定してもよい。
【0099】
第2復帰制御処理によれば、X線出力停止から第2所定時間Tth経過しするまでの期間において、管電圧値kV(t)にもとづいて放電の発生後のX線の再出力のタイミングを決定することができ、速やかに適切な初期値でX線の出力を開始することができる。このため、第1復帰制御処理と同様に、従来復帰処理のように一定の待機時間tpの間X線出力を停止する場合にくらべ、X線出力の停止がX線CT画像に与える影響を大幅に抑制することができる。
【0100】
(第3復帰制御処理)
図11は、図5のステップS11で決定機能283と設定機能284により実行される第3復帰制御処理の手順の一例を示すサブルーチンフローチャートである。また、図12は、第3復帰制御処理における管電圧値kV(t)と管電流値mA(t)とフィラメント電流値If(t)とX線出力との関係を示す説明図である。
【0101】
第3復帰制御処理は、管電圧kVの実測値kV(t)が管電圧閾値kVthより大きいまま第2所定時間Tthが経過した場合において、管電圧kVの実測値kV(t)が直前管電圧値kV0以下である場合に実行される。第3復帰制御処理では、X線の再出力のタイミングは、決定機能283により、図5のステップS10で管電圧値kV(t)が直前管電圧値kV0以下であると判定されたタイミングt=T3に決定されている。なお、第3復帰制御処理に到達するまでには放電が消滅している可能性が高いと考えられるため、図5のステップS10における管電流値の判定は省略が可能である。
【0102】
ステップS111において、設定機能284は、X線出力停止(t=0)からの経過時間t(=T3)と、現在の管電圧値kV(T3)=kV3と、を管電圧検出回路23から取得する。
【0103】
次に、ステップS112において、設定機能284は、X線の再出力のタイミングであるt=T3における管電圧値kV(T3)=kV3でX線の再出力を開始した場合に、管電圧値kV(t)がkV3から直前管電圧値kV0に到達する復帰時点までの立ち上がり時間tr3を求める。
【0104】
次に、ステップS113において、放電が生じておらずX線出力を停止していないと仮定した場合における、X線の出力停止時間t=0から、現在の時間t=T3(≧Tth)と立ち上がり時間tr3とを加算した時間が経過した時間t=T3+tr3における管電流mA(T3+tr3)の値とフィラメント電流If(T3+tr3)を取得する。
【0105】
このとき、図6のステップS63と同様に、設定機能284はさらに、テーブルから抽出した値を、直前管電流値mA0に対応するテーブル上のフィラメント電流値と、直前If値If0と、にもとづいて補正した値を、フィラメント電流If(T3+tr3)の値として求めてもよい。
【0106】
次に、ステップS114において、時間t=T3でX線の再出力が開始される。このとき、管電圧kV(t)の初期値はkV3、管電流mA(t)の初期値mAset3はmA(T3+tr3)、フィラメント電流Ifの初期値Ifset3はIf(T3+tr3)に設定される。
【0107】
そして、ステップS115において、決定機能283は、X線制御機能282を制御し、設定機能284により設定された各初期値でX線の出力を再開させる。
【0108】
以上の手順により、管電圧kVの実測値kV(t)が管電圧閾値kVthより大きいまま第2所定時間Tthが経過した場合において、管電圧kVの実測値kV(t)が直前管電圧値kV0以下となった時間t=T3において、適切な初期値でX線の出力を開始することができる。
【0109】
第3復帰制御処理によれば、管電圧値kV(t)が管電圧閾値kVthより大きいまま第2所定時間Tthが経過した場合には、管電圧kVの実測値kV(t)が直前管電圧値kV0以下であるタイミングを放電の発生後のX線の再出力のタイミングとして決定することができ、速やかに適切な初期値でX線の出力を開始することができる。このため、第1復帰制御処理と同様に、従来復帰処理のように一定の待機時間tpの間X線出力を停止する場合にくらべ、X線出力の停止がX線CT画像に与える影響を大幅に抑制することができる。
【0110】
管電圧値kV(t)が管電圧閾値kVthより大きいまま第2所定時間Tthが経過した場合は、放電が早々に消滅してしまい、以後、通常のX線出力停止と同様に管電圧と管電流がゆるやかに減少している場合が含まれる。この場合、仮に第2所定時間Tthを設定せずに管電圧値kV(t)が管電圧閾値kVth以下となるまで待ち続けると、非常に長い時間を要してしまう場合がある。この点、第3復帰制御処理によれば、管電圧値kV(t)が管電圧閾値kVthより大きいまま第2所定時間Tthが経過した場合には、管電圧kVの実測値kV(t)が直前管電圧値kV0以下となれば速やかにX線出力を再開することができる。
【0111】
第1実施形態に係るX線発生装置20およびX線発生装置20を含むX線CT装置1によれば、X線管11の放電検出後、管電圧値kV(t)にもとづいてX線の再出力タイミングを決定することができる。このため、放電モードに応じて適切に第1-3復帰制御処理のいずれかを実行することができる。したがって、X線管11の放電検出後の自動復帰制御処理において、放電を確実に消滅させつつ、X線の停止時間および立ち上がり時間を大きく短縮することができ、X線CT画像に対してX線出力停止が与える悪影響を大幅に抑制することができる。
