(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン及びそれを組み込んだ医療用装置
(51)【国際特許分類】
C08G 18/61 20060101AFI20230908BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20230908BHJP
A61L 29/06 20060101ALI20230908BHJP
A61L 29/18 20060101ALI20230908BHJP
A61L 29/08 20060101ALI20230908BHJP
A61L 29/12 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
C08G18/61
C08G18/44
A61L29/06
A61L29/18
A61L29/08 100
A61L29/12
(21)【出願番号】P 2020545053
(86)(22)【出願日】2018-11-17
(86)【国際出願番号】 US2018061708
(87)【国際公開番号】W WO2019099964
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-11-15
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519140888
【氏名又は名称】パイパー・アクセス、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ・アレン・ミューズ
(72)【発明者】
【氏名】ナサニエル・ジェー・フレディン
(72)【発明者】
【氏名】スリラム・ヴェンカタラマニ
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-500912(JP,A)
【文献】特開2008-101194(JP,A)
【文献】特開2016-199702(JP,A)
【文献】特表2009-531474(JP,A)
【文献】Crosslinked waterborne polyurethane with high waterproof performance,Polym. Chem., 2016, 7, 3913
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/61
C08G 18/44
A61L 29/06
A61L 29/18
A61L 29/08
A61L 29/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応物質から形成された耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンであって、
前記反応物質が、
式(I):
【化1】
(式中、Rは、直鎖又は分枝鎖、置換又は非置換、C
1~C
24
のアルキレン基から選択され、Aは、水素(H)又はR’OHから選択され、nは2~30の整数であ
り、R’は、直鎖又は分枝鎖、置換又は非置換、C
1
~C
24
のアルキレン基から選択され、Rと同じである又は異なる)による構造を有するポリカーボネートポリオールと、
式(IV):
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、独立して、直鎖C
1~C
6アルキル基又は水素基から選択され、R
3及びR
5は、独立して、C
1~C
12
のアルキレン基から選択され、R
4及びR
6は、独立して、C
1~C
8
のアルキレン基から選択され、mは2~30の整数である)による構造を有するポリシロキサンと、
イソシアネートと、
鎖延長剤と、を含み、
前記シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、
硬性セグメントと、
5~15重量%の量のポリシロキサンを含む軟性セグメントと、を含み、かつ
1.01~1.06のイソシアネート指数を有する、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項2】
前記ポリシロキサンが、約925~約1025g/molの数平均分子量(M
n)を有する、請求項1に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項3】
前記軟性セグメントが、9~11重量%の量の前記ポリシロキサンを含む、請求項2に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項4】
前記イソシアネート指数が1.03~1.06である、請求項3に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項5】
前記ポリシロキサンが、式(V):
【化3】
(式中、mは2~30の整数である)による構造を有する
カルビノール変性ポリジメチルシロキサンである、請求項1に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項6】
前記ポリシロキサンが、約925~約1025g/molの数平均分子量(M
n)を有する、請求項5に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項7】
前記ポリカーボネートポリオールが、約1840~約2200g/molの数平均分子量(M
n)を有する、請求項6に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項8】
前記イソシアネート指数が1.03~1.06の範囲内である、請求項7に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項9】
前記ポリカーボネートポリオールが、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールを含む、請求項8に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項10】
前記イソシアネートが芳香族である、請求項8に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項11】
前記イソシアネートが、メチレンジフェニルジイソシアネートを含む、請求項10に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項12】
前記鎖延長剤が1,4-ブタンジオールを含む、請求項10に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項13】
前記硬性セグメントが40~50重量%の量で存在し、前記軟性セグメントが50~60重量%の量で存在する、請求項1に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項14】
前記シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、約96~約100のショアAデュロメータ硬さの値を有する、請求項13に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項15】
前記シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、50,000~300,000の重量平均分子量(Mw)を有する、請求項1に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項16】
R
3及びR
5が、独立して、C
1~C
8
のアルキレン基から選択される、請求項1に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項17】
R
4及びR
6が、独立して、C
1~C
4
のアルキレン基から選択される、請求項16に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項18】
R
4及びR
6が、独立して、C
1~C
4
のアルキレン基から選択される、請求項1に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項19】
前記ポリシロキサンが、300~3000の数平均分子量(M
n)を有する、請求項1に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項20】
前記イソシアネートが、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、ビトリレンジイソシアネート、メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート、パラ-フェニレンジイソシアネート、トランス-シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、1,6-ジイソシアネートヘキサン、1,5-ナフタレンジイソシアネート、パラ-テトラメチルキシレンジイソシアネート、メタ-テトラメチルキシレンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びこれらの組み合わせからなる群から選択される要素である、請求項1に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項21】
前記鎖延長剤が、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、パラ-キシレングリコール、1,3-ビス(4-ヒドロキシブチル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(6-ヒドロキシエトキシプロピル)テトラメチルジシロキサン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される要素である、請求項1に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項22】
放射線不透過性付与剤、潤滑剤、触媒、酸化防止剤、ラジカル阻害剤、着色剤、充填剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤を更に含む、請求項1に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項23】
前記ポリシロキサン及び前記イソシアネートを含む第1の混合物を形成する工程と、
前記第1の混合物を第1の期間にわたって混合する工程と、
前記第1の期間の完了後に、前記第1の混合物及び前記ポリカーボネートポリオールを含む第2の混合物を形成する工程と、
前記第2の混合物を第2の期間にわたって混合する工程と、
を含むプロセスにより形成された、請求項1に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項24】
前記プロセスが、
前記第2の期間の完了後に、前記第2の混合物及び前記鎖延長剤を含む第3の混合物を形成する工程と、
前記第3の混合物を第3の期間にわたって混合する工程と、
を更に含む、請求項23に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項25】
前記第3の期間は、前記第3の混合物の温度が
200~230°Fの範囲まで上昇するときに終了する、請求項24に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項26】
第2の混合物を前記形成することが、前記ポリカーボネートポリオール及び前記鎖延長剤の両方を前記第1の混合物に添加することを含む、請求項23に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項27】
前記第2の期間は、前記第2の混合物の温度が
200~230°Fの範囲まで上昇するときに終了する、請求項
26に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項28】
前記第1の期間が約2~約30分間である、請求項23に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項29】
前記第2の期間が約2~約30分間である、請求項
28に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項30】
前記第2の期間が約2~約15分間である、請求項
28に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
【請求項31】
請求項1~
30のいずれか一項に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含む少なくとも1つの構成要素を備える医療用装置。
【請求項32】
前記医療用装置がカテーテルを備える、請求項
31に記載の医療用装置。
【請求項33】
前記医療用装置が、末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)装置を備える、請求項
31に記載の医療用装置。
【請求項34】
前記PICC装置が、高圧注入可能な少なくとも1つの流体経路を備える、請求項
33に記載の医療用装置。
【請求項35】
前記PICC装置の前記少なくとも1つの流体経路が、(1)前記少なくとも1つの流体経路を消毒するのに十分な期間、エタノールロックの実施にかけられ、かつ(2)前記エタノールロックの実施後に洗浄され、回収期間の間、回収が可能となった後で、高圧注入可能である、請求項
34に記載の医療用装置。
【請求項36】
前記回収期間が1時間以上である、請求項
35に記載の医療用装置。
【請求項37】
前記PICC装置が、破裂する及び漏れを生じることもなしで最大180psiの注入圧力を維持することができる、少なくとも1つの流体経路を備える、請求項
33に記載の医療用装置。
【請求項38】
前記少なくとも1つの流体経路が、延長チューブのルーメンと、接合ハブを通るチャネルと、カテーテルシャフトのルーメンとを含み、前記接合ハブが、前記延長チューブの遠位端に連結され、かつ前記カテーテルシャフトの近位端に連結されている、請求項
37に記載の医療用装置。
【請求項39】
前記接合ハブが、前記延長チューブ及び前記カテーテルシャフト上にオーバーモールドされる、請求項
38に記載の医療用装置。
【請求項40】
前記延長チューブ、前記接合ハブ及び前記カテーテルシャフトがそれぞれ、異なる耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含む、請求項
39に記載の医療用装置。
【請求項41】
前記接合ハブの前記耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、前記延長チューブ及び前記カテーテルシャフトの前記耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンよりも硬質である、請求項
40に記載の医療用装置。
【請求項42】
前記カテーテルシャフトの前記耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、放射線不透過性付与剤を配合されている、請求項
41に記載の医療用装置。
【請求項43】
前記カテーテルシャフトの前記耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンと、前記延長チューブの前記耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンとが、同一の化学的配合を有する、請求項
42に記載の医療用装置。
【請求項44】
請求項1~
30のいずれか一項に記載のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含む少なくとも1つの構成要素を備えるカテーテルと、
前記カテーテルを使用するための指示書であって、
アルコールを前記カテーテルのルーメン内に導入し、前記ルーメン中に前記アルコールを、臨床的に有効なロック期間にわたって維持し、
前記カテーテルの前記ルーメンから、前記アルコールを洗い流し、かつ
注入のために前記ルーメンを使用するに先だって、前記ルーメンから前記アルコールを洗い流した後の回収期間にわたって待つ、
ように指図する指示書と、を含むキット。
【請求項45】
前記回収期間が1時間である、請求項
44に記載のキット。
【請求項46】
前記回収期間が少なくとも1時間である、請求項
44に記載のキット。
【請求項47】
患者の脈管構造に導入されるように構成された前記カテーテルのシャフトの長さが、5フレンチの外径を画定する、請求項
44に記載のキット。
【請求項48】
使用するための前記指示書は、少なくとも2.3kgの体重の患者に対して前記カテーテルが使用可能であることを示す、請求項
47に記載のキット。
【請求項49】
前記シャフトが患者内にあるときに、前記シャフトの前記耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、前記シャフトをX線撮影法の下で見えるようにするのに十分な量で、放射線不透過性付与剤を配合されている、請求項
48に記載のキット。
【請求項50】
前記放射線不透過性付与剤が、硫酸バリウムを含む、請求項
49に記載のキット。
【請求項51】
前記注入が、高圧注入である、請求項
44に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年11月17日に出願され、「ALCOHOL-RESISTANT SILICONIZED POLYCARBONATE POLYURETHANES AND MEDICAL DEVICES INCORPORATING THE SAME」と題された米国特許仮出願第62/587,761号及び2018年1月12日に出願され、「ALCOHOL-RESISTANT SILICONIZED POLYCARBONATE POLYURETHANES AND MEDICAL DEVICES INCORPORATING THE SAME」と題された米国特許仮出願第62/617,051号の優先権を主張し、これらの文献の各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に記載される特定の実施形態は、一般にポリウレタンに関し、より具体的には、ポリカーボネートポリウレタンに関する。更なる実施形態は、一般に、例えば、上記のようなポリカーボネートポリウレタンを組み込んだカテーテルなどの、医療用装置に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリウレタンは、様々な用途に適合され得る汎用プラスチック材料である。例えば、ポリウレタンは、断熱パネル、ガスケット、ホース、タイヤ、ホイール、合成繊維、表面コーティング、家具、履物、接着剤、医療用装置、並びに様々な他の材料及び装置に使用されてきた。典型的には、ポリウレタンは、ポリオールとジイソシアネート又は他のポリイソシアネートとを、好適な触媒、添加剤などの存在下で反応させることによって形成される。使用することができる出発材料の種類によって、広範囲のポリウレタン材料を調製され、様々な具体的な用途の必要性を満たすことができる。
【0004】
ポリカーボネートポリウレタン又はポリカーボネートポリオールで形成されたポリウレタンは、様々な用途に使用することができる。しかしながら、既知のポリカーボネートポリウレタンは、ある種のカテーテルなどのある種の医療用装置に使用される場合には、様々な問題点を抱えているか、あるいは様々な制約を受けるものである。本明細書に開示される実施形態は、以下の説明から明らかとなるように、少なくともこの点に関して、従来のポリカーボネートポリウレタンの弱点を克服するものである。
【0005】
本明細書に記載の開示は、非限定的かつ非網羅的である例示的な実施形態を説明する。図面に描かれるかあるいはその他の方法で図中に示される、上記のような例示的な実施形態のうちの特定のものについて以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】少なくとも部分的には、本明細書に開示されるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの様々な実施形態のいずれかから好適に形成され得る、カテーテルシャフトの例示的な実施形態である。
【
図2A】
図1の表示線2A-2Aに沿って取られた
図1のカテーテルシャフトの断面図である。
【
図2B】
図1の表示線2B-2Bに沿って取られた
図1のカテーテルシャフトの断面図である。
【
図3】
図1、
図2A及び
図2Bに図示される形状のカテーテルシャフトであって、本開示による異なる実施形態のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンから押出成形されたカテーテルシャフトを含む、様々なカテーテルによって示される破裂圧力のプロットである。
【
図4A】
図1、
図2A及び
図2Bに図示される形状のカテーテルシャフトであって、本開示による異なる実施形態のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンから押出成形されたカテーテルシャフトから切り取られる、様々なセクションによって示される引張強度のプロットである。
【
図4B】
図1、
図2A及び
図2Bに図示される形状のカテーテルシャフトであって、本開示による異なる実施形態のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンから押出成形されたカテーテルシャフトから切り取られる、様々なセクションによって示される引張強度のプロットである。
【
図4C】
図1、
図2A及び
図2Bに図示される形状のカテーテルシャフトであって、本開示による異なる実施形態のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンから押出成形されたカテーテルシャフトから切り取られる、様々なセクションによって示される引張強度のプロットである。
【
図5A】
図1、
図2A及び
図2Bに図示される形状のカテーテルシャフトであって、本開示による異なる実施形態のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンから押出成形されたカテーテルシャフトから切り取られる、様々なセクションによって示される破断点又は極限伸びのプロットである。
【
図5B】
図1、
図2A及び
図2Bに図示される形状のカテーテルシャフトであって、本開示による異なる実施形態のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンから押出成形されたカテーテルシャフトから切り取られる、様々なセクションによって示される破断点又は極限伸びのプロットである。
【
図5C】
図1、
図2A及び
図2Bに図示される形状のカテーテルシャフトであって、本開示による異なる実施形態のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンから押出成形されたカテーテルシャフトから切り取られる、様々なセクションによって示される破断点又は極限伸びのプロットである。
【
図6】
図1、
図2A及び
図2Bに示される形状のカテーテルシャフトであって、ある脂肪族ポリエーテルポリウレタン、ある芳香族ポリカーボネートポリウレタン及び本開示による一実施形態のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンから押出成形されたカテーテルシャフトを含む、様々なカテーテルによって示される破裂圧力のプロットである。
【
図7】
図1、
図2A及び
図2Bに示される形状のカテーテルシャフトであって、2部分型又は2層型のオーバーモールド接合ハブを介して延長脚部に接続されたカテーテルシャフトを含む、末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)装置又はアセンブリの一実施形態の斜視図であり、カテーテルシャフト、延長脚部及び接合ハブの2つの層のうちの各々は、本開示による1つ以上の実施形態のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含むものである。
【
図8A】2部分型接合ハブを介して
図1のカテーテルシャフト及び延長脚部を接続するための、例示的なプロセスにおける連続的段階を示す概略平面図である。
【
図8B】2部分型接合ハブを介して
図1のカテーテルシャフト及び延長脚部を接続するための、例示的なプロセスにおける連続的段階を示す概略平面図である。
【
図8C】2部分型接合ハブを介して
図1のカテーテルシャフト及び延長脚部を接続するための、例示的なプロセスにおける連続的段階を示す概略平面図である。
【
図9】
図7に示されるものなどの40個のPICCカテーテルのグループが、10日間にわたる高圧注入イベント中に、経験する、平均動作圧力のプロットであって、各カテーテルがアルコールロックされ、各高圧注入前の1時間の回収期間の間、回収を可能にした場合の、平均動作圧力のプロットである。
【
図10】あらかじめ6ヶ月間の加速化劣化条件付けにかけられた、
図7に示されるものなどの40個のPICCカテーテルのグループが、10日間にわたる高圧注入イベント中に経験する、平均動作圧力のプロットであって、各カテーテルがアルコールロックされ、各高圧注入前の1時間の回収期間の間、回収を可能にした場合の、平均動作圧力のプロットである。
【
図11】15回別個の実験を実施した場合に、異なる3種類のカテーテルシャフトの外面上に血栓が形成される状況を比較するプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、一般に、医療用途において特に有用であり得る耐アルコール性ポリマーに関する。より具体的には、本開示は、耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン又はポリシロキサン成分を含むポリカーボネートポリウレタンに関し、これらのポリウレタンは、例えばカテーテルなどの医療用装置において使用されるのに有利となるように配合され得るものである。シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン、シリコーン含有若しくはシリコーン担持ポリカーボネートポリウレタン、ポリシロキサンポリカーボネートポリウレタン、又はポリウレタン-シロキサンコポリマーと称され得るが、このような用語の各々は、ポリシロキサン成分を含むポリカーボネートポリウレタンを特定することを意図している。特に、これらの用語は、ポリカーボネート成分及びポリシロキサン成分のそれぞれが、化学的に組み込まれている軟性セグメントを含むポリウレタンを指す。
【0008】
一部の実施形態では、例えば中心静脈カテーテル(CVC)又はより具体的には末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)などのカテーテルは、耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの1種以上の配合物から少なくとも部分的にそれぞれが形成される、1つ以上の構成要素を含む。例えば、一部の実施形態では、少なくとも1つのルーメンを画定するPICCシャフトは、シャフトのルーメンが、アルコールロック(エタノールロックとも呼ばれ得る)を通じて、消毒又は滅菌、洗浄、ないしはその他の方法で処理されるのを可能にする、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの配合物を含む。なお、アルコールロックにおいては、特定の処理又は目的(例えば、消毒及び/又は閉塞除去)を実現するために必要な処理又は曝露時間(例えば、少なくとも1時間)にわたって、アルコール(典型的にはエタノール)がルーメン内に保持される。様々な実施形態では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、回収期間(例えば、1時間以上)内で、アルコールロックから実質的に完全に回収することができるが、この回収期間は、アルコールロック及びその後に実施されるカテーテルの高圧注入を、例えば外来患者の臨床現場において可能にするのに十分な程度に短鋳物であり得る。様々な実施形態では、PICC装置は、アルコールロックの前後の両方(例えば、指定された回収期間後)で、高圧注入可能であり得る。更なる実施形態では、PICC装置は、小児科用PICCとして、あるいは非常に小柄な患者に対するものを含む、他のカテーテルとして使用する(例えば、最も軽量の場合には体重が2.3kgの新生児に対して使用する)のに好適であり得る。
【0009】
一部の実施形態では、PICC装置は、本開示によるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの第1の配合物を含むシャフトと、本開示によるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの第2の配合物を含む1つ以上の延長チューブと、本開示によるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの第3の配合物を含む接合ハブと、を含む。第1、第2及び第3の配合物のうちの1つ以上は、第1、第2及び第3配合物のうちの残りのもののうちの1つ以上と同じであっても異なっていてもよい。PICCは、通常の使用中(例えば、比較的低い注入圧力又は吸引圧力での使用、クランプを介して延長チューブを複数回開閉した後など)及び/又は、アルコールロック事象の前と後との両方での、高圧注入中、漏れ又は破裂が実質的に起こり得なくなっている。多くの他の又は更なる実施形態及び利点も開示される。
I.定義及び開示の約束事
【0010】
本明細書で使用するとき、「医療カテーテル」又は「カテーテル」はそれぞれ、可撓性シャフトを含む医療用装置を指す。その可撓性シャフトは、任意の好適な方法で、被験者及び/又は被験者の生体構造若しくはそのシステムの任意の好適な部分に挿入され得る。その挿入の目的は、例えば、流体、栄養素、薬剤、血液製品などの材料を導入することであったり、例えば、圧力、温度、流体、検体などについて、被験者を監視することであったり、例えば、1種以上の体液などの物質を除去することであったり、バルーン、ステント、移植片、又は他の装置を配備することであったり、あるいはこれらを任意の組み合わせで行うことであったりする。カテーテルは、延長チューブ、接合ハブ(例えば、シャフト及び/又は延長チューブにオーバーモールドされたハブ)、取付具、コネクタなどの、様々な付属部品を更に含んでもよい。カテーテルはまた、穴、分割部、テーパ構造、オーバーモールドされた先端部又はバンプなどを含む、様々な、先端及びシャフトの機能的形成部を有してもよい。
【0011】
本明細書で使用するとき、「血管アクセス装置」とは、静脈系又は一部の特定の場合では、中心静脈循環系などの患者の血管系へのアクセスを提供する装置を指す。このような装置には、中心静脈カテーテル末梢静脈(PIV)ラインなど末梢挿入静脈カテーテル、ミッドライン、ポート(例えば、埋め込み式デバイス)、透析カテーテル、及びアフェレーシスカテーテルが挙げられるが、これらに限定されない。血管アクセス装置は、その場所に、数日から数年の間、留まる場合がある。血管アクセスカテーテルの典型的な構造は、1つ又は複数のルーメンを有する可撓性シャフトを含み、可撓性シャフトは、様々な先端部、分割部、テーパ部などを有し、また、可撓性シャフトは、他の装置への取り付けのためのルアー取付具を有する延長チューブに、接合ハブによって接続される。
【0012】
本明細書で使用するとき、「中心アクセス装置」とは、中心静脈循環系への直接アクセスを提供する装置を指す。本明細書で使用するとき、「中心静脈カテーテル」又は「CVC」は、その先端が中心静脈循環系内に直接配置されるように構成されたカテーテルを指す。この用語は、完全に埋め込まれた又は部分的に埋め込まれた(例えば、経皮挿入を介して)ものを問わず、大静脈などの心臓の中心部に薬剤を送達する任意のこのような装置を含む。中心静脈カテーテルは、中心アクセス装置の例である。
【0013】
本明細書で使用するとき、「末梢挿入型中心静脈カテーテル」又は「PICC」は、末梢部位において患者の身体に皮膚を通って(すなわち経皮的に)入り、その遠位端が中心静脈内、例えば、上大静脈に直接配置されるように、患者の脈管構造を通って延在するように構成されている、中心静脈カテーテルを指す。PICCはまた、末梢挿入型中心静脈ラインと称されてもよい。PICCは、数日、数週間、数ヶ月又は数年などの長期間にわたって、脈管構造内の適所に留まり得るか又は脈管構造内に存在することができる。
【0014】
本明細書で使用するとき、「小児科用カテーテル」は、18歳以下の患者の脈管構造に使用するように構成されたカテーテルを指す。一部の小児用カテーテルは、小児、例えば、5歳児、3歳児又は1歳以下の小児への使用に好適であり得る。一部の小児用カテーテルは、乳児又は新生児、例えば、一部の例では2.3kg以上の体重の乳児、更なる例では2.3kg未満の体重の乳児での使用に好適であり得る。
【0015】
本明細書で使用するとき、「高圧注入」は、この用語の一般的に受け入れられている定義と一致し、最大4.0mL/秒又は最大5.0mL/秒などの高流速で行われる、圧力をかけての注入を指す。なお、多くの場合には、粘度が11.8cP±0.3cPの材料(例えば、造影剤)などの粘稠材料の注入を伴い、また、高い圧力下で実行される。同様に、「高圧注入可能」カテーテルは、脈管構造内で使用可能でない規模での漏出、破裂又は膨潤を伴わずに、高圧注入を維持することができるものである。例えば、高圧注入可能なカテーテルは、国際標準化機構(ISO)規格ISO 10555-1の高圧注入仕様に準拠するものであり得る。したがって、例えば、高圧注入可能なPICCは、高圧注入を持続するように構成されたPICCである。PICCはまた、低い圧力下での静脈内治療又は標準的な注入及び吸引又は血液サンプリングなどの、他の機能に使用されてもよい。
【0016】
本明細書で使用するとき、「生体適合性」は、患者における、例えば長期間(例えば、数週又は数ヶ月)などの使用のための適合性又は好適性を指す。この用語は、カテーテルなどの特定の装置に対する一般的に受け入れられている規格又はそれらの装置に適用される規制の遵守を示すために使用されてもよい。例えば、生体適合性は、ISO規格ISO 10993-1、同4、同5、同6、同10、若しくは同11のうちの1つ以上への準拠及び/又は、例えば米国食品医薬品局によって定められる規制などの、特定の管轄の規制に準拠するものであってもよい。生体適合性カテーテルは、非細胞毒性、非感作性、非刺激性、非毒性、非発熱性、非溶血性であってもよく、補体系を活性化せず、部分トロンボプラスチン時間に対する影響が最小限であり、血液との許容可能な相互作用(例えば、許容可能な血栓形成性)を有し、かつ/又は有意な有害作用を伴わずに所望の期間にわたって埋め込まれ得るものであり得る。
【0017】
