(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】スライディングゲートのコレクターノズル及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
B22D 41/34 20060101AFI20230908BHJP
B22D 41/50 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
B22D41/34 520
B22D41/50 520
(21)【出願番号】P 2019212240
(22)【出願日】2019-11-25
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】八反田 浩勝
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特公昭58-023550(JP,B2)
【文献】特表平06-510112(JP,A)
【文献】特開平01-266944(JP,A)
【文献】実開昭49-120804(JP,U)
【文献】特開昭54-161538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 33/00 - 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を収容する容器の側壁に取り付けられるスライディングゲートのコレクターノズルにおいて、
前記コレクターノズルが、ノズル本体と、前記ノズル本体に対して着脱可能な先端部と、を備え、
前記ノズル本体から取り外した前記先端部を回転させて
、損耗した部分が損耗していない部分よりも上側にくるように前記ノズル本体に取り付け
るコレクターノズル。
【請求項2】
前記先端部の耐火物を前記ノズル本体の耐火物にモルタルを用いて取り付け、
前記先端部のケースを前記ノズル本体のケースに連結手段を用いて取り付けることを特徴とする請求項1に記載のコレクターノズル。
【請求項3】
前記ノズル本体から取り外した前記先端部を360°/n(ただしnは2以上の整数)回転させて前記ノズル本体に取り付けられるように、n個の前記連結手段を前記コレクターノズルの円周方向に等配することを特徴とする請求項2に記載のコレクターノズル。
【請求項4】
溶融金属を収容する容器の側壁に取り付けられるスライディングゲートのコレクターノズルの使用方法において、
前記コレクターノズルが、ノズル本体と、前記ノズル本体に対して着脱可能な先端部と、を備え、
前記ノズル本体から取り外した前記先端部を回転させて、損耗した部分が損耗していない部分よりも上側にくるように前記ノズル本体に取り付けるコレクターノズルの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気炉、転炉等の溶融金属を収容する容器に取り付けられるスライディングゲートのコレクターノズル及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属を収容する容器には、スライディングゲートが取り付けられる(特許文献1参照)。スライディングゲートは、通常、容器の底部に取り付けられ、垂直方向に溶融金属を出湯する。しかし、
図6に示すように、電気炉、転炉等の容器21の側壁21aにスライディングゲート22を取り付ける場合がある。容器21の側壁21aにスライディングゲート22を取り付ける場合、容器21を傾動させて、スライディングゲート22から斜め方向に溶融金属を出湯し、又は容器21を傾動させることなく、スライディングゲート22から水平方向に溶融金属を出湯する。これにより、例えば容器21から取鍋23に溶融金属のみを出湯し、スラグを出湯しないようにすることができる。
【0003】
図6において、31が上ノズル、32が上プレート、33がスライドプレート、34がコレクターノズルである。上ノズル31、上プレート32、スライドプレート33、及びコレクターノズル34には、溶融金属を流出させる流出孔が形成される。上ノズル31と上プレート32に対して、スライドプレート33とコレクターノズル34をスライドさせることによって、溶融金属の流出孔を開閉したり、溶融金属の流量を制御したりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、
図6に示すように、スライディングゲート22から斜め方向又は水平方向に溶融金属を出湯する場合、溶融金属の流れによってコレクターノズル34の先端部の下側が損耗する。損耗が大きくなると、コレクターノズル34の先端部から溶融金属が垂れ、溶融金属が取鍋23の上部金物23aに付着する。取鍋23に付着した地金を除去する作業は、高温下での作業であるので、危険であり、作業者への負担が大きい。
【0006】
溶融金属の垂れを防止するため、コレクターノズル34の交換が行われる。しかし、コレクターノズル34の先端部の下側のみの損耗だけでコレクターノズル34の全体を交換するのは不経済である。また、コレクターノズル34とスライドプレート33が一体物になっている場合もあり、その場合、コレクターノズル34とスライドプレート33の両方を交換しなければならない。
【0007】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、交換が容易であり、寿命も長くすることができるコレクターノズル及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、溶融金属を収容する容器の側壁に取り付けられるスライディングゲートのコレクターノズルにおいて、前記コレクターノズルが、ノズル本体と、前記ノズル本体に対して着脱可能な先端部と、を備え、前記ノズル本体から取り外した前記先端部を回転させて、損耗した部分が損耗していない部分よりも上側にくるように前記ノズル本体に取り付けるコレクターノズルである。
