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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 3/00 20060101AFI20230908BHJP
   B43K 8/00 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
B43K3/00 H
B43K3/00 J
B43K8/00 100
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020527636
(86)(22)【出願日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2019025624
(87)【国際公開番号】W WO2020004555
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2018125090
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】早川 尚利
(72)【発明者】
【氏名】飯島 達也
(72)【発明者】
【氏名】岩田 久嗣
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-082328(JP,A)
【文献】特表2002-540989(JP,A)
【文献】特開2011-178000(JP,A)
【文献】特表昭55-500698(JP,A)
【文献】米国特許第05368405(US,A)
【文献】特表2019-509911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 3/00
B43K 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ吸蔵体を収容した後軸に前軸を着脱自在に設け、前記前軸を前記後軸から取り外した状態で前記インキ吸蔵体を交換する又は前記インキ吸蔵体にインキを補充する筆記具であって、
前記前軸の後方部と、前記後軸の前方部とが、互いに着脱自在に嵌合するようになっており、
前記前軸の後方部及び前記後軸の前方部の一方が、
円筒状の小径基部と、
前記小径基部の外面において径方向に突設された外向圧接部と、
軸線方向に平行に延びると共に、少なくとも一部の軸線方向の位置が前記外向圧接部の少なくとも一部の軸線方向の位置と重なるパターンで、前記小径基部を径方向に貫くように貫設された少なくとも一つのスリットと、
を有しており、
前記前軸の後方部及び前記後軸の前方部の他方が、
前記小径基部より大径で前記小径基部が挿入される円筒状の大径基部と、
前記大径基部の内面に設けられた内向圧接部と、
を有しており、
前記前軸の前記後方部と前記後軸の前記前方部とが嵌合される際に、前記外向圧接部と前記内向圧接部とが互いに径方向に圧接されるようになっており、
前記小径基部は、前記外向圧接部から軸線方向に離間する外向係止部を有しており、
前記大径基部は、前記内向圧接部から軸線方向に離間する内向係止部を有しており、
前記前軸の前記後方部と前記後軸の前記前方部とが嵌合される際に、前記外向係止部と前記内向係止部とは、互いに軸線方向に係止されるようになっている
ことを特徴とする筆記具。
【請求項2】
インキ吸蔵体を収容した後軸に前軸を着脱自在に設け、前記前軸を前記後軸から取り外した状態で前記インキ吸蔵体を交換する又は前記インキ吸蔵体にインキを補充する筆記具であって、
前記前軸の後方部と、前記後軸の前方部とが、互いに着脱自在に嵌合するようになっており、
前記前軸の後方部及び前記後軸の前方部の一方が、
円筒状の小径基部と、
前記小径基部の外面において径方向に突設された外向圧接部と、
軸線方向に平行に延びると共に、少なくとも一部の軸線方向の位置が前記外向圧接部の少なくとも一部の軸線方向の位置と重なるパターンで、前記小径基部を径方向に貫くように貫設された少なくとも一つのスリットと、
を有しており、
前記前軸の後方部及び前記後軸の前方部の他方が、
前記小径基部より大径で前記小径基部が挿入される円筒状の大径基部と、
前記大径基部の内面に設けられた内向圧接部と、
を有しており、
前記前軸の前記後方部と前記後軸の前記前方部とが嵌合される際に、前記外向圧接部と前記内向圧接部とが互いに径方向に圧接されるようになっており、
前記前軸を前記後軸から取り外す際に、前記インキ吸蔵体は前記後軸から取り外されて前記前軸の内部に収容保持されるようになっている
ことを特徴とする筆記具。
【請求項3】
インキ吸蔵体を収容した後軸に前軸を着脱自在に設け、前記前軸を前記後軸から取り外した状態で前記インキ吸蔵体を交換する又は前記インキ吸蔵体にインキを補充する筆記具であって、
前記前軸の後方部と、前記後軸の前方部とが、互いに着脱自在に嵌合するようになっており、
前記前軸の後方部及び前記後軸の前方部の一方が、
円筒状の小径基部と、
前記小径基部の外面において径方向に突設された外向圧接部と、
軸線方向に平行に延びると共に、少なくとも一部の軸線方向の位置が前記外向圧接部の少なくとも一部の軸線方向の位置と重なるパターンで、前記小径基部を径方向に貫くように貫設された少なくとも一つのスリットと、
を有しており、
前記前軸の後方部及び前記後軸の前方部の他方が、
前記小径基部より大径で前記小径基部が挿入される円筒状の大径基部と、
前記大径基部の内面に設けられた内向圧接部と、
を有しており、
前記前軸の前記後方部と前記後軸の前記前方部とが嵌合される際に、前記外向圧接部と前記内向圧接部とが互いに径方向に圧接されるようになっており、
前記スリットは、前記小径基部の先端部側に開口しており、当該小径基部の先端部側から奥方に向かって先細状となっている
ことを特徴とする筆記具。
【請求項4】
インキ吸蔵体を収容した後軸に前軸を着脱自在に設け、前記前軸を前記後軸から取り外した状態で前記インキ吸蔵体を交換する又は前記インキ吸蔵体にインキを補充する筆記具であって、
前記前軸の後方部と、前記後軸の前方部とが、互いに着脱自在に嵌合するようになっており、
前記前軸の後方部及び前記後軸の前方部の一方が、
円筒状の小径基部と、
前記小径基部の外面において径方向に突設された外向圧接部と、
軸線方向に平行に延びると共に、少なくとも一部の軸線方向の位置が前記外向圧接部の少なくとも一部の軸線方向の位置と重なるパターンで、前記小径基部を径方向に貫くように貫設された少なくとも一つのスリットと、
を有しており、
前記前軸の後方部及び前記後軸の前方部の他方が、
前記小径基部より大径で前記小径基部が挿入される円筒状の大径基部と、
前記大径基部の内面に設けられた内向圧接部と、
を有しており、
前記前軸の前記後方部と前記後軸の前記前方部とが嵌合される際に、前記外向圧接部と前記内向圧接部とが互いに径方向に圧接されるようになっており、
前記大径基部の内面には、前記スリット内に挿入されるリブが設けられている
ことを特徴とする筆記具。
【請求項5】