用語「患者」は、本明細書において広く使用され、限定することを意図するものではない。患者とは、例えば、病院、診療所又は他の環境のいずれにあるかにかかわらず、カテーテル又は本明細書に記載される他の医療用装置が適用されている任意の個人であり得る。用語「患者」は、ヒト、哺乳動物又は本明細書に記載される実施形態と適合する解剖学的構造を有する任意の他の動物を含む。
【0018】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでない旨を明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「装置」への言及は、そのような装置のうちの1つ以上への言及を含んでもよく、「イソシアネート」への言及は、1種以上のイソシアネートへの言及を含んでもよく、「シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン」への言及は、そのような化合物のうちの1種以上への言及を含んでもよい。
【0019】
用語「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含有している(containing)」及び「有している(having)」等は、米国特許法においてそれらの用語に帰属するとされる意味を有することができ、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」等を意味することができ、かつ一般的には、非限定的な用語であると解釈される。ある項目が、1つ以上の構成要素、構造、こと又は他の項目のリストを備える(comprise)、含む(include)、等々とされる場合には、そのリストは、非排他的又は非網羅的であってもよく又は代替的には、排他的若しくは網羅的であってもよい。「~からなっている(consisting of)」又は「~からなる(consists of)」という用語は、限定的な用語であり、そのような用語と併せて具体的に列挙されている構成要素、構造、こと等、並びに米国特許法に規定されているもののみを含む。用語「本質的に~からなっている(Consisting essentially of)」又は「本質的に~なる(consists essentially of)」は、米国特許法によって、それらに一般に帰属される意味を有する。具体的には、このような用語は、追加の項目、材料、構成要素、こと又は要素を、それらが関連して用いられている項目の基本的かつ新たな特性又は機能に実質的な影響を及ぼすことなく含むことを可能とする点を除き、一般的には限定的な用語である。例えば、組成物中に存在するが、組成物の性質又は特性に影響を与えない微量元素は、「本質的に~からなっている(consisting essentially of)」という言い回しの下で存在する場合には、そのような用語に続く項目のリストに明示的に列挙されていない場合であっても、許容されるであろう。本明細書の記載において、「備えている(comprising)」又は「含んでいる(including)」のような非限定的な用語を使用する場合、直接の対応が、「~から本質的になる(consisting essentially of)」という言い回し及び「~からなる(consisting of)」という言い回しにも、あたかもそれが明記されているかのように提供されるべきである(またその逆も真である)ことが理解される。
【0020】
本明細書中及び特許請求の範囲中に、「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」等という用語が、もしある場合には、それらは同様の要素を区別するために使用されているにすぎず、必ずしも特定の発生順、時系列、好ましい順序又はその他の順序を説明するために使用されるわけではない。そのように使用されるいずれの用語も、適切な状況下で交換可能であり、これにより、本明細書に記載される実施形態は、例えば、本明細書に図示又は別の方法で説明されるもの以外の順序でも動作可能であることを理解されたい。同様に、ある方法が一連のことを含むものとして本明細書に記載されている場合、本明細書に提示されるそのようなことの順序は、必ずしもそのようなことが実施され得る唯一の順序ではなく、述べられたことのうちのある特定のものが場合によっては省略されたり、かつ/又は本明細書に記載されていないある特定の他のことが、場合によっては方法に追加されたりする場合があり得る。
【0021】
本記載及び特許請求の範囲における「左」、「右」、「前」、「後」、「頂部」、「底部」、「上」、「下」等という用語は、記述目的のために使用され、必ずしも永久的な相対位置を説明するために使用されるわけではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、これにより、本明細書に記載される実施形態は、例えば、本明細書に図示又は別の方法で記載されるもの以外の配向でも動作可能であることを理解されたい。本明細書で使用される場合、「連結された」という用語は、任意の好適な様式で直接的又は間接的に接続されたものとして定義される。互いに「隣接して」いるものとして本明細書に記載される物体は、その語句が使用される文脈に適切であるように、互いと物理的に接触していても、互いにごく近接していても、又は互いと同じ一般的領域若しくは範囲内にあってもよい。
【0022】
本明細書で使用される場合及び別途明示的に定めていない限り、「実質的に」という用語は、行為、特性、性質、状態、構造、項目又は結果に関する、完全な又はほぼ完全な程度又は度合いを指す。例えば、「実質的に」囲い込まれた物体とは、その物体が完全に囲い込まれているか又はほぼ完全に囲い込まれているかのいずれかの状態であることを意味する。絶対的な完全性からの正確な許容可能な逸脱度は、一部のケースでは、その具体的な文脈に依存する場合があり得る。しかしながら、一般的に言えば、完全性に近いということは、あたかも絶対的かつ全面的な完全性が得られた場合と同じ全体的な結果を有するようになるということである。「実質的に」という語の使用は、行為、特性、性質、状態、構造、項目又は結果が、完全に又はほぼ完全に欠如していることを指すために、否定的な意味合いで使用される場合にも等しく適用可能である。例えば、粒子を「実質的に含まない」組成物は、粒子を完全に欠いているか又はその効果があたかも粒子を完全に欠いている場合と同じであるほどほぼ完全に粒子を欠いているかのいずれかである。言い換えると、成分又は元素を「実質的に含まない」組成物は、そのような項目の測定可能な効果が存在しない限り、そのような項目をなおも実際に含有していてもよい。
【0023】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、所与の値が、端点の「わずかに上」又は「わずかに下」であり得ることを提供することによって、数値範囲の端点に柔軟性を提供するために使用される。特に明記しない限り、特定の数又は数値範囲を伴って「約」という用語を使用した場合、用語「約」を伴わずにそのような数値用語又は範囲にも対応することも理解されるべきである。例えば、便宜上及び簡潔さのため、「約50~約80オングストローム」の数値範囲はまた、「50~80オングストローム」の範囲にも対応していると理解されるべきである。更に、本明細書では、「約」という用語がそれと共に使用される場合であっても、実際の数値にも対応することを理解されたい。例えば、「約」30と記載がされた場合、その記載は、30よりもわずかに上の値及びわずかに下の値に対応するだけでなく、実際の30という数値についても同様に対応するものと解釈されるべきである。
【0024】
本明細書で使用される場合、複数の項目、構造要素、組成要素、及び/又は材料は、便宜上、共通のリストで提示されてもよい。しかしながら、これらのリストは、あたかもリストの各メンバーが別個かつ固有のメンバーとして個々に識別されるかのように解釈されるべきである。したがって、特にその逆であるという指示のない限り、そのようなリストのどの個々のメンバーも、共通のグループ内にそれらが列挙されているという事実にのみ基づいて、同じリスト内の任意の他のメンバーの事実上の均等物として解釈されるべきではない。
【0025】
濃度、量、及び他の数値データは、本明細書では範囲形式で表現又は提示されてもよい。そのような範囲形式は、単に便宜上及び簡潔さのために使用され、したがって、範囲の限界として明示的に列挙される数値を含むだけではなく、あたかも各数値及び部分範囲が明示的に列挙されるかのように、その範囲内に包含される全ての個々の数値又は部分範囲を含むように、柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。例示として、「約1~約5」の数値範囲は、約1~約5の明示的に列挙された値を含むだけではなく、示された範囲内の個々の値及び部分範囲も含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲に含まれるのは、2、3及び4等の個々の値及び1~3、2~4及び3~5等の部分範囲、並びに個々に1、2、3、4及び5である。
【0026】
この同じ原理は、最小値又は最大値として1つの数値のみを挙げる範囲にも適用される。更に、そのような解釈は、記載されている範囲又は特性の幅にかかわらず適用されるべきである。
【0027】
本出願においては、「改善された」又は「向上した」性能を提供する組成物、システム又は方法に言及する場合があり得る。特に明記しない限り、かかる「改善」又は「増強」は、先行技術における組成物、システム又は方法との比較に基づいて得られる利益の尺度であることを理解されたい。更に、改善された又は向上した性能の程度は、開示される実施形態どうしの間で異なっていてもよく、改善又は改善の量、程度又は実現においては、何らの同等性又は一貫性が普遍的に適用可能であると想定されないことを理解されたい。
【0028】
本明細書全体を通して「一例」又は「一実施形態」に言及される場合、その例又は実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通した様々な場所において、「一例では」又は「一実施例では」という語句が出現する場合には、それらが全て必ずしも同じ実施形態を指すわけではない。
【0029】
簡潔にするために、様々な特徴は、単一の実施形態、図又はその説明において、一緒にグループ化されることに留意されたい。しかしながら、この説明の方法は、いかなる所与の請求項も、その請求項に明示的に記載されているものよりも多くの特徴を含むことを必要とするということを意図しない。むしろ、本開示に続く請求項において反映されているように、本発明の態様は、本明細書に開示されるいかなる単一の実施例で提示される全ての特徴よりも少ない組み合わせで存在し得る。
II.様々な実施形態が対処する、これまでに対処されてこなかった例示的なニーズ
【0030】
上記のように、ポリウレタンは、典型的には、ポリオール、すなわち、有機反応に利用可能な複数のヒドロキシル官能基を含む化合物を、ジイソシアネート又は他のポリイソシアネートと反応させることによって形成される。更に、ポリウレタンは、硬性セグメント及び軟性セグメントの両方を含み得る硬性セグメントは、典型的には、鎖延長剤と組み合わせたポリウレタンのイソシアネート成分を含み得る軟性セグメントは、典型的にはポリウレタンのポリオール成分を含み得る一部の例では、使用されるポリオールの種類は、ポリウレタンが使用される環境に依存し得る。例えば、ポリウレタンが水性環境で使用されることを意図する場合、ポリエーテル系ポリオールを使用することが望ましい場合がある。他の例では、ポリウレタンが炭化水素環境で使用されることを意図する場合、ポリエステル系ポリオールを使用することが望ましい場合がある。更に、硬性セグメント及び軟性セグメントの分子量、組成比、化学的種類及び他の特性は、ポリウレタンの所望の特性を達成するために変化させることができる。
【0031】
しかしながら、水性環境で使用するように構成されている多くのポリウレタン材料は、有機溶媒に対しては、好適な弾力性又は耐性を有さない。例えば、生物学的環境などの水性環境で使用するように構成された一部のポリウレタン材料は、有機溶媒にさらされた場合には、膨潤、亀裂、硬さの低下、機械的強度の低下などを起こす場合がある。したがって、水性環境及び有機環境の両方において弾力性を有するポリウレタン材料を調製することは挑戦的であり得る。場合によっては、上記のように、すなわち、水性環境で一般的に使用することが可能であり、有機溶媒に時折さらされたとしても耐えられるように改良されたポリウレタンは、カテーテルなどの特定の医療用装置において、特に有益なものとなり得る。
【0032】
特定のカテーテルは、様々な目的のために、例えば、患者の脈管構造(例えば、静脈系)に導入され得る。例えば、カテーテルは、流体、栄養、血液、ブドウ糖液、薬剤、診断薬などを送達する目的で脈管構造内に導入されてもよい。カテーテルはまた、例えば、血液を処理するため、血液に対して診断を行うため、あるいはその他の目的で、脈管構造から血液を抜くために導入されてもよい。
【0033】
中心静脈カテーテルで使用されるものを含むカテーテルシャフトは、典型的には、ポリマーから作製される。好適なポリマーは、典型的には生体適合性を有するものであり、様々な直径(脈管構造内に存在するために十分に小さいものを含む)の管に形成することができ、患者への外傷を引き起こすことなく脈管構造を通って送られるのに十分な可撓性を有するものであってもよい。選択されたポリマーが管に形成される場合、そのポリマーは、望ましくは、ルーメンが脈管構造内で確実に潰れないようにするのに十分な強度を提供し、かつ繰り返し折り曲げられても耐えられるものであり得る。シャフト材料は、望ましくは、耐化学性、耐破裂性、放射線不透過性、耐久性及び/又は追加的な特性を提供し得る。シリコーン系又はポリウレタン系ポリマーは、上記の基準を満たすために一般的に用いられるが、ポリウレタンカテーテルは、一般的に機械的強度がより高いため、より好まれる場合がある。場合によっては、熱可塑性ポリウレタンをカテーテルに使用することが望ましい場合がある。熱可塑性ポリウレタンは溶融加工可能なものであってもよく、加熱加工を用いて押出成形及び/又は型成形されてもよく、他方、熱硬化性ポリウレタンは流し込み成形されてもよい。
【0034】
医学的に必要な又は望ましいタスクを実行するプロセスにおいて、又はそのようなタスクどうしの間の留置期間中に、カテーテルに、患者に害を及ぼし得る、例えば細菌又は真菌などの微生物が増殖してしまう可能性がある。加えて、例えば、栄養の送達の場合、脂質がカテーテルを、完全に又は部分的に閉塞させてしまう場合がある。微生物の存在及び/又は脂質による閉塞は、長い期間にわたって患者内に存在する場合がある中心静脈カテーテルにとっては特に問題となり得る。
【0035】
微生物又は脂質による閉塞を低減又は消滅させるためのある特定の方法は、例えばイソプロピルアルコール又はエタノールなどのアルコールに、カテーテルを直接、かつ長期にわたってさらすことを伴う場合がある。カテーテルをアルコールにさらさせる上記のような方法の1つは、臨床医によってアルコールロックと呼ばれるものである。カテーテルのアルコールロックとは、消毒若しくは滅菌及び/又は脂質による閉塞の除去を目的として、25~100%(例えば、70%)の濃度のアルコール(例えば、エタノール)が、カテーテルのルーメン内に導入され、処理時間(例えば、約10分超、約30分超、約1時間超又は約1時間以上)にわたってルーメン内に維持される技術又は手順を一般的に指す。アルコールロック又は他の方法で、内部若しくは外部へ液体アルコールを適用することをそれぞれ、本明細書では、直接的かつ長期にわたりアルコールにさらすことと呼ぶ。
【0036】
シリコーンカテーテルは、直接的かつ長期にわたりアルコールにさらすことが行われる場合、中心静脈カテーテルとして一般に使用される。しかしながら、シリコーンカテーテルは、ポリウレタンカテーテルと比較して、機械的強度及び耐久性に劣るなどの、一定の欠点に悩まされる場合がある。とはいうものの、ポリウレタンカテーテルがアルコールに直接的かつ長時間にわたってさらされると、そのカテーテルの機械的特性が悪影響を受ける場合があるということもまた、臨床医及び製造業者にはよく知られている。したがって、カテーテルがアルコールに直接的かつ長期にわたってさらされることがない場合又はそのようなことがないと予想される場合には、特に高い流量及びそれと関連して高い圧力を必要とする高圧注入用途においては、ポリウレタンカテーテルのより高い耐久性ゆえに、臨床医はしばしば、ポリウレタンカテーテルをシリコーンカテーテルよりも好んで使用する。
【0037】
特定の熱可塑性ポリウレタンは、アルコール、水、及び他の極性溶媒の存在下では膨潤する場合がある。例えば、このような熱可塑性ポリウレタンで形成された中心静脈カテーテルがこれらの薬剤にさらされると、そのカテーテルは、柔らかくなり、膨潤し、弾性率及び引張強度などの機械的特性を失う場合があり得る。この効果はまた、体温(例えば、37℃)で加速され得る。これらの結果として機械的特性が損なわれると、中心静脈カテーテルの不具合を引き起こす場合があるが、そのような不具合には、先端部の不安定性、先端部の位置異常、高圧注入中の過剰な膨潤及び/又は破裂、流体吸引中のルーメンの潰れ、繰り返しの屈曲又はクランプすることによる繰り返し疲労による不具合及び接合ハブにおける延長脚部又はカテーテルシャフトからの漏れが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、多くの用途では、医療用装置製造業者は、安全率内で設計するか又はポリウレタン中心静脈カテーテルが使用され得る条件を具体的に指定する必要がある。多くの例では、製造業者は、これらの不具合を防止するために、アルコール及び他の材料をカテーテルと共に使用することに対して、明白に警告を発したり、禁止事項にしたりしている(例えば、使用指示書内で警告を発するなどしている)。言い換えると、ポリウレタン中心静脈カテーテルは、アルコールロックによって、そのカテーテルが本来意図されるように使用できなくなる状態まで急速に劣化する場合があるため(特に、カテーテルがそのような劣化がなければ高圧注入可能である場合)、ポリウレタン中心静脈カテーテルは、一般に、アルコールロックに不適合である。
【0038】
更なる例としては、カテーテルがポリウレタン製である場合には、アルコールに長時間さらされていると、あるいはさらされた後で、劣化したり、あるいははその他の性能低下を起こしたりする場合があり、そのようなポリウレタンの例としては、例えば、それぞれLubrizol Advanced Materials(オハイオ州、Cleveland)から入手可能な、TECOFLEX(登録商標)、TECOTHANE(登録商標)、又はPELLETHANE(登録商標)、それぞれBiomerics,LLC(ユタ州、Salt Lake City)から入手可能な、QUADRATHANE(登録商標)又はQUADRAFLEX(登録商標)、AdvanSource Biomaterials Corp.(マサチューセッツ州、Wilmington)から入手可能な、CHRONOFLEX(登録商標)、などが挙げられる。例えば、このようなカテーテルが繰り返し捻じられると、高圧注入の間の破裂又は漏れが発生し得る。このように性能が損なわれることは、例えば、より膨張が増大すること、応力亀裂に対する抵抗性が低下すること及び特定の機械的特性が損なわれることなど、アルコールに関連して発生する、一部の機械的特性(例えば、硬さ、弾性率及び強度など)の劣化に直接関連する。したがって、中心静脈カテーテルの製造業者は、多くの場合、そのカテーテルをアルコールに、直接的及び長期間にわたってさらすことを明確に禁止している。
【0039】
一般に、ポリカーボネートポリウレタンは、ポリエーテルポリウレタンほどは劣化しにくいという点で、アルコールロックに関しては、ポリエーテルポリウレタンよりも優れた性能を発揮し得る。更に、ポリウレタンのいずれかの芳香族種は、一般に脂肪族種よりも優れた性能を発揮する。したがって、アルコールロックは、以下の材料に対して異なる量の劣化をもたらす(なお、以下の材料のリストは、一般に、劣化の大きい方から小さい方への順で、材料をリストアップしている):脂肪族ポリエーテルポリウレタン、芳香族ポリエーテルポリウレタン、脂肪族ポリカーボネートポリウレタン、芳香族ポリカーボネートポリウレタン、芳香族ポリカーボネートポリウレタン。しかしながら、芳香族ポリカーボネートポリウレタンであってもそれからカテーテルシャフトを形成した場合には、アルコールロックを1回実施後又はアルコールロックを複数回実施後には、高圧注入の過酷さに耐えることは一般に不可能である。
【0040】
本開示は、ポリシロキサンを軟性セグメントに含む耐アルコール性芳香族ポリカーボネートポリウレタンに関する。シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの実施形態は、例えば、ポリカーボネートポリウレタンと比較して、耐アルコール性の改善を示すことができる。本明細書ではまた、本明細書に開示される耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含む、耐アルコール性カテーテルも開示される。一部の実施形態では、カテーテルは、他のポリウレタンと比較して、アルコールにさらされた際にも、膨張の減少、応力亀裂への抵抗性の改善、並びに/又は、例えば、硬さ、弾性率及び強度などの一部の機械的特性の更なる保持を示す。実施形態のカテーテルは、高圧注入可能なものである。更に、カテーテルは、アルコールロック後の回収性が良好であり、患者の体内で長期間にわたって使用するのに好適であり得る。例えば、一部の実施形態は、小児患者を含む患者の体内で長期間にわたって使用するのに好適であり得るPICC装置を含む。
【0041】
シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含むカテーテルの一部の実施形態はまた、その中に配合された添加剤を保持することにおいても、その性能を良好に発揮し得る。例えば、カテーテルは、そのカテーテルを小児に、更には新生児にさえも使用できるように十分に良好に、硫酸バリウムなどの放射線不透過性付与剤を保持することができる。言い換えると、上記の材料から押出成形で、カテーテルシャフト作成すると、そのシャフトが患者の体内に配置されたときに、そこから滲出する液体を、比較的少量にとどめることができる。シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン及び/又はこれらの材料が組み込まれた装置の実施形態が有する、1つ以上の、前述の利点及び/又は他の利点が、以下に更に説明され、かつ/又は本開示から明らかとなるであろう。
III.シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン
【0042】
本開示は、とりわけ、水性環境での使用に好適であり、例えばアルコール(例えば、エタノール)などの様々な有機溶媒に対して良好な耐性又は弾力性を有する、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの実施形態を記載する。シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、軟性セグメント及び硬性セグメントを含み得る。軟性セグメントは、ポリカーボネートポリオール及びポリシロキサンを含み得る。場合によっては、ポリカーボネートポリオールは、ポリシロキサンの量以上の量で存在し得る。一部の実施形態では、ポリシロキサンが軟性セグメントの特定の割合を占める配合物は、例えば、高圧注入可能なPICCカテーテルなどのカテーテルにおいて使用するのに特に適している。硬性セグメントは、イソシアネート及び鎖延長剤を含み得る。
【0043】
更に詳細には、ポリウレタンの軟性セグメントを調製するために、様々なポリカーボネートポリオール又はポリカーボネートポリオールどうしの組み合わせを使用し得る。一部の例では、ポリカーボネートポリオールは、ポリカーボネートジオールであってもよく又はポリカーボネートジオールを含み得る。一部の例では、ポリカーボネートポリオールは、以下の式(I)の構造を有し得る:
【化1】
なお、式中、Rは、直鎖又は分枝鎖、置換又は非置換、C
1~C
24のアルキル基又はアルキレン基から選択され、Aは水素(H)又はR’OHから選択され、nは2~30の整数である。一部の具体例では、Aは、Hであり得る。更に他の例では、AはR’OHであり得る。そのような例の一部では、R及びR’は同じであり得る。更に他の例では、R及びR’は異なっていてもよい。いずれの場合でも、R’は、直鎖又は分枝鎖、置換又は非置換、C
1~C
24のアルキル基又はアルキレン基から選択され得る。一部の例では、R及びR’は、C
4~C
12の直鎖又は分枝鎖、置換又は非置換のアルキル基又はアルキレン基から独立して選択され得る。一部の例では、R若しくはR’又はその両方が、直鎖アルキル基又はアルキレン基であり得る。したがって、一部の例では、ポリカーボネートポリオールは、以下の式(II)と類似の又は式(II)の構造を有し得る:
【化2】
【0044】
他の例では、R若しくはR’又はその両方が、分枝鎖アルキル基又はアルキレン基であり得る。式中、R若しくはR’又は両方が分枝鎖である場合、任意の好適な数の分枝が存在し得る。一部の具体例では、1つ又は2つの分岐が、R基若しくはR’基又はその両方に存在し得る。一部の例では、分枝は、置換又は非置換、C
1~C
6のアルキル基又はアルキレン基を含み得る。一部の具体例では、分枝は、メチル基、エチル基、プロピル基、若しくはブチル基又はこれらの組み合わせを含み得る。したがって、例えば、一部のケースでは、ポリカーボネートポリオールは、以下の式(III)と類似の又は式(III)の構造を有し得る:
【化3】
【0045】
一部の具体例では、R若しくはR’又はその両方における、1つ以上の炭素基を置換することができる。式中、R若しくはR’又は両方が置換されており、置換基としては、酸素、窒素、硫黄、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、チオール、カルボキシル、若しくは別の好適な置換基又はこれらの組み合わせを含み得る。一部の具体例では、R及びR’は、独立して、直鎖状、非置換で、C4~C10のアルキル基から選択される。一部の例では、R及びR’は、ペンチル基、ヘキシル基又はヘプチル基から独立して選択され得る。一部の例では、nは、5~25又は10~15の整数であり得る。
【0046】
ポリカーボネートポリオールは、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンに望まれる材料特性に応じて、様々な分子量を有し得る。例えば、一部のケースでは、ポリカーボネートポリオールの分子量を増加させると、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの機械的強度が低下し、材料の剛性が低下する可能性がある。逆に、一部のケースでは、ポリカーボネートポリオールの分子量を減少させると、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの機械的強度及び剛性が高まる可能性がある。一部の例では、ポリカーボネートポリオールは、約500~約5000g/molの数平均分子量(Mn)を有し得る。更に他の例では、ポリカーボネートポリオールは、約500~約2500g/mol、約1000~約4000g/mol、約1500~約2500g/mol、約1800~約2200g/mol又は約1840~約2200g/molのMnを有し得る。
【0047】
一般に、ポリカーボネートポリオールは、軟性セグメントの50重量%超を占めることができる。一部の例では、ポリカーボネートポリオールは、軟性セグメントの80重量%、85重量%、88重量%、89重量%又は90重量%以上を占めることができる。一部の具体的な例では、軟性セグメントは、約50~約98重量%のポリカーボネートポリオールを含み得るが、所望に応じて他の量を使用し得る。一部の例では、軟性セグメントは、約70~約96重量%、約75~約85重量%、約85~約95重量%、約88~約94重量%、約88~約92重量%、約89~約91重量%のポリカーボネートポリオールを含み得る。
【0048】
逆に、ポリシロキサンは、一般に、軟性セグメントの50重量%未満を占めることができる。一部の例では、ポリシロキサンは、軟性セグメントの20重量%、15重量%、12重量%、11重量%又は10重量%以下を占めることができる。一部の具体例では、軟性セグメントは、約2~約50重量%のポリシロキサンを含み得るが、所望に応じて他の量を使用し得る。一部の例では、軟性セグメントは、約4~約30重量%、約15~約25重量%、約5~約15重量%、約6~約12重量%、約8~約12重量%、約9~約11重量%又は約9.5~約10.5重量%のポリシロキサンを含み得る。
【0049】
様々なポリシロキサン又はポリシロキサンの組み合わせを使用して、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの軟性セグメントを調製することができる。一部の例では、ポリシロキサンは、以下の式(IV)の構造を有し得る:
【化4】
式中、R
1及びR
2は、独立して、直鎖C
1~C
6のアルキル基又は水素基から選択され、R
3及びR
5は、独立して、C
1~C
12のアルキル基又はアルキレン基から選択され、R
4及びR
6は、独立して、C
1~C
8のアルキル基又はアルキレン基から選択され、mは2~30の整数である。一部の例では、R
1及びR
2のうちの1つ以上は、異なっていてもよい。更に他の実施例では、R
1及びR
2のそれぞれは同じであり得る。一部の例では、R
1及びR
2のうちの1つ以上は、水素であり得る。一部の例では、R
1及びR
2のうちの1つ以上は、メチル基であり得る。一部の具体例では、R
1及びR
2のそれぞれはメチル基であり得る。一部の例では、R
3及びR
5は、独立して、C
1~C
8のアルキル基又はアルキレン基から選択され得る。一部の例では、R
3及びR
5は、独立して、C
2~C
8のアルキル基から選択され得る。一部の具体例では、R
3及びR
5は、両方ともエチル基、プロピル基又はブチル基であり得る。一部の例では、R
4及びR
6は、独立して、C
1~C
4のアルキル基又はアルキレン基から選択され得る。一部の例では、R
4及びR
6は、独立して、C
1~C
4のアルキル基から選択され得る。一部の具体例では、R
4及びR
6は、両方ともメチル基、エチル基又はプロピル基であり得る。一部の例では、mは、2~20又は6~14の整数であり得る。
【0050】
ポリシロキサンは、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンに望まれる特定の材料特性に応じて、様々な分子量を有し得る。一部の例では、ポリシロキサンは、約300~約3000g/molのMnを有し得る。一部の例では、ポリシロキサンは、約500~約1500g/mol、約800~約1200g/mol、約1500~約2500g/mol又は約700~約2300g/molのMnを有し得る。
【0051】
ポリカーボネートポリオール及びポリシロキサンは、様々な重量比で軟性セグメント中に存在し得る。一部の例では、ポリカーボネートポリオール及びポリシロキサンは、ポリカーボネートポリオール対ポリシロキサンの重量比が約20:1~約1:1で存在し得る。他の例では、ポリカーボネートポリオール及びポリシロキサンは、ポリカーボネートポリオール対ポリシロキサンの重量比が約20:1~約4:1、約20:1~約8:1、約19:1~約9:1、約11:1~約8:1、約11:1~約9:1、約10:1~約9:1又は約10:1~約8:1で存在し得る。
【0052】
シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン中の軟性セグメント及び硬性セグメントの量は、所望の材料特性を達成するように調整することができる。例えば、硬性セグメントの量が相対的により大きくなると、一般に、材料の硬さを増加させることができ、逆もまた同様であるが、硬性セグメント及び軟性セグメントの相対的割合を変更させると、他の材料特性も影響を受ける可能性がある。一部の例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約30~約80重量%の軟性セグメントを含み得る。更に他の例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約30~約60重量%の軟性セグメントを含み得る。また更に他の例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約40~約70重量%の軟性セグメントを含み得る。更に他の例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約30~約40重量%、約35~約45重量%、約40~約50重量%、約45~約55重量%、約50~約60重量%、約55~約65重量%、約54~約58重量%、約60~約70重量%又は約65~約75重量%の軟性セグメントを含み得る。様々な実施形態では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約69重量%、約56重量%又は約50重量%の軟性セグメントを含み得る。
【0053】
逆に、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約10~約60重量%の硬性セグメントを含み得る。更に他の例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約10~約30重量%又は約20~約40重量%の硬性セグメントを含み得る。また更に他の例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約30~約50重量%の硬性セグメントを含み得る。更に他の例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約20~約30重量%、約25~約35重量%、約30~約40重量%、約35~約45重量%、約42~約46重量%、約40~約50重量%、約45~約55重量%又は約50~約60重量%の硬性セグメントを含み得る。様々な実施形態では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約31重量%、約44重量%又は約50重量%の硬性セグメントを含み得る。
【0054】
シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、様々な重量比で軟性セグメント及び硬性セグメントを含み得る。一部の例では、軟性セグメント及び硬性セグメントは、軟性セグメント対硬性セグメントの重量比が約5:1~約1:3で存在し得る。更に他の例では、軟性セグメント及び硬性セグメントは、軟性セグメント対硬性セグメントの重量比が約3:1~約1:2で存在し得る。また更に他の例では、軟性セグメントは、軟性セグメント対硬性セグメントの重量比が約3:1~約1:1、約3:1~約3:2、約2:1~約1:2又は約2:1~約1:1で存在し得る。
【0055】
