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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】触感提示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20230908BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20230908BHJP
   F03G 7/06 20060101ALI20230908BHJP
   H01H 37/32 20060101ALN20230908BHJP
【FI】
G06F3/041 480
G06F3/01 560
F03G7/06 E
H01H37/32 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020009731
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021117642
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】飯野 朗弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠
(72)【発明者】
【氏名】里舘 貴之
(72)【発明者】
【氏名】頃石 圭太郎
【審査官】三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-162328(JP,A)
【文献】特開2015-232277(JP,A)
【文献】特開平09-164542(JP,A)
【文献】特開平03-216325(JP,A)
【文献】特開2018-021466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/048- 3/04895
F03G 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指先で操作される操作パネルを有するケーシングと、
前記ケーシングに対して可動方向に沿って移動可能とされた可動体と、
前記ケーシングに対して固定的に配置された固定子と、
前記可動体に取り付けられるとともに、前記固定子に対して前記可動方向に相対移動可能に配置された可動子と、
前記固定子と前記可動子との間に配置され、温度に応じて長さが変化する形状記憶合金ワイヤと、
前記可動子を前記固定子側に向けて、前記可動方向に沿って付勢する弾性部材と、
を備え、
前記形状記憶合金ワイヤは、前記固定子および前記可動子に交互に接触しながら、前記固定子および前記可動子の間に波状に挟み込まれ、通電加熱に伴う伸縮によって前記固定子と前記可動子との間隔を変化させ、
前記固定子および前記可動子の一方は、
前記可動方向に直交する直交方向に延びる基部と、
前記基部から前記固定子および前記可動子の他方側に向けて突出し、先端において前記形状記憶合金ワイヤに接触する突起部と、
を備え、
前記基部および前記突起部は、絶縁性を有する樹脂に熱伝導性を付与するフィラーが含有された樹脂材料により一体的に形成され、
前記基部の外表面のうち、前記突起部の突出方向に対して90°以上傾斜した方向を向く箇所にゲート痕が形成され
前記固定子及び前記可動子の熱伝導率は、樹脂流れ方向において1W/mK以上5W/mK以下となっている、
触感提示装置。
【請求項2】
前記ゲート痕は、前記直交方向における前記突起部が配置されている領域の中央に形成されている、
請求項1に記載の触感提示装置。
【請求項3】
前記ゲート痕は、前記直交方向における前記突起部が配置されている領域の中央に対して前記直交方向に対称に形成されている、
請求項1または請求項2に記載の触感提示装置。
【請求項4】
前記ゲート痕は、前記基部の外表面のうち前記突出方向とは反対方向を向く箇所に形成されている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の触感提示装置。
【請求項5】
前記ゲート痕は、前記直交方向に直交する方向から見て前記突起部と重なる位置に形成されている、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の触感提示装置。
【請求項6】
前記基部のうち前記直交方向に直交する方向から見て前記突起部と重なる位置には、切欠が形成されている、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の触感提示装置。
【請求項7】
前記切欠に係合し、前記固定子および前記可動子を互いに固定する連結部材を備える、
請求項6に記載の触感提示装置。
【請求項8】
前記操作パネルを通じて情報を表示する表示パネルと、
前記操作パネルの操作に応じて前記表示パネルの表示を制御する制御部と、
を備える請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の触感提示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触感提示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット型PC等の携帯情報端末や、車載用ナビゲーションシステム等の電子機器等には、操作者の操作に対して、振動によって触感を提示する触感提示装置が組み込まれている場合が多い。
【0003】
例えば下記特許文献1に示されるように、タッチパネルの前面側に配置された接触パネルを指先で触った際に、形状記憶合金ワイヤを利用して接触パネルを瞬間的に移動させて、指先に対して力学的な操作感覚(いわゆるクリック感)を疑似的に作用させる触感提示装置が知られている。この触感提示装置では、通電加熱に伴う形状記憶合金ワイヤの伸縮を利用するアクチュエータにより、接触パネルを予め決まった変位方向に瞬間的に移動させている。これにより、接触パネルに触れた指先に対してクリック感を与えるかのような疑似的な触感を作用させることができ、あたかも機械スイッチを押したような触感を感じることが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/023606号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、形状記憶合金ワイヤの伸縮を利用するアクチュエータでは、良好な疑似的触感を再現するために、形状記憶合金ワイヤを瞬間的に伸縮させることが求められる。形状記憶合金ワイヤを瞬間的に収縮させるためには昇温速度を速めればよく、例えば形状記憶合金ワイヤに印加する電圧を高める方法がある。一方で形状記憶合金ワイヤを瞬間的に伸長させるためには、通電加熱によって生じた熱を形状記憶合金ワイヤから速やかに放熱させる必要がある。このため、形状記憶合金ワイヤに接触する部材には、所定の熱伝導性を有することが求められる。また、形状記憶合金ワイヤの通電時のショートを防止するため、形状記憶合金ワイヤに接触する部材が絶縁性を持つ必要がある。これらの材質に対する要求から、熱伝導性および絶縁性を両立させるために、形状記憶合金ワイヤに接触する部材をアルマイト処理されたアルミニウムにより形成する場合がある。しかしながら、アルマイト処理によりアルミニウム表面には酸化アルミニウムの多孔質皮膜が形成されるので、形状記憶合金ワイヤが多孔質皮膜に摺接して摩耗して破損する可能性がある。したがって、従来の触感提示装置にあっては、信頼性に改善の余地がある。