前記外向圧接部は、前記スリットが貫設された部分を除いて周方向に延在しており、
前記内向圧接部は、周方向に延在して、前記外向圧接部と互いに径方向に圧接されるようになっており、
前記外向係止部は、前記スリットが貫設された部分を除いて周方向に延在しており、
前記内向係止部は、周方向に延在して、前記外向係止部と互いに軸線方向に係止されるようになっている
ことを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項6】
前記内向係止部は、前記大径基部の内面において径方向に凹設されており、
前記内向圧接部は、前記大径基部の内面に滑らかに連続すると共に前記大径基部の内面と同一の曲率を有する円筒面からなっている
ことを特徴とする請求項に記載の筆記具。
【請求項7】
前記外向圧接部は、前記スリットが貫設された部分を除いて、周方向に延在している
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の筆記具。
【請求項8】
前記外向圧接部は、前記小径基部の先端部から所定の距離だけ奥方に設けられており、前記前軸の前記後方部と前記後軸の前記前方部とが嵌合される際、前記小径基部の先端部において、当該小径基部の外面と前記大径基部の内面とは径方向に非接触である
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の筆記具。
【請求項9】
前記前軸の前記後方部と前記後軸の前記前方部とが嵌合される際に、前記外向圧接部と前記内向圧接部とは、互いに軸線方向に係止されるようになっている
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の筆記具。
【請求項10】
非筆記時に前記前軸を覆うキャップ
を更に備え、
前記キャップの内面の一部は、前記後軸の外面の一部の全周にわたって密接されるようになっている
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の筆記具。
【請求項11】
前記スリットは、周方向に略等間隔に3以上の奇数の本数が設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関する。詳細には、インキ吸蔵体を収容した後軸に前軸を着脱自在に設け、前記前軸を前記後軸から取り外した状態で前記インキ吸蔵体を交換する又は前記インキ吸蔵体にインキを補充する筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、本体筒に対して着脱筒が軸方向に嵌脱できるようになっており、該本体筒及び/又は該着脱筒の内部のインク収容体を着脱できるように構成された筆記具が開示されている。前記本体筒と前記着脱筒との内、その一方の筒には、周方向において部分的に、径方向へ突出する突部が複数設けられており、その他方の筒には、前記複数の突部に接触可能な凹凸の無い圧接面が設けられており、これら双方の筒を接続した際に該突部と該圧接面とが径方向に圧接し合うようになっている。当該筆記具によれば、本体筒に対する着脱筒の嵌脱が容易であり、本体筒と着脱筒とを螺合接続した態様のように本体筒と着脱筒とがきつく(硬く)締まり過ぎてしまうことがなく、ひいては、インク収容体の交換を容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-142559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された構成では、突部と圧接面との径方向の圧接のみによって本体筒と着脱筒とが接続(嵌合)される。このため、本体筒と着脱筒とが樹脂部品である場合には、樹脂部品のクリープによって嵌合力が所望のレベルより小さくなってしまって、本体筒から着脱筒が不所望に外れてしまうおそれがあり、また、逆に、樹脂部品同士の固着(いわゆるブロッキング)によって嵌合力が所望のレベルより大きくなってしまって、所望の力で本体筒から着脱筒を外すことが難しくなるおそれがある。すなわち、特許文献1に開示された構成では、本体筒と着脱筒とを着脱自在に接続(嵌合)させる際の適切な嵌合力の設定及びその維持が困難である。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、前軸(特許文献1の着脱筒に相当)と後軸(特許文献1の本体筒に相当)とを着脱自在に接続(嵌合)させる際の適切な嵌合力の設定及びその維持が比較的容易な筆記具を提供するものである。なお、本発明において、「前」とは、ペン先側を指し、「後」とは、その反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、インキ吸蔵体を収容した後軸に前軸を着脱自在に設け、前記前軸を前記後軸から取り外した状態で前記インキ吸蔵体を交換する又は前記インキ吸蔵体にインキを補充する筆記具であって、前記前軸の後方部と、前記後軸の前方部とが、互いに着脱自在に嵌合するようになっており、前記前軸の後方部及び前記後軸の前方部の一方が、円筒状の小径基部と、前記小径基部の外面において径方向に突設された外向圧接部と、軸線方向に平行に延びると共に、少なくとも一部の軸線方向の位置が前記外向圧接部の少なくとも一部の軸線方向の位置と重なるパターンで、前記小径基部を径方向に貫くように貫設された少なくとも一つのスリットと、を有しており、前記前軸の後方部及び前記後軸の前方部の他方が、前記小径基部より大径で前記小径基部が挿入される円筒状の大径基部と、前記大径基部の内面に設けられた内向圧接部と、を有しており、前記前軸の前記後方部と前記後軸の前記前方部とが嵌合される際に、前記外向圧接部と前記内向圧接部とが互いに径方向に圧接されるようになっていることを特徴とする筆記具である。
【0007】
本発明によれば、小径基部を径方向に貫く少なくとも一つのスリットが、軸線方向に平行に延びており、且つ、その少なくとも一部の軸線方向の位置が外向圧接部の少なくとも一部の軸線方向の位置と重なっている。従って、小径基部が大径基部内に挿入される時(圧入時)には、当該スリットの幅が小さくなるように小径基部が変形することで、挿入作業が円滑になされる一方で、挿入後(圧入後)には、当該スリットの幅が元に戻ろうとする復元力のため、外向圧接部と内向圧接部とが互いに径方向に十分な力で圧接される。これにより、前軸と後軸とを着脱自在に接続(嵌合)させる際の適切な嵌合力の設定及びその維持が、比較的容易である。
【0008】
好ましくは、前記外向圧接部は、前記スリットが貫設された部分を除いて、周方向に延在している。この場合、前軸と後軸の接続がより一層安定するため、良好な筆記感及び筆記性能が得られる。
【0009】
また、好ましくは、前記外向圧接部は、前記小径基部の先端部から所定の距離だけ奥方に設けられており、前記前軸の前記後方部と前記後軸の前記前方部とが嵌合される際、前記小径基部の先端部において、当該小径基部の外面と前記大径基部の内面とは径方向に非接触である。この場合、圧接部以外の部分について、高い寸法精度が不要となり、前軸と後軸とを着脱自在に接続させる際の適切な嵌合力の設定及びその維持が更に容易化される。また、部品(前軸及び後軸)の生産性も向上する。