既に述べたように、硬性セグメントは、イソシアネート及び鎖延長剤を含み得る。本明細書で使用するとき、「イソシアネート」又は「イソシアネート化合物」は、複数のイソシアネート基を有する化合物を指すことに留意されたい。したがって、「イソシアネート」又は「イソシアネート化合物」は、ジイソシアネート又は他のポリイソシアネートを指すことができる。したがって、イソシアネートは、ジイソシアネート、若しくは他のポリイソシアネート又はこれらの組み合わせを含み得る。シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンには、様々なイソシアネートを使用することができる。非限定的な例としては、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、ビトリレンジイソシアネート、メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート、パラ-フェニレンジイソシアネート、トランス-シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、1,6-ジイソシアネートトヘキサン、1,5-ナフタレンジイソシアネート、パラ-テトラメチルキシレンジイソシアネート、メタ-テトラメチルキシレンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、他のジイソシアネート、若しくは他のポリイソシアネート又はこれらの組み合わせが挙げられる。一部の具体例では、イソシアネートは、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートであり得るか又はこれを含み得る。場合によっては、イソシアネートは、芳香族イソシアネートであり得る。
【0056】
硬性セグメントは、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンに望まれる材料特性に応じて、様々な量のイソシアネートを含み得る。一部の例では、硬性セグメントは、約50~約90重量%のイソシアネートを含み得る。一部の更なる例では、硬性セグメントは、約60~約90重量%のイソシアネートを含み得る。一部の具体例では、硬性セグメントは、約70~約80重量%、約75~約85重量%又は約80~約90重量%のイソシアネートを含み得る。
【0057】
様々な鎖延長剤が、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの硬性セグメントに含まれ得る。非限定的な例としては、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、パラ-キシレングリコール、1,3-ビス(4-ヒドロキシブチル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(6-ヒドロキシエトキシプロピル)テトラメチルジシロキサン及びトリメチロールプロパン、並びにこれらの組み合わせが挙げられ得る。一部の具体例では、鎖延長剤は、1,4-ブタンジオールであり得るか又は1,4-ブタンジオールを含み得る。
【0058】
鎖延長剤は、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンに望まれる材料特性に応じて、様々な量で硬性セグメントに含まれ得る。一部の例では、硬性セグメントは、約10~約50重量%の鎖延長剤を含み得る。一部の更なる例では、硬性セグメントは、約10~約40重量%の鎖延長剤を含み得る。一部の具体例では、硬性セグメントは、約20~約30重量%、約15~約25重量%、約10~約20重量%又は約20~約22重量%の鎖延長剤を含み得る。
【0059】
イソシアネート及び鎖延長剤は、様々な重量比で硬性セグメント中に存在し得る。一部の例では、イソシアネート及び鎖延長剤は、イソシアネート対鎖延長剤の重量比が約10:1~約1:1で硬性セグメント中に存在し得る。更に他の例では、イソシアネート及び鎖延長剤は、イソシアネート対鎖延長剤の重量比が約5:1~約1:1で硬性セグメント中に存在し得る。更に追加的な例では、イソシアネート及び鎖延長剤は、イソシアネート対鎖延長剤の重量比が約10:1~約5:1、約7:1~約3:1又は約4:1~約2:1で存在し得る。
【0060】
一部の実施形態では、1つ以上の架橋剤を使用されてよく、架橋剤が使用されていない点以外は同じである他のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンと比較して、例えば、より大きな機械的及び/又は熱的安定性をもたらすようにするために、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは架橋鎖を含む。架橋剤の非限定的な例としては、トリメチロールプロパン、ヒマシ油、ポリビニルアルコール、グリセリン、若しくは上記のポリイソシアネートの1種以上又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0061】
シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンはまた、様々な他の添加剤を含み得るが、それらは典型的には、特にことわりのない限り、硬性セグメント又は軟性セグメントの一部とはみなされない、例えば、一部のケースでは、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、放射線不透過性付与剤、潤滑剤、触媒、酸化防止剤、ラジカル阻害剤、着色剤、充填剤、結晶核剤(例えば、ヒュームドシリカ)などを含み得るが、あるいはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0062】
一部の具体例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、放射線不透過性付与剤、を含み得る。一般的に、放射線不透過性付与剤は、ポリマーに添加される高密度充填剤であり、添加の結果得られる医療用装置(例えば、カテーテルシャフトを含む医療用装置)が身体内にあるときに、X線撮影法の下で可視化されるようにするものである。放射線不透過性付与剤の非限定的な例としては、硫酸バリウム、タングステン金属、炭化タングステン、ビスマス金属、酸化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、次炭酸ビスマス、白金、パラジウム、金、若しくは酸化ジルコニウムなど又はこれらの組み合わせを挙げることができる。放射線不透過性付与剤が使用される場合、典型的には、約5~約45重量%、約10~約30重量%、約15~約40重量%又は約25~約35重量%の量で、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン中に含まれ得る。様々な実施形態では、放射線不透過性付与剤は、20%、25%又は30%以上の量で存在してもよい。
【0063】
場合によっては、多量の充填剤及び/又はより高密度の充填剤を添加することにより、その結果得られる医療用カテーテルシャフトの放射線不透過性を高め得るが、材料の機械的特性(例えば、伸び、引張強度、破裂強度、生体適合性、弾性率及び化学抵抗性など)を劣化させ得る。したがって、カテーテル材料に添加される充填剤の量は、その材料の特定の用途が必要とする要件に依存し得る。例えば、小径で薄い壁のカテーテルは、X線撮影法の下で見ることが困難となり得るが、そのようなカテーテルでは、充填剤の適切な量は、装置のパラメータ及び装置の予想される使用法に大いに依存し得る。更に、PICC装置などの、長期間にわたり患者内に存在し得るカテーテルの場合、血液中に滲出する放射線不透過性付与剤の量を低減することが望ましい場合がある。滲出液の量を低減することは、ポリマー材料に配合される放射線不透過性付与剤の量を低減することによって達成され得るが、これは、カテーテルを、X線撮影法の下で、よりぼやけさせる、あるいは他の何らかの方法でより見えにくくする場合があり得る。しかしながら、本明細書に開示される実施形態は、有利なことに、ポリマー内に放射線不透過性付与剤(例えば、硫酸バリウム)を保持することができ、したがって、高い放射線不透過性付与剤含有量を犠牲にすることなく、放射線不透過性付与剤の滲出量を低減することができ、良好な視認性の画像を得ることができる。
【0064】
一部の追加的具体例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、例えば押出成形に有用な潤滑剤又は離型剤などの、潤滑剤を含み得る。好適な潤滑剤の非限定的な例としては、ポリエチレン、フルオロカーボンポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)、シリコーン樹脂、若しくは有機ワックス(例えば、ステアレートワックス、ビス-アミドワックス(例えば、エチレンビスステアルアミド(EBS)など)など又はこれらの組み合わせを挙げることができる。好適な潤滑剤の1つの例示的な例は、LONZA(Switzerland)から入手可能なGLYCOLUBE(商標)VLである。潤滑剤が使用される場合、潤滑剤は、約0.05~約5重量%又は約0.1~約0.5重量%の量で、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン中に存在し得る。
【0065】
更に他の具体例では、ポリウレタンポリカーボネートは着色剤を含み得る。着色剤は、任意の好適な染料若しくは顔料又はこれらの組み合わせを含み得るが、それによりシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンに対して任意の好適な色を付与し得る。着色剤が使用される場合、着色剤は、約0.1~約10重量%又は約0.3~約3重量%の量で、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン中に存在し得る。
【0066】
シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、様々な分子量を有し得る。典型的には、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約50,000~約300,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有し得る。一部の例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約70,000~約300,000g/molのMwを有し得る。他の例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約120,000~約250,000g/molのMwを有し得る。更に他の実施例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約50,000~約150,000g/mol、約150,000~約220,000g/mol、約160,000~約200,000g/mol、約150,000~約190,000g/mol又は約170,000~約210,000g/molのMwを有し得る。
【0067】
シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンはまた、様々なイソシアネート指数の任意のものを有し得る。一部の例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約0.98~約1.10、例えば約1.00~約1.10のイソシアネート指数(すなわち、イソシアネート基のモル数/ヒドロキシル基のモル数)を有し得る。更に他の例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約1.00~約1.08、約0.98~約1.00、約1.00~1.02、約1.02~約1.05、約1.03~約1.08、約1.03~約1.06、約1.04~約1.10、約1.01~約1.06、約1.02~約1.04、約1.03~約1.04、約1.04~約1.06又は約1.045~約1.055のイソシアネート指数を有し得る。
【0068】
シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンはまた、ある範囲のデュロ硬度値を有し得る。一部の例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約65~約100のショアAデュロメータ硬さの値を有し得る。更に他の例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約70~約90、約75~約85、約91~約100、約94~約98、約96~約100、約95~約99、約96~約98又は約97~約100(ショアAスケールの上端からわずかに外れた硬さ、すなわち100よりも硬い硬さを含む)の、ショアAデュロメータ硬さの値を有し得る。また更に他の例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約15~約85、約60~約80又は約65~約75のショアDデュロメータ硬さの値を有し得る。
【0069】
シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを調製する方法も開示される。一部の例では、方法は、ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサン、イソシアネート及び鎖延長剤を混合するか又は化合させて、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを調製することを含み得る。ポリカーボネートポリオールは、ポリシロキサンの量以上の量で存在し得る。
【0070】
一部の例では、1つ以上の原材料は、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの他の成分と化合させる前に溶融されるか又は別の方法で前処理され得る。例えば、一部のケースでは、ポリカーボネートポリオールは、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの他の構成要素と化合させる前に溶融され得る。例えば、ある特定のポリカーボネートポリオールは、約160~約200°Fの温度であらかじめ溶融させることができる。他の例、例えば、特定のポリカーボネートジオールなどの場合には、あらかじめ溶融させるための温度は、約90~約150°Fのようにより低い温度であってもよい。一部の例では、ポリカーボネートポリオールは、1つ以上の他の構成成分と化合される前に、前述のように溶融されるか、あるいは溶融されることなく、約160~約175°Fの温度で保管され得る。一部の更なる例では、ポリカーボネートポリオールは、1つ以上の他の構成成分と化合される前に、水分から保護するために、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気又は他の好適な雰囲気の下で保管され得る。
【0071】
一部の例では、ポリシロキサンもまた、例えば、1つ以上の他の成分と化合される前に、例えば、約140~約160°Fなどの高い温度で保管され得る。一部の更なる例では、ポリシロキサンは、1つ以上の他の成分と化合される前に、水分から保護するために、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気又は他の好適な雰囲気下で保管され得る。
【0072】
一部の例では、イソシアネートは、約125~約160°Fの温度で溶融され得る。一部の更なる例では、イソシアネートは、液相から沈殿する不溶性二量体を残して他の器にデカントされ得る。そのような例の一部特定のものでは、デカントされたイソシアネートは、後で使用するために、約125~約140°Fで保管され得る。いくつかの追加的例では、イソシアネートは、イソシアネート含有率(%)を決定するために滴定され得る。これにより、必要に応じて配合を調整して、適切な又は所望のイソシアネート指数を維持することができる。一部の例では、鎖延長剤は、混合前に、所望に応じて溶融され得る。
【0073】
ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサン、イソシアネート、及び鎖延長剤は、様々な方法で、かつ/又は1つ以上の工程で、化合又は混合され得る。例えば、一部のケースでは、ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサン、イソシアネート及び鎖延長剤は全て、共通の容器に一緒に添加され、同時に混合され得る。言い換えると、ワンショットの混合プロセスで化合させることができる。場合によっては、構成成分は、約30秒~約20分の範囲内など、設定された時間にわたって混合される。他の又は更なる例では、構成要素は、閾値温度、目標温度、又は所定の温度に達するまで混合される。例えば、反応が発熱性であり得るため、混合物の温度は、混合が継続されるにつれて約120°Fから約230°F以上の温度にまで上昇し得る。場合によっては、混合を中止し、閾値温度に達したら、容器から混合物を注ぎ出すことが望ましい場合がある。様々な例において、閾値温度は、約200~約230°Fの範囲内であってもよい。
【0074】
場合によっては、混合物の温度は、混合中に、例えば、外部のソースから混合物に熱を導入することによって、又は制御された方法で混合物から熱を除去することによって、制御することができる。他の例では、上述したように、反応が進行する間、混合物の温度を制御することはない。例えば、様々な反応物質の出発温度は、所望の出発点で維持され得るが、反応物質が混合物に添加されると、それらの温度を制御するための更なる手段が、外部から適用されなくてもよい。むしろ、その後、混合物の温度が変化し得るが、反応の熱的性質(例えば、発熱反応である)及び周囲環境への熱放散に起因して、変化は自然に起こる(例えば、温度が上昇する)。この温度は、例えば任意の好適な温度監視装置を介して監視することができる。温度監視のプロセス及びそのような温度監視装置の使用は、様々な混合物の温度判定を伴う、本開示の他の部分に等しく適用される。様々な実施形態では、温度が反応中に制御されるか否かにかかわらず、混合物の混合は、例えば、約120~約230°Fの温度で行われるとされ得る。温度が指定の温度又は指定温度範囲内に留まるように能動的に制御されるかどうかにかかわらず、混合が、ある温度又はある温度範囲「で」行われると示すこの慣習は、本開示及び特許請求の範囲を通して一貫して使用される。
【0075】
一部の例では、構成成分の混合は、多段階のプロセスで進行し得る。例えば、場合によっては、ポリシロキサン及びポリカーボネートポリオールは、イソシアネート及び鎖延長剤を添加する前に混合され得る。そのような特定の例では、ポリシロキサン及びポリカーボネートポリオールは、一般に、第1の混合物中に一緒に添加され、約120~約200°Fの温度で、例えば約30秒~約15分などの好適な混合期間にわたって混合され得る。言い換えると、混合中の混合物の温度を制御又は維持するのではなく、混合物の温度は、混合が進行するにつれて、約120~約200°Fの範囲内で自然に上昇し得る。一部の例では、ポリシロキサン及びポリカーボネートポリオールを真空下で12~48時間混合して、水分及び溶解ガスを除去し得る。一部の例では、次いで、鎖延長剤を添加する前に、イソシアネートをポリカーボネートポリオールとポリシロキサンとの混合物に添加し得る。言い換えると、第1の混合物の混合が完了した後、イソシアネートを第1の混合物に添加することによって第2の混合物を形成し、続いて、鎖延長剤を第2の混合物に添加することによって第3の混合物を形成してもよい。ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサン及びイソシアネートの混合物(すなわち、第2の混合物)は、好適な混合期間、例えば約2分~約30分間にわたって混合され得る。場合によっては、混合が行われる温度は、具体的に又は能動的に制御されない。言い換えると、混合が行われる温度は、指定の又は所定の範囲内に維持されない。例えば、場合によっては、イソシアネート(上述のようにあらかじめ熱した状態のイソシアネート)を、ポリカーボネートポリオールとポリシロキサンとの混合物に添加し、混合物に熱を更に加えることなく混合する。この段階での混合中に生じ得るいかなる温度変化も、反応の発熱性による加熱と、反応容器からの熱伝達による冷却とに起因し得る。ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサン及びイソシアネートを混合した後(すなわち、第2の混合物を混合した後)、鎖延長剤を混合物に添加(すなわち、第3の混合物を形成)し、更に混合し得る。第3の混合物の温度は、混合が継続する間、約160~約230°Fの範囲であり得る。場合によっては、混合は、例えば約30秒~約15分など、好適な又は所定の混合期間にわたって進行する。他の又は更なる例では、混合は、目標温度に達するまで進行する。様々な例において、目標温度は、約200~約230°Fの範囲内であってもよい。
【0076】
なお、第1の混合物は、第1の期間にわたって混合されると表現してもよい。第1の期間の完了後、第2の混合物が形成され、第2の期間にわたって混合される。第2の期間の完了後、第3の混合物が形成され、第3の期間にわたって混合される。上記の用語「完了後」は、終点、又はその後の任意の時点を意味する。例えば、第1の期間は、イソシアネートをポリカーボネート/ポリシロキサン混合物に導入することなどによって、第2の混合物が生成されるのと同時に終了されてもよい。他の例では、幾分かの時間が、第1の混合期間の完了から第2の混合物の形成との間に経過してもよい。混合期間の「完了後」に何らかの事象が起きることを示すこの慣習は、その事象が、混合期間の終了時に即座に発生するか、又はその後のある時点で発生するかどうかに関わらず、本開示及び請求項全体にわたって一貫して使用される。
【0077】
また更に他の例では、ジイソシアネート及び鎖延長剤は、ポリカーボネートポリオールとポリシロキサンとの混合物に同時に添加され得る。言い換えると、第1の混合物は、ポリカーボネートポリオール及びポリシロキサンを含み得るが、第2の混合物は、イソシアネート及び鎖延長剤の両方を第1の混合物に添加することによって形成し得る。場合によっては、成分(すなわち、第2の混合物の成分)が混合され、混合が継続する間、混合物の温度は、約120~約230°Fの範囲であり得る。場合によっては、混合は、例えば約30秒~約15分など、好適な又は所定の混合期間にわたって進行する。他の又は更なる例では、混合は、目標温度に達するまで進行する。様々な例において、目標温度は、約200~約230°Fの範囲内であってもよい。
【0078】
また更に他の例では、ポリシロキサン及びイソシアネートは、ポリカーボネートポリオール及び鎖延長剤の添加前に混合され得る。言い換えると、第1の混合物は、ポリシロキサン及びイソシアネートを含み得る。そのような特定の例のあるものでは、ポリシロキサン及びイソシアネートは、例えば約120~約180°Fの温度で、例えば、約2分~約30分などの好適な混合期間にわたって、混合され得る。
【0079】
一部の例では、その後、鎖延長剤を添加する前に、ポリカーボネートポリオールを、ポリシロキサンとイソシアネートとの混合物に添加し得る。言い換えると、ポリカーボネートポリオールを第1の混合物に添加することによって、第2の混合物が形成され得る。続いて、鎖延長剤を第2の混合物に添加することによって、第3の混合物が形成され得る。ポリシロキサン、イソシアネート及びポリカーボネートポリオールの混合物(すなわち、第2の混合物)は、130~190°Fの温度で、例えば約2分~約30分などの好適な混合期間にわたって混合され得る。次いで、鎖延長剤が、ポリシロキサン、イソシアネート及びポリカーボネートポリオールの混合物に添加され得る(すなわち、第3の混合物が形成され得る)。その結果生じる混合物は、160~230°Fの温度で、好適な混合期間、例えば約30秒~約15分にわたって混合することができる。他の又は更なる例では、混合は、目標温度に達するまで進行する。様々な例において、目標温度は、約200~約230°Fの範囲内であってもよい。
【0080】
また更に他の例では、ポリカーボネートポリオール及び鎖延長剤は、ポリシロキサンとイソシアネートとの混合物に同時に添加され得る。言い換えると、第2の混合物は、ポリカーボネートポリオール及び鎖延長剤の両方を、ポリシロキサン及びイソシアネートを含む第1の混合物に添加することによって形成され得る。第2の混合物は、130°F~230°Fの温度で、好適な混合期間、例えば約2分~約15分間にわたって混合され得る。他の又は更なる例では、混合は、目標温度に達するまで進行する。様々な例において、目標温度は、約200~約230°Fの範囲内であってもよい。
【0081】
前段に説明されているような混合は、任意の好適な混合装置を介して実現され得る。例えば、場合によっては、オーバーヘッド撹拌機が使用されてもよい。そのような例のうちの特定のものでは、オーバーヘッド撹拌機は、ゲートパドル又は他の好適なアタッチメントを装着して使用されてもよく、中程度の速度で運転されてもよい。
【0082】
一部の例では、潤滑剤、酸化防止剤、触媒、若しくは他の好適な添加剤、又はこれらの組み合わせを、ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサン、イソシアネート、及び鎖延長剤の好適な混合物に添加して、所望の特性を有するシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを提供し得る。一部の例では、添加剤は、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの重量を基準として、約0.05~約5重量%又は約0.1~約0.5重量%の量で添加され得る。
【0083】
一部の例では、ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサン、イソシアネート、鎖延長剤、及び任意の添加剤の混合物は、硬化させられ得る。硬化は、典型的には、約210~約250°Fの温度で実施することができるが、他の硬化温度もまた、一部の配合物に対して又はそれが望ましい場合には、使用され得る。更に、硬化は、典型的には、約12~約36時間の硬化期間にわたって実施され得るが、望ましい場合には他の硬化期間も使用され得る。
【0084】
硬化は、硬化処理したシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを調製するために実施され得るが、この硬化処理したシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、任意選択的に更に他の成分を配合するか、又は別の方法で処理されて、所望されるようなシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが調製され得る。例えば、一部のケースでは、硬化処理したシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、粒状化され得る。そのような例のうちの特定のものでは、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、例えば、約1~約10ミリメートル又は約2~約8ミリメートルの平均粒径を有するように粒状化され得る。
【0085】
一部の例では、粒状化されたシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、放射線不透過性付与剤、着色剤、ワックス及び/若しくは潤滑剤、結晶核剤、又は他の好適な配合剤、あるいはこれらの組み合わせが更に配合され、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを調製し得る。一部の例では、配合剤若しくは粒状シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン又はその両方が、配合前に乾燥され得る。配合剤は、配合剤の種類及びシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンに望まれる特性に応じて、様々な量で添加され得る。一部の例では、配合剤は、約5~約45重量%、約10~約30重量%、約15~約40重量%又は約25~約35重量%の量で添加され得る。更に他の例では、配合剤は、約0.1~約10重量%又は約0.3~約3重量%の量で添加され得る。
【0086】
一部の更なる例では、粒状化されたシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、任意選択的に配合剤と混合され、更に、その後の使用のために押出成形されたり、ペレット化されたりし得る。任意の好適な押出装置が想到される。2つの例示的な例は、ドイツのLeistritzから入手可能な、モデルLSM 30.34及びZSE 27である。場合によっては、押出成形は、二軸押出又は単軸押出成形によって実施される。そのような実施形態のうちの特定のものでは、様々な押出成形機ゾーンの温度は、例えば、約300~約600°Fに設定され得る。場合によっては、押出成形機ゾーンの温度は、約340~約520°Fの範囲内であってもよい。更なる例では、螺旋錐(複数可)の任意の好適な長さ/直径(L/D)比に対して、約50~約500RPMのスクリュー速度を用いてもよい。例えば、様々な実施形態では、螺旋錐の直径は、約25~約35ミリメートルの範囲内であってもよく、L/D比は、約25~約55の範囲内であってもよい。特定の例では、スクリュー速度は、例えば、それぞれが34ミリメートルの直径及び30のL/D比を有する1つ以上の螺旋錐に対して又はそれぞれが27ミリメートルの直径及び50のL/D比を有する1つ以上の螺旋錐に対して、約100RPMであってもよい。様々な例において、押出成形物に対して、ストランドペレット化又は水中ペレット化が実施されて、その後の使用のためのペレットを得るようにしてもよい。
【0087】
シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン及びこれを形成するための例示的な方法の更なる実施形態を以下に説明し、さらにその後、具体的な例を説明する。
【0088】
上記のポリカーボネートポリオールのいずれもは、液体形態で提供されるか、あるいは使用前に溶融される。場合によっては、ポリカーボネートポリオールは、約160~約200°Fの温度で溶融される。ポリカーボネートポリオールは、使用に先立って、任意選択的に保管され得る。場合によっては、ポリカーボネートポリオールは、使用されるまで、約160~約175°Fの範囲内の温度で保管される。場合によっては、ポリカーボネートポリオールは、使用に先立つ保管中に、水分から(例えば、窒素又は他のガスの下で)保護される。ポリカーボネートポリオールの例示的な例としては、既に述べた式(II)のポリ(ヘキサメチレンカーボネート)が挙げられ、そのようなポリ(ヘキサメチレンカーボネート)の例には、約1840~約2200g/molの範囲内の数平均分子量(Mn)を有するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
上記ポリシロキサンポリオールのいずれも、室温で使用されるか又は使用まで約140~約160°Fの範囲内の温度で保管される。場合によっては、ポリシロキサンポリオールは、使用に先立つ保管中に、水分から(例えば、窒素又は他のガス下で)保護される。ポリシロキサンポリオールの例示的な例としては、下記の式(V)のカルビノール変性ポリジメチルシロキサンが挙げられ、そのようなカルビノール変性ポリジメチルシロキサンの例としては、約925~約1025g/molの範囲内の数平均分子量(M
n)を有し、両端で反応性を示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化5】
上記式(IV)に関して前述したように、mは2~30の整数である。このポリシロキサンポリオールは、比較的高い反応性を示し、このことは、場合によっては、ポリシロキサンポリオールをポリウレタン鎖に容易に組み込むことを可能にするという利点を持つ。このポリシロキサンポリオールは同様に、他のポリオールとの良好な混和性を示すことができ、一部の例においては有利であり得る。例えば、このような高い混和性は、結果として得られるポリカーボネートポリウレタンへのポリシロキサンへの取り込みを改善し得る。他の例では、ポリシロキサンポリオールは、上記の式(V)の構造と類似の構造を有していてよいが、鎖のポリジメチルシロキサン中心部と末端のヒドロキシル官能基との間に異なるリンカーを有してもよい。
【0090】
上記のイソシアネートのいずれも、液体形態で提供されるか又は使用前に溶融される。場合によっては、イソシアネートは、約140°Fで溶融される。更なる例では、溶融させたイソシアネートをデカントして、液相から沈殿する不溶性二量体を除去する。デカントされた部分(例えば、透明部分)は、使用されるまで、例えば125~140°Fの範囲内のような高い温度で保管され得る。場合によっては、イソシアネートは、使用に先立つ保管中に、水分から(例えば、窒素又は他のガスの下で)保護される。デカントされた液体のサンプルを採取して、配合全体の調整に使用するための滴定を実施し得る。具体的には、NCOの割合は、滴定に基づいて決定し得る。イソシアネートの例示的な例は、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)である。
【0091】
上記の鎖延長剤のいずれも、液体形態で提供されるか又は使用前に溶融される。鎖延長剤は、使用に先立って、例えば、約80°Fの高温で保管され得る。場合によっては、鎖延長剤は、使用前に先立つ保管中に、水分から(例えば、窒素又は他のガスの下で)保護される。鎖延長剤の例示的な例は、1,4-ブタンジオール(BDO)である。
【0092】
上記成分(ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサンポリオール、イソシアネート、鎖延長剤)のそれぞれの量は、所望のイソシアネート指数を達成するように選択され得るが、そのような指数は、既に述べた範囲のいずれかに含まれ得る。例えば、イソシアネート指数は、約1.00~約1.10の範囲内であり得る。言い換えると、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの配合は、構成成分のいずれかを化合させるのに先立って、調整又は微調整されてもよい。配合の調整では、ポリオールのそれぞれに対するヒドロキシル価及びH2O割合、イソシアネートに対するNCO割合及び鎖延長剤に対するH2O割合を使用することができる。場合によっては、イソシアネート指数を調整することは、様々な成分の質量比の非常に小さい変化を意味し得るが、最終的なシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの特性に有意な効果を有し得る。
【0093】