【0006】
そこで本発明は、高品質な疑似的触感を作用させることができるとともに信頼性の向上が図られた触感提示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の触感提示装置は、指先で操作される操作パネルを有するケーシングと、前記ケーシングに対して可動方向に沿って移動可能とされた可動体と、前記ケーシングに対して固定的に配置された固定子と、前記可動体に取り付けられるとともに、前記固定子に対して前記可動方向に相対移動可能に配置された可動子と、前記固定子と前記可動子との間に配置され、温度に応じて長さが変化する形状記憶合金ワイヤと、前記可動子を前記固定子側に向けて、前記可動方向に沿って付勢する弾性部材と、を備え、前記形状記憶合金ワイヤは、前記固定子および前記可動子に交互に接触しながら、前記固定子および前記可動子の間に波状に挟み込まれ、通電加熱に伴う伸縮によって前記固定子と前記可動子との間隔を変化させ、前記固定子および前記可動子の一方は、前記可動方向に直交する直交方向に延びる基部と、前記基部から前記固定子および前記可動子の他方側に向けて突出し、先端において前記形状記憶合金ワイヤに接触する突起部と、を備え、前記基部および前記突起部は、絶縁性を有する樹脂に熱伝導性を付与するフィラーが含有された樹脂材料により一体的に形成され、前記基部の外表面のうち、前記突起部の突出方向に対して90°以上傾斜した方向を向く箇所にゲート痕が形成されている、ことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、固定子と可動子との間隔の変化を利用して、ケーシングに対して可動体を可動方向に沿って瞬間的に移動させることができる。これにより、可動体の急速な変位に基づいて、触感提示装置全体に可動体の慣性力(推力)を作用させることができる。そのため、操作パネルに触れた指先に対して、力学的な操作感覚を疑似的に作用させることができ、指先に対してクリック感を与えるかのような疑似的触感を作用させることができる。
しかも、固定子および可動子の一方の突起部を樹脂材料により形成できるので、固定子および可動子の一方の突起部をアルマイト処理されたアルミニウムにより形成した構成と比較して、形状記憶合金ワイヤの摩耗を抑制できる。
ここで、固定子および可動子の一方を樹脂材料により射出成形する際、ゲート痕に対応する金型のゲートは、金型内で突起部の突出方向と平行、または90°未満の角度で傾斜した方向に開口する。このため、ゲートから金型内に放射状に流れ込む樹脂を、突起部に対応する金型の凹部に直接的に充填することができる。これにより、突起部における樹脂流れ方向が突出方向に沿うので、突起部においてフィラーを突出方向に沿うように配向し、形状記憶合金ワイヤに接触する突起部先端の表面の熱伝導性を高めることができる。したがって、固定子および可動子の一方を樹脂材料により形成しつつ、フィラーによって所望の熱伝導性および絶縁性を有するように形成できる。よって、固定子および可動子の一方によって形状記憶合金ワイヤを効率よく放熱させることができ、形状記憶合金ワイヤを瞬間的に伸長させることが可能となる。
以上により、高品質な疑似的触感を作用させることができるとともに信頼性の向上が図られた触感提示装置を提供できる。
【0009】
上記の触感提示装置において、前記ゲート痕は、前記直交方向における前記突起部が配置されている領域の中央に形成されていてもよい。
【0010】
この構成によれば、ゲートから金型内に流れ込む樹脂材料を、突起部が配置される領域の中央に対して直交方向で対称に流動させて、複数の突起部それぞれに対応する金型の凹部に充填することができる。これにより、突起部間での材質のばらつきを抑制できる。よって、所望の熱伝導性および絶縁性を有する突起部を形成できる。
【0011】
上記の触感提示装置において、前記ゲート痕は、前記直交方向における前記突起部が配置されている領域の中央に対して前記直交方向に対称に形成されていてもよい。
【0012】
この構成によれば、ゲートから金型内に流れ込む樹脂材料を、突起部が配置される領域の中央に対して直交方向で対称に流動させて、複数の突起部それぞれに対応する金型の凹部に充填することができる。これにより、突起部間での材質のばらつきを抑制できる。よって、所望の熱伝導性および絶縁性を有する突起部を形成できる。
【0013】
上記の触感提示装置において、前記ゲート痕は、前記基部の外表面のうち前記突出方向とは反対方向を向く箇所に形成されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、ゲートから金型内に流れ込む樹脂の流動方向を、金型の凹部が窪む方向に一致させることができる。これにより、突起部における樹脂流れ方向を突出方向により近付けることができる。よって、突起部においてフィラーの配向方向を突出方向により近付けることができる。
【0015】
上記の触感提示装置において、前記ゲート痕は、前記直交方向に直交する方向から見て前記突起部と重なる位置に形成されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、ゲートから金型内に流れ込んだ樹脂材料を、基部が延びる方向である直交方向の流動を経ずに、突起部に対応する金型の凹部に到達させることができる。これにより、金型の凹部に樹脂材料を効率よく充填させることができる。また、突起部における樹脂流れ方向を突出方向により近付けることができる。よって、突起部においてフィラーの配向方向を突出方向により近付けることができる。
【0017】
上記の触感提示装置において、前記基部のうち前記直交方向に直交する方向から見て前記突起部と重なる位置には、切欠が形成されていてもよい。
【0018】
この構成の場合、固定子および可動子の一方のうち、直交方向に直交する方向から見て突起部と重なる部分は、突起部と重ならない部分と比べて突起部の突出方向に大きく形成される。このため、基部に切欠を形成することが必要な場合に、切欠を基部のうち直交方向に直交する方向から見て突起部と重なる位置に設けることで、切欠を形成することによる固定子および可動子の一方の強度低下を抑制できる。
【0019】
上記の触感提示装置において、前記切欠に係合し、前記固定子および前記可動子を互いに固定する連結部材を備えていてもよい。
【0020】
この構成によれば、連結部材により固定子および可動子の分解を抑制できるので、触感提示装置の組み立て性を向上させることができる。
【0021】
上記の触感提示装置において、前記操作パネルを通じて情報を表示する表示パネルと、前記操作パネルの操作に応じて前記表示パネルの表示を制御する制御部と、を備えていてもよい。
【0022】
この構成によれば、表示パネルに表示された情報を視認しながら、操作パネルを指先で操作する際に、クリック感のような疑似的触感を感じながら操作を行える。したがって、例えばスマートフォンやスマートウォッチ等の携帯情報端末等として、好適に利用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高品質な疑似的触感を作用させることができるとともに信頼性の向上が図られた触感提示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る携帯情報端末を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る携帯情報端末を示す分解斜視図である。
