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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】筒状の射出成形体
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/37 20060101AFI20230908BHJP
【FI】
B29C45/37
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020063605
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160195
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 智宏
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-506268(JP,A)
【文献】実開昭58-70355(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/37
B65D 1/16
B65D 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁部の外周面は、周方向の位置を互いに異ならせて設けられた第1外周面および第2外周面を備え、
前記第1外周面は、この周壁部の中心軸線に沿う軸方向の一方側に向かうに従い径方向の外側に向けて延び、
前記第2外周面は、縦断面視で前記軸方向に延びる、若しくは前記軸方向の一方側に向かうに従い径方向の内側に向けて延び、
前記軸方向の一方側に向かうに従い、径方向の内側に向けて延びる向きの、前記中心軸線に対する傾斜角度を正とし、
前記軸方向の一方側に向かうに従い、径方向の外側に向けて延びる向きの、前記中心軸線に対する傾斜角度を負としたときに、
前記周壁部の内周面において、前記第1外周面と対応する第1内周面の、前記中心軸線に対する傾斜角度が、
前記周壁部の内周面において、前記第2外周面と対応する第2内周面の、前記中心軸線に対する傾斜角度より小さくなっている、筒状の射出成形体。
【請求項2】
前記第1外周面および前記第2外周面が、前記中心軸線回りに沿って交互に設けられている、請求項1に記載の筒状の射出成形体。
【請求項3】
前記周壁部における前記軸方向の一方側の開口部を閉塞した頂壁部、若しくは底壁部を有し、
前記第1外周面および前記第2外周面は、前記中心軸線を径方向に挟んで互いに対向する位置に各別に設けられている、請求項1または2に記載の筒状の射出成形体。
【請求項4】
前記周壁部における前記軸方向の一方側の開口部を閉塞した頂壁部、若しくは底壁部を有し、
前記第2内周面の、前記中心軸線回りに沿う大きさの総和は、前記第1内周面の、前記中心軸線回りに沿う大きさの総和より大きい、請求項1から3のいずれか1項に記載の筒状の射出成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状の射出成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、周壁部を備えた筒状の射出成形体が知られている。
この種の射出成形体において、例えば装飾効果を高めたり、操作性を向上させたりする等のために、周壁部の外周面が、周方向の位置を互いに異ならせて設けられた第1外周面および第2外周面を備え、第1外周面が、軸方向の一方側に向かうに従い径方向の外側に向けて延び、第2外周面が、縦断面視で軸方向に延びる、若しくは軸方向の一方側に向かうに従い径方向の内側に向けて延びる構成を採用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-249093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような射出成形体では、周壁部の内周面の、中心軸線に対する傾斜角度が、一般に周方向の全長にわたって同じになっていることから、第1外周面が位置する部分での肉厚と、第2外周面が位置する部分での肉厚と、が互いに異なり、射出成形時に、第1外周面を成形するキャビティ部分と、第2外周面を成形するキャビティ部分と、で、溶融樹脂の流動抵抗が異なることに起因して、例えばウェルドラインおよびボイドが発生する等、成形不良が発生しやすくなるおそれがあった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、周壁部の外周面が、軸方向の一方側に向かうに従い径方向の外側に向けて延びる第1外周面と、縦断面視で軸方向に延びる、若しくは軸方向の一方側に向かうに従い径方向の内側に向けて延びる第2外周面と、を備えていても、成形不良の発生を抑えることができる筒状の射出成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