場合によっては、イソシアネート及びポリシロキサンポリオールは、共通の容器に注がれ、上述したような好適な期間にわたって混合される。例えば、混合は、約2~約30分の範囲内の期間にわたって行われてもよい。場合によっては、混合は約5分間行われてもよい。場合によっては、イソシアネートとポリシロキサンとを最初に化合させることにより、最終的なシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン材料中にポリシロキサンが、より完全かつ/又はより均一に分布するようにし得る。
【0094】
場合によっては、次にポリカーボネートポリオールを混合物に添加する。混合物は、例えば約2~約15分などの、追加的時間にわたって混合され得る。更なる例では、混合期間は約5分である。
【0095】
次いで鎖延長剤を、ポリシロキサン、イソシアネート及びポリカーボネートポリオールの混合物に添加し、160~230°Fの温度で、約30秒~約15分などの好適な混合期間にわたって混合し得る。あるいは、混合物の温度を監視し、温度が閾値に達したときに混合を終了させ得る。なお、この閾値は、混合物が増粘し始める時点に対応するものであり得る。様々な実施形態では、閾値は、約200~約230°Fの範囲内であってもよい。一部の特定の例では、混合時間は、約1~約2分の範囲内であり、かつ/又は温度の閾値は、約200~約210°Fの範囲内である。
【0096】
混合が完了すると、混合物を、任意の好適なサイズ及び構造(例えば、テフロン(登録商標)コーティング)のパン又はシートに注ぐことができる。次いで、混合物を、オーブン内で、例えば約230°Fで約16~約24時間にわたって硬化させ得る。
【0097】
場合によっては、硬化したケーキが、パンから除去され、より小さいレンガ状物体に刻まれる。次いで、レンガ状物体は、コンパウンダに供給するのに十分に小さいサイズまで粉砕又は粒状化される。上記の粒状化サイズのいずれかが想到される。
【0098】
場合によっては、粒状シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、例えば、約140~約180°Fの温度範囲内で乾燥される。更なる例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンに、放射線不透過性付与剤を化合させることが望ましい場合があり得る。そのような例の特定のものでは、放射線不透過性付与剤もまた、乾燥させることができる。例えば、一部の実施形態では、硫酸バリウムは、配合前に乾燥される。
【0099】
場合によっては、粒状化されかつ乾燥されたシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、1つ以上の放射線不透過性付与剤及び/又は着色剤などの上記の添加剤のいずれかと配合されている。一部の実施形態では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン、放射線不透過性付与剤(例えば、硫酸バリウム)及び着色剤を計量してから、大型のポリマーバッグなどの袋の中に導入する。袋は閉じられ、(例えば、セメントミキサー内で)回転させて混ぜ合わされてもよい。
【0100】
混合後、混合された材料は、あらかじめ温められた、例えば二軸押出機などの押出機に供給される。押出成形された成形物は、上記のペレットサイズのいずれかなどに、ペレット化されてもよい。更なる例では、次いで、ペレットを、別の押出成形機に導入して、カテーテルシャフトなどの医療用部品を形成してもよい。
実施例1
【0101】
シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン材料の5つの検査用サンプル(サンプル1~5)を、一部実施法実験計画(fractional factorial design of experiment、DoE)に従って配合して、3つのパラメータのそれぞれを、低標的値、中標的値及び高標的値の間で変化させた効果を試験した。第1のパラメータは、配合物の総重量に対する硬性セグメントの質量百分率であり、低標的値は約37%であり、中標的値は約41%であり、高標的値は約44%であった。第2のパラメータは、ポリオール含有量の総重量に対する、ポリシロキサンポリオールの質量百分率であり、低標的値が約10%であり、中標的値が約20%であり、高標的値が約30%であった。第3のパラメータは、配合物のイソシアネート指数であり、低標的値は約1.02であり、中標的値は約1.035であり、高標的値は約1.05であった。サンプル1~5のそれぞれの実際の配合は、以下の表1に提供される。
【表1】
【0102】
サンプル1~5のそれぞれについて、ポリカーボネートポリオールは、2020g/mol±180g/molの分子量を有するポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(PHMCD)であった。ポリカーボネートポリオールを160~200°Fの温度で溶融させ、次いで、使用するまで、160~175°Fの温度で保管した。保管中、ポリカーボネートポリオールは、水分から窒素下で保護された。
【0103】
サンプル1~5のそれぞれについて、ポリシロキサンポリオールは、上記式(V)によるカルビノール変性ポリジメチルシロキサン(PDMS)であり、分子量は975±50g/molであった。ポリシロキサンポリオールは、室温で保管し、使用するまで、水分から窒素下で保護した。
【0104】
サンプル1~5のそれぞれについて、イソシアネートは、モノマー状ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートであった。イソシアネートを140°Fで溶融させ、デカントして、液相から沈殿した不溶性二量体を除去した。デカントされた部分は、125~140°Fの温度で保管し、使用するまで、水分から窒素下で保護した。デカントされた液体から、滴定のためのサンプルを採取して、NCO濃度を決定した。このNCO濃度により、配合全体がDoEイソシアネート指数標的に従って調整された。
【0105】
サンプル1~5のそれぞれについて、鎖延長剤は1,4ブタンジオールであった。鎖延長剤は、80°Fで保管し、使用するまで、水分から窒素下で保護した。
【0106】
サンプル1~5のそれぞれについて、ポリシロキサンポリオール及び溶融MDIをバケツに添加し、中程度の速度でオーバーヘッド撹拌機を用いて5分間混合した。次いで、ポリカーボネートジオールをバケツに添加し、オーバーヘッド撹拌機を用いて、混合物を中程度の速度で更に5分間混合した。次いでBDOをバケツに添加し、オーバーヘッド撹拌機を用いて、混合物を中程度の速度で更に1~2分間混合した。次いで、オーバーヘッド撹拌機を停止し、混合物をベーキングシート上に注ぎ、230°Fのオーブン内で一晩硬化させた。
【0107】
硬化後、材料をベーキングシートから取り出し、機械的に粉砕して、約10ミリメートル未満の平均粒径を有する粒子にした。次いで、乾燥剤を用いた乾燥機内で粒子を乾燥させ、その後、その後の使用のために保管した。
【0108】
サンプル1~5のそれぞれについて、少量の乾燥したシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン粒子を射出成形して試験プラークを形成し、次いで、Check-Line HPSA手動式デュロメータを使用してASTMのD2240規格に従って試験した。測定されたデュロメータ硬さは、表1の最終欄に報告されている。
実施例2
【0109】
上記実施例1のサンプル1~5のそれぞれの一部を使用して、材料の5つのロット(ロット1~5)を調製した。各ロット1~5を調製するために、サンプル1~5のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンのそれぞれの量を、その材料が放射線不透過性を実現する(例えば、カテーテルシャフトに押出成形される場合)のに好適な量の硫酸バリウムと、材料の所望の一貫した着色を達成するのに好適な量の粉末化された着色剤と共に、ポリマーバッグに導入した。具体的には、構成成分の相対量は、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが69.1%、硫酸バリウムが29.6%、かつ着色剤が1.3%であった。このことは以下の表2にまとめられている。バッグを閉じて、セメントミキサー内で回転させて、構成成分を完全にブレンドした。次に、各混合物を二軸押出機に送ってよく混ぜ合わせ、ペレット化し、乾燥させた。その後の使用のために、ロット1~5を保管した。
【表2】
【0110】
ロット1~5のそれぞれの一定量を、
図1、
図2A及び
図2Bに示される形状の、複数の、二重ルーメン逆テーパ型カテーテルシャフトに押出成形した。次いで、カテーテルシャフトの破裂圧力に対するアルコールロックの効果を試験した。
【0111】
具体的には、
図1に示すように、指定の形状のカテーテル100は、近位端102から遠位端104まで延在する。カテーテル100の近位端102は、近位先端106で終端し、遠位端104は遠位先端108で終端する。
【0112】
近位端102は、任意の好適な接続装置がカテーテルシャフト100に連結され得る場所である接続領域110を含む。例えば、場合によっては、接合ハブを接続領域110にオーバーモールドすることができ、その接合ハブは、1つ以上の延長脚部と更に接続することができ、各延長脚部は、コネクタ(例えば、ルアーコネクタ)と連結されてもよい。本実施例2のカテーテルシャフトのそれぞれについて、雌ルアーコネクタ(図示せず)を、接続領域110に直接接着した。
【0113】
カテーテルシャフト100は、逆テーパ領域112と小径領域114とを更に含む。逆テーパ領域112は、バンプとも称され得る。小径領域114は、逆テーパ領域112の遠位端から、カテーテルシャフト100の遠位先端108まで延在する。本実施例2のカテーテルシャフトでは、接続領域110の長さLcは、0.35~0.51インチの範囲内であり、逆テーパ領域112の長さLTは、2インチ以下であり、カテーテルシャフト100の有効長LE(逆テーパ領域112及び小径領域114を含む)は、26インチ以上であった。したがって、小径領域114の長さは、少なくとも約23.5インチであった。小径領域114はまた、挿入領域とも称されてもよい。
【0114】
図2A及び
図2Bに示されるように、カテーテルシャフト100は、カテーテルシャフト100の全長に沿って、内壁126を介して互いに分離された2つのルーメン122、124を画定する。内壁126は隔壁又は中央バリアとも称され得るが、各ルーメンの内側表面を画定する。典型的な使用法では、各ルーメン122、124は、例えば、それぞれがルーメン122、124のうちの1つのみと流体連通している別個の延長チューブを介して、それぞれ別個にアクセスされてもよい。しかしながら、本実施例2のカテーテルシャフトのそれぞれについては、両方のルーメン122、124への同時アクセスが提供する雌ルアーコネクタ(図示せず)が、接続領域110に、Loctite 4011接着剤を介して接着された。
【0115】
図2Aは、大径の接続領域110を通る断面を示し、
図2Bは、小径領域114を通る断面を示す。内壁126は、接続領域110における第1の幅W
IW1と、小径領域114における第2の幅W
IW2とを画定する。内壁126の幅は、逆テーパ領域112の長さL
Tに沿って、第1の幅W
IW1から第2の幅W
IW2に先細状にすることができる。本実施例2のカテーテルシャフトでは、第1の幅W
IW1は0.007インチ以上であり、第2の幅W
IW2は0.005インチ以上であった。
【0116】
引き続き
図2A及び
図2Bを参照すると、各ルーメン122、124の外側表面は、内側表面の一方の端部からその反対側の端部まで延在するが、その外側表面は、側壁128によって画定される。側壁128は、カテーテルシャフト100の全周の周りに延在する。側壁128は、接続領域110における第1の幅W
SW1と、小径領域114における第2の幅W
SW2とを画定する。側壁128の幅は、逆テーパ領域112の長さL
Tに沿って、第1の幅W
SW1から第2の幅W
SW2に先細状にすることができる。本実施例2のカテーテルシャフトでは、第1の幅W
SW1は0.007インチ以上であり、第2の幅W
SW2は0.004インチ以上であった。
【0117】
側壁128の外側表面は、カテーテルシャフトの全長にわたる各位置において、カテーテルシャフトの外径を画定する。側壁128は、接続領域110における第1の外径OD1と、小径領域114における第2の外径OD2とを画定する。側壁128の外径は、逆テーパ領域112の長さLTに沿って、第1の外径OD1から第2の外径OD2に、先細状にすることができる。本実施例2のカテーテルシャフトでは、第1の外径OD1は約6フレンチ以下であり、第2外径OD2は5フレンチであった。カテーテルシャフト100は、有効長LEの挿入可能部分の、75、80、90又は95パーセント以上に沿って、第2の外径OD2を画定することができる。カテーテルシャフト100は、5フレンチ、二重ルーメン、逆テーパ(又はバンプ)型カテーテルシャフトと称され得る。このような構成のシャフトは、例えば、高圧注入可能なPICC装置での使用に特に好適であり得る。
【0118】
ロット1~5から押出成形された多数のカテーテルシャフトのサンプルを、初期破裂圧力試験にかけて、更なる試験の実行可能性を判定した。ロット2から形成されたカテーテルシャフトは、最小性能基準を満たさなかったため、更なる試験は、ロット1、3、4及び5から形成されたカテーテルシャフトに対してのみ実施した。
【0119】
ロット1、3、4及び5から形成されたカテーテルシャフトと、そこに接着された雌ルアーコネクタとを含む試験カテーテルを様々な方法で条件付けした後、試験を実施して、各条件で破裂が生じた圧力を決定した。特に指定しない限り、ロット1、3、4及び5のそれぞれから少なくとも5つのカテーテルを、各条件について試験した。
【0120】
試験カテーテルの第1グループを、「No Flush(洗浄なし)」で条件付けして、各カテーテルを、37℃の0.9%生理食塩水浴中に、少なくとも2時間浸漬した。この条件は、他の条件付けでは行われる、カテーテルをエタノールでプライミングすることも、その後の、プライミングされたカテーテルを生理食塩水で洗い流すことも伴わないため、この条件は「洗浄なし」と呼ばれる。カテーテルはその後、生理食塩水浴から取り出され、試験を実施した。
【0121】
試験カテーテルの第2のグループを、「Flush(洗浄あり)」で条件付けした。その際、各カテーテルは最初に上記の「洗浄無し」で条件付けした後、生理食塩水溶液浴から取り出された。次いで、カテーテルの雌ルアーを、70%のエタノールが満たされた10mLの注射器と連結した。注射器を使用して、カテーテルシャフトを70%のエタノールで洗浄し、プライミングした。注射器を雌ルアーコネクタから取り外すことなく、カテーテルの遠位端を折り重ね、バインダークリップで挟んでシャフトを閉鎖した。次いで、注射器を取り外し、雄ルアーロックキャップと直ちに交換した。次いで、カテーテルを、37℃の0.9%生理食塩浴中に、60~70分間浸漬した。次いで、カテーテルを0.9%生理食塩浴から再び取り出した。雄ルアーロックキャップを取り外し、37℃の0.9%生理食塩水で満たした10mL注射器と直ちに交換した。バインダークリップを取り外し、注射器を使用してカテーテルシャフトを洗浄した。この洗浄による条件付けにかけた後、カテーテルを試験した。
【0122】
洗浄による条件付けにおいては、カテーテルが70%エタノールでプライミングされ、0.9%生理食塩水浴中に60~70分浸漬されたが、そのような洗浄による条件付けは、アルコールロック又はエタノールロックとも称され得るものであり、臨床現場におけるアルコールロックと類似のものである。例えば、PICCカテーテルが患者内に存在している間、そのPICCカテーテルは細菌又は他の微生物で汚染される場合があり得る。しかも/又は、脂質及び/若しくは他の物質が、カテーテルを少なくとも部分的に閉塞させてしまう場合もあり得る。この環境の下で、エタノール又はイソプロピルアルコールをカテーテル内に導入して、カテーテル(特に、アルコールが導入されたルーメン(複数可)を画定するカテーテルの内面)が、アルコールに直接的かつ長期間にわたってさらされる状態を維持するようにしてもよい。このようにさらすことによって、ルーメン(複数可)を消毒することができ、かつ/又はルーメンを閉塞させている脂質又は他の物質を一掃することができる。臨床の現場においては、1回のアルコールロックの実施は、望ましくは、少なくとも1時間かけて実行するとよい。アルコールロック期間は、一部のコンテクストにおいては、より長くなったり、短くなったりしてよい。しかしながら、少なくとも1時間のアルコールロックによって、一般的には、臨床的目的を達成することができるので、本明細書では、臨床的に許容可能な、臨床的に妥当な又は臨床的に有効なロック期間と称され得る。1回のアルコールロックによって達成しようとする目的に応じて、様々な例において、臨床的に有効なロック期間は、約10、20、30、45又は60分以上であり得る。
【0123】
試験カテーテルの更なるグループを、「洗浄&##分間」による条件付けにかけた。その条件付けにおいては、各カテーテルはまず、上記の「洗浄なし」及び「洗浄あり」条件付けにかけられ、次いで、「##分間」という用語によって指定された回収期間の間、37℃の0.9%生理食塩水浴中に浸漬された。15、30、45、60及び105分間の回収期間を試験した。したがって、例えば、「洗浄&15分間」条件付けにかけられるカテーテルは、まず「洗浄なし」条件付けにかけられ、続いて「洗浄あり」条件付けにかけられ、その後で、0.9%生理食塩水浴中に、15分間の回収期間の間、浸漬された。回収期間にわたる浸漬が完了した時点で、カテーテルを生理食塩水浴から取り出し、試験した。
【0124】
事前の条件付けが完了すると、カテーテルは、そのチューブの遠位端を約1インチにわたって折り畳み、折り畳まれた端部をバインダークリップで固定することによって、遠位端でクランプされた。次いで、カテーテルを、雌ルアーコネクタを介して試験装置に連結した。試験装置は、カテーテルに窒素ガスを充填し、カテーテルシャフトが破裂するまでガスの圧力を上昇させ、破裂が生じた圧力を記録した。前述したように、カテーテルは、カテーテルシャフトの両方のルーメンと同時に流体連通を確立する雌ルアーコネクタを装着して構築された。したがって、カテーテルシャフトに圧力をかけている間、両方のルーメンは、同時に同一の圧力条件にさらされていた。管腔のいずれかが破損したとき(すなわち、側壁128が破裂したとき)に、シャフトの破裂圧力に達した。
【0125】
試験結果を以下の表3及び
図3に提供する。
図3は、それぞれロット1、3、4及び5のそれぞれに関連付けられたカテーテルのデータポイントを接続する別個の曲線211、213、214及び215を有するプロット200を示す。プロット200では、隣接する試験条件どうしの間に均一な水平方向間隔がとられているが、そのことは、全ての場合において、それらの条件付けに関連する時間の量を正確に示すわけではない。言い換えると、横軸は、全ての場合において、時間に関して正確にスケーリングされていないということである。
【表3】
【0126】
ロット3の材料で形成されたカテーテルシャフトを有するカテーテルは、様々な事前条件付けの各々の下で、最も高い破裂圧力を示した。更に、これらのカテーテルは、他の残りのロットからのカテーテルよりもアルコールロック(すなわち、洗浄による条件付け)に対してより耐性があった。具体的には、洗浄なしの条件付けと洗浄ありの条件付けとの間での破裂圧力の比較により、ロット1のカテーテルでは45%の破裂圧力の低下、ロット4のカテーテルでは49%の低下、ロット5のカテーテルでは46%の低下、ロット3のカテーテルでは40%の低下があったことが示されている。更に、ロット3のカテーテルは、残りのロットのものとほぼ同じ速度でアルコールロックから回収した。
【0127】
これらは、特にロット3の材料の性能をロット4の性能と比較した場合に、驚くべき、予期せぬ、予測不可能な結果である。再び表1を参照すると、ロット3及びロット4をそれぞれ用いるサンプル3及びサンプル4のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、それぞれ非常に類似していた。これらの材料は、軟性セグメント対硬性セグメントの比率がほぼ同一であり、非常に類似した硬度を示していた。しかしながら、これらのポリウレタンは、ポリシロキサンポリオールから構成される軟性セグメントの割合において異なっていた。具体的には、ロット4の29.4%に対して、ロット3では10.2%であった。
【0128】
洗浄なしの条件付けにかけられたこれらのロットからのカテーテルでは、ロット3のカテーテルの平均破裂圧力が、ロット4のカテーテルの平均破裂圧力を凌駕したものの、その差は、2%に満たなかった。これは、つい先ほど論じた両物質間の類似性を考慮すると、驚くべきことである。しかしながら、洗浄ありの条件付けにかけられた(すなわち、アルコールロックされた)カテーテルでは、ロット3のカテーテルの平均破裂圧力は、ロット4のカテーテルの破裂圧力を、その差17%で凌駕した。したがって、非常に驚くべきことに、ロット3のカテーテルは、ロット4カテーテルよりも、アルコールロックに対して有意により高い耐性を示した。前述したように、シリコーンは、アルコールなどの極性有機溶媒に耐性があることが知られており、したがって、アルコールロックに耐えることができるカテーテルに使用される場合があり得る。したがって、軟性セグメント中に含有されるシリコーンの量が多ければ、アルコール耐性が改善されるものと期待するであろうが、この一連の試験において、その逆であることが観察された。
【0129】
ロット3のカテーテルは、アルコールロックの実施を1回実行した後であっても、高圧に耐えることができる。具体的には、ロット3のカテーテルは、1時間以上のロック期間にわたってアルコールロックにかけられ、その直後に破裂試験にかけられ、あるいは様々な回収期間を経過した後に破裂試験にかけられた。全く回収期間をもうけなくても、ロット3のカテーテルは、高圧注入圧力で使用されるのに好適である。具体的には、洗浄ありの条件付け(すなわち、少なくとも1時間のロック期間)の直後に、ロット3のカテーテルの破裂圧力は、247±5psiであった。したがって、これらのカテーテルは、最大約180、190、200、210、220、230,又は更には240psiの圧力で動作可能である。カテーテルの性能は、15、30、45、60及び105分の回収期間後に、着実に改善された。例えば、15分の回収期間の後では、カテーテルは、最大約180、190、200、210、220、230、240又は更には250psiの圧力で動作可能である。45分の回収期間の後では、カテーテルは、最大約180、190、200、210、220、230、240、250又は更には260psiの圧力で動作可能である。60分の回収期間の後では、カテーテルは、最大約180、190、200、210、220、230、240、250、260又は更には270psiの圧力で動作可能である。105分の回収期間後では、カテーテルは、最大約180、190、200、210、220、230、240、250、260、270又は更には280psiの圧力で動作可能である。
実施例3
【0130】
ロット1、3、4及び5のそれぞれが、実施例2に関して上述したような量で、実施例2に関して説明され、
図1、
図2A及び
図2Bに示される形状の、複数の二重ルーメン、逆テーパ型カテーテルシャフトに押出成形された。次いで、カテーテルシャフトの引張強度及びひずみに対するアルコールロックの効果を、シャフトの3つの別個の領域で試験した。具体的には、押出成形されたチューブの3つの異なるセクションを破断するために必要な引張力を、様々な条件で測定した。各状態について、ロット1、3及び5のそれぞれについて、5~10本のカテーテルを試験した。引張強度試験の平均結果を、
図4A、
図4B及び
図4Cの、プロット301、302及び303にそれぞれ示す。また、ひずみ試験の平均結果を
図5A、
図5B及び
図5Cのプロット401、402及び403にそれぞれ示す。これらのプロットでは、曲線311、313、及び315は、それぞれロット1、3、及び5のそれぞれに関連付けられたカテーテルのデータポイントを接続し、以下、321、323、及び325と、331、333、及び335と、411、413、及び415と、421、423、及び425と、431、433、及び435も同様である。更に、これらのプロットでは、隣接する試験条件どうしの間に均一な水平方向間隔がとられているが、そのことは、全ての場合において、それらの条件付けに関連する時間の量を正確に示すわけではない。言い換えると、横軸は、全ての場合において、時間に関して正確にスケーリングされていないということである。
【0131】
第1のグループの試験カテーテルシャフトに関して、各シャフトは、シャフトの3つの指定された区分から、3つの別個の3インチ長セグメントに切断された。なお、これらのセクションは、本明細書ではセクション1、2及び3として識別される。再び
図1を参照すると、セクション1は、カテーテルシャフトの近位端の3インチ領域を表すが、このセクション1には、逆テーパ領域112の全体を含み、かつその両端それぞれにある、接続領域110及び小径領域114のそれぞれの小さな部分を含む。セクション2は、小径領域114のほぼ中央に位置する3インチ領域を表す。セクション3は、遠位先端108のわずかに近位側に位置する3インチ領域を表す。切断後、各セグメントを試験装置内にクランプして、極限引張強度及びひずみについて試験した。
【0132】
この第1グループの試験カテーテルシャフトは、生理食塩水又は他の溶液にさらしたりすることを伴ういかなる事前の条件付けにもかけられなかった。したがって、この条件付けは、本明細書では「Dry(乾燥)」と称される。ロット4から形成されたカテーテルシャフトの乾燥引張強度及びひずみも試験したが、ロット1、3及び5からのものよりも十分に低かったため、ロット4からのカテーテルシャフトに対しては、更なる試験が行われないこととした。したがって、
図4A、
図4B、及び
図4C中のプロット301、302、及び303は、それぞれ、ロット1、3、及び5の試験結果のみを対象とする。
【0133】
試験カテーテルの更なるグループを、実施例2に関して上に説明した、「洗浄なし」、「洗浄あり」及び「洗浄&##分間」の条件付けにかけた。15、30、45及び60分間の回収期間を試験した。各グループについて、各カテーテルシャフトをセクション1、2及び3に切断した後、各セクションを試験した。
【0134】
これらの試験により、驚くべき、予想外及び予測不可能な結果が更に明らかになった。極限引張強度に関して、
図4A~
図4Cに示されるように、ロット1、3及び5からの材料から形成されたカテーテルシャフトは、互いに非常に類似した挙動をするものの、ロット1のグループが一般的に最も高い極限引張強度を示す一方で、ロット3からのグループは、一般的に最も低い極限引張強度を示す。最も高い極限引張強度を示す材料は、同様に、破裂に対する最も高い抵抗性を示すということが予想され得る。しかしこれは観察された事実とは異なっている。ロット1は一般的に、全ての試験条件下で、残りのロットの場合よりも極限引張強度について良好な性能を発揮し、ロット3は、一般的にその性能が最も低かったが、破裂圧力試験については、その逆となった(
図3参照)。場合によっては、高圧注入に関わる高圧と、それに伴う耐破裂性の重要性とを鑑みて、ロット3の材料が、ロット1の材料よりも、高圧注入可能なカテーテルを形成するのに好ましい場合があり得る。言い換えると、そのような事例では、耐破裂性能が優れていることが、極限引張強度性能に優れていることよりも、高圧注入の過酷さに耐えることに関連性があり得るため、ロット3がロット1に好ましい場合があり得る。
【0135】
図5A~
図5Cもまた、ロット3の材料に関する驚くべき結果を示す。ポリウレタンの性能は、典型的には、高温で水性環境にさらされると劣化する。しかしながら、ロット3の材料は、「洗浄なし」の条件付けにかけられた後(すなわち、37℃で生理食塩水溶液に浸漬された後)、そのひずみが一貫して著しく改善されていた。こうしたひずみに関する結果は、ロット1及び5の材料から形成されたカテーテルシャフトについては、より控えめであるか又は存在しないかのいずれかであった。更に、ロット3の材料は、「洗浄あり」の条件付けから急速に回収した(すなわち、アルコールロックから迅速に回収した)。
実施例4
【0136】
比較の目的で、同様の硬さを有する3つの異なる材料から、試験カテーテルを形成した。第1の材料は、Biomericsから入手でき、商標QUADRAFLEX(登録商標)で販売されている、カテーテルグレード脂肪族ポリエーテルポリウレタン約69重量%に、30重量%の硫酸バリウム及び約1重量%の着色剤を配合して形成された。第2の材料は、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールと、メチレンジフェニルジイソシアネートと、1,4-ブタンジオールとで形成された、カテーテルグレードの芳香族ポリカーボネートポリウレタン69重量%に、30重量%の硫酸バリウムと1重量%の着色剤とを配合して形成された。第3の材料は、実施例2に関して既に説明したようなロット3の量であり、したがって、実施例1に関して説明したサンプル3のシリコーン処理芳香族ポリカーボネートポリウレタン69.1重量%と、硫酸バリウム29.6重量%と、着色剤1.3重量%とを含んでいた。各試験カテーテルは、実施例2に関して既に説明したのと同じ構成のカテーテルシャフト及びルアーコネクタを含んでいた。カテーテルは、例えば実施例2に関して既に述べたような事前の条件付けにかけた後、破裂圧力について試験を実施した。
【0137】
図6に、試験結果のプロット500を提供する。各データポイントについて、3~6本のカテーテルを試験し、その平均を示したが、例外はアスタリスクで識別されたデータポイントであり、それについては、1本のカテーテルのみが試験された。別個の曲線511、512及び513が、QUADRAFLEX(登録商標)、芳香族ポリカーボネートポリウレタン及びロット3の材料に関連付けられたカテーテルのデータポイントを接続している。236psiでの更なる「より低い仕様限界」(LSL)も示されており、これは、場合によっては、一部の特定のカテーテルが、高圧注入可能であると考えられるために、破裂することなく動作することが予想又は必要とされ得る圧力を表す。プロット500の横軸上の、「洗浄なし」、「洗浄あり」及び「洗浄&##分間」として識別された条件付けは、実施例2に関して既に説明した、同一の名称の条件付けと同じものである。
図3~
図5Cのプロットと同様、横軸は、全ての場合において、時間に関して正確にスケーリングされていないということである。
【0138】
シリコーン処理芳香族ポリカーボネートポリウレタンは、芳香族ポリカーボネートポリウレタン及び脂肪族ポリエーテルポリウレタンを著しく凌駕する性能を発揮したことが容易に見て取れる。これらの結果はまた、シリコーン処理芳香族ポリカーボネートから形成されたカテーテルが、1回のアルコールロック後であっても、高圧注入の過酷さに耐えることができたことを示している。
実施例5
【0139】
上記実施例2に説明したように、様々な量のロット3の材料を使用して、その材料に対して一連の分析試験を実施した。その結果を以下の表4に提供している。試験は、表4に特定されたASTM規格に準拠して実施した。測定値には具体的に示された不確実性のレベルとともに表されてはいないが、これらの値には、少なくとも何らかの不確実性が存在するということが理解される。したがって、各値は、値の小さい範囲によって幅を持たせて理解されてもよい。更に、前述したように、表4で測定された値の付随する範囲も想到されるように、原材料に対して、許容可能な値の範囲を考えることも可能である。
【表4】
IV.PICC装置
【0140】
図7は、本開示の実施形態を使用して構築することができるカテーテル装置600の例示的な実施形態を示す斜視図である。図示されたPICC装置600は、具体的には、高圧注入可能な二重ルーメンPICCであり、したがって、本明細書ではPICC装置又はPICCアセンブリと呼ばれることもある。カテーテル装置600は、本明細書に開示される材料の実施形態から少なくとも部分的に構築され得る、様々な形状のカテーテル装置を例示したものに過ぎない。例えば、他の例では、
図7に示されるものと類似のカテーテル装置は、異なる数の延長脚部及びルーメンを含んでもよく、異なる寸法(例えば、より大きい又はより小さい外径、壁厚、隔壁厚さ、長さ)のカテーテルシャフトを有してもよい等のことが考えられる。より一般的には、PICC装置600は、本明細書に開示される材料の実施形態から少なくとも部分的に構築され得る様々な形状の医療用装置を例示したものである。他の好適な医療用装置は、例えば、埋め込み可能な血管アクセスポートなどの、様々な埋め込み可能な装置の任意のものを含み得る。
【0141】
図示した実施形態では、PICC装置600は、二重ルーメンカテーテルシャフト602、延長脚部611、612及び接合ハブ640を含む。本明細書では小径部分114(
図1を参照)とも称される、カテーテルシャフト602の長い挿入可能な遠位部分は、その全長に沿って実質的に均一であり、患者の解剖学的構造を有する標的領域において正確に配置されるため、所望の長さにトリミングされてもよい。この領域は、そのようなトリミングの精度を支援するためのマーキングを含んでもよい。
【0142】
延長脚部611、612は、それぞれ別個のカテーテルシャフトルーメンと流体連通している延長チューブ613、614を、それぞれ含む。延長脚部611、612は、それぞれ、各延長チューブ613、614の近位端に、雌ルアーコネクタ621、622を更に含み、かつ各延長チューブ613、614上に配置されたクランプ631、632を更に含む。接合ハブ640は、延長脚部611、612をカテーテルシャフト602に接続する。接合ハブ640は、2つの部品で形成される。具体的には、接合ハブ640は、接合コア642(
図8Bを参照)及び接合カバー644を含む。様々な実施形態では、少なくともカテーテルシャフト602、延長脚部611、612、接合コア642及び接合カバー644は、本開示のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの実施形態から形成される。本明細書に開示されるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの配合物の任意の組み合わせが想到される。
【0143】
図8A~
図8Cは、PICC装置600を組み立てる又は製造するための例示的なプロセスの、様々な段階を示す。
図8Aに示される段階の前に、ルアーコネクタ621、622は、例えば、当該技術分野において一般的に知られている技術及び装置を使用して、延長チューブ613、614の近位端上にオーバーモールドされ、クランプ631、632を、延長チューブ613、614の遠位端の上で前進させることができる。
図8Aに示すように、コアピン651、652は、延長チューブ613、614を通って、カテーテルシャフト602のそれぞれ対応するルーメン内に挿入され得る。ルーメンは、
図2A及び
図2Bに示されるような、カテーテルシャフト100のルーメン122、124と同様である。
