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特許7345391洋上作業中に人々および/または貨物を移送するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】洋上作業中に人々および/または貨物を移送するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   B63B 27/30 20060101AFI20230908BHJP
   B63B 27/10 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
B63B27/30
B63B27/10 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019508952
(86)(22)【出願日】2017-08-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 NL2017050538
(87)【国際公開番号】W WO2018034566
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-08-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】2017314
(32)【優先日】2016-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】519048908
【氏名又は名称】イーグル-アクセス ビー.ヴィ.
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】プリンス ウィレム フレデリク
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】小岩 智明
【審判官】中村 則夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6659703(US,B1)
【文献】特表2016-515499(JP,A)
【文献】特開昭56-155191(JP,A)
【文献】特開昭55-89192(JP,A)
【文献】実公昭48-44380(JP,Y1)
【文献】実開昭54-141667(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 27/00-27/36
B67D 9/00- 9/02
B65G 67/60-67/62
B66C 23/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上作業中に人々および/または貨物を移送するためのシステム(1)を備える船舶(2)であって、
a.静止部(11)と、ほぼ鉛直の第1軸線(13)を中心に前記静止部(11)に対して回転可能な可動部(12)とを有するベース(10)と、
b.支持アーム(20)であって、第1自由端(21)と前記支持アーム(20)の前記第1自由端(21)とは反対側の第2自由端(22)とを有する支持アーム(20)と、
c.ブーム(30)であって、第1自由端(31)と前記ブーム(30)の前記第1自由端(31)とは反対側の第2自由端(32)とを有するブーム(30)と、
d.人々および/または貨物を積み込まれるように構成される積荷支持要素(40)と、
e.測定システム(50)と、
f.アクチュエータシステムと、
g.制御システム(70)と、
を備え、
前記支持アーム(20)は、前記支持アーム(20)が前記可動部(12)に対してほぼ水平の第2軸線(15)を中心に回転可能であるように、前記支持アーム(20)の前記第1および第2自由端(21、22)の間の位置において前記ベース(10)の前記可動部(12)に取り付けられ、
前記ブーム(30)は、前記ブーム(30)が前記支持アーム(20)に対してほぼ水平の第3軸線(23)を中心に回転可能であるように、前記ブーム(30)の前記第1および第2自由端(31、32)の間の位置において前記支持アーム(20)の前記第1自由端(21)に取り付けられ、
前記積荷支持要素(40)は、前記ブーム(30)の前記第1自由端(31)によって支持されるように構成され、さらには移送中の前記人々および/または貨物を支持するように構成され、
前記測定システム(50)は、基準に対する前記積荷支持要素(40)の相対移動を測定するように構成され、
前記アクチュエータシステムは、第1アクチュエータ組立体(61)を使用して前記可動部(12)を前記静止部(11)に対して回転させるように、第2アクチュエータ組立体(62)を使用して前記支持アーム(20)を前記可動部(12)に対して回転させるように、および第3アクチュエータ組立体(63)を使用して前記ブーム(30)を前記支持アーム(20)に対して回転させるように、構成され、
前記制御システム(70)は、前記積荷支持要素(40)の前記相対移動を打ち消すために、前記測定システム(50)の出力に応じて前記アクチュエータシステムを駆動するように構成される、
システムにおいて、
前記支持アーム(20)は、釣合い重り(24)を前記支持アーム(20)の前記第2自由端(22)に備え、
前記ブーム(30)は、釣合い重り(33)を前記ブーム(30)の前記第2自由端(32)に備え、
前記第2および第3アクチュエータ組立体(62、63)は電気駆動装置(62a、63a)を備え、
前記支持アーム(20)の前記第2自由端(22)の前記釣合い重り(24)は、前記第2軸線(15)を中心に前記支持アーム(20)に対して存在する、そして、移送作業中に中に存在する人々および/または貨物を含む前記積荷支持要素(40)の、前記ブーム(30)の、前記ブーム(30)の前記第2自由端(32)の釣合い重り(33)の、および前記支持アーム(20)の、重り力によって引き起こされる部分モーメントの合計に等しいモーメント(M2)の少なくとも25%を打ち消し、
前記ブーム(30)の前記第2自由端(32)の前記釣合い重り(33)は、前記第3軸線(23)を中心に前記ブーム(30)に対して存在する、そして、移送作業中に中に存在する人々および/または貨物を含む前記積荷支持要素(40)の、および前記ブーム(30)の、重り力によって引き起こされる部分モーメントの合計に等しいモーメント(M1)の少なくとも25%を打ち消し、
前記第2アクチュエータ組立体(62)は、前記ベース(10)の前記可動部(12)と前記支持アーム(20)の前記第2自由端(22)との間に延在する、対応する前記電気駆動装置(62a)によって繰り出される、または手繰り寄せられる、ケーブル(62b)をさらに備え、
前記第3アクチュエータ組立体(63)は、前記支持アーム(20)の前記第1自由端(21)と前記ブーム(30)の前記第2自由端(32)との間に延在する、対応する前記電気駆動装置(63a)によって繰り出される、または手繰り寄せられる、ケーブル(63b)をさらに備える、
ことを特徴とするシステムを備える船舶(2)。
【請求項2】
前記支持アーム(20)の前記第2自由端(22)の前記釣合い重り(24)は、前記第2軸線(15)を中心に前記支持アーム(20)に対して存在する、そして、移送作業中に中に存在する人々および/または貨物を含む前記積荷支持要素(40)の、前記ブーム(30)の、前記ブーム(30)の前記第2自由端(32)の釣合い重り(33)の、および前記支持アーム(20)の、重り力によって引き起こされる部分モーメントの合計に等しい前記モーメント(M2)の少なくとも50%を打ち消す、および/または、
