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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】トイレットペーパー包装品
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/20 20060101AFI20230908BHJP
   A47K 10/42 20060101ALI20230908BHJP
   B65D 83/08 20060101ALI20230908BHJP
   B65D 77/30 20060101ALI20230908BHJP
   B65D 77/00 20060101ALI20230908BHJP
   B65D 65/46 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
A47K10/20 A
A47K10/20 B
A47K10/20 C
A47K10/42 A
B65D83/08 G
B65D77/30 B
B65D77/00 B
B65D65/46
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020028429
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021132668
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 記瑞
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-54210(JP,A)
【文献】特開平8-56870(JP,A)
【文献】国際公開第2008/66096(WO,A1)
【文献】特開2016-128331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/20
A47K 10/42
B65D 83/08
B65D 77/30
B65D 77/00
B65D 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプを主原料とする包装材から形成された包装体に、トイレットペーパーをポップアップ式に折畳んで積層した積層体を内装するトイレットペーパー包装品において、
前記包装体を上下方向に長手方向を有する直方体に形成して、
前記包装体の正面の幅方向の中心に、前記正面の上端部から下端部に延在する破断線を形成し、
前記包装体の天面の上方に幅方向に延在する係合部を形成し、
前記積層体の長手方向を、前記包装体の上下方向に沿って設け、
前記積層体の積層方向を、前記包装体の前後方向に沿って設け、
前記包装材の坪量を50~200g/m2に形成したことを特徴とするトイレットペーパー包装品。
【請求項2】
前記包装材の坪量を70~130g/m2に形成した請求項1のトイレットペーパー包装品。
【請求項3】
前記包装材のパルプの割合を60%以上にした請求項1又は2記載のトイレットペーパー包装品。
【請求項4】
前記包装材を水解性に形成した請求項1~3のいずれか1項に記載のトイレットペーパー包装品。
【請求項5】
前記包装体の左右側面の前後方向の中心に上下方向に延在する内側に向けて折畳んだ折畳み部を形成した請求項1~4のいずれか1項に記載のトイレットペーパー包装品。
【請求項6】
正面視において、前記破断線をS字形状に形成した請求項1~5のいずれか1項に記載のトイレットペーパー包装品。
【請求項7】
前記係合部の幅方向の長さが107~120mmに形成し、側面視において、前記係合部の内径を25~45mmに形成した請求項1~6のいずれか1項に記載のトイレットペーパー包装品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプ製の包装材から形成された包装体にトイレットペーパーを積層した積層体を内装したトイレットペーパー包装品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂製のフィルムから形成された包装体にトイレットペーパーを積層した積層体を内装してトイレットペーパー包装品を形成する技術が知られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-54210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、使用後に廃棄されるフィルム製の包装体によって海中に浮遊するマイクロプラスチックが増加するという問題があった。また、体積が減少した積層体の倒伏を抑制するために包装体の上部に積層体を支持する弾性伸縮部材を周設する必要があり部品点数が増加するという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、使用後に廃棄される包装体によって海中に浮遊するマイクロプラスチックの増加を抑制すると共に部品点数の増加を抑制することができるトイレットペーパー包装品を提供することにある。また、障害によって片腕が自由に使えない障碍者等がトイレットペーパーを容易に引出して使用することができるトイレットペーパー包装品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