【0144】
図8Bを参照すると、接合コア642は、カテーテルシャフト602の近位端上及び延長チューブ613、614の遠位端上にオーバーモールドされ得る。
図8Cを参照すると、接合カバー644は次に、接合コア642、カテーテルシャフト602の近位端及び延長チューブ613、614の遠位端上にオーバーモールドされ得る。次いで、コアピン651、652は、延長チューブ613、614を通って近位方向に取り外され得るが、その結果、連結コア642を通る流体通路又はチャネル661、662が残されることになる。流体通路又はチャネル661、662のそれぞれが、延長チューブ613、614のうちの1つを、カテーテルシャフト602のルーメンのうちの対応する1つに流体接続する。
【0145】
ひとたびPICC装置600が形成されると、PICC装置600は、2つの流体経路663、664を含み、それらの2つの流体経路663、664に沿って流体が、患者の中に導入され、かつ/又は患者から除去され得る。流体経路663は、延長脚部611、接合ハブ640及びカテーテルシャフト602を通過する。言い換えると、流体経路663は、コネクタ621を通る流体通路、延長チューブ613のルーメン、接合ハブ640を通るチャネル661及びカテーテルシャフト602の2つのルーメンのうちの一方を含む。同様に、流体経路664は、延長脚部612、接合ハブ640及びカテーテルシャフト602を通過する。言い換えると、流体経路664は、コネクタ622を通る流体通路、延長チューブ614のルーメン、接合ハブ640を通るチャネル662及びカテーテルシャフト602の2つのルーメンの他方を含む。
【0146】
一部の実施形態では、単一層又はワンショット接合ハブ640が代替的に使用されてもよい。しかしながら、本実施例の二層又はツーショット接合ハブ640は、ある特定の用途においては有利となる場合があり得る。例えば、例えば高圧注入用途などの一部の場合には、接合コア642は、延長チューブ613、614及び/又はカテーテルシャフト602の材料よりも著しく硬質であることが望ましい場合がある。高圧注入中、圧力は、PICC装置600の近位領域に向かうにつれてより高くなり、かつ遠位方向に向かって減少し、カテーテルシャフト602の遠位端において、最小となり得る。より硬質である接合コア642は、近位領域におけるこれらの高い圧力に容易に耐えることができ、膨潤に対してより抵抗性を示し得る。更に、より硬質である接合コア642は、アルコールロック実行中にアルコールにさらされても、より高い耐性を示し得る。
【0147】
更なる例では、特に硬質である接合コア642が使用される場合に、より軟質である接合カバー644を含むことが望ましい場合がある。接合カバーは、接合部640を患者にとってより快適なものとすることができる。これは、PICCが典型的に使用される長期間にわたって、患者が露出した接合部640と接触する機会が多い一部の場合においては、PICCカテーテルに関して特に有用であり得る。場合によっては、接合カバー644は、接合コア642よりも軟質であるものであってもよいだけでなく、同様に、延長チューブ613、614及び/又はカテーテルシャフト602よりも軟質であるものであってもよい。
【0148】
場合によっては、カテーテルシャフト602及び延長チューブ613、614は、同じ材料で形成されてもよく、かつ/又は同じ硬さを有していてもよい。例えば、場合によっては、カテーテルシャフト602及び延長チューブ613、614は、同一の化学的配合を有する材料で形成されてもよい。更なる例では、材料は、いかなる添加剤を配合されなくてもよく、あるいは同一の添加剤を物理的に配合されてもよい。
【0149】
他の例では、カテーテルシャフト602及び延長チューブ613、614は、異なる材料で形成されてもよく、かつ/又は異なる硬さを有してもよい。例えば、一部の実施形態では、延長チューブ613、614は、カテーテルシャフト602が形成されるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンと比較して、より高い割合の硬性セグメントを有するシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンで形成されてもよい。言い換えると、延長チューブ613、614は、カテーテルシャフト602が形成されるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの化学的配合とは異なる化学的配合を有するシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンで形成されてもよい。場合によっては、延長チューブ613、614により硬質である材料が使用される場合、延長チューブ613、614は、クランプ631、632の繰り返し及び/又は長時間にわたる閉鎖による変形に対して、より良好に耐えることができる場合もあり得る。他の又は更なる実施形態では、より硬質である延長チューブ613、614は、PICC装置600及び/又はカテーテルシャフト602の全体構成によっては、カテーテルシャフト602の少なくとも近位端によって経験され得るよりも高い圧力により良好に耐えられる場合があり得る。
【0150】
場合によっては、カテーテルシャフト602の材料と延長チューブ613、614の材料とは、その中に含有される添加剤に関して異なっている場合があり得る。例えば、一部の実施形態では、カテーテルシャフト602は、1つ以上の放射線不透過性付与剤と配合されてもよく、延長チューブ613、614の材料には配合されていない場合があり得る。更に、カテーテルシャフト602と、延長チューブ613、614のうちの1つ以上とには、異なる種類及び/又は量の着色剤が配合されていてもよい。例えば、一部の実施形態では、延長チューブ613、614及びカテーテルシャフト602は、同一の化学的配合を有するシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンから形成されてもよいが、それに物理的に配合された添加剤の有無に関して異なっていてもよい。他の例では、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンどうしでは、その化学的配合が異なる場合があり、更なる例では、これらのポリウレタンは、異なる種類及び/又は量の、着色剤及び/又は他の添加剤と物理的に配合される。
【0151】
場合によっては、延長チューブ613、614は同じ材料で形成されるが、この同じ材料が、カテーテルシャフト602に使用される材料と同じ材料であってもなくてもよい。他の実施形態では、各延長チューブ613、614の各々は、互いに異なる材料で形成される。例えば、一部の実施形態では、一方の延長チューブ613は、第1の化学的配合を有するシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンで形成され、他方の延長チューブ614は、第2の化学的配合を有するシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンで形成される。場合によっては、第1及び第2の化学的配合は互いに同一であるが、それぞれのポリウレタンには、異なる種類及び/又は量の、着色剤及び/又は他の添加剤が物理的に配合される。例えば、延長チューブ613、614は、各延長チューブ613、614に対して異なる機能又は指定を意味するように、異なる色に着色されてもよい(例えば、1つの延長チューブ613、614は、高圧注入用に指定されてもよく、他方は、高圧注入用に指定されなくてもよい)。他の例では、第1の化学的配合と第2の化学的配合とは異なる場合があり、更なる例では、それぞれのポリウレタンは、異なる種類及び/又は量の、着色剤及び/又は他の添加剤と物理的に配合される。
【0152】
接合コア642が、図示した実施形態のように、オーバーモールドを介してカテーテルシャフト602及び延長チューブ613、614に接合される場合、これらの構成要素が形成される材料のオーバーモールドへの適合性を確保することが望ましい場合がある。特に、材料どうしは、オーバーモールド中に互いにしっかりと結合することが可能であるべきである。言い換えると、接合コア642の材料が溶融された状態でカテーテルシャフト602の先端部および延長チューブ613、614の周りに高温で導入され、互いに接触する様々な材料が、一緒に流れ、冷却されたときにしっかりと互いに結合することが即座に可能となるべきである。高圧注入可能なカテーテルでは、これらの結合部は高圧に耐えることが可能であるべきである。言い換えると、これらの結合部は、高圧注入に関連する高い圧力でも漏れが防止されているべきである。
【0153】
特定の実施形態では、カテーテルシャフト602の延長チューブ613、614及び接合コア642は、本開示によるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの同じ実施形態又は異なる実施形態から形成される。例えば、一部の実施形態では、カテーテルシャフト602及び延長チューブ613、614はそれぞれ、同じシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン材料を含み得る。言い換えると、各材料のポリウレタン成分は、同じ化学的配合を有し得る。更なる実施形態では、カテーテルシャフト602のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンには、放射線不透過性付与剤及び第1の量の着色剤、並びに任意選択的に他の添加剤が配合されてもよい。他方、延長チューブ613、614の上記と同じシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンには、放射線不透過性付与剤が配合されなくてもよいが、第2の量の着色剤及び任意選択的に、他の添加剤が配合されてもよい。様々な実施形態では、第1の量の着色剤と第2の量の着色剤とは、異なっていてもよい。例えば、場合によっては、第1の量の着色剤は第2の量の着色剤よりも多く、その結果、カテーテルシャフト602が不透明である一方、延長チューブ613、614が透明又は半透明であってもよい。更なる実施形態では、異なる種類の着色剤を使用して、異なる色合いを得ることができる。
【0154】
更なる実施形態では、接合コア642は、本開示によるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの異なる実施形態から形成される。言い換えると、接合コア642のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、延長チューブ613、614及び/又はカテーテルシャフト602のうちの1つ以上の化学的配合とは、異なる化学的配合を有してもよい。例えば、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、硬性セグメントをより多くの含有量で有してもよい。言い換えると、イソシアネート及び鎖延長剤は、接合コア642に対してより大きな相対量で存在してもよい。したがって、一部の実施形態では、軟性セグメントは、接合コア642の場合にはより少ない量で存在するが、軟性セグメントの相対的な含有量は、カテーテルシャフト602及び延長チューブ613、614に使用される材料の軟性セグメントのものと実質的に同じであり得る。言い換えると、異なるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの化学的配合において、ポリシロキサン及びポリカーボネートの総重量に対するポリシロキサンの重量パーセントは、実質的に同じであってもよい。様々な実施形態では、軟性成分に対するポリシロキサンの重量パーセントは、異なる材料どうしの間で異なり得るが、その差分は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.75、1、1.5、2、3,又は5%以下であり得る。特定の実施形態では、軟性セグメントの量に対して、ポリシロキサンの含有量が同等であった場合、異なるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンどうしの間に、高圧注入中の高い圧力に耐えるのに、とりわけよく適し得る、強力で信頼できる結合を得ることができる。
【0155】
なお更なる実施形態では、接合カバー644は、本開示によるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの実施形態から形成されるが、その実施形態は、接合コア642及び/又はカテーテルシャフト602及び延長チューブ613、614のうちの1つ以上が形成される本開示によるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの実施形態とは異なる実施形態である。例えば、接合カバー644のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、他のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンのそれぞれよりも、低い含有量の硬性セグメントを有してもよい。言い換えると、イソシアネート及び鎖延長剤は、接合カバー644の場合に、より小さい相対量で存在してもよい。そのため、一部の実施形態では、軟性セグメントはより多くの量で存在するが、軟性セグメントの相対的な含有量は、接合コア642、カテーテルシャフト602及び/又は延長チューブ613、614に使用される材料の軟性セグメントの相対的な含有量と、実質的に同じであってもよい。言い換えると、様々なシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの配合において、ポリシロキサン及びポリカーボネートの総重量に対するポリシロキサンの重量パーセントは、様々な材料どうしの間で実質的に同じであってもよい。PICC装置600の様々な実施形態では、軟性成分に対するポリシロキサンの重量パーセントは、任意の2つの異なる材料間で異なり得るが、その差分は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.75、1、1.5、2、3又は5パーセント以下であり得る。また、上記の重量パーセントは、全ての異なる材料どうしの間でも異なり得るが、その差分は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.75、1、1.5、2、3、5、7.5又は10パーセント以下であり得る。特定の実施形態では、軟性セグメントの量に対して、ポリシロキサンの含有量が同等であった場合、異なるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンどうしの間に、高圧注入中の高い圧力に耐えるのに、とりわけよく適し得る、強力で信頼できる結合を得ることができる。結合部はまた、接合コア642に確実に取り付けられたままである、信頼性の高いソフトタッチカバーを確保することができる。
【0156】
他の又は更なる実施形態では、様々な構成要素(延長チューブ、カテーテルシャフト、接合コア及び/又は接合カバー)のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンはまた、ある範囲のデュロメータ硬さの値を有し得る。様々な例において、カテーテルシャフトのシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約65~約100、約70~約90、約75~約85、約91~約100、約94~約98、約96~約100、約95~約99、約96~約98又は約97~約100(ショアAスケールの上端からわずかに外れた硬さ、すなわち100よりも硬い硬さを含む)のショアAデュロメータ硬さの値を有し得る。他の又は更なる例では、接合コアのシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約15~約85、約60~約80又は約65~約75のショアDデュロメータ硬さの値を有し得る。更に他の又は更なる実施形態では、接合カバーのシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、約65~約100、約70~約90、約75~約85又は約90~約100のショアAデュロメータ硬さの値を有し得る。
【0157】
他の又は更なる実施形態では、1つ以上の構成要素の一部分のみが、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含む。例えば、一部の実施形態では、カテーテルシャフト602は、一般に、異なる材料(例えば、異なる種類のポリウレタン)で形成されてもよく、ルーメンの内面は、一実施形態のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンでコーティングされてもよい。他の又は更なる実施形態では、カテーテルシャフト602は、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンと、別の種類のポリウレタンとの共押出成形物として形成されてもよい。
【0158】
ルアーコネクタ621、622は、任意の好適な材料で形成されてもよく、場合によっては、延長チューブ613、614の近位端にオーバーモールドされてもよい。一部の実施形態では、コネクタ621、622は、例えば、Biomericsから入手可能なQUADRAPLAST(登録商標)などの、硬質な熱可塑性ポリウレタンで形成されてもよい。コネクタ621、622と延長チューブ613、614との間の熱成形された結合は、望ましくは、高圧注入に関連する高い圧力に耐えるのに十分に強固であり得る。
実施例6
【0159】
一実施例では、PICC装置600は、実施例2に関して既に説明し、
図1、
図2A、及び
図2Bに示されるものと同じ形状のカテーテルシャフト602を含む。具体的には、
図1を参照すると、カテーテルシャフト602は、以下の通りの様々な識別された寸法を有する。L
Cは、0.35~0.51インチであり、L
Tは2.0インチ以下(典型的には1.3~1.6インチ)であり、L
Eは約22.4インチ(典型的には22.3~22.5インチ(すなわち、約57.0センチメートル、典型的には56.8~57.2センチメートル)である。
図2Aを参照すると、接続領域110は、以下の通りの様々な識別された寸法を有する。W
SW1は0.007インチ以上であり、W
IW1は0.007インチ以上であり、OD
1は0.092インチ(+0.002/-0.003インチ)である。
図2Bを参照すると、小径領域114の様々な識別された寸法は、以下の通りである。W
SW2は、0.004インチ以上(一般に、約0.007インチ)であり、W
IW2は0.005インチ以上であり、OD
2は0.069インチ(+0.002/-0.003インチ)である。
【0160】
PICC装置600は、実質的に同一の延長チューブ613、614を更に含み、延長チューブ613、614の各々は、内径が0.066±0.002インチで、外径が0.106±0.003インチの、実質的に円筒形の中空管を画定する。延長チューブ613、614は最初に、長い管に押出成形され、その長い管は、その近位端でルアーコネクタ621、622により、かつその遠位端で接合コア642によりオーバーモールドされるのに先立って、3.75インチの長さに切断される。オーバーモールドの後で、露出している部分の長さは、2.75~3.25インチ(典型的には2.9±0.03インチ)の範囲内である。
【0161】
クランプ631、632は、硬質プラスチックで形成される。クランプ631、632はそれぞれ、可撓性ラッチアームを含み、その可撓性ラッチアームを介して延長チューブ613、614の選択的開閉が実現される。クランプ631、632は、延長チューブ613、614を圧縮し、変形させて閉鎖させ、挟んで閉じる。クランプ631、632は、(選択的に解放可能な方式で)ロックされて、延長チューブ613、614を変形し、閉じた状態に維持する。
【0162】
カテーテルシャフト602、延長チューブ613、614、接合コア642及び接合カバー644はそれぞれ、本開示によるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの実施形態を含む材料で形成される。その材料は、実施例1に説明されている原料及びプロセスを使用して製造され、しかも、該当する場合には、上記実施例2に説明されている追加的プロセスを使用して製造された。しかしながら、GLYCOLUBE(商標)VL添加剤が、重合中に添加されたものの、反応には関与しない。むしろ、この添加剤は、重合中に混合物全体に分散され、硬化したポリマーの中に物理的に混ぜ込まれる。カテーテルシャフト602及び延長チューブ613、614の材料はそれぞれ、上記実施例1のサンプル3として識別されたシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含む。更に、上記の実施例2でロット3として指定された材料が、カテーテルシャフト602に使用された。それらの材料の配合は、以下の表5に提供される。
【表5】
【0163】
表5において識別した配合材料の各種特性を下記表6に示す。これらの特性は、チューブ又はシャフトに押出成形する前であって、オーバーモールドされる前の状態の材料の量で測定された。言い換えると、PICC装置の構成要素のいずれにも形成される前の状態の材料の量で測定された。各特性について、表6に特定されたASTM規格に準拠して試験を実施した。測定値には具体的に示された不確実性のレベルとともに表されてはいないが、これらの値には、少なくとも何らかの不確実性が存在するということが理解される。したがって、各値は、値の小さい範囲によって幅を持たせて理解されてもよい。更に、表6で測定された値の付随する範囲も想到されるように、原材料に対して許容可能な値の範囲を考えることも可能である。例えば、硫酸バリウムは、濃度29.6±2重量%の量で存在することができ、それに応じて残りの成分の量を調整することができる。言い換えると、場合によっては、硫酸バリウムの目標量(例えば、最終製品を配合するための仕様に規定の量)は、29.6重量%(ただし、±2重量%の許容差)である。
【表6】
実施例7
【0164】
実施例6の仕様に従った40個のPICC装置の第1の試験グループ(グループ1)を組み立てた後、標準的なエチレンオキシド滅菌技術(本明細書では滅菌条件付けと呼ばれる)によって滅菌した。次いで、PICC装置を、ASTMのD4332-14規格に従って、熱による条件付けにかけた。その際のパラメータは、温度が-18±2℃、相対湿度は制御せず、実施時間は最低でも72時間としたものと、温度が23℃±5℃、相対湿度(RH)が50%±10%で、実施時間は最低でも12時間としたものと、温度が40℃±2℃、相対湿度(RH)が90%±5%で、実施時間は最低でも72時間としたものがあった。PICC装置は更に、浸漬による条件付けにかけられたが、その際、PICC装置は、37±2℃の温度に保持された0.9%生理食塩水溶液中に、最低2時間にわたって浸漬された。このような事前の条件付けをされた装置の各々のカテーテルシャフトを試験して、装置の引張強度、弾性率、割線弾性係数及び伸び率(ピーク力におけるひずみ)を判定した。
【0165】
40個のPICC装置による第2の試験グループ(グループ2)を製造し、第1のグループと同じ方法で滅菌及び熱による条件付けにかけた後、6ヶ月間の自然劣化と同等の劣化を実現するための加速化劣化処理(本明細書では加速化劣化条件付けと呼ばれる)にかけた。加速化劣化処理は、PICC装置を、温度50℃及び周囲相対湿度で、最低28日間にわたって保管することを含んでいた。劣化した装置は、既に説明したような、浸漬による条件付けにかけた。装置の各々のカテーテルシャフトを試験して、装置の引張強度、弾性率、割線弾性係数及び伸び率(ピーク力におけるひずみ)を判定した。グループ1(T=0として識別。これは加速化劣化していないことを示す)及びグループ2(T=6カ月AAとして識別。これは6ヶ月間の加速化劣化を示す)の両方に関する結果を表7に示す。
【表7】
実施例8
【0166】
実施例6の仕様に従った40個のPICC装置の試験グループ(グループ3)を組み立て、滅菌し、熱調整した。更なる試験グループ(グループ4)は、グループ3と同じ条件付けにかけられ、更に6ヶ月間、加速化劣化条件付けにかけられた。
【0167】
グループ3及びグループ4の両方を浸漬による条件付けにかけた後、70%エタノールで60分間(許容差+15/-0分)ロックした。具体的には、雌ルアーコネクタのうちの1つを、70%エタノールが満たされた10mLの注射器と連結した。注射器を使用して、カテーテルシャフトの1つのルーメンを70%エタノールで洗浄し、プライミングした。注射器を雌ルアーコネクタから取り外すことなく、カテーテルの遠位端を折り重ね、バインダークリップで挟んでシャフトを閉鎖した。次いで、注射器を取り外し、雄ルアーロックキャップと直ちに交換した。次いで、バインダークリップをカテーテルシャフトの遠位端から取り外した。次いで、カテーテルを、37±2℃の0.9%生理食塩浴中に、60分(+15/-0分)の期間にわたって浸漬した。次いで、カテーテルを0.9%生理食塩浴から再び取り出した。雄ルアーロックキャップを取り外し、37±2℃の0.9%生理食塩水で満たした10mL注射器と直ちに交換した。次いで、その注射器を使用してカテーテルシャフトを洗浄し、その後注射器を取り外した。エタノールロック及び洗浄の終了時に、各サンプルを、60分(+15/-0分)の回収期間の間、37±2℃で生理食塩水への浸漬に再びかけた。次いで、回収期間が終わった時点で、試験PICC装置を、以下に記載されるように、高圧注入にかけた。
【0168】
1つの試験手順では、PICC装置が、ISO 10555-1による高圧注入仕様に準拠しているかどうかを検証した。これらの試験により、カテーテルは、通常の使用条件下あり得る圧力以上の圧力にかけられ、高圧注入を多数回にわたって実施した後の漏れ又は破裂に対して、それらのカテーテルが抵抗できることを確認した。
【0169】
約37℃に加温した、粘度11.8±0.3cPのVisipaqueを使用して、T=0サンプル(グループ3)に対して高圧注入を実施した。粘度が範囲内でない場合、脱イオン水又は追加の造影剤(Visipaque)を添加して、高圧注入流体の粘度範囲を調整した。37±2℃に加熱した、粘度11.8±0.3cPのグリセリン溶液を用いて、6ヶ月のAAサンプル(グループ4)に対して高圧注入を実施した。上と同様に、粘度が範囲内でない場合、追加のグリセリン又は脱イオン水を加えて、粘度範囲を調整した。
【0170】
グループ3及びグループ4を事前の条件付けにかけたが、その条件付けは、上述したように、エタノールロックと、それに続く生理食塩水浴中での60分+15/-0分の回収期間を含んでいた。各カテーテルの回収期間が終了すると、カテーテルを生理食塩水浴から取り出し、ルアーコネクタのうちの1つを高圧注入試験装置と連結した。次いで、装置は、120mLの大量投与量の粘稠流体(11.8±0.3cP溶液、なおこの溶液は、グループ3の場合にはVisipaqueで、あるいはグループ4の場合にはグリセリンである)を、カテーテルの1つのルーメンを通して、5mL/秒の速度で送達した。次いで、カテーテルを装置から取り外し、37℃の0.9%生理食塩水浴に戻し、一晩浸漬した。一晩浸漬期間がそれぞれ終了した時点で、各カテーテルを、更にエタノールロック、続いて洗浄、更に生理食塩水浴による60分+15/-0分の回収期間にかけて、その後直ちに120mLの大量投与量の粘稠流体を1回高圧注入し、その後、生理食塩水浴に戻して更に一晩浸漬した。この手順を合計10日間繰り返し、したがって、800回の総高圧注入、すなわち、グループ3に対する400回の高圧注入(10日間×40本のカテーテル)及びグループ4に対する400回の高圧注入(10日間×40本のカテーテル)が実施された。800回の高圧注入のそれぞれについて、漏れ又は破裂の事象は観察されなかった(これについては、以下の実施例11に関しても論じられる)。
実施例9
【0171】
高圧注入中、カテーテルの埋め込み可能な長さのセクションは、カテーテルのラベルサイズ(例えば、本実施例では5フレンチ)の2倍を超えて膨潤するべきではない。カテーテルが見せる膨張の程度は、圧力、壁の厚さ及び材料の弾性率特性に直接関連する。例えば、米国でFDAの認可を受けている特定の種類などの高圧注入可能なPICC装置は、許容可能なOD膨張特性を有することが立証されている。例えば、CR Bardにより、5フレンチトリプルルーメンPowerPICC(登録商標)HFという名称で販売されている、5フレンチの高圧注入可能カテーテルについては、臨床での使用において、高圧注入時の使用圧力下で、許容可能な膨張特性を有することがこれまでに示されている。このカテーテルは、最大で5cc/秒(5mL/秒)までの高圧注入で使用できることが示されている。したがって、OD膨潤に関して、本実施例の試験カテーテルと5 FR PowerPICC HFとの比較を行うことができる。
【0172】
注入中のOD膨潤を決定する因子を比較する場合、以下の点を確認することができる:(1)本試験PICC装置の外壁厚は、5 FR TL PowerPICC HFの高圧注入可能な外壁と実質的に同じであり、(2)両方のカテーテルは、55cmの埋め込み可能な長さを備えたトリミング可能な設計であり、(3)両方のカテーテルは、造影剤を用いた注入時の圧力から、5cc/秒までの圧力を使用し、(4)両方のカテーテルが柔軟なポリウレタン材料で作製される。
【0173】
ルーメンの面積、長さ及び壁厚に関する設計寸法が同様で、かつ最大5cc/秒の注入圧も両方で同様であるので、5 FR TL PowerPICC HFと本実施例のサンプルとの間の異なるOD膨潤性能をもたらし得る要因は、弾性率である。これにより、5 FR TL PowerPICC HFの材料と試験PICCとの間の弾性率を比較すれば、試験PICCの許容可能な膨潤性能を証明するのに十分である。試験カテーテルが、Bard 5 FR TL PowerPICC HFの弾性率よりも大きい弾性率を有する場合には、試験カテーテルのOD膨潤性能は、高圧注入のために許容されるレベルである。
【0174】
5つの試験カテーテル、並びに5つの5 FR TL PowerPICC HFのシャフトを試験した。結果を以下の表8に示す。
【表8】
【0175】
上記の弾性率の結果に基づくと、本試験カテーテルの膨潤は、Bard 5 FR TL PowerPICC HF以下となるはずであり、したがって、高圧注入に好適なODを有している。
実施例10
【0176】
別の試験手順では、高圧注入中のカテーテルの遠位先端の安定性を評価した。高圧注入中、カテーテル先端が振動すると、例えば、脈管構造を損傷させる可能性があるため、カテーテル先端が安定していることが望ましい。高圧注入処理実行中、PICCラインは不安定な振動(先端のホイッピングとも呼ばれるもの)を受けやすい。これは脈管構造への損傷、先端の変位及び/又はカテーテルの位置不良をもたらす可能性がある。先端のホイッピングは、1つの点でアンカーされている管のあるセクション内で、高圧注入により発生したスラスト力が座屈剛性を超過する場合に発生する。
【0177】
実施例6の仕様による40個のPICC装置の更なる試験グループ(グループ5)を組み立て、滅菌し、前述のように熱及び浸漬による条件付けにかけた。次いで、PICC装置を安定性長さについて試験した。安定性長さは、高圧注入中に、片持ち式カテーテルが不安定な振動を開始する長さを指す。カテーテルシャフトの安定性長さ(すなわちシャフトの、支持されていない片持ち式端部がホイッピングを開始する長さ)を測定することにより、カテーテルが患者の脈管構造内に配置されたときに、カテーテル先端のホイッピング及び位置不良が発生する可能性に関する、重要な情報が提供され得る。具体的には、安定性長さが長いほど、ある特定のカテーテルの設計は、その先端のホイッピングをより起こしにくいということになる。
【0178】
安定性長さ試験は、PICC装置の1つの延長脚部を高圧注入装置に連結することを伴っていた。次いで、カテーテルシースの遠位端をエラストマーの隔壁を通して挿入し、少なくとも15センチメートルの長さでカテーテルシャフトが隔壁から延出するまで、カテーテルシースを前進させた。したがって、カテーテルシースの遠位長は支持されていない状態であった。すなわち、隔壁との接触部から片持ちされた状態であった。次いで、カテーテルシースの遠位端及び隔壁を、37℃の温度に保持された脱イオン水の加熱槽に浸漬した。次いで、脱イオン水の高圧注入を、5.8mL/秒の送達速度で、延長脚部を通して送達した。指定された送達速度で脱イオン水を使用することにより、5.0mL/秒で送達される比較対象の媒体の場合と同じスラストを、カテーテルの遠位先端で実現する。高圧注入を進行させながら、カテーテルシャフトを、隔膜を通してゆっくりと引き、カテーテルのホイッピング又はばたつきが止まるまでカテーテルシャフトの支持されていない長さを低減させた。ばたつきが止まった時点での支持されていない部分の長さが、そのPICC装置の安定性長さである。前述の方法でのグループ5のPICC装置の試験により、カテーテルシャフトの平均安定性長さが12.1±0.4センチメートルであることが明らかになった。
【0179】
安定性長さは、弾性率、ルーメン面積及び断面慣性モーメントにより左右され、これらの値がより大きいということは、片持ちチューブ(例えば、円筒形カテーテルシャフト)の安定性長さを長くすることになる。高圧注入用カテーテルの一般的に許容される最小平均安定性長さというものは存在しないものの、前述のように、PICC装置は、実施例9で既に論じたBard 5 FR TL PowerPICC HFカテーテルと比較して、より高い弾性率を有する。したがって、グループ5のPICC装置の安定性長さは、Bard 5 FR TL PowerPICC HFカテーテルの安定性長さよりも長くなる可能性があり、PICC装置が高圧注入に適合していることの示す、更なる裏付けとなる。
実施例11
【0180】
アセンブリの結合(ここでいう結合については、既に詳細に記載されている)の強度及び健全性を確認するために、様々な試験を実施した。一部の試験により、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン製の構成部品(特にカテーテルシャフト及び延長チューブ)の強度、耐アルコール性及び弾力性が更に確認された。
【0181】
上記実施例7について説明したように、試験グループ1の40個のPICCアセンブリ及び試験グループ2の40個のPICCアセンブリに対して、一部の試験を実施した。前述したように、試験グループ1のPICCアセンブリを滅菌及び熱による条件付けにかけ、試験グループ2のPICCアセンブリを更に、6ヶ月間の加速化劣化条件付けにかけた。全てのPICCアセンブリを、試験に先立って、浸漬条件付けにかけた。
【0182】
