(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】光吸収層、光電変換素子、及び太陽電池
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20230908BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20230908BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/40
(21)【出願番号】P 2020557039
(86)(22)【出願日】2018-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2018042655
(87)【国際公開番号】W WO2020105087
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 浩司
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-127183(JP,A)
【文献】特開2018-041960(JP,A)
【文献】特表2013-511157(JP,A)
【文献】特開2016-122755(JP,A)
【文献】特開2016-027628(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163327(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/163325(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105047825(CN,A)
【文献】SANCHEZ, R. S. et al.,Tunable light emission by exciplex state formation between hybrid halide perovskite and core/shell quantum dots: Implications in advanced LEDs and photovoltaics,SCIENCE ADVANCES,2016年01月22日,Vol.2, Issue 1,pp.1-7,DOI:10.1126/sciadv.1501104
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/119
H01L 31/18-31/20
H10K 30/00-39/32
GooGle Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト化合物と量子ドットとを含有し、
前記量子ドットは、コアシェル構造を有し、
前記量子ドットのコアが、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端よりもポジティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持つ、及び、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端よりもネガティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持つ化合物を含有し、
前記量子ドットのシェルを構成する化合物が、ZnS、ZnSe、InGaAs、InGaN、GaSb、及びGaPから選択される少なくとも1種の化合物を含有し、
前記量子ドットの円形度が
0.65~0.92である光吸収層。
【請求項2】
前記量子ドットのシェルが、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端よりもネガティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持つ及び/又は前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端よりもポジティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持つ化合物を含有する、請求項1に記載の光吸収層。
【請求項3】
前記量子ドットのシェルが、前記ペロブスカイト化合物を構成する金属元素と異なる金属元素を含む化合物を含有する、請求項1
又は2に記載の光吸収層。
【請求項4】
前記量子ドットのコアが、前記ペロブスカイト化合物を構成する金属元素と同じ金属元素を含む化合物を含有する、請求項1~
3のいずれかに記載の光吸収層。
【請求項5】
前記量子ドットのコアを構成する化合物が、PbS又はPbSeを含有する、請求項1~
4のいずれかに記載の光吸収層。
【請求項6】
前記ペロブスカイト化合物は、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる1種以上である請求項1~
5のいずれかに記載の光吸収層。
RMX
3 (1)
(式中、Rは1価のカチオンであり、Mは2価の金属カチオンであり、Xはハロゲンアニオンである。)
R
1R
2R
3
n-1M
nX
3n+1 (2)
(式中、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立に1価のカチオンであり、Mは2価の金属カチオンであり、Xはハロゲンアニオンであり、nは1以上10以下の整数である。)
【請求項7】
前記Xは、フッ素アニオン、塩素アニオン、又は臭素アニオンである請求項
6に記載の光吸収層。
【請求項8】
前記R、R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立にアルキルアンモニウムイオン、又はホルムアミジニウムイオンである請求項
6又は7に記載の光吸収層。
【請求項9】
前記Mは、Pb
2+、Sn
2+、又はGe
2+である請求項
6~8のいずれかに記載の光吸収層。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれかに記載の光吸収層を有する光電変換素子。
【請求項11】
請求項
10に記載の光電変換素子を有する太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光吸収層、該光吸収層を有する光電変換素子、及び該光電変換素子を有する太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
光エネルギーを電気エネルギーに変える光電変換素子は、太陽電池、光センサー、複写機などに利用されている。特に、環境・エネルギー問題の観点から、無尽蔵のクリーンエネルギーである太陽光を利用する光電変換素子(太陽電池)が注目されている。
【0003】
一般的なシリコン太陽電池は、超高純度のシリコンを利用すること、高真空下でのエピタキシャル結晶成長などの「ドライプロセス」により製造していること、などから、大きなコストダウンが期待できない。そこで、塗布プロセスなどの「ウェットプロセス」により製造される太陽電池が、低コストで得られる次世代太陽電池として期待されている。
【0004】
「ウェットプロセス」により製造可能な次世代太陽電池として、量子ドット太陽電池がある。量子ドットとは、粒径が約20nm以下の無機ナノ粒子であり、量子サイズ効果の発現により、バルク体とは異なる物性を示すものである。例えば、量子ドットの粒径の減少に伴い、バンドギャップエネルギーが増大(吸収波長が短波長化)することが知られており、粒径約3nmでバンドギャップエネルギー約1.2eVの硫化鉛(PbS)量子ドットを量子ドット太陽電池に用いることが報告されている(ACS Nano 2014,8,614-622)。
【0005】
また、次世代太陽電池の最有力候補として、近年の光電変換効率の急増が報告されている、ペロブスカイト太陽電池がある。このペロブスカイト太陽電池は、例えば、メチルアンモニウムなどのカチオンとヨウ化鉛(PbI2)などのハロゲン化金属塩から構成されるペロブスカイト化合物(CH3NH3PbI3)を光吸収層に用いた光電変換素子を具備する(J.Am.Chem.Soc.2009,131,6050-6051)。カチオン種、ハロゲン元素、金属元素などの組成によりペロブスカイト化合物の化学的、物理的特性が変化することが知られている。
【0006】
また、ペロブスカイト化合物が光吸収しない近赤外光領域の光電変換を発現させるために、近赤外光を吸収するPbS量子ドットを複合したペロブスカイト太陽電池が報告されている(WO2018/025445)。更に、ペロブスカイト化合物のマトリクス中にPbS量子ドットが分散した光吸収層を有する中間バンド型太陽電池が報告されている(特許第6343406号)。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、光電変換効率に優れる光電変換素子及び太陽電池を形成するための光吸収層、当該光吸収層を有する光電変換素子及び太陽電池に関する。
【0008】
本発明者らは、ペロブスカイト化合物に量子ドットを少量でも複合させると、光電変換効率が低下する課題を見出した。
【0009】
そして、本発明者らは、ペロブスカイト化合物に量子ドットを複合させる場合において、量子ドットの粒子形状を制御すること、量子ドット表面を特定のエネルギー準位を持つ化合物で被覆すること、又はこれら技術を組み合わせることにより、光電変換効率の低下が抑制されることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、ペロブスカイト化合物と量子ドットとを含有し、前記量子ドットの円形度が0.50~0.92である光吸収層、に関する。
【0011】
また、本発明は、ペロブスカイト化合物と、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端よりもネガティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持つ及び/又は前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端よりもポジティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持つ化合物を含む量子ドットと、を含有する光吸収層、に関する。
【0012】
特定の円形度を持つ量子ドットを用いることにより、光電変換効率の低下を抑制できる理由は定かではないが、量子ドットを含む分散液(コート液)の粘度変化により、得られる光吸収層の膜質(被覆率)が向上し、ペロブスカイト化合物表面でのキャリア熱失活が抑制されたためと推定される。また、量子ドット表面を特定のエネルギー準位を持つ化合物で被覆することにより、光電変換効率の低下を抑制できる理由は定かではないが、ペロブスカイト化合物と量子ドットとの界面に特定のエネルギー準位を持つ化合物が存在することにより、その界面のエネルギー準位が変化し、キャリアの熱失活が抑制されたためと推定される。
【0013】
本発明によれば、ペロブスカイト化合物と量子ドットとを含有する光吸収層、光電変換素子、及び太陽電池において、量子ドットの粒子形状を制御すること、量子ドット表面を特定のエネルギー準位を持つ化合物で被覆すること、又はこれら技術を組み合わせることにより、光電変換効率に優れる光吸収層、光電変換素子、及び太陽電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の光電変換素子の構造の一例を示す概略断面図である。
【
図2】実施例1で用いた量子ドットのSTEM(Zコントラスト)像である。
【発明の詳細な説明】
【0015】
<光吸収層>
本発明の光吸収層は、光吸収剤として、ペロブスカイト化合物と量子ドットとを含有する。なお、本発明の光吸収層は、本発明の効果を損なわない範囲で前記以外の光吸収剤を含有していてもよい。
【0016】
前記ペロブスカイト化合物は、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物であり、公知のものを特に制限なく使用できるが、耐久性(耐湿性)及び光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは1.5eV以上4.0eV以下のバンドギャップエネルギーを有するものを用いる。ペロブスカイト化合物は、1種単独で用いてもよく、バンドギャップエネルギーが異なる2種以上を併用してもよい。
【0017】
前記ペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギーは、光電変換効率(電圧)を向上させる観点から、好ましくは2.0eV以上、より好ましくは2.1eV以上、更に好ましくは2.2eV以上であり、光電変換効率(電流)を向上させる観点から、好ましくは3.6eV以下、より好ましくは3.0eV以下、更に好ましくは2.4eV以下である。なお、ペロブスカイト化合物及び量子ドットのバンドギャップエネルギーは、後述する実施例に記載の方法で、25℃で測定した吸収スペクトルから求めることができる。吸収スペクトルから求めたバンドギャップエネルギーに対応する波長を吸収端波長という。
