(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】成形体の付加製造のための方法
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20230908BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230908BHJP
B29C 64/135 20170101ALI20230908BHJP
A61C 13/083 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
B28B1/30
B33Y10/00
B29C64/135
A61C13/083
(21)【出願番号】P 2019217988
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2021-11-19
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL-9494 Schaan Liechtenstein
(73)【特許権者】
【識別番号】509213990
【氏名又は名称】テクニッシュ ユニべルシタット ウィーン
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】イエルク エーベルト
(72)【発明者】
【氏名】ユリア アンナ シェーンヘル
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト グマイナー
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-077683(JP,A)
【文献】特開平04-099203(JP,A)
【文献】特開2018-122571(JP,A)
【文献】特開2017-140830(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0128174(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0168887(US,A1)
【文献】米国特許第05216616(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0036205(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 41/00
A61C 1/00 - 19/00
B33Y 10/00 - 99/00
B29C 64/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造方法により、建造材料から成形体(5)を作成するための方法であって、構築プロセス中に、成形体(5)の層状構造は、個々の層に対して指定された輪郭を有する層エリア内の電磁放射の作用を通して前記建造材料の層を連続的に固化することによって作成され、
前記構築プロセスにおいて、前記成形体(5)と一緒に、前記成形体をある距離で包囲するフレーム(6)が前記建造材料から層毎に構築されることであって、前記フレームは、スリーブ状フレームである、ことと、さらに前記構築プロセスにおいて、複数のピン状接続部(10)が前記フレーム(6)および前記成形体(5)と一体的に構築され、これらが前記成形体(5)のまわりに位置付けられ、これらが前記成形体(5)を前記フレーム(6)と接続することと、
前記成形体(5)の前記層状構造が構築プラットフォーム上で作成され、前記構築プラットフォームが下部フレーム壁の外側に存在していることと
を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ピン状接続部(10)が、前記フレーム(6)の内側に構築されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記建造材料の固化が、位置選択的電磁放射による前記指定された輪郭内で作成されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記建造材料が、セラミックスラリーであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記成形体(5)の寸法が、前記フレーム(6)の軸方向(7)における前記フレーム(6)の寸法に実質的に対応することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記成形体(5)が、前記ピン状接続部(10)を前記成形体(5)から分離することによって前記フレーム(6)から解放されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