グループ1及びグループ2の各PICCアセンブリに対して、カテーテルシースの一部を切断し、実施例7に既に記載され、かつ表7に詳述されているように、引張強度、弾性率及び極限伸びについて試験した。各PICCアセンブリは、更なる引張強度試験のために追加の部品に更に切断された。具体的には、延長脚部のうちの1つを各PICCアセンブリから切断して、残りの延長脚部、接合ハブ及びカテーテルシャフトの近位部分を含む部分アセンブリを残した。次いで、雌ルアーコネクタが、当該残りの延長脚部のそれぞれから切断され、部分アセンブリが、延長チューブのその近位端の一部分及びカテーテルシャフトのその遠位端の一部分を含むようにした。雌ルアーコネクタでは、当該延長チューブ及びカテーテルシャフト部分のそれぞれは、接合ハブに接続されたままである。
【0183】
次いで、各部分アセンブリを引張強度について試験した。延長チューブ部分をグリップの第1のセットでクランプし、カテーテルシース部分をグリップの第2のセットでクランプした後、グリップの第1及び第2のセットのうちの一方を、破損が発生するまでグリップの第1及び第2のセットのうちの他方から引き離して(例えば、反対方向に引っ張って)、アセンブリの極限引張強度を決定した。この試験では、特に、延長チューブと接合ハブとの間の結合の強度及び接合ハブとカテーテルシャフトとの間の結合の強度を試験した。この試験の結果は以下の通りである。
【表9】
【0184】
グループ1及びグループ2のPICCアセンブリから切断された各延長脚部について、ルアーコネクタを、グリップの第1の組によって保持された固定具に固定し、延長チューブを、グリップの第2の組でクランプした。次いで、ルアーコネクタ及び延長チューブを、互いに反対方向に引っ張った。この試験では、特に、ルアーと延長チューブとの間の結合の強度を試験した。結果は以下の通りである。
【表10】
【0185】
加えて、漏れ試験を実施したが、これにより、オーバーモールドされた結合部の堅牢度を示した。試験によって、43.5psiもの正圧の場合でも、結合部のいずれからも水が漏出しないことが確認された。そのような高圧での空気を使用した正圧試験によっても、漏れに対する抵抗性が確認され、同様に、より低いレベルの負圧(吸引中に存在するものなど)の下では、結合部は、外部の空気がPICCに取り込まれることを防止するということが暗に示された。
【0186】
全てのサンプルは、滅菌(EO)及び熱による条件付け(TC)後の乾燥状態で、漏れ試験に合格した。全部で298個のサンプルを、浸漬による条件付けをした状態で、漏れ試験にかけられた。漏れ試験に先立って、実施例8に関して既に説明したように、298個のサンプルのうち118個は、繰り返し捻じることによる条件付けをされ(これについては実施例12に関連させて、後程更に説明される)、298個のサンプルのうち40個には、10日間のエタノール(EtOH)ロックを伴う10日間の高圧注入を実施した。全てのサンプルは、ISO 10555-1に規定の液漏れ試験に合格した。
【0187】
6ヶ月間、加速化劣化条件付けをかけたPICC装置については、全部で58個のサンプルを、浸漬による条件付けをした状態で試験した。漏れ試験に先立って、実施例8に関して既に説明したように、58個のサンプルのうち40個には、10日間のエタノール(EtOH)ロックを伴う10日間の高圧注入を実施した。全てのサンプルは、ISO 10555-1に規定の液漏れ試験に合格した。
【0188】
アセンブリは、破裂水圧についても試験された。破裂圧力を使用圧力(すなわち、高圧注入中に遭遇する圧力)と比較して、試験中に遭遇する高圧注入に使用中の最高圧力が、破裂圧力よりもはるかに低いことが確認された。言い換えると、破裂圧力は、高圧注入中の最大流量条件でカテーテル内に存在するピーク圧力(使用圧力)を超えていた。すなわち、破裂試験を実施した結果、PICC装置が最大流量での過酷な使用及び注入圧に耐えることができるということが確認された。表11には、アセンブリの破裂圧力に関する試験データがまとめられている。この表には、各試験グループのPICC装置が試験に先立ってかけられた、様々な条件付けが識別されている。具体的には、表11において、「EO」はエチレンオキシド滅菌を表し、「TC」は温度による条件付けを表し、「浸漬」は、実施例7に関して前述したような、浸漬による条件付けを表す。更に、「10日間の高圧注入」及び「EtOH(エタノール)ロック」による条件付けは、実施例8に関して前述した通りである。「繰り返しの捻り」は、実施例12に関連して以下に説明され、「脂質ロック」は、実施例13に関連して以下に説明される。表11の後ろ2つの列のグループ3及びグループ4は、実施例8に関連して既に説明した通りである。
【表11】
【0189】
条件付けの各セットについて、PICC装置(又は具体的には、その流体経路)は、高い破裂圧力を示したため、複数回アルコールロック実施後であっても、高圧注入に使用するのにそれらが適合していることを示している。実際に、PICC装置の流体経路がかけられた事前の条件付け(複数回のエタノールロック実施と、それぞれに続く回収期間(既に説明したようなもの)を含む)にかかわらず、PICC装置は、最大180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280psi又は更には285psiの圧力で動作可能であった。
【0190】
高圧注入中の使用圧力は、以下の表12に示される通りである。日ごとに測定された使用圧力を、
図9及び
図10にプロットする。
図9では、プロット700は、実施例8のグループ3の40個のPICC装置から収集されたデータの箱ひげ図である。
図10では、プロット800は、実施例8のグループ4の40個のPICC装置から収集されたデータの箱ひげ図である。
【表12】
【0191】
使用圧力は、高圧注入中に生じるピーク圧力として定義される。
図9及び
図10のそれぞれに見られるように、使用圧力は、日ごとに大きく変化はしなかった。実際には、試験グループ3(
図9)については、最大平均使用圧力及び最小平均使用圧力は、せいぜい5パーセントしか変動していない。試験グループ4(
図10)では、最大平均使用圧力及び最小平均使用圧力は、せいぜい1.5パーセントしか変動していない。様々な実施形態では、日々の(言い換えると、少なくとも1シーケンスのアルコールロック実施と回収期間を含む、少なくとも一晩の期間後に)カテーテルの使用圧力は、せいぜい、例えば、1、2、3、4、5、又は10パーセントに過ぎない。更に、使用圧力は、時間の経過とともに生じる又は繰り返し実施されるアルコールロック及び繰り返し実施される高圧注入に起因して生じる、PICC装置の見かけ上の劣化について、何も明らかにしない。
【0192】
以下の表13は、2つのグループ(グループ3及びグループ4)について、破裂圧力を使用圧力と比較している(すなわち、破裂圧力-最大使用圧力を示す)。
【表13】
【0193】
このように、破裂圧力は、試験中に遭遇する最大使用圧力をはるかに超える。使用圧力は、一貫性があるように思われ、ほとんどの場合、1日目にわずかに高い圧力を示す。破裂圧力は、どのような条件付けをしたかにかかわらず、全てのグループにわたって一貫したままであった。破裂圧力の平均値及び中央値は、ベースラインとなる、滅菌と、熱及び浸漬による条件付けの破裂圧力と比較した場合に、高圧注入、エタノールロック、繰り返し捻じることによる条件付け(以下に説明する)又は6ヶ月間の加速化劣化によって影響されるようには見えない。PICC装置は、最悪ケースをシミュレーションされた使用条件付けレジメンによっても、悪影響を受けなかった。
【0194】
破裂性能及びその合否は、10回の高圧注入実施を通じてカテーテル内で観察された最大使用圧力を、同じカテーテルサンプルで測定された破裂値から減算することによって判定された。分布分析のために合計40個のデータポイントを収集された。それらのデータポイントは、T=0サンプルについては86psiの平均差及びT=6ヶ月間の加速化劣化サンプルについては93psiの平均差で、許容基準よりもはるかに高い正規分布を示した。
【0195】
これらの試験結果は、過酷な条件での使用に耐えるPICC装置の能力を実証するものであるが、そのような使用には、最大流量5cc/秒での10回の高圧注入実施と、そのような注入実施の各々に先立って、注入に先行する1時間にわたるエタノールでのルーメン内ロック(1時間の回収期間を伴う)が含まれる。PICC装置は、高圧注入に関連する高い圧力での持続的な使用が可能である。例えば、PICC装置は、繰り返しアルコールロックを実施した後であっても、漏れ又は破裂することなく、最大180、190、200、210、220、230、240、250、260又は270psiの注入圧力を維持することができる。
【0196】
更に、周知のように、カテーテルの長さを増加させると、動作圧力が増加する。これらの57.0センチメートルの長さのPICC装置の破裂圧力は、その使用圧力よりもはるかに高いため、57.0センチメートルを実質的に超えるようにその長さを増加させることが可能であり、これは、例えば、より大柄な患者(例えば、肥満患者)にとって有利であり得る。言い換えると、この試験は、更なる実施形態では、エタノールロック前後にともに高圧注入可能であり得るPICC装置は、57センチメートルを超える有効長を有し得ることを示している。
実施例12
【0197】
実施例6に従って構築され、実施例7に記載されるように、滅菌と、熱による条件付け及び浸漬による条件付けにかけられた40個のPICC装置について、捻れ直径を測定した。捻じれ直径は、カテーテルシャフトが捻じれている直径を指す。すなわち、捻れ直径と、捻じれ直径よりも小さい直径とでは、カテーテルシャフトは捻れる一方で、カテーテルシャフトは、捻れ直径よりも大きい直径では捻れない。結果を表14に示す。
【表14】
【0198】
繰り返しの捻りの試験も実施した。この手順の目的は、診療所での過酷な使用で生じる応力をシミュレートし、包帯交換中に起こり得る捻れに、カテーテルシャフトが耐え得ることを検証することであった。この試験は同様に、繰り返し捻ることによる条件付けがサンプルに引張応力及び圧縮応力の両方を加えた際の曲げ疲労耐性を示し、1年間の使用を見越しての装置操作をシミュレートする。118個のサンプルからなるグループを、各サンプルのカテーテル接合部のゼロマーク付近(すなわち、接合ハブに隣接する位置)で、それぞれ365回捻った。サンプルを繰り返し捻じった後で破裂試験を実施し、何らかの材料損傷がないかを評価した。
【0199】
繰り返し捻じるということは、包帯交換をシミュレートすることを意図しており、包帯交換の間、挿入部位付近の皮膚をきれいにするためにカテーテルが操作され、折り畳まれる場合があり得る。これは、典型的には、シャフトチューブの近位端に向かう0マーク付近で生じる。典型的な包帯交換は、PICCラインのメンテナンスに関して7日ごとに行われる。これにより、6ヶ月の期間中に、約26回の包帯交換が行われ、1年間では、約52回の包帯交換が行われることになる。しかしながら、1年間の「最悪ケースの」評価は、ラインの操作を毎日行うと想定することによって実行されてもよい。したがって、365回にわたり、繰り返しの捻じりを実施した後で、PICCラインの漏れ及び破裂を評価した。
【0200】
この手順では、捻じれが観察されるまで、カテーテルシャフトが、接合ハブの近くの位置で折り畳まれる。次いで、カテーテルシャフトは展開されて、真っ直ぐな位置に戻される。このプロセスを各サンプルに対して、365回繰り返した。その後、PICCアセンブリを、既に説明したような方法で、最小圧力43.5psiで、空気又は液漏れがないかを試験した。118個のPICC装置からなるサンプルサイズを評価した。118個全てのサンプルが、何らの漏れもなく、この繰り返しの捻じり試験を合格した。
【0201】
延長脚チューブの耐久性を、同じ様にして評価した。40個のサンプルからなるグループに対して、破裂試験に先立って、装置の親指クランプを使用して、延長脚部1個あたり1095回のクランプを行った。
【0202】
カテーテル耐久性試験では、装置の親指クランプを介して1095回のクランプ行って、延長脚部に条件付けを行う。この条件付けは、試験サンプルを、1年間使用した場合の典型的な取り扱いにさらすものである。問題のある漏れが、クランプによる条件付けによって起こる可能性があるのは、クランプすることによって材料の強度が落ちて、破裂圧力が、高圧注入(5cc/秒で実施)時の使用圧力より低い圧力まで低下する場合のみである。延長脚部の破裂試験の結果を表15に示す。それらの結果は、延長脚チューブが、クランプによる条件付けの後であっても、許容可能な性能を下回る性能となるまでは損傷しなかったことを明確に実証している。
【表15】
実施例13
【0203】
PICC装置は、完全非経口栄養(TPN)療法を可能にするように使用することができ、そのため、アミノ酸、糖類、脂質及び電解質を含む、様々な化学薬品にさらされ得る。例えば、PICCは、TPNがPICCを介して投与される小児患者に対して頻繁に使用される。これは、例えば、短腸症候群を含む多数の病気の場合に当てはまる。
【0204】
米国で使用される脂肪乳剤の最も一般的な非経口栄養脂肪源は、大豆油である。G.L.Fell et al.,「Intravenous Lipid Emulsions in Parenteral Nutrition,」Adv Nutr,2015を参照のこと。更に、例えば、Intralipid、Omegaven、SMOFlipid及びClinolipidなどの、乳剤中10%又は20%のいずれかの脂質濃度を有する一般的な脂肪乳剤が供給される。Fell et al.を参照のこと。
【0205】
トリグリセリドの成人患者への投与量は、体重1kgにつき、1日あたり最大3gのトリグリセリドからなる。Baxter Healthcare Corpは、トリグリセリドの最大成人投与量の最大で70%までの許容可能な補給剤として、Intralipid20%(20%大豆油脂肪乳剤)を指定している。成人患者の平均体重を70kgと仮定すると、大豆油系Intralipid20%の最大1日投与量は、1日あたり735mLとなる。
【0206】
平均して、急性治療での非経口栄養法の実施は、10~14日間継続する。J.Mirtallo et al.,「Safe Practices for Parenteral Nutrition,」Journal of Parenteral and Enteral Nutrition,vol.28,no.6,2004.脂肪乳剤の上限注入速度は、患者の脂肪排出に基づいて確立されており、Intralipidを使用した成人患者において、5時間あたり最大500mLに設定されている。最大1日投与量及び最大注入速度を考慮すると、PICCラインは、20%脂肪乳剤(最も可能性があるのが大豆油)に、7.35時間/日及び合計102.9時間、非経口栄養法を実施している14日間にわたってさらされることになる。
【0207】
Intralipid20%の5倍の濃度の大豆油を使用して、PICC装置の脂質との適合性を確立した。これにより、さらされる時間は、5倍未満の量で減少した。したがって、PICC装置は、100%大豆油にルーメン内部がさらされる最小の継続時間が、20時間及び35分間となった。
【0208】
シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの特性に対する脂質の効果を評価するために、第1のエタノールロック及び高圧注入の前に、脂質による条件付け工程を1回、高圧注入サンプルに対して実施した。脂質による条件付けは、PICCサンプルを100%の大豆油でロックすることと、0.9%生理食塩水に最低20.58時間浸漬することとから構成されていた。破裂試験を用いて、脂質、エタノール及び高圧注入による条件付けからのいかなる有害な効果も特性化し、脂質による条件付け後の機能的能力を検証した。
【0209】
最小持続時間20.58時間にわたって、100%大豆油にルーメン内部をさらすことにより、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン材料との脂質の相互作用を評価するための臨床的に意味のある条件が提供された。
【0210】
条件付けは以下の通りであった。高圧注入を受けるルーメンは、10mLの注射器を使用して、100%の大豆油でプライミングされた。注射器をルアーから取り外すことなく、カテーテルシャフトの遠位端を折り畳ませ、バインダークリップで挟み、クランプして閉じた。注射器を取り外し、雄ルアーロックキャップと直ちに交換した。サンプルを37℃の0.9%生理食塩水浸漬浴に戻した。サンプルを、大豆油でロックしながら、最低20時間35分間にわたって浸漬させた。その後の条件付け及び試験に先立って、PICC装置サンプルのそれぞれのルーメンの両方を、脱イオン水で洗浄した。
【0211】
脂質による事前の条件付け(例えば、直ぐ上に説明されたものなど)を伴う試験の結果は、表11、表12及び表13のグループ3のPICC装置について示され、また
図9のプロット700に示されている。高圧注入試験に先立って脂質による条件付けにかけられたグループ3については、全部で400回の高圧注入実施中に、漏れは全く観察されなかった。更に、全ての40個の試験ユニットが、空気漏れ試験に合格した。加えて、脂質にさらした後に高圧注入が起こったこと、したがって、PICC装置における脂質の閉塞物の除去に、エタノールロックを使用することができることが示されているということに留意されたい。
実施例14
【0212】
実施例6による多くのPICC装置を製造し、生体適合性について試験した。試験は、適切なISO 10993規格(ISO 10993-1:2009、同-3:2014、同-4:2009、同-4:2017、同-5、同-6:2016、同-10:2010、同-11:2006、同-12:2012、同-17:2008、同-17:2012、及び同-18:2013を含む)、ISO 14971:2007/(R)2010、及び欧州連合医療機器指令93/42/EECの下で実施した。デバイスは、非細胞毒性、非感作性、非刺激性、非毒性、非発熱性、及び非溶血性であると判定され、基準となる市販のPICCカテーテル(具体的には、上に論じた5フレンチのトリプルルーメンPowerPICC HF)と統計的な差を有さないと判定され、また市販のPICCカテーテルと同様の塊形成回数を有すると判定された。装置はまた、イヌの血栓形成性試験を介して非血栓形成性であると判定された。全体として、PICC装置は、非刺激性及び生体適合性であると判定された。
【0213】
サンプルPICC装置の一部は、ISO 10993-18:2013による、抽出性/滲出性分析を受けた。50℃で72時間、精製水及びイソプロピルアルコール(IPA)に完全浸漬することにより、装置を3回抽出した。この水抽出物を、金属に関して、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP/MS)及び冷蒸気原子吸光分析法(CVAAS)で分析した。また、その水抽出物を、揮発物、半揮発物及び限定された一組の不揮発性有機物を分析するガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS)によって分析した。IPA抽出物を、半揮発性有機物のGC/MS法によって分析した。これらの分析化学技術を使用して、抽出性/滲出性化合物を同定し、定量化して、使用者への化学的投与量を決定した。次いで、同定された化合物を、毒物的学リスク評価において評価した。
【0214】
具体的には、化学的抽出性/滲出性試験において同定された以下の化合物について、毒性学的リスク評価を実施した:バリウム(CAS 7440-39-3)/硫酸バリウム(CAS 7727-43-7)、ホウ素、カプロラクタム(CAS 105-60-2)、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート(CAS 117-81-7)、フタル酸ジ-n-ブチル(CAS 84-74-2)、n-オクタデカン(CAS 593-45-3)、二酸化ケイ素/二酸化シリカ及びストロンチウム。リスク評価の意図は、同定された化合物の毒物学的危険性を厳密に調べ、成人集団及び小児集団に対する亜急性/亜慢性及び慢性毒性、遺伝毒性、並びに発癌性の生物学的エンドポイントに関連付けられたあらゆるリスクを評価し及び対処することであった。許容可能な摂取(TI)、許容可能な曝露(TE)、及び安全裕度(MOS)を、ISO 10993-17:2008「医療用装置の生物学的評価-パート17:滲出性物質の許容限界の確立」にしたがって計算した。MOSが1を超える場合、評価された物質は毒性学的危険性が低いことを示す。毒性学的リスク評価において計算された安全裕度に基づいて、装置からの有害な影響の可能性は、全ての化合物について低いものと判定された。また評価によって、装置の使用からの予想される亜急性/亜慢性及び慢性毒性、遺伝毒性、並びに発癌性がないことも示された。更に、毒性学的リスク評価における結果によって、装置の毒物学的安全性が、体重が2.3kgまでの新生児についても支持されていること(新生児の、二酸化ケイ素/二酸化シリカに対して計算された最低MOS値に基づく)が示されている。
【0215】
すなわち、毒物学的リスク評価試験により、PICC装置が、2.3kgまでの新生児で安全であることが実証された。更に、毒物学的リスク評価は、バリウム及び硫酸バリウムの存在(カテーテル材料に配合された硫酸バリウムのカテーテル材料からの潜在的滲出に起因するもの)について試験したが、より低い安全限界は、新生児における二酸化ケイ素/二酸化シリカの最も低い計算されたMOS値に基づくものであった。これは、カテーテル材料が、配合された硫酸バリウムを保持することにおいて良好に機能していることを示す。言い換えると、カテーテル材料が、この構成要素(材料の総重量の30%を構成する)を、非常に少量しか滲出させないことを示す。
【0216】
これらの結果は、より小径の(例えば、より低い流量の)カテーテルの場合よりも、かなり多くの材料が存在し、しかも滲出が起き得るより表面積が大きい、5フレンチカテーテルに対して試験を実施したということを考えると、とりわけ印象的なものである。
【0217】
更に、前出の2.3kgという値の根拠となっている制限的な滲出物であった、試験PICC装置から滲出する二酸化ケイ素/二酸化シリカは、押出成形中に使用される潤滑剤の存在に起因するものであり得た。本明細書の他の箇所で言及されるように、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの特定の実施形態は、そのような潤滑添加剤の存在なしに押出成形することができる。言い換えると、カテーテルシャフト、接合ハブ及び/又は延長チューブのうちの1つ以上が形成されるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、潤滑添加剤を含まなくてもよい。そのような実施形態の特定のものでは、5フレンチPICC装置は、例えば、最大30重量%の硫酸バリウムを含有するが、2.3kg未満の体重の新生児での使用に安全であり得る。
V.更なる実施例
実施例15
【0218】
様々な配合及び重合プロセスを用いて、3種類の追加のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを調製し、それらの硬さを評価した。試験配合物及びそれぞれの硬さが、表16にまとめられている。
【表16】
【0219】
試験配合物1、2及び3のそれぞれについて、ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサンポリオール、イソシアネート及び鎖延長剤は、実施例1に関して既に説明したものと同じである。更に、実施例1に関して説明したように、各反応物質を予熱した。
【0220】
試験配合物1の場合、予熱したPHMCD、PDMS及びMDIを共通の容器に加え、熱を別々に制御することなく5分間混合した。すなわち、反応の発熱的性質に起因して熱が増加することによって、反応はそれ自体で起こることが可能であった。次いで、予熱したBDOを混合物に添加し、混合物を更に約1分間混合した。
【0221】
試験配合物2は、試験配合物1と同じ一般組成を含むが、異なるプロセスを介して調製された。具体的には、予熱したPDMS及びMDIを共通の容器に添加し、5分間混合した。次いで、予熱したPHMCDを混合物に添加し、次いで、更に5分間混合した。最後に、予熱したBDOを添加し、混合物を更に約1分間混合した。
【0222】
試験配合物3は、試験配合物1の組成とは異なる組成を含み、配合物2に使用されるものと実質的に同じプロセスを介して調製された。具体的には、予熱したPDMS及びMDIを共通の容器に添加し、5分間混合した。次いで、予熱したPHMCDを混合物に添加し、次いで、更に5分間混合した。最後に、予熱したBDOを添加し、混合物を更に約1分間混合した。
【0223】
試験配合物1、2及び3のそれぞれについて、混合が完了すると、混合物をベーキングシート上に注ぎ、オーブン内で230°Fの温度で一晩硬化させた。硬化後、材料をベーキングシートから取り出し、約10ミリメートル未満の平均粒径を有する粒子に機械的に粉砕した。次いで粒子を、乾燥剤を用いた乾燥機内で乾燥させ、その後、その後の使用のために保管した。次いで、ある量の粒子を硬さ試験用の試験プラークに型成形し、これをCHECK Line HPSA手動式デュロメータを使用してASTMのD2240に従って評価した。
実施例16
【0224】
試験プラークを、上記実施例15の試験配合物1、2及び3のそれぞれのシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンから型成形した。これらの試験プラークのそれぞれからより小さいサンプルを切断し、46時間にわたって、37℃の70%エタノールに浸漬した。質量増加率によって測定したシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンサンプルの膨潤は、各試験配合物について約5~7%であった。この結果を、市販の芳香族ポリエーテルポリウレタンである、PELLETHANE(ペレタン)(登録商標)2363-65Dの同じ試験結果と比較したところ、16%の膨潤を示し、市販の脂肪族ポリエーテルポリウレタンである、QUADRAFLEX(登録商標)ALE(QFLEX-ALE-91A-B30-003-002)の同じ試験結果と比較したところ、41%の膨潤を示した。結果を、以下の表17にまとめた。試験配合物1、2及び3、並びにペレタンは、他の添加剤を物理的に配合されることなく、試験プラークに直接、型形成されたが、QUADRAFLEX材料は、30重量%の硫酸バリウム及び着色剤を配合された。
【表17】
【0225】
試験配合物1と2との間には、膨潤の差はほとんどなかったが、他の要因によって、試験配合物2の「3ショット式」プロセスが、PICC装置での使用を意図した材料にとって好ましい場合があり得ることが示されている。例えば、試験配合物1及び2の材料の弾性率はそれぞれ、エタノール(70%EtOH)に曝露される前及び後に試験された。曝露前には、両者の弾性率は非常に類似していたが、曝露後には、配合物2の材料が、わずかに高くなっていた。更に、両方の材料に対して型成形された試験プラークは、何らかの層化及び層間剥離を示したが、その層化及び層間剥離は、3ショットの試験配合物2材料の方が、わずかとはいえ、より目立たないものであった。理論に束縛されるものではないが、これは、試験配合物2において、PDMS材料がより良好に分布していることを示すように見えた。
実施例17
【0226】
上記実施例6に記載された構成要素及び物理的寸法を有するPICC装置は、以下の表18に記載の配合物の材料から組み立てることができる。このような材料を形成する方法は、例えば、本明細書に開示される方法のいずれかにおいて進行することができる。表18に記載される標的値から、ある程度の変動が想到される。例えば、硫酸バリウムは、その濃度が30±2重量%の量で存在することができ、それに応じて残りの成分の量を調整することができる。言い換えると、場合によっては、硫酸バリウムの目標量は30重量%であり、±2重量%の許容差が認められる。
【表18】
実施例18
【0227】
上記実施例6に記載された構成要素及び物理的寸法を有するPICC装置は、以下の表19に記載の配合物の材料から組み立てることができる。このような材料を形成する方法は、例えば、本明細書に開示される方法のいずれかにおいて進行することができる。表19に記載される標的値から、ある程度の変動が想到される。例えば、硫酸バリウムは、その濃度が30±2重量%の量で存在することができ、それに応じて残りの成分の量を調整することができる。言い換えると、場合によっては、硫酸バリウムの目標量は30重量%であり、±2重量%の許容差が認められる。
【表19】
【0228】
本実施例の押出成形された構成要素及び本明細書に開示される他の押出成形された構成要素に関しては、GLYCOLUBE(登録商標)、ヒュームドシリカなどの潤滑剤及び/又は離型剤が、材料の全体的な配合から省略された。このような省略はまた、型成形された構成要素の場合にも可能であり得る。言い換えると、一部の実施形態では、重合段階中、配合中及び/又は押出成形若しくは型成形中であろうと、潤滑剤又は離型剤が材料に添加されない。むしろ、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、それ自体で(つまり、他の材料からの補助なしに)十分な潤滑性を有し得るので、押出成形を実現(例えば、ペレットどうしがくっついてホッパーを詰まらせることなく)又は型成形を実現することができる。
【0229】
材料のこの特性は、顕著な利点であり得る。潤滑剤(離型剤を含む)及び/又は他の添加剤(例えば、核形成剤)は、押出物又は型成形された構成要素の毒性及び/又は血栓形成性に一般的には寄与してしまう。したがって、例えば、カテーテルシャフトから及び/又は延長チューブから、このような材料の排除することは、そうした材料から形成される装置(PICC、ミッドライン、PIVなど)が、患者の体内で発揮できる性能を向上させることができる。
【0230】
例示として、上記実施例12では、毒物学的リスク評価が実施されたPICC装置は、延長チューブ内にGLYCOLUBE(登録商標)を含み、かつ延長チューブ及びカテーテルシャフト内にヒュームドシリカを含んでいた。これらの添加剤が含まれていても、滲出液の量は非常に少なく、材料が滲出に対して有利に耐性を有していることが実証されている。実際に、5フレンチPICC装置が、体重2.3kgまでの新生児に対しての使用に好適であることが判明したことは、大変に素晴らしいことである。しかしながら、判定における制限因子は、二酸化ケイ素/二酸化シリカの存在であった。押出成形された材料から、GLYCOLUBE(登録商標)及びヒュームドシリカが排除されたことにより、上のものと同様に構築されたPICC装置を、より小柄な患者、言い換えると、体重2.3kg未満の体重の患者に対して使用するのに、好適なものとするはずである。
実施例19
【0231】
血栓の相対的蓄積を評価するために、実施例2に記載の寸法及び構成を有する15本の、5フレンチ二重ルーメンカテーテルシャフトを、以下の表20に記載される配合のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンから押出成形した。ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサンポリオール、イソシアネート及び鎖延長剤、並びに材料調製方法は、実施例1に関して既に説明したものと同じであった。これらは、本明細書では、グループIのカテーテルシャフトとして識別される。比較のために、実施例2に記載の寸法及び構成を有する15本の、5フレンチ二重ルーメンカテーテルシャフトが、Biomericsから入手可能で、商標QUADRAFLEX(登録商標)で販売されている、カテーテルグレード脂肪族ポリエーテルポリウレタンを約69重量%有し、の硫酸バリウム30重量%及び着色剤約1重量%が配合された材料から、押出成形された。これらは、本明細書では、グループIIのカテーテルシャフトとして識別される。また15本のカテーテルシャフトが、Teleflex(Wayne,Pennsylvania)から入手可能で、商標ARROW(登録商標)で販売されている、市販の15本の二重ルーメン高圧注入PICCカテーテルアセンブリから切断された。これらは、本明細書では、グループIIIのカテーテルシャフトとして識別される。
【表20】
【0232】
特筆すべきことに、ヒュームドシリカ、GLYCOLUBE(登録商標)又はいかなる他の潤滑剤及び/又は剥離剤も、配合物中に使用されなかった。前述のように、このような材料は、押出物又は型成形された構成要素の血栓形成性を増加させる可能性がある。したがって、配合物からのこのような材料の省略によって、それらの材料から形成される医療用装置(PICC、ミッドライン、PIV、任意の好適な様々なインプラントなど)が、患者の身体内で発揮する抗血栓形成性能を向上させる(例えば、血栓形成性を低減する)ことができる。
【0233】
合計15回の血液ループ実験を行った。各実験では、3つの血液循環試験ループが使用され、各試験ループは、37℃の水浴と、水浴内に入れられた自らの放射線標的を付された血小板を有する新鮮なヘパリン添加ウシ血液を含む受け部と、チューブの1セクションであって、対向する端部がともにウシ血液に挿入され、その中間部分がローラポンプを通過して、チューブを通して血液を連続的に循環させる、チューブの1セクションとを含む。各試験ループにおいて、カテーテルシャフトの端部を挿入して、シャフトの外側表面の周囲の血流を可能にし、それによって、患者の脈管構造内のカテーテルの挿入をモデル化した。カテーテルシャフトサンプルの、挿入された先端部を、エポキシで封止して、ルーメンの血液侵入を排除し、カテーテルの外表面に、調査を集中させた。各試験ループは、グループI、グループII又はグループIIIのいずれかからの1つのサンプルを含有した。各実験の終わりに、カテーテルシャフトを管から外植し、生理食塩水ですすいで、血栓定量用のガンマカウンターに配置した。
【0234】
各実験は、同じ動物からの血液を各々循環させる、3つの独立した血液循環試験ループ(それぞれ、グループI、グループII又はグループIIIのうちの1つに対応する)から構成された。これにより、クロスオーバー効果なしでの同時比較が可能になった。15個体の異なる動物からの血液を試験した。
【0235】
実験パラメータを表21に示す。
【表21】
*異なる動物からの血液を、各回の実験で使用(すなわち、毎回の実験ごとに、固有の血液ロットを使用)した。
【0236】
上記15回の実験からの生データを、表22に示す。
【表22】
【0237】
全てのグループの分布は非正規分布であった。実験どうしの間の、固有の血液差に起因して、調査のばらつきが高かくなっていた。しかしながら、このばらつきは、ヒト患者どうしの間の状況においても予想されるように、適切であると判定される。
図11では、プロット900は、グループII及びグループIIIの結果を、各実験内のグループIの結果と比較している。
【0238】
実験レベルにおけるグループIに対するパーセント増加率を評価すると、グループIIは、平均で300%より多く血栓蓄積を有し、グループIIIは、平均で227%より多くの血栓蓄積を有することが示されている。更に、グループIとグループIIとで、平均値及び中央値を比較すると、統計的有意性が見出される。分配のひずみ及び外れ値により、ノンパラメトリック検定を用いることが望ましい場合がある。データがペアリングされているため、2サンプル両側ウィルコクソン符号順位検定を用いて、グループIの分布は、グループIIの分布よりも有意に低く、グループIIは、グループIのメジアン値よりも88%大きなメジアン値を報告すること(p値=0.015)を示すということを示すことができる。グループIIIは、グループIのメジアンと比較して17%のメジアンの上昇を報告する。しかしながら、グループIの分布は、グループIIIの分布よりも有意に低いわけではない(p値=0.71)。