前記ブーム(30)の前記第2自由端(32)の前記釣合い重り(33)は、前記第3軸線(23)を中心に前記ブーム(30)に対して存在する、そして、移送作業中に中に存在する人々および/または貨物を含む前記積荷支持要素(40)の、および前記ブーム(30)の、重り力によって引き起こされる部分モーメントの合計に等しい前記モーメントの少なくとも50%を打ち消す、請求項1に記載のシステムを備える船舶(2)。
【請求項3】
前記支持アーム(20)の前記第2自由端(22)の前記釣合い重り(24)は、少なくとも500kgの重量がある、および/または、
前記ブーム(30)の前記第2自由端(32)の前記釣合い重り(33)は、少なくとも500kgの重量がある、請求項1または2に記載のシステムを備える船舶(2)。
【請求項4】
前記支持アーム(20)は、前記第2軸線(15)と前記第1自由端(21)との間に延びる第1の長さ(l1)を有する機能セグメントを有し、前記支持アーム(20)は、前記第2軸線(15)と前記第2自由端(22)との間に延びる第2の長さ(l2)を有する自由端セグメントを有し、前記第2の長さ(l2)は前記第1の長さ(l1)の少なくとも20%である、および/または、
前記ブーム(30)は、前記第3軸線(23)と前記第1自由端(31)との間に延びる第1の長さ(l1’)を有する機能セグメントを有し、前記ブーム(30)は、前記第3軸線(23)と前記第2自由端(32)との間に延びる第2の長さ(l2’)を有する自由端セグメントを有し、前記第2の長さ(l2’)は前記第1の長さ(l1’)の少なくとも20%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステムを備える船舶(2)。
【請求項5】
前記第2軸線(15)と前記第2自由端(22)との間に延在する前記支持アーム(20)の自由端セグメントが少なくとも250kgの重量を有するように構築される、および/または
前記第3軸線(23)とその第2自由端(32)との間に延在する前記ブーム(30)の自由端セグメントが少なくとも250kgの重量を有するように構築される、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステムを備える船舶(2)。
【請求項6】
前記第1アクチュエータ組立体(61)は電気駆動装置(61b)備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステムを備える船舶(2)。
【請求項7】
前記第2アクチュエータ組立体(62)の前記電気駆動装置(62a)は前記支持アーム(20)の前記第2自由端(22)に配置される、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステムを備える船舶(2)。
【請求項8】
前記第3アクチュエータ組立体(63)の前記電気駆動装置(63a)は、前記ブーム(30)の前記第2自由端(32)に配置される、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステムを備える船舶(2)。
【請求項9】
前記支持アーム(20)の前記第2自由端(22)の前記釣合い重り(24)は、前記第2軸線(15)を中心に前記支持アーム(20)に対して存在する、そして、移送作業中に中に存在する人々および/または貨物を含む前記積荷支持要素(40)の、前記ブーム(30)の、前記ブーム(30)の前記第2自由端(32)の釣合い重り(33)の、および前記支持アーム(20)の、重り力によって引き起こされる部分モーメントの合計に等しい前記モーメント(M2)を完全には打ち消さない、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステムを備える船舶(2)。
【請求項10】
前記支持アーム(20)の前記第2自由端(22)の前記釣合い重り(24)は、前記第2軸線(15)を中心に前記支持アーム(20)に対して存在する、そして、移送作業中に中に存在する人々および/または貨物を含む前記積荷支持要素(40)の、前記ブーム(30)の、前記ブーム(30)の前記第2自由端(32)の釣合い重り(33)の、および前記支持アーム(20)の、重り力によって引き起こされる部分モーメントの合計に等しい前記モーメント(M2)の1~10%の間を打ち消さない、および/または、前記支持アーム(20)の前記第1自由端(21)における50~150kgの間の荷重を打ち消さない、請求項9に記載のシステムを備える船舶(2)。
【請求項11】
前記ブーム(30)の前記第2自由端(32)の前記釣合い重り(33)は、前記第3軸線(23)を中心に前記ブーム(30)に対して存在する、そして、移送作業中に中に存在する人々および/または貨物を含む前記積荷支持要素(40)の、および前記ブーム(30)の、重り力によって引き起こされる部分モーメントの合計に等しい前記モーメント(M1)を完全には打ち消さない、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステムを備える船舶(2)。
【請求項12】
前記ブーム(30)の前記第2自由端(32)の前記釣合い重り(33)は、前記第3軸線(23)を中心に前記ブーム(30)に対して存在する、そして、移送作業中に中に存在する人々および/または貨物を含む前記積荷支持要素(40)の、および前記ブーム(30)の、重り力によって引き起こされる部分モーメントの合計に等しい前記モーメント(M1)の1~10%の間を打ち消さない、および/または、前記ブーム(30)の前記第1自由端(31)における50~150kgの間の荷重を打ち消さない、請求項11に記載のシステムを備える船舶(2)。
【請求項13】
前記積荷支持要素(40)は、少なくとも1つの出入口ドア(41)を有するケージである、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステムを備える船舶(2)。
【請求項14】
前記支持アーム(20)および/または前記ブーム(30)はフレーム構造として具現化される、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステムを備える船舶(2)。
【請求項15】
前記積荷支持要素(40)は、ケーブルまたはチェーンによって前記ブーム(30)に接続される、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステムを備える船舶(2)。
【請求項16】
前記積荷支持要素(40)は前記ブーム(30)に揺動可能に接続される、および/または、前記積荷支持要素(40)は前記ブーム(30)に回転可能に接続される、請求項1~15のいずれか一項に記載のシステムを備える船舶(2)。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のシステム(1)を備える船舶(2)を使用して第1の物体と第2の物体との間で人々または貨物を移送する方法であって、
a.前記積荷支持要素(40)を前記第1の物体から前記第1および第2の物体の間の位置に移動するステップと、
b.前記積荷支持要素(40)と前記第2の物体との間の相対移動を打ち消すステップと、