図3図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4】第1実施形態に係るアクチュエータを下方から見た斜視図である。
図5図3のV-V線における断面図である。
図6】第1実施形態に係るアクチュエータの動作を示す図である。
図7】第1実施形態の第1変形例に係るアクチュエータを下方から見た斜視図である。
図8】第1実施形態の第2変形例に係るアクチュエータを下方から見た斜視図である。
図9】第2実施形態に係る携帯情報端末の内部を示す平面図である。
図10】第2実施形態に係る携帯情報端末の内部を示す斜視図である。
図11】第3実施形態に係る携帯情報端末を示す分解斜視図である。
図12図11のXII-XII線に沿う断面図である。
図13】第3実施形態に係るアクチュエータを示す斜視図である。
図14】第3実施形態に係るアクチュエータの平面図である。
図15図13のXV-XV線における断面図である。
図16】第3実施形態に係るアクチュエータの動作を示す図である。
図17】第4実施形態に係るスマートウォッチを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る触感提示装置の第1実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、触感提示装置としてスマートフォン等の携帯情報端末を例に挙げて説明する。
【0026】
図1は、第1実施形態に係る携帯情報端末を示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係る携帯情報端末を示す分解斜視図である。図3は、図1のIII-III線に沿う断面図である。
図1から図3に示すように、本実施形態の携帯情報端末1は、指先で操作されるタッチパネル2(操作パネル)を有するケーシング4と、タッチパネル2を覆うとともにケーシング4に対して移動可能とされた接触パネル3(可動体)と、接触パネル3を瞬間的に変位させるアクチュエータ5と、を備えている。
【0027】
本実施形態では、ケーシング4の平面視でケーシング4の厚さ方向L1に対して互いに直交する2方向を第1方向L2および第2方向L3(直交方向)という。
ケーシング4は、第1方向L2に沿った長さが第2方向L3に沿った長さよりも長い平面視矩形状に形成されているとともに、厚みの薄い有底筒状に形成されている。ケーシング4の開口部4aは、上述した接触パネル3によって塞がれている。なお、厚さ方向L1のうち、ケーシング4の底壁部10から接触パネル3に向かう方向を上方といい、その反対を下方という。
【0028】
ケーシング4は、底壁部10と、底壁部10の周囲を囲むとともに底壁部10から上方に向けて突出した4つの周壁部11と、を有する有底筒状に形成され、上方に開口している。4つの周壁部11のうち第1方向L2に向かい合う一対の周壁部11を前壁部12および後壁部13といい、第2方向L3に向かい合う一対の周壁部11を側壁部14という。なお、ケーシング4は一部品である必要がなく、例えば複数の部品を一体に組み合わせて構成しても構わない。
【0029】
ケーシング4の内部には、制御基板15が収容されている。制御基板15は、携帯情報端末1を動作させるための図示しない各種の電子部品が実装されるとともに、両面に図示しない回路パターンが形成された例えばプリント基板とされている。制御基板15は、ケーシング4の形状に対応して第1方向L2に沿った長さが第2方向L3に沿った長さよりも長い平面視矩形状に形成され、図示しない支持部材によってケーシング4内に安定的に支持されている。
【0030】
制御基板15には、携帯情報端末1を総合的に制御するCPU等の制御部16が実装されている。さらに制御基板15には、フラッシュメモリ等の各種記憶部、小型のスピーカ、小型のマイクロフォン、小型のカメラ等が実装されている。なお、これら記憶部、スピーカ、マイクロフォンおよびカメラ等については図示を省略している。
【0031】
さらに、ケーシング4の内部には、各種の構成品に電力を供給する図示しない電源部が配設されているとともに、図示しない取出し可能なメモリカード等が配設されている。なお、電源部としては、例えば充放電可能な二次電池等とされている。
【0032】
制御基板15の上方には、タッチパネル2および接触パネル3が配置されている。接触パネル3は、例えば合成樹脂材(例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等)やガラス材等で形成された薄型の透明パネルであって、タッチパネル2を上方から覆った状態で、ケーシング4の開口部4aを塞ぐようにケーシング4に対して組み合わされている。
【0033】
接触パネル3は、ケーシング4における開口部4aとの間に所定の隙間があくように、開口部4aの開口サイズよりも僅かに小さい外形サイズとされている。また、接触パネル3は、ケーシング4の長手方向である第1方向L2に移動可能に支持された状態で、図示しない支持部材によってケーシング4に対して組み合わされている。したがって、接触パネル3の可動方向は、第1方向L2に一致している。
【0034】
さらに、接触パネル3の後端部には、下方に向けて突出するとともに、ケーシング4における後壁部13に対して第1方向L2に向かい合うように配置されたパネル壁部3aが形成されている。なお、パネル壁部3aは、後壁部13との間に所定の隙間をあけた状態で配置されている。
【0035】
タッチパネル2は、接触パネル3に対して重なるように、接触パネル3の下方に配置されている。タッチパネル2は、合成樹脂材またはガラス材で形成された薄型の透明パネルであって、例えば抵抗膜方式や静電容量方式、光学方式等の公知の接触検知機能を具備している。これにより、タッチパネル2は、接触パネル3を通じて指先で触れた箇所を検知することが可能とされている。したがって、タッチパネル2の上面は、接触パネル3を通じて操作者の指先等によって操作される操作面、いわゆる触感提示面とされている。
【0036】
タッチパネル2の下方には、タッチパネル2に対して重なるように表示パネル17が配置されている。表示パネル17は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置であって、タッチパネル2および接触パネル3を通じて各種の情報を表示可能としている。これにより、表示パネル17に表示された各種情報に対応して、接触パネル3を通じてタッチパネル2を指先で触れることで、触れた場所に対応する操作内容に基づいた入力信号(指令信号)を制御部16に送ることが可能とされている。
【0037】
上述した制御部16は、タッチパネル2の操作に伴う入力信号に基づいて、表示パネル17の表示を制御している。さらに制御部16は、タッチパネル2の操作に基づいて、後述する形状記憶合金ワイヤ40に所定の電圧を印加して、形状記憶合金ワイヤ40への通電を制御している。
【0038】
