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  • 特許-拡散接合の方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】拡散接合の方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20230908BHJP
   B23K 20/24 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
B23K20/00 310M
B23K20/24
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020563543
(86)(22)【出願日】2019-05-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 GB2019051279
(87)【国際公開番号】W WO2019215449
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】1807572.1
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501187664
【氏名又は名称】ティーダブリューアイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガンナー、アレック ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】ラドフォード、ニコラス フィリップ
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-126552(JP,A)
【文献】特開昭59-178188(JP,A)
【文献】米国特許第04948457(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0258537(US,A1)
【文献】特開2012-161818(JP,A)
【文献】国際公開第2010/137651(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00 - 20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属または金属合金含有ワークピースを拡散接合する方法であって、該方法は、
(a)前記金属または金属合金含有ワークピースの接合面をコーティング材料の層でコーティングするステップと、
(b)ステップ(a)で形成されたコーティングされた接合面を研磨して表面酸化物を除去するステップであって、前記コーティング材料は液体形態である、ステップと、
(c)ステップ(b)で研磨された前記コーティングされた接合面から、過剰なコーティング材料または過剰な研磨した金属または金属合金含有ワークピース材料を除去するステップと、
(d)ステップ(c)の前記金属または金属合金含有ワークピースの前記コーティングされた接合面を拡散接合するステップとを含み、
前記コーティング材料は、周囲条件下で前記金属または金属合金含有ワークピースの前記接合面上に安定したバリアを形成するように動作可能であり、拡散接合条件下で前記金属または金属合金含有ワークピースの前記接合面から蒸発する、方法。
【請求項2】
前記コーティング材料は、テルピネオールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティング材料は、少なくとも75体積%のテルピネオールを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティング材料は、少なくとも90体積%のテルピネオールを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティング材料は、テルピネオールである、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属または金属合金含有ワークピースの前記接合面上の前記コーティング材料は、ステップ(a)、(b)および(c)の間、液体形態である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記接合面のすべての表面積が、前記コーティング材料の層でコーティングされている、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティング材料は、1~100mPa・sの粘度を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティング材料は、30~500mPa・sの粘度を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