の筒状の射出成形体は、周壁部の外周面は、周方向の位置を互いに異ならせて設けられた第1外周面および第2外周面を備え、前記第1外周面は、この周壁部の中心軸線に沿う軸方向の一方側に向かうに従い径方向の外側に向けて延び、前記第2外周面は、縦断面視で前記軸方向に延びる、若しくは前記軸方向の一方側に向かうに従い径方向の内側に向けて延び、前記軸方向の一方側に向かうに従い、径方向の内側に向けて延びる向きの、前記中心軸線に対する傾斜角度を正とし、前記軸方向の一方側に向かうに従い、径方向の外側に向けて延びる向きの、前記中心軸線に対する傾斜角度を負としたときに、前記周壁部の内周面において、前記第1外周面と対応する第1内周面の、前記中心軸線に対する傾斜角度が、前記周壁部の内周面において、前記第2外周面と対応する第2内周面の、前記中心軸線に対する傾斜角度より小さくなっている。
【0007】
本発明によれば、周壁部の外周面が、軸方向の一方側に向かうに従い径方向の外側に向けて延びる第1外周面と、縦断面視で軸方向に延びる、若しくは軸方向の一方側に向かうに従い径方向の内側に向けて延びる第2外周面と、を備えている。
このため、例えば、周壁部の内周面のうち、第1外周面と対応する第1内周面、および第2外周面と対応する第2内周面がそれぞれ、軸方向の一方側に向かうに従い径方向の内側に向けて延びている(傾斜角度が正)場合には、第1外周面が、軸方向の一方側に向かうに従い、この第1外周面と対応する第1内周面が縦断面視で延びている向きと逆向きに延び、第2外周面が、縦断面視で軸方向に延びている、若しくは軸方向の一方側に向かうに従い、この第2外周面と対応する第2内周面が縦断面視で延びている向きと同じ向きに延びている。これにより、例えば、第1内周面、および第2内周面それぞれにおける中心軸線に対する傾斜角度が、互いに同じになっている場合には、筒状の射出成形体において、第1外周面が位置する部分の肉厚が、第2外周面が位置する部分の肉厚より厚くなる。
しかしながら、中心軸線に対する第1内周面の傾斜角度が、中心軸線に対する第2内周面の傾斜角度より小さくなっているので、第1内周面が第2内周面と比べて軸方向に起立し、かつ第2内周面が第1内周面と比べて径方向に倒れ込むように設けられることとなり、筒状の射出成形体において、第1外周面が位置する部分の肉厚を抑えつつ、第2外周面が位置する部分の肉厚を確保しやすくなり、第1外周面および第2外周面が位置する各部分での肉厚の差を抑えることができる。
【0008】
一方、例えば、第1内周面、および第2内周面がそれぞれ、軸方向の一方側に向かうに従い径方向の外側に向けて延びている(傾斜角度が負)場合には、第1外周面が、軸方向の一方側に向かうに従い、この第1外周面と対応する第1内周面が縦断面視で延びている向きと同じ向きに延び、第2外周面が、縦断面視で軸方向に延びている、若しくは軸方向の一方側に向かうに従い、この第2外周面と対応する第2内周面が縦断面視で延びている向きと逆向きに延びている。これにより、例えば、第1内周面、および第2内周面それぞれにおける中心軸線に対する傾斜角度が、互いに同じになっている場合には、筒状の射出成形体において、第1外周面が位置する部分の肉厚が、第2外周面が位置する部分の肉厚より薄くなる。
しかしながら、中心軸線に対する第1内周面の傾斜角度が、中心軸線に対する第2内周面の傾斜角度より小さくなっている(絶対値としては大きくなっている)ので、第1内周面が第2内周面と比べて径方向に倒れ込み、かつ第2内周面が第1内周面と比べて軸方向に起立するように設けられることとなり、筒状の射出成形体において、第2外周面が位置する部分の肉厚を抑えつつ、第1外周面が位置する部分の肉厚を確保しやすくなり、第1外周面および第2外周面が位置する各部分での肉厚の差を抑えることができる。
【0009】
以上より、第1内周面、および第2内周面それぞれの前記傾斜角度が、正および負のいずれの場合であっても、射出成形時に、第1外周面を成形するキャビティ部分と、第2外周面を成形するキャビティ部分と、で、溶融樹脂の流動抵抗に差が生ずることが抑えられ、射出成形時に溶融樹脂をキャビティ内における全域にわたって円滑に行き渡らせることが可能になり、成形不良を発生しにくくすることができる。
【0010】
筒状の射出成形体が、周壁部における軸方向の一方側の開口部を閉塞した頂壁部、若しくは底壁部を有する場合に、周壁部の内周面が、軸方向の一方側に向かうに従い径方向の内側に向けて延びていると、周壁部の内周面に、成形金型の抜き勾配が設けられることとなり、頂壁部、若しくは底壁部を有する筒状の射出成形体の、成形金型に対する離型性を確保することができる。
【0011】
前記第1外周面および前記第2外周面が、前記中心軸線回りに沿って交互に設けられてもよい。
【0012】
この場合、第1外周面および第2外周面が、中心軸線回りに沿って交互に設けられているので、例えば装飾効果を確実に高めること等ができるとともに、射出成形時に溶融樹脂をキャビティ内における全域にわたって確実に行き渡らせることができる。
