(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】腰壁用足場装置
(51)【国際特許分類】
E04G 3/18 20060101AFI20230908BHJP
【FI】
E04G3/18 C
(21)【出願番号】P 2020071928
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝也
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-046951(JP,A)
【文献】特開2003-081560(JP,A)
【文献】実開昭58-174557(JP,U)
【文献】実開平03-047400(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00-7/34
E04G 27/00
E04B 1/00
E04B 2/56-2/70
E04B 2/72-2/82
E04B 2/88-2/96
E04C 2/00-2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腰壁の骨格の一部を構成し、鉛直方向に沿って配置される一対の縦材と、
前記一対の縦材に対してそれぞれ収納可能に支持され、使用時にそれぞれ前記腰壁の屋内側に展開され足場板材を支持可能な一対の足場支持部材と、
を有する腰壁用足場装置。
【請求項2】
前記足場支持部材は、
前記縦材に対して当該足場支持部材を収納又は展開可能に支持する軸部と、
前記足場支持部材が前記腰壁の屋内側に展開された状態で水平状に配置され、足場板材を支持可能な支持部と、
前記足場支持部材が展開された状態で前記縦材に当接し、当該足場支持部材の展開された状態を維持する当接部と、
を含んで構成されている請求項1に記載の腰壁用足場装置。
【請求項3】
前記足場支持部材は、
前記縦材に対して前記足場支持部材が収納された状態で、当該縦材において前記腰壁の屋外側の端面に対して面一となる下地部をさらに含んで構成されている請求項1又は請求項2に記載の腰壁用足場装置。
【請求項4】
前記足場支持部材の自由端には、当該足場支持部材が展開された状態で上方へ向かって起立する起立片が設けられている請求項1~請求項3の何れか1項に記載の腰壁用足場装置。
【請求項5】
前記縦材は、
前記腰壁の屋外側に位置するウエブ部と、
前記ウエブ部と繋がり、互いに対向して配置された一対のフランジ部と、
を含んで構成され、
当該縦材に対して前記足場支持部材を収納又は展開可能に支持する軸部は、前記一対のフランジ部に対して架け渡され、当該軸部を中心に前記足場支持部材を回動可能とし、前記ウエブ部と前記一対のフランジ部との間で形成される空間部内に当該足場支持部材が収納可能とされる請求項1~請求項4の何れか1項に記載の腰壁用足場装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰壁用足場装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コ字状を成し、ベランダの立上がり壁部(以下、「腰壁」という)の上端部に着脱可能に締結固定される足場用取付金具に関する技術が開示されている。この先行技術では、足場を形成する階のベランダの腰壁の上端部に足場用取付金具を固定した状態で、当該足場用取付金具において、腰壁の外面側(屋外側)に鉛直方向に沿って配置された縦部材に設けられたクランプを介して、足場を構成する支柱自体を直接取付けることで、簡便に足場を形成するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術では、腰壁に対して屋外側に足場が設けられるため、狭小地においては、足場用取付金具(腰壁用足場装置)を使用できない可能性があり、この点において、さらなる改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、狭小地でも足場を設けることが可能な腰壁用足場装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る腰壁用足場装置は、腰壁の骨格の一部を構成し、鉛直方向に沿って配置される一対の縦材と、前記一対の縦材に対してそれぞれ収納可能に支持され、使用時にそれぞれ前記腰壁の屋内側に展開され足場板材を支持可能な一対の足場支持部材と、を有している。