複数のフレーム(6)とそこに配置された成形体(5)とを有する一体型フレーム配置(12)が、前記構築プロセス中に構築されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記一体型フレーム配置(12)は、ハニカム構造を有し、隣接するフレーム(6)が、フレーム壁セクション(13)を共有することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記一体型フレーム配置(12)が、相互にスタックされた複数のフレーム配置平面(A、B、C、D)を含み、それらの各々内で、複数のフレーム(6)および成形体(5)が配置されることを特徴とする、請求項7および請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
隣接するフレーム配置平面(A、B、C、D)が、相互から離間されており、かつ、一体的に形成されたウェブによって相互に接続されており、これにより、隣接するフレーム配置平面(A、B、C、D)が前記ウェブを壊すことによって相互から分離されることが可能であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記成形体(5)が、歯交換部品であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記歯交換部品が、歯冠を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記歯交換部品(5)を前記フレーム(6)に接続する前記ピン状接続部(10)が、前記歯交換部品(5)の口腔面または前庭面上に構築されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記成形体の前記層状構造が、構築プラットフォーム上で作成されることと、前記構築プロセス中の前記成形体(5)上に作用する力を吸収するために、前記フレーム(6)および前記成形体(5)と一体的に、付加的支持構造(11)が、前記構築プラットフォームの反対側の前記フレーム(6)の側と前記成形体(5)との間に構築されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
付加製造方法により、建造材料から成形体(5)を作成するための方法であって、構築プロセス中に、成形体(5)の層状構造は、個々の層に対して指定された輪郭を有する層エリア内の電磁放射の作用を通して前記建造材料の層を連続的に固化することによって作成され、
前記構築プロセスにおいて、前記成形体(5)と一緒に、前記成形体をある距離で包囲するフレーム(6)が前記建造材料から層毎に構築されることであって、前記フレームは、スリーブ状フレームである、ことと、さらに前記構築プロセスにおいて、複数のピン状接続部(10)
の複数のグループが前記フレーム(6)および前記成形体(5)と一体的に構築され、
前記複数のピン状接続部(10)の前記複数のグループの各々が前記成形体(5)の
異なる表面セクションのまわりに位置付けられ、
前記複数のピン状接続部(10)の前記複数のグループの各々が前記成形体(5)を前記フレーム(6)と接続することと、
前記建造材料が光重合ポリマー前駆体化合物および充填剤を含有することと、
前記構築プロセス後に、前記フレーム(6)および前記成形体(5)の脱バインダが行われ、前記成形体(5)が、前記フレーム(6)から解放され、その後、焼結されること
と、
前記複数のピン状接続部(10)の前記複数のグループのうちの単一のグループ内の前記複数のピン状接続部(10)の各々は、前記フレーム(6)の同じ内壁に接続されていることと
を特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造方法により、建造材料から、特にセラミックで充填されたスラリーから成形体を作成するための方法に関し、構築プロセス中に、成形体の層状構造は、個々の層に対して指定された輪郭を有する層エリアにおける電磁放射に対する暴露を通して建造材料の層を連続的に固化することによって起こる。
【背景技術】
【0002】
成形体の層毎建造プロセスまたは連続的建造プロセスは、ジェネレーティブ製造または付加製造という一般的用語の範疇に入る構築方法のうちの1つである。これは、3次元オブジェクト(成形体)が成形体のデジタルモデル(例えば、CADモデル)に基づいて直接的に構築される方法のクラスを意味していると理解される。このために、層毎建造において、成形体のデジタルモデルは、複数の連続薄型スライスに細分され、各スライスは、モデルによって画定された輪郭を有する。建造/構築プロセスは、材料の層を付加することによって実行され、各層は、その層に対するデジタルモデルによって指定された輪郭を作成するために処理される。最終的に、重ね合わせられた相互接続された層のスタックは、成形体を形成し、これは、いくつかの方法において(例えば、脱バインダ(debinding)および焼結のための熱処理によって)さらに処理される。