記金属または金属合金含有ワークピースの金属または金属合金は、アルミニウム、チタン、ベリリウム、ジルコニウム、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、リチウム、マグネシウム、およびそれらの合金から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記金属または金属合金含有ワークピースの前記金属または金属合金は、アルミニウムまたはその合金である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)における前記コーティングされた接合面の研磨は、半自動化された技術を使用して実行される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(d)は、先行する方法ステップの1~2時間以内に実施される、請求項1~12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(d)は、先行する方法工程の直後に実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、前記金属または金属合金含有ワークピースの前記接合面が、ステップ(a)の前に、脱脂、洗浄または研磨の追加の方法ステップをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(c)の後、かつステップ(d)の前に、前記方法は、前記コーティングされた接合面を前記コーティング材料の他の層でコーティングする追加の方法ステップをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記コーティング材料の前記他の層の塗布から形成された過剰なコーティング材料は、ステップ(d)の前に除去される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属または金属合金含有ワークピースを拡散接合する方法に関し、特にアルミニウムおよびその合金などの強固な表面酸化物層を形成する金属または金属合金を含む金属または金属合金含有ワークピースを拡散接合する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
拡散接合は、金属または金属合金含有ワークピースと共に使用するための当該技術分野で知られている固体接合技術である。それは、加えられた圧力(負荷)と高温の組み合わせを利用して、界面を横切る原子の拡散を加速し、ワークピースを共に接合する。拡散接合に関連する利点には、類似材料と非類似材料の両方のワークピースを接合できること、接合自体の優れた機械的および物理的特性の提供、特に熱交換器などの精密ワークピースを接合する場合に、それが示す高い寸法公差、および複雑な形状のワークピースを接合できることが含まれる。拡散接合はまた、清浄度および融着欠陥の欠如など、固体接合プロセスに一般的に関連する利点も示す。
【0003】
アルミニウムまたはその合金を含むものなどの金属または金属合金含有ワークピースの表面は、酸素にさらされると、すなわち空気にさらされると、酸化して、強固な表面酸化物層を急速に形成する傾向がある。例えば、酸素にさらされると、アルミニウム含有ワークピースの表面は、その表面に主にアルミナ(酸化アルミニウム(III))で構成される安定した付着膜を急速に形成する。このような強固な表面酸化物層は、拡散接合などの従来の融着および固体接合技術を使用してワークピースを接合することを困難にしてきた。したがって、強固な表面酸化物層を形成する金属または金属合金含有ワークピースに対して、固体接合の方法、すなわち拡散接合の方法を提供することが望まれる。
【0004】
特許文献1は、表面酸化物層の除去と、それに続く拡散接合の前の表面酸化物層の再形成を防止するための保護金属層の堆積とからなる表面処理プロセスを開示している。この保護金属層の追加は高価であり、金属間化合物または他の望ましくない化合物の形成につながる可能性がある。
【0005】
特許文献2は、酸化物洗浄法および後で接合前に除去されるその後の保護ポリマーコーティングの堆積を使用するアルミニウム合金の拡散接合のための方法を記載している。この技術には、洗浄プロセスが非常に厳しく、使用されるポリマーシーラントが環境に有害であることが多いという問題が存在する。さらに、ポリマーシーラントはまた、拡散接合中に炉内で熱分解を受ける可能性があり、有害な残留物を残す可能性がある。
【0006】
拡散接合の方法はまた、特許文献3に開示されており、この方法は、部品を圧縮および加熱して拡散接合を形成する前に、グリットブラストステップとそれに続く化学酸化物除去ステップを利用する。しかしながら、グリットブラストは、接合界面で粒子の粗大化を引き起こす可能性があり、これにより、接合強度が低下し、接合自体にトラップされたグリットが含まれる可能性がある。