【0010】
また、好ましくは、前記小径基部は、前記外向圧接部から軸線方向に離間する外向係止部を有しており、前記大径基部は、前記内向圧接部から軸線方向に離間する内向係止部を有しており、前記前軸の前記後方部と前記後軸の前記前方部とが嵌合される際に、前記外向係止部と前記内向係止部とは、互いに軸線方向に係止されるようになっている。この場合、前軸と後軸の軸線方向の係止機能が加わるため、前軸と後軸の接続がより一層安定して、より良好な筆記感及び筆記性能が得られる。
【0011】
また、この場合、更に好ましくは、前記外向圧接部は、前記スリットが貫設された部分を除いて周方向に延在しており、前記内向圧接部は、周方向に延在して、前記外向圧接部と互いに径方向に圧接されるようになっており、前記外向係止部は、前記スリットが貫設された部分を除いて周方向に延在しており、前記内向係止部は、周方向に延在して、前記外向係止部と互いに軸線方向に係止されるようになっている。この場合、前軸と後軸の接続が更に一層安定するため、更に良好な筆記感及び筆記性能が得られる。
【0012】
また、この場合、更に好ましくは、前記内向係止部は、前記大径基部の内面において径方向に凹設されており、前記内向圧接部は、前記大径基部の内面に滑らかに連続すると共に前記大径基部の内面と同一の曲率を有する円筒面からなっている。この場合、内向圧接部用の特別な加工が不要であるため、部品の生産性が向上する。
【0013】
あるいは、好ましくは、前記前軸の前記後方部と前記後軸の前記前方部とが嵌合される際に、前記外向圧接部と前記内向圧接部とは、互いに軸線方向に係止されるようになっている。この場合も、前軸と後軸の軸線方向の係止機能が加わるため、前軸と後軸の接続がより一層安定して、より良好な筆記感及び筆記性能が得られる。
【0014】
また、非筆記時に前記前軸を覆うキャップを更に備え、前記キャップの内面の一部は、前記後軸の外面の一部の全周にわたって密接されるようになっていることが好ましい。この場合、キャップを外す際に前軸が外れるということがない。これにより、前軸と後軸とを強固に嵌合する必要が無く、前軸と後軸との適切な嵌合力の設定がより一層容易となる。また、後軸の外面の形状ないし外径は一般的に安定しているため、キャップの内面と後軸の外面との嵌合において確実な気密性能が得られる。
【0015】
また、好ましくは、前記前軸を前記後軸から取り外す際に、前記インキ吸蔵体は前記後軸から取り外されて前記前軸の内部に収容保持されるようになっている。この場合、インキ吸蔵体を交換する際の作業性、又は、インキ吸蔵体にインキを補充する際の作業性が向上する。
【0016】
また、好ましくは、前記スリットは、前記小径基部の先端部側に開口しており、当該小径基部の先端部側から奥方に向かって先細状となっている。この場合、小径基部が大径基部内に挿入される時(圧入時)には、スリットの先端部側の比較的幅広な部分が活用される一方で、挿入後(圧入後)には、スリットの奥方の比較的幅狭な部分によって、屈曲に対する剛性が高くなる。また、このようなスリットの形状が採用される場合、前軸を抜型で製造することが容易であり、製造コストを抑えることができる。
【0017】
また、好ましくは、前記スリットは、周方向に略等間隔に3以上の奇数の本数が設けられている。この場合、各々のスリットの幅を狭くしても、小径基部が大径基部内に挿入される際の作業性を高く維持することができる。一方、各々のスリットの幅を狭くすることにより、屈曲に対する剛性が高くなる。
【0018】
また、好ましくは、前記大径基部の内面には、前記スリット内に挿入されるリブが設けられている。この場合、屈曲に対する剛性が高くなる。また、前軸と後軸との相対回転を防止する機能を付加することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の筆記具によれば、前軸と後軸とを着脱自在に接続(嵌合)させる際の適切な嵌合力の設定及びその維持が比較的容易である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態を示す縦断面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3A】本発明の第1乃至第6実施形態の保持部材の縦断面図である。
図3B図3AのA-A線断面図である。
図3C図3AのB-B線断面図である。
図4A】本発明の第1乃至第6実施形態のペン先の正面図である。
図4B図4Aのペン先の斜視図である。
図5図2の要部拡大縦断面図である。
図6A】本発明の第1実施形態の前軸の正面図である。
図6B】本発明の第1実施形態の後軸の縦断面図である。
図6C図6AのC-C線断面図である。
図7】本発明の第2の実施形態の要部拡大縦断面図である。
図8A】本発明の第2実施形態の前軸の正面図である。
図8B】本発明の第2実施形態の後軸の縦断面図である。
図8C図8AのD-D線断面図である。
図9A】本発明の第3実施形態の前軸の正面図である。
図9B】本発明の第3実施形態の後軸の縦断面図である。
図9C図9AのE-E線断面図である。
図10A】本発明の第4実施形態の前軸の正面図である。
図10B】本発明の第4実施形態の後軸の縦断面図である。
図10C図10AのF-F断面図である。
図11A】本発明の第5実施形態の要部拡大縦断面図である。
図11B図11AのH-H線断面図である。
図12A】本発明の第5実施形態の前軸の正面図である。
図12B】本発明の第5実施形態の後軸の縦断面図である。
図12C図12AのG-G断面図である。
図12D図12BのK-K断面図である。
図13A】本発明の第6実施形態の要部拡大縦断面図である。
図13B図13AのI-I線断面図である。
図14A】本発明の第6実施形態の前軸の正面図である。
図14B】本発明の第6実施形態の後軸の縦断面図である。
図14C図14AのJ-J断面図である。
図14D図14BのL-L断面図である。
図15A】本発明の第7実施形態の前軸の正面図である。
図15B】本発明の第7実施形態の後軸の縦断面図である。
図15C図15AのN-N線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の6つの実施の形態について説明する。
【0022】
<第1実施形態>
筆記具1は、主に、キャップ2と、ペン先3と、ペン先3を保持した保持部材4と、インキ吸蔵体7と、インキ吸蔵体7を内部に収容した前軸5と、後軸6と、からなっている。保持部材4は、前軸5の保持部材嵌合部58に圧入嵌合されている。筆記具1は、インキ吸蔵体7を収容した後軸6に前軸5を着脱自在に設け、前軸5を後軸6から取り外した状態でインキ吸蔵体7を交換する又はインキ吸蔵体7にインキを補充する筆記具である。
【0023】
・ペン先