【0112】
(自動復帰制御処理の第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るX線発生装置20の処理回路28による自動復帰制御処理について図13図17を参照して説明する。
【0113】
この第2実施形態に係るX線発生装置20の処理回路28による自動復帰制御処理は、放電検出後の管電圧値kV(t)の時間微分ΔkV(t)にもとづいて放電の発生後のX線の再出力タイミングを決定する点で第1実施形態に係る自動復帰制御処理と異なる。構成は第1実施形態に係るX線発生装置20と同一であるため構成の説明は省略する。
【0114】
図13は、第2実施形態に係る自動復帰制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0115】
まず、ステップS21において、図5のステップS1と同様に、放電検出機能281は、放電を検出したか否かを判定する。放電が検出されない場合はステップS1の判定を繰り返す。一方、放電を検出すると(ステップS21のYES)、放電検出機能281は、その旨の情報をX線制御機能282に与える。
【0116】
次に、ステップS22において、図5のステップS2と同様に、X線制御機能282は、高電圧発生装置22のインバータに交流の供給を停止させることによりX線出力を停止させる(時間t=0)。
【0117】
次に、ステップS23において、図5のステップS3と同様に、決定機能283は、直前管電圧値kV0、直前管電流値mA0、および直前If値If0を取得する。
【0118】
次に、ステップS24において、決定機能283は、管電圧検出回路23の出力信号にもとづいて、管電圧値kV(t)の時間微分ΔkV(t)を求め、閾値ΔkVth以上となったか否かを判定する。管電圧値kV(t)の時間微分ΔkV(t)は、放電直後に閾値ΔkVthを負の向きに横断して負の最大値をとり、その後少しずつゼロに向かっていく。このため、具体的には、決定機能283は、ステップS24において、この時間微分ΔkV(t)が閾値ΔkVthより小さい負の値から閾値ΔkVth以上となったか否かを判定するとよい。
【0119】
管電圧値kV(t)の時間微分ΔkV(t)が閾値ΔkVth以上となった場合は(ステップS24のYES)、ステップS25において決定機能283と設定機能284は第4復帰制御処理を行い、一連の手順は終了となる。第4復帰制御処理では、決定機能283は、X線の再出力のタイミングをステップS24でYESと判定されたタイミング(t=T4)に決定する。
【0120】
一方、管電圧値kV(t)の時間微分ΔkV(t)が閾値ΔkVthより小さい場合は、(ステップS24のNO)、ステップS26において、決定機能283は、管電圧kVの実測値kV(t)が管電圧閾値kVth2以下であるか否かを判定する。管電圧値kV(t)が管電圧閾値kVth2以下であれば(ステップS26のYES)、ステップS27において決定機能283と設定機能284は第5復帰制御処理を行い、一連の手順は終了となる。第5復帰制御処理では、決定機能283は、X線の再出力のタイミングをステップS26でYESと判定されたタイミング(t=T5)に決定する。
【0121】
一方、管電圧値kV(t)が管電圧閾値kVth2より大きいと(ステップS26のNO)、ステップS24に戻る。なお、ステップS26において、決定機能283は、さらに管電流値mA(t)が管電流閾値mAth2以下である場合にだけステップS9に進むよう制御してもよい。また、管電圧閾値kVth2および管電流閾値mAth2は、図6のステップS8で用いられる管電圧閾値kVthおよび管電流閾値mAthとそれぞれ同一であってもよい。
【0122】
以上の手順により、X線管11の放電検出後、管電圧値kV(t)の時間微分ΔkV(t)にもとづいてX線の再出力タイミングを決定することができる。
【0123】
(第4復帰制御処理)
図14は、図13のステップS25で決定機能283と設定機能284により実行される第4帰制御処理の手順の一例を示すサブルーチンフローチャートである。また、図15は、第4復帰制御処理における管電圧値kV(t)とその時間微分ΔkV(t)と管電流値mA(t)とフィラメント電流値If(t)とX線出力との関係を示す説明図である。なお、図15において、管電圧値kV(t)の時間微分ΔkV(t)については、時間t=t4より後のグラフの図示を省略した。
【0124】
第4復帰制御処理は、管電圧値kV(t)の時間微分ΔkV(t)が閾値ΔkVth以上である場合に実行される。第4復帰制御処理では、X線の再出力のタイミングは、決定機能283により、図13のステップS24で管電圧値kV(t)の時間微分ΔkV(t)が閾値ΔkVth以上であると判定されたタイミングt=T4に決定されている。
【0125】