【0013】
前記周壁部における前記軸方向の一方側の開口部を閉塞した頂壁部、若しくは底壁部を有し、前記第1外周面および前記第2外周面は、前記中心軸線を径方向に挟んで互いに対向する位置に各別に設けられてもよい。
【0014】
この場合、第1外周面および第2外周面が、前記中心軸線を径方向に挟んで互いに対向する位置に各別に設けられていて、第1外周面が、前記中心軸線を径方向に挟んで互いに対向する位置に各別に設けられていないので、筒状の射出成形体を脱型する際に、周壁部の外周面、および頂壁部の上面、若しくは底壁部の下面を成形したキャビティを有する成形金型を、射出成形体に対して前記軸方向の一方側に引っ掛かり無く円滑に相対移動させることが可能になり、頂壁部、若しくは底壁部を有する筒状の射出成形体の、成形金型に対する離型性を確保することができる。
【0015】
前記周壁部における前記軸方向の一方側の開口部を閉塞した頂壁部、若しくは底壁部を有し、前記第2内周面の、前記中心軸線回りに沿う大きさの総和は、前記第1内周面の、前記中心軸線回りに沿う大きさの総和より大きくてもよい。
【0016】
この場合、例えば、第1内周面、および第2内周面がそれぞれ、軸方向の一方側に向かうに従い径方向の内側に向けて延びている(傾斜角度が正)場合、並びに、第1内周面、および第2内周面がそれぞれ、軸方向の一方側に向かうに従い径方向の外側に向けて延びている(傾斜角度が負)場合、いずれの場合においても、第1内周面、および第2内周面のうち、成形金型から離型させやすい第2内周面の、前記中心軸線回りに沿う大きさの総和が、第1内周面の、前記中心軸線回りに沿う大きさの総和より大きいので、頂壁部、若しくは底壁部を有する筒状の射出成形体の、成形金型に対する離型性を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、周壁部の外周面が、軸方向の一方側に向かうに従い径方向の外側に向けて延びる第1外周面と、縦断面視で軸方向に延びる、若しくは軸方向の一方側に向かうに従い径方向の内側に向けて延びる第2外周面と、を備えていても、成形不良の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る一実施形態として示した筒状の射出成形体の上面図である。
図2】本発明に係る一実施形態として示した、図1のII-II線矢視断面図である。
図3】本発明に係る変形例として示した、図1のII-II線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る筒状の射出成形体1は、図1および図2に示されるように、周壁部11、および周壁部11における一方側の開口部を閉塞した頂壁部12を有する有頂筒状に形成されている。
以下、周壁部11の中心軸線Oに沿う方向を軸方向といい、軸方向に沿って頂壁部12側を上側といい、周壁部11の開放端側を下側という。また、軸方向から見て、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0020】
射出成形時のゲート部分は、例えば頂壁部12の上面における径方向の中央部に位置している。
射出成形体1は、軸方向から見て、5つの角部分および5つの辺部分を有する5角形状を呈する。軸方向から見て、5つの角部分は、径方向の外側に向けて突の曲線状を呈する。なお、射出成形体1は、軸方向から見て、例えば円形状、若しくは三角形状等を呈してもよい。
【0021】
ここで、周壁部11の外周面は、軸方向の一方側に向かうに従い径方向の外側に向けて延びる第1外周面13と、軸方向の一方側に向かうに従い径方向の内側に向けて延びる第2外周面14と、を備えている。第1外周面13および第2外周面14は、周方向の位置を互いに異ならせて設けられている。第1外周面13および第2外周面14は、中心軸線Oを径方向に挟んで互いに対向する位置に各別に設けられている。
なお、第2外周面14は、中心軸線Oに沿う縦断面視で軸方向に真直ぐ、若しくは径方向に湾曲しながら軸方向に延びてもよい。また、第1外周面13を、中心軸線Oを径方向に挟んで互いに対向する位置に各別に設けてもよく、第2外周面14を、中心軸線Oを径方向に挟んで互いに対向する位置に各別に設けてもよい。
【0022】
図示の例では、第1外周面13は、前記角部分に位置し、上方に向かうに従い径方向の外側に向けて真直ぐ延びている。第2外周面14は、前記辺部分における周方向の中央部に位置し、上方に向かうに従い径方向の内側に向けて真直ぐ延びている。第1外周面13および第2外周面14は、周方向に交互に設けられている。
なお、例えば、第1外周面13を前記辺部分に位置させ、第2外周面14前記角部分に位置させてもよい。また、第1外周面13および第2外周面14は、縦断面視で径方向に湾曲してもよい。
【0023】