アクチュエータ5は、接触パネル3を可動方向である第1方向L2に瞬間的に変位させ、該変位に基づいてケーシング4に対して慣性力(推力)を作用させる役割を果たしている。
【0039】
図4は、第1実施形態に係るアクチュエータを下方から見た斜視図である。図5は、図3のV-V線における断面図である。
図4および図5に示すように、アクチュエータ5は、ケーシング4に取り付けられた固定子20と、接触パネル3に取り付けられるとともに、固定子20に対して可動方向である第1方向L2に向かい合うように配置された可動子30と、固定子20と可動子30との間に配置され、温度に応じて長さが変化する形状記憶合金ワイヤ40と、を備えている。なお、図4では、図面を見易くするために、固定子20と可動子30とを離間させた状態で図示している。また、図5では、図面を見易くするために、タッチパネル2および表示パネル17の図示を省略している。
【0040】
固定子20は、ケーシング4における前壁部12のうち第2方向L3の中央部分に固定されている。なお、固定子20は、ケーシング4に対して固定的に配置されていればよく、必ずしもケーシング4に取り付けられていなくてもよい。固定子20は、第2方向L3に沿って延びる基部21と、基部21から可動子30側に向けて突出した複数の突起部22と、を備えている。基部21は、直方体状に形成されている。基部21の外表面は、上方を向く上面21aと、下方を向く下面21bと、第1方向L2における可動子30側を向く第1側面21cと、第1側面21cとは反対側を向く第2側面21dと、第2方向L3を向く一対の端面21eと、を備える。複数の突起部22は、第2方向L3に一定の間隔をあけて配置されている。複数の突起部22は、基部21の第1側面21cから所定の突出量で突出している。各突起部22の先端部は、平面視で丸みを帯びた形状、例えば円弧状に形成されている。なお、図示の例では固定子20は3つの突起部22を有しているが、突起部22の数はこの場合に限定されるものではない。
【0041】
可動子30は、固定子20に対して第1方向L2に相対移動可能に配置されている。可動子30は、接触パネル3のうちケーシング4の前壁部12に対して向かい合う前縁部側の下面3bに固定されている。可動子30は、接触パネル3における第2方向L3の中央部分に配置されているとともに、固定子20と同等の高さに配置されている。これにより、先に述べたように、固定子20と可動子30とは可動方向である第1方向L2に向かい合うように対向配置されている。
【0042】
可動子30は、第2方向L3に沿って延びる基部31と、基部31から固定子20側に向けて突出した複数の突起部32と、を備えている。基部31は、直方体状に形成されている。基部31の外表面は、上方を向く上面31aと、下方を向く下面31bと、第1方向L2における固定子20側を向く第1側面31cと、第1側面31cとは反対側を向く第2側面31dと、第2方向L3を向く一対の端面31eと、を備える。複数の突起部32は、第2方向L3に一定の間隔をあけて配置されている。複数の突起部32は、基部31の第1側面31cから固定子20側に向けて所定の突出量で突出している。各突起部32の先端部は、固定子20側と同様に平面視で丸みを帯びた形状、例えば円弧状に形成されている。なお、図示の例では、可動子30は4つの突起部32を有しているが、突起部32の数はこの場合に限定されるものではない。
【0043】
固定子20側の各突起部22間の間隔と、可動子30側の各突起部32間の間隔とは、同じ間隔(ピッチ)とされている。さらに、固定子20側の各突起部22の突出量と、可動子30側の各突起部32の突出量とは、同等とされている。そして、可動子30側の各突起部32の間に、固定子20側の各突起部22がそれぞれ入り込むように、固定子20および可動子30は対向配置されている。これにより、可動子30側の各突起部32と固定子20側の各突起部22とは、櫛歯状に配列された状態とされている。
【0044】
形状記憶合金ワイヤ40は、例えばニッケル-チタン合金製のワイヤとされている。形状記憶合金ワイヤ40は、固定子20の各突起部22の先端、および可動子30の各突起部32の先端に交互に接触しながら、固定子20および可動子30の間に波状に挟み込まれている。なお、形状記憶合金ワイヤ40の材料は、ニッケル-チタン合金に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0045】
形状記憶合金ワイヤ40の両端部は、接触パネル3の下面3bに設けられた接続端子41に接続されている。接続端子41は、図示しない配線部を通じて制御基板15における図示しない回路パターンに導通している。これにより、形状記憶合金ワイヤ40は、接続端子41を介して制御基板15に電気的に接続されており、所定の電圧が印加されることで通電可能とされている。
【0046】
図6は、第1実施形態に係るアクチュエータの動作を示す図である。
図6に示すように、形状記憶合金ワイヤ40は、通電によって加熱されることで瞬間的に収縮する。これにより、形状記憶合金ワイヤ40は緩んだ状態から張った状態に移行するので、可動子30を固定子20から離間させるように可動方向である第1方向L2に沿って移動させることが可能となる。このように、形状記憶合金ワイヤ40は、通電加熱に伴う伸縮によって、可動子30と固定子20との間隔を変化させることが可能とされている。
【0047】
なお、上述した固定子20および可動子30は、形状記憶合金ワイヤ40に対して接触するように配置されて、形状記憶合金ワイヤ40を放熱させる放熱体(熱伝導体)としても機能する。固定子20および可動子30は、絶縁性を有する樹脂を母材として、母材に熱伝導性を付与するフィラーが含有された樹脂材料により形成されている。母材は、射出成形可能な熱可塑性樹脂である。例えば、母材として、ポリフェニレンスルファイドやポリアミド、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール等を適用可能である。フィラーは、絶縁性を有する。例えば、フィラーとして、アルミナや六方晶窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等を適用可能である。フィラーは、粒子状または繊維状である。フィラーの含有率は、固定子20および可動子30それぞれの強度低下抑制の観点から、例えば40%以下であることが望ましい。また、フィラーの含有率は、固定子20および可動子30それぞれの熱伝導率を樹脂流れ方向において1W/mK以上5W/mK以下、望ましくは2W/mK以上5W/mK以下にするために、例えば5%以上であることが望ましい。固定子20において、基部21および複数の突起部22は、境界部が連続性を有するように一体的に形成されている。可動子30において、基部31および複数の突起部32は、境界部が連続性を有するように一体的に形成されている。
【0048】