【0018】
前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端のエネルギー準位は、ペロブスカイトの電子取り出し効率を向上させて光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは2.0eV vs. vacuum以上、より好ましくは3.0eV vs. vacuum以上、更に好ましくは3.3eV vs. vacuum以上であり、電圧を向上させて光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは5.0eV vs. vacuum以下、より好ましくは4.0eV vs. vacuum以下、更に好ましくは3.5eV vs. vacuum以下である。
【0019】
前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端のエネルギー準位は、電圧を向上させて光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは4.0eV vs. vacuum以上、より好ましくは5.0eV vs. vacuum以上、更に好ましくは5.6eV vs. vacuum以上であり、ペロブスカイトの正孔取り出し効率を向上させて光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは7.0eV vs. vacuum以下、より好ましくは6.0eV vs. vacuum以下、更に好ましくは5.8eV vs. vacuum以下である。
【0020】
前記ペロブスカイト化合物は、好ましくは下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる1種以上であり、耐久性と光電変換効率とを両立する観点から、より好ましくは下記一般式(1)で表される化合物である。
【0021】
RMX3 (1)
(式中、Rは1価のカチオンであり、Mは2価の金属カチオンであり、Xはハロゲンアニオンである。)
【0022】
R1R2R3
n-1MnX3n+1 (2)
(式中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立に1価のカチオンであり、Mは2価の金属カチオンであり、Xはハロゲンアニオンであり、nは1以上10以下の整数である。)
【0023】
前記Rは1価のカチオンであり、例えば、周期表第一族元素のカチオン、及び有機カチオンが挙げられる。周期表第一族元素のカチオンとしては、例えば、Li+、Na+、K+、及びCs+が挙げられる。有機カチオンとしては、例えば、置換基を有していてもよいアンモニウムイオン、及び置換基を有していてもよいホスホニウムイオンが挙げられる。置換基に特段の制限はない。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンとしては、例えば、アルキルアンモニウムイオン、ホルムアミジニウムイオン及びアリールアンモニウムイオンが挙げられ、耐久性と光電変換効率とを両立する観点から、好ましくはアルキルアンモニウムイオン及びホルムアミジニウムイオンから選ばれる1種以上であり、より好ましくはモノアルキルアンモニウムイオン及びホルムアミジニウムイオンから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはメチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、ブチルアンモニウムイオン及びホルムアミジニウムイオンから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはメチルアンモニウムイオンである。
【0024】
前記R1、R2、及びR3はそれぞれ独立に1価のカチオンであり、R1、R2、及びR3のいずれかまたは全てが同一でも良い。例えば、周期表第一族元素のカチオン、及び有機カチオンが挙げられる。周期表第一族元素のカチオンとしては、例えば、Li+、Na+、K+、及びCs+が挙げられる。有機カチオンとしては、例えば、置換基を有していてもよいアンモニウムイオン、及び置換基を有していてもよいホスホニウムイオンが挙げられる。置換基に特段の制限はない。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンとしては、例えば、アルキルアンモニウムイオン、ホルムアミジニウムイオン及びアリールアンモニウムイオンが挙げられ、耐久性と光電変換効率とを両立する観点から、好ましくはアルキルアンモニウムイオン及びホルムアミジニウムイオンから選ばれる1種以上であり、より好ましくはモノアルキルアンモニウムイオンであり、更に好ましくはメチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、ブチルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、デシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、テトラデシルアンモニウムイオン、ヘキサデシルアンモニウムイオン、及びオクタデシルアンモニウムイオンから選ばれる1種以上である。
【0025】
前記nは1以上10以下の整数であり、耐久性と光電変換効率とを両立する観点から、好ましくは1以上4以下である。
【0026】
前記Mは2価の金属カチオンであり、例えば、Pb2+、Sn2+、Hg2+、Cd2+、Zn2+、Mn2+、Cu2+、Ni2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Y2+、及びEu2+などが挙げられる。前記Mは、耐久性(耐湿性)及び光電変換効率に優れる観点から、好ましくはPb2+、Sn2+、又はGe2+であり、より好ましくはPb2+、又はSn2+であり、更に好ましくはPb2+である。
【0027】
前記Xはハロゲンアニオンであり、例えば、フッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、及びヨウ素アニオンが挙げられる。前記Xは、目的とするバンドギャップエネルギーを有するペロブスカイト化合物を得るために、好ましくはフッ素アニオン、塩素アニオン、又は臭素アニオンであり、より好ましくは塩素アニオン、又は臭素アニオンであり、更に好ましくは臭素アニオンである。
【0028】
1.5eV以上4.0eV以下のバンドギャップエネルギーを有する上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、CH3NH3PbCl3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBrI2、CH3NH3PbBr2I、CH3NH3SnCl3、CH3NH3SnBr3、CH3NH3SnI3、CH(=NH)NH3PbCl3、CH(=NH)NH3PbBr3、及びCH(=NH)NH3PbI3などが挙げられる。これらのうち、耐久性と光電変換効率とを両立する観点から、好ましくはCH3NH3PbBr3、CH(=NH)NH3PbBr3であり、より好ましくはCH3NH3PbBr3である。
【0029】
1.5eV以上4.0eV以下のバンドギャップエネルギーを有する上記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、(C4H9NH3)2PbI4、(C6H13NH3)2PbI4、(C8H17NH3)2PbI4、(C10H21NH3)2PbI4、(C12H25NH3)2PbI4、(C4H9NH3)2(CH3NH3)Pb2I7、(C6H13NH3)2(CH3NH3)Pb2I7、(C8H17NH3)2(CH3NH3)Pb2I7、(C10H21NH3)2(CH3NH3)Pb2I7、(C12H25NH3)2(CH3NH3)Pb2I7、(C4H9NH3)2(CH3NH3)2Pb3I10、(C6H13NH3)2(CH3NH3)2Pb3I10、(C8H17NH3)2(CH3NH3)2Pb3I10、(C10H21NH3)2(CH3NH3)2Pb3I10、(C12H25NH3)2(CH3NH3)2Pb3I10、(C4H9NH3)2PbBr4、(C6H13NH3)2PbBr4、(C8H17NH3)2PbBr4、(C10H21NH3)2PbBr4、(C4H9NH3)2(CH3NH3)Pb2Br7、(C6H13NH3)2(CH3NH3)Pb2Br7、(C8H17NH3)2(CH3NH3)Pb2Br7、(C10H21NH3)2(CH3NH3)Pb2Br7、(C12H25NH3)2(CH3NH3)Pb2Br7、(C4H9NH3)2(CH3NH3)2Pb3Br10、(C6H13NH3)2(CH3NH3)2Pb3Br10、(C8H17NH3)2(CH3NH3)2Pb3Br10、(C10H21NH3)2(CH3NH3)2Pb3Br10、(C12H25NH3)2(CH3NH3)2Pb3Br10、(C4H9NH3)2(CH3NH3)2Pb3Cl10、(C6H13NH3)2(CH3NH3)2Pb3Cl10、(C8H17NH3)2(CH3NH3)2Pb3Cl10、(C10H21NH3)2(CH3NH3)2Pb3Cl10、及び(C12H25NH3)2(CH3NH3)2Pb3Cl10などが挙げられる。
【0030】
前記ペロブスカイト化合物は、例えば、後述のようにペロブスカイト化合物の前駆体から製造することができる。ペロブスカイト化合物の前駆体としては、例えば、ペロブスカイト化合物が前記一般式(1)で表される化合物の場合、MX2で表される化合物と、RXで表される化合物との組合せが挙げられる。また、ペロブスカイト化合物が前記一般式(2)で表される化合物の場合、MX2で表される化合物と、R1Xで表される化合物、R2Xで表される化合物及びR3Xで表される化合物から選ばれる1種以上との組合せが挙げられる。
【0031】
光吸収層のペロブスカイト化合物は、例えば、元素分析、赤外(IR)スペクトル、ラマンスペクトル、核磁気共鳴(NMR)スペクトル、X線回折パターン、吸収スペクトル、発光スペクトル、電子顕微鏡観察、及び電子線回折などの常法により同定することができる。
【0032】
前記量子ドットとは、粒径が約20nm以下の、結晶構造を有する無機ナノ粒子であり、量子サイズ効果の発現により、バルク体とは異なる物性を示すものである。
【0033】
本発明においては、光吸収層の成膜性(膜均一性)を向上させて、光電変換効率の低下を抑制する観点から、円形度が0.50~0.92である量子ドットを用いる。前記観点、製造容易性の観点、及び経済性の観点から、量子ドットの円形度は、好ましくは0.60以上、より好ましくは0.65以上であり、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.80以下である。なお、量子ドットの円形度は、後述する実施例に記載の方法で算出することができる。
【0034】
前記量子ドットは、前記ペロブスカイト化合物が有しないバンドギャップエネルギーを補完して、近赤外光領域の光電変換効率を向上させる観点から、0.2eV以上前記ペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギー未満のバンドギャップエネルギーを有するものを用いることが好ましい。量子ドットは、1種単独で用いてもよく、バンドギャップエネルギーが異なる2種以上を併用してもよい。なお、バンドギャップエネルギーの異なる2種以上のペロブスカイト化合物を用いる場合、量子ドットのバンドギャップエネルギーの前記上限である「ペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギー未満のバンドギャップエネルギー」とは、2種以上のペロブスカイト化合物の有するバンドギャップエネルギーの最大値未満のバンドギャップエネルギーのことである。以下、特に断らない限り、量子ドットの好ましい態様は、光吸収層とその原料とに共通の好ましい態様である。
【0035】
前記量子ドット(または下記で述べるコアシェル量子ドット)のバンドギャップエネルギーは、光電変換効率(電圧)を向上させる観点から、好ましくは0.5eV以上、より好ましくは0.6eV以上、更に好ましくは0.7eV以上、より更に好ましくは0.8eV以上であり、光電変換効率(電流)を向上させる観点から、好ましくは1.0eV以下、より好ましくは0.95eV以下、更に好ましくは0.9eV以下、より更に好ましくは0.85eV以下である。
【0036】
前記量子ドットについては、例えば、電子顕微鏡観察、電子線回折、及びX線回折パターンなどにより量子ドットの粒径及び種類が決まれば、粒径とバンドギャップエネルギーとの相関(例えば、ACS Nano2014,8,6363-6371)から、バンドギャップエネルギーを算出することもできる。