ペン先3の一端部が、筆記部31として、保持部材4の前方開口部の前端縁部44から前方に突出されている。ペン先3の他端部(後部35)は、インキ吸蔵体7の前端部に、突き刺し状に接続されている。例えば、筆記部31は、チゼル形状に加工されている。もっとも、筆記部31は、チゼル形状に限られず、砲弾形状、長方形状、四角柱形状、板状形状等の目的に応じた他の形状に加工されてもよい。なお、本発明の筆記具の形態は、図示例に限られず、インキ吸蔵体7の両端に相異なる形態のペン先を装着させた両頭式筆記具であってもよい。
【0024】
ペン先3は、図2及び図4に示すように、先端に筆記部31を有する前部33と、保持部材4及び前軸5により外面を前後方向に挟持される円筒状の中央部34と、インキ吸蔵体7の前端部と突き刺し状に接続される円筒状の後部35と、を有している。ペン先3の前部33は、横断面略長方形状を有している。筆記時において、ペン先3の前部33は、横断面略長方形状の長辺側に撓み変形可能となっている(そのような可撓性を有している)。
【0025】
ペン先3は、連続気泡を有する合成樹脂の多孔質体からなる。もっとも、ペン先3は、インキが流通可能で可撓性を有するものであればよく、具体的には、繊維ペン先、フェルトペン先、毛筆ペン先、軸線方向の毛細管通路を有するプラスチックペン先、等が挙げられる。
【0026】
・インキ吸蔵体
インキ吸蔵体7は、インキを含浸可能な連続気孔を有する部材からなる。例えば、繊維束の熱融着加工体、繊維束の樹脂加工体、フェルトの樹脂加工体、フェルトのニードルパンチ加工体、多孔質体(例えば、スポンジ等の合成樹脂の連続気泡体)、等が挙げられる。また、インキ吸蔵体7は、その外周面に合成樹脂フィルム等よりなる外皮を有してもよい。
【0027】
前軸5を後軸6から取り外す際、インキ吸蔵体7は、前軸5の縦リブ57の後端から軸線方向後方に延びる保持リブ59に保持されたまま後軸6から取り外されて、前軸5の内部に収容保持される。これにより、インキ吸蔵体7を交換する際の作業性、又は、インキ吸蔵体7にインキを補充する際の作業性が向上する。なお、前軸5の保持リブ59は、前軸5の嵌合部51の内面上にまで延びていてもよい。
【0028】
・キャップ
非筆記時に前軸5を覆うキャップ2は、後端が開口され且つ前端が閉塞された、底壁と周壁とからなる円筒状の有底筒体である。キャップ2は、例えば、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン等)の射出成形により得られる。
【0029】
本実施形態のキャップ2は、後軸6と着脱自在に接続される。詳細には、キャップ2の内面に設けられた後軸嵌合部22が、後軸6の外面に設けられたキャップ嵌合部65に嵌合される。これと同時に、後軸嵌合部22の前方に設けられた環状シール部21が、キャップ嵌合部65の前方に設けられた気密部64に対して気密に嵌合される。すなわち、非筆記時において、キャップ2は前軸5を覆い、キャップ2の内面の一部(後軸嵌合部22)は後軸6の外面の一部(キャップ嵌合部65)に嵌合され、キャップ2の内面の一部(環状シール部21)が後軸6の外面の一部(気密部64)に全周にわたって密接される。
【0030】
ここで、特許文献1に図示されているように、突部が所定間隔置きに3つ設けられている場合は、着脱筒が嵌合された本体筒の横断面形状は三角形に近い形状となる。この場合には、キャップと本体筒の密接部との間で適切な気密性能が得られない可能性があり、ペン先乾燥による筆記不良を招くおそれがある。
【0031】
本実施形態では、このような問題を回避するべく、後述するように、前軸5の外向作用部(外向係止部53aと外向圧接部53b)と後軸6の内向作用部(内向係止部63aと内向圧接部63b)とが周方向において連続的に延在している。このため、前軸5と後軸6とを嵌合した状態において、後軸6の外面の横断面形状は、略真円である。これにより、キャップ2と後軸6との間で適切な気密性能を得ることができる。
【0032】
・前軸
前軸5は、両端部が開口された筒状体であり、例えば合成樹脂の射出成形により得られる。図2に示すように、前軸5の前端部内面には、保持部材4の後端部外面(第2のリブ43b:図3参照)が圧入嵌合される保持部材嵌合部58が形成されている。また、前軸5の保持部材嵌合部58の後方には、軸線方向に延びる複数本(ここでは8本)の縦リブ57が、周方向に等間隔に形成されている。保持部材4の第1の当接壁部42と、縦リブ57の前端側の第2の当接壁部56aとによって、ペン先3の中央部34が前後方向に挟持されている。これにより、保持部材4からのペン先3の抜け落ち乃至保持部材4(前軸5)へのペン先3の埋没を防止できる。また、ペン先3の保持部材4からの突出量を正確に規制することもできる。なお、縦リブ57の後端側の第3の当接壁部56bは、インキ吸蔵体7の前端部を前後方向に規制する。
【0033】
前軸5の後部は、嵌合部51となっており、当該嵌合部51は、後軸6の開口部の被嵌合部61に着脱自在に嵌合されている。図6Aに示すように、嵌合部51は、円筒状の小径基部52と、小径基部52の外面において径方向に突設された外向係止部53aと、小径基部52の外面において同様に径方向に突設されると共に外向係止部53aからは軸線方向に離間している外向圧接部53bと、軸線方向に平行に延びると共に小径基部52を径方向に貫くように貫設された一つのスリット54と、を有している。外向係止部53aは、周方向に(スリット54が設けられた部分を除いて環状に)延在しており、外向圧接部53bも、同様に周方向に(スリット54が設けられた部分を除いて環状に)延在している。スリット54は、その一部の軸線方向の位置が、外向係止部53aの軸線方向の位置及び外向圧接部53bの軸線方向の位置と重なる、というようなパターンで、形成されている(スリット54が、外向係止部53a及び外向圧接部53bに跨がるようなパターンで、形成されている)。
【0034】
このような構成により、小径基部52が大径基部62(図6B参照)内に挿入される時(圧入時)には、スリット54の幅が小さくなるように小径基部52が変形することで挿入作業が円滑になされる。一方、挿入後(圧入後)には、スリット54の幅が元に戻ろうとする復元力のため、外向圧接部53bと内向圧接部63b(図6B参照)とが互いに径方向に十分な力で圧接される。これにより、前軸5と後軸6とを着脱自在に接続(嵌合)させる際の適切な嵌合力の設定及びその維持が、比較的容易である。
【0035】
本実施形態では、外向圧接部53bは、外向係止部53aの後方(小径基部52の先端に近い方)に設けられている。また、前軸5は、後軸6の開口部が当接する段部55を有している。
【0036】
なお、前軸5は、その外面に、ペン先3の向きを識別するための方向識別部を有していてもよい。例えば、方向識別部は、軸線方向に延びる突起によって提供され得る。この場合、筆記する直前にペン先3の向きを目視によって確認する必要がなく、ペン先3を露出させた後、即座に筆記使用することができる。
【0037】