【0239】
したがって、グループIのカテーテルシャフトは、本開示の一実施形態によるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンから形成されるが、そのグループIのカテーテルシャフトは、血栓の蓄積を評価する、既に説明したインビトロ血中ループ試験において、グループIIのQUADRAFLEX(登録商標)から形成されるカテーテルシャフト(既知の市販の高圧注入PICCに用いられる種類のもの)と、グループIIIのARROW(登録商標)から形成されるカテーテルシャフトとの両方を凌駕する性能を示した。グループIとグループIIとの間で中央値どうしを比較した際に統計的有意性が示され、グループIのシャフトは、血栓の蓄積の中央値がより低いことを報告している。これらの結果に基づいて、表20に記載される製剤のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンで形成されたカテーテル(グループI)は、QUADRAFLEX(登録商標)から形成されるシャフト(グループII)などのシャフトを使用する、少なくとも競合し得るPICC製品と比較して、臨床での使用において、血栓の蓄積が少なくなるということが予想される。更に、グループIの血栓蓄積性能は、グループIIIに関連する市販の高圧注入PICC製品(ARROW(登録商標))と、少なくとも同等に良好である。
実施例20
【0240】
表面エネルギーを評価するために、実施例2に説明した寸法及び構成を有する4本の、5フレンチ二重ルーメンカテーテルシャフトを、上記の表20に記載の配合のシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン(SPCPU)から押出成形した。したがって、SPCPU製カテーテルシャフトは、実施例19のグループIのものと実質的に同じであった。更に、市販の5フレンチPowerPICC(登録商標)カテーテルを入手した。
【0241】
カテーテルシャフトの試験は、以下のように進行した。カテーテルチューブのサンプルを、顕微鏡カメラの視野内に位置する水平ステージに固定した。1滴の水を、付着液滴配置でカテーテルチューブサンプルの表面上に堆積させた。測定分析のために、付着液滴の拡大画像をキャプチャした。各カテーテルチューブに沿って3つ又は4つの異なる位置で液滴を堆積させ、測定した。接触角は、液体-固体界面と液体-蒸気界面との間に形成された角度を測定することによって決定された。試験の結果を表23に提供する。
【表23】
【0242】
SPCPUカテーテルチューブの平均接触角は74.6度であり、標準偏差は11.3であった。PowerPICC(登録商標)カテーテルチューブの平均接触角は99度であり、標準偏差は4.9であった。上記の結果に基づいて、SPCPU表面は、より疎水性が低いように見えるが、これは、より大きな表面自由エネルギーを示すと考えられる。実際に、裏付けに乏しいものの、PowerPICC(登録商標)装置の小チューブの表面上に水滴を保持することは、水滴をSPCPUチューブ上に保持するよりも、はるかに困難であった。表23に示す値が、実際の母集団分布の低端にある可能性が高いように、多くの水滴がPowerPICC(登録商標)表面から流れ落ちていた。逆に、SPCPUチューブ上に水滴を配置することは比較的容易であり、これは、表23に示すより小さい接触角データと良好に対応するように思われる。
【0243】
Xu et al.,Proteins,Platelets,and Blood Coagulation at Biomaterials Interfaces,Colloids Suf B Biointerface,2014 December 1,124:49-68によると、生体材料の表面エネルギーは、生体材料が血栓症を促進させる範囲内で重要な役割を果たし得る。生体物質関連血栓症のプロセスは、血小板介在反応(血小板粘着、活性化及び凝集)と血漿凝固との両方からなる。表面との血漿タンパク質相互作用は、血液の凝固カスケードを引き起こし、血栓の生成及びフィブリン凝塊の形成をもたらす。凝固は、内因性及び外因性経路として伝統的にグループ化されている、一連の自己増幅型チモーゲン酵素変換法を伴う。
【0244】
Xuらは、内因性経路の開始は接触活性化と呼ばれ、またこの接触活性化は、主に凝固因子XII(FXII、ハーゲマン因子)及び3つの他のタンパク質が関わっていることに言及している。接触活性化に関する従来の生化学は、FXIIは、少なくとも3つの異なる生化学的反応によって産生され得る活性酵素形態FXIIaに変換されることを示す。これらの反応のうちの1つは、接触自己活性化として知られており、FXIIが凝血促進表面と相互作用し、FXIIの表面への結合時の立体構造の変化により、活性酵素形態FXIIaに変換される。この変換はその後、後続の凝固カスケード反応をもたらす。
【0245】
Xuらは、FXII接触活性化が表面依存性であることを示す。理論に束縛されるものではないが、生体材料の表面エネルギー(すなわち湿潤性)は、その生体材料がFXIIの接触活性化を引き起こす程度に対して、有意な効果を有し得ると考えられる。一般的な観察は、血漿凝固がアニオン性又は親水性表面との接触による活性化においてより効率的であることを明らかに示しているため、かつては、従来の生化学理論に基づいて、FXIIの接触自己活性化が疎水性表面よりも親水性表面に特異的であると、結論付けていた。しかしながら、実験による証拠は、疎水性及び親水性表面が、FXIIの未希釈緩衝液中では、ほぼ等しい自己活性化特性を有することを実証している。すなわち、FXIIの接触活性化は、未希釈の緩衝液中のアニオン性親水性表面に特異的なことではない。実際に、未希釈緩衝液中のFXIIの接触活性化は、表面エネルギーの関数としてスケーリングされたとき、概ね放物線状のプロファイルを呈する。ほぼ等しい活性化は、活性化水の湿潤性の両端(例えば、非湿潤及び完全に湿潤)で観察され、水接触角θが約55~約75度の範囲である広い最小値を通過する。比較的低い活性化はまた、前述の範囲のいずれかの端部のすぐ外側に存在する。列挙された接触角範囲は、約20dyn/cm(θ=約75度で)~約40dyn/cm(θ=約55度で)の範囲内の表面エネルギーτに対応し、この範囲のいずれかの端部のすぐ外側のエネルギーはまた、比較的低い活性化を呈する。
【0246】
したがって、約55~約75度又は更には約50~約80度の範囲内の水接触角θを呈する生体材料は、血栓を活性化しにくいという点で、優れた抗血栓特性を呈し得る。このことは、本実施例20及び実施例19(上述)における、カテーテルシャフトに関する観察事項に対応する。具体的には、所与の実験条件下で、本実施例20のSPCPUカテーテルチューブ(実施例19のカテーテルシャフトと同一に形成された)の平均接触角は、74.6度であった。これは、Xuらにおいて同定された最小FXII接触活性化のための、55~75度の水接触角範囲に入る。理論に束縛されるものではないが、グループIのカテーテルシャフトの表面エネルギーは、それらの低い血栓産生を少なくとも部分的に説明し得る。更に、イオン電荷を欠き、強い水素結合基を欠く親水性表面が、血小板活性化を最小限に抑えるために望ましい場合があることが、これまでに観察されている。これについては、Griggs et al.,Thrombosis and Thromboembolism Associated with Intravascular Catheter Biomaterials,Medical Device Evaluation Center,Salt Lake City,Utah,U.S.A.,May 20,2008を参照のこと。また、Samuel Eric Wilson,Vascular Access:Principles and Practice,p.60も参照のこと。
【0247】
様々な実施形態では、本明細書に開示されるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの様々な実施形態のいずれかから形成されるカテーテルチューブは、約55~約75度、約55~約70度、約55~約65度、約55~約60度、約60~約75度、約60~約70度、約60~約65度、約65~約75度、約65~約70度、約70~約75度、約50~約80度、約50~約65度、約50~約60度、約50~約55度、約65~約80度、約70~約80度、若しくは約75~約80度の範囲内の水接触角又は約50度、約55度、約60度、約65度、約70度、約75度、若しくは約80度の水接触角を呈し得る。様々な実施形態では、本明細書に開示されるシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの様々な実施形態から形成されるカテーテルチューブは、約20~約40dyn/cm、約20~約35dyn/cm、約20~約30dyn/cm、約20~約25dyn/cm、約25~約40dyn/cm、約25~約35dyn/cm、約25~約30dyn/cm、約30~約40dyn/cm、約30~約35dyn/cm又は約35~約40dyn/cm、約15~約45dyn/cm、約15~約30dyn/cm、約15~約25dyn/cm、約15~約20dyn/cm、約30~約45dyn/cm、若しくは約35~約45dyn/cm、若しくは約40~約45dyn/cmの範囲内の表面エネルギー又は約15、20、25、30、35、40、若しくは45dyn/cmの表面エネルギーを有し得る。前述の様々な実施形態では、カテーテルチューブは、4フレンチ、5フレンチ、又は6フレンチの外径を有し得る。更に、前述の実施形態のうちの様々なものでは、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン材料は、血栓形成性を高めかねないような、添加剤としての潤滑剤、剥離剤、核形成剤など(例えば、ヒュームドシリカ)を含まなくてもよい。前述の実施形態のうちの様々なものでは、カテーテルシャフトは、前述のようなカテーテルアセンブリに組み込むことができ、これは、PICCカテーテルとして使用されてもよく又は更なる例では、前述のような高圧注入可能なPICCカテーテルとして使用され得る。また更なる例では、カテーテル(例えば、高圧注入可能なPICC)は、前述のように、エタノールロックへの抵抗性又は適合性を有し得る。
【0248】
前述の実施例を様々に組み合わせた物又は編集した物を含む、前述の開示から明らかであるように、本明細書に記載される特定の材料は、医療用装置、特に高圧注入可能なPICCにおける使用に非常に適している。具体的には、本発明者らは、ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサン及びイソシアネートの特定の種類を、非常に特定の範囲内に収まる相対量で含む特定の方法で反応させて、高圧注入可能なPICCの多数の性能目的を同時に満たす、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを得ることができることを発見した。得られた材料によって呈される特性のうちの特定のものは、予想外のものでさえある。
【0249】
このような材料から形成されるPICCは、有利なことに、性能劣化を伴わずに、高い高圧注入圧力で繰り返し動作することができる。このように、材料は強固かつ弾力的である。更に、そのようなPICCには、繰り返しエタノール又はアルコールロックすることができる。PICCはまた、血栓形成に対して強い抵抗性を示し、これは、少なくとも部分的には、因子XIIの非活性化のための理想的な又は望ましい範囲内に入るように見える表面エネルギーを有していることの結果であり得る。また更に、PICCは、比較的大きな直径のPICCでさえも、場合によっては体重2.3kgまでの新生児を含む、非常に小柄な小児患者、かつ更なる例では更により小柄又は軽量の患者での使用に適しているという程度で、滲出を防止する。
【0250】
一部の実施形態では、上記のもののいずれかなどのPICC装置は、キットと共に含まれる。PICC装置に加えて、キットはイントロデューサを含んでもよい。キットは、本明細書に開示される方法又はプロセスのうちのいずれかに関する指示を提供し得る、使用説明書を含み得る。使用説明書は、本明細書に記載されるように、ユーザにアルコールロックを用いることを具体的に推奨又は指示することができる。例えば、感染及び/又は脂質による閉塞の場合、説明書は、臨床的に有効な期間(既に開示したもの(例えば、1時間)を含む)であって、問題を解決するのに十分な期間のアルコールロックを指示する場合がある。また、説明書は、例えば、カテーテルを介した高圧注入の前に、既に開示されたもののいずれか(例えば、1時間)を含む回収期間、待機するように、ユーザに更に指示する場合がある。様々な実施形態では、キット、具体的には、キット中の使用説明書は、特定の管轄の規制機関によって承認又は認可され得る。例えば、キット及びキットの使用説明書は、米国食品医薬品局によって承認若しくは許可され得る。更に/あるいは、キット及びキットの使用説明書は、欧州連合のCEマークの資格を得ること等によって、他の管轄の規制に準拠し得る。
【0251】
上に論じた実施例のうちの特定のものでは、1時間(例えば、60分+15/-0分)の臨床的に有効な処理期間のアルコールロックと、1時間(例えば、60分+15/-0分)の回収期間が論じられている。他の好適な期間が想到される。例えば、様々な実施形態では、アルコールロックは、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55又は60分以上の臨床的に有効な治療期間にわたって実施され得る。他の又は更なる実施形態では、PICC装置は、このようなアルコールロック実施後(例えば、アルコールで装置を洗浄した後)に、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55又は60分以上の回収期間をおいて、使用するのに好適であり得る。
【0252】
前述の議論の多くはカテーテル、特に、PICCカテーテルを対象としているが、本開示の材料及び他の教示はより一般的に適用可能である。これらは、例えば、様々な他の医療用装置及びカテーテルに適用可能であるか又はそれらにおける使用に好適であり得る。医療用装置又はその構成要素は、上記の材料の1種類以上から、少なくとも部分的に形成され得る。医療用装置としては、例えば、任意の好適な種類の医療用カテーテル、血管アクセス装置、中心アクセス装置、ミッドラインカテーテル、IVカテーテル、埋め込み可能なポートなどを挙げることができる。例えば、カテーテル以外の様々な医療用装置のいずれも、本開示の任意の実施例又は任意の他の部分を含む、本明細書に開示される材料の任意のものから製造されてもよい。
【0253】
本明細書に開示される任意の方法は、記載された方法を実施するための1つ以上の工程又は行為を含む。方法の工程どうし及び/又は行為どうしは、互いに交換されてもよい。言い換えると、特定の順序の工程又は行為が実施形態の適切な動作に必要でない限り、特定の工程及び/又は行為の順序及び/又は使用の有無は、修正され得る。
【0254】
書面による本開示に続く特許請求の範囲は、本明細書により、書面による本開示に明示的に組み込まれ、各請求項は、別個の実施形態として独立している。本開示は、本開示は、独立請求項及びそれらの従属請求項の全ての並べ替えを含む。更に、以下の独立請求項及び従属請求項から派生することが可能な追加の実施形態もまた、本明細書に明示的に組み込まれる。これらの追加の実施形態は、所与の従属請求項の従属関係を、「請求項[x]を含む、請求項[x]までのいずれかの先行する請求項のいずれか」という語句で置き換えることによって決定され、括弧の付いた「[x]」という用語は、ごく最近列挙された独立請求項の番号で置き換えられる。例えば、独立請求項1から始まる第1の請求項のセットについて、請求項3は、請求項1及び2のいずれかに従属することができ、これらの別々の従属関係は、2つの別個の実施形態をもたらし、請求項4は、請求項1、2又は3のうちのいずれか一項に従属することができ、これらの別々の従属関係は、3つの別個の実施形態をもたらし、請求項5は、請求項1、2、3又は4のうちのいずれか一項に従属することができ、これらの別々の従属関係は、4つの別個の実施形態をもたらす等である。以下の実施例も同様である。
実施例21~215
【0255】
実施例21 ポリカーボネートポリオールとポリシロキサンとを含む軟性セグメントであって、ポリカーボネートポリオールがポリシロキサンの量以上の量で存在する、軟性セグメントと、
イソシアネート及び鎖延長剤を含む硬性セグメントと、
を含む、耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例22 シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、50,000~300,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する、実施例21に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例23 軟性セグメントが、ポリカーボネートポリオールを50~98重量%の量で含む、実施例21に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例24 ポリカーボネートポリオールが、式(I):
【化6】
(式中、Rは、直鎖又は分枝鎖、置換又は非置換、C
1~C
24のアルキル基又はアルキレン基から選択され、Aは水素及びR’OHから選択され、nは2~30の整数である)による構造を有する、実施例21に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例25 R及びR’が、独立して、直鎖又は分枝鎖、C
4~C
12のアルキル基から選択される、実施例24に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例26 ポリカーボネートポリオールが、500~5000g/molの数平均分子量(M
n)を有する、実施例21に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例27 ポリシロキサンが、式(IV):
【化7】
(式中、R
1及びR
2は、独立して、直鎖C
1~C
6のアルキル基又は水素基から選択され、R
3及びR
5は、独立して、C
1~C
12のアルキル基又はアルキレン基から選択され、R
4及びR
6は、独立して、C
1~C
8のアルキル基又はアルキレン基から選択され、mは2~30の整数である)による構造を有する、実施例21に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例28 R
3及びR
5が、独立して、C
1~C
8のアルキル基又はアルキレン基から選択される、実施例27に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例29 R
4及びR
6が、独立して、C
1~C
4のアルキル基又はアルキレン基から選択される、実施例27に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例30 ポリシロキサンが、300~3000g/molの数平均分子量(M
n)を有する、実施例21に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例31 軟性セグメントが、ポリシロキサンを2~50重量%の量で含む、実施例21に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例32 ポリカーボネートポリオール及びポリシロキサンが20:1~1:1の重量比で存在する、実施例21に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例33 シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、軟性セグメントを30~80重量%の量で含む、実施例21に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例34 シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、硬性セグメントを10~60重量%の量で含む、実施例21に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例35 イソシアネートが、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、ビトリレンジイソシアネート、メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート、パラ-フェニレンジイソシアネート、トランス-シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、1,6-ジイソシアネートヘキサン、1,5-ナフタレンジイソシアネート、パラ-テトラメチルキシレンジイソシアネート、メタ-テトラメチルキシレンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びこれらの組み合わせからなる群から選択される要素である、実施例21に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例36 硬性セグメントが、イソシアネートを50~90重量%の量で含む、実施例21に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例37 鎖延長剤が、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、パラ-キシレングリコール、1,3-ビス(4-ヒドロキシブチル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(6-ヒドロキシエトキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、トリメチロールプロパン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される要素である、実施例21の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例38 硬性セグメントが、鎖延長剤を10~50重量%の量で含む、実施例21に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例39 イソシアネート及び鎖延長剤が、10:1~1:1の重量比で存在する、実施例21に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例40 放射線不透過性付与剤、潤滑剤、触媒、酸化防止剤、ラジカル阻害剤、着色剤、充填剤及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される添加剤を更に含む、実施例21に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例41 シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、0.98~1.10のイソシアネート指数を有する、実施例21に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例42 シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、約65~約100のショアAデュロメータ硬さの値を有する、実施例21に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタン。
実施例43 実施例21~42のうちの1つ以上に記載の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンから、それぞれ少なくとも部分的に形成される1つ以上の構成要素を備える、医療用装置。
実施例44 医療用装置が、カテーテルを備える、実施例43に記載の医療用装置。
実施例45 医療用装置が、末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)装置を備える、実施例43に記載の医療用装置。
実施例46 PICC装置が、高圧注入可能な少なくとも1つの流体経路を備える、実施例45に記載の医療用装置。
実施例47 PICC装置の当該少なくとも1つの流体経路が、(1)当該少なくとも1つの流体経路を消毒するのに十分な期間、エタノールロックの実施にかけられ、かつ(2)エタノールロックの実施後に洗浄され、回収期間の間、回収が可能となった後で、高圧注入可能である、実施例46に記載の医療用装置。
実施例48 回収期間が1時間以上である、実施例47に記載の医療用装置。
実施例49 PICC装置が、破裂することも漏れを生じることもなしで最大180psiの注入圧力を維持することができる少なくとも1つの流体経路を備える、実施例45に記載の医療用装置。
実施例50 少なくとも1つの流体経路が、延長チューブのルーメンと、接合ハブを通るチャネルと、カテーテルシャフトのルーメンとを含み、接合ハブが、延長チューブの遠位端に連結され、かつカテーテルシャフトの近位端に連結されている、実施例49に記載の医療用装置。
実施例51 接合ハブが、延長チューブ及びカテーテルシャフト上にオーバーモールドされる、実施例50に記載の医療用装置。
実施例52 延長チューブ、接合ハブ及びカテーテルシャフトがそれぞれ、ポリカーボネートポリオールとポリシロキサンとを含む軟性セグメントを含む耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含み、各軟性セグメントは、ポリシロキサンを5~15重量%の量で含む、実施例51に記載の医療用装置。
実施例53 接合ハブの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、延長チューブ及びカテーテルシャフトの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンよりも硬質である、実施例52に記載の医療用装置。
実施例54 延長チューブの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、カテーテルシャフトの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンとは異なる、実施例52に記載の医療用装置。
実施例55 カテーテルシャフトの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンに、放射線不透過性付与剤が配合されているが、延長チューブの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンには、放射線不透過性付与剤が配合されていない、実施例54に記載の医療用装置。
実施例56 カテーテルシャフトの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンと延長チューブの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンとが、同一の化学的配合を有する、実施例55に記載の医療用装置。
実施例57 カテーテルが、約15~約45dyn/cmの範囲内の表面エネルギーを有する、実施例44に記載の医療用装置。
実施例58 表面エネルギーが、約15~約30dyn/cmの範囲内である、実施例57に記載の医療用装置。
実施例59 表面エネルギーが、約20~約30dyn/cmの範囲内である、実施例58に記載の医療用装置。
実施例60 カテーテルが、約50~約80度の範囲内の水接触角を呈する、実施例44に記載の医療用装置。
実施例61 カテーテルが、約70~約80度の範囲内の水接触角を呈する、実施例60に記載の医療用装置。
実施例62 カテーテルがヒュームドシリカを含まない、実施例44に記載の医療用装置。
実施例63 カテーテルが潤滑添加剤を含まない、実施例44に記載の医療用装置。
実施例64 ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサン、イソシアネート、及び鎖延長剤を混合して、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを調製する工程を含み、ポリカーボネートポリオールが、ポリシロキサンの量以上の量で存在する、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを調製する方法。
実施例65 ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサン、イソシアネート及び鎖延長剤が、120~230°Fの温度で混合される、実施例64に記載の方法。
実施例66 ポリシロキサン及びポリカーボネートポリオールが、イソシアネート及び鎖延長剤の添加前に混合される、実施例64に記載の方法。
実施例67 ポリシロキサン及びイソシアネートが、ポリカーボネートポリオール及び鎖延長剤の添加前に混合される、実施例64に記載の方法。
実施例68 ポリシロキサン及びイソシアネートが、ポリカーボネートポリオール、鎖延長剤又はその両方を添加する前に、2~30分間混合される、実施例67に記載の方法。
実施例69 ポリカーボネートポリオールが、鎖延長剤を添加する前に、ポリシロキサンとイソシアネートとの混合物に添加される、実施例68に記載の方法。
実施例70 ポリシロキサン、イソシアネート及びポリカーボネートポリオールを組み合わせたものが、鎖延長剤を添加する前に2~30分間混合される、実施例69に記載の方法。
実施例71 ポリシロキサン、イソシアネート、ポリカーボネートポリオール及び鎖延長剤を組み合わせたものが、約30秒~15分間、更に混合される、実施例70に記載の方法。
実施例72 潤滑剤をポリカーボネートポリオール、ポリシロキサン、イソシアネート及び鎖延長剤と混合して、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを調製することを更に含む、実施例64に記載の方法。
実施例73 ポリシロキサン、イソシアネート、ポリカーボネートポリオール及び鎖延長剤を組み合わせたものを、12~36時間、210~250°Fの温度で硬化させて、硬化シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを調製することを更に含む、実施例64に記載の方法。
実施例74 硬化シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを、1~10ミリメートルの粒径を有するように粒状化して、粒状シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを形成することを更に含む、実施例73に記載の方法。
実施例75 粒状シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンに、放射線不透過性付与剤、着色剤又はその両方を配合して、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを形成することを更に含む、実施例74に記載の方法。
実施例76 式(IV):
【化8】
(式中、R
1及びR
2は、独立して、直鎖C
1~C
6のアルキル基又は水素基から選択され、R
3及びR
5は、独立して、C
1~C
12のアルキル基又はアルキレン基から選択され、R
4及びR
6は、独立して、C
1~C
8のアルキル基又はアルキレン基から選択され、mは2~30の整数である)による構造を有するポリシロキサン及びイソシアネートを含む第1の混合物を形成する工程と、
第1の混合物を第1の期間にわたって混合する工程と、
第1の期間の完了後に、第1の混合物と、式(I):
【化9】
(式中、Rは、直鎖又は分枝鎖、置換又は非置換、C
1~C
24のアルキル基又はアルキレン基から選択され、Aは、水素(H)又はR’OHから選択され、かつnは2~30の整数である)による構造を有するポリカーボネートポリオールと、を含む第2の混合物を形成する工程と、
第2の混合物を第2の期間にわたって混合する工程と、
を含む、耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを調製する方法。
実施例77 第2の期間の完了後に、第2の混合物及び鎖延長剤を含む第3の混合物を形成する工程と、
第3の混合物を第3の期間にわたって混合する工程と、
を含む、実施例76の方法。
実施例78 第3の混合物の温度を監視することを更に含み、第3の期間は、第3の混合物の温度が閾値まで上昇するときに終了する、実施例77に記載の方法。
実施例79 閾値が、約200~約230°Fの範囲内である、実施例78に記載の方法。
実施例80 第1の期間が約2~約30分であり、第2の期間は約2~約30分であり、第3の期間は約30秒~約15分である、実施例77に記載の方法。
実施例81 第2の混合物を当該形成することが、ポリカーボネートポリオール及び鎖延長剤を、第1の混合物に添加することを含む、実施例76に記載の方法。
実施例82 第2の混合物の温度を監視することを更に含み、第2の期間は、第2の混合物の温度が閾値まで上昇するときに終了する、実施例81に記載の方法。
実施例83 第1の期間が約2~約30分であり、第2の期間が約2~約15分である、実施例81に記載の方法。
実施例84 第1の混合物が、約120~約180°Fの温度で混合される、実施例76に記載の方法。
実施例85 第2の混合物が、約130~190°Fの温度で混合される、実施例84に記載の方法。
実施例86 第2の混合物が、約130~230°Fの温度で混合される、実施例84に記載の方法。
実施例87 鎖延長剤を、イソシアネート、ポリシロキサン及びポリカーボネートポリオールと混合することを更に含む、実施例76に記載の方法。
実施例88 潤滑剤を、イソシアネート、ポリシロキサン及びポリカーボネートポリオールと混合することを更に含む、実施例87に記載の方法。
実施例89 ポリシロキサン、イソシアネート、ポリカーボネートポリオール及び鎖延長剤を組み合わせたものを、12~36時間、210~250°Fの温度で硬化させて、硬化シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを調製することを更に含む、実施例87に記載の方法。
実施例90 硬化シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを、1~10ミリメートルの粒径を有するように粒状化して、粒状シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを形成することを更に含む、実施例89に記載の方法。