c.前記積荷支持要素(40)と前記第2の物体との間の前記相対移動を打ち消しているときに、前記積荷支持要素(40)を前記第2の物体に移動するステップと、
d.前記人々または貨物を前記第2の物体へ、または前記第2の物体から、移送させるステップと、
を含む方法。
【請求項18】
前記システム(1)は前記船舶(2)ある前記第1の物体上に配置される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
e.前記相対移動を打ち消しているときに、前記積荷支持要素(40)を前記第2の物体から前記第1および第2の物体の間の位置に移動するステップと、
f.前記相対移動の打ち消しを停止するステップと、
g.前記積荷支持要素(40)を前記第1の物体に移動するステップと、
をさらに含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記システム(1)は前記船舶(2)ある第3の物体上に配置され、ステップa.の前に、
1.前記積荷支持要素(40)を前記第3の物体から前記第1および第3の物体の間の位置に移動するステップと、
2.前記積荷支持要素(40)と前記第1の物体との間の相対移動を打ち消すステップと、
3.前記積荷支持要素(40)と前記第1の物体との間の前記相対移動を打ち消しているときに、前記積荷支持要素(40)を前記第1の物体に移動するステップと、
4.前記人々または貨物を前記第1の物体から移送させるステップと、
が実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記システム(1)は前記船舶(2)ある第3の物体上に配置され、ステップd.の後に、
5.前記積荷支持要素(40)と前記第2の物体との間の前記相対移動を打ち消しているときに、前記積荷支持要素(40)を前記第2の物体から前記第1および第2物体の間の位置に移動するステップと、
6.前記積荷支持要素(40)と前記第2の物体との間の前記相対移動の打ち消しを停止するステップと、
7.前記積荷支持要素(40)と前記第1の物体との間の相対移動を打ち消すステップと、
8.前記積荷支持要素(40)と前記第1の物体との間の前記相対移動を打ち消しているときに、前記積荷支持要素(40)を前記第1の物体に移動するステップと、
9.前記人々または貨物を前記第1の物体に移送させるステップと、
が実施される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば洋上作業において遭遇するような、互いに相対移動している2つの物体の間で人々および/または貨物を、特に2つの物体の間の相対移動を打ち消すことによって安全に、移送するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
洋上プラットフォームおよび洋上風車の数の増加に伴い、例えば保守および据え付けのために、これら洋上プラットフォームおよび風車への、またはこれらからの、人々および/または貨物の移送のための簡単で安価なシステムの必要性が高まっている。
【0003】
従来技術の諸システムは、入れ子式に伸縮可能なギャングウェイに通常基づいているが、これらギャングウェイは重量が大きいという欠点と、高価で大型で重くエネルギー効率も低い油圧アクチュエータシステムを使用する必要があるという欠点とを有する。
【0004】
入れ子式に伸縮可能なギャングウェイの別の欠点は、その大重量および重い駆動装置の故に、相対移動をアクチュエータシステムによって完全には打ち消すことができない点であり得る。その結果、入れ子式に伸縮可能なギャングウェイは、アクチュエータシステムが打ち消すことができない相対移動を打ち消すために、移送中、プラットフォームへの物理的接続を必要とし、ひいては望ましくないかなりの接続力がプラットフォームに加わる。この必要とされる物理的接続は、専用に構築された高価な所謂「ランディングステーション」の使用によってのみ可能になる。これは、システムまたはこれを担持している船舶の誤制御の場合、例えば、船舶の漂流時、極めて大きな力がプラットフォームに加わり得る、または損傷が引き起こされる、というさらなる欠点を有し得る。
【0005】
入れ子式に伸縮可能なギャングウェイの別の欠点は、移送用接続が確立されて人々または貨物の移送のための準備が完了するまでにかなりの時間を要することであり得る。同じことは、ギャングウェイの引き込みにも当てはまり得る。この引き込みはかなりの時間を要し、その間は他の活動を行えず、船舶をその位置に維持しておく必要がある時間が長引き得るので望ましくない。
【0006】
入れ子式に伸縮可能なギャングウェイのさらに別の欠点は、ギャングウェイ上を人々が歩いて渡る必要がある点であり得る。ギャングウェイは、ギャングウェイ上を歩いて渡っている時間の大半は、傾斜しており、入れ子式に伸縮している。これは、完全に安全ではあり得ない。
【0007】
入れ子式に伸縮可能なギャングウェイのさらに別の欠点は、入れ子式に伸縮可能なギャングウェイの自由端の到達距離が限られており、したがって船舶の位置をプラットフォーム近くの位置に高精度で維持する必要があり、ひいては安全な移送が可能になる天候および波の条件が制限される点であり得る。
【0008】
入れ子式に伸縮可能なギャングウェイの別の欠点は、相対的に高い位置への移送が必要とされる場合、通常は、重くて高価な剛体構造物によってシステム全体を船舶の甲板から上昇させる必要がある点であり得る。高さがさらに高くなると、ギャングウェイの入れ子式伸長速度を減らすために、および移送されている人々に安心感を与えるために、追加の打ち消しがベースにおいて必要となり得る。
【0009】
入れ子式に伸縮可能なギャングウェイの別の欠点は、システムが大きな空間を必要とすることであり得る。これは、システムの構造構成要素のためばかりでなく、通常は標準的な輸送用コンテナの中に設けられる油圧システムを独立に外付けするためでもある。
【0010】
特許文献1は、要員用カプセルが接続されたブーム組立体を担持する安定化された船舶載支持アームを開示している。このアームは、ジンバル構成を介して、補給船舶の甲板上の取り付け台に接続されている。アーム、ブーム、およびカプセルは、プラットフォームへの移動のために、油圧式手段、特に複数のラム、によって位置が制御される。プラットフォームに対するカプセルの位置を安定化させるために、油圧式手段は船舶の移動を打ち消すように動的に制御される。
【0011】
これに伴う一欠点は、この動的な打ち消しが相対的に低速かつ不精確であることである。モーションセンサ、ソフトウェア、制御設備、ライン、ポンプ、蓄電池、弁、スイッチ、駆動用エンジン/アクチュエータから成る長い油圧チェーンにより、カプセルが接続されたブームの先端を船舶の移動に対して十分に静止させておくことは実際には不可能である。かなりの残存移動が「補正された」先端に常に残るので、プラットフォーム上へのカプセルの載置は極めて危険である。実際に、これは、特許文献1の構造物の使用が可能であるのは、うねりが大き過ぎないとき、波が高過ぎないとき、風が強過ぎないとき、船舶が動き過ぎない、または小さ過ぎない、とき、等々に限られることを意味する。この公知の構造物をより厳しい状況においても使用することが望まれる場合は、カプセルをプラットフォーム上に押し下げる必要があるか、またはそこに物理的に接続する必要がある。
【0012】