寸法の具体例を挙げれば、小径基部52の長さ(段部55から後方の長さ)は15mmであり、小径基部52の内径はφ7.2mmであり、小径基部52の外径はφ8.8mmである。スリット54の長さは14.5mmであり、スリット54の幅は均一で1mmである。外向係止部53aは、軸線方向に段部55から3.8mm~5.2mmの領域において周状(スリット54の部分を除いて環状)に、断面円弧状の隆起部(小径基部52からの隆起高さ0.15mm)として形成されている。外向圧接部53bは、軸線方向に段部55から11.3mm~12.7mmの領域において周状(スリット54の部分を除いて環状)に、断面円弧状の隆起部(小径基部52からの隆起高さ0.15mm)として形成されている。
【0038】
・後軸
前軸5の後端部に着脱自在に連結される後軸6は、前端が開口され且つ後端が閉塞された、底壁と周壁とからなる円筒状の有底筒体である。後軸6は、例えば、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン等)の射出成形により得られる。
【0039】
図6Bに示すように、被嵌合部61は、小径基部52より大径で小径基部52が挿入される円筒状の大径基部62と、大径基部62の内面において径方向に凹設された内向係止部63aと、大径基部62の内面に滑らかに連続すると共に大径基部62の内面と同一の曲率を有する円筒面からなる内向圧接部63bと、を有している。
【0040】
本実施形態では、内向圧接部63bは、内向係止部63aの後方に設けられている。
【0041】
外向圧接部53bと内向圧接部63b(図6B参照)とが互いに径方向に十分な力で圧接されることに加えて、外向係止部53aと内向係止部63a(図6B参照)とが互いに軸線方向に係止されることにより、前軸5と後軸6とが径方向及び軸線方向の両方について「がたつき」なく接続される。このため、書き味が良く安定した筆記が可能となる。
【0042】
また、本実施形態では、外向圧接部53bは、小径基部52の先端部から所定の距離だけ奥方(前方)に設けられている。これにより、前軸5と後軸6とが嵌合される際、小径基部52の先端部において、嵌合部51の外面(小径基部52の外面)と後軸6の先端内面(大径基部62の内面)とは径方向に非接触である。
【0043】
もし仮に、前軸5と後軸6とが嵌合される際に、小径基部52の先端部において嵌合部51の外面と後軸6の先端内面とが径方向に接触するならば、接続後の後軸6の外径(すなわち気密部64の外径)が過大となる可能性がある。このような状態でキャップ2が後軸6の外面に嵌合されると、キャップ2と後軸6との嵌合力が高く(きつく)なり過ぎるおそれがある。
【0044】
これに対して、本実施形態によれば、前軸5と後軸6とが嵌合される際に、小径基部52の先端部において嵌合部51の外面と後軸6の先端内面とが径方向に非接触であるから、嵌合部51は気密部64の外径寸法に影響を及ぼさない。これにより、外向圧接部53b(及び外向係止部53a)以外の部分について、小径基部52に高い寸法精度が不要となり、前軸5と後軸6とを着脱自在に接続させる際の適切な嵌合力の設定及びその維持が更に容易化されている。また部品(前軸5及び後軸6)の生産性も向上する。更に、後軸6の外面の形状ないし外径は一般的に安定しているため、キャップ2の内面と後軸6の外面との嵌合において確実な気密性能及び嵌合力が得られる。
【0045】
更に、本実施形態では、内向係止部63aは、外向係止部53aと係止可能な環状溝として形成されている一方、内向圧接部63bは、外向圧接部53bと接触可能な凹凸の無い圧接面(大径基部62の内面に滑らかに連続すると共に大径基部62の内面と同一の曲率を有する円筒面)として形成されている。これにより、前軸5と後軸6とが嵌合される際、後軸6の開口部と段部55が当接され、外向係止部53aと内向係止部63a(環状溝)とが軸線方向に係止され、外向圧接部53bと内向圧接部63b(圧接面)とが径方向に圧接される。これにより、前軸5と後軸6とが適切な係止位置にて嵌合されるため、前軸5と後軸6とを着脱自在に接続させる際の適切な嵌合力をより確実に得ることができる。また、前軸5と後軸6とが正常に接続できたことを、使用者に分かり易く認識させることができる。
【0046】
この点に関して、特許文献1に開示された構成では、本体筒と着脱筒との嵌合にクリック感を付与することが容易でない。すなわち、使用者に本体筒と着脱筒とが正常に接続できているという安心感を与えることができないという欠点がある。
【0047】
これに対して、本実施形態の筆記具1によれば、前軸5と後軸6との嵌合をクリック感のある嵌合とすることができる。このため、使用者に前軸5と後軸6とが正常に接続できているという安心感を与えることができる。
【0048】
また、外向係止部53aと内向係止部63aとが軸線方向に係止され、外向圧接部53bと内向圧接部63bとが径方向に圧接されるため、前軸5と後軸6とは軸線方向の2か所で互いに作用し合う。これにより、筆記時において前軸5と後軸6とが軸線方向及び径方向の両方について「がたつき」なく接続され、書き味が良く安定した筆記が可能となる。
【0049】
寸法の具体例を挙げれば、大径基部62の内径はφ8.9mmであり、大径基部62の外径はφ10.7mmである。内向係止部63aは、軸線方向に大径基部62の先端(前方端)から4.1mm~5.5mmの領域において周状に、断面台形状または断面円弧状の凹部(最大深さ0.15mm)として形成されている。キャップ嵌合部65は、軸線方向に大径基部62の先端から8.6mm~10.4mmの領域において周方向に離散的に略等間隔の4点(4箇所)で断面円弧状の隆起部(隆起高さ0.3mm)として形成されている。
【0050】
・保持部材
保持部材4は、両端部が開口された筒状体であり、例えば合成樹脂の射出成形により得られる。
【0051】
図3A乃至図3Cに示すように、保持部材4の後部(横断面円形状)の内面には、ペン先3の中央部34が圧入嵌合される軸線方向に延びる複数本(ここでは4本)の第1のリブ43aが形成されている。一方、保持部材4の後部(横断面円形状)の外面には、前軸5の保持部材嵌合部58に圧入嵌合される軸線方向に延びる複数本(ここでは6本)の第2のリブ43bが等間隔に形成されている。なお、第2のリブ43bと前軸5の保持部材嵌合部58とによって形成される連通孔は、空気流通孔として機能して、ペン先3からの円滑なインキ吐出を可能とする。
【0052】
また、図2をも参照して、保持部材4は、前方側に、ペン先3の前部33を包囲する横断面略長方形状の保持部41を有している。筆記部31は、保持部材4の保持部41の前端縁部44から前方に突出している。
【0053】
ペン先3の頂部32は、保持部材4の前端縁部44から前方に突出しているが、その突出量は、0.2mmより大きく6.0mmより小さいこと、好ましくは、1.0mmより大きく5.0mmより小さいことが有効である。このような好ましい範囲内において、突出量が小さいと剛性感のあるしっかりとした筆感が得られ、突出量が大きいと柔らかな筆感が得られる。
【0054】