本発明の他の態様は、溶融金属を収容する容器の側壁に取り付けられるスライディングゲートのコレクターノズルの使用方法において、前記コレクターノズルが、ノズル本体と、前記ノズル本体に対して着脱可能な先端部と、を備え、前記ノズル本体から取り外した前記先端部を回転させて、損耗した部分が損耗していない部分よりも上側にくるように前記ノズル本体に取り付けるコレクターノズルの使用方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コレクターノズルが、ノズル本体と、ノズル本体に対して着脱可能な先端部と、を備えるので、コレクターノズルの損耗した先端部のみを交換することができる。また、先端部の損耗した部分を回転させて損耗していない部分を使用するので、コレクターノズルの寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態のスライディングゲートを電気炉、転炉等の容器に取り付けた状態を示す図である。
【
図2】本実施形態のコレクターノズルの詳細図である(
図2(a)はコレクターノズルの縦断面図、
図2(b)は
図2(a)のb矢視図)。
【
図3】本実施形態のコレクターノズルの詳細図である(
図3(a)はコレクターノズルの縦断面図、
図3(b)は
図3(a)のb矢視図)。
【
図4】
図4(a)は3個の連結手段をコレクターノズルの円周方向に等配した例を示し、
図4(b)は4個の連結手段をコレクターノズルの円周方向に等配した例を示す。
【
図5】連結手段の他の例を示す図である(
図5(a)はコレクターノズルの縦断面図、
図5(b)は
図5(a)のb矢視図)。
【
図6】従来のスライディングゲートを電気炉、転炉等の容器に取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態のコレクターノズルを詳細に説明する。ただし、本発明のコレクターノズルは種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態のスライディングゲートを電気炉、転炉等の容器に取り付けた状態を示す。1はスライディングゲート、2は電気炉、転炉等の容器、3は取鍋である。
【0013】
容器2は、鉄製の容器本体2aと、容器本体2aの内側に配設されるマスれんが等の耐火物2bと、を備える。容器2の側壁2a1には、筒状の上ノズル4が取り付けられる。上ノズル4には、溶融金属の流出孔が形成される。上ノズル4は、耐火物である。
【0014】
スライディングゲート1は、上プレート5、スライドプレート6、及びコレクターノズル7を備える。上プレート5は、板状に形成される。上プレート5は、容器2に固定される。スライドプレート6は、板状に形成される。スライドプレート6は、上プレート5の下にスライド可能に重ねられる。スライドプレート6には、コレクターノズル7が取り付けられる。コレクターノズル7は、筒状に形成される。上プレート5、スライドプレート6、及びコレクターノズル7には、溶融金属の流出孔が形成される。スライドプレート6とコレクターノズル7は、図示しないケースによって一体化される。上プレート5、スライドプレート6、及びコレクターノズル7は、耐火物である。
【0015】
スライドプレート6とコレクターノズル7は、上プレート5に対してスライド可能である。スライド装置によってスライドプレート6とコレクターノズル7を上プレート5に対してスライドさせることによって、溶融金属の流出孔を開閉したり、溶融金属の流量を制御したりすることができる。
【0016】
図1に示すように、容器2を傾動させ、上プレート5の流出孔とスライドプレート6とコレクターノズル7の流出孔を連通させると、容器2内の溶融金属がスライディングゲート1から斜め方向に出湯される。なお、容器2を傾動させることなく、スライディングゲート1から溶融金属を水平方向に出湯してもよい。
【0017】
コレクターノズル7の先端部12の損耗が小さければ、
図1の実線で示すように、取鍋3の適正位置に溶融金属が出湯される。しかし、コレクターノズル7の先端部12の損耗が大きくなると、
図1の点線で示すように、コレクターノズル7の先端部12から溶融金属が垂れ、取鍋3の上部金物3aに溶融金属が付着する。
【0018】
図2は、コレクターノズル7の詳細図を示す。
図2(a)はコレクターノズル7の縦断面図であり、
図2(b)は
図2(a)のb矢視図である。コレクターノズル7は、ノズル本体11と、ノズル本体11に着脱可能な先端部12と、を備える。すなわち、コレクターノズル7は、ノズル本体11と先端部12とに分割される。ノズル本体11は、耐火物11a(例えばジルコニア製の耐火物11a1とキャスタブル11a2からなる2層式の耐火物11a)と、鉄製のケース11b(鉄皮)と、を備える。先端部12も、耐火物12a(例えばジルコニア製の耐火物12a1とキャスタブル12a2からなる2層式の耐火物12a)と、ケース12bと、を備える。ノズル本体11の耐火物11aと先端部12の耐火物12aは、モルタル13によって接合される。ノズル本体11のケース11bと先端部12のケース12bは、後述する連結手段14(
図3参照)によって接合される。
【0019】