【0007】
非特許文献1は、拡散接合の前にワークピースの表面を調製する方法であって、表面は、機械的に研磨され、次に電解研磨され、ポリマー成分を含む有機溶液に浸されている間にステンレス鋼ウールでブラッシングされ、最後に有機溶液の新しい層でコーティングされる方法を説明している。有害な残留物を残す可能性がある有機溶液中にポリマー成分が含まれることに加えて、必要な電解研磨ステップが大規模な使用には望ましくないという問題がこのような技術に存在する。
【0008】
他の既知の固体接合方法には、様々な金属中間層および過渡液相技術を使用すること、ワークピースにイオンを衝突させて酸化物層を除去すること、およびワークピースの予圧または相対運動を利用して自己研磨することが含まれる。しかしながら、これらの方法には、技術が高価であり、精密部品には不適切であることが多く、不要な接合破片や最適な接合強度未満をもたらす可能性があるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許第2,380,491号明細書
【文献】米国特許第3,937,387号明細書
【文献】米国特許第4,948,457号明細書
【非特許文献】
【0010】
【文献】Huang et al.:「Diffusion bonding of hot roller 7075 aluminium alloy(ホットローラー7075アルミニウム合金の拡散接合)」、Materials Science and Technology、1998、14:5、405-410
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の態様の目的は、上記のまたは他の問題に対する解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、金属または金属合金含有ワークピースを拡散接合する方法であって、方法は、
(a)金属または金属合金含有ワークピースの接合面をコーティング材料の層でコーティングするステップと、
(b)コーティングされた接合面を研磨して表面酸化物を除去するステップであって、コーティング材料は液体形態である、ステップと、
(c)コーティングされた接合面から、余分なコーティング材料または余分な研磨した金属または金属合金含有ワークピース材料を除去するステップと、
(d)金属または金属合金含有ワークピースのコーティングされた接合面を拡散接合するステップとを含み、
コーティング材料は、周囲条件下で金属または金属合金含有ワークピースの接合面上に安定したバリアを形成するように動作可能であり、拡散接合条件下で金属または金属合金含有ワークピースの接合面から蒸発する、方法が提供される。
【0013】
本発明の第1の態様に係る方法は、酸素への曝露時に強固な表面酸化物層を形成する金属または金属合金含有ワークピースの拡散接合を促進することが驚くべきことにそして有利に見出された。さらに、本発明は、環境に安全な化学物質の使用を可能にし、洗浄後、拡散接合前に、迅速な組み立てまたは負荷(圧力)の印加を必要とせず、ショットブラストや浴浸漬などの極端な粗面化ステップを必要とせず、ポリマーコーティングまたは金属中間層は利用しない。
【0014】
本明細書で使用される場合、「拡散接合」という用語は、類似または非類似材料のいずれかの金属または金属合金含有ワークピースが、高温で加えられた力を使用して、金属または金属合金含有ワークピースのそれぞれの接合面間の拡散接合の形成によって共に接合される固体接合技術を意味する。拡散接合は、真空または不活性雰囲気で行うことができる。
【0015】
本明細書で使用される場合、「拡散接合条件」という用語は、金属または金属合金含有ワークピースが、拡散接合のために閉鎖炉内にあるときにさらされる条件を意味する。これらの条件には、温度(熱)サイクル仕様(ランプアップおよびランプダウンレートなど)を含む炉内の温度、炉内で費やされた時間、および炉内にいる間に金属または金属合金含有ワークピースに加えられた負荷(圧力)が含まれる。
【0016】
