(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】レーザ測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20230908BHJP
B08B 1/00 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
G01S7/481 Z
B08B1/00
(21)【出願番号】P 2020010472
(22)【出願日】2020-01-27
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】曽根 裕希子
(72)【発明者】
【氏名】浜津 一信
(72)【発明者】
【氏名】石井 政光
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-079640(JP,U)
【文献】特開2000-056367(JP,A)
【文献】実開昭60-151591(JP,U)
【文献】特開2019-162862(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110703271(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 ー 7/51
17/00 - 17/95
B08B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を照射し、照射したレーザ光の測定対象物からの反射光を受光する光学機構を収容し、窓部を介してレーザ光の照射と反射光の受光を行う回転部と、
前記回転部を回転可能に支持する固定部と、
前記回転部が回転している状態で前記窓部に接触するワイパー部材と、
前記ワイパー部材が前記窓部の表面のみに接触するように、前記回転部の回転によって前記ワイパー部材を前記回転部に近づく方向と遠のく方向に移動させるカム機構と、
を備えたことを特徴とするレーザ測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ光を用いて測定対象物との距離を測定するレーザ測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ測距装置は、測定領域へレーザ光を照射し、測定領域へ照射されたレーザ光の測定対象物からの反射光を利用することにより、測定対象物までの距離を測定する。また、レーザ測距装置には、レーザ光の照射と反射光の受光を行う光学機構が収容された回転部と、回転部を回転可能に保持する固定部とを備えるものがある。回転部を回転させた状態でレーザ光の照射と反射光の受光を行うことにより、レーザ測距装置周辺の広範囲な測定が可能である。
【0003】
また、例えば、特許文献1には、レーザ光の照射と反射光の受光を行う光学機構が収容された透明なフードと、フードに付着した汚れを除去する汚れ自動除去装置を備えたレーザ測距装置が記載されている。特許文献1に記載されたレーザ測距装置では、光学機構を回転させる回転駆動部がフードの内側に収容されており、光学機構をフードの内側で回転させながら、レーザ光の照射とその反射光の受光が行われる。
【0004】
汚れ自動除去装置は、周囲の空気を圧縮するエアコンプレッサ、圧縮空気を蓄えるためのタンクおよび圧縮空気をフードの表面へ吹き付ける複数のノズルを有する。レーザ測距装置によってフードに対する汚れの付着が検出されると、汚れ自動除去装置は、エアコンプレッサによって生成された圧縮空気をタンクに蓄え、タンクに蓄えられた高圧の圧縮空気をノズルによって一定のタイミングでフードの表面に吹き付ける。これにより、フードの汚れが除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレーザ測距装置は、照射したレーザ光とその反射光とが通過する窓部(例えば、フード)に付着した、塵、埃または泥といった異物を除去するための専用の装置が必要であり、この装置を動かすための新たな動力源が必要であるという課題があった。
【0007】
本開示は上記課題を解決するものであり、新たな動力源を用いずに、照射したレーザ光とその反射光とが通過する窓部に異物が付着することを防止できるレーザ測距装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るレーザ測距装置は、レーザ光を照射し、照射したレーザ光の測定対象物からの反射光を受光する光学機構を収容し、窓部を介してレーザ光の照射と反射光の受光を行う回転部と、回転部を回転可能に支持する固定部と、回転部が回転している状態で窓部に接触するワイパー部材と、ワイパー部材が窓部の表面のみに接触するように、回転部の回転によってワイパー部材を回転部に近づく方向と遠のく方向に移動させるカム機構とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、カム機構によって移動されたワイパー部材が、回転部が回転している状態で窓部の表面のみを掃くので、窓部の表面近傍に存在する異物が除去される。これにより、本開示のレーザ測距装置は、回転部に設けられた窓部に異物が付着することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係るレーザ測距装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2Aは、実施の形態1に係るレーザ測距装置を示す上面図であり、
図2Bは、
図2AのA方向から見たレーザ測距装置を示す側面図であり、
図2Cは、
図2AのB方向から見たレーザ測距装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るレーザ測距装置1を示す斜視図である。
図2Aは、レーザ測距装置1を示す上面図であり、
図2Bは、
図2AのA方向から見たレーザ測距装置1を示す側面図であり、
図2Cは、
図2AのB方向から見たレーザ測距装置1を示す側面図である。レーザ測距装置1は、レーザ光を用いて測定対象物までの距離を測定する装置であり、