別の欠点は、特許文献1において、ロール、ピッチ、およびヒーブの動的な打ち消しは、アームと甲板上の取り付け台との間のジンバル構成に基づくことである。甲板上の取り付け台は鉛直軸線を中心に回転可能に位置付けられているが、この鉛直軸線周りの回転性のための駆動装置は、この動的な打ち消しの一部を形成していない。実際に、この鉛直軸線周りの回転性は、プラットフォーム側へのカプセルの移動中、固定されている。これは、特許文献1の打ち消しが不完全であることを意味する。船舶の前後方向への移動および鉛直軸線周りの回転運動は、例えばアームが、通常は好適な使用位置である、船舶にほぼ垂直な位置での作動時には打ち消されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】英国特許第2336828号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明の一目的は、洋上作業中に人々および/または貨物を移送するための改良されたシステム、特に上記の諸欠点のうちの1つ以上を少なくとも部分的に解決する改良されたシステム、を提供することである。
【0015】
この目的は、洋上作業中に人々および/または貨物を移送するためのシステムによって達成される。このシステムは、
a.静止部と可動部とを有するベースであって、可動部はほぼ鉛直の第1軸線を中心に静止部に対して回転可能である、ベースと、
b.支持アームであって、第1自由端と、支持アームの第1自由端とは反対側の第2自由端とを有する支持アームと、
c.ブームであって、第1自由端と、ブームの第1自由端とは反対側の第2自由端とを有するブームと、
d.積荷支持要素と、
e.測定システムと、
f.アクチュエータシステムと、
g.制御システムと、
を備え、
支持アームは、支持アームがほぼ水平の第2軸線を中心に可動部に対して回転可能であるように、支持アームの第1および第2自由端の間の位置においてベースの可動部に取り付けられ、
ブームは、ブームがほぼ水平の第3軸線を中心に支持アームに対して回転可能であるように、ブームの第1および第2自由端の間の位置において支持アームの第1自由端に取り付けられ、
積荷支持要素は、ブームの第1自由端によって支持されるように構成され、さらには移送中の人々および/または貨物を支持するように構成され、
測定システムは、基準に対する積荷支持要素の「望ましくない」相対移動を測定するように構成され、
アクチュエータシステムは、第1アクチュエータ組立体を使用して可動部を静止部に対して回転させるように、第2アクチュエータ組立体を使用して支持アームを可動部に対して回転させるように、および第3アクチュエータ組立体を使用してブームを支持アームに対して回転させるように、構成され、
制御システムは、積荷支持要素の「望ましくない」相対移動を打ち消すために、測定システムの出力に応じてアクチュエータシステムを駆動するように構成され、
支持アームは釣合い重りを支持アームの第2自由端に備え、ブームは釣合い重りをブームの第2自由端に備え、第2および第3アクチュエータ組立体は電気駆動装置を備え、
支持アームの第2自由端の釣合い重りは、第2軸線を中心に支持アームに加わるモーメントの少なくとも25%を打ち消し、
ブームの第2自由端の釣合い重りは、第3軸線を中心にブームに加わるモーメントの少なくとも25%を打ち消す。
【0016】
ブームの第2自由端の釣合い重りが打ち消す第3軸線を中心にブームに加わるモーメントとは、その内部に存在する人々および/または貨物を含むキャビンの、およびブームの、重り力によって引き起こされる部分モーメントの和であると理解されたい。換言すると、ブームの第2自由端の釣合い重りの重り力によって引き起こされる部分モーメントが除外される場合は、第3軸線を中心にブームに対して存在するモーメントである。
【0017】
支持アームの第2自由端の釣合い重りが打ち消す第2軸線を中心に支持アームに加わるモーメントとは、その中に存在する人々および/または貨物を含むキャビンの、ブームの、ブームの第2自由端の釣合い重りの、および支持アームの、重り力によって引き起こされる部分モーメントの和であると理解されたい。換言すると、支持アームの第2自由端の釣合い重りの重り力によって引き起こされる部分モーメントが除外される場合は、第2軸線を中心に支持アームに対して存在するモーメントである。
【0018】
「望ましくない」相対移動とは、人々および/または貨物をその間で移送する必要がある2つの物体の、例えば少なくとも一方に対して作用する波、風等々によって引き起こされる、相対移動によって引き起こされる、基準に対する積荷支持要素の移動の意図されない部分であると理解されたい。「望ましい」相対移動とは、アームおよびブームによって積荷支持要素を2つの物体の間で移動させるために駆動されるアクチュエータシステムによる、基準に対する積荷支持要素の移動の意図された部分であると理解されたい。
【0019】
本発明によるシステムの一利点は、必要な駆動力を減らすための釣合い重りの使用により、電気駆動装置の使用が可能になることである。これは、システムが洋上物体の急な移動に対して、油圧式駆動装置の場合より、はるかに素速く、より精確に対応できるという利点をもたらす。この設計は、従来技術のシステムに比べ、低重量を容易にもたらすことができ、結果として消費エネルギーが少ない。本発明では、長い油圧チェーンがない。代わりに、電気駆動装置は単純かつ直接的であり、その動作性能がはるかに高速、より精密、およびより精確である。上記の公知の解決策に比べ、「望ましくない」相対移動を実際に10分の1に減らせることが好都合に明らかになっている。移送作業中、積荷支持要素は、例えばプラットフォームまたはランディングステーションに、真のタッチアンドゴー原理で位置付け可能である。例えば、30~40秒の接触時間が十分に可能である。
【0020】
本システムのさらなる利点は、その低重量および/または均衡化された構造の故に、システムを支持する物体に加わる力が相対的に小さいことであり得る。
【0021】
本システムの別の利点は、専用のランディングステーションが不要であり、これにより物体に対する機械的調整が不要であるため、本システムは人々および/または貨物を如何なる物体にも移送できることであり得る。支持アームとブームとを有するこの構成は、積荷支持要素をプラットフォームの周囲のフェンスのような障害物の上を容易に乗り越えさせ得る。この場合、フェンスの出入口ドアを省くことができる。
【0022】
本システムのさらなる利点は、人々および/または貨物の移送を到着直後に開始でき、船舶は最終移送の直後に出航し得るので、船舶の高価な時間を節約できることであり得る。
【0023】
本システムのさらに別の利点は、移送中、踏破すべき歩行距離が一切なく、人々および/または貨物は積荷支持要素によって支持されるだけでよいことであり得る。
【0024】
本システムの別の利点は、支持アームとブームとの組み合わせにより、高さおよび距離において大きな到達距離を有するので、より悪条件での移送またはより小型のより快速な船舶からの作業が可能になり、さらにシステムはより高いプラットフォームへの移送が可能になる、および/または2つの物体間により安全なより長い距離を有することができることであり得る。
【0025】
本システムのさらなる利点は、電気駆動装置は極めて高いエネルギー効率を実現でき、システムの低使用電力は船舶からの電気の直接供給を可能にし、ひいては、ベースによって決定され得る、およびその低重量の故に小さく設計され得る、所要空間を最小化するということであり得る。
【0026】