【0007】
第1の態様に係る腰壁用足場装置では、一対の縦材と、一対の足場支持部材と、を備えており、一対の縦材は、腰壁の骨格の一部を構成し、鉛直方向に沿って配置されるようになっている。つまり、一対の縦材の屋内側及び屋外側に腰壁パネルを取り付けることで腰壁が形成されることとなる。
【0008】
一方、一対の足場支持部材は、当該一対の縦材に対してそれぞれ収納可能に支持されており、使用時にそれぞれ腰壁の屋内側に展開され、足場板材を支持可能としている。このように、本態様では、足場支持部が腰壁の屋内側に展開されるため、腰壁の屋外側に足場が仮設される場合と比較して、狭小地でも足場を設けることが可能となる。
【0009】
なお、ここでの「鉛直方向」について、必ずしも完全な鉛直方向に限るものではなく、「略鉛直方向」を含む概念である。
【0010】
第2の態様に係る腰壁用足場装置は、第1の態様に係る腰壁用足場装置において、前記足場支持部材は、前記縦材に対して当該足場支持部材を収納又は展開可能に支持する軸部と、前記足場支持部材が前記腰壁の屋内側に展開された状態で水平状に配置され、足場板材を支持可能な支持部と、前記足場支持部材が展開された状態で前記縦材に当接し、当該足場支持部材の展開された状態を維持する当接部と、を含んで構成されている。
【0011】
第2の態様に係る腰壁用足場装置では、足場支持部材は、軸部と、支持部と、当接部と、を含んで構成されており、当該軸部は、縦材に対して足場支持部材を収納又は展開可能に支持している。つまり、足場支持部材は、軸部を中心に回動可能とされることによって、縦材に対して収納可能とされ、また、腰壁に対して屋内側に展開可能とされる。
【0012】
また、当該支持部は、足場支持部材が腰壁の屋内側に展開された状態で水平状に配置されるようになっており、足場板材を支持可能としている。さらに、当該当接部は、足場支持部材が展開された状態で縦材に当接可能としており、当接部が縦材に当接した状態で、当該足場支持部材の展開された状態が維持される。つまり、足場支持部材は、水平状に配置された状態で維持されることとなる。
【0013】
第3の態様に係る腰壁用足場装置は、第1の態様又は第2の態様に係る腰壁用足場装置において、前記足場支持部材は、前記縦材に対して前記足場支持部材が収納された状態で、当該縦材において前記腰壁の屋外側の端面に対して面一となる下地部をさらに含んで構成されている。
【0014】
第3の態様に係る腰壁用足場装置では、足場支持部材は、下地部をさらに含んで構成されており、当該下地部は、縦材に対して足場支持部材が収納された状態で、当該縦材において腰壁の屋外側の端面に対して面一となるように設定されている。
【0015】
このように、下地部が縦材の屋外側の端面と面一となることによって、当該下地部を腰壁パネルの下地材の一部として活用することが可能となる。なお、ここでの「面一」について、下地部の表面の位置と縦材の屋外側の端面の位置とが必ずしも完全に一致する必要はなく、「略面一」を含む概念である。
【0016】
第4の態様に係る腰壁用足場装置は、第1の態様~第3の態様の何れか1の態様に係る腰壁用足場装置において、前記足場支持部材の自由端には、当該足場支持部材が展開された状態で上方へ向かって起立する起立片が設けられている。
【0017】
第4の態様に係る腰壁用足場装置では、足場支持部材の自由端には起立片が設けられており、当該起立片は、足場支持部材が展開された状態で上方側へ向かって起立している。このため、足場支持部材の支持部に足場板材を支持させた状態で、足場板材は縦材と起立片の間に配置される。これにより、足場板材は、縦材と起立片の間で腰壁用足場装置の奥行き方向に沿った水平移動が規制される。