【0037】
前記ペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギーと前記量子ドットのバンドギャップエネルギーとの差は、光電変換効率向上の観点から、好ましくは1.0eV以上、より好ましくは1.4eV以上、更に好ましくは1.45eV以上であり、好ましくは2.0eV以下、より好ましくは1.7eV以下、更に好ましくは1.5eV以下である。
【0038】
量子ドットの発光ピークエネルギーは、光電変換効率(電圧)を向上させる観点から、波長800nm(エネルギー1.55eV)の光で光吸収層を励起した時、好ましくは0.2eV以上、より好ましくは0.4eV以上、更に好ましくは0.6eV以上、より更に好ましくは0.8eV以上であり、光電変換効率(電流)を向上させる観点から、好ましくは1.4eV以下、より好ましくは1.2eV以下、更に好ましくは1.0eV以下、より更に好ましくは0.95eV以下である。
【0039】
量子ドットの発光ピークエネルギーとペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギーとの差は、光電変換効率向上の観点から、好ましくは0.4eV以上、より好ましくは0.8eV、更に好ましくは1.2eV以上、より更に好ましくは1.4eV以上であり、好ましくは3.4eV以下、より好ましくは2.5eV以下、更に好ましくは2.0eV以下、より更に好ましくは1.5eV以下である。
【0040】
量子ドットの発光ピークエネルギーと量子ドットのバンドギャップエネルギーとの差は、光電変換効率向上の観点から、好ましくは0.01eV以上、より好ましくは0.03eV、更に好ましくは0.05eV以上であり、好ましくは0.3eV以下、より好ましくは0.2eV以下、更に好ましくは0.1eV以下である。
【0041】
なお、量子ドットの発光ピークエネルギーは、下記実施例の記載の通り、例えば、波長800nm(エネルギー1.55eV)の光で光吸収層を励起した時の発光スペクトルのピーク波長(ピークエネルギー)として求めることができる。
【0042】
前記量子ドットの粒径は、安定性及び光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、更に好ましくは3nm以上であり、成膜性及び光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下、更に好ましくは5nm以下である。前記量子ドットの粒径は、XRD(X線回折)の結晶子径解析や透過型電子顕微鏡観察などの常法によって測定することができる。
【0043】
前記バンドギャップエネルギーを有する量子ドットとしては、例えば、金属酸化物、金属カルコゲナイド(例えば、硫化物、セレン化物、及びテルル化物など)が挙げられ、具体的には、PbS、PbSe、PbTe、CdS、CdSe、CdTe、Sb2S3、Bi2S3、Ag2S、Ag2Se、Ag2Te、Au2S、Au2Se、Au2Te、Cu2S、Cu2Se、Cu2Te、Fe2S、Fe2Se、Fe2Te、In2S3、SnS、SnSe、SnTe、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、EuS、EuSe、及びEuTeなどが挙げられる。前記量子ドットは、耐久性(耐酸化性)及び光電変換効率に優れる観点から、好ましくはPb元素を含み、より好ましくはPbS又はPbSeを含み、更に好ましくはPbSを含む。また、ペロブスカイト化合物と量子ドットの相互作用を大きくするために、ペロブスカイト化合物を構成する金属と量子ドットを構成する金属は同じ金属であることが好ましい。
【0044】
前記量子ドットは、光吸収層及び分散液中における分散性、製造容易性、コスト、優れた性能発現などの観点から、好ましくは有機配位子及びハロゲン元素から選択される1種以上を含んでも良い。
【0045】
有機配位子としては、例えば、カルボキシ基含有化合物、アミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、及びホスフィノ基含有化合物などが挙げられる。
【0046】
カルボキシ基含有化合物としては、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、及びカプリン酸などが挙げられる。
【0047】
アミノ基含有化合物としては、例えば、オレイルアミン、ステアリルアミン、パルミチルアミン、ミリスチルアミン、ラウリルアミン、カプリルアミン、オクチルアミン、ヘキシルアミン、及びブチルアミンなどが挙げられる。
【0048】
チオール基含有化合物としては、例えば、エタンチオール、エタンジチオール、ベンゼンチオール、ベンゼンジチオール、デカンチオール、デカンジチオール、及びメルカプトプロピオン酸などが挙げられる。
【0049】
ホスフィノ基含有化合物としては、例えば、トリオクチルホスフィン、及びトリブチルホスフィンなどが挙げられる。
【0050】
前記有機配位子は、量子ドットの製造容易性、分散安定性、汎用性、コスト、優れた性能発現などの観点から、好ましくはカルボキシ基含有化合物又はアミノ基含有化合物、より好ましくはカルボキシ基含有化合物、更に好ましくは長鎖脂肪酸、より更に好ましくはオレイン酸である。
【0051】
量子ドットに好ましくは有機配位子が含まれる場合、光吸収層を製造する際に原料として用いる量子ドットにおいて、量子ドットを構成する金属元素(量子ドットが下記で述べるコアシェル量子ドットである場合は、コアを構成する金属元素)に対する有機配位子のモル比は、光吸収層を製造する際に有機配位子とペロブスカイト化合物の前駆体との配位子交換を促進させる観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、光吸収層中や分散液中の量子ドットの分散性を向上させる観点から、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.3以下である。
【0052】
光吸収層の量子ドットは、例えば、元素分析、赤外(IR)スペクトル、ラマンスペクトル、核磁気共鳴(NMR)スペクトル、X線回折パターン、吸収スペクトル、発光スペクトル、小角X線散乱、電子顕微鏡観察、及び電子線回折などの常法により同定することができる。
【0053】
前記ペロブスカイト化合物と前記量子ドットの好ましい組み合わせとしては、耐久性と光電変換効率とを両立する観点から、好ましくは同じ金属元素を含む化合物の組み合わせであり、例えば、CH3NH3PbBr3とPbS、CH3NH3PbBr3とPbSe、CH(=NH)NH3PbBr3とPbS、CH(=NH)NH3PbBr3とPbSeなどが挙げられ、より好ましくはCH3NH3PbBr3とPbSとの組み合わせである。
【0054】
前記円形度が0.50~0.92である量子ドットは、例えば、結晶成長中の反応温度や原料添加速度などを急激に変化させ、量子ドットの結晶成長速度を変化させる方法、量子ドットの特定の結晶面にのみ特異的に相互作用する配位子を結晶成長中に共存させることにより、特定の結晶面のみを優先的に結晶成長させる方法、及び量子ドットコアと異なる化合物を量子ドットコア表面に付着、結合して、量子ドットをコアシェル構造にする方法などにより得ることができ、好ましくは量子ドットをコアシェル構造にする方法である。
【0055】
コアシェル構造を有する量子ドット(以下、コアシェル量子ドットという)のコアを構成する化合物としては、前記量子ドットの材料と同様に、例えば、金属酸化物、金属カルコゲナイド(例えば、硫化物、セレン化物、及びテルル化物など)が挙げられ、具体的には、PbS、PbSe、PbTe、CdS、CdSe、CdTe、Sb2S3、Bi2S3、Ag2S、Ag2Se、Ag2Te、Au2S、Au2Se、Au2Te、Cu2S、Cu2Se、Cu2Te、Fe2S、Fe2Se、Fe2Te、In2S3、SnS、SnSe、SnTe、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、EuS、EuSe、及びEuTeなどが挙げられる。コアシェル量子ドットのコアを構成する化合物は、耐久性(耐酸化性)及び光電変換効率に優れる観点から、好ましくはPb元素を含み、より好ましくはPbS又はPbSeを含み、更に好ましくはPbSを含む。また、ペロブスカイト化合物とコアシェル量子ドットの相互作用を大きくするために、ペロブスカイト化合物を構成する金属元素とコアシェル量子ドットのコアを構成する金属元素は同じ金属元素であることが好ましい。
【0056】
コアシェル量子ドットのコアの粒径は、安定性及び光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、更に好ましくは2.5nm以上であり、成膜性及び光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下、更に好ましくは5nm以下である。コアシェル量子ドットのコアの粒径は、XRD(X線回折)の結晶子径解析や透過型電子顕微鏡観察などの常法によって測定することができる。
【0057】
コアシェル量子ドットのコアのバンドギャップエネルギーは、光電変換効率(電圧)を向上させる観点から、好ましくは0.5eV以上、より好ましくは0.6eV以上、更に好ましくは0.7eV以上、より更に好ましくは0.8eV以上であり、光電変換効率(電流)を向上させる観点から、好ましくは1.0eV以下、より好ましくは0.95eV以下、更に好ましくは0.9eV以下、より更に好ましくは0.85eV以下である。
【0058】
コアシェル量子ドットのコアは、光吸収層中に中間バンドを形成し、2段階光吸収の量子効率を向上させる観点から、好ましくは前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端よりもポジティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持つ及び/又は前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端よりもネガティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持つ化合物を含有する。前記化合物は、前記観点から、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端から、好ましくは0.1eV以上、より好ましくは0.3eV以上、更に好ましくは0.5eV以上、好ましくは2.0eV以下、より好ましくは0.8eV以下、更に好ましくは0.65eV以下のポジティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持つ。また、前記化合物は、前記観点から、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端から、好ましくは0.1eV以上、より好ましくは0.3eV以上、好ましくは1.0eV以下、より好ましくは0.6eV以下のネガティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持つ。
【0059】
コアシェル量子ドットのシェルを構成する化合物としては、例えば、前記コアシェル量子ドットのコアを構成する化合物、前記ペロブスカイト化合物、ZnS、ZnSe、InGaAs、InGaN、GaSb、及びGaPなどが挙げられる。コアシェル量子ドットのシェルを構成する化合物は、ペロブスカイト化合物表面でのキャリア熱失活を抑制して、光電変換効率を向上させる観点から、好ましくはコアシェル量子ドットのコアを構成する金属元素と異なる金属元素を含み、より好ましくはZn元素を含み、更に好ましくはZnS及び/又はZnSeを含み、より更に好ましくはZnSを含む。また、ペロブスカイト化合物表面でのキャリア熱失活を抑制して、光電変換効率を向上させる観点から、ペロブスカイト化合物を構成する金属元素とコアシェル量子ドットのシェルを構成する金属元素は異なる金属元素であることが好ましい。
【0060】
コアシェル量子ドットのシェルのバンドギャップエネルギーは、ペロブスカイト化合物表面でのキャリア熱失活を抑制して、光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは2.0eV以上、より好ましくは3.0eV以上、更に好ましくは4.0eV以上であり、好ましくは5.0eV以下である。
【0061】