第1手段は、パルプを主原料とする包装材から形成された包装体に、トイレットペーパーをポップアップ式に折畳んで積層した積層体を内装するトイレットペーパー包装品において、
前記包装体を上下方向に長手方向を有する直方体に形成して、前記包装体の正面の幅方向の中心に、前記正面の上端部から下端部に延在する破断線を形成し、前記包装体の天面の上方に幅方向に延在する係合部を形成し、前記積層体の長手方向を、前記包装体の上下方向に沿って設け、前記積層体の積層方向を、前記包装体の前後方向に沿って設け、前記包装材の坪量を50~200g/m2に形成したことを特徴とする。
【0007】
第2手段は、第1手段の構成において、前記包装材の坪量を70~130g/m2に形成したことを特徴とする。
【0008】
第3手段は、第1又は2手段の構成において、前記包装材のパルプの割合を60%以上にしたことを特徴とする。
【0009】
第4手段は、第1~3のいずれか1項の手段の構成において、前記包装材を水解性に形成したことを特徴とする。
【0010】
第5手段は、第1~4のいずれか1項の手段の構成において、前記包装体の左右側面の前後方向の中心に上下方向に延在する内側に向けて折畳んだ折畳み部を形成したことを特徴とする。
【0011】
第6手段は、第1~5のいずれか1項の手段の構成において、正面視において、前記破断線をS字形状に形成したことを特徴とする。
【0012】
第7手段は、第1~6のいずれか1項の手段の構成において、前記係合部の幅方向の長さが107~120mmに形成し、側面視において、前記係合部の内径を25~45mmに形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1手段によれば、パルプを主原料とする包装材から形成された包装体に、トイレットペーパーをポップアップ式に折畳んで積層した積層体を内装するトイレットペーパー包装品において、包装体を上下方向に長手方向を有する直方体に形成して、包装体の正面の幅方向の中心に、正面の上端部から下端部に延在する破断線を形成し、包装体の天面の上方に幅方向に延在する係合部を形成し、積層体の長手方向を、包装体の上下方向に沿って設け、積層体の積層方向を、包装体の前後方向に沿って設け、包装材の坪量を50~200g/m2に形成したので、海中に浮遊するマイクロプラスチックの増加を抑制すると共に部品点数の増加を抑制することができる。また、障害によって片腕が自由に使えない障碍者等がトイレットペーパーを容易に引出して使用することができる。
【0014】
第2手段によれば、第1手段による効果に加えて、包装材の坪量を70~130g/m2に形成したので、トイレットペーパーの使用によって積層体の体積が減少した場合においても包装体の形状を維持することができる。
【0015】
第3手段によれば、第1又は2手段による効果に加えて、包装材のパルプの割合を60%以上にしたので、海中に浮遊するマイクロプラスチックの増加をより抑制することができる。
【0016】
第4手段によれば、第1~3のいずれか1項の手段による効果に加えて、包装材を水解性に形成したので、使用後に包装体を水洗トイレ等に流水廃棄することができる。
【0017】
第5手段によれば、第1~4のいずれか1項の手段による効果に加えて、包装体の左右側面の前後方向の中心に上下方向に延在する内側に向けて折畳んだ折畳み部を形成したので、トイレットペーパーの使用によって体積が減少した積層体の両側部に接当して積層体の倒伏を抑制することができる。
【0018】
第6手段によれば、第1~5のいずれか1項の手段による効果に加えて、正面視において、破断線をS字形状に形成したので、障害によって片腕が自由に使えない障碍者等がトイレットペーパーをより容易に引出して使用することができる。
【0019】
第7手段によれば、第1~6のいずれか1項の手段による効果に加えて、係合部の幅方向の長さが107~120mmに形成し、側面視において、係合部の内径を25~45mmに形成したので、既設のトイレットホルダに係合部を吊下げて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態のトイレットペーパー包装品の斜視図である。
図2】トイレットペーパー包装品に内装される積層体の斜視図である。
図3】トイレットペーパーをポップアップ式に折畳んだ積層体の説明図である。
図4】筒状包装材の説明図であり、(a)は正面図、(b)は底面図である。