本発明に係る拡散接合プロセスでは、共に接合される金属または金属合金含有ワークピースは、それらの接合面が整列し、好ましくは直接接触するように、炉に装填される前に組み立てられる。次に、金属または金属合金を含むワークピースは、炉を含む拡散接合ユニットに導入され、すなわち、炉に装填し、金属または金属合金を含むワークピースが炉の雰囲気にさらされ拡散接合が起きるように、炉が周囲環境に対して閉じられる。密閉炉において、金属または金属合金含有ワークピースは、適切な熱サイクルの間に金属または金属合金含有ワークピースに適切な拡散接合温度に達するように、拡散接合を受ける金属または金属含有ワークピースに適切な拡散接合条件にさらされる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「接合面」という用語は、拡散接合プロセス中に別の金属または金属合金含有ワークピースの対応する接合面に接合されることを意図された、金属または金属合金含有ワークピースの側の金属または金属合金含有ワークピースの表面を意味する。当該技術分野では、これらはしばしば「接合面(faying surfaces)」と呼ばれる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「周囲条件」という用語は、本発明の第1の態様のプロセスが実行されるワークショップ環境などの周囲環境の通常の範囲の条件、すなわち拡散接合のために炉に挿入する前に、金属または金属合金含有ワークピースがさらされる温度、圧力、および大気条件の範囲を意味する。通常、これらの条件には、10~35℃の温度、20~110kPaの圧力が含まれ、環境は通常、空気と呼ばれることが多い酸素含有雰囲気である。
【0019】
本明細書で使用される場合、「表面酸化物」という用語は、接合面上を含む、金属または金属合金含有ワークピースの表面上に形成された金属または金属合金の酸化物を意味する。表面酸化物は、金属または金属合金含有ワークピースの表面の表面積のすべてまたは実質的にすべてを覆っている可能性が高い。この表面酸化物は、金属または金属合金含有ワークピースの表面を酸素に曝したとき、つまり空気に曝したときに形成される。「表面酸化物」という用語は、本明細書では「強固な表面酸化物」および「強固な表面酸化物層」という用語と交換可能に使用される。
【0020】
本明細書で使用される場合、「安定バリア」という用語は、金属または金属合金含有ワークピースの接合面にコーティングされた場合、コーティング材料が無傷の層を形成し、適用、保管、および炉への装填条件の間、無傷のままであり、炉への装填前条件下での酸素拡散に対するバリアを形成し、金属または金属合金含有ワークピースの接合面を濡らし、それが付けられる金属または金属合金含有ワークピースの接合面と反応せず、炉を閉じる前に実質的に蒸発せず、沸点が熱分解する温度よりも低く、拡散接合の開始前に蒸発によって表面から完全に除去されるように、金属または金属合金含有ワークピースの拡散接合温度よりも実質的に低い炉雰囲気下での沸点を有し、金属または金属合金含有ワークピースの接合面の研磨中の酸素拡散に対するバリアを維持することを意味する。研磨中の酸素拡散に対するバリアは、コーティング材料の自己修復によって維持される。本明細書で使用される場合、「自己修復」という用語は、コーティング材料が液体形態のままであり、接合面が研磨されている間、すなわち接合面の研磨中に、金属または金属合金含有ワークピースの接合面(接合面のすでに研磨された部分と、接合面の依然として研磨されている部分の両方)を完全に覆い、コーティング材料の液体形態の層を維持することによって研磨されている表面酸化物が研磨した表面上に再形成されるのを防ぐことができることを意味する。コーティング材料のこの「自己修復」特性は、コーティング材料の粘性と表面の濡れ性によるものである。
【0021】
コーティング材料は、任意の適切な有機材料を含み得る。好ましくは、コーティング材料は、モノテルペンアルコール、テルピネオール(アルファ-テルピネオールまたはテルペンアルコールとしても知られている)を含む。有利には、テルピネオールの使用は、本発明の第1の態様のコーティング材料にポリマーと溶媒の複雑な混合物を使用する必要がないことを意味する。あるいはまた、コーティング材料はパラフィンワックスを含み得る。
【0022】
テルピネオールは、コーティング材料中に任意の適切な量で存在し得る。好ましくは、コーティング材料は、少なくとも75体積%のテルピネオール、より好ましくは少なくとも90体積%のテルピネオールを含み、最も好ましくは、コーティング材料(コーティング材料の100体積%)はテルピネオールである。ほとんどの市販のテルピネオールは、本発明の態様におけるコーティング材料の効力に影響を及ぼさない不純物を含み得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0023】
好ましくは、コーティング材料は、溶解したポリマーおよび/または重合可能な官能基を有する化合物を含まない。
【0024】
本発明の第1の態様に係るコーティング材料は、ステップ(b)でのコーティングされた接合面の研磨中は、研磨中の酸素拡散に対するバリアがコーティング材料の自己修復によって維持されるように液体形態である。コーティング材料は、液体または固体のいずれかの形態の金属または金属合金含有ワークピースの接合面に塗布することができ、金属または金属合金含有ワークピースの接合面にコーティングされたときに、コーティング材料は、周囲条件下で液体または固体の形態であり得ることが当業者によって理解されるであろう。本明細書で使用される場合、「液体」または「液体形態」という用語は、当業者にはよく理解されている。しかしながら、本発明の第1の態様によれば、コーティング材料は、ステップ(b)の間、液体形態でなければならない。好ましくは、コーティング材料は、ステップ(a)、(b)、および(c)の間、液体形態である。コーティング材料を液体の形態で維持することができる方法については、当業者にはよく理解されているであろう。