周壁部11の内周面は、上方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びている。周壁部11の内周面は、第1外周面13と対応する第1内周面15、および第2外周面14と対応する第2内周面16を含む、周方向の全長にわたって、上方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びている。
第2外周面14が、上方に向かうに従い、第2内周面16が縦断面視で延びている向きと同じ向きの径方向の内側に向けて延び、第1外周面13が、上方に向かうに従い、第1内周面15が縦断面視で延びている向きと逆向きの径方向の外側に向けて延びている。
【0024】
上方に向かうに従い、径方向の内側に向けて延びる向きの、中心軸線Oに対する傾斜角度を正(+)とし、上方に向かうに従い、径方向の外側に向けて延びる向きの、中心軸線Oに対する傾斜角度を負(-)としたときに、中心軸線Oに対する第1内周面15の傾斜角度θ1が、中心軸線Oに対する第2内周面16の傾斜角度θ2より小さくなっている。
図示の例では、これらの傾斜角度θ1、θ2は正(+)となっている。周壁部11の内周面の、中心軸線Oに対する傾斜角度は、-5°以上となっている。周壁部11の内周面の、中心軸線Oに対する傾斜角度が-5°より小さくなると、周壁部11の内周面を成形した成形金型から射出成形体1を離型させにくくなるおそれがある。
【0025】
周壁部11の肉厚は、軸方向の同じ位置において周方向の全長にわたって同等になっている。周壁部11における外周面および内周面はそれぞれ、周方向の全長にわたって段差なく連なっている。
第2内周面16の、周方向に沿う大きさの総和は、第1内周面15の、周方向に沿う大きさの総和より大きくなっている。図示の例では、1つの第2内周面16の、周方向に沿う大きさが、1つの第1内周面15の、周方向に沿う大きさより大きくなっている。
【0026】
以上説明したように、本実施形態による筒状の射出成形体1によれば、周壁部11の外周面が、上方に向かうに従い径方向の外側に向けて延びる第1外周面13と、上方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びる第2外周面14と、を備え、周壁部11の内周面のうち、第1外周面13と対応する第1内周面15、および第2外周面14と対応する第2内周面16がそれぞれ、上方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びている(傾斜角度が正)。
【0027】
このため、第1外周面13が、上方に向かうに従い、第1内周面15が縦断面視で延びている向きと逆向きに延び、第2外周面14が、上方に向かうに従い、第2内周面16が縦断面視で延びている向きと同じ向きに延びている。これにより、例えば、図2に二点鎖線で示されるように、第1内周面15、および第2内周面16それぞれにおける中心軸線Oに対する傾斜角度が、互いに同じになっている場合には、筒状の射出成形体1において、第1外周面13が位置する部分の肉厚が、第2外周面14が位置する部分の肉厚より厚くなる。
【0028】
しかしながら、中心軸線Oに対する第1内周面15の傾斜角度θ1が、中心軸線Oに対する第2内周面16の傾斜角度θ2より小さくなっているので、第1内周面15が第2内周面16と比べて軸方向に起立し、かつ第2内周面が第1内周面と比べて径方向に倒れ込むように設けられることとなり、筒状の射出成形体1において、第1外周面13が位置する部分の肉厚を抑えつつ、第2外周面14が位置する部分の肉厚を確保しやすくなり、第1外周面13および第2外周面14が位置する各部分での肉厚の差を抑えることができる。
【0029】
以上より、射出成形時に、第1外周面13を成形するキャビティ部分と、第2外周面14を成形するキャビティ部分と、で、溶融樹脂の流動抵抗に差が生ずることが抑えられ、射出成形時に溶融樹脂をキャビティ内における全域にわたって円滑に行き渡らせることが可能になり、成形不良を発生しにくくすることができる。
【0030】
第1外周面13および第2外周面14が、周方向に交互に設けられているので、例えば装飾効果を確実に高めること等ができるとともに、射出成形時に溶融樹脂をキャビティ内における全域にわたって確実に行き渡らせることができる。
周壁部11の内周面が、上方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びているので、周壁部11の内周面に、成形金型の抜き勾配が設けられることとなり、頂壁部12を有する筒状の射出成形体1の、成形金型に対する離型性を確保することができる。
【0031】
第1外周面13および第2外周面14が、中心軸線Oを径方向に挟んで互いに対向する位置に各別に設けられていて、第1外周面13が、中心軸線Oを径方向に挟んで互いに対向する位置に各別に設けられていないので、筒状の射出成形体1を脱型する際に、周壁部11の外周面、および頂壁部12の上面を成形したキャビティを有する成形金型を、射出成形体1に対して上方に引っ掛かり無く円滑に相対移動させることが可能になり、頂壁部12を有する筒状の射出成形体1の、成形金型に対する離型性を確保することができる。