図5】下部をキャラメル状に折畳んだ筒状包装材の説明図であり、(a)は天面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は側面図である。
図6】積層体を挿入した筒状包装材の説明図であり、(a)は天面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
図7】上部をピロー状に折畳んだ筒状包装材の説明図であり、(a)は天面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
図8】係合部を形成した筒状包装材の説明図であり、(a)は天面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
図9】第2実施形態のトイレットペーパー包装品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、第1実施形態のトイレットペーパー包装品1は、複数のトイレットペーパー20を積層した積層体10と、積層体10を内装する包装体40で形成されている。
【0022】
<積層体>
図2に示すように、積層体10は、直方体形状に形成されている。本明細書では、理解を容易にするために、図2中の矢印視において、正面を第1面11といい、正面に対向する裏面を第2面12といい、左側面を第3面13といい、左側面に対向する右側面を第4面14といい、天面を第5面15といい、天面に対向する底面を第6面16という。
【0023】
積層体10は、複数のトイレットペーパー20をポップアップ式に折畳んで積層して形成されている。第1実施形態のトイレットペーパー20は2枚のトイレットペーパーを積層して2プライで形成されているが、3,4枚のトイレットペーパーを積層して3,4プライに形成することもできる。
【0024】
積層体10の長さは、特段の制限はないが、第1実施形態の積層体10は、幅方向の長さ、すなわち第3面13と第4面14の間隔は略105mmで、前後方向の長さ、すなわち第1面11と第2面12の間隔は略110mmで、上下方向の長さ、すなわち第5面15と第6面16の間隔は略220mmに形成されている。これにより、既設のトイレットホルダに、包装体40の係合部39を介して容易に装着することができる。
【0025】
図3に示すように、トイレットペーパー21の折返し縁21Aは左側に位置し、前側部21Bは折返し縁21Aから右前方に延在し、後側部21Cは折返し縁20Aから右後方に延在して形成されている。
【0026】
トイレットペーパー21の前側に隣接するトイレットペーパー22の折返し縁22Aは右側に位置し、前側部22Bは折返し縁22Aから左前方に延在し、後側部22Cは折返し縁22Aから左後方に延在して形成されている。また、トイレットペーパー21の後側に隣接するトイレットペーパー23の折返し縁23Aは右側に位置し、前側部23Bは折返し縁23Aから左前方に延在し、後側部23Cは折返し縁23Aから左後方に延在して形成されている。なお、図3では、説明を容易にするために、隣接する3枚のトイレットペーパー20に、それぞれトイレットペーパー21,22,23の符号を付して図示している。
【0027】
トイレットペーパー21の前側部21Bは、トイレットペーパー22の前側部22Bと後側部22Cの間に挿入され、トイレットペーパー21の後側部21Cは、トイレットペーパー23の前側部23Bと後側部23Cの間に挿入されている。これにより、積層体10の最も前側に位置するトイレットペーパー20を前側に引出すと、このトイレットペーパー20の後側に隣接するトイレットペーパー20を前側に引出すことができる。
【0028】
トイレットペーパー20の各プライを構成する薄葉紙1枚あたりの坪量は、10.0~25.0g/m2に形成されている。これにより、トイレットペーパー20の十分な破れにくさと良好な肌ざわりを確保して、十分な水解性を維持することができる。坪量は、JIS P 8124(1998)に準拠して測定した値である。
【0029】
トイレットペーパー20の紙厚は、1枚あたり100~150μmに形成されている。これにより、トイレットペーパー20の十分な破れにくさと良好な肌ざわりを確保することができる。紙厚は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定した値である。より具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試験片を測定台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。測定時には、金属製のプランジャーの端子(直径10mmの円形の平面)が紙平面に対し垂直に当たるように留意する。なお、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。