図2(a)(b)に示すように、溶融金属の流れによって、コレクターノズル7の先端部12の下側が損耗する。8が損耗部である。コレクターノズル7の先端部12が損耗したら、ノズル本体11から先端部12のみを取り外す。そして、先端部12をコレクターノズル7の中心線の回りに回転させてノズル本体11に取り付ける。
【0020】
図3(a)(b)は、先端部12を180°回転させてノズル本体11に取り付けた例を示す。先端部12を180°回転させれば、先端部12の損耗した部分8が上側に、先端部12の損耗していない部分9が下側にくる。このため、溶融金属の湯切りを良くすることができ、地金垂れを防止することができる。
【0021】
この例の連結手段14は、ボルト固定式である。すなわち、連結手段14は、ケース11b,12b間に跨る連結プレート15と、ケース11b,12bに連結プレート15を固定するためのボルト16a,16bと、を備える。ケース11b,12bには、ボルト16a,16bに螺合する雌ねじが形成される。連結プレート15をケース11b,12b間に跨らせ、ケース11b,12bにボルト16a,16bを螺合することで、ケース11b,12b同士を連結することができる。なお、連結プレート15をケース11b,12bのいずれか一方に溶接してもよい、
【0022】
この例では、2個の連結手段14がコレクターノズル7の円周方向に等配される。すなわち、2個の連結手段14がコレクターノズル7の円周方向に180°(θ1=θ2=180°)の間隔を開けて配置される。これにより、ノズル本体11から取り外した先端部12を、180°回転させてノズル本体11に取り付けることができる。
【0023】
図4(a)は、3個の連結手段14をコレクターノズル7の円周方向に等配した例を示す。この場合、3個の連結手段14がコレクターノズル7の円周方向に120°(θ1=θ2=θ3=120°)の間隔を開けて配置される。これにより、ノズル本体11から取り外した先端部12を、120°回転させてノズル本体11に取り付けることができ、損耗した部分8を除いて先端部12を最大で2回使用できる。
【0024】
図4(b)は、4個の連結手段14をコレクターノズル7の円周方向に等配した例を示す。この場合、4個の連結手段14がコレクターノズル7の円周方向に90°(θ1=θ2=θ3=θ4=90°)の間隔を開けて配置される。これにより、ノズル本体11から取り外した先端部12を、90°回転させてノズル本体11に取り付けることができ、損耗した部分8を除いて先端部12を最大で3回使用できる。なお、損耗した部分8が広範囲に渡る場合、180度回転を1回行ってもよい。連結手段14の数が多い方がノズル本体11に先端部12をしっかりと固定でき、ノズル本体11と先端部12の境界から湯漏れなどのリスクが低くなり、安心感がある。
【0025】
図5は連結手段の他の例を示す。
図5(a)はコレクターノズル7の縦断面図であり、
図5(b)は
図5(a)のb矢視図である。この例の連結手段17は、バヨネット式である。すなわち、ノズル本体11のケース11bには、バヨネット式の爪18が固定される。先端部12のケース12bには、連結プレート19が固定される。連結プレート19には、軸方向溝と円周方向溝からなるL字状の溝19aが形成される。爪18を溝19aに嵌めたり、爪18を溝19aから取り外したりすることで、ノズル本体11に先端部12を着脱することができる。バヨネット式の連結手段17を用いれば、簡単に短時間で着脱することができる。なお、連結プレート19をコレクターノズル7の円周方向に複数設けてもよいし、リング状の1つの連結プレート19に複数の爪18と複数の溝19aを設けてもよい。
【0026】
なお、連結手段は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、連結手段には、パチン錠、すなわち片方のレバーに支持されたアームを他方の突起に引っ掛けて、レバーを倒すことにより、ケース11b,12b同士を連結する機構を採用することができる。また、クランプ工具を用いて、ケース11b,12b同士を連結してもよい。
【0027】
以上に本実施形態のコレクターノズル7の構成を説明した。本実施形態のコレクターノズル7によれば、以下の効果を奏する。
【0028】
コレクターノズル7が、ノズル本体11と、ノズル本体11に対して着脱可能な先端部12と、を備えるので、損耗した先端部12のみを交換することができる。また、先端部12の損耗した部分8を回転させて損耗していない部分9を使用するので、コレクターノズル7の寿命を長くすることができる。
【0029】
先端部12の耐火物12aをノズル本体11の耐火物11aにモルタル13を用いて取り付けるので、ノズル本体11と先端部12の繋ぎ目から溶融金属が漏れるのを防止することができる。また、先端部12のケース12bをノズル本体11のケース11bに連結手段14,17を用いて取り付けるので、ノズル本体11と先端部12の連結を強固にすることができる。
【0030】
n個(ただしnは2以上の整数)の連結手段14,17をコレクターノズル7の円周方向に等配するので、ノズル本体11と先端部12の圧着を円周方向において均一にすることができる。また、先端部12の損耗していない部分を最大でn回使用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1…スライディングゲート
2…容器
2a1…側壁
4…上ノズル
5…上プレート
6…スライドプレート
7…コレクターノズル
11…ノズル本体
11a…耐火物
11b…ケース
12…先端部
12a…耐火物
12b…ケース
13…モルタル
14,17…連結手段