【0003】
用語「輪郭」は、本発明の文脈において一般的に用いられ、単一の連続エリアを包囲する単純な閉じた境界線に限定されるものではなく、個々の層を一緒に形成する隣接する別個のエリアを包囲する複数の別個の輪郭セクションを含み得るか、または、層の環状エリアを画定する外側輪郭セクションおよび内側輪郭セクションが存在し得る。
【0004】
成形体が構築される建造材料は、電磁放射によって硬化される。これは、光重合ポリマー前駆体化合物に加え、例えば、セラミック、ガラスセラミックまたは金属粉末等の充填剤および随意の分散剤およびその他の添加剤等を含有し得る。本発明は、特に、例えば歯科用インレー、アンレー、べニア、歯冠、ブリッジ、および足場等の、セラミックまたはガラスセラミック成形体(所謂グリーンボディ)の作成に関している。
【0005】
WO 2010/045950 A1(請求項1のプリアンブルはこれに基づく)は、成形体を構築するための方法の例を開示しており、これは、特に、液体光重合性構成要素と内部に分散されているセラミックまたはガラスセラミック粉末から成る充填剤とを含有するセラミックスラリーから作られた歯科修復物の構造に関する。この公知の方法において、成形体は、重ね合わせられた硬化された層によって連続的に構築される。この場合、構築プラットフォームは、少なくとも構築エリアにおいて、半透明のタンク底部の上方で垂直方向に移動可能に保持される。暴露ユニットは、タンク底部の下方に位置付けられる。構築プラットフォームは、所望の層厚さを有する1つの層のみが構築プラットフォームとタンク底部との間に残るまで、最初に、タンクにおけるスラリー中へと降下させられる。続いて、この層は、暴露ユニットによって、この層に対するデジタルモデルによって指定された輪郭で暴露ユニットによって暴露され、これにより、硬化される。構築プラットフォームを持ち上げた後、例えば、ドクターブレードを用いてスラリーが周囲から補充され、その後、構築プラットフォームが再びスラリー内に降下させられ、降下は、最後に硬化された層とタンク底部との間の距離が所望の厚さを有する建造材料の層を画定するように制御される。最後のステップは、所望の3次元形状を有する成形体が、デジタルモデルによって指定された個々の輪郭による層の連続硬化(固化)によって構築されるまで繰り返される。
【0006】
成形体は、成形体の完全な構築の後に構築プラットフォームとともに除去され得る。概して、これは、さらなる処理ステップによって後続される。上述の方法において、グリーンボディは、建造材料の層状重合によって作成される。これは、その後、バインダ(この場合は、フォトポリマー)を除去するために、高温まで加熱される。これは、熱分解と、表面に拡散して最終的にガスとして逃げるより軽い分子にポリマーを分解する反応とに起因して、高温で起こる。この脱バインダのプロセスは、その後、さらなる固化のためのさらなる熱処理によって後続され得、該熱処理では、残りのセラミック粒子が、成形体において焼結される。
【0007】
構築プロセスにおける安定性を保証するために、製造中に成形体を固定し、重力に対抗して片持ち層およびオーバーハングを支持するために、建造材料から構築された支持構造が、いくつかの製造方法において用いられる。支持構造は、しばしば、いくつかの付加製造方法において発生するプロセス関連の残留応力を支持するためにも用いられる。構築プロセスが完了した後、支持構造は、アクセス可能になり、できるだけ容易に除去できる必要がある。
【0008】
プロセス関連の残留応力は、主に、成形体上の熱的影響の結果である。多くの付加製造方法は、過酷な温度変動に関連付けられる。したがって、多くの製造方法は、脱バインダプロセスおよび焼結プロセスを提供し、該プロセスにおいては、成形体の不均一な冷却レートに起因して、歪みが発生し得る。焼結歪みは、高密度のセラミック構成要素の作成において頻繁に観察される現象である。これは、特に高い程度の精度を要求する領域においては、望ましくないことである。ここでの1つの例は、歯科技術である。 グリーンボディの形における歯冠は、例えば、層毎に、セラミック粉末で充填された光反応性スラリーを硬化させることによって、付加的プロセスにおいて作成され得、構成要素は、所望の3次元形状を獲得する。次のステップにおいて、構成要素は、スラリー残留物から解放され、構造化のために必要であった任意の支持構造が、除去される。熱的後処理のステップにおいて、バインダは、脱バインダ中に、最初に燃焼され、その後、セラミックが高密度に焼結される。これは、技術的理由に起因して、成形体の歪みにつながり得る。しかしながら、最小限の歪みおよび高精度のフィットが、残根に対する歯冠の接続のために必須である。