実施例91 粒状シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンに、放射線不透過性付与剤若しくは着色剤又はその両方を配合することを更に含む、実施例90に記載の方法。
実施例92 ポリカーボネートポリオール対ポリシロキサンの重量比が、約11:1~約9:1である、実施例76に記載の方法。
実施例93 ポリシロキサンとポリカーボネートポリオールとを組み合わせた重量が、本方法で使用される全ての反応物質の総重量の50~60%を構成する、実施例76に記載の方法。
実施例94 ポリシロキサンの重量が、ポリシロキサンとポリカーボネートポリオールとを組み合わせた当該重量の9~11%を構成する、実施例93に記載の方法。
実施例95 ポリシロキサンが、式(V):
【化10】
(式中、mは2~30の整数である)による構造を有するカルボニル変性ポリジメチルシロキサンである、実施例76に記載の方法。
実施例96 ポリシロキサンが、約925~約1025g/molの数平均分子量(M
n)を有する、実施例95に記載の方法。
実施例97 ポリカーボネートポリオールが、約1840~約2200g/molの数平均分子量(M
n)を有する、実施例96に記載の方法。
実施例98 ポリカーボネートポリオール対ポリシロキサンの重量比が、約11:1~約9:1である、実施例97に記載の方法。
実施例99 ポリシロキサンの重量が、ポリシロキサンとポリカーボネートポリオールとを組み合わせた重量の9~11%を構成する、実施例97に記載の方法。
実施例100 ポリシロキサンとポリカーボネートポリオールとを組み合わせた重量が、本方法で使用される全ての反応物質の総重量の50~60%を構成する、実施例97に記載の方法。
実施例101 ポリシロキサンの重量が、ポリシロキサンとポリカーボネートポリオールとを組み合わせた当該重量の9~11%を構成する、実施例100に記載の方法。
実施例102 実施例76~101のうちの1つ以上に記載の方法を介して調製された1種以上の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンから、それぞれ少なくとも部分的に形成される1つ以上の構成要素を備える、医療用装置。
実施例103 医療用装置がカテーテルを備える、実施例102に記載の医療用装置。
実施例104 医療用装置が末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)装置を備える、実施例102に記載の医療用装置。
実施例105 PICC装置が、高圧注入可能な少なくとも1つの流体経路を備える、実施例104に記載の医療用装置。
実施例106 PICC装置の当該少なくとも1つの流体経路が、(1)当該少なくとも1つの流体経路を消毒するのに十分な期間、エタノールロックの実施にかけられ、かつ(2)エタノールロックの実施後に洗浄され、回収期間の間、回収が可能となった後で、高圧注入可能である、実施例105に記載の医療用装置。
実施例107 回収期間が1時間以上である、実施例106に記載の医療用装置。
実施例108 PICC装置が、破裂することも漏れを生じることもなしで最大180psiの注入圧力を維持することができる少なくとも1つの流体経路を備える、実施例104に記載の医療用装置。
実施例109 少なくとも1つの流体経路が、延長チューブのルーメンと、接合ハブを通るチャネルと、カテーテルシャフトのルーメンとを含み、接合ハブが、延長チューブの遠位端に連結され、かつカテーテルシャフトの近位端に連結されている、実施例108に記載の医療用装置。
実施例110 接合ハブが、延長チューブ及びカテーテルシャフト上にオーバーモールドされる、実施例109に記載の医療用装置。
実施例111 延長チューブ、接合ハブ及びカテーテルシャフトがそれぞれ、ポリカーボネートポリオールとポリシロキサンとを含む軟性セグメントを含む耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含み、各軟性セグメントは、ポリシロキサンを5~15重量%の量で含む、実施例110に記載の医療用装置。
実施例112 接合ハブの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、延長チューブ及びカテーテルシャフトの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンよりも硬質である、実施例112に記載の医療用装置。
実施例113 押出成形されたシャフトを備えるカテーテルであって、
押出成形されたシャフトが、
前記シャフトの近位端から遠位端まで延在するルーメンと、
前記ルーメンの少なくとも一部分を画定し、耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含む側壁と、
を備え、
耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、
式(I):
【化11】
(式中、Rは、直鎖又は分枝鎖、置換又は非置換、C
1~C
24のアルキル基又はアルキレン基から選択され、Aは、水素(H)又はR’OHから選択され、nは2~30の整数である)による構造を有するポリカーボネートポリオールと、
式(IV):
【化12】
(式中、R
1及びR
2は、独立して、直鎖C
1~C
6のアルキル基又は水素基から選択され、R
3及びR
5は、独立して、C
1~C
12のアルキル基又はアルキレン基から独立して選択され、R
4及びR
6は、独立して、C
1~C
8のアルキル基又はアルキレン基から独立して選択され、mは2~30の整数である)による構造を有するポリシロキサンと、
イソシアネートと、
鎖延長剤と、
を含み、かつ
耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、
硬性セグメントと、
ポリシロキサンを5~15重量%の量で含む軟性セグメントと、を含み、かつ
1.01~1.06のイソシアネート指数を有する、
カテーテル。
実施例114 シャフトに連結され、シャフトのルーメンと流体連通しているコネクタを更に備える、実施例113に記載のカテーテル。
実施例115 延長チューブと、シャフト及び延長チューブ上にオーバーモールドされた接合ハブであって、延長チューブとシャフトのルーメンとの間に流体連通を提供するチャネルを画定する部分を含む接合ハブと、を更に備える、実施例113に記載のカテーテル。
実施例116 延長チューブの近位端に取り付けられたコネクタを更に備える、実施例115に記載のカテーテル。
実施例117 延長チューブが、シャフトの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの化学的配合と同一の化学的配合を有する耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含む、実施例115に記載のカテーテル。
実施例118 シャフトの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、それに物理的に配合された放射線不透過性付与剤を含む、実施例117に記載のカテーテル。
実施例119 放射線不透過性付与剤が硫酸バリウムを含む、実施例118に記載のカテーテル。
実施例120 延長チューブの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、放射線不透過性付与剤を含まない、実施例118に記載のカテーテル。
実施例121 接合ハブが、シャフト及び延長チューブの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの化学的配合とは異なる化学的配合を有する耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含む、実施例117に記載のカテーテル。
実施例122 接合ハブの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、シャフト及び延長チューブの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンよりも硬質である、実施例121に記載のカテーテル。
実施例123 チャネルを画定する接合ハブの部分が、シャフト及び延長チューブの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの化学的配合とは異なる化学的配合を有する耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含む、実施例115に記載のカテーテル。
実施例124 チャネルを画定する接合ハブの部分の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、シャフト及び延長チューブの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンよりも硬質である、実施例123に記載のカテーテル。
実施例125 接合ハブが、チャネルを画定する接合ハブの部分の上に配置されたカバーを備え、カバーが、チャネルを画定する接合ハブの部分の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンよりも軟質である追加の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含む、実施例124に記載のカテーテル。
実施例126 カバーの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、シャフト及び延長チューブの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンよりも軟質である、実施例125に記載のカテーテル。
実施例127 延長チューブの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンのそれぞれが、硬性セグメント及び軟性セグメントを含み、接合ハブの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの、軟性セグメントに対する硬性セグメントの割合が、シャフト及び延長チューブの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンのそれぞれの、軟性セグメントに対する硬性セグメントの割合よりも大きい、実施例123に記載のカテーテル。
実施例128 延長チューブ及び接合ハブの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンのそれぞれが、ポリシロキサンから部分的に形成される軟性セグメントを含み、シャフト、延長チューブ及び接合ハブのそれぞれに使用されるポリシロキサンは、対応する軟性セグメントの重量パーセントを画定し、シャフト、延長チューブ及び接合ハブのそれぞれについての当該重量パーセントは、シャフト、延長チューブ及び接合ハブの残りの2つのそれぞれについての当該重量パーセントとは、5重量パーセント以下の差で異なる、実施例127に記載のカテーテル。
実施例129 延長チューブ及び接合ハブのそれぞれの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの形成に使用されるポリシロキサンが、式(IV):
【化13】
(式中、R
1及びR
2は、独立して、直鎖C
1~C
6のアルキル基又は水素基から選択され、R
3及びR
5は、独立して、C
1~C
12のアルキル基又はアルキレン基から選択され、R
4及びR
6は、独立して、C
1~C
8のアルキル基又はアルキレン基から選択され、mは2~30の整数である)による構造を有する、実施例128に記載のカテーテル。
実施例130 延長チューブ及び接合ハブのそれぞれの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを形成する際に使用されるポリカーボネートポリオールが、式(I):
【化14】
(式中、Rは、直鎖又は分枝鎖、置換又は非置換、C
1~C
24のアルキル基又はアルキレン基から選択され、Aは、水素(H)又はR’OHから選択され、nは2~30の整数である)による構造を有する、実施例129に記載のカテーテル。
実施例131 延長チューブが、
式(I):
【化15】
(式中、Rは、直鎖又は分枝鎖、置換又は非置換、C
1~C
24のアルキル基又はアルキレン基から選択され、Aは、水素(H)又はR’OHから選択され、nは2~30の整数である)による構造を有するポリカーボネートポリオールと、
式(IV):
【化16】
(式中、R
1及びR
2は、独立して、直鎖C
1~C
6のアルキル基又は水素基から選択され、R
3及びR
5は、独立して、C
1~C
12のアルキル基又はアルキレン基から選択され、R
4及びR
6は、独立して、C
1~C
8のアルキル基又はアルキレン基から選択され、mは2~30の整数である)による構造を有するポリシロキサンと、
イソシアネートと、
鎖延長剤と、
を含むシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含み、
耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、
硬性セグメントと、
ポリシロキサンを5~15重量%の量で含む軟性セグメントと、を含み、かつ
1.01~1.06のイソシアネート指数を有する、
実施例115に記載のカテーテル。
実施例132 接合ハブが、
式(I):
【化17】
(式中、Rは、直鎖又は分枝鎖、置換又は非置換、C
1~C
24のアルキル基又はアルキレン基から選択され、Aは、水素(H)又はR’OHから選択され、nは2~30の整数である)による構造を有するポリカーボネートポリオールと、
式(IV):
【化18】
(式中、R
1及びR
2は、独立して、直鎖C
1~C
6のアルキル基又は水素基から選択され、R
3及びR
5は、独立して、C
1~C
12のアルキル基又はアルキレン基から選択され、R
4及びR
6は、独立して、C
1~C
8のアルキル基又はアルキレン基から選択され、mは2~30の整数である)による構造を有するポリシロキサンと、
イソシアネートと、
鎖延長剤と、
を含むシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含み、
耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、
硬性セグメントと、
ポリシロキサンを5~15重量%の量で含む軟性セグメントと、を含み、かつ
1.01~1.06のイソシアネート指数を有する、
実施例131に記載のカテーテル。
実施例133 接合ハブの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの、軟性セグメントに対する硬性セグメントの割合が、シャフト及び延長チューブの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンのそれぞれの、軟性セグメントに対する硬性セグメントの割合よりも大きい、実施例132に記載のカテーテル。
実施例134 シャフト、延長チューブ及び接合ハブのそれぞれに使用されるポリシロキサンは、対応する軟性セグメントの重量パーセントを画定し、シャフト、延長チューブ及び接合ハブのそれぞれについての重量パーセントは、シャフト、延長チューブ及び接合ハブの残りの2つのそれぞれについての当該重量パーセントとは、5重量パーセント以下の差で異なる、実施例133に記載のカテーテル。
実施例135 カテーテルが高圧注入可能である、実施例113に記載のカテーテル。
実施例136 (1)ルーメンが、ルーメンを消毒するのに十分な期間、エタノールロックの実施にかけられ、かつ(2)エタノールロックの実施後に洗浄された後、回収期間の間、待機した後に、カテーテルが高圧注入可能である、実施例135に記載のカテーテル。
実施例137 回収期間が15分以上である、実施例136に記載のカテーテル。
実施例138 回収期間が1時間以上である、実施例137に記載のカテーテル。
実施例139 シャフトが、末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)装置としてのカテーテルの使用を可能にするのに十分な長さである、実施例137に記載のカテーテル。
実施例140 (1)ルーメンが、ルーメンを消毒するのに十分なロック期間、エタノールロックの実施にかけられ、(2)エタノールロックの実施後に洗浄された後、回収期間の間、待機した後に、シャフトのルーメンが破損される破裂圧力が180psi以上である、実施例113に記載のカテーテル。
実施例141 ロック期間が少なくとも1時間である、実施例140に記載のカテーテル。
実施例142 回収期間が少なくとも15分である、実施例141に記載のカテーテル。
実施例143 回収期間が少なくとも1時間である、実施例141に記載のカテーテル。
実施例144 回収期間が少なくとも15分である、実施例140に記載のカテーテル。
実施例145 回収期間が少なくとも1時間である、実施例140に記載のカテーテル。
実施例146 シャフトに取り付けられ、ルーメンと流体連通するチャネルを画定する接合ハブと、
接合ハブに取り付けられ、接合ハブのチャネルと流体連通するルーメンを画定する延長チューブと、を更に備え、
流体経路が、シャフトのルーメン、チャネル、及び延長チューブのルーメンを含む、実施例113のカテーテル。
実施例147 (1)流体経路が、流体経路を消毒するのに十分な期間、エタノールロックの実施にかけられ、かつ(2)エタノールロックの実施後に流体経路が洗浄された後、回収期間の間、待機した後に、カテーテルの流体経路が高圧注入可能である、実施例146に記載のカテーテル。
実施例148 (1)流体経路が、流体経路を消毒するのに十分なロック期間、エタノールロックの実施にかけられ、かつ(2)エタノールロックの実施後に流体経路が洗浄された後、回収期間の間、待機した後に、流体経路の破裂圧力が180psi以上である、実施例146に記載のカテーテル。
実施例149 (1)流体経路が、流体経路を消毒するのに十分なロック期間、エタノールロックの実施にかけられ、かつ(2)エタノールロックの実施後に流体経路が洗浄された後、回収期間の間、待機した後に、流体経路の破裂圧力が200psi以上である、実施例146に記載のカテーテル。
実施例150 (1)流体経路が、流体経路を消毒するのに十分なロック期間、エタノールロックの実施にかけられ、かつ(2)エタノールロックの実施後に流体経路が洗浄された後、回収期間の間、待機した後に、流体経路の破裂圧力が220psi以上である、実施例146に記載のカテーテル。
実施例151 ロック期間が少なくとも1時間である、実施例147~150のいずれか一例に記載のカテーテル。
実施例152 回収期間が少なくとも15分である、実施例151に記載のカテーテル。
実施例153 回収期間が少なくとも1時間である、実施例151に記載のカテーテル。
実施例154 回収期間が少なくとも15分である、実施例147~150のいずれか一例に記載のカテーテル。
実施例155 回収期間が少なくとも1時間である、実施例147~150のいずれか一例に記載のカテーテル。
実施例156 第1の高圧注入中の流体経路の第1のピーク動作圧が、第2の高圧注入中の流体経路の第2のピーク動作圧から、10パーセント以下だけ変化し、流体経路が、第1の高圧注入と第2の高圧注入との間に、エタノールロックの実施、流体洗浄回収期間にかけられる、実施例147~150のいずれか一例に記載のカテーテル。
実施例157 第1のピーク動作圧が、第2のピーク動作圧から、5パーセント以下だけ異なる、実施例156に記載のカテーテル。
実施例158 第1のピーク動作圧が、第2のピーク動作圧から、2パーセント以下だけ異なる、実施例156に記載のカテーテル。
実施例159 耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが潤滑添加剤を含まない、実施例113に記載のカテーテル。
実施例160 シャフトが、使用中に患者に挿入されるように構成されたシャフトの長さの75パーセント以上に沿って、5フレンチ以上の外径を画定する、実施例113に記載のカテーテル。
実施例161 シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、シャフトが患者内にあるときに、シャフトをX線撮影法の下で見えるようにするのに十分な量で、硫酸バリウムを配合されている、実施例160に記載のカテーテル。
実施例162 硫酸バリウムが、配合済みのシリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンの総重量の20%以上の量で存在する、実施例161に記載のカテーテル。
実施例163 シャフトが、少なくとも2.3kgの体重の患者における非毒性的使用を可能にするのに十分に、滲出に対する耐性を有する、実施例161に記載のカテーテル。
実施例164 前記耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、
ポリシロキサン及びイソシアネートを含む第1の混合物を形成する工程と、
第1の混合物を第1の期間にわたって混合する工程と、
第1の期間の完了後に、第1の混合物及びポリカーボネートポリオールを含む第2の混合物を形成する工程と、
第2の混合物を第2の期間にわたって混合する工程と、
を含むプロセスにより形成される、実施例113に記載のカテーテル。
実施例165 プロセスが、
第2の期間の完了後に、第2の混合物及び鎖延長剤を含む第3の混合物を形成する工程と、
第3の混合物を第3の期間にわたって混合する工程と、
を更に含む、実施例164に記載のカテーテル。
実施例166 第3の期間は、第3の混合物の温度が閾値に上昇するときに終了する、実施例165に記載のカテーテル。
実施例167 閾値が、約200~約230°Fの範囲内である、実施例166に記載のカテーテル。
実施例168 第2の混合物を当該形成することが、ポリカーボネートポリオール及び鎖延長剤の両方を第1の混合物に添加することを含む、実施例164に記載のカテーテル。
実施例169 第2の期間は、第2の混合物の温度が閾値に上昇するときに終了する、実施例168に記載のカテーテル。
実施例170 閾値が、約200~約230°Fの範囲内である、実施例169に記載のカテーテル。
実施例171 第1の期間が約2~約30分である、実施例164に記載のカテーテル。
実施例172 第2の期間が約2~約30分である、実施例171に記載のカテーテル。
実施例173 第2の期間が約2~約15分である、実施例171に記載のカテーテル。
実施例174 ポリカーボネートポリオール対ポリシロキサンの重量比が、約11:1~約9:1である、実施例113に記載のカテーテル。
実施例175 ポリシロキサンとポリカーボネートポリオールとを組み合わせた重量が、本方法で使用される全ての反応物質の総重量の50~60%を構成する、実施例113に記載のカテーテル。
実施例176 ポリシロキサンの重量が、ポリシロキサンとポリカーボネートポリオールとを組み合わせた当該重量の9~11%を構成する、実施例175に記載のカテーテル。
実施例177 ポリシロキサンが、式(V):
【化19】
(式中、mは2~30の整数である)による構造を有するカルボニル変性ポリジメチルシロキサンである、実施例113に記載のカテーテル。
実施例178 ポリシロキサンが、約925~約1025g/molの数平均分子量(M
n)を有する、実施例177に記載のカテーテル。
実施例179 ポリカーボネートポリオールが、約1840~約2200g/molの数平均分子量(M
n)を有する、実施例178に記載のカテーテル。
実施例180 ポリカーボネートポリオール対ポリシロキサンの重量比が、約11:1~約9:1である、実施例179に記載のカテーテル。
実施例181 ポリシロキサンの重量が、ポリシロキサンとポリカーボネートポリオールとを組み合わせた重量の9~11%を構成する、実施例179に記載のカテーテル。
実施例182 ポリシロキサンとポリカーボネートポリオールとを組み合わせた重量が、本方法で使用される全ての反応物質の総重量の50~60%を構成する、実施例179に記載のカテーテル。
実施例183 ポリシロキサンの重量が、ポリシロキサンとポリカーボネートポリオールとを組み合わせた当該重量の9~11%を構成する、実施例182に記載のカテーテル。
実施例184 実施例113~183のいずれか一例に記載のカテーテルと、
カテーテルを使用するための指示書であって、
アルコールをカテーテルのルーメン内に導入し、ルーメン中にアルコールを、臨床的に有効なロック期間にわたって維持し、
カテーテルのルーメンから、アルコールを洗い流し、かつ
注入のためにルーメンを使用するに先だって、ルーメンからアルコールを洗い流した後の回収期間にわたって待つ、
ように指図する指示書と、
を含むキット。
実施例185 回収期間が1時間である、実施例184に記載のキット。
実施例186 回収期間が少なくとも1時間である、実施例184に記載のキット。
実施例187 患者の脈管構造に導入されるように構成されたシャフトの長さ部分が、5フレンチの外径を画定する、実施例184に記載のキット。
実施例188 使用するための指示書は、少なくとも2.3kgの体重の患者に対してカテーテルが使用可能であることを示す、実施例187に記載のキット。
実施例189 シャフトが患者内にあるときに、シャフトの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、シャフトをX線撮影法の下で見えるようにするのに十分な量で、放射線不透過性付与剤を配合される、実施例188に記載のキット。
実施例190 放射線不透過性付与剤が硫酸バリウムを含む、実施例189に記載のキット。
実施例191 注入は高圧注入である、実施例184に記載のキット。
実施例192 第1の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含むシャフトと、
第2の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含む延長チューブと、
シャフトの近位端及び延長チューブの遠位端上にオーバーモールドされ、第3の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含む接合ハブと、を備え、
第1、第2、及び第3の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンのそれぞれは、
ポリカーボネートポリオールと、
式(IV):
【化20】
(式中、R
1及びR
2は、独立して、直鎖C
1~C
6のアルキル基又は水素基から選択され、R
3及びR
5は、独立して、C
1~C
12のアルキル基又はアルキレン基から選択され、R
4及びR
6は、独立して、C
1~C
8のアルキル基又はアルキレン基から選択され、mは2~30の整数である)による構造を有するポリシロキサンと、を含み、
ポリシロキサンが、ポリカーボネートポリオールとポリシロキサンとを合わせた重量の5~15重量%を構成する、カテーテル。
実施例193 シャフト及び延長チューブのそれぞれが、第1及び第2の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンをそれぞれ含む押出成形物として形成される、実施例192に記載のカテーテル。
実施例194 接合ハブがコア及びカバーを備え、
コアが前記第3の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含み、
カバーが、
ポリカーボネートポリオールと、
式(IV):
【化21】
(式中、R
1及びR
2は、独立して、直鎖C
1~C
6のアルキル基又は水素基から選択され、R
3及びR
5は、独立して、C
1~C
12のアルキル基又はアルキレン基から選択され、R
4及びR
6は、独立して、C
1~C
8のアルキル基又はアルキレン基から選択され、mは2~30の整数である)による構造を有するポリシロキサンと、
を含む、第4の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含み、
ポリシロキサンが、ポリカーボネートポリオールとポリシロキサンとを合わせた重量の5~15重量%を構成する、
実施例192に記載のカテーテル。
実施例195 カバーが接合ハブのコアよりも軟質である、実施例192に記載のカテーテル。
実施例196 カバーが、シャフト及び延長チューブのそれぞれよりも軟質であり、コアが、シャフト及び延長チューブのそれぞれよりも硬質である、実施例195に記載のカテーテル。
実施例197 第3の耐アルコール性ポリカーボネートポリウレタンが、第1及び第2の耐アルコール性ポリカーボネートポリウレタンのそれぞれよりも硬質である、実施例192に記載のカテーテル。
実施例198 第3の耐アルコール性ポリカーボネートポリウレタンが、約15~約85のショアDデュロメータ硬さの値を有し、第1及び第2の耐アルコール性ポリカーボネートポリウレタンのそれぞれは、約95~約99のショアAデュロメータ硬さの値を有する、実施例197に記載のカテーテル。
実施例199 第1、第2、及び第3の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンのそれぞれについて、ポリシロキサンは、式(V):
【化22】
(式中、mは2~30の整数である)による構造を有するカルボニル変性ポリジメチルシロキサンである、実施例192に記載のカテーテル。
実施例200 第1、第2及び第3の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンのそれぞれについて、ポリシロキサンは、約925~約1025g/molの数平均分子量(M
n)を有する、実施例199に記載のカテーテル。
実施例201 第1、第2及び第3の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンのそれぞれについて、ポリカーボネートポリオールは、約1840~約2200g/molの数平均分子量(M
n)を有する、実施例200に記載のカテーテル。
実施例202 第1、第2及び第3の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンのそれぞれについて、ポリカーボネートポリオール対ポリシロキサンの重量比が、約11:1~約9:1である、実施例201に記載のカテーテル。
実施例203 第1、第2及び第3の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンのそれぞれについて、ポリシロキサンの重量が、ポリシロキサンとポリカーボネートポリオールとを組み合わせた重量の9~11%を構成する、実施例192に記載のカテーテル。
実施例204 第1、第2及び第3の耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンのそれぞれについて、ポリシロキサンとポリカーボネートポリオールとを組み合わせた重量に対するポリシロキサンの重量パーセントは、第1、第2及び第3の残りの2つの耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンのそれぞれについての当該重量パーセントとは、5重量%以下の差で異なる、実施例192に記載のカテーテル。
実施例205 ポリカーボネートポリオールと、ポリシロキサンと、イソシアネートと、鎖延長剤と、を含む反応物から形成された耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含む押出成形されたシャフトを備え、
押出成形されたシャフト及びその耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンは、潤滑添加剤を全く含まないカテーテル。
実施例206 ポリシロキサンが、ポリカーボネートポリオールとポリシロキサンとを組み合わせた重量の5~15重量%を構成する、実施例205に記載のカテーテル。
実施例207 ポリシロキサンが、式(IV):
【化23】
(式中、R
1及びR
2は、独立して、直鎖C
1~C
6のアルキル基又は水素基から選択され、R
3及びR
5は、独立して、C
1~C
12のアルキル基又はアルキレン基から選択され、R
4及びR
6は、独立して、C
1~C
8のアルキル基又はアルキレン基から選択され、mは2~30の整数である)による構造を有する、実施例206に記載のカテーテル。
実施例208 延長チューブと、延長チューブの遠位端及びカテーテルシャフトの近位端に連結された接合ハブと、を更に備え、延長チューブ及び接合ハブのそれぞれは、潤滑添加剤を含まない耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含む、実施例205に記載のカテーテル。
実施例209 ルーメンを画定する延長チューブと、
延長チューブに取り付けられ、延長チューブのルーメンと流体連通するチャネルを画定する接合ハブと、
接合ハブに取り付けられ、接合ハブのチャネルと流体連通するルーメンを画定する、押出成形されたシャフトであって、
ポリカーボネートポリオール、
ポリシロキサン、
イソシアネート、及び
鎖延長剤
を含む反応物質から形成される耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含む、押出成形されたシャフトと、
を備えるカテーテルであって、
流体経路が臨床的に有効な期間のアルコールロックにかけられ、かつ回収期間にわたってアルコールロックから回収することを許された後で、カテーテルが、延長チューブのルーメンと、接合ハブのルーメンと、シャフトのルーメンとを含む流体経路に沿って加圧注入可能である、カテーテル。
実施例210 シャフトの有効長が57センチメートル以上である、実施例209に記載のカテーテル。
実施例211 押出成形されたシャフト及びその耐アルコール性シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンが、何らの潤滑添加剤も含まない、実施例209に記載のカテーテル。
実施例212 シャフトの挿入可能部分が、5フレンチの外径を画定する、実施例209に記載のカテーテル。
実施例213 シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンに、少なくとも25重量%の硫酸バリウムが配合されている、実施例212に記載のカテーテル。
実施例214 カテーテルから滲出する硫酸バリウムの量が、2.3kg以上の新生児に対してカテーテルが安全に使用されるのを可能にするのに十分に少量である、実施例213に記載のカテーテル。
実施例215 延長チューブ及び接合ハブのそれぞれが、シリコーン処理ポリカーボネートポリウレタンを含む、実施例209に記載のカテーテル。
【0256】
特徴又は要素に関する「第1の」という用語の特許請求の範囲における記述は、必ずしも「第2の」又は「追加の」そのような特徴又は要素の存在を暗示するわけではない。独占的所有又は独占権が特許請求される本発明の実施形態は、以下のように定義される。