図3に示すように、固定子20は、射出成形時のゲート痕23を有する。ゲート痕23は、基部21の外表面に形成されている。ゲート痕23は、突起部22の突出方向に対して90°以上傾斜した方向を向く箇所に設けられている。すなわち、突起部22は第1方向L2のうち基部21から可動子30に向かう方向に突出しているので、ゲート痕23は、基部21の外表面のうち第1側面21c以外の面に形成されている。本実施形態では、ゲート痕23は、突起部22の突出方向に対して180°傾斜した方向を向く第2側面21dに形成されている。ゲート痕23は、基部21の第2側面21dのうち、第2方向L3における複数の突起部22が配置されている領域の中央に形成されている。なお、第2方向L3における複数の突起部22が配置されている領域は、複数の突起部22のうち第2方向L3で両端に配置された一方の突起部22の位置から他方の突起部22の位置に至る領域である。ゲート痕23は、第2方向L3に直交する方向から見て突起部22に重なる位置に形成されている。
【0049】
可動子30は、射出成形時のゲート痕33を有する。ゲート痕33は、基部31の外表面に形成されている。ゲート痕33は、突起部32の突出方向に対して90°以上傾斜した方向を向く箇所に設けられている。すなわち、突起部32は第1方向L2のうち基部31から固定子20に向かう方向に突出しているので、ゲート痕33は、基部31の外表面のうち第1側面31c以外の面に形成されている。本実施形態では、ゲート痕33は、突起部32の突出方向に対して180°傾斜した方向を向く第2側面31dに形成されている。ゲート痕33は、基部31の第2側面31dのうち、第2方向L3における複数の突起部32が配置されている領域の中央に形成されている。
【0050】
上述のように構成されたアクチュエータ5は、図3および図4に示すように、少なくとも可動子30および形状記憶合金ワイヤ40が接触パネル3および制御基板15に対して、厚さ方向L1に重なるように配置されている。
【0051】
図2および図3に示すように、携帯情報端末1は、コイルばね45(弾性部材)をさらに備える。コイルばね45は、ケーシング4と接触パネル3との間に配置されている。コイルばね45は、可動子30を固定子20側に向けて接近させるように、接触パネル3を可動方向である第1方向L2に沿って付勢する。
【0052】
コイルばね45は、ケーシング4における後壁部13と、接触パネル3におけるパネル壁部3aとの間に圧縮状態で配置されている。コイルばね45の一端部は後壁部13に接続され、コイルばね45の他端部は接触パネル3のパネル壁部3aに接続されている。これにより、コイルばね45は、弾性復元力(付勢力)を利用して接触パネル3の全体を固定子20側に向けて付勢している。なお、コイルばね45の数は1つに限定されるものではなく、例えば第2方向L3に間隔をあけて複数配置しても構わない。
【0053】
上述のように接触パネル3が固定子20側に向けて付勢されているので、図5に示すように、形状記憶合金ワイヤ40は可動子30と固定子20との間に挟み込まれた状態とされている。また、形状記憶合金ワイヤ40によって、コイルばね45によって付勢された接触パネル3は、それ以上固定子20側に変位することが抑制され、図5に示すように位置決めされた状態とされている。
【0054】
上述のように構成された携帯情報端末1を使用する場合の作用について説明する。
この場合には、図1に示すように、表示パネル17に表示された情報を視認しながら、接触パネル3を通じてタッチパネル2を指先で操作することで、触れた場所に対応する操作を行うことができる。これにより、携帯情報端末1が有する各種機能を適宜利用することができる。
【0055】
特に、接触パネル3を通じてタッチパネル2を操作することで、形状記憶合金ワイヤ40による固定子20と可動子30との間隔の変化を利用してケーシング4に対して接触パネル3を可動方向である第1方向L2に沿って瞬間的に移動させることができる。これにより、接触パネル3の急速な変位に基づいて、携帯情報端末1全体に接触パネル3の慣性力を作用させることができる。そのため、接触パネル3に触れた指先に対して、力学的な操作感覚を疑似的に作用させることができ、指先に対してクリック感を与えるかのような疑似的触感を作用することができる。
【0056】
より詳細に説明する。
接触パネル3を通じてタッチパネル2が指先で操作されると、制御部16は接続端子41を通じて形状記憶合金ワイヤ40に対して通電を行う。これにより、形状記憶合金ワイヤ40を加熱して、瞬間的に収縮させることができる。そのため、図6に示すように、固定子20の各突起部22と可動子30の各突起部32との間に挟み込まれた形状記憶合金ワイヤ40を、緩んだ状態から張った状態にすることができ、コイルばね45の弾性復元力に抗して可動子30を固定子20から離間させることができる。
【0057】
これにより、コイルばね45を弾性変形させながら、可動子30が設けられている接触パネル3をケーシング4に対して可動方向である第1方向L2に沿って瞬間的に移動させることが可能である。そのため、携帯情報端末1全体に接触パネル3の慣性力を作用させることができ、接触パネル3に触れた指先に対してクリック感を与えるかのような疑似的触感を作用させることができる。
【0058】
さらに、通電加熱によって生じた熱が形状記憶合金ワイヤ40から放熱されることで、形状記憶合金ワイヤ40を例えば瞬間的に伸長させることができ、張った状態から緩んだ状態に移行させることができる。
このとき接触パネル3は、コイルばね45による弾性復元力によって、可動子30が固定子20側に向けて接近するように付勢されている。そのため、形状記憶合金ワイヤ40の伸長に伴って、コイルばね45による付勢力を利用して可動子30を固定子20側に向けて確実に接近させることができる。そのため、可動子30が設けられている接触パネル3をケーシング4に対して可動方向である第1方向L2に沿って瞬間的に逆方向に移動させることができ、図5に示す状態に復帰させることができる。この復帰の際、先ほどと同様に接触パネル3に触れた指先に対してクリック感を与えるかのような疑似的触感を作用させることができる。
【0059】
したがって、形状記憶合金ワイヤ40の伸縮を利用して接触パネル3を可動方向に振動させることが可能となる。特に、パルス様の振動を発生させることが可能であり、例えば機械スイッチに近い触感を作用させることや、振動モータ等とは違った触感を作用させることが可能である。さらに、形状記憶合金は一般的に伸縮の再現性や応答性に優れている特性を有しているので、接触パネル3に対して指先を触れた瞬間にクリック感を与えるかのような疑似的触感を安定的に作用させることが可能である。
特に、本実施形態では指先で直接触れている接触パネル3自身を瞬間的に変位させるので、より効果的に疑似的触感を指先に対して作用させ易い。
【0060】
さらに、操作者の操作とは別に必要に応じて接触パネル3を変位させることで、例えばケーシング4を振動させることも可能である。これにより、例えば電話やメールの着信等を操作者に報知することが可能となり、そのための専用の振動源(例えば振動モータ等)を設ける必要がない。したがって、構成の簡略化および低コスト化に繋げることもできる。
【0061】
さらに、本実施形態では、固定子20が樹脂材料により形成され、基部21における突起部22の突出方向に対して90°以上傾斜した方向を向く第2側面21dにゲート痕23が形成されている。この構成によれば、固定子20の突起部22を樹脂材料により形成できるので、固定子の突起部をアルマイト処理されたアルミニウムや、リン酸塩皮膜処理された鉄等により形成した構成と比較して、形状記憶合金ワイヤ40の摩耗を抑制できる。ゲート痕33が形成された可動子30についても同様である。