【0025】
コーティング材料は、任意の適切な方法によって、金属または金属合金含有ワークピースの接合面に塗布することができる。前記コーティング材料を塗布する方法は、当業者によく知られているであろう。適切な塗布方法には、浸漬、噴霧、ブラッシング、スクリーン印刷、フローコーティング、およびこすりが含まれるが、これらに限定されない。パラフィンワックスを含むコーティング材料は、液体または固体のいずれかの形態で接合面に塗布され得ることが当業者には理解されるであろう。固体形態で塗布される場合、ステップ(b)の研磨中にコーティング材料が液体形態であるために、パラフィンワックスを溶融させることができる。次に、拡散接合の前にコーティング材料の溶融温度未満に冷却された場合、コーティング材料は再固化する可能性がある。金属または金属合金含有ワークピースの接合面の表面積のすべて、実質的にすべてまたは一部は、コーティング材料によってコーティングされ得る。好ましくは、金属または金属合金含有ワークピースの接合面の表面積のすべては、コーティング材料の層でコーティングされる。
【0026】
コーティング材料は、任意の適切な厚さまで接合面に塗布することができる。好ましくは、コーティング材料は、周囲条件下での表面酸化および酸素拡散を防ぐために、約50マイクロメートル~500マイクロメートルの厚さで金属または金属合金含有ワークピースの接合面に塗布される。
【0027】
コーティング材料は、任意の適切な粘度を有することができる。好ましくは、コーティング材料は、最大5000mPa・s(5000センチポアズ)、より好ましくは1~1000mPa・s(1~1000センチポアズ)、最も好ましくは30~500mPa・s(30~500センチポアズ)の粘度を有する。
【0028】
好ましくは、コーティングが液体であり、金属または金属合金含有ワークピースの接合面上にコーティングされる場合、コーティング材料は、以下を含む金属または金属合金含有ワークピースの接合面との弧の90°未満の接触角を有する。
【0029】
好ましくは、コーティング材料は、2.66645kPa(20Torr)を超える蒸気圧を有する。
【0030】
本発明の第1の態様に係る拡散接合の方法は、金属または金属合金含有ワークピースの接合が、接合されたワークピースを形成することを可能にし、接合されたワークピースの金属または金属合金含有ワークピースは、それらのそれぞれの接合面の各々の間で拡散接合によって接合されることを当業者は理解するであろう。接合される金属または金属合金含有ワークピースは、同じまたは異なるワークピース材料のいずれかであり得る。2つ以上の金属または金属合金含有ワークピースが共に接合され得ることが当業者によって理解されるであろう。さらに、複数の金属または金属合金含有ワークピースを接合することができ、拡散接合中に互いの上に積み重ねられ、また重なり合う構成で組み立てられ得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0031】
本発明では、任意の適切な含有する金属または金属合金を使用することができる。本明細書で使用される場合、「ワークピース材料」という用語は、「ワークピース」という用語と交換可能に使用されることを意図している。金属または金属合金含有ワークピースは、金属または金属合金と、有機化合物、例えば炭化ケイ素などの別の材料とを含むものなどの金属マトリックス複合材料とすることができる。好ましくは、金属または金属合金含有ワークピースの金属または金属合金は、アルミニウム、チタン、ベリリウム、ジルコニウム、鉄(例えば、ステンレス鋼)、ニッケル、クロム、コバルト、リチウム、マグネシウム、およびそれらの合金から選択される。より好ましくは、金属または金属合金含有ワークピースの金属または金属合金は、アルミニウム、チタン、およびそれらの合金から選択される。金属または金属合金含有ワークピースはまた、アルミニウムまたはチタンを含むニッケルベースの超合金であってもよい。最も好ましくは、金属または金属合金含有ワークピースの金属または金属合金は、アルミニウムまたはその合金、例えば、2000シリーズ、7000シリーズ、および6000シリーズの合金(例えば、6061)である。好ましくは、共に接合される金属または金属合金含有ワークピースは、同じ材料のものである。
【0032】