【0009】
構築プロセス中または後続のプロセス中の成形体の高い信頼性の固定は、したがって、製造された成形体の精度および品質に有意に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、成形体の保持の改善を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の根底にある目的は、請求項1の特徴を有する方法によって達成される。
【0013】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0014】
本発明に従い、構築プロセス中に、成形体をある距離で包囲するスリーブ状フレームが、成形体と一緒に建造材料から層毎に構築されることが提供される。スリーブの様式における周方向側壁を含むこのスリーブ状フレームは、成形体がスリーブ状フレーム内に配置されるように、成形体の周囲に沿って延びる。加えて、構築プロセス中に、複数のピンタイプ接続部が、フレームおよび成形体と一体的に構築される。これらのピン状の接続部またはウェブは、成形体のまわりに分散され、フレームおよび成形体を成形体の異なる側において相互に接続する。成形体の周面は、例えば、角柱フレームの場合、複数の表面セクションに分割され得、ピン状接続部は、成形体の異なる表面セクションにおいて成形体の周囲に沿ってそれに接続され得る。また、フレームの内周面は、例えば、角柱フレームの場合、複数の内壁セクションに分割され得、ピン状接続部は、フレームの異なる内壁セクション上に形成され得る。
【0015】
スリーブ状フレームは、好ましくは、基部において開いている円筒の形である。円筒は、ここでは、2つの平行な平面状の合同な基部がジャケットによって相互に接続され、基部自体が記載されているように開いている幾何学的な物体を意味していると理解される。基部の輪郭は、任意の閉じた曲線であり得、円状に限定されない。また、基部の輪郭は、閉じた多角形であり得、この場合、結果として生じる物体は、プリズムとも呼ばれる。そのようなフレームの長手軸は、円筒軸である。
【0016】
ピン状接続部を有するゾーンは、成形体の長手軸のまわりに、例えば90°の角距離で均一に提供され得る。成形体の長手軸は、この意味で、フレームの長手軸と同じ方向に延びている。スリーブ状フレームの長手軸は、フレームを包囲する中心軸である。しかしながら、ピン状接続部の間には、他の主に不均一な角距離も存在する。ピン状接続部の配置は、主に、そのボディの様々な表面上に支持されるその成形体の形状に依存する。
【0017】
単純な支持構造とは対照的に、一体的に形成されたフレームは、構築プロセスおよび後続の製造プロセス中に、成形体に対して改善された支持を提供する。成形体を下方のみから支持する単純な支持構造とは異なり、フレームは、成形体の周囲のまわりに複数の取り付け点を建造するというオプションを提供し、これらの点は、成形体の異なる側においてそれに接続される。ピン状接続部は、ピン状接続部を壊すことによって成形体がフレームから解放され得るように形成される。ピン状接続部の厚さは、この目的のために適宜寸法決めされ得る。
【0018】
好ましくは、ピン状接続部は、成形体および/またはフレームの対応する表面のすぐ周囲に対して垂直である。ピン状接続部は、それらがフレームと成形体との間の距離を最短の可能な方法で跨ぐように設計され得る。したがって、力はフレームに最適に伝達され、これは、その環状閉鎖に起因して、有意な変形なしに力を吸収する。フレームおよびピン状接続部は、したがって、最適な補強フレームワークを形成する。
【0019】
成形体を包囲するフレームが、成形体を歪みに対して効果的に保護するので、熱処理の形での歪みの発生に関しても、成形体と該成形体を包囲するフレームとの一体的設計により、特定の利点が提供される。異なる位置で係合するピンタイプ接続部は、成形体に対する包括的な支持構造および保持構造を形成し、したがって、効率的な方法で成形体における歪みを防止する。
【0020】
ピン状接続部は、成形体のまわりに単独でまたはグループで分散され得る。角柱形状フレームの場合、グループ内の配置は、例えば、複数のピン状接続部が、成形体の共通表面セクション上に、および/または、フレームの共通内壁セクション上に形成されることを意味する。成形体の異なる表面セクションにおける成形体の周囲に沿ったピン状接続部のグループは、したがって、それに接続され得る。ピン状接続部のグループ配置は、容易な取り外し可能性をもたらすが、同時に、それを用いたフレーム内の成形体の特に強い保持をもたらす。
【0021】