保持部材4の前端縁部44には、面取り又はRが設けられている。特に、少なくともペン先3が接触する可能性があるペン先3側の縁には、面取り又Rが設けられることが好ましい。これにより、ペン先3が過度に撓んで保持部材4の前端縁部44に接触する場合においても、ペン先3の前部33に掛かる負荷を最小限に抑えることができ、ペン先3の折れや損傷をより確実に防ぐことができる。
【0055】
図2及び図3Aに示すように、保持部材4の前端縁部44は略直線状に形成されており、筆記部31の頂部32は略直線状に形成されており、保持部材4の前端縁部44の軸線方向に対する角度は、筆記部31の頂部32の軸線方向に対する角度と略同一となっている。これにより、ペン先3が過度に撓んだ場合に保持部材4の前端縁部44によってペン先3に掛かる負荷が、ペン先3の前部33に均一に掛かって、ペン先3の折れや損傷を確実に防ぐことができる。
【0056】
ここで、保持部材4の前端縁部44の軸線方向に対する角度とは、保持部材4の前端縁部44と軸線方向とが成す角度のうち、90度以下の角度を指し、筆記部31の頂部32の軸線方向に対する角度とは、頂部32と軸線方向とが成す角度のうち、90度以下の角度を指す。また、これら両角度が略同一であることは、言い換えれば、保持部材4の前端縁部44と頂部32とが略平行であることを表している。また、これら角度は、30度以上90度以下で設定され、好ましくは45度以上90度以下で設定される。
【0057】
図2に示すように、筆記部31が紙面に接触する短辺の延長線に沿う方向から筆記具全体を見たときに、保持部材4から露出したペン先3の形状は、略平行四辺形若しくは長方形である。これにより、筆記部31の形状及びその方向は、前端縁部44の形状によって把握され得る。このため、筆記する直前にペン先3の向きを直接目視して確認する必要がなく、ペン先3を露出させた後、即座に筆記使用することができる。
【0058】
なお、保持部材4の色は、ペン先3の色(すなわちインキ色)と異なることがより好ましい。これにより、前端縁部44の向きがより際立ち、筆記部31の形状及びその方向をより確認しやすくなる。なお、ペン先3自体を黒等の暗い色で着色し、保持部材4をペン先3とは異なる明るい色で着色した場合は、より一層前端縁部44の向きが際立ち、筆記部31の形状及びその方向をより確認しやすくなる。
【0059】
なお、本実施形態の前軸5と後軸6とを着脱自在に嵌合させる構造は、保持部材4と前軸5との嵌合構造に適用してもよい。これによれば、保持部材4と前軸5とが適切な嵌合力で着脱自在に嵌合され得るため、使用者に心地よい感覚を与えることができる。また、使用者に保持部材4と前軸5とが正常に接続できたことを分かり易く認識させることができるため、ペン先の交換作業をより容易に行うことができる。
【0060】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態の要部拡大縦断面図であり、図8Aは、本発明の第2実施形態の前軸の正面図であり、図8Bは、本発明の第2実施形態の後軸の縦断面図であり、図8Cは、図8AのD-D線断面図である。
【0061】
本発明の第2実施形態においては、前軸205の嵌合部251と後軸206の被嵌合部261とが、第1実施形態とは異なっている。第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態の筆記具1と略同様である。図7乃至図8Cにおいて、第1実施形態と同様の構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0062】
・前軸
前軸205も、両端部が開口された筒状体であり、例えば合成樹脂の射出成形により得られる。前軸205の後部が、嵌合部251となっており、当該嵌合部251は、後軸206の開口部の被嵌合部261に着脱自在に嵌合されている。図7及び図8Aに示すように、嵌合部251は、円筒状の小径基部252と、小径基部252の外面において径方向に突設された第1外向圧接部253aと、小径基部252の外面に滑らかに連続すると共に小径基部252の外面と同一の曲率を有する円筒面からなる第2外向圧接部253bと、軸線方向に平行に延びると共に小径基部252を径方向に貫くように貫設された一つのスリット254と、を有している。第1外向圧接部253aは、周方向に(スリット254が設けられた部分を除いて環状に)延在している。スリット254は、その一部の軸線方向の位置が、第1外向圧接部253aの軸線方向の位置と重なる、というようなパターンで、形成されている(スリット254が、第1外向圧接部253aに跨がるようなパターンで、形成されている)。
【0063】
このような構成により、小径基部252が大径基部262(図8B参照)内に挿入される時(圧入時)には、スリット254の幅が小さくなるように小径基部252が変形することで挿入作業が円滑になされる。一方、挿入後(圧入後)には、スリット254の幅が元に戻ろうとする復元力のため、第1外向圧接部253aと第1内向圧接部263a(図8B参照)とが互いに径方向に十分な力で圧接される。これにより、前軸205と後軸206とを着脱自在に接続(嵌合)させる際の適切な嵌合力の設定及びその維持が、比較的容易である。
【0064】
本実施形態では、第2外向圧接部253bが、第1外向圧接部253aの後方(小径基部252の先端に近い方)に設けられている。また、前軸205は、後軸206の開口部が当接する段部255を有している。
【0065】
寸法の具体例を挙げれば、小径基部252の長さ(段部255から後方の長さ)は15mmであり、小径基部252の内径はφ7.2mmであり、小径基部252の外径はφ8.8mmである。スリット254の長さは8mmであり、スリット254の幅は均一で1mmである。第1外向圧接部253aは、軸線方向に段部255から9.8mm~11.2mmの領域において周状(スリット254の部分を除いて環状)に、断面円弧状の隆起部(隆起高さ0.15mm)として形成されている。
【0066】
・後軸
前軸205の後端部に着脱自在に連結される後軸206も、前端が開口され且つ後端が閉塞された、底壁と周壁とからなる円筒状の有底筒体である。後軸206も、例えば、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン等)の射出成形により得られる。
【0067】
図8Bに示すように、被嵌合部261は、小径基部252より大径で小径基部252が挿入される円筒状(厳密には途中に内径が変化する段差が設けられている)の大径基部262と、大径基部262の内面において径方向に突設された第1内向圧接部263aと、大径基部262の内面において同様に径方向に突設された第2内向圧接部263bと、を有している。
【0068】
本実施形態では、第2内向圧接部263bは、第1内向圧接部263aの後方に設けられている。
【0069】