【0030】
トイレットペーパー20の縦方向の乾燥引張強度は、150~800cN/25mmに形成されている。これにより、トイレットペーパー20の十分な破れにくさと良好な肌ざわりを確保することができる。
【0031】
トイレットペーパー20の横方向の湿潤引張強度は、15~75cN/25mmに形成されている。これにより、濡れた状態での拭き取りの丈夫さや、いわゆるシャワートイレ使用後の清拭時において安心感を向上させることができる。また、トイレットペーパー20の横方向の湿潤引張強度は、横方向の乾燥引張強度に対して0.09以上に形成されている。これにより、良好な肌触りと丈夫さを両立させることができる。
【0032】
トイレットペーパー20の縦方向は、MD方向とも呼ばれ、抄紙の際の流れ方向であり、トイレットペーパー20の横方向は、CD方向とも呼ばれ、抄紙の際の流れ方向(MD方向)に直交する方向である。
【0033】
乾燥引張強度は、JIS P 8113(2006)に準拠して測定した値である。より具体的には、試験片は縦・横方向ともに巾25mm(±0.5mm)×長さ150mm程度に裁断したものを用いる。試験片は複数プライのまま測定する。試験機は、ミネベア株式会社製ロードセル引張り試験機TG-200N及びこれに相当する相当機を用いる。なお、つかみ間隔100mm、引張速度は100mm/minに設定する。測定は、試験片の両端を試験機のつかみに締め付け、紙片を上下方向に引張り荷重をかけ、紙が破断する時の指示値(デジタル値)を読み取る手順で行う。縦方向、横方向ともに各々5組の試料を用意して各5回ずつ測定し、その測定値の平均を各方向の乾燥引張強度とする。製品は製品のプライ数に合わせて、複数枚重ねて乾燥引張強度を測定した。原紙についても製品のプライ数に合わせて、複数枚重ねて乾燥引張強度を測定した。
【0034】
湿潤引張強度は、JIS P 8135(1998)に準拠して測定した値である。具体的には、試験片は縦・横方向ともに巾25mm(±0.5mm)×長さ150mm程度に裁断したものを用いる。ティシュペーパーは複数プライの場合は複数プライのまま測定する。試験機は、ミネベア株式会社製ロードセル引張り試験機TG-200N及びこれに相当する相当機を用いる。なお、つかみ間隔100mm、引張速度は50mm/minに設定する。試験片は、105℃の乾燥機で10分間のキュアリングを行ったものを用いる。試験片の両端を試験機のつかみに締め付けた後、水を含ませた平筆を用い、試験片の中央部に約10mm幅で水平に水を付与し、その後、直ちに紙片に対して上下方向に引張り荷重をかけ、紙が破断する時の指示値(デジタル値)を読み取る手順で測定を行う。縦方向、横方向ともに各々5組の試料を用意して各5回ずつ測定し、その測定値の平均を各方向の湿潤引張強度とする。湿潤引張強度においても製品のプライ数に合わせて、複数枚重ねて湿潤引張強度を測定した。
【0035】
トイレットペーパー20のソフトネスは、1.8~3.5cN/100mmに形成されている。これにより、トイレットペーパー20の良好な柔らかさを確保することができる。ソフトネスは、JIS L 1096 E法(1990)に準拠してハンドルオメータ法に基づいて測定した値である。但し、試験片は100mm×100mmの大きさとし、クリアランスは5mmとする。1プライで縦方向、横方向の各々5回ずつ測定し、その全10回の平均値とする、なお、ソフトネスは、無単位であるが、試験片の大きさを考慮して、cN/100mmを単位として表されることもある。
【0036】
トイレットペーパー20の水解性は、60秒以下に形成されている。これにより、水洗トイレ等に流水廃棄した際には、トイレットペーパー20が速やかにほぐれて配管を詰まらせるおそれが各段に小さくなる。水解性は、JIS P 4501(1993)に準拠して測定した値である。より具体的には、105℃で3分間キュアリングを行った試験片を用意し、水300mL(水温20±5℃)を入れた300mLのビーカーをマグネチックスターラーに載せ、回転子の回転数を600±10回転/分になるように調整する。その中に一辺が114±2mm角の試験片を投入し、ストップウォッチを押す。回転子の回転数は試験片の抵抗によって、いったん約500回転に下降し、試験片がほぐれるに従い回転数は上昇する。この回転数が440回転までに回復した時点でストップウォッチを止め、その時間を1秒単位で測定する。ほぐれやすさの結果は、試験を5回行い、その平均で表す。回転子は、直径35mm、厚さ12mmの円盤状のものとする。
【0037】
トイレットペーパー20の原料パルプとしては、グランドウッドパルプ(GP)、プレッシャーライズドグランドウッドパルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ;セミケミカルパルプ(CP)、針葉樹高歩留り未晒クラフトパルプ(HNKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等の化学パルプ;デインキングパルプ(DIP)、ウェイストパルプ(WP)等の古紙パルプなどが挙げられ、パルプ以外の繊維が含まれていてもよい。