本発明のさらなる実施形態に従うと、ピン状接続部がフレームの内側に構築されることが提供される。その結果、材料消費は、少なくなり、フレームの外側領域は、さらなる成形体のために用いられ得る。
【0022】
フレームは、断面において種々の形状を有し得る。したがって、例えば断面においてスリーブの長手方向において見た場合、円状の形状が可能である。しかしながら、その他の形状が、断面において考えられる。したがって、断面における本発明のさらなる実施形態は、例えば6角形または8角形の断面形状等の多角形スリーブを提供し、これらは、増加した安定性を有する。
【0023】
本発明のさらなる実施形態に従うと、建造材料の固化は、例えば、ストレオリソグラフィー光重合の文脈において、位置選択的磁気照射を通して提供された輪郭内で起こる。
【0024】
本発明のさらなる実施形態に従うと、建造材料は、セラミックスラリーである。
【0025】
成形体およびフレームは、例えば、以下のプロセスによって、構築プラットフォーム上で製造され得る。建造材料は、構築プラットフォームと透明スライスとの間で運搬される。建造材料は、指定された輪郭内でベーススライスの上方で硬化させるために、スライスを通して位置選択的に暴露される。構造の層、すなわち、成形体およびフレームの一体ユニットが固化された後、構築プラットフォームは、ベーススライスに対して連続的に上昇させられる。その後、建造材料は、更新され、前のステップは、構造が建造材料の位置選択的硬化によって構築されるまで継続する。
【0026】
本発明のさらなる実施形態に従うと、スリーブ状フレームの軸方向における成形体の寸法は、フレームの寸法に実質的に対応する。その結果、成形体の支持は、その全長に沿って起こり得る。
【0027】
本発明のさらなる実施形態に従うと、ピン状接続部に加えて、例えば、クロスサポートの形で、付加的支持構造が構築され、これは、下方から成形体を付加的に支持する。
【0028】
本発明のさらなる実施形態に従うと、フレームおよび成形体の構築プロセスの後に、脱バインダおよび/または焼結が、実行される。これは、成形体がフレームから解放される前に可能であり、フレームは、成形体が熱処置中に歪むことから保護する。代替的に、本発明のさらなる実施形態は、構築プロセス後に、フレームおよび成形体の共通の脱バインダが起こることを提供する。さらなるステップにおいて、成形体は、フレームから解放され、その後、焼結される。成形体がフレーム内で最初に予備焼結され、最終的な結晶化が成形体自体でのみ起こるこの2段階プロセスは、焼結された成形体からのピン状接続部および任意の付加的支持構造の除去を促進する。これにより、関連するツールの磨耗が低減される。
【0029】
フレームと成形体との間の距離は、構造が一緒に成長するのではなく、構造がピン状接続部および可能性としては付加的支持構造によってのみ相互に接続されるように選定される。フレームと成形体との間の距離が少なくとも1.4mm、好ましくは少なくとも1.5mmである場合に、有利であることが証明されている。
【0030】
フレーム厚さ、すなわち、フレーム壁の厚さは、少なくとも1.3mmであり得、これは、低材料消費に寄与するが、十分な支持力を提供する。
【0031】
本発明のさらなる実施形態は、成形体がフレームから解放され、ピン状接続部が成形体から分離されることを提供する。ピンタイプ接続部は、フレームを切り開くことまたは壊すことの必要性をなくし、これは、全体的な製造プロセスをより効率的にする。したがって、成形体は、もっぱらピン状接続部を壊し、任意の付加的支持構造を分離することにより、フレームから解放され得る。
【0032】
本発明のさらなる実施形態は、一体フレーム配置(複数のフレームを有し、その中に特に個々の成形体が配置される)が、構築プロセス中に構築されることを提供する。フレームのオーダーは、複数のフレームが相互に隣り合う平面内に配置され、各々が成形体を保持するアレイまたはマトリックスの形を有し得る。フレームは相互に接続されるので、それらは相互を支持し、個別の成形体に対する個別の保持の強固な構造に寄与する。各々が個別の形状の複数の成形体は、一体的に形成されたフレームを提供することにより、作成プロセスで同時に作成され得る。
【0033】
複数の成形体の同時の作成を改善するために、本発明のさらなる実施形態は、フレーム配置がハニカム構造を有することを提供し、隣接するフレームは、好ましくは、フレーム壁セクションを共有する。ハニカム構造は、概して、体積に対する壁材料の理想的な比率を有する最適な形状であると考えられている。同時に、この形状は、全体的な構築を安定化させる。
【0034】