【0018】
第5の態様に係る腰壁用足場装置は、第1の態様~第4の態様の何れか1の態様に係る腰壁用足場装置において、前記縦材は、前記腰壁の屋外側に位置するウエブ部と、前記ウエブ部と繋がり、互いに対向して配置された一対のフランジ部と、を含んで構成され、当該縦材に対して前記足場支持部材を収納又は展開可能に支持する軸部は、前記一対のフランジ部に対して架け渡され、当該軸部を中心に前記足場支持部材を回動可能とし、前記ウエブ部と前記一対のフランジ部との間で形成される空間部内に当該足場支持部材が収納可能とされる。
【0019】
第5の態様に係る腰壁用足場装置では、縦材は、ウエブ部と、一対のフランジ部と、を含んで構成されている。ウエブ部は、腰壁の屋外側に位置しており、一対のフランジ部は、当該ウエブ部と繋がり、互いに対向して配置されている。
【0020】
当該足場支持部材の一部を構成する軸部は、一対のフランジ部に対して架け渡されており、当該軸部を中心に足場支持部材を回動可能とし、ウエブ部と一対のフランジ部との間で形成される空間部内に当該足場支持部材を収納可能としている。この場合、縦材に対して足場支持部材が収納された状態で、当該縦材において腰壁の屋外側の端面に対して、当該足場支持部材の一部を構成する下地材を面一とすることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように第1の態様の腰壁用足場装置は、狭小地でも足場を設けることができる、という効果を有する。
【0022】
第2の態様の腰壁用足場装置は、足場支持部材が回動可能に支持されると共に、足場支持部材を水平状に維持することができる、という効果を有する。
【0023】
第3の態様の腰壁用足場装置は、足場支持部材を腰壁パネルの下地材の一部として活用することができる、という効果を有する。
【0024】
第4の態様の腰壁用足場装置は、足場板材が足場支持部材の支持部から落下しないように抑制することができる、という効果を有する。
【0025】
第5の態様の腰壁用足場装置は、縦材内に足場支持部材を収納することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態に係る腰壁用足場装置を屋内側から見た斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る腰壁用足場装置が用いられた腰壁が形成されたバルコニーを示す平面図である。
【
図3】
図2で示すA-A線に沿って切断したときの概略断面図である。
【
図4】
図1で示されるB-B線に沿って切断したときの断面図であり、本実施形態に係る腰壁用足場装置の足場支持部材が展開された状態が示されている。
【
図5】
図4に対応する、本実施形態に係る腰壁用足場装置の足場支持部材が収納された状態を示す断面図である。
【
図6】(A)、(B)は、本実施形態に係る腰壁用足場装置を用いた腰壁の施工方法を説明するための要部が拡大された要部拡大斜視図である。
【
図7】(A)、(B)は、本実施形態に係る腰壁用足場装置を用いた腰壁の施工方法を説明するための要部が拡大された要部拡大斜視図である。
【
図8】(A)、(B)は、本実施形態に係る腰壁用足場装置を用いた腰壁の施工方法を説明するための要部が拡大された要部拡大斜視図である。
【
図9】本実施形態に係る腰壁用足場装置の変形例であり、
図3に対応する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて、本実施の形態に係る腰壁用足場装置について説明する。
<腰壁用足場装置の構成>
【0028】
まず、本実施の形態に係る腰壁用足場装置の構成について説明する。
図1には、本実施の形態に係る腰壁用足場装置10を建物12の屋内側14から見た斜視図が示されている。また、
図2には、本実施の形態に係る腰壁用足場装置10が用いられた腰壁16が形成されたバルコニー18を示す平面図が示されており、
図3には、
図2で示すA-A線に沿って切断したときの概略断面図が示されている。
【0029】