【0038】
パルプは、一種または二種以上を選択して用いることができる。好適には填料や異物を含まない化学パルプが好ましい。特には、NBKP(N材あるいは針葉樹パルプともいわれる。)よりもLBKP(L材あるいは広葉樹パルプともいわれる。)を多く含むものを用いる。すなわち、NBKPとLBKPとの比率(NBKP/LBKP)が50/50 ~ 30/70である化学パルプが好適である。LBKPよりもNBKPのほうが、繊維太さが太いため、NBKPが多いほうが嵩高になる。また、原料パルプ中には、藁パルプ、竹パルプ、ケナフパルプなどの木本類、草本類が含まれていてもよい。また、古紙パルプが配合されていてもよいが、古紙パルプは「柔らかさ」を発現させがたいことから、バージンパルプのNBKPとLBKPのみから構成されているのが極めて望ましい。
【0039】
他方、パルプ以外の繊維として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びこれらのコポリマー等のポリエステル系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリル等のアクリル繊維、モダクリル等のアクリル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ウレタン繊維等の合成繊維、トリアセテート繊維、ジアセテート繊維等の半合成繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、ポリノジックレーヨン、リヨセル等の再生セルロース系繊維、コラーゲン、アルギン酸、キチン質などを溶液にしたものを紡糸した再生繊維などの化学繊維を含ませることができる。化学繊維を構成するポリマーは、ホモポリマー、変性ポリマー、ブレンド、共重合体などの形であってもよい。
【0040】
<筒状包装材>
【0041】
図4に示すように、筒状包装材30は、面状の包装材30Aの幅方向の一側側部を他側側部に接合して筒状に形成されている。
【0042】
本明細書では、理解を容易にするために、図4中の矢印視において、筒状包装材30の正面を正面部31といい、正面に対向する面を裏面部32といい、左面を左側面部33といい、左面に対向する右面を右側面部34という。
【0043】
筒状包装材30の左側面部33には、左側面部33の右側端部が谷となるように内側に折畳み部33Aが形成され、右側面部34には、右側面部34の左側端部が谷となるように内側に折畳み部34Aが形成されている。また、正面部31、左側面部33及び右側面部34の上部は開放され、正面部31、左側面部33及び右側面部34の下部は開放されている。
【0044】
筒状包装材30の正面部31には、幅方向の中心に上下方向に直線状に延在する破断線37が形成されている。なお、破断線37は、後述する包装材40の平面41の上端部から下端部に延在するように形成されている。これにより、正面部31を幅方向に引張って破断線37を破断して引出口を形成して筒状包装材30に内装されているトイレットペーパー20を容易に引出すことができる。
【0045】
筒状包装材30を形成する包装材30Aの坪量は、50~200g/m2に形成されている。坪量が50g/m2未満の場合には、筒状包装材30から形成される包装体40の形状を維持することが困難となり、坪量が200g/m2超の場合には、折畳みが困難になり包装体40の形成を容易に行えなくなる恐れがある。また、包装材30Aの坪量は、70~130g/m2に形成するのが好ましい。これにより、引出しによって積層枚数が減少した積層体10の第3面13と第4面14を、包装体40の左側面43に形成された左折畳み部34Aと右側面44に形成された右折畳み部34Aで支持して積層体10の下方への倒込みを防止することができる。
【0046】
包装材30Aの紙厚は、100~300μmに形成されている。紙厚が100μm未満では、表面に水滴が付着した場合に破れ易くなり、紙厚が300μm超では、折畳みが困難になり包装体40の形成が容易に行えなくなる恐れがある。
【0047】
また、包装材30Aは、トイレットペーパー20と同様に水解性を有するものが好ましい。これにより、水洗トイレ等に流水廃棄した際には、包装材30Aが速やかにほぐれて配管を詰まらせるおそれが各段に小さくなる。
【0048】
包装材30Aの原料パルプとしては、グランドウッドパルプ(GP)、プレッシャーライズドグランドウッドパルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ;セミケミカルパルプ(CP)、針葉樹高歩留り未晒クラフトパルプ(HNKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等の化学パルプ;デインキングパルプ(DIP)、ウェイストパルプ(WP)等の古紙パルプなどが挙げられる。