本システムのさらに別の利点は、低重量、均衡化された支持アームおよびブーム、および/または電気駆動装置による精確な制御の故に、ランディング領域に加わるランディング力を相対的に低減できることであり得る。これは、本システム、またはこれを支持している船舶、の誤制御の場合、例えば船舶の漂流の場合、引き起こされる損傷が小さいという利点をさらにもたらし得る。
【0027】
特許文献1は、そのアームおよび/またはブームの自由端に釣合い重りを備えないことに注目されたい。特許文献1において、ブームは、油圧ラムが作用するレバーアームを備えるに過ぎない。このレバーアームは、回転軸線を中心にブームに加わるモーメントを打ち消すためではなく、そのために適してもいない。代わりに、このレバーアームは、ブームの油圧式平衡化を支援することを目的としているに過ぎない。
【0028】
本発明によると、別の好適な一実施形態における支持アームの第2自由端の釣合い重りは、第2軸線を中心に支持アームに加わるモーメントの少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、を打ち消し得る。同様に、別の好適な一実施形態において、ブームの第2自由端の釣合い重りは、第3軸線を中心にブームに加わるモーメントの少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、を打ち消し得る。これは、さらに、操縦作業の精度および速度の向上、および電気駆動装置の消費エネルギーのさらなる低減を助ける。
【0029】
さらなる実施形態において、支持アームの第2自由端の釣合い重りは、好ましくは少なくとも500kgの重量を有し得る、および/またはブームの第2自由端の釣合い重りは、好ましくは少なくとも500kgの重量を有し得る。
【0030】
支持アームは、第2軸線とその第1自由端との間に延びる第1の長さを有する機能セグメントと、第2軸線とその第2自由端との間に延びる第2の長さを有する自由端セグメントとを有する。この第2の長さは、この第1の長さの少なくとも20%であるように、選択され得ることが好ましい。ブームは、第3軸線とその第1自由端との間に延びる第1の長さを有する機能セグメントと、第3軸線とその第2自由端との間に延びる第2の長さを有する自由端セグメントとを有する。この第2の長さは、この第1の長さの少なくとも20%であるように選択され得ることが好ましい。
【0031】
第2軸線とその第2自由端との間にある支持アームの自由端セグメントは、少なくとも250kgの重量を有するように構築可能であることが好ましい。同様に、第3軸線とその第2自由端との間にあるブームの自由端セグメントは、同じく少なくとも250kgの重量を有するように構築可能であることが好ましい。したがってこれら自由端セグメントの重量は、それぞれの対応する釣合い重りの一部にできると好都合である。
【0032】
したがって、アームおよび/またはブームの自由端セグメントの釣合い重りおよび梃子作用は、より単純な電気駆動装置の使用が可能になるように駆動力を小さくし、駆動手段のより短いチェーンのおかげで、アームおよび/またはブームの操作のためのより高い精度および速度の実現が可能になる。
【0033】
一実施形態において、第1アクチュエータ組立体は電気駆動装置をさらに備える。
【0034】
本発明によれば、第2アクチュエータ組立体は、ベースの可動部と支持アームの第2自由端との間に延在する、対応する電気駆動装置によって繰り出される、または手繰り寄せられる、ケーブルをさらに備える。電気駆動装置を対応する釣合い重りの一部にできるように、電気駆動装置は支持アームの第2自由端に配置されることが好ましい。
【0035】
本発明によれば、第3アクチュエータ組立体は、支持アームの第1自由端とブームの第2自由端との間に延在する、対応する電気駆動装置によって繰り出される、または手繰り寄せられる、ケーブルをさらに備える。電気駆動装置を対応する釣合い重りの一部にできるように、電気駆動装置はブームの第2自由端に配置されることが好ましい。
【0036】
一実施形態において、支持アームの第2自由端の釣合い重りは、第2軸線を中心に支持アームに加わるモーメントを完全には打ち消さない。その結果、支持アームは、常に「前方に」倒れがちであり、これにより、おそらく収納位置側に向かいがちであり、場合によっては、ベースの可動部と支持アームの第2自由端との間でケーブルがピンと張られていることになる。
【0037】
支持アームの第2自由端の釣合い重りは、特に、第2軸線を中心に支持アームに加わるモーメントの1~10%の間、特に1~5%の間、を打ち消さないように、選択可能である。これに加えて、または代わりに、釣合い重りは、支持アームの第1自由端における50~150kgの間の荷重を打ち消さないように、選択可能である。したがって、打ち消し運動のために電気駆動装置が支持アームをどちらか一方向に素速く回転させるために、十分な張力がケーブルに常に存在することを確実に保証できる。
【0038】
一実施形態において、ブームの第2自由端の釣合い重りは、第3軸線を中心にブームに加わるモーメントを完全には打ち消さない。その結果、ブームは常に「前方に」倒れがちであり、これにより、おそらく収納位置側に傾きがちであり、場合によっては、支持アームの第1自由端とブームの第2自由端との間でケーブルがピンと張られていることになる。
【0039】
ブームの第2自由端の釣合い重りは、特に、第3軸線を中心にブームに加わるモーメントの1~10%の間、特に1~5%の間、を打ち消さないように選択可能である。これに加えて、または代わりに、この釣合い重りは、ブームの第1自由端における50~150kgの間の荷重を打ち消さないように、選択可能である。したがって打ち消し運動のために電気駆動装置がブームをどちらか一方向に素速く回転させるために、ケーブルに常に十分な張力が存在することを確実に保証できる。
【0040】
積荷支持要素は、あらゆる種類の形状を有することができるが、少なくとも1つの出入口ドアを有する、要員の移送を安全にするケージ、によって形成されることが好ましい。このようなケージは、開放フレーム構造によって構築可能であるが、ほぼ密閉されたキャビンとしても構築可能である。
【0041】
支持アームおよび/またはブームは、フレーム構造として具現化されることが好ましい。すなわち、フレーム構造は、風の力を受け難いと同時に、その重量を大きく減らすことができ、システム全体の性能を精度および速度の点でさらに向上できる。代わりに、より密閉された構造を用いて構築することもできる。
【0042】
一実施形態において、積荷支持要素は、ケーブルまたはチェーンによってブームに接続可能である。これは、接続に融通性をもたらし、例えばケージまたはキャビンのような、積荷支持要素がもう一方の物体に載置された後にブームの先端に残っている如何なる小さな残存移動も吸収または緩和することを十分に可能にする。
【0043】
積荷支持要素はブームに種々の方法で接続可能であるが、特に、それらの間で作用するダンパおよび/または回転駆動ユニットによって、ブームに揺動可能または回転可能に接続されることが好ましい。
【0044】
本発明は、本発明によるシステムが設けられた船舶にも関する。
【0045】
本発明は、本発明によるシステムを使用して人々または貨物を第1の物体と第2の物体との間で移送するための方法にさらに関する。本方法は、
a.積荷支持要素を第1の物体から第1および第2の物体の間の位置に移動するステップと、
b.積荷支持要素と第2の物体との間の相対移動を打ち消すステップと、