ステップS251において、設定機能284は、X線出力停止(t=0)からの経過時間t(=T4)と、現在の管電圧値kV(T4)=kV4と、を管電圧検出回路23から取得する。
【0126】
次に、ステップS252において、設定機能284は、X線の再出力のタイミングであるt=T4における管電圧値kV(T4)=kV4でX線の再出力を開始した場合に、管電圧値kV(t)がkV4から直前管電圧値kV0に到達する復帰時点までの立ち上がり時間tr4を求める。
【0127】
次に、ステップS253において、放電が生じておらずX線出力を停止していないと仮定した場合における、X線の出力停止時間t=0から、現在の時間t=T4と立ち上がり時間tr4とを加算した時間が経過した時間t=T4+tr4における管電流mA(T4+tr4)の値とフィラメント電流If(T4+tr4)を取得する。
【0128】
このとき、図6のステップS63と同様に、設定機能284はさらに、テーブルから抽出した値を、直前管電流値mA0に対応するテーブル上のフィラメント電流値と、直前If値If0と、にもとづいて補正した値を、フィラメント電流If(T4+tr4)の値として求めてもよい。
【0129】
次に、ステップS254において、時間t=T4でX線の再出力が開始される。このとき、管電圧kV(t)の初期値はkV4、管電流mA(t)の初期値mAset4はmA(T4+tr4)、フィラメント電流Ifの初期値Ifset4はIf(T4+tr4)に設定される。
【0130】
そして、ステップS255において、決定機能283は、X線制御機能282を制御し、設定機能284により設定された各初期値でX線の出力を再開させる。
【0131】
以上の手順により、管電圧値kV(t)の時間微分ΔkV(t)が閾値ΔkVth以上であると判定された時間t=T4において、適切な初期値でX線の出力を開始することができる。
【0132】
第4復帰制御処理によれば、管電圧値kV(t)の時間微分ΔkV(t)が閾値ΔkVth以上となったタイミングを放電の発生後のX線の再出力のタイミングとして決定することができ、速やかに適切な初期値でX線の出力を開始することができる。このため、第1復帰制御処理と同様に、従来復帰処理のように一定の待機時間tpの間X線出力を停止する場合にくらべ、X線出力の停止がX線CT画像に与える影響を大幅に抑制することができる。
【0133】
(第5復帰制御処理)
図16は、図13のステップS27で決定機能283と設定機能284により実行される第5復帰制御処理の手順の一例を示すサブルーチンフローチャートである。また、図17は、第5復帰制御処理における管電圧値kV(t)とその時間微分ΔkV(t)と管電流値mA(t)とフィラメント電流値If(t)とX線出力との関係を示す説明図である。なお、図15と同様に、図17において、管電圧値kV(t)の時間微分ΔkV(t)については、時間t=t4より後のグラフの図示を省略した。
【0134】
第5復帰制御処理は、管電圧値kV(t)が管電圧閾値kVth2以下である場合に実行される。第5復帰制御処理では、X線の再出力のタイミングは、決定機能283により、図13のステップS26で管電圧値kV(t)が管電圧閾値kVth2以下であると判定されたタイミングt=T5に決定されている。
【0135】
ステップS261において、設定機能284は、X線出力停止(t=0)からの経過時間t(=T5)と、現在の管電圧値kV(T5)=kV5と、を管電圧検出回路23から取得する。
【0136】
次に、ステップS262において、設定機能284は、X線の再出力のタイミングであるt=T5における管電圧値kV(T5)=kV5でX線の再出力を開始した場合に、管電圧値kV(t)がkV5から直前管電圧値kV0に到達する復帰時点までの立ち上がり時間tr5を求める。なお、図17には、管電圧kV(T5)が管電圧閾値kVth2に等しい場合の例を示した。
【0137】
次に、ステップS263において、放電が生じておらずX線出力を停止していないと仮定した場合における、X線の出力停止時間t=0から、現在の時間t=T5と立ち上がり時間tr5とを加算した時間が経過した時間t=T5+tr5における管電流mA(T5+tr5)の値とフィラメント電流If(T5+tr5)を取得する。
【0138】
このとき、図6のステップS63と同様に、設定機能284はさらに、テーブルから抽出した値を、直前管電流値mA0に対応するテーブル上のフィラメント電流値と、直前If値If0と、にもとづいて補正した値を、フィラメント電流If(T5+tr5)の値として求めてもよい。
【0139】
次に、ステップS264において、時間t=T5でX線の再出力が開始される。このとき、管電圧kV(t)の初期値はkV5、管電流mA(t)の初期値mAset2はmA(T5+tr5)、フィラメント電流Ifの初期値Ifset5はIf(T5+tr5)に設定される。
【0140】
そして、ステップS265において、決定機能283は、X線制御機能282を制御し、設定機能284により設定された各初期値でX線の出力を再開させる。
【0141】
以上の手順により、時間t=T5において管電圧値kV(T5)が管電圧閾値kVth2以下である場合に、時間t=T5において適切な初期値でX線の出力を開始することができる。