図3に示されるように、当該腰壁用足場装置10は、バルコニー18の腰壁16の骨格を構成する腰壁用フレームを成している。つまり、腰壁16の骨格を構成する腰壁用フレームを本実施形態に係る腰壁用足場装置10として兼用されるようにしている。したがって、腰壁用足場装置10の外側(腰壁16の屋外側)20に腰壁外板(腰壁パネル)22を固定し、腰壁用足場装置10の内側(腰壁16の屋内側)14に腰壁内板(腰壁パネル)24を固定することによって、腰壁16が形成される。
【0030】
図1に示されるように、腰壁用足場装置10は、鉛直方向に沿って配置される一対の縦材26、28と、当該縦材26、28の下端に架け渡された下桟30と、当該縦材26、28の上端に架け渡された上桟32と、を含んで構成されている。また、縦材26、28の下桟30側には、当該下桟30と略平行に配置された板材34が縦材26と縦材28の間に架け渡されている。
【0031】
このように、縦材26、28と、上桟32と、下桟30との間で形成される空間11に縦材26と縦材28とを架け渡す板材34が設けられることによって、腰壁用足場装置10自体の剛性を向上させることができる。
【0032】
なお、本実施形態では、縦材26、28の下桟30側において、縦材26と縦材28の間に板材34が架け渡されているが、縦材26、28の高さによっては、図示はしないが、縦材26、28の上桟32側にも当該上桟32と略平行に配置された板材が縦材26と縦材28の間に架け渡されてもよい。さらに、板材は、縦材26と縦材28の間を斜めに架け渡されるようにしてもよい。
【0033】
一方、縦材26、28の下端部には、腰壁用足場装置10の内側14に側面視で略逆L字状を成す金属製のブラケット36が設けられている。このブラケット36は、
図3に示されるように、バルコニー18の骨格の一部を成し当該バルコニー18の自由端部に配設された床大梁38に対してボルト、溶接等により固定可能とされており、当該ブラケット36を介して、床大梁38に腰壁用足場装置10が固定されることとなる。
【0034】
(縦材)
ここで、縦材26、28についての説明を行う。なお、縦材26と縦材28とは略同じ構成となっているため、以下の説明では、両者を代表して縦材26についての説明を行う。
【0035】
図4には、
図1で示されるB-B線に沿って切断したときの断面図が示されており、
図5には、
図4に対応して当該足場支持部材42が収納された状態を示す断面図が示されている。
【0036】
本実施形態では、
図1、
図4に示されるように、腰壁用足場装置10の縦材26として、例えば、リップ溝形鋼が用いられている。当該縦材26は、当該縦材26の奥壁に相当し腰壁用足場装置10の外側20に配置されるウエブ部26Aと、当該ウエブ部26Aと繋がり互いに対向して配置された一対のフランジ部26B、26Cと、一対のフランジ部26B、26Cの先端からそれぞれ互いに近づく方向へ向かって延出された一対のリップ部26D、26Eと、を含んで構成されている。
【0037】
また、当該縦材26の高さ方向の略中央部には、一対のフランジ部26B、26Cにおいて、略水平方向に沿って軸部40が貫通しており、軸部40には、後述する金属製の足場支持部材42が当該軸部40を中心に回動可能に支持されている。なお、後述する足場支持部材42は、縦材26のリップ部26Dとリップ部26Eの間に設けられた隙間t内を通過可能な板厚とされている。
【0038】
以上のような構成により、
図5に示されるように、当該足場支持部材42は、縦材26におけるウエブ部26Aと一対のフランジ部26B、26Cとで囲まれる空間部26F内に収納可能とされる。そして、
図1、
図4に示されるように、足場支持部材42の使用時には、当該足場支持部材42は、腰壁16の屋内側14へ向かって縦材26の空間部26F内から突出(展開)可能とされる。
【0039】
(足場支持部材)
次に、足場支持部材42、44についての説明を行う。なお、足場支持部材42と足場支持部材44とは略同じ構成となっているため、以下の説明では、両者を代表して足場支持部材42についての説明を行う。