c.積荷支持要素と第2の物体との間の相対移動を打ち消しているときに、積荷支持要素を移送のために第2の物体に移動するステップと、
d.人々または貨物を第2の物体へ、または第2の物体から、移送させるステップと、
を含む。
【0046】
一実施形態において、システムは第1の物体上に配置される。
【0047】
あるいは、システムは第3の物体上に配置され得る。この場合、ステップa.の前に、
1.積荷支持要素を第3の物体から第1および第3の物体の間の位置に移動するステップと、
2.積荷支持要素と第1の物体との間の相対移動を打ち消すステップと、
3.積荷支持要素と第1の物体との間の相対移動を打ち消しているときに、積荷支持要素を第1の物体に移動するステップと、
4.人々または貨物を第1の物体から移送させるステップと、
が実施され得る。
【0048】
一実施形態において、システムは第3の物体上に配置される。この実施形態においては、ステップd.の後に、
5.積荷支持要素と第2の物体との間の相対移動を打ち消しているときに、積荷支持要素を第2の物体から第1および第2物体の間の位置に移動するステップと、
6.積荷支持要素と第2の物体との間の相対移動の打ち消しを停止するステップと、
7.積荷支持要素と第1の物体との間の相対移動を打ち消すステップと、
8.積荷支持要素と第1の物体との間の相対移動を打ち消しているときに、積荷支持要素を第1の物体に移動するステップと、
9.人々または貨物を第1の物体に移送させるステップと、
が実施される。
【0049】
一実施形態においては、ステップa.の前に、人々または貨物が積荷支持要素に積み込まれ得る。この場合、積荷支持要素への人々または貨物の積み込みは、その到達距離内の任意の位置から行えることが好ましい。
【0050】
ステップc.、3.、および/またはステップ8.は、積荷支持要素を対応する第1または第2の物体上に位置付けるステップをさらに含み得る。
【0051】
一実施形態において、本方法は、
e.相対移動を打ち消しているときに、積荷支持要素を第2の物体から第1および第2の物体の間の位置に移動するステップと、
f.相対移動の打ち消しを停止するステップと、
g.積荷支持要素を第1の物体に移動するステップと、
をさらに含む。
【0052】
ステップg.は、積荷支持要素を第1の物体上に位置付けるステップをさらに含む。
【0053】
ステップg.の後、人々または貨物は、第1の物体から、または第1の物体に、さらに移送され得る。
【0054】
一実施形態において、第1の物体は船舶であり、第2の物体は洋上プラットフォームである。
【0055】
一実施形態において、第1の物体は船舶であり、第2の物体は人間または貨物自体である。この実施形態は、人間または貨物が、例えば船舶またはプラットフォームからの落下後に、水中にあり、救助または回収がそれぞれ必要な場合の救助または回収作業に特に関する。
【0056】
このような状況において、積荷支持要素と水中の人間または貨物との間の相対移動の打ち消しは、積荷支持要素上のカメラシステムを使用して行われ得る。このカメラシステムは、人間または貨物の画像を定期的または連続的に取り込み、その画像を安定させておこうとする、すなわち、人間または貨物の画像をフレーム内に安定させておこうとする。その一利点は、人間または貨物もそれ自体が基準として機能するので、完全な打ち消しが可能である点である。ただし、地球自体を基準として機能させてもよい。この場合、少なくとも部分的な打ち消しが可能になる。
【0057】
本発明によるシステムの上記用途は、船舶の周囲の水の水面への到達を可能にする支持アームとブームとの組み合わせの使用によっても、可能である。
【0058】
一実施形態において、第1の物体は船舶であり、第2の物体は別の船舶であるので、人々、例えば海域水先人、および/または貨物を1つの船舶から別の船舶に移送できる。
【0059】
次に、添付の図面を参照して、本発明を非限定的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明の一実施形態による洋上作業中に人々および/または貨物を移送するためのシステムを示す。
図2】システムの一代替実施形態の前面、上面、および側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、本発明の一実施形態による洋上作業中に人々および/または貨物を移送するためのシステム1を示す。洋上作業は、船舶2から固定構造物3への、例えばプラットフォームまたは他の固定された洋上施設への、および/またはこの逆方向への、人々および/または貨物の移送を含み得る。ただし、洋上作業は、2つの船舶の間での人々および/または貨物の移送、および人々および/または貨物を水中から回収するための救助または回収作業、も含み得る。したがって、システム1は、人々および/または貨物の容易な移送を妨げる2つの物体間の望ましくない相対移動が存在する場合に使用されることが好ましい。
【0062】
この実施形態において、システムは船舶2の甲板4上に取り付けられるが、代わりに、システム1は固定構造物3に取り付けられていることもあり得る。
【0063】
システム1は、ベース10と、支持アーム20と、ブーム30と、積荷支持要素40と、測定システム50と、アクチュエータシステムと、制御システム70とを備える。
【0064】
測定システム50および制御システム70は、簡素化のために模式的に示されている。破線は、測定システム50および制御システム70への入力および出力をそれぞれ示す。当業者は、測定システムおよび制御システムの他の位置および/または実施形態も可能であることを理解されるであろう。当業者は必要とされる諸機能の実際の具現例を十分に熟知しているので、これらは本願明細書においては説明しない。
【0065】
ベース10は、船舶2の甲板4に取り付けられた静止部11と、ほぼ鉛直の第1軸線13を中心に静止部11に対して回転可能な可動部12とを備える。静止部11は、甲板に間接的にも、例えば支持フレームまたは架台を介して、取り付けられ得る。支持フレームまたは架台は、他の目的にも使用され得る。
【0066】
ここで、静止部11が船舶の甲板に取り付けられているとは、静止部11を甲板上で移動できないことを必ずしも意味するとは限らないことにはっきりと注目されたい。例えば別の物体に近付くために船舶の片側における、作業位置と、例えば航行中の安定性向上のために船舶の中心にある、休止位置との間でシステム1を移動するために、静止部11は船舶の甲板上で移動可能である場合に該当し得る。
【0067】
静止部11は、さらに、船舶2の甲板4に一体化され得るが、自立ユニットとして甲板4上に載置されるフレームでもよい。
【0068】
可動部12を静止部11に対して回転させるために、アクチュエータシステムは第1アクチュエータ組立体61を備える。第1アクチュエータ組立体61は、ここでは旋回輪61aの形態で具現化され、静止部11に配置された外歯歯車が電気駆動装置61bと協働する。電気駆動装置61bは、旋回輪61aに係合する歯車61cを駆動する。電気駆動装置61bおよび歯車61cは、可動部12に配置される。
【0069】
第1アクチュエータ組立体61を他の形態で、例えば旋回輪61aとして、具現化することも可能であり、電気駆動装置61bおよび歯車61cを可動部および静止部11、12の内部に配置することも可能であることは当業者には明らかであろう。さらに、複数の電気駆動装置および対応する歯車を設けることも可能である。また、旋回輪を可動部12に設け、電気駆動装置および歯車を静止部に設けることもできる。アクチュエータの他の動作原理も考えられる。