本発明のさらなる実施形態は、フレーム配置が、例えばハニカム構造の形で複数のフレームおよび成形体が内部に配置される、相互にスタックされた複数のフレーム配置平面を有することを提供する。フレームの並置およびスタッキングは、作成される成形体の作成量を有意に増大させる。いくつかのフレームおよび成形体が1つの平面内で組み合わされ、例えば、平面を見た場合にマトリックス配置になっていることが特徴的である。さらなるフレームおよび成形体は、この第1の平面に対して平行に配置された第2の平面内に、例えば、マトリックス配置で並べられ、その結果、2つの平面がスタックされて配置される、すなわち、スタック構成となる。
【0035】
本発明のさらなる実施形態に従うと、隣接フレーム配置平面、すなわち、複数のフレームおよび成形体の複合体が、相互に間隔を空けて離間され、一体的に形成されたウェブまたはピン状接続部によって相互に接続される。隣接フレーム配置平面は、これにより、これらのウェブを壊すことによって、相互から容易に分離可能である。
【0036】
原理上は、フレーム上の構築プロセス中にフレームと一緒に、数字、QRコード(登録商標)、またはその他のマーキング等の情報担体要素が構築され、これらが、個々の成形体を識別することに役立つことが可能である。
【0037】
本発明のさらなる実施形態に従い、付加的支持構造が、構築プロセス中にフレームおよび成形体と一体的に構築され、これは、構築プロセス中に成形体をさらに固定し、構築プロセス中に成形体に作用する力を吸収する。仮にWO 2010/045950 A1に記載されているように、構築プロセス中に位置付けられた成形体が、移動軸に沿って降下されスラリーから持ち上げられることを繰り返された場合、成形体、フレーム、タンク底部の間に力が作用し得、全体的な構築オブジェクトの構造に影響を与え得る。特に、層の硬化後、特定の状況下(例えば、拡張硬化領域がタンク底部に付着した場合)で、構築プラットフォームの持ち上げ中にタンク底部から取り外された場合、相当量の張力が発生し、これは、構築プラットフォームからフレームを介して構造内に位置付けられた成形体に伝達されるはずである。これらの張力は、支持構造によって効果的に吸収され得る。好ましくは、支持構造は、成形体の移動軸に沿って作用する張力を吸収するために、構築プラットフォームの反対側のフレームの側と成形体との間で、構築プラットフォームの移動軸に沿って配置される。
【0038】
本発明に従う方法は、歯科技術の分野において特に有利であることが証明されている。本発明のさらなる実施形態に従うと、したがって、成形体は、例えば歯冠、インレー、アンレー、べニア、ブリッジ、またはフレームワーク等の歯の交換部品であることが提供される。
【0039】
表面の精度は、特に歯科製品では特に重要である。例えば歯冠等の歯交換部品では、咬合面だけではなく、残根への接続に役立つ内面も特に重要である。したがって、成形体とフレームとの間の接続を別の場所に作ることが賢明である。ここで特に適切な場所は、歯交換部品の口腔面または前庭面であり、歯交換部品の口腔面は、特に好ましい。歯交換部品のこれらの表面は、支持構造の取り付けのために理想的に適合している。全体的に、これは、関連する表面、特に歯交換部品の咬合面または内面の高精度に寄与する。
本発明は、以下を提供する。
(項目1)
付加製造方法により、建造材料から、特にセラミックで充填されたスラリーから成形体(5)を作成するための方法であって、構築プロセス中に、成形体(5)の層状構造は、個々の層に対して指定された輪郭を有する層エリア内の電磁放射の作用を通して上記建造材料の層を連続的に固化することによって起こり、
上記構築プロセスにおいて、成形体(5)と一緒に、上記成形体をある距離で包囲するスリーブ状フレーム(6)が上記建造材料から層毎に構築されることと、さらに上記構築プロセスにおいて、複数のピン状接続部(10)が上記フレーム(6)および上記成形体(5)と一体的に構築され、これらが上記成形体(5)のまわりに分散され、これらが上記成形体(5)を上記フレーム(6)と接続することとを特徴とする、方法。
(項目2)
上記ピン状接続部(10)が、上記フレーム(6)の内側に構築されることを特徴とする、上記項目に記載の方法。
(項目3)
上記建造材料の固化が、位置選択的電磁放射による上記指定された輪郭内で起こることを特徴とする、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目4)
上記建造材料が、セラミックスラリーであることを特徴とする、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目5)
上記成形体(5)の寸法が、上記スリーブ状フレーム(6)の軸方向(7)における上記フレーム(6)の寸法に実質的に対応することを特徴とする、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