【0049】
パルプは、一種または二種以上を選択して用いることができる。好適には填料や異物を含まない化学パルプが好ましい。特には、NBKP(N材あるいは針葉樹パルプともいわれる。)よりもLBKP(L材あるいは広葉樹パルプともいわれる。)を多く含むものを用いる。すなわち、NBKPとLBKPとの比率(NBKP/LBKP)が50/50 ~ 30/70である化学パルプが好適である。LBKPよりもNBKPのほうが、繊維太さが太いため、NBKPが多いほうが嵩高になる。また、原料パルプ中には、藁パルプ、竹パルプ、ケナフパルプなどの木本類、草本類が含まれていてもよい。また、古紙パルプが配合されていてもよいが、古紙パルプは「柔らかさ」を発現させがたいことから、バージンパルプのNBKPとLBKPのみから構成されているのが好ましい。
【0050】
包装材30Aの内面には、澱粉製の糊材、樹脂製のヒートシール材等が被覆されているのが好ましい。これにより、例えば、包装材30Aの幅方向の一側側部を他側側部に容易に接合して筒状包装材30を容易に形成等することができる。なお、包装紙30Aの内面に樹脂製のヒートシール材等をコーティングする場合には、包装紙30Aのパルプが占める割合を60%以上に形成するのが好ましい。これにより、廃棄される樹脂量を軽減して、海洋に浮遊するマイクロプラスチックを低減することができる。
【0051】
<トイレットペーパー包装品>
図5に示すように、トイレットペーパー包装品1の包装体40を形成するために、筒状包装材30の左側面部33の折畳み部33Aと右側面部34の折畳み部34Aを引起こして起立して上下部が開放された直方体形状にする。
【0052】
次に、直方体形状にされた筒状包装材30の下部をキャラメル状、すなわち、筒状包装材30の正面部31の下部を裏面部32側に折畳み、左側面部33と右側面部34の下部をそれぞれ右側面部34側と左側面部33側に折畳み、裏面部32の下部を正面部31側に折畳んで筒状包装材30の下部を塞ぎ、包装体40の底面46を形成する。これにより、包装体40の底面46は、包装紙30Aが4層に積層されて形成されて剛性が高まり、包装体40に内装される積層体10の重量による変形を抑制することができる。なお、第1実施形態では、積層体10を内装する前に、直方体形状にされた筒状包装材30の下部を折畳んで包装体40の底面46を形成しているが、積層体10を内装した後に、直方体形状にされた筒状包装材30の下部を折畳んで包装体40の底面46を形成することもできる。
【0053】
本明細書では、理解を容易にするために、図1中の矢印視において、正面を正面41といい、正面に対向する面を裏面42といい、左面を左側面43といい、左面に対向する右面を右側面44といい、後述する取付部47が形成される面を天面45といい、天面45と対向する面を底面46という。
【0054】
図6に示すように、筒状包装材30の上部から積層体10を挿入して、包装体40の底面46に上載する。この際、積層体10の積層方向を、前後方向、すなわち、包装体40の正面41から裏面42に向かう方向に沿って挿入し、積層体10の長手方向を、上下方向、すなわち、包装体40の天面45から底面46に向かう方向に沿って挿入する。なお、積層体10に対向する筒状包装材30の正面部31、裏面部32、左側面部33、右側面部34の部位が、それぞれ包装体40の平面41、裏面42、左側面43、右側面44を形成する。また、上述したとおり、筒状包装材30に形成された破断線37の上下端部は、包装体40の平面41の上下端部に位置している。
【0055】
図7に示すように、筒状包装材30の上部をピロー状、すなわち、筒状包装材30の左側面部33の上部を右側面部34側に折畳み、右側面部34の上部を左側面部33側に折畳んだ後に、正面部31の上部と裏面部32の上部を糊等を介して接合し延在部38を形成して筒状包装材30の上部を塞ぎ、包装体40の天面45を形成する。これにより、包装体40から包装体10が脱落するのを防止することができる。
【0056】
図8に示すように、延在部38の上下方向の略中間部で下方に折曲げて延在部38の上端部を延在部38の下部に糊等を介して接合する。これにより、包装体40の天面45の上方に幅方向に延在する略円形状の係合部39を形成することができる。
【0057】
包装体40の長さは、特段の制限はないが、包装体40の係合部39の幅方向の長さを107~120mmに形成し、係合部39の内径を25~45mmに形成するのが好ましい。一般的なトイレットペーパーホルダはトイレットロール幅107~114mmに対応しており、これにより、トイレットペーパー包装品1を既設のトイレットペーパーホルダに装着して使用することができる。107mm未満の場合、使用途中にトイレットペーパーホルダから脱落する可能性があり、120mmを超える場合はトイレットペーパーホルダへの保持性は高くなるが、装着性がし難い。