【0070】
支持アーム20は、第1自由端21と、支持アーム20の第1自由端21とは反対側の第2自由端22とを有する。
【0071】
ベース10の可動部12は、第1支持梁14を備える。支持アーム20は、支持アームの第1自由端21と第2自由端22との間の位置において第1支持梁14に接続可能である。支持梁14は、ほぼ水平の第2軸線15を画成する。支持アーム20は、第2軸線15を中心にベース10の可動部12に対して回転可能である。
【0072】
支持アーム20をベース10の可動部12に対して回転させるために、アクチュエータシステムは第2アクチュエータ組立体62を備える。第2アクチュエータ組立体62は、この実施形態において、支持アーム20の第2自由端22に配置された2つの電動ウィンチ62aと、支持アーム20上の両ウィンチ62aと可動部12との間に延在する2本の対応するケーブル62bとを備える。したがって、ケーブル62bの接続部をその対応するウィンチ62aに位置合わせできるように、可動部12は梁16を備える。
【0073】
2つのウィンチ62aと対応するケーブル62bとを使用する一利点は、一方のウィンチ62aまたはケーブル62bが破損した場合に、一方のウィンチ62aまたはケーブル62bを交換する場合に、または一方のウィンチ62aまたはケーブル62bに対して保守が実施される場合に、冗長性が存在することであり得る。
【0074】
これにより、それぞれのウィンチ62aを使用してケーブル62bを繰り出す、または手繰り寄せる、ことによって支持アーム20の回転が可能になる。
【0075】
支持アーム20が可動部12の本体から側方に延在する支持梁14を介して可動部12に接続されるという事実により、ベース10の第1軸線13は支持アーム20に交差しない。これは、第2軸線15を中心とした支持アーム20の回転運動が可動部12の本体によって制限されないので、支持アーム20を、例えば、第1軸線13に平行なほぼ鉛直の向きに位置付けることもできるという利点を有する。
【0076】
ブーム30は、第1自由端31と、ブーム30の第1自由端31とは反対側の第2自由端32とを有する。
【0077】
ブーム30は、ブームの第1自由端31と第2自由端32との間の位置において支持アーム20の第1自由端21に接続される。支持アーム20は、この位置にほぼ水平の第3軸線23を画成する。ブーム30は、前記第3軸線23を中心に支持アーム20に対して回転可能である
【0078】
ブーム30を支持アーム20に対して回転させるために、アクチュエータシステムは、第3アクチュエータ組立体63を備える。第3アクチュエータ組立体63は、この実施形態において、ブーム30の第2自由端32に配置された2つの電動ウィンチ63aと、ブーム30の両ウィンチ63aと支持アーム20の第1自由端21との間に延在する2本の対応するケーブル63bとを備える。
【0079】
これにより、対応するウィンチ63aを使用してケーブル63bを繰り出す、または手繰り寄せる、ことによってブーム30の回転が可能である。
【0080】
この場合も、2つのウィンチ63aと対応するケーブル63bとを使用する一利点は、一方のウィンチ63aまたはケーブル63bが破損した場合に、一方のウィンチ63aまたはケーブル63bを交換する場合に、または一方のウィンチ63aまたはケーブル63bに対して保守を実施する場合に、冗長性が存在することであり得る。
【0081】
積荷支持要素40は、ブーム30の第1自由端31よって支持されるように構成され、さらには移送中に人々および/または貨物を支持するように構成される。この実施形態において、積荷支持要素は、少なくとも1つの出入口ドア41を有するケージ40として具現化される。
【0082】
積荷支持要素40はブーム30に恒久的に接続され得るが、一時的に接続して移送の種類に応じて異なる種類の積荷支持要素をシステムで使用することも可能である。さらに、移送後に積荷支持要素を置き去りにすることが可能である。これにより、例えば、システム全体の使用を制限できる、および/または、その後の移送間に、システムを担持している船舶に他のタスクを、おそらく別の位置において、行わせることができる。
【0083】
一実施形態において、積荷支持要素40は、流体材料、例えばグラウトまたはセメント、の移送を可能にする、ブームの第1自由端に少なくとも接続された管類および/またはホースを備える。ただし、用途が固体商品および/または人々の移送に限定されることもあり得る。この場合、固体商品は、立体容器またはバッグ内に保持された液体または粉末をさらに含む。
【0084】
上記のように、システム1は、2つの物体間での人々および/または貨物の容易な移送を妨げるこれら2つの物体間の望ましくない相対移動が存在する場合に使用されることが好ましい。図1の実施形態において、この相対移動は海および/または風による船舶2の移動によって引き起こされるが、固定構造物は移動可能ではない。
【0085】
このような望ましくない相対移動の結果として、積荷支持要素40は固定構造物3に対して制御不能に移動し得る。この移動は、固定構造物3に対する積荷支持要素40の移動および位置付けを極めて困難にするであろう。衝突の危険性が高く、結果として破損を伴うであろう。
【0086】
望ましくない相対移動を打ち消すために、システム1は測定システム50を備える。測定システム50は、基準に対する積荷支持要素40の望ましくない相対移動を直接または間接的に測定するように構成される。この測定は、直接および間接的な方法を含むさまざまな方法で行える。例えば、
1)例えばジャイロスコープを使用して、船舶2または静止部11の相対運動を測定する。この場合、地球自体が基準として機能するが、固定構造物3は地上に直接配置されるので、固定構造物3を基準と見做すこともできる。および/または、
2)固定構造物に対する船舶2の相対移動を直接、例えばレーザ測定システムを使用して、例えば、レーザ光線が固定構造物3と船舶2との間で反射されるレーザ干渉法に基づき、測定する。
【0087】
相対移動の測定は、基準に対する加速度、速度、および/または位置を測定することによって行われ得る。これは、これらの測定値が相対移動を打ち消すために使用可能である場合に限られる。
【0088】
この図に破線矢印51で示されている、相対移動を表す測定システム50の出力が制御システム70に供給される。別の入力は、破線矢印52で示されているユーザ入力であり得る。これは、積荷支持要素40の所望の移動または相対位置を表し得る。
【0089】
制御システム70は、積荷支持要素40の望ましくない相対移動を打ち消すために、測定システムの出力51に応じてアクチュエータシステムを駆動するように構成される。その結果、積荷支持要素40の望ましい移動がない場合は、積荷支持要素を担持している船舶2が波および風の作用の故に移動するとしても、積荷支持要素40は固定構造物3に対して静止していることになる。
【0090】
この打ち消しに加え、制御システム70は、積荷支持要素の望ましい位置または移動に基づき、固定構造物3、すなわち基準、に対する積荷支持要素40の位置を制御するように構成され得る。この望ましい位置は、ユーザ入力に基づかせることができる。
【0091】
図1の実施形態において、破線矢印71、72a、72b、73a、および73bで示されているように、制御システム70は駆動信号を第1、第2、および第3アクチュエータ組立体の電気駆動装置に供給する。
【0092】