【0142】
なお、第2復帰制御処理と同様、図13のステップS26における判定で利用される管電圧閾値kVth2および管電流閾値mAth2の組は、直前管電圧値kV0および直前管電流値mA0の大きさに応じて複数の組を適宜利用いてもよい(図10参照)。また、図13のステップS26で管電流値の判定を行うか否かは、管電圧閾値kVth2の値に応じて決定してもよい。
【0143】
第5復帰制御処理によれば、管電圧値kV(t)にもとづいて放電の発生後のX線の再出力のタイミングを決定することができ、速やかに適切な初期値でX線の出力を開始することができる。このため、第1復帰制御処理と同様に、従来復帰処理のように一定の待機時間tpの間X線出力を停止する場合にくらべ、X線出力の停止がX線CT画像に与える影響を大幅に抑制することができる。
【0144】
第2実施形態に係るX線発生装置20およびX線発生装置20を含むX線CT装置1によれば、管電圧値kV(t)の時間微分ΔkV(t)にもとづいてX線の再出力タイミングを決定することができる。具体的には、放電モードに応じて適切に第4-5復帰制御処理のいずれかを実行することができる。したがって、第2実施形態に係るX線発生装置20およびX線発生装置20を含むX線CT装置1によっても、第1実施形態に係るX線発生装置20およびX線発生装置20を含むX線CT装置1と同様に、X線管11の放電検出後の自動復帰制御処理において、放電を確実に消滅させつつ、X線の停止時間および立ち上がり時間を大きく短縮することができ、X線CT画像に対してX線出力停止が与える悪影響を大幅に抑制することができる。また、第2実施形態に係るX線発生装置20およびX線発生装置20を含むX線CT装置1は、管電圧値kV(t)の時間微分ΔkV(t)と管電圧値kV(t)を監視すればよいため、サンプリング時点ごとに瞬間時の管電圧、管電流をモニタし続ける第1実施形態よりも簡便に自動復帰制御処理を実行することができる。
【0145】
なお、第2実施形態と第1実施形態を組み合わせてもよい。たとえば、第2実施形態の図13に示す手順において、放電後の短い時間(たとえばt<T1)は第4復帰制御処理を実行し、それ以上の場合は第5復帰制御処理のみまたは第4復帰制御処理と第5復帰制御処理のいずれかを実行してもよい。すなわち、第2実施形態においても、第4復帰制御処理と第5復帰制御処理を、放電後の時間経過に応じて使い分けてもよい。
【0146】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、X線管11内の放電発生後、管電圧値kV(t)に関する情報にもとづいて、X線の再出力のタイミングを決定することができる。
【0147】
なお、上記実施形態において、「プロセッサ」という文言は、たとえば、専用または汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、または、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサがたとえばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。また、プロセッサがたとえばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存するかわりに、当該プログラムに相当する機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行するハードウェア処理により各種機能を実現する。あるいはまた、プロセッサは、ソフトウェア処理とハードウェア処理とを組み合わせて各種機能を実現することもできる。
【0148】
また、上記実施形態では処理回路の単一のプロセッサが各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶回路は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶回路が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0149】
なお、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0150】
1 X線CT装置
11 X線管
11a 陽極
11c フィラメント
12 X線検出器
14 高電圧装置
20 X線発生装置
21 X線高電圧装置
281 放電検出機能
282 X線制御機能
283 決定機能
284 設定機能
If フィラメント電流値
If0 直前フィラメント電流値
Ifset1 フィラメント電流初期値
T1 第1所定時間(他の所定時間)
Tth 第2所定時間(所定時間)
kV(t) 管電圧値
kV0 直前管電圧値
mA(t) 管電流値
mA0 直前管電流値
mAset 管電流初期値
tp 従来の待機時間
tr 立ち上がり時間
ΔkV(t) 時間微分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17