第1外向圧接部253aと第1内向圧接部263aとが互いに径方向に十分な力で圧接されることに加えて、第2外向圧接部253bと第2内向圧接部263bとも互いに径方向に圧接されるため、前軸205と後軸206とが径方向について「がたつき」なく接続される。また、本実施形態では、図7に示すように、第1外向圧接部253aと第1内向圧接部263aとが互いに軸線方向に係止される(外向係止部及び内向係止部として機能する)ようになっているため、前軸205と後軸206とが軸線方向についても「がたつき」なく接続される。このため、書き味が良く安定した筆記が可能となる。
【0070】
また、本実施形態でも、第2外向圧接部253bは、小径基部252の先端部から所定の距離だけ奥方(前方)に設けられている。これにより、前軸205と後軸206とが嵌合される際、小径基部252の先端部において、嵌合部251の外面(小径基部252の外面)と後軸206の先端内面(大径基部262の内面)とは径方向に非接触である。
【0071】
すなわち、本実施形態では、第1外向圧接部253a及び第2外向圧接部253b以外の部分について、小径基部252に高い寸法精度が不要である。このため、前軸205と後軸206とを着脱自在に接続させる際の適切な嵌合力の設定及びその維持が更に容易化されている。また部品(前軸205及び後軸206)の生産性も向上する。更に、後軸206の外面の形状ないし外径は一般的に安定しているため、キャップ2の内面と後軸206の外面との嵌合において確実な気密性能及び嵌合力が得られる。
【0072】
更に、本実施形態では、前軸205と後軸206とが嵌合される際、後軸206の開口部と段部255が当接され、第1外向圧接部253aと第1内向圧接部263aとが軸線方向に係止され且つ径方向に圧接され、第2外向圧接部253bと第2内向圧接部263bとも径方向に圧接される。これにより、前軸205と後軸206とが適切な係止位置にて嵌合されるため、前軸205と後軸206とを着脱自在に接続させる際の適切な嵌合力をより確実に得ることができる。また、前軸205と後軸206とが正常に接続できたことを、使用者に分かり易く認識させることができる。このため、使用者に前軸205と後軸206とが正常に接続できているという安心感を与えることができる。
【0073】
寸法の具体例を挙げれば、大径基部262の内径はφ9.2mmであり(厳密には先端側5.5mmの長さにおいてφ9.2mm、その奥方ではφ8.9mmである(段差がある))、大径基部262の外径はφ10.7mmである。第1内向圧接部263aは、軸線方向に大径基部262の先端(前方端)から3mm~4mmの領域において周状に、断面円弧状の隆起部(隆起高さ0.15mm)として形成されている。第2内向圧接部263bは、軸線方向に大径基部262の先端(前方端)から9.8mm~11.2mmの領域において周状に、断面円弧状の隆起部(隆起高さ0.15mm)として形成されている。キャップ嵌合部265は、軸線方向に大径基部262の先端から8.6mm~10.4mmの領域において周方向に離散的に略等間隔の4点(4箇所)で断面円弧状の隆起部(隆起高さ0.3mm)として形成されている。
【0074】
<第3実施形態>
図9Aは、本発明の第3実施形態の前軸の正面図であり、図9Bは、本発明の第3実施形態の後軸の縦断面図であり、図9Cは、図9AのE-E線断面図である。
【0075】
本発明の第3実施形態においては、スリット354の形状が、第1実施形態とは異なっている。具体的には、スリット354が、小径基部52の先端部側から奥方に向かって先細状となっている。第3実施形態のその他の構成は、第1実施形態の筆記具1と略同様である。図9A乃至図9Cにおいて、第1実施形態と同様の構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0076】
本実施形態によれば、小径基部52が大径基部62内に挿入される時(圧入時)には、スリット354の先端部側の比較的幅広な部分が活用される一方で、挿入後(圧入後)には、スリット354の奥方の比較的幅狭な部分によって、屈曲に対する剛性が高くなる。また、このようなスリット354の形状が採用される場合、前軸5を抜型で製造することが容易であり、製造コストを抑えることができる。
【0077】
寸法の具体例を挙げれば、スリット354の長さは14.5mmであり、スリット354の幅は先端部において1.5mmであり、奥方に向かってテーパ角度2°で先細状である。
【0078】
<第4実施形態>
図10Aは、本発明の第4実施形態の前軸の正面図であり、図10Bは、本発明の第4実施形態の後軸の縦断面図であり、図10Cは、図10AのF-F線断面図である。
【0079】
本発明の第4実施形態においては、スリット454の形状及び本数が、第1実施形態とは異なっている。具体的には、図10Cに示すように、3本のスリット454が周方向に略等間隔に設けられている一方で、各スリット454の幅が、第1実施形態のスリット54の幅よりも狭くなっている。第4実施形態のその他の構成は、第1実施形態の筆記具1と略同様である。図10A乃至図10Cにおいて、第1実施形態と同様の構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0080】
本実施形態によれば、各々のスリット454の幅を狭くしても、小径基部52の全体としての撓み変形の量が確保されるため、小径基部52が大径基部62内に挿入される際の作業性を高く維持することができる。一方、各々のスリット454の幅を狭くすることにより、屈曲に対する剛性が高くなる。
【0081】
寸法の具体例を挙げれば、各スリット454の長さは14.5mmであり、各スリット454の幅は均一で0.3mmである。
【0082】
スリットの本数は、3本に限定されず、3以上の奇数の本数であればよい。一方、偶数の本数のスリットを周方向に略等間隔に配置すると、対向し合うスリット2本と整列する方向の屈曲に対する剛性が不十分となるため、好ましくない。
【0083】
<第5実施形態>
図11Aは、本発明の第5実施形態の要部拡大縦断面図であり、図11Bは、図11AのH-H線断面図であり、図12Aは、本発明の第5実施形態の前軸の正面図であり、図12Bは、本発明の第5実施形態の後軸の縦断面図であり、図12Cは、図12AのG-G断面図であり、図12Dは、図12BのK-K断面図である。
【0084】
本発明の第5実施形態においては、スリット554の形状が、第1実施形態とは異なっている。具体的には、スリット554は、小径基部52の先端部側から外向圧接部53bの後方端まで先細状となっており、外向圧接部53bの後方端より奥方(前方)では均一の幅となっている。また、大径基部62の内面に、後軸6のスリット554内に挿入されるリブ569が設けられている。リブ569は、内向係止部63aに跨がるように、内向係止部63aよりも僅かに前方の位置から後方へと軸線方向に延びている。第5実施形態のその他の構成は、第1実施形態の筆記具1と略同様である。図11A乃至図12Dにおいて、第1実施形態と同様の構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0085】