コアシェル量子ドットのシェルは、ペロブスカイト化合物表面でのキャリア熱失活を抑制して、光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端よりもネガティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持つ及び/又は前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端よりもポジティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持つ化合物を含有する。前記化合物は、前記観点から、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端から、好ましくは0.1eV以上、より好ましくは0.2eV以上、更に好ましくは0.3eV以上、好ましくは2.0eV以下、より好ましくは1.0eV以下、更に好ましくは0.5eV以下のネガティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持つ。また、前記化合物は、前記観点から、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端から、好ましくは0.1eV以上、より好ましくは0.5eV以上、更に好ましくは1.0eV以上、好ましくは2.0eV以下、より好ましくは1.8eV以下、更に好ましくは1.5eV以下のポジティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持つ。
【0062】
コアシェル量子ドットのシェルの厚みは、ペロブスカイト化合物表面でのキャリア熱失活を抑制して、光電変換効率を向上させる観点から、平均で、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.3nm以上であり、キャリア拡散長を増大させ光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは4nm以下、より好ましくは1nm以下、更に好ましくは0.6nm以下である。
【0063】
コアシェル量子ドットのシェルの層数は、ペロブスカイト化合物表面でのキャリア熱失活を抑制して、光電変換効率を向上させる観点から、平均で、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは1以上であり、キャリア拡散長を増大させ光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である。なお、コアシェル量子ドットのシェルの厚み及び層数は、実施例に記載された方法で、平均の厚みおよび平均の層数を求めることができる。また、1未満の層数は、コアの表面積に対するシェルの被覆割合を意味する。
【0064】
コアシェル量子ドットのコアを構成する金属元素に対するシェルを構成する金属元素の原子比(シェル/コア)は、ペロブスカイト化合物表面でのキャリア熱失活を抑制して、光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上であり、キャリア拡散長を増大させ光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である。
【0065】
コアシェル量子ドットのコアの質量に対するシェルの質量の質量比(シェル/コア)は、ペロブスカイト化合物表面でのキャリア熱失活を抑制して、光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上であり、キャリア拡散長を増大させ光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは5以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。
【0066】
コアシェル量子ドットの粒径は、安定性及び光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、更に好ましくは3nm以上であり、成膜性及び光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下、更に好ましくは5nm以下である。コアシェル量子ドットの粒径は、XRD(X線回折)の結晶子径解析や透過型電子顕微鏡観察などの常法によって測定することができる。
【0067】
コアシェル量子ドットの製造方法は特に制限されないが、例えば、SILAR(Successive Ionic Layer Adsorption and Reaction)法が挙げられる。具体的には、シェルを構成する化合物の陽イオンを含む溶液と、シェルを構成する化合物の陰イオンを含む溶液とを、交互にコアを含む溶液中に加えることでコアシェル量子ドットを製造することができる。コアシェル量子ドットの円形度、シェル厚み、及びシェル層数は、原料組成、溶媒、反応温度、反応濃度、反応時間、原料添加時間、及び原料添加タイミングなどを適宜調整することにより目的の範囲に調整することができる。
【0068】
前記光吸収層中における前記ペロブスカイト化合物と前記量子ドットの含有割合は特に制限されないが、ペロブスカイト化合物と量子ドットの合計含有量に対する量子ドットの含有割合(量子ドットの複合量)は、耐久性と光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上、より更に好ましくは0.15質量%以上であり、成膜性と光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下である。
【0069】
前記光吸収層中における前記ペロブスカイト化合物と前記量子ドットの「コア」の含有割合は特に制限されないが、ペロブスカイト化合物と量子ドットの合計含有量に対する量子ドットの「コア」の含有割合は、耐久性と光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上、より更に好ましくは0.12質量%以上であり、成膜性と光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下である。
【0070】
前記光吸収層の500nmにおける外部量子効率(EQE)は、ペロブスカイト化合物の光吸収に由来する。光吸収層の500nmにおけるEQEは、光電変換効率向上の観点から、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上である。
【0071】
前記光吸収層の500nmにおける外部量子効率(EQE)は、量子ドットを含まないペロブスカイト化合物単独に比べて低い場合がある。ペロブスカイト化合物単独の光吸収層の500nmのEQEに対する前記光吸収層のEQE比は、光電変換効率向上の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上である。
【0072】
光吸収層の厚さは、特に制限されないが、光吸収を大きくして光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは80nm以上、より更に好ましくは100nm以上であり、同様の観点から、好ましくは1000nm以下、より好ましくは800nm以下、更に好ましくは600nm以下、より更に好ましくは500nm以下である。なお、光吸収層の厚さは、膜断面の電子顕微鏡観察などの測定方法で測定できる。
【0073】
光吸収層の多孔質層に対する被覆率は、光電変換効率(電流)を向上させる観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上、より更に好ましくは40%以上、より更に好ましくは50%以上であり、100%以下である。なお、光吸収層の多孔質層に対する被覆率は、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0074】
光吸収層における量子ドット(QD)のペロブスカイト化合物(P)に対する吸光度比(QD/P)は、光電変換効率(電圧)を向上させる観点から、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.1以下、より更に好ましくは0である。なお、光吸収層における吸光度比(QD/P)は、下記実施例の記載の方法で測定した光吸収層の吸収スペクトルから、少なくとも1種の量子ドットの吸光度の最大値の少なくとも1種のペロブスカイト化合物の吸光度に対する比率である。ここで、少なくとも1種の量子ドットの吸光度と少なくとも1種のペロブスカイト化合物の吸光度は、それぞれ、それらを単独で測定した場合の吸収ピーク位置における吸光度として得られる。
【0075】
光吸収層におけるペロブスカイト化合物(P)のピーク吸光度は、光吸収量を増大させ光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、光励起キャリアの取出し効率を向上させ光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.7以下である。
【0076】
光吸収層におけるペロブスカイト発光寿命は、ペロブスカイト化合物表面でのキャリア熱失活を抑制して、光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは1ns以上、より好ましくは1.5ns以上であり、2段階光吸収効率を向上させ光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは100ns以下、より好ましくは10ns以下、更に好ましくは6ns以下である。
【0077】
光吸収層のペロブスカイト化合物の結晶子径は、光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは40nm以上であり、同様の観点から、好ましくは1000nm以下である。なお、光吸収層の100nm以下の範囲の結晶子径は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。また、100nmを超える範囲の結晶子径は、後述する実施例に記載の方法等で測定することはできないが、光吸収層の厚さを超えることはない。
【0078】
<光電変換素子>
本発明の光電変換素子は、前記光吸収層を有するものである。本発明の光電変換素子において、前記光吸収層以外の構成は特に制限されず、公知の光電変換素子の構成を適用することができる。また、本発明の光電変換素子は、前記光吸収層以外は公知の方法で製造することができる。
【0079】
以下、本発明の光電変換素子の構成と製造方法を
図1に基づいて説明するが、
図1は一例にすぎず、
図1に示す態様に限定されるものではない。
【0080】
図1は、本発明の光電変換素子の構造の一例を示す概略断面図である。光電変換素子1は、透明基板2、透明導電層3、ブロッキング層4、多孔質層5、光吸収層6、及び正孔輸送層7が順次積層された構造を有する。光10入射側の透明電極基板は、透明基板2と透明導電層3から構成されており、透明導電層3は外部回路と電気的につなげるための端子となる電極(負極)9に接合している。また、正孔輸送層7は外部回路と電気的につなげるための端子となる電極(正極)8に接合している。
【0081】
透明基板2の材料としては、強度、耐久性、光透過性があればよく、合成樹脂及びガラスなどを使用できる。合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムなどの熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリイミド、及びフッ素樹脂などが挙げられる。強度、耐久性、コストなどの観点から、ガラス基板を用いることが好ましい。
【0082】
透明導電層3の材料としては、例えば、スズ添加酸化インジウム(ITO)、フッ素添加酸化スズ(FTO)、酸化スズ(SnO2)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、及び高い導電性を有する高分子材料などが挙げられる。高分子材料としては、例えば、ポリアセチレン系、ポリピロール系、ポリチオフェン系、ポリフェニレンビニレン系の高分子材料が挙げられる。また、透明導電層3の材料として、高い導電性を有する炭素系薄膜を用いることもできる。透明導電層3の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、及び分散物を塗布する方法などが挙げられる。
【0083】
ブロッキング層4の材料としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミ、酸化ケイ素、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化錫、及び酸化亜鉛などが挙げられる。ブロッキング層4の形成方法としては、上記材料を透明導電層3に直接スパッタする方法、及びスプレーパイロリシス法などが挙げられる。また、上記材料を溶媒に溶解した溶液、又は金属酸化物の前駆体である金属水酸化物を溶解した溶液を透明導電層3上に塗布し、乾燥し、必要に応じて焼成する方法が挙げられる。塗布方法としては、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、及びダイコート法などが挙げられる。
【0084】