ここで、固定子20を樹脂材料により射出成形する際、ゲート痕23に対応する金型のゲートは、金型内で突起部22の突出方向と平行、または90°未満の角度で傾斜した方向に開口する。このため、ゲートから金型内に放射状に流れ込む樹脂を、突起部22に対応する金型の凹部に直接的に充填することができる。これにより、突起部22における樹脂流れ方向が突出方向に沿うので、突起部22においてフィラーを突出方向に沿うように配向し、形状記憶合金ワイヤ40に接触する突起部22の先端の表面の熱伝導性を高めることができる。したがって、固定子20を樹脂材料により形成しつつ、フィラーによって所望の熱伝導性および絶縁性を有するように形成できる。よって、固定子20によって形状記憶合金ワイヤ40を効率よく放熱させることができ、形状記憶合金ワイヤ40を瞬間的に伸長させることが可能となる。ゲート痕33が基部31に形成された可動子30についても同様である。
以上により、高品質な疑似的触感を作用させることができるとともに信頼性の向上が図られた携帯情報端末1を提供できる。
【0062】
さらに、固定子20のゲート痕23は、基部21の延びる第2方向L3における突起部22が配置されている領域の中央に形成されている。この構成によれば、固定子20を射出成形する際、ゲートから金型内に流れ込む樹脂材料を、突起部22が配置される領域の中央に対して第2方向L3で対称に流動させて、複数の突起部22それぞれに対応する金型の凹部に充填することができる。これにより、突起部22間での材質のばらつきを抑制できる。よって、所望の熱伝導性および絶縁性を有する突起部22を形成できる。可動子30についても同様である。
【0063】
固定子20のゲート痕23は、基部21の外表面のうち突起部22の突出方向とは反対方向を向く第2側面21dに形成されている。この構成によれば、ゲートから金型内に流れ込む樹脂の流動方向を、突起部22に対応する金型の凹部が窪む方向に一致させることができる。これにより、突起部22における樹脂流れ方向を突出方向により近付けることができる。よって、突起部22においてフィラーの配向方向を突出方向により近付けることができる。可動子30についても同様である。
【0064】
固定子20のゲート痕23は、第2方向L3に直交する方向から見て突起部22と重なる位置に形成されている。この構成によれば、ゲートから金型内に流れ込んだ樹脂材料を、基部が延びる第2方向L3の流動を経ずに、突起部22に対応する金型の凹部に到達させることができる。これにより、金型の凹部に樹脂材料を効率よく充填させることができる。また、突起部22における樹脂流れ方向を突出方向により近付けることができる。よって、突起部22においてフィラーの配向方向を突出方向により近付けることができる。
【0065】
(第1実施形態の変形例)
なお、ゲート痕23,33の位置は、上記第1実施形態に限定されない。
例えば図7に示すように、固定子20のゲート痕23Aは、基部21の外表面のうち、突起部22の突出方向に対して90°傾斜した方向を向く下面21bに形成されていてもよい。また、可動子30のゲート痕33Aは、基部31の外表面のうち、突起部32の突出方向に対して90°傾斜した方向を向く下面31bに形成されていてもよい。このように構成された固定子20および可動子30であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
【0066】
また、図8に示すように、固定子20のゲート痕23Bは、基部21の延びる方向(第2方向L3)における突起部22が配置されている領域の中央に対して第3方向L2方向に対称に形成されていてもよい。また、可動子30のゲート痕33Bは、基部31の延びる方向(第2方向L3)における突起部32が配置されている領域の中央に対して第3方向L2方向に対称に形成されていてもよい。この構成によれば、固定子20を射出成形する際、ゲートから金型内に流れ込む樹脂材料を、突起部22が配置される領域の中央に対して第2方向L3方向で対称に流動させて、複数の突起部22それぞれに対応する金型の凹部に充填することができる。これにより、突起部22間での材質のばらつきを抑制できる。よって、所望の熱伝導性および絶縁性を有する突起部22を形成できる。可動子30についても同様である。
なお、この場合であっても、ゲート痕23Bは、第2方向L3に直交する方向から見て突起部22と重なる位置に形成されていることが望ましい。また、ゲート痕33Bは、第2方向L3に直交する方向から見て突起部32と重なる位置に形成されていることが望ましい。
【0067】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る触感提示装置の第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0068】
図9は、第2実施形態に係る携帯情報端末の内部を示す平面図である。図10は、第2実施形態に係る携帯情報端末の内部を示す斜視図である。
第1実施形態では、アクチュエータ5が制御基板15に対して厚さ方向L1に重なるように配置されていたが、本実施形態ではアクチュエータ5が制御基板15に対して可動方向に並ぶように配置されている。
【0069】
図9および図10に示すように、本実施形態の携帯情報端末60(触感提示装置)は、アクチュエータ5と制御基板15とが可動方向である第1方向L2に並ぶように配置されている。
【0070】
アクチュエータ5は、ケーシング4の前壁部12と制御基板15との間に配置されている。アクチュエータ5は、固定子20、可動子30および形状記憶合金ワイヤ40と、固定子20および可動子30を互いに引き付けて固定する連結部材50と、を備える。なお、本実施形態では、形状記憶合金ワイヤ40の両端部が接続される接続端子41の図示を省略している。
【0071】
固定子20は、偶数個(図示の例では4つ)の突起部22を有する。固定子20の基部21の第2側面21dには、連結部材50が係合する切欠24が形成されている。切欠24は、基部21の上面21aから下面21bにわたって厚さ方向L1に延びている。切欠24は、第2方向L3における複数の突起部22が配置されている領域の中央に対して第2方向L3に対称に形成されている。固定子20の基部21には、ゲート痕23Cが形成されている。ゲート痕23Cは、切欠24を避ける位置に形成されている。本実施形態では、ゲート痕23Cは、基部21の上面21aのうち、第2方向L3における複数の突起部22が配置されている領域の中央に形成されている。
【0072】
可動子30は、奇数個(図示の例では5つ)の突起部32を有する。可動子30の基部31の第2側面31dには、連結部材50が係合する切欠34が形成されている。切欠34は、基部31の上面31aから下面31bにわたって厚さ方向L1に延びている。切欠34は、第2方向L3に直交する方向から見て突起部32と重なる位置に形成されている。切欠34は、第2方向L3における複数の突起部32が配置されている領域の中央に形成されている。可動子30の基部31には、ゲート痕33Cが形成されている。ゲート痕33Cは、切欠34を避ける位置に形成されている。本実施形態では、ゲート痕33Cは、基部31の上面31aのうち、第2方向L3における複数の突起部32が配置されている領域の中央に形成されている
【0073】