【0040】
図1、
図4に示されるように、足場支持部材42は、側面視で略三角形状を成し、当接面42Aと、支持面42Bと、下地面42Cと、を含んで構成されている。また、足場支持部材42には、軸受け孔42Dが形成されており、軸受け孔42Dには、軸部40が挿通されている。これにより、当該足場支持部材42は、軸受け孔42D及び軸部40を介して、当該軸部40を中心に回動可能とされる。
【0041】
ここで、当該当接面42Aは、足場支持部材42が縦材26の空間部26Fから展開された状態で略鉛直方向に沿って配置されるように形成されており、当該足場支持部材42が展開された状態で、当接面42Aが縦材26のウエブ部26Aに当接するように設定されている。
【0042】
また、当該支持面42Bは、足場支持部材42が展開された状態で略水平方向に沿って配置されるように形成されており、当接面42Aが当該ウエブ部26Aに当接した状態で、足場支持部材42は展開方向の回動移動は規制される。つまり、当接面42Aが縦材26のウエブ部26Aに当接した状態で、支持面42Bは略水平状態が維持されることとなる。
【0043】
一方、当該下地面42Cは、当接面42Aの先端と支持面42Bの先端を繋ぎ、足場支持部材42が展開された状態で、水平面に対して斜めに配置されるように形成されている。さらに、
図5に示されるように、下地面42Cは、足場支持部材42が縦材26の空間部26F内に収納された状態で、縦材26のリップ部26D、26Eの表面(縦材における屋外側の端面)と略面一となるように形成されている。
【0044】
ここからは、足場支持部材42及び足場支持部材44について説明する。
図1に示されるように、縦材26と縦材28とは略同じ構成となっているため、縦材28側にも縦材26と同様に足場支持部材44が設けられている。
【0045】
このため、縦材26側の足場支持部材42及び縦材28側の足場支持部材44をそれぞれ展開させ、足場支持部材42の支持面42B、足場支持部材44の支持面44Bをそれぞれ略水平に配置させた状態で、当該支持面42B、44B上に足場板材48を載置する。これにより、足場板材48は、足場支持部材42、44によって支持されることとなる。
【0046】
また、当該足場支持部材42、44がそれぞれ縦材26、28から展開された状態で、支持面42B、44Bの先端(足場支持部材42、44の自由端)からは、起立片42E、44Eがそれぞれ起立している。当該起立片42E、44Eは、当該支持面42B、44Bに対してそれぞれ上方へ向かって略垂直に屈曲して形成されている。
【0047】
また、起立片42E、44Eは、足場支持部材42の支持面42B及び足場支持部材44の支持面44Bに足場板材48を支持させた状態で、当該足場板材48が縦材26、28と起立片42E、44Eの間に配置されるように設定されている。
【0048】
つまり、足場支持部材42の支持面42B及び足場支持部材44の支持面44Bに足場板材48を支持させた状態で、当該足場板材48は、縦材26、28と起立片42E、44Eの間で腰壁用足場装置10の奥行き方向に沿った水平移動が規制されることとなる。
【0049】
一方、足場支持部材42は縦材26の空間部26F内に収納可能とされると共に、足場支持部材44は縦材28の空間部28内に収納可能とされる。
【0050】
ここで、起立片42Eは、足場支持部材42が縦材26の空間部26F内に収納された状態で、起立片42Eの先端42E1が縦材26のウエブ部26Aに当接するように設定されている。また、当該起立片42Eと同様に、起立片44Eもまた、足場支持部材44が縦材28の空間部28F内に収納された状態で、起立片44Eの先端44E1が縦材28のウエブ部28Aに当接するように設定されている。これにより、足場支持部材42、44は、腰壁用足場装置10の外側20への回動移動が規制されることとなる。
【0051】
このように、足場支持部材42の起立片42Eの先端42E1が縦材26のウエブ部26Aに当接し、当該足場支持部材42が腰壁用足場装置10の外側20への回動移動を規制された状態で、足場支持部材42の下地面42Cは、縦材26のリップ部26D、26Eの表面に対して略面一となる。