多孔質層5は、その表面に光吸収層6を担持する機能を有する層である。太陽電池において光吸収効率を高めるためには、光を受ける部分の表面積を大きくすることが好ましい。多孔質層5を設けることにより、光を受ける部分の表面積を大きくすることができる。
【0085】
多孔質層5の材料としては、例えば、金属酸化物、金属カルコゲナイド(例えば、硫化物、及びセレン化物など)、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(ただし、前記光吸収剤を除く)、ケイ素酸化物(例えば、二酸化ケイ素及びゼオライト)、及びカーボンナノチューブ(カーボンナノワイヤ及びカーボンナノロッドなどを含む)などが挙げられる。
【0086】
金属酸化物としては、例えば、チタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、アルミニウム、及びタンタルの酸化物などが挙げられ、金属カルコゲナイドとしては、例えば、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化カドミウム、及びセレン化カドミウムなどが挙げられる。
【0087】
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物としては、例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸バリウム、スズ酸バリウム、ジルコン酸鉛、ジルコン酸ストロンチウム、タンタル酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム、鉄酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムバリウム、チタン酸バリウムランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、及びチタン酸ビスマスなどが挙げられる。
【0088】
多孔質層5の形成材料は、好ましくは微粒子として用いられ、より好ましくは微粒子を含有する分散物として用いられる。多孔質層5の形成方法としては、例えば、湿式法、乾式法、その他の方法(例えば、Chemical Review,第110巻,6595頁(2010年刊)に記載の方法)が挙げられる。これらの方法において、ブロッキング層4の表面に分散物(ペースト)を塗布した後に、焼成することが好ましい。焼成により、微粒子同士を密着させることができる。塗布方法としては、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、及びダイコート法などが挙げられる。
【0089】
光吸収層6は前述の本発明の光吸収層である。光吸収層6の形成方法は特に制限されず、例えば、前記ペロブスカイト化合物又はその前駆体と、前記量子ドットとを含む分散液を調製し、多孔質層5の表面に調製した分散液を塗布し、乾燥する、いわゆるウェットプロセスによる方法が好適に挙げられる。
【0090】
前記ウェットプロセスにおいて、ペロブスカイト化合物又はその前駆体と、前記量子ドットとを含む分散液は、成膜性、コスト、保存安定性、優れた性能(例えば、光電変換特性)発現の観点から、好ましくは溶剤を含有する。溶剤としては、例えば、エステル類(メチルホルメート、エチルホルメートなど)、ケトン類(γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、アセトン、ジメチルケトン、ジイソブチルケトンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、アルコール類(メタノール、エタノール、2-プロパノール、tert-ブタノール、メトキシプロパノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、2-フルオロエタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノールなど)、グリコールエーテル(セロソルブ)類、アミド系溶剤(N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなど)、ニトリル系溶剤(アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリルなど)、カーボネート系(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルムなど)、炭化水素、及びジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0091】
前記分散液の溶剤は、成膜性、コスト、保存安定性、優れた性能(例えば、光電変換特性)発現の観点から、好ましくは極性溶剤、より好ましくはケトン類、アミド系溶剤、及びジメチルスルホキシドから選ばれる少なくとも1種の溶剤、更に好ましくはアミド系溶剤、より更に好ましくはN,N-ジメチルホルムアミドである。
【0092】
前記分散液中の前記ペロブスカイト化合物又はその前駆体の金属濃度は、成膜性、コスト、保存安定性、優れた性能(例えば、光電変換特性)発現の観点から、好ましくは0.1mol/L以上、より好ましくは0.2mol/L以上、更に好ましくは0.3mol/L以上であり、好ましくは1.5mol/L以下、より好ましくは1.0mol/L以下、更に好ましくは0.5mol/L以下である。
【0093】
前記分散液中の前記量子ドットの固形分濃度は、成膜性、コスト、保存安定性、優れた性能(例えば、光電変換特性)発現の観点から、好ましくは0.1mg/mL以上、より好ましくは0.5mg/mL以上、更に好ましくは1mg/mL以上であり、好ましくは100mg/mL以下、より好ましくは50mg/mL以下、更に好ましくは30mg/mL以下である。
【0094】
前記分散液の調製方法は特に限定されない。なお、具体的な調製方法は実施例の記載による。
【0095】
前記ウェットプロセスにおける塗布方法は特に限定されず、例えば、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、及びダイコート法などが挙げられる。
【0096】
前記ウェットプロセスにおける乾燥方法としては、製造容易性、コスト、優れた性能(例えば、光電変換特性)発現の観点から、例えば、熱乾燥、気流乾燥、真空乾燥などが挙げられ、好ましくは熱乾燥である。
【0097】
正孔輸送層7の材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体、及びポリパラフェニレンビニレン誘導体などが挙げられる。正孔輸送層7の形成方法としては、例えば、塗布法、及び真空蒸着法などが挙げられる。塗布方法としては、例えば、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、及びダイコート法などが挙げられる。
【0098】
電極(正極)8及び電極(負極)9の材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、白金などの金属;スズ添加酸化インジウム(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電性金属酸化物;導電性高分子などの有機系導電材料;ナノチューブなどの炭素系材料が挙げられる。電極(正極)8及び電極(負極)9の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、及び塗布法などが挙げられる。
【0099】
<太陽電池>
本発明の太陽電池は、前記光電変換素子を有するものである。本発明の太陽電池において、前記光吸収層以外の構成は特に制限されず、公知の太陽電池の構成を適用することができる。本発明の太陽電池は、中間バンド型太陽電池であってもよい。
【0100】
以下に、本発明及び本発明の好ましい実施態様を示す。
<1>
ペロブスカイト化合物と量子ドットとを含有し、前記量子ドットの円形度が0.50~0.92である光吸収層。
<2>
ペロブスカイト化合物と、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端よりもネガティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持つ及び/又は前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端よりもポジティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持つ化合物を含む量子ドットと、を含有する光吸収層。
<3>
前記ペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギーは、好ましくは1.5eV以上、より好ましくは2.0eV以上、更に好ましくは2.1eV以上、より更に好ましくは2.2eV以上であり、好ましくは4.0eV以下、より好ましくは3.6eV以下、更に好ましくは3.0eV以下、より更に好ましくは2.4eV以下である、<1>又は<2>に記載の光吸収層。
<4>
前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端のエネルギー準位は、好ましくは2.0eV vs. vacuum以上、より好ましくは3.0eV vs. vacuum以上、更に好ましくは3.3eV vs. vacuum以上であり、好ましくは5.0eV vs. vacuum以下、より好ましくは4.0eV vs. vacuum以下、更に好ましくは3.5eV vs. vacuum以下である、<1>~<3>のいずれかに記載の光吸収層。
<5>
前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端のエネルギー準位は、好ましくは4.0eV vs. vacuum以上、より好ましくは5.0eV vs. vacuum以上、更に好ましくは5.6eV vs. vacuum以上であり、好ましくは7.0eV vs. vacuum以下、より好ましくは6.0eV vs. vacuum以下、更に好ましくは5.8eV vs. vacuum以下である、<1>~<4>のいずれかに記載の光吸収層。
<6>
好ましくは、前記ペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギーは、1.5eV以上4.0eV以下であり、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端のエネルギー準位は、2.0eV vs. vacuum以上5.0eV vs. vacuum以下であり、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端のエネルギー準位は、4.0eV vs. vacuum以上7.0eV vs. vacuum以下であり、
より好ましくは、前記ペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギーは、2.0eV以上3.6eV以下であり、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端のエネルギー準位は、3.0eV vs. vacuum以上4.0eV vs. vacuum以下であり、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端のエネルギー準位は、5.0eV vs. vacuum以上6.0eV vs. vacuum以下であり、
更に好ましくは、前記ペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギーは、2.1eV以上3.0eV以下であり、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端のエネルギー準位は、3.3eV vs. vacuum以上3.5eV vs. vacuum以下であり、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端のエネルギー準位は、5.6eV vs. vacuum以上5.8eV vs. vacuum以下であり、
より更に好ましくは、前記ペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギーは、2.2eV以上2.4eV以下であり、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端のエネルギー準位は、3.3eV vs. vacuum以上3.5eV vs. vacuum以下であり、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端のエネルギー準位は、5.6eV vs. vacuum以上5.8eV vs. vacuum以下である、<1>又は<2>に記載の光吸収層。
<7>