可動子30は、制御基板15におけるケーシング4の前壁部12に対して向かい合う前縁部15bに取り付けられている。固定子20は、可動子30と同等の厚みで形成され、可動子30に対して可動方向である第1方向L2に向かうようにケーシング4における前壁部12に取り付けられている。
【0074】
連結部材50は、針金状に形成されている。連結部材50は、厚さ方向L1に延びて固定子20の切欠24に配置された一対の固定側係合部51と、厚さ方向L1に延びて可動子30の切欠34に配置された可動側係合部52と、固定子20および可動子30の上方で直線的に延びて一方の固定側係合部51と可動側係合部52とを連結する第1連結部53と、固定子20および可動子30の下方で直線的に延びて他方の固定側係合部51と可動側係合部52とを連結する第2連結部54と、を備える。連結部材50は、可動子30を第1方向L2に沿って固定子20に近付く方向に付勢している。
【0075】
さらに本実施形態では、携帯情報端末60は、第1実施形態のコイルばね45に代えて、板ばね部材61(付勢部材)を備える。板ばね部材61は、ケーシング4における側壁部14と制御基板15との間に配置されている。板ばね部材61は、可動子30を固定子20側に向けて接近させるように制御基板15を可動方向に付勢する。
【0076】
板ばね部材61は、制御基板15を挟んだ第2方向L3の両側で第1方向L2に間隔をあけて2つ形成されている。そのため、図示の例では、板ばね部材61は合計4つ形成されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、板ばね部材61の数は適宜変更して構わない。板ばね部材61は、例えば制御基板15と同等の厚みで形成されるとともに、第1方向L2に沿った幅が厚みよりも小さい板片状に形成され、一端部がケーシング4の側壁部14に接続され、他端部が制御基板15の端縁に接続されている。そして、板ばね部材61は、弾性復元力を利用して制御基板15の全体を固定子20側に向けて常時付勢している。
【0077】
上述のように構成された携帯情報端末60の場合であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
それに加えて本実施形態の場合には、可動子30の基部31のうち第2方向L3に直交する方向から見て突起部32と重なる位置には、切欠34が形成されている。ここで、可動子30のうち、第2方向L2に直交する方向から見て突起部32と重なる部分は、突起部32と重ならない部分と比べて第1方向L2に大きく形成される。このため、基部31に切欠34を形成することが必要な場合に、切欠34を基部31のうち第2方向L3に直交する方向から見て突起部32と重なる位置に設けることで、切欠34を形成することによる可動子30の強度低下を抑制できる。
【0078】
さらに、アクチュエータ5は、切欠34に係合し、固定子20および可動子30を互いに固定する連結部材50を備える。この構成によれば、連結部材50により固定子20および可動子30の分解を抑制できるので、携帯情報端末60の組み立て性を向上させることができる。
【0079】
なお、本実施形態では、固定子20の切欠24と突起部22との位置関係が特に限定されていないが、固定子20の切欠24も、可動子30の切欠34と同様に、第2方向L3に直交する方向から見て突起部32と重なる位置に形成されていてもよい。ただし、本実施形態では、固定子20は2箇所の切欠24において連結部材50に係合し、可動子30は1箇所の切欠34において連結部材50に係合している。これにより、連結部材50から可動子30の切欠34に加わる力は、連結部材50から固定子20の切欠24それぞれに加わる力よりも大きい。このため、可動子30の切欠34の位置を上述したように設定することで、アクチュエータ5の信頼性の向上を図るという点でより有効である。
【0080】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る触感提示装置の第3実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0081】
図11は、第3実施形態に係る携帯情報端末を示す分解斜視図である。図12は、図11のXII-XII線に沿う断面図である。
第1実施形態では、アクチュエータ5によって接触パネル3を瞬間的に変位させたが、本実施形態では、アクチュエータ5自体が制御基板15に取り付けられているとともに、重錘を瞬間的に変位させる構成とされている。
【0082】
図11および図12に示すように、本実施形態の携帯情報端末80(触感提示装置)は、第1実施形態と同様に、ケーシング4および接触パネル3を有する。接触パネル3は、ケーシング4の開口部4aを密に閉塞している。ケーシング4内には、アクチュエータ5が配置されている。
【0083】
アクチュエータ5は、例えば制御基板15における中央部の上面15aに実装されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、例えば制御基板15の下面にアクチュエータ5が実装されていても構わない。
【0084】
図13は、第3実施形態に係るアクチュエータを示す斜視図である。図14は、第3実施形態に係るアクチュエータの平面図である。図15は、図13のXV-XV線における断面図である。
図13から図15に示すように、アクチュエータ5は、ベース台81と、ベース台81に固定された固定子20と、固定子20に対して可動方向である第1方向L2に移動可能にベース台81に載置された可動子30と、固定子20と可動子30との間に配設された形状記憶合金ワイヤ40と、可動子30を固定子20側に向けて第1方向L2に沿って付勢するコイルばね85と、可動子30を第1方向L2に移動可能に案内するガイドロッド82と、を備えている。可動子30には、重錘90(可動体)が取り付けられている。したがって、重錘90は可動子30とともに第1方向L2に移動可能とされている。
【0085】
ベース台81は、制御基板15の上面15aに実装されたベースプレート81aと、ベースプレート81aから上方に向けて延びたバックプレート81bと、を備え、側面視L字形状に形成されている。ただし、ベース台81の形状は、この場合に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0086】
ベースプレート81aは、第1方向L2に沿った長さが第2方向L3に沿った長さよりも短い平面視矩形状に形成され、制御基板15の上面15aに固定されている。ただし、ベースプレート81aの形状は、この場合に限定されるものではなく、例えば第1方向L2に沿った長さが第2方向L3に沿った長さよりも長い平面視矩形状に形成されても構わない。
【0087】
バックプレート81bは、ベースプレート81aのうちケーシング4の後壁部13側に位置する後端部に形成され、ベースプレート81aに対して垂直に立ち上がるように立設されている。なお、バックプレート81bの第2方向L3に沿った長さは、ベースプレート81aの第2方向L3に沿った長さと同等とされている。
【0088】
固定子20は、ベースプレート81aのうちケーシング4の前壁部12側に位置する前端部側の上面に固定されている。
【0089】