上記構築プロセス後に、脱バインダおよび/または焼結が実行されることを特徴とする、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
上記構築プロセス後に、上記フレーム(10)および上記成形体(5)の脱バインダが起こることと、さらなるステップにおいて、上記成形体(5)が上記フレーム(6)から解放され、その後、焼結されることとを特徴とする、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
上記成形体(5)が、上記ピン状接続部(10)を上記成形体(5)から分離することによって上記フレーム(6)から解放されることを特徴とする、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
複数のフレーム(6)とそこに配置された成形体(5)とを有する一体型フレーム配置(12)が、上記構築プロセス中に構築されることを特徴とする、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
上記フレーム配置(12)は、ハニカム構造を有し、隣接するフレーム(6)が、フレーム壁セクション(13)を共有することを特徴とする、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
上記フレーム配置(12)が、相互にスタックされた複数のフレーム配置平面(A、B、C、D)を含み、それらの各々内で、複数のフレーム(6)および成形体(5)が配置されることを特徴とする、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目12)
隣接するフレーム配置平面(A、B、C、D)が、相互から離間されており、かつ、一体的に形成されたウェブによって相互に接続されており、これにより、隣接するフレーム配置平面(A、B、C、D)が上記ウェブを壊すことによって相互から分離されることが可能であることを特徴とする、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目13)
上記成形体(5)が、歯交換部品、例えば歯冠等であることを特徴とする、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目14)
上記歯交換部品(5)を上記フレーム(6)に接続する上記ピン状接続部(10)が、上記歯交換部品(5)の口腔面または前庭面上に構築されることを特徴とする、上記項目のいずれかの方法。
(項目15)
上記成形体の上記層状構造が、構築プラットフォーム上で起こることと、上記構築プロセス中の上記成形体(5)上に作用する力を吸収するために、上記フレーム(6)および上記成形体(5)と一体的に、付加的支持構造(11)が、上記構築プラットフォームの反対側の上記フレーム(6)の側と上記成形体(5)との間に構築されることを特徴とする、上記項目のいずれかに記載の方法。
(摘要)
本発明は、付加製造方法により、建造材料から、特にセラミックが充填されたスラリーから成形体(5)を作成する方法に関しており、構築プロセス中に、成形体(5)の層状構造は、個々の層に対して指定された輪郭を有する層エリア内の電磁放射への暴露によって建造材料の層を固化することによって起こる。本方法は、構築プロセスにおいて、成形体(5)と一緒に、成形体をある距離で包囲するスリーブ状フレーム(6)が建造材料からの層毎に構築されることと、さらに構築プロセスにおいて、複数のピン状接続部(10)が、フレーム(6)および成形体(5)と一体的に構築され、これらが成形体(5)のまわりに分散され、これらが成形体(5)をフレーム(6)と接続することとを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明は、単に好ましい例示的実施形態および図面を参照して以下でより詳細に説明される。
【
図1】
図1a、
図1bは、側面図における支持構造上の歯冠のデジタルテンプレート、および、斜め平面図における焼結の後の製造された歯冠である。
【
図2】
図2a、
図2bは、内部に配置された成形体を有している本発明の第1の実施形態に従って作成されたフレームである。
【
図3】
図3は、本発明のさらなる実施形態に従って作成されたフレーム配置である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1aは、支持構造2上の歯冠の形における成形体1のデジタルテンプレートを示す。続いて、このデジタルテンプレートは、セラミックで充填されたスラリーが位置選択的に硬化される付加製造方法により、成形体1および支持構造2を層状に構築するために用いられる。歯冠1は、歯冠の咬合面の隆起上で支持構造2によって支持されている。支持構造2は、焼結が起こる作成プロセス中に歯冠1の補強をもたらす。支持構造2は、歯冠の作成後に除去される。