前記ペロブスカイト化合物は、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる1種以上であり、好ましくは下記一般式(1)で表される化合物である、<1>~<6>のいずれかに記載の光吸収層。
RMX3 (1)
(式中、Rは1価のカチオンであり、Mは2価の金属カチオンであり、Xはハロゲンアニオンである。)
R1R2R3
n-1MnX3n+1 (2)
(式中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立に1価のカチオンであり、Mは2価の金属カチオンであり、Xはハロゲンアニオンであり、nは1以上10以下の整数である。)
<8>
前記Rは、好ましくはアルキルアンモニウムイオン及びホルムアミジニウムイオンから選ばれる1種以上であり、より好ましくはモノアルキルアンモニウムイオン及びホルムアミジニウムイオンから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはメチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、ブチルアンモニウムイオン及びホルムアミジニウムイオンから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはメチルアンモニウムイオンである、<7>に記載の光吸収層。
<9>
前記R1、R2、及びR3はそれぞれ独立に、好ましくはアルキルアンモニウムイオン及びホルムアミジニウムイオンから選ばれる1種以上であり、より好ましくはモノアルキルアンモニウムイオンであり、更に好ましくはメチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、ブチルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、デシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、テトラデシルアンモニウムイオン、ヘキサデシルアンモニウムイオン、及びオクタデシルアンモニウムイオンから選ばれる1種以上である、<7>又は<8>に記載の光吸収層。
<10>
前記nは、好ましくは1以上4以下である、<7>~<9>のいずれかに記載の光吸収層。
<11>
前記Mは、好ましくはPb2+、Sn2+、又はGe2+であり、より好ましくはPb2+、又はSn2+であり、更に好ましくはPb2+である、<7>~<10>のいずれかに記載の光吸収層。
<12>
前記Xは、好ましくはフッ素アニオン、塩素アニオン、又は臭素アニオンであり、より好ましくは塩素アニオン、又は臭素アニオンであり、更に好ましくは臭素アニオンである、<7>~<11>のいずれかに記載の光吸収層。
<13>
前記一般式(1)で表される化合物は、好ましくはCH3NH3PbBr3及び/又はCH(=NH)NH3PbBr3、より好ましくはCH3NH3PbBr3である、<7>に記載の光吸収層。
<14>
前記ペロブスカイト化合物の結晶子径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは40nm以上であり、好ましくは1000nm以下である、<1>~<13>のいずれかに記載の光吸収層。
<15>
前記量子ドットの円形度は、好ましくは0.60以上、より好ましくは0.65以上であり、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.80以下である、<1>~<14>のいずれかに記載の光吸収層。
<16>
前記量子ドットのバンドギャップエネルギーは、好ましくは0.5eV以上、より好ましくは0.6eV以上、更に好ましくは0.7eV以上、より更に好ましくは0.8eV以上であり、好ましくは1.0eV以下、より好ましくは0.95eV以下、更に好ましくは0.9eV以下、より更に好ましくは0.85eV以下である、<1>~<15>のいずれかに記載の光吸収層。
<17>
前記ペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギーと前記量子ドットのバンドギャップエネルギーとの差は、好ましくは1.0eV以上、より好ましくは1.4eV以上、更に好ましくは1.45eV以上であり、好ましくは2.0eV以下、より好ましくは1.7eV以下、更に好ましくは1.5eV以下である、<1>~<16>のいずれかに記載の光吸収層。
<18>
前記量子ドットの発光ピークエネルギーは、波長800nm(エネルギー1.55eV)の光で光吸収層を励起した時、好ましくは0.2eV以上、より好ましくは0.4eV以上、更に好ましくは0.6eV以上、より更に好ましくは0.8eV以上であり、好ましくは1.4eV以下、より好ましくは1.2eV以下、更に好ましくは1.0eV以下、より更に好ましくは0.95eV以下である、<1>~<17>のいずれかに記載の光吸収層。
<19>
量子ドットの発光ピークエネルギーとペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギーとの差は、好ましくは0.4eV以上、より好ましくは0.8eV、更に好ましくは1.2eV以上、より更に好ましくは1.4eV以上であり、好ましくは3.4eV以下、より好ましくは2.5eV以下、更に好ましくは2.0eV以下、より更に好ましくは1.5eV以下である、<1>~<18>のいずれかに記載の光吸収層。
<20>
量子ドットの発光ピークエネルギーと量子ドットのバンドギャップエネルギーとの差は、好ましくは0.01eV以上、より好ましくは0.03eV、更に好ましくは0.05eV以上であり、好ましくは0.3eV以下、より好ましくは0.2eV以下、更に好ましくは0.1eV以下である、<1>~<19>のいずれかに記載の光吸収層。
<21>
前記量子ドットの粒径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、更に好ましくは3nm以上であり、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下、更に好ましくは5nm以下である、<1>~<20>のいずれかに記載の光吸収層。
<22>
前記量子ドットは、好ましくはPb元素を含み、より好ましくはPbS又はPbSeを含み、更に好ましくはPbSを含む、<1>~<21>のいずれかに記載の光吸収層。
<23>
前記ペロブスカイト化合物を構成する金属と前記量子ドットを構成する金属は同じ金属である、<1>~<22>のいずれかに記載の光吸収層。
<24>
前記量子ドットは、好ましくは有機配位子及びハロゲン元素から選択される1種以上を含む、<1>~<23>のいずれかに記載の光吸収層。
<25>
前記有機配位子は、好ましくはカルボキシ基含有化合物又はアミノ基含有化合物、より好ましくはカルボキシ基含有化合物、更に好ましくは長鎖脂肪酸、より更に好ましくはオレイン酸である、<24>に記載の光吸収層。
<26>
前記ペロブスカイト化合物と前記量子ドットの組み合わせは、好ましくは同じ金属元素を含む化合物の組み合わせ、より好ましくはCH3NH3PbBr3とPbSとの組み合わせである、<1>~<25>のいずれかに記載の光吸収層。
<27>
前記量子ドットは、コアシェル構造を有するコアシェル量子ドットである、<1>~<26>のいずれかに記載の光吸収層。
<28>
前記コアシェル量子ドットのコアを構成する化合物は、好ましくはPb元素を含み、より好ましくはPbS又はPbSeを含み、更に好ましくはPbSを含む、<27>に記載の光吸収層。
<29>
前記コアシェル量子ドットのコアが、前記ペロブスカイト化合物を構成する金属元素と同じ金属元素を含む化合物を含有する、<27>又は<28>に記載の光吸収層。
<30>
前記コアシェル量子ドットのコアの粒径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、更に好ましくは2.5nm以上であり、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下、更に好ましくは5nm以下である、<27>~<29>のいずれかに記載の光吸収層。
<31>
前記コアシェル量子ドットのコアのバンドギャップエネルギーは、好ましくは0.5eV以上、より好ましくは0.6eV以上、更に好ましくは0.7eV以上、より更に好ましくは0.8eV以上であり、好ましくは1.0eV以下、より好ましくは0.95eV以下、更に好ましくは0.9eV以下、より更に好ましくは0.85eV以下である、<27>~<30>のいずれかに記載の光吸収層。
<32>
前記コアシェル量子ドットのコアは、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端よりもポジティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持つ及び/又は前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端よりもネガティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持つ化合物を含有する、<27>~<31>のいずれかに記載の光吸収層。
<33>
前記化合物は、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端から、好ましくは0.1eV以上、より好ましくは0.3eV以上、更に好ましくは0.5eV以上、好ましくは2.0eV以下、より好ましくは0.8eV以下、更に好ましくは0.65eV以下のポジティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持つ、<32>に記載の光吸収層。
<34>
前記化合物は、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端から、好ましくは0.1eV以上、より好ましくは0.3eV以上、好ましくは1.0eV以下、より好ましくは0.6eV以下のネガティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持つ、<32>又は<33>に記載の光吸収層。
<35>
好ましくは、前記化合物は、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端から、0.1eV以上2.0eV以下のポジティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持ち、かつ、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端から、0.1eV以上1.0eV以下のネガティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持ち、
より好ましくは、前記化合物は、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端から、0.3eV以上0.8eV以下のポジティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持ち、かつ、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端から、0.3eV以上0.6eV以下のネガティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持ち、
更に好ましくは、前記化合物は、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端から、0.5eV以上0.65eV以下のポジティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持ち、かつ、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端から、0.3eV以上0.6eV以下のネガティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持つ、<32>に記載の光吸収層。
<36>
前記コアシェル量子ドットのシェルを構成する化合物は、好ましくはコアシェル量子ドットのコアを構成する金属元素と異なる金属元素を含み、より好ましくはZn元素を含み、更に好ましくはZnS及び/又はZnSeを含み、より更に好ましくはZnSを含む、<27>~<35>のいずれかに記載の光吸収層。
<37>
前記コアシェル量子ドットのシェルが、前記ペロブスカイト化合物を構成する金属元素と異なる金属元素を含む化合物を含有する、<27>~<36>のいずれかに記載の光吸収層。
<38>
前記コアシェル量子ドットのシェルのバンドギャップエネルギーは、好ましくは2.0eV以上、より好ましくは3.0eV以上、更に好ましくは4.0eV以上であり、好ましくは5.0eV以下である、<27>~<37>のいずれかに記載の光吸収層。
<39>