ガイドロッド82は、固定子20とバックプレート81bとの間に取り付けられている。具体的にはガイドロッド82は、第1方向L2に延びる円柱状に形成され、基部21のうち第2方向L3の両端部にそれぞれ配置されている。したがって、ガイドロッド82は、複数の突起部22を間に挟むように一対設けられている。なお、ガイドロッド82は、ベースプレート81aの上面に対して隙間をあけた状態で基部21およびバックプレート81bに対して一体的に組み合わされている。
【0090】
可動子30は、ベースプレート81aの上面に第1方向L2にスライド移動可能に載置されているとともに、固定子20に対して第1方向L2に向かい合うように対向配置されている。
【0091】
可動子30における基部31のうち、複数の突起部32を間に挟んだ第2方向L3の両端部には、該基部31を第1方向L2に貫通するガイド孔35がそれぞれ形成されている。可動子30は、ガイド孔35内にガイドロッド82をそれぞれ挿通させた状態でベースプレート81aの上面にスライド移動可能に載置されている。これにより、可動子30は、ガイドロッド82によって第1方向L2に案内(ガイド)されながら、第1方向L2にがたつき少なく直線的に移動可能とされている。
【0092】
基部31のうちバックプレート81bに対して向かい合う第2側面31dには、固定子20側に向けて凹む収容凹部36がガイド孔35に連設するように形成されている。収容凹部36は、バックプレート81b側から見た背面視でガイド孔35の直径よりも大きい円形状に形成され、ガイド孔35と同軸に形成されている。
【0093】
形状記憶合金ワイヤ40の両端部は、可動子30の基部31に設けられた接続端子41に接続されている。接続端子41は、例えば基部31から固定子20側の基部21に向けて突出するように形成されているとともに、ガイドロッド82と固定子20側の突起部22との間に位置するように形成されている。接続端子41は、可動子30およびベース台81を通じて制御基板15に形成された図示しない回路パターンに導通するように電気的接続されている。
【0094】
上述した固定子20および可動子30には、ゲート痕23C,33Cが形成されている。なお、ゲート痕の位置は図示の例に限定されないが、可動子30のゲート痕は、重錘90に干渉しない位置に形成されていることが望ましい。
【0095】
コイルばね85は、一対のガイドロッド82にそれぞれ外挿された状態で、可動子30の基部31とバックプレート81bとの間に圧縮状態で配置されている。コイルばね85の一端部は基部31に形成された収容凹部36内に収容され、コイルばね85の他端部はバックプレート81bに対して接触している。これにより、コイルばね85は、弾性復元力を利用して可動子30を固定子20側に向けて付勢している。
【0096】
上述のように可動子30が固定子20側に向けて付勢されているので、形状記憶合金ワイヤ40は可動子30と固定子20との間に挟み込まれた状態とされている。また、コイルばね85によって付勢された可動子30は、形状記憶合金ワイヤ40によって、それ以上固定子20側に変位することが抑制され、位置決めされた状態とされている。
【0097】
重錘90は第2方向L3に沿って延びた直方体状(ブロック状)に形成され、可動子30における基部31の第2側面31dに対して接着や溶着等によって固定されている。これにより、重錘90は、可動子30に対して一体的に組み合わされ、可動子30とともに形状記憶合金ワイヤ40の伸縮に伴って第1方向L2に移動可能とされている。
【0098】
重錘90は、可動子30の基部31と同等の厚みとされているとともに、一対のガイドロッド82の間に配置されている。さらに重錘90は、バックプレート81bとの間に適切な間隔があくように配置されている。これにより、重錘90は形状記憶合金ワイヤ40の伸縮に伴う第1方向L2の移動中に、バックプレート81bに対して接触することが防止されている。
【0099】
なお、重錘90の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば比重の大きい金属材料であるタングステンを好適に利用することができる。ただし、重錘90の材質としては、この場合に限定されるものではなく、その他の金属材料で形成しても構わない。なお、比重が大きく、且つ加工性に優れた金属材料を用いることが好ましい。
【0100】
上述のように構成された本実施形態の携帯情報端末80であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
すなわち、接触パネル3を通じてタッチパネル2が指先で操作されると、制御部16は接続端子41を通じて形状記憶合金ワイヤ40に対して通電を行う。これにより、固定子20の各突起部22と可動子30の各突起部32との間に挟み込まれた形状記憶合金ワイヤ40を、図16に示すように緩んだ状態から張った状態にすることができ、コイルばね45の弾性復元力に抗して可動子30を固定子20から離間させることができる。
【0101】
これにより、コイルばね45を弾性変形させながら、可動子30とともに重錘90をケーシング4に対して可動方向である第1方向L2に沿って瞬間的に移動させることが可能である。そのため、携帯情報端末80全体に重錘90の慣性力を作用させることができ、接触パネル3に触れた指先に対してクリック感を与えるかのような疑似的触感を作用させることができる。
【0102】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば上記各実施形態では、触感提示装置をスマートフォン等の携帯情報端末に適用した場合に例に挙げて説明したが、例えば図17に示すように、スマートウォッチ100に適用しても構わない。さらに、携帯情報端末に限定されるものではなく、例えば車載用カーナビゲーションシステム等でも良く、タッチ時に指先に対して物理的な操作触感を疑似的に作用させる各種の電子機器等に適用しても構わない。
【0103】
上記実施形態では、固定子20および可動子30の両方が上述した樹脂材料により形成されているが、固定子および可動子の一方のみが上述した樹脂材料により形成されていてもよい。この場合、固定子および可動子の他方は、表面に絶縁層を有する金属材料により形成されていてもよい。
【0104】
また、固定子20のゲート痕は、上述した第1実施形態およびその各変形例を組み合わせた複数の位置に形成されていてもよい。可動子30のゲート痕についても同様である。なお、ゲート痕の位置は、他の部材と接触しない面に形成されていることが望ましい。
【0105】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各実施形態および各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1,60,80…携帯情報端末(触感提示装置) 2…タッチパネル(操作パネル) 3…接触パネル(可動体) 4…ケーシング 16…制御部 17…表示パネル 20…固定子 21…基部 22…突起部 23,23A,23B,23C…ゲート痕 30…可動子 31…基部 32…突起部 33,33A,33B,33C…ゲート痕 34…切欠 40…形状記憶合金ワイヤ 45,85…コイルばね(弾性部材) 50…連結部材 61…板ばね部材(弾性部材) 100…スマートウォッチ(触感提示装置)
図1
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