【0052】
また、足場支持部材42と同様に、足場支持部材44も起立片44Eの先端44E1が縦材28のウエブ部28Aに当接すると、足場支持部材44の下地面44Cが、縦材28のリップ部28D、28Eの表面に対して略面一となる。
【0053】
<腰壁用足場装置の作用及び効果>
次に、本実施の形態に係る腰壁用足場装置の作用及び効果について説明する。
【0054】
まず、本実施形態に係る腰壁用足場装置10を用いた腰壁16の施工方法について簡単に説明する。なお、
図6(A)、(B)~
図8(A)、(B)には、腰壁16の施工方法について説明するため、腰壁用足場装置10の縦材26、28(
図1参照)のうち、縦材26側を示す要部拡大斜視図が示されている。
【0055】
図1、
図6(A)、(B)に示されるように、当該腰壁用足場装置10の両側部を構成する縦材26、28の下端部に設けられたブラケット36をバルコニー18の床大梁38の上フランジ部38Aに重ね、ボルト、溶接等により固定する。これにより、当該ブラケット36を介して、腰壁用フレームを成す腰壁用足場装置10が床大梁38に固定される。
【0056】
ここで、腰壁用足場装置10を床大梁38に固定する段階では、
図6(A)に示されるように、縦材26側の足場支持部材42及び縦材28側の足場支持部材44は、縦材26、28内に収納されている。そして、
図6(B)に示されるように、腰壁用足場装置10が床大梁38に固定されると、軸部40を中心に足場支持部材42、44をそれぞれ回転させ、当該足場支持部材42、44をそれぞれ腰壁16の屋内側14へ向かって展開させる。
【0057】
このとき、足場支持部材42の当接面42Aが縦材26のウエブ部26Aに当接すると共に、足場支持部材44の当接面44Aが縦材28のウエブ部28Aに当接する。これにより、足場支持部材42の支持面42B及び足場支持部材44の支持面44Bは、略水平状に配置された状態が維持される。
【0058】
そして、
図7(A)に示されるように、足場支持部材42の支持面42B及び足場支持部材44の支持面44B上に足場板材48を載置することで、当該足場板材48を足場として使用可能となる。この足場板材48を使用(利用)して、
図7(B)に示されるように、腰壁用足場装置10の上桟32に笠木46を固定することができる。
【0059】
図8(A)に示されるように、腰壁用足場装置10の上桟32に笠木46を固定すると、足場板材48は不要となる。このため、足場支持部材42の支持面42B上及び足場支持部材44の支持面44B上から足場板材48を取り除く。その後、軸部40を中心に足場支持部材42、44をそれぞれ回転させ、足場支持部材42を縦材26の空間部26F内に収納すると共に、足場支持部材44を縦材28の空間部28内に収納する。
【0060】
ここで、足場支持部材42の起立片42Eの先端42E1が縦材26のウエブ部26Aに当接すると、足場支持部材42の下地面42Cが、縦材26のリップ部26D、26Eの表面に対して略面一となる。また、足場支持部材44の起立片44Eの先端44E1が縦材28のウエブ部28Aに当接すると、足場支持部材44の下地面44Cが、縦材28のリップ部28D、28Eの表面に対して略面一となる。
【0061】
これにより、足場支持部材42の下地面42C及び足場支持部材44の下地面44Cを腰壁内板24用の下地材の一部として活用することが可能となる。そして、
図8(B)に示されるように、当該足場支持部材42の下地面42C及び足場支持部材44の下地面44Cを含み、縦材26、28、上桟32、下桟30を下地材として、ビス等を介して腰壁内板24を腰壁用足場装置10に固定する。
【0062】
以上のようにして、本実施形態に係る腰壁用足場装置10を用いた腰壁16が形成される。
【0063】
ところで、本実施形態に係る腰壁用足場装置10が用いられた腰壁16は、