前記コアシェル量子ドットのシェルは、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端よりもネガティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持つ及び/又は前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端よりもポジティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持つ化合物を含有する、<27>~<38>のいずれかに記載の光吸収層。
<40>
前記化合物は、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端から、好ましくは0.1eV以上、より好ましくは0.2eV以上、更に好ましくは0.3eV以上、好ましくは2.0eV以下、より好ましくは1.0eV以下、更に好ましくは0.5eV以下のネガティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持つ、<39>に記載の光吸収層。
<41>
前記化合物は、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端から、好ましくは0.1eV以上、より好ましくは0.5eV以上、更に好ましくは1.0eV以上、好ましくは2.0eV以下、より好ましくは1.8eV以下、更に好ましくは1.5eV以下のポジティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持つ、<39>又は<40>に記載の光吸収層。
<42>
好ましくは、前記化合物は、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端から、0.1eV以上2.0eV以下のネガティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持ち、かつ、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端から、0.1eV以上2.0eV以下のポジティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持ち、
より好ましくは、前記化合物は、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端から、0.2eV以上1.0eV以下のネガティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持ち、かつ、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端から、0.5eV以上1.8eV以下のポジティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持ち、
更に好ましくは、前記化合物は、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端から、0.3eV以上0.5eV以下のネガティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持ち、かつ、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端から、1.0eV以上1.5eV以下のポジティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持つ、<39>に記載の光吸収層。
<43>
好ましくは、前記コアシェル量子ドットのコアに含まれる化合物は、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端から、0.1eV以上2.0eV以下のポジティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持ち、かつ、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端から、0.1eV以上1.0eV以下のネガティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持ち、かつ、前記コアシェル量子ドットのシェルに含まれる化合物は、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端から、0.1eV以上2.0eV以下のネガティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持ち、かつ、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端から、0.1eV以上2.0eV以下のポジティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持ち、
より好ましくは、前記コアシェル量子ドットのコアに含まれる化合物は、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端から、0.3eV以上0.8eV以下のポジティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持ち、かつ、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端から、0.3eV以上0.6eV以下のネガティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持ち、かつ、前記コアシェル量子ドットのシェルに含まれる化合物は、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端から、0.2eV以上1.0eV以下のネガティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持ち、かつ、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端から、0.5eV以上1.8eV以下のポジティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持ち、
更に好ましくは、前記コアシェル量子ドットのコアに含まれる化合物は、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端から、0.5eV以上0.65eV以下のポジティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持ち、かつ、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端から、0.3eV以上0.6eV以下のネガティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持ち、かつ、前記コアシェル量子ドットのシェルに含まれる化合物は、前記ペロブスカイト化合物の伝導帯下端から、0.3eV以上0.5eV以下のネガティブなエネルギー準位に伝導帯下端を持ち、かつ、前記ペロブスカイト化合物の価電子帯上端から、1.0eV以上1.5eV以下のポジティブなエネルギー準位に価電子帯上端を持つ、<27>~<31>及び<36>~<38>のいずれかに記載の光吸収層。
<44>
前記コアシェル量子ドットのシェルの厚みは、平均で、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.3nm以上であり、好ましくは4nm以下、より好ましくは1nm以下、更に好ましくは0.6nm以下である、<27>~<43>のいずれかに記載の光吸収層。
<45>
前記コアシェル量子ドットのシェルの層数は、平均で、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは1以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である、<27>~<44>のいずれかに記載の光吸収層。
<46>
前記コアシェル量子ドットのコアを構成する金属元素に対するシェルを構成する金属元素の原子比(シェル/コア)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である、<27>~<45>のいずれかに記載の光吸収層。
<47>
前記コアシェル量子ドットのコアの質量に対するシェルの質量の質量比(シェル/コア)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である、<27>~<46>のいずれかに記載の光吸収層。
<48>
前記コアシェル量子ドットの粒径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、更に好ましくは3nm以上であり、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下、更に好ましくは5nm以下である、<27>~<47>のいずれかに記載の光吸収層。
<49>
前記ペロブスカイト化合物と前記量子ドットの合計含有量に対する前記量子ドットの含有割合(量子ドットの複合量)は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上、より更に好ましくは0.15質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下である、<1>~<48>のいずれかに記載の光吸収層。
<50>
前記ペロブスカイト化合物と前記量子ドットの合計含有量に対する前記量子ドットのコアの含有割合は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上、より更に好ましくは0.12質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下である、<27>~<49>のいずれかに記載の光吸収層。
<51>
前記光吸収層の500nmにおける外部量子効率(EQE)は、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上である、<1>~<50>のいずれかに記載の光吸収層。
<52>
前記ペロブスカイト化合物単独の光吸収層の500nmのEQEに対する前記光吸収層のEQE比は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上である、<1>~<51>のいずれかに記載の光吸収層。
<53>
前記光吸収層の厚さは、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは80nm以上、より更に好ましくは100nm以上であり、好ましくは1000nm以下、より好ましくは800nm以下、更に好ましくは600nm以下、より更に好ましくは500nm以下である、<1>~<52>のいずれかに記載の光吸収層。
<54>
前記光吸収層の多孔質層に対する被覆率は、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上、より更に好ましくは40%以上、より更に好ましくは50%以上であり、100%以下である、<1>~<53>のいずれかに記載の光吸収層。
<55>
前記光吸収層における量子ドット(QD)のペロブスカイト化合物(P)に対する吸光度比(QD/P)は、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.1以下、より更に好ましくは0である、<1>~<54>のいずれかに記載の光吸収層。
<56>
前記光吸収層におけるペロブスカイト化合物(P)のピーク吸光度は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.7以下である、<1>~<55>のいずれかに記載の光吸収層。
<57>
前記光吸収層におけるペロブスカイト発光寿命は、好ましくは1ns以上、より好ましくは1.5ns以上であり、好ましくは100ns以下、より好ましくは10ns以下、更に好ましくは6ns以下である、<1>~<56>のいずれかに記載の光吸収層。
<58>
<1>~<57>のいずれかに記載の光吸収層を有する光電変換素子。
<59>
<58>に記載の光電変換素子を有する太陽電池。
【実施例】
【0101】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。また、評価・測定方法は以下のとおりである。なお、特に断らない限り、実施、測定は25℃で行った。
【0102】
<I-V曲線>