【0058】
第1実施形態の包装体40の幅方法の長さは、内装される積層体10の幅方向の長さより3~5mm長い109mmに形成され、前後方向の長さは、内装される積層体10の幅方向の長さより3~5mm長い114mmに形成されている。これにより、トイレットペーパー20が引出されて体積が少なくなった積層体10の倒伏を抑制することができる。
【0059】
図1等に示すように、包装体40に内装された積層体10の積層方向は、前後方向、すなわち、包装体40の正面41から裏面42に向かう方向に沿って設けられている。これにより、包装体40の正面41に形成された破断線37を幅方向に引張って破断して形成した引出口から積層された全てのトイレットペーパー20を容易に引出すことができる。
【0060】
包装体40に内装された積層体10の長手方向は、上下方向、すなわち、包装体40の天面45から底面46に向かう方向に沿って設けられている。これにより、表1に示すように、トイレットペーパー20の引出し抵抗を抑制することができ、障害によって片腕が自由に使えない障碍者等においてもトイレットペーパー20を容易に引出して使用することができる。
【0061】
【表1】
【0062】
<引出し抵抗の測定>
(測定方法)
縦置き状態(積層体10の長手方向を上下方向に沿って設けた状態)、の引出し抵抗は、包装体40の底面46を定盤に固定して、包装体40の正面41に形成された破断線37を破断して引出口を形成し、内装された積層体10のトイレットペーパー20の上下方向の中央部をクリップ(コクヨ株式会社 ダブルクリップ25mm幅)で挟み、トイレットペーパー20を正面41に対して法線方向に引き出した時の抵抗値(gf)のピークをデジタルフォースゲージ(株式会社イマダ製 Model:Z2-20N)を用いて測定した。なお、積層体10は、エリエール オーデュスティシュー180組(360枚)を用いて行った。
【0063】
横置き状態(積層体10の長手方向を幅方向に沿って設けた状態)の引出し抵抗は、包装体40の左側面43を定盤に固定して、包装体40の正面41に形成された破断線37を破断して引出口を形成し、内装された積層体10のトイレットペーパー20の幅方向の中央部をクリップ(コクヨ株式会社 ダブルクリップ25mm幅)で挟み、トイレットペーパー20を正面41に対して法線方向に引き出した時の抵抗値(gf)のピークをデジタルフォースゲージ(株式会社イマダ製 Model:Z2-20N)を用いて測定した。なお、積層体10は、エリエール オーデュスティシュー180組(360枚)を用いて行った。
【0064】
(測定結果)
5回測定した縦置き状態の引出し抵抗の平均値は0.77kgfであり、5回測定した横置き状態の引出し抵抗の平均値は1.04kgfであった。縦置き状態の引出し抵抗は、横置き状態の引出し抵抗よりも略25%小さいことが判った。
【0065】
図1等に示すように、包装体40の正面41に形成された破断線37は、正面41の幅方向の中央に、正面41の上端部から下端部に亘って上下方向に直線状に延在している。これにより、トイレットペーパー20の引出し抵抗をより抑制して、障害によって片腕が不自由な障碍者等にあってもトイレットペーパー20をより容易に引出して使用することができる。
【0066】
次に、第2実施形態のトイレットペーパー包装品1について説明する。同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0067】
図9に示すように、第2実施形態のトイレットペーパー包装品1の包装体40の正面41には、正面視において、正面41の幅方向の中心に略S字形状、例えば、上部が幅方向の中心から左側面43に向かって円弧状に突出し、下部が幅方向の中心から右側面44に向かって円弧状に突出する破断線37Aが形成されている。なお、破断線37Aの上下端部は、包装材40の平面41の上下端部に位置し、上下部の円弧状の半径は同一半径に形成されている。これにより、トイレットペーパー20の引出し抵抗をさらに抑制して、障害によって片腕が不自由な障碍者等にあってもトイレットペーパー20をさらに容易に引出して使用することができる。また、トイレットペーパー20が引出されて体積が少なくなった積層体10の倒伏をより抑制することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 トイレットペーパー包装品
10 積層体
20 トイレットペーパー
21 トイレットペーパー
22 トイレットペーパー
23 トイレットペーパー
30A 包装材
33A 折畳み部
34A 折畳み部
37 破断線
37A 破断線
39 係合部
40 包装体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9