図3に示されるように、いわゆるハイウォールバルコニーに用いられ、一般的な高さ(約1400mm)の腰壁よりも腰壁16の高さが高くなるように形成されている。例えば、本実施形態では、腰壁16の高さが約1800mmとされている。このように、腰壁16の高さを高くすることによって、隣家又は道路からの視線を遮断することが可能となり、一般的な腰壁よりもプライベートの確保を向上させることができる。
【0064】
一般に、腰壁の上端には笠木が固定されているため、ハイウォールバルコニーに用いられる腰壁の場合、腰壁の上端に笠木を固定する際には足掛かり(足場)が必要となる。したがって、本実施形態では、
図3に示されるように、腰壁16の骨格を構成する腰壁用フレームを腰壁用足場装置10として兼用している。
【0065】
具体的には、
図1に示されるように、当該腰壁用足場装置10(腰壁用フレーム)には足場支持部材42、44が設けられ、当該足場支持部材42、44は、使用時に、縦材26、28から腰壁16の屋内側14へ向かってそれぞれ展開されるようになっている。つまり、本実施形態では、足場は腰壁16の屋内側14に設けられることとなる。
【0066】
このように、本実施形態では、足場支持部材42、44は腰壁16の屋内側14に設けられる(展開される)ため、図示はしないが、腰壁16の屋外側20に足場が仮設される場合と比較して、狭小地でも足場を設けることができる。
【0067】
すなわち、本実施形態では、
図1、
図7(B)に示されるように、当該足場支持部材42、44に足場板材48が載置(支持)された状態で、当該足場板材48を足場として、腰壁用足場装置10の上桟32に笠木46を固定することができる。
【0068】
また、本実施形態では、
図1、
図5に示されるように、足場支持部材42、44は、縦材26、28の空間部26F、28F内に収納可能とされるため、腰壁用足場装置10の上桟32に笠木46を固定した後、当該足場支持部材42、44を縦材26、28内に収納し、腰壁用フレーム(腰壁用足場装置10)の内側に腰壁内板24を固定することによって、腰壁16が形成される。
【0069】
なお、本実施形態では、足場は屋外側20に設けられないため、腰壁外板22は、予め腰壁用フレーム(腰壁用足場装置10)の外側に固定される。すなわち、バルコニー18の床大梁38に腰壁用足場装置10を固定する際には、腰壁外板22は腰壁用フレーム(腰壁用足場装置10)に固定されている。
【0070】
一方、本実施形態では、足場支持部材42、44は、軸部40と、支持面42B、44Bと、当接面42A、44Aと、を含んで構成されており、当該軸部40は、縦材26、28に対して、それぞれ足場支持部材42、44を収納又は展開可能に支持している。つまり、足場支持部材42、44は、軸部40を中心にそれぞれ回動可能とされることによって、縦材26、28に対してそれぞれ収納可能とされ、また、腰壁16に対して屋内側14にそれぞれ展開可能とされる。
【0071】
また、
図1、
図7(A)に示されるように、当該支持面42B、42Cは、足場支持部材42、44が腰壁16の屋内側14に展開された状態で水平状に配置されるようになっており、足場板材48を支持可能としている。そして、当該当接面42A、44Aは、足場支持部材42、44がそれぞれ展開された状態で縦材26、28にそれぞれ当接可能としている。このため、当該当接面42A、44Aが縦材26、28にそれぞれ当接した状態で、当該足場支持部材42、44の展開された状態をそれぞれ維持することができる。
【0072】
また、本実施形態では、足場支持部材42、44は、下地面42C、44Cをさらに含んでそれぞれ構成されている。そして、
図1、
図8(A)に示されるように、当該下地面42Cは、縦材26に対して足場支持部材42が収納された状態で、当該縦材26のリップ部26D、26Eの表面と略面一となるように設定され、当該下地面44Cは、縦材28に対して足場支持部材44が収納された状態で、当該縦材28のリップ部28D、28Eの表面と略面一となるように設定されている。
【0073】