【0032】
上方に向かうに従い径方向の内側に向けて延び、中心軸線Oに対する傾斜角度が正(+)となっている第1内周面15および第2内周面16のうち、傾斜角度が大きく、成形金型から離型させやすい第2内周面16の、周方向に沿う大きさの総和が、第1内周面15の、周方向に沿う大きさの総和より大きいので、頂壁部12を有する筒状の射出成形体1の、成形金型に対する離型性を確保することができる。
【0033】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0034】
図3に示されるように、第1内周面21、および第2内周面22は、上方に向かうに従い径方向の外側に向けて延びてもよい(傾斜角度が負)。
この場合、第1外周面13が、上方に向かうに従い、この第1外周面13と対応する第1内周面21が縦断面視で延びている向きと同じ向きに延び、第2外周面14が、上方に向かうに従い、この第2外周面14と対応する第2内周面22が縦断面視で延びている向きと逆向きに延びている。これにより、例えば、図3に二点鎖線で示されるように、第1内周面21、および第2内周面22それぞれにおける中心軸線に対する傾斜角度が、互いに同じになっている場合には、筒状の射出成形体2において、第1外周面13が位置する部分の肉厚が、第2外周面14が位置する部分の肉厚より薄くなる。
しかしながら、中心軸線Oに対する第1内周面21の傾斜角度θ3が、中心軸線Oに対する第2内周面22の傾斜角度θ4より小さくなっている(絶対値としては大きくなっている)ので、第1内周面21が第2内周面22と比べて径方向に倒れ込み、かつ第2内周面22が第1内周面21と比べて軸方向に起立するように設けられることとなり、筒状の射出成形体2において、第2外周面14が位置する部分の肉厚を抑えつつ、第1外周面13が位置する部分の肉厚を確保しやすくなり、第1外周面13および第2外周面14が位置する各部分での肉厚の差を抑えることができる。
【0035】
以上より、射出成形時に、第1外周面13を成形するキャビティ部分と、第2外周面14を成形するキャビティ部分と、で、溶融樹脂の流動抵抗に差が生ずることが抑えられ、射出成形時に溶融樹脂をキャビティ内における全域にわたって円滑に行き渡らせることが可能になり、成形不良を発生しにくくすることができる。
【0036】
この射出成形体2において、第2内周面22の、周方向に沿う大きさの総和を、第1内周面21の、周方向に沿う大きさの総和より大きくしてもよい。また、1つの第2内周面22の、周方向に沿う大きさを、1つの第1内周面21の、周方向に沿う大きさより大きくしてもよい。
この場合、上方に向かうに従い径方向の外側に向けて延び、中心軸線Oに対する傾斜角度が負(-)となっている第1内周面21および第2内周面22のうち、傾斜角度が大きく(絶対値としては小さい)、成形金型から離型させやすい第2内周面22の、周方向に沿う大きさの総和が、第1内周面21の、周方向に沿う大きさの総和より大きいので、頂壁部12を有する筒状の射出成形体2の、成形金型に対する離型性を確保することができる。
【0037】
射出成形体1、2は、両端が開口した筒状に形成されてもよいし、周壁部11および底壁部を有する有底筒状に形成されてもよい。
【0038】
周壁部11の内周面は、上方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びる第1部分(傾斜角度が正)、上方に向かうに従い径方向の外側に向けて延びる第2部分(傾斜角度が負)、および軸方向に延びる第3部分のうちの2種類以上を、周方向の位置を互いに異ならせて有していてもよい。
この構成において、第1外周面13および第2外周面14はそれぞれ、第1部分、第2部分、および第3部分のうちの2種類以上と径方向で対向してもよい。また、周壁部11の内周面は、第2部分を有する場合、第1部分を有していることが好ましい。この場合、射出成形体1の、成形金型に対する離型性を確保しやすくなる。
【0039】
周壁部11の内周面は、上方に向かうに従い、径方向の外側に向けて延びる第1内周面21と、縦断面視で軸方向に延びる、若しくは上方に向かうに従い、径方向の内側に向けて延びる第2内周面16と、を有してもよい。この構成において、第1内周面21の、中心軸線Oに対する傾斜角度θ3の絶対値を、第2内周面16の、中心軸線Oに対する傾斜角度θ2より大きくしてもよい。
【0040】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記実施形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1、2 筒状の射出成形体
11 周壁部
13 第1外周面
14 第2外周面
15、21 第1内周面
16、22 第2内周面
O 中心軸線
θ1、θ2、θ3、θ4 傾斜角度
図1
図2
図3