本実施形態によれば、小径基部52が大径基部62(図12B参照)内に挿入される時(圧入時)には、スリット554の幅が小さくなるように小径基部52が変形することで挿入作業が円滑になされる。そして、挿入作業の途中から、スリット554内にリブ569が挿入されることにより、屈曲に対する剛性を顕著に高めることができる。この時、スリット554の先端部がテーパ状である(テーパ状である代わりに面取りやR等が施されていてもよい)ため、リブ569の挿入が円滑である。そして、挿入後(圧入後)には、外向圧接部53bと内向圧接部63bとが互いに径方向に十分な力で圧接されるため、前軸5と後軸6とを着脱自在に接続(嵌合)させる際の適切な嵌合力の設定及びその維持が、比較的容易である。
【0086】
また、本実施形態によれば、スリット554内にリブ569が挿入されることにより、前軸5と後軸6との相対回転を防止する機能が付加される。
【0087】
寸法の具体例を挙げれば、スリット554の長さは14.5mmであり、スリット554の幅は先端部において5mmであり、テーパ部分のテーパ角度は90°であり、均一幅部分の幅は1mmである。また、リブ569の幅は均一で1mmであり、リブ569の隆起高さは均一で0.7mmであり、リブ569の前方端の位置は大径基部62の前方端の位置から3mmだけ後方である。
【0088】
<第6実施形態>
図13Aは、本発明の第6実施形態の要部拡大縦断面図であり、図13Bは、図13AのI-I線断面図であり、図14Aは、本発明の第6実施形態の前軸の正面図であり、図14Bは、本発明の第6実施形態の後軸の縦断面図であり、図14Cは、図14AのJ-J断面図であり、図14Dは、図14BのL-L断面図である。
【0089】
本発明の第6実施形態においては、スリット654及びリブ669が3本ずつ設けられている点で、第5実施形態とは異なっている。具体的には、図14Cに示すように、3本のスリット654が周方向に略等間隔に設けられている一方、図14Dに示すように、3本のリブ669が同様に周方向に略等間隔に設けられている。第6実施形態のその他の構成は、第5実施形態の筆記具と略同様である。図13A乃至図14Dにおいて、第5実施形態と同様の構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0090】
本実施形態によっても、小径基部52が大径基部62(図14B参照)内に挿入される時(圧入時)には、各スリット654の幅が小さくなるように小径基部52が変形することで挿入作業が円滑になされる。そして、挿入作業の途中から、各スリット654内に対応するリブ669が挿入されることにより、屈曲に対する剛性を顕著に高めることができる。この時、スリット654の先端部がテーパ状である(テーパ状である代わりに面取りやR等が施されていてもよい)ため、リブ669の挿入が円滑である。そして、挿入後(圧入後)には、外向圧接部53bと内向圧接部63bとが互いに径方向に十分な力で圧接されるため、前軸5と後軸6とを着脱自在に接続(嵌合)させる際の適切な嵌合力の設定及びその維持が、比較的容易である。
【0091】
また、本実施形態によっても、スリット654内にリブ669が挿入されることにより、前軸5と後軸6との相対回転を防止する機能が付加される。
【0092】
寸法の具体例を挙げれば、各スリット654の長さは14.5mmであり、各スリット654の幅は先端部において5mmであり、テーパ部分のテーパ角度は90°であり、均一幅部分の幅は1mmである。また、各リブ669の幅は均一で0.8mmであり、各リブ669の隆起高さは均一で0.7mmであり、各リブ669の前方端の位置は大径基部62の前方端の位置から3mmだけ後方である。
【0093】
<第7実施形態>
図15Aは、本発明の第7実施形態の前軸の正面図であり、図15Bは、本発明の第7実施形態の後軸の縦断面図であり、図15Cは、図15AのN-N線断面図である。
【0094】
本発明の第7実施形態においては、外向係止部753aは、軸線方向に段部55から3.8mm~5.2mmの領域において、スリット54と重ならないように周方向に離散的に略等間隔の8点(8箇所)で、略ドーム状の隆起部(小径基部52からの隆起高さ0.15mm)として形成されている。この態様でも、スリット54の一部の軸線方向の位置が、外向圧接部753bの軸線方向の位置と重なっている。外向圧接部753bは、軸線方向に段部55から11.3mm~12.7mmの領域において、やはりスリット54と重ならないように周方向に離散的に略等間隔の8点(8箇所)で、略ドーム状の隆起部(小径基部52からの隆起高さ0.15mm)として形成されている。第7実施形態のその他の構成は、第1実施形態の筆記具1と略同様である。図15A乃至図15Cにおいて、第1実施形態と同様の構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0095】
本実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、前軸5と後軸6とが嵌合される際、後軸6の開口部と段部55が当接され、外向係止部753aと内向係止部63a(環状溝)とが軸線方向に係止され、外向圧接部753bと内向圧接部63b(圧接面)とが径方向に圧接される。これにより、前軸5と後軸6とが適切な係止位置にて嵌合されるため、前軸5と後軸6とを着脱自在に接続させる際の適切な嵌合力をより確実に得ることができる。また、前軸5と後軸6とが正常に接続できたことを、使用者に分かり易く認識させることができる。
【0096】
また、本実施形態に対しても、第3実施形態乃至第6実施形態の各々において説明した変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0097】
1 筆記具
2 キャップ
21 環状シール部
22 後軸嵌合部
3 ペン先
31 筆記部
32 頂部
33 前部
34 中央部
35 後部
4 保持部材
41 保持部
42 第1の当接壁部
43a 第1のリブ
43b 第2のリブ
44 前端縁部
5 前軸
51 嵌合部
52 小径基部
53a 外向係止部
53b 外向圧接部
54 スリット
55 段部
56a 第2の当接壁部
56b 第3の当接壁部
57 縦リブ
58 保持部材嵌合部
59 保持リブ
6 後軸
61 被嵌合部
62 大径基部
63a 内向係止部
63b 内向圧接部
64 気密部
65 キャップ嵌合部
7 インキ吸蔵体
205 前軸
206 後軸
251 嵌合部
252 小径基部
253a 第1外向圧接部
253b 第2外向圧接部
254 スリット
255 段部
261 被嵌合部
262 大径基部
263a 第1内向圧接部
263b 第2内向圧接部
265 キャップ嵌合部
354 スリット
454 スリット
554 スリット
569 リブ
654 スリット
669 リブ
753a 外向係止部
753b 外向圧接部
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図15C