このように、下地面42Cが縦材26のリップ部26D、26Eの表面、下地面44Cが縦材28のリップ部28D、28Eの表面とそれぞれ略面一となることによって、当該下地面42C、44Cを腰壁内板24用の下地材の一部として活用することが可能となる。
【0074】
さらに、本実施形態では、足場支持部材42、44の自由端にはそれぞれ起立片42E、44Eが設けられており、
図1、
図6(B)に示されるように、当該起立片42E、44Eは、足場支持部材42、44が展開された状態で上方側へ向かってそれぞれ起立している。
【0075】
このため、
図1、
図7(A)に示されるように、足場支持部材42、44の支持面42Bに足場板材48を支持させた状態で、足場板材48は縦材26、28と起立片42E、44Eの間に配置され、縦材26、28と起立片42E、44Eの間で腰壁用足場装置10の奥行き方向に沿った水平移動が規制される。これにより、足場板材48が足場支持部材42、44の支持面42Bから落下しないように抑制することができる。
【0076】
さらにまた、
図1に示されるように、本実施形態では、縦材26、28は、ウエブ部26A、28Aと、一対のフランジ部26B、26C、一対のフランジ部28B、28Cと、をそれぞれ含んで構成されている。ウエブ部26A、28Aは、腰壁16の屋外側20に位置しており、一対のフランジ部26B、26C、一対のフランジ部28B、28Cは、当該ウエブ部26A、28Aとそれぞれ繋がり、互いに対向して配置されている。
【0077】
足場支持部材42、44の一部を構成する軸部40は、一対のフランジ部26B、26C、一対のフランジ部28B、28Cに対してそれぞれ架け渡されており、当該軸部40を中心に足場支持部材42、44をそれぞれ回動可能として、ウエブ部26A、28Aと一対のフランジ部26B、26C、一対のフランジ部28B、28Cとの間で形成される空間部26F、28F内に当該足場支持部材42、44をそれぞれ収納可能としている。
【0078】
そして、
図1、
図8(A)に示されるように、縦材26、28に対して足場支持部材42、44がそれぞれ収納された状態で、当該縦材26、28において腰壁16の屋外側20の端面に対して、当該足場支持部材42、44の一部を構成する下地材が面一となる。
【0079】
なお、本実施形態では、
図3に示されるように、腰壁用足場装置10の外側(腰壁16の屋外側)20、腰壁用足場装置10の内側(腰壁16の屋内側)14には、腰壁パネルとしてそれぞれ板状の腰壁外板22、腰壁内板24が用いられているが、これに限るものではない。例えば、通気性を確保するため、
図9に示されるように、横桟パネル50が用いられてもよい。
【0080】
また、腰壁用足場装置10の上部側と下部側とで腰壁パネルの種類を変えてもよい。例えば、
図9に示されるように、腰壁用足場装置10の下部側には、腰壁外板22が設けられ、腰壁用足場装置10の上部側に横桟パネル50が設けられてもよい。
【0081】
さらに、本実施形態では、
図1に示されるように、縦材26内に足場支持部材42が収納可能とされ、縦材28内に足場支持部材44が収納可能とされているが、これに限るものではない。例えば、図示はしないが、縦材26と縦材28の間に足場支持部材42、44がそれぞれ収納可能とされてもよい。
【0082】
以上のように、ここでは、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0083】
10 腰壁用足場装置
12 建物
14 屋内側(腰壁の屋内側)
16 腰壁
18 バルコニー
26 縦材
26A ウエブ部
26B フランジ部
26C フランジ部
26D リップ部(腰壁の屋外側の端面)
26E リップ部(腰壁の屋外側の端面)
26F 空間部
28 縦材
28A ウエブ部
28B フランジ部
28C フランジ部
28D リップ部(腰壁の屋外側の端面)
28E リップ部(腰壁の屋外側の端面)
28F 空間部
40 軸部
42 足場支持部材
42A 当接面
42B 支持面
42C 下地面
42E 起立片
44 足場支持部材
44A 当接面
44B 支持面
44C 下地面
44E 起立片
48 足場板材
50 横桟パネル(腰壁)