洋上という状況の故に、望ましくない移動が連続的に存在することが予想される。これは、ベース10の可動部12(およびベース10によって支持されている全ての物)と、支持アーム20と、ブーム30とを移動するために、これらのアクチュエータ組立体が連続的に駆動されることを意味する。
【0093】
駆動力を限度内に維持するために、支持アーム20は釣合い重り24を支持アームの第2自由端22に備え、ブームは対応する釣合い重り33をブーム30の第2自由端32に備える。
【0094】
上記のように、第2アクチュエータ組立体のウィンチ62aおよび第3アクチュエータ組立体のウィンチ63aは、支持アーム20およびブーム30のそれぞれの第2自由端に配置され、これにより釣合い重りとしても機能する。
【0095】
支持アーム20およびブーム30は、釣合い重りが支持アーム20およびブーム30のそれぞれの第1自由端に加わるモーメントを完全には打ち消さないように構成されるので、第2および第3アクチュエータ組立体のそれぞれのケーブル62bおよび63bは作業中、常にピンと張った状態に維持される。
【0096】
本発明によるシステム1の一利点は、システムの総重量を低く維持できることである。釣合い重りの存在との組み合わせによって、システムを駆動するために必要な力も低く維持できるので、エネルギー効率の低い油圧式駆動装置の代わりに、エネルギー効率の良い電気駆動装置の使用が可能である。
【0097】
支持アームおよびブームはフレーム構造として具現化されているが、これらは少なくとも部分的にボックス要素として、または梁形要素として、容易に具現化可能であること等々は、当業者には明らかであろう。
【0098】
図2では、同じ構成要素に同じ参照符号が付与されている。この図には、アーム20およびブーム30が梁形式として具現化された一実施形態が示されている。この図において、アーム20は、第2軸線15とその第1自由端21との間に延びる第1の長さL1を有する機能セグメント20aと、第2軸線15とその第2自由端22との間に延びる第2の長さL2を有する自由端セグメント20bとを有することも明らかに示されている。ここで、長さL2は、長さL1の20%、特に約33%、より大きいように選択される。
【0099】
同様に、この図において、ブーム30は、第3軸線23とその第1自由端31との間に延びる第1の長さL1’を有する機能セグメント30aと、第3軸線23とその第2自由端32との間に延びる第2の長さL2’を有する自由端セグメント30bとを有することが明らかに示されている。ここで、長さL2’は、長さL1’の20%、特に約33%、より大きいように選択される。
【0100】
一例として、キャビン40は約500kgの重量を有し得る一方で、ブーム30の機能セグメント30aは700kgの重量を有し得る。この場合、ブーム30の自由端セグメント30bは少なくとも250kg、特に約500kg、の重量を有し得る一方で、これに取り付けられた釣合い重り33は少なくとも500kg、特に約750kg、の重量を有し得る。したがって、ブーム30の第2自由端32の釣合い重り33は、第3軸線23を中心にブーム30に加わるモーメントM1の少なくとも75%、特に95~99%の間、を打ち消す。同時に、釣合い重り33は、第3軸線23を中心にブーム30に加わるモーメントM1を完全には打ち消さない。特に、釣合い重り33はこのモーメントM1の1~5%の間を打ち消さず、同じくキャビン40の内部に存在する人々および/または貨物の重量に応じて、50~150kgの間の残りの荷重F1をブーム30の第1自由端31に残す。
【0101】
これにより、第3軸線23を中心にブーム30に加わるモーメントM1は、
-その内部に存在する人々および/または貨物を含むキャビン40の重り力に、その重心と第3軸線23との間の水平距離(a horizontal distance between its centre of gravity and to the third axis 23)を掛けた値、および
-機能セグメント30aの重り力に、その重心と第3軸線23との間の水平距離を掛けた値、
によって引き起こされた部分モーメントの和を含むことに注目されたい。
【0102】
このモーメントM1は、
-自由端セグメント30bの重り力に、その重心と第3軸線23との間の水平距離を掛けた値、および
-釣合い重り33の重り力に、その重心と第3軸線23との間の水平距離を掛けた値、
によって部分的に打ち消される。
【0103】
さらに、一例として、アーム20の機能セグメント20aは、2100kgの重量を有し得る。この場合、アーム20の自由端セグメント20bは少なくとも250kg、特に約1500kg、の重量を有し得る一方で、そこに取り付けられた釣合い重り24は、少なくとも500kg、特に約2500kg、の重量を有し得る。したがって、アーム20の第2自由端22の釣合い重り24は、第2軸線15を中心にアーム20に加わるモーメントM2の少なくとも75%、特に95~99%の間、を打ち消す。同時に、釣合い重り24は、第2軸線15を中心にアーム20に加わるモーメントM2を完全には打ち消さない。特に、釣合い重り24は、このモーメントの1~5%の間を打ち消さず、同じくキャビン40の内部に存在する人々および/または貨物の重量に応じて、50~150kgの間の残りの荷重F2をアーム20の第1自由端21に残す。
【0104】
これにより、アーム20に対する第2軸線15周りのモーメントM2は、
-その内部に存在する人々および/または貨物を含むキャビン40の重り力に、その重心と第2軸線15との間の水平距離を掛けた値、
-機能セグメント30aの重り力に、その重心と第2軸線15との間の水平距離を掛けた値、
-自由端セグメント30bの重り力に、その重心と第2軸線15との間の水平距離を掛けた値、
-釣合い重り33の重り力に、その重心と第2軸線15との間の水平距離を掛けた値、および
-機能セグメント20aの重り力に、その重心と第2軸線15との間の水平距離を掛けた値、
によって引き起こされた部分モーメントの和を含むことに注目されたい。
【0105】
このモーメントM2は、
-自由端セグメント20bの重り力に、その重心と第2軸線15との間の水平距離を掛けた値、および
-釣合い重り24の重り力に、その重心と第2軸線15との間の水平距離を掛けた値、
によって部分的に打ち消される。
【0106】
アーム20は、キャビン40と釣合い重り33とが取り付けられたブーム30を担持し、ひいてはそれぞれの重り力も打ち消される必要があるので、アーム20の自由端セグメント20bの重量、および/または釣合い重り24の重量は、ブーム30の自由端セグメント30bの重量および/または釣合い重り33の重量より大きいように、特に少なくとも2倍超、より特に少なくとも3倍超、であるように、選択されることが好ましい。
【0107】
第1回転軸線はほぼ鉛直であると規定され、第2および第3軸線はほぼ水平であると規定されているが、代わりに、第2および第3軸線は互いに平行であるが、第1軸線に垂直である、または第1、第2、および第3軸線は3DOF位置決めシステムが得られるように向けられるとも規定され得る。ここで、各DOFは並進である。
【0108】
この説明においては、釣合い重りという用語に言及している。ピボット軸線の反対側に存在する何れの質量も釣合い重りと見做され得るが、本発明による釣合い重りは、モーメントの少なくとも25%、好ましくはモーメントの少なくとも50%、より好ましくはモーメントの少なくとも75%、を打ち消す。
図1
図2