図1に示すように、回転部2および固定部3を備える。
【0012】
回転部2は、回転軸部4を中心として、例えば、
図1に示す矢印方向に回転する。回転部2の筐体の一部には窓部5が設けられ、当該筐体の内部には、光学機構6が収容されている。回転部2の筐体は、遮光性の材料によって構成され、外部の環境光を遮光する遮光フードとして機能する。
【0013】
固定部3は、回転部2を回転可能に支持する。固定部3の筐体には、例えば、回転部2を回転させる回転力を発生するモータを含む回転駆動部、回転駆動部を制御する駆動制御回路、光学機構6によるレーザ光の照射と反射光の受光を制御する測定制御回路、および遠隔操作装置などの外部装置との間で通信を行う通信回路が収容されている。レーザ測距装置1は、固定部3を介して取付箇所に取り付けられる。例えば、測定領域が天井の下側である場合、固定部3は、天井に取り付けられる。
【0014】
窓部5は、レーザ光を透過し環境光を遮断する硬質な材料によって構成された平板状の部材である。光学機構6は、窓部5を介してレーザ光の照射および反射光の受光を行う。光学機構6は、回転部2の外部へレーザ光を照射し、照射したレーザ光の測定対象物からの反射光を受光する。例えば、光学機構6には、レーザ光を発光する発光素子、反射光を受光する受光素子、ミラーおよびレンズを含む光学部材、発光素子および受光素子を動作させる回路基板が含まれる。
【0015】
固定部3には、支柱7が設けられる。支柱7は、
図1および
図2B示すように、L字状の部材であり、一方の端部が固定部3に固定され、他方の端部にガイド部7Aが設けられている。ガイド部7Aは、貫通穴を有した部材である。アーム8は、
図1および
図2B示すように、L字状の部材であり、一方の端部にブラシ10が取り付けられ、他方の端部に摺動軸部8Aが設けられている。摺動軸部8Aは、ガイド部7Aの貫通穴を通っており、貫通穴の内周面を矢印C方向に沿って摺動可能である。
【0016】
また、摺動軸部8Aにおけるアーム8と接続した端部とは反対側の端部にローラ8Bが接続されている。ローラ8Bは、カム9の外周面に接触している。カム9は、回転軸部4と同軸に設けられ、回転部2とともに回転する。カム9は、
図2Cに示すように、円周の一部が欠けた円板状の部材であり、カム9の外周は、欠けた部分に対応する外周部9Aと欠けてない部分に対応する外周部9Bから構成される。カム機構11は、支柱7、ガイド部7A、アーム8、摺動軸部8A、ローラ8Bおよびカム9から構成される。
【0017】
回転部2とともにカム9が回転することにより、ローラ8Bがカム9の外周面に沿って動く。外周部9Aに沿ってローラ8Bが動くと、アーム8の端部に取り付けられたブラシ10は、回転部2に近づく方向に移動する。また、外周部9Bに沿ってローラ8Bが動くと、ブラシ10は、回転部2から遠のく方向に移動する。なお、ブラシ10は、弾性変形可能な多数のブラシ毛材を有したブラシ部材である。
【0018】
図3A、
図3B、
図3Cおよび
図3Dは、回転部2の回転に応じたブラシ10の動きを概略的に示す概略図である。ローラ8Bが、外周部9Aにおける、回転軸部4に最も近い位置に移動すると、
図3Aに示すように、ブラシ10は、窓部5の表面の中央部分に接触した状態となる。矢印方向に回転部2がさらに回転すると、ローラ8Bが、外周部9Aに沿って回転軸部4から離れる方向に移動する。この移動に伴って、アーム8も回転軸部4から離れる方向に移動するので、ブラシ10は、
図3Bに示すように、窓部5の表面の中央部分から離れる方向に摺動する。
【0019】
さらに回転部2が回転すると、ローラ8Bは、カム9における外周部9Bに沿って移動する。外周部9Bに沿って移動しているローラ8Bは、回転軸部4から最も離れており、
図3Cに示すように、ブラシ10は、回転部2の外周面に接触しない状態となる。さらに回転部2が回転すると、ローラ8Bは、再び、外周部9Aに沿って移動するようになり、これに伴ってアーム8も回転軸部4に近づく方向に移動するので、ブラシ10は、
図3Dに示すように、窓部5の表面の中央部分に近づく方向に摺動する。これにより、ブラシ10は、回転部2が回転している状態で窓部5の表面のみを掃くので、窓部5の表面近傍に存在する異物が除去される。
【0020】
これまでの説明では弾性変形可能な多数のブラシ毛材を有したブラシ10を示したが、窓部5の表面を掃くことができる形状であれば、実施の形態1におけるワイパー部材は、ブラシ10以外であってもよい。例えば、ワイパー部材は、弾性変形可能な材料によって構成された短冊状の複数の片部を有した部材であってもよい。
【0021】
なお、回転部2は、通常、高速回転(例えば、1rps(rotations per second))しながら、レーザ光の照射と反射光の受光を行う。しかしながら、このように回転部2が高速に回転すると、ブラシ10の移動が回転部2の回転に追従できなくなる虞がある。そこで、ブラシ10によって窓部5の表面を掃く場合には、ブラシ10の移動が回転部2の回転に追従できるように、回転部2の回転速度を下げてもよい。
【0022】
以上のように、実施の形態1に係るレーザ測距装置1は、窓部5を介してレーザ光の照射と反射光の受光を行う回転部2と、回転部2を回転可能に支持する固定部3と、回転部2が回転している状態で窓部5に接触するブラシ10と、ブラシ10が窓部5の表面のみに接触するように、回転部2の回転によってブラシ10を回転部2に近づく方向と遠のく方向に移動させるカム機構11とを備える。カム機構11によって移動されたブラシ10が、回転部2が回転している状態で窓部5の表面のみを掃くので、窓部5の表面近傍に存在する異物が除去される。これにより、レーザ測距装置1は、窓部5に異物が付着することを防止できる。
【0023】
なお、実施の形態の任意の構成要素の変形もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 レーザ測距装置、2 回転部、3 固定部、4 回転軸部、5 窓部、6 光学機構、7 支柱、7A ガイド部、8 アーム、8A 摺動軸部、8B ローラ、9 カム、9A,9B 外周部、10 ブラシ、11 カム機構。