【0042】
図1bは、製造後の歯冠1を示す。ここでフレームされているのは、支持構造2の配置から背いた向きの領域3、4である。比較的大きな歪みが、焼結プロセス中にこれらの領域において発生する。
【0043】
図2aおよび
図2bは、本発明の第1の実施形態に従う、一体的に作成された成形体およびフレームを示している。構築プロセス中、すなわち、成形体5(歯冠)と一体的に、成形体5をある距離で包囲するスリーブ状フレーム6は、建造材料から層状に構築された。スリーブ状フレーム6は、軸方向7において、その長手軸8に沿って延びている。フレーム6の側壁9は、軸7および軸8のまわりに延びている。
図2aにおける表現は、軸7および軸8に沿った歯冠の咀嚼面の平面図である。
図2bは、側面図において、フレーム6と、その中に配置された歯冠5とを示している。
【0044】
断面において、すなわち、長手軸8の方向において見た場合、フレームは、多角形形状を有し、ここでは、8角形の形状にある。この形状は、フレーム6に付加的な安定性を与える。側壁9は、軸7のまわりで成形体5の周囲のまわりに延びている。フレームおよび成形体と一体的に形成されたピン形状接続部10は、構築プロセス中に、フレーム6の側壁9の内壁上に構築された。これらは、軸方向7において成形体周囲のまわりに分散されて見られ、成形体をフレームに接続している。接続部10は、特に、歪み回避構造として役立ち、熱処理方策中の成形体の歪みを防止する。
【0045】
接続部10に加え、成形体5の下方の支持構造11もまた、成形体およびフレーム6と一体的に構築される。構築オブジェクト、すなわち、フレーム6、成形体5、接続部10、および支持構造11の全体は、構築プラットフォーム(不図示)(これは、
図2aにおいては下部フレーム壁の外側に存在しており、その内側に支持体11が配置されている)上に、構築プロセス中に構築されている。構築プラットフォーム上の構造内に位置付けられた構築オブジェクトがスラリーの中に繰り返し浸漬され、再び持ち上げられ、構築プラットフォームから開始する層内に構築される対応する方法は、WO 2010/045950 A1を参照して導入部において記載されている。構築プロセス中に成形体5に作用する張力は、支持構造11によって吸収され、これによって効果的に吸収され、フレームを介して構築プラットフォームに伝達される。
【0046】
軸方向7において、成形体5の寸法、すなわち、成形体5が軸方向7に延びている長さは、軸方向7におけるフレーム6の寸法に実質的に対応する。ピン状接続部は、成形体5の周囲にわたって、ここでは実質的に約90°の距離で、3つのピン状接続部のグループに分散されている。その他の角距離(例えば、45°、60°、120°)もまた可能である。しかしながら、製造プロセスにおいて成形体5の効率的な固定を保証するために、ピン状接続部が成形体の周囲の異なるセクションで係合することが重要である。ピン状接続部10の厚さは、それらが容易に壊れるように選定され、これにより、成形体5は、単純な方法で、フレーム6から解放され得る。
【0047】
図3は、複数のフレーム6を示しており、これらは、平面A(Z-Y)においてアレイ状に組み合わされるかまたはマトリックス配置で組み合わされ、それぞれ、個々の形状の成形体5を保持する。このフレーム配置12は、平面A内にハニカム構造を有する。隣接するフレーム6は、平面Aのこのハニカム構造内で共通のフレーム壁セクション13を共有する。第1のフレーム配置平面Aの後ろのX方向において、さらなるフレーム配置平面Bが構築され、これは、フレーム配置平面Aと同様に、成形体が内部に配置されたハニカム構造における複数のマトリックス配置フレームから構成される。平面Aおよび平面Bは、相互から離間され、これは、平面Aの成形体が後ろに位置付けられた平面Bの成形体に直接的に接続されないことを意味する。事実、2つの平面Aおよび平面Bは、フレーム配置平面Aおよびフレーム配置平面Bと一体的に形成されたウェブ(不図示)のみを介して相互に接続されており、すなわち、フレーム(X方向において1つのものが別のものの後ろに存在している)は、相互に直接的に接続されない。これらのウェブは、容易に壊れるように形成され、これにより、平面A/Bは、相互から容易に分離され得る。
【0048】
平面Bは、平面A/Bに類似したさらなる平面C/Dによって後続される。
【符号の説明】
【0049】
1 歯冠
2 支持構造
3 歪みの特別な傾向を有する領域
4 歪みの特別な傾向を有する領域
5 成形体
6 フレーム
7 軸方向
8 長手軸
9 フレームの側壁
10 接続部
11 支持構造
12 フレーム配置
13 共通のフレーム壁セクション
A 1.フレーム配置平面
B 2.フレーム配置平面
C 3.フレーム配置平面
D 4.フレーム配置平面