キセノンランプ白色光を光源(ペクセル・テクノロジーズ株式会社製、PEC-L01)とし、太陽光(AM1.5)相当の光強度(100mW/cm2)にて、光照射面積0.0363cm2(2mm角)のマスク下、I-V特性計測装置(ペクセル・テクノロジーズ株式会社製、PECK2400-N)を用いて走査速度0.1V/sec(0.01V step)、電圧設定後待ち時間50msec、測定積算時間50msec、開始電圧-0.1V、終了電圧1.1Vの条件でセルのI-V曲線を測定した。なお、シリコンリファレンス(BS-520、0.5714mA)で光強度補正を行った。I-V曲線から短絡電流密度(mA/cm2)、開放電圧(V)、フィルファクター(FF)、及び変換効率(%)を求めた。
【0103】
<外部量子効率>
外部量子効率(EQE)スペクトルは、分光感度測定装置(分光計器株式会社製、CEP-2000MLR)を用い、光照射面積0.0363cm2のマスク下、300~1700nmの波長範囲にて直流法で測定を行った。ペロブスカイト化合物の光吸収に由来する波長500nmのEQEを求めた。なお、ペロブスカイト化合物の光吸収に由来する500nmのEQEにおいて、ペロブスカイト単独セルのEQEに対する量子ドット複合セルのEQEの比を算出した。
【0104】
<吸収スペクトル>
光吸収層の吸収スペクトルは、正孔輸送剤を塗布する前の試料において、UV-Vis分光光度計(株式会社島津製作所製、SolidSpec-3700)を用い、スキャンスピード中速、サンプルピッチ1nm、スリット幅20、検出器ユニット積分球の条件で300~1600nmの範囲を測定した。FTO(Fluorine-doped tin oxide)基板(旭硝子ファブリテック株式会社製、25×25×1.8mm)でバックグラウンド測定を行った。光吸収層のペロブスカイト化合物の吸光度に対する量子ドットの吸光度の比(QD/P)は、1000nm付近の量子ドットのピーク波長の吸光度をペロブスカイト化合物のピーク波長の吸光度で割った値である。
量子ドット分散液の吸収スペクトルは、量子ドット固体0.1mg/mLの濃度のトルエン分散液において、1cm角石英セルを用いて、同様に測定した。
横軸;波長λ、縦軸;吸光度Aの吸収スペクトルを、横軸;エネルギーhν、縦軸;(αhν)1/2(α;吸光係数)のスペクトルに変換し、吸収の立ち上がる部分に直線をフィッティングし、その直線とベースラインとの交点をバンドギャップエネルギーとした。
【0105】
<発光スペクトル>
量子ドット分散液の発光スペクトルは、量子ドット固体0.1mg/mLの濃度のトルエン分散液において、1cm角四面透明セルを用いて、近赤外蛍光分光計(株式会社堀場製作所製、Fluorolog)を用い、励起波長800nm、励起光スリット幅10nm、発光スリット幅15nm、取り込み時間0.1sec、積算2回平均、ダークオフセットオンの条件で850~1550nmの範囲を測定した。
光吸収層のペロブスカイト化合物の発光寿命は、ガラス基板上に同様に作製した光吸収層において、蛍光寿命測定装置(株式会社堀場製作所製、Fluorolog-3、DeltaHub)を用い、半導体パルスレーザー光源(堀場製作所製、デルタダイオードDD-485L、励起波長478nm)、検出波長540nm、測定時間範囲0~100nsの条件で測定した。ろ紙を用いてプロンプト測定を行い、解析ソフト(DAS6)を用いて3成分フィッティングを行いτ3の寿命を求めた。
【0106】
<光吸収層の膜厚、被覆率>
光吸収層の膜厚、被覆率は、正孔輸送剤を塗布する前の試料において、電界放射型高分解能走査電子顕微鏡(FE-SEM、株式会社日立製作所製、S-4800)を用いて光吸収層の断面、表面のSEM写真から求めた。被覆率は、表面SEM写真(拡大倍率20000倍)を画像解析ソフト(Winroof)を用い、ペンツールで光吸収層を指定し、全面積に対する光吸収層の面積比(面積率)から算出した。
【0107】
<ペロブスカイト化合物の結晶子径>
光吸収層のペロブスカイト化合物の結晶子径は、正孔輸送剤を塗布する前の試料において、粉末X線回折装置(株式会社リガク製、MiniFlex600、光源CuKα、管電圧40kV、管電流15mA)を用い、サンプリング幅0.02°、走査速度10°/min、ソーラースリット(入射)5.0°、発散スリット1.250°、縦発散13.0mm、散乱スリット13.0mm、ソーラースリット(反射)5.0°、受光スリット13.0mmの条件で5~60°の範囲を測定した。ペロブスカイト化合物の結晶子径は、解析ソフト(PDXL、ver.2.6.1.2)を用いてペロブスカイト化合物の最強ピーク(2θ=14°)において算出した。
【0108】
<量子ドットの粒径、円形度>
量子ドットの粒径は、透過型電子顕微鏡観察(TEM、日本電子株式会社製、JEM-2100)により求めた。量子ドットの円形度は、球面収差補正走査透過型電子顕微鏡(Cs-STEM、日立製作所製、HD-2700)を用いて撮影した量子ドットのZコントラスト像(拡大倍率4000000倍)から画像解析ソフト(Winroof)を用いて算出した。円形度は、下記式により算出し、Zコントラスト像内の全粒子(10粒子以上)の平均値として得た。
円形度=4πS/L2
S:投影面積
L:外周の長さ
【0109】
<量子ドットの組成>
量子ドット中のPb、Zn濃度は、量子ドットを硝酸/過酸化水素混合溶液に完全溶解後、高周波誘導結合プラズマ発光分光(ICP)分析により定量した。量子ドットを単一粒径の球と仮定し、PbS及びZnSの密度をそれぞれ7.5g/cm3及び4.1g/cm3とし、ZnSの1層を0.31nmとして、PbSコア粒径、ZnSシェル厚み、及びZnSシェル層数を求めた。
量子ドットのオレイン酸濃度は、重トルエン(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製、99atom%D、TMS0.03vol%含有)溶媒中、ジブロモメタン(和光純薬株式会社製)を内部標準物質として用い、プロトン(1H)核磁気共鳴(NMR)法により定量した。NMR装置(アジレント社製、VNMRS400)を用い、共鳴周波数400HHz、遅延時間60秒、積算32回の条件で測定した。ジブロモメタン(3.9ppm vs.TMS)の積分値に対するオレイン酸のビニルプロトン(5.5ppm vs.TMS)の積分値の比から量子ドット中のオレイン酸濃度を求めた。
【0110】
<量子ドット>
量子ドット(NNCrystal社製)の組成、物性を表1に示す。
【0111】
<実施例1>
次の(1)~(7)の工程を順に行い、セルを作製した。
(1)FTO基板のエッチング、洗浄
25mm角のフッ素ドープ酸化スズ(FTO)付ガラス基板(旭硝子ファブリテック株式会社製、25×25×1.8mm、以下、FTO基板という)の一部をZn粉末と2mol/L塩酸水溶液でエッチングした。1質量%中性洗剤、アセトン、2-プロパノール(IPA)、イオン交換水で、この順に各10分間超音波洗浄を行った。
【0112】
(2)オゾン洗浄
緻密TiO2層形成工程の直前にFTO基板のオゾン洗浄を行った。FTO面を上にして、基板をオゾン発生装置(メイワフォーシス株式会社製オゾンクリーナー、PC-450UV)に入れ、30分間UV照射した。
【0113】
(3)緻密TiO2層(ブロッキング層)の形成
エタノール(脱水、和光純薬工業株式会社製)123.24gにビス(2,4-ペンタンジオナト)ビス(2-プロパノラト)チタニウム(IV)(75%IPA溶液、東京化成工業株式会社製)4.04gを溶解させ、スプレー溶液を調製した。ホットプレート(450℃)上のFTO基板に約30cmの高さから0.3MPaでスプレーした。20cm×8列を2回繰り返して約7gスプレー後、450℃で3分間乾燥した。この操作を更に2回行うことにより合計約21gの溶液をスプレーした。その後、このFTO基板を、塩化チタン(和光純薬工業株式会社製)水溶液(50mM)に浸漬し、70℃で30分加熱した。水洗、乾燥後、500℃で20分焼成(昇温15分)することにより、緻密TiO2(cTiO2)層を形成した。
【0114】
(4)メソポーラスTiO2層(多孔質層)の形成
アナターゼ型TiO2ペースト(PST-18NR、日揮触媒化成株式会社製)0.404gにエタノール(脱水、和光純薬工業株式会社製)1.41gを加え、1時間超音波分散を行い、TiO2コート液を調製した。ドライルーム内において、上記のcTiO2層上にスピンコーター(ミカサ株式会社製、MS-100)を用いてTiO2コート液をスピンコートした(5000rpm×30sec)。125℃のホットプレート上で30分間乾燥後、500℃で30分焼成(昇温時間60分)することにより、メソポーラスTiO2(mTiO2)層を形成した。
【0115】
(5)光吸収層の形成
光吸収層および正孔輸送層の形成は、グローブボックス内にて行った。臭化鉛(PbBr2、ペロブスカイト前駆体用、東京化成工業株式会社製)0.228g、メチルアミン臭化水素酸塩(CH3NH3Br、東京化成工業株式会社製)0.070g、DMF(脱水、和光純薬工業株式会社製)2mLを混合、室温撹拌し、0.31mol/Lペロブスカイト(CH3NH3PbBr3)原料のDMF溶液(無色透明)を調製した。ZnSシェルが1.3層被覆したPbS量子ドットの乾燥固体0.003gと前記ペロブスカイト原料のDMF溶液を室温30分間撹拌分散後、孔径0.45μmのPTFEフィルターでろ過することにより、量子ドットとペロブスカイト原料との混合分散液(コート液)を得た。なお、このコート液のDMF溶媒希釈分散液の1000nmの吸光度から、コート液中のPbS濃度を算出し、PbS、ZnSとペロブスカイトの合計含有量に対するPbSの質量比0.12%を算出した。
上記のmTiO2層上にスピンコーター(ミカサ株式会社製、MS-100)を用いて前記コート液をスピンコートした(500rpm×5sec、スロープ5sec、1000rpm×40sec、スロープ5sec、3000rpm×50sec)。なお、スピン開始20秒後に貧溶媒であるトルエン(脱水、和光純薬工業株式会社製)1mLをスピン中心部に一気に滴下した。スピンコート後すぐに100℃ホットプレート上で10分間乾燥させ、光吸収層を形成した。ペロブスカイト化合物が生成していることはX線回折パターン、吸収スペクトル及び電子顕微鏡観察により確認した。
【0116】
(6)正孔輸送層の形成
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI、和光純薬工業株式会社製)9.1mg、[トリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)](Co(4-tButylpyridyl-2-1H-pyrazole)3.3TFSI、和光純薬工業株式会社製)8.7mg、2,2’,7,7’-テトラキス[N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミノ]-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-OMeTAD、和光純薬工業株式会社製)72.3mg、クロロベンゼン(ナカライテスク株式会社製)1mL、tert-ブチルピリジン(TBP、シグマアルドリッチ製)28.8μLを混合し、室温撹拌して正孔輸送剤(HTM)溶液(黒紫色透明)を調製した。使用直前に、HTM溶液を孔径0.45μmのPTFEフィルターでろ過した。上記の光吸収層上にスピンコーター(ミカサ株式会社、MS-100)を用いてHTM溶液をスピンコートした(4000rpm×30sec)。スピンコート後すぐに70℃ホットプレート上で30分間乾燥した。乾燥後、γ-ブチロラクトン(和光純薬工業株式会社製)を浸み込ませた綿棒でFTOとのコンタクト部分および基板裏面全体を拭き取り、更に70℃のホットプレート上で数分間乾燥させ、正孔輸送層を形成した。
【0117】
(7)金電極の蒸着
真空蒸着装置(アルバック機工株式会社製、VTR-060M/ERH)を用い、真空下(4~5×10-3Pa)、上記の正孔輸送層上に金を100nm蒸着(蒸着速度8~9Å/sec)して、金電極を形成した。
【0118】
<実施例2>
実施例1の(5)光吸収層の形成において、ZnSシェルが1.3層被覆したPbS量子ドットの代わりにZnSシェルが0.3層被覆したPbS量子ドットを使用した以外は、実施例1と同様にして光吸収層を形成し、セルを作製した。
【0119】
<比較例1>
実施例1の(5)光吸収層の形成において、ZnSシェルが1.3層被覆したPbS量子ドットの代わりにPbS量子ドットを使用した以外は、実施例1と同様にして光吸収層を形成し、セルを作製した。
【0120】
【0121】
表1から、ZnSシェルで表面被覆したPbS量子ドットを複合した実施例1、2の光吸収層は、PbS量子ドットを複合した比較例1の光吸収層に比べて、発光寿命が長く、ペロブスカイトの光吸収由来の発電効率(500nmの外部量子収率)が高く、光電変換効率に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の光吸収層及び光電変換素子は、次世代太陽電池の構成部材として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0123】
1:光電変換素子
2:透明基板
3:透明導電層
4:ブロッキング層
5:多孔質層
6:光吸収層
7:正孔輸送層
8:電極(正極)
9:電極(負極)
10:光