接合される金属または金属合金含有ワークピースの接合面は、湾曲した形状およびより複雑な形状などの幾何学的形状を含む、任意の適切な幾何学的形状を有し得る。好ましくは、共に接合される金属または金属合金含有ワークピースの接合面は、同じ幾何学的形状を有する。好ましくは、金属または金属合金含有ワークピースの接合面は平坦である。
【0033】
ステップ(b)での金属または金属合金含有ワークピースのコーティングされた接合面の研磨は、任意の適切な技術を使用して実行することができる。そのような技術は当業者によく知られており、手動、半自動、および全自動の研磨技術が含まれる。研磨の適切な方法の1つは、炭化ケイ素またはシリカなどの研磨紙を使用することである。通常、そのような紙の研磨グレードは、ISO 6344規格に従って20~2400グリットの範囲にある。好ましくは、研磨技術は、ランダムオービタルサンダーなどの適切なツールを使用する半自動化技術である。研磨機を使用した完全自動化も可能である。
【0034】
金属または金属合金含有ワークピースの接合面に形成された表面酸化物を除去するために、この表面酸化物を除去せずに拡散接合は厳しく抑制され、強い拡散接合が形成される可能性は低いので、研磨ステップ(b)が必要であることが当業者によって理解されるであろう。表面研磨技術は、コーティングされた接合面のすべての表面積が研磨されるように、適切な方法で十分な時間施され得ることがさらに当業者によって理解されるであろう。しかしながら、金属または金属合金含有ワークピースの接合面のエッジの優先的な研磨は最小限に抑える必要がある。必要に応じて、真空テーブルを使用して、金属または金属合金含有ワークピースを固定して、より簡単かつ迅速な調製を行うことができる。
【0035】
研磨工程(b)の結果として形成された過剰なコーティング材料または過剰な研磨された金属または金属合金含有ワークピース材料は、任意の適切な方法によって工程(c)で除去することができる。ステップ(c)に関連して使用される「過剰なコーティング材料」および「過剰な研磨された金属または金属合金含有ワークピース材料」という用語は、ステップ(b)で研磨され、もはや金属または金属合金含有ワークピースの接合面に付着していないコーティングまたは金属または金属合金含有ワークピースの材料を指すことが当業者によって理解されるであろう。好ましくは、過剰なコーティング材料または過剰な研磨された金属または金属合金含有ワークピース材料は、接合面を軽く通過するゴムエッジのワイパーなどの適切なツールを使用してコーティングされた接合面から除去される。
【0036】
ステップ(d)の拡散接合は、先行する方法ステップの直後または最大24時間後に実施することができる。好ましくは、ステップ(d)の拡散接合は、先行する方法ステップの1~2時間以内に、より好ましくは、先行する方法ステップの直後に実行される。
【0037】
好ましくは、接合される金属または金属合金含有ワークピースは、実質的に無酸素の接合領域を提供するように、直接接触するコーティングされた接合面との拡散接合のために組み立てられる。
【0038】
拡散接合プロセスにおける拡散接合条件は、使用される金属または金属合金含有ワークピース材料に依存することが当業者によって理解されるであろう。通常、拡散接合条件では、適切な拡散を達成するのに十分な時間の間、金属または金属合金含有ワークピース材料の溶融温度の60~80%の温度、接合される表面の密接な接触を提供するのに適した圧力(通常、1~50MPa)を使用する。例えば、アルミニウム合金6061含有ワークピースを共に接合する場合、拡散接合条件は、炉内で15分~4時間の間、450~550℃の範囲であり、0.5~5MPaの負荷(圧力)を掛ける。
【0039】
任意選択で、ステップ(a)の前に、金属または金属合金含有ワークピースの接合面を脱脂、洗浄、または研磨して汚染物質を除去することができる。これは、アセトンなどの溶剤、または実験室の脱脂剤および界面活性剤で接合面を拭くか、または超音波洗浄することによって実現できる。
【0040】
任意選択で、金属または金属合金含有ワークピースのコーティングされた接合面は、ステップ(c)の後、かつステップ(d)の前に、コーティング材料の他の層でコーティングすることができる。好ましくは、コーティングされた接合面のすべての表面積は、他の層でコーティングされる。コーティング材料の他の層が塗布される場合、その後、ステップ(d)および拡散接合のための金属または金属合金含有ワークピースの組み立ての前に、ブレードまたは他のツールで過剰なコーティング材料を除去することが好ましい。
【0041】
本発明の第2の態様によれば、
金属または金属合金含有ワークピースを拡散接合する方法であって、方法は、
(a)金属または金属合金含有ワークピースの接合面をコーティング材料の層でコーティングするステップと、
(b)コーティングされた接合面を研磨して表面酸化物を除去するステップであって、コーティング材料は液体形態であるステップと、
(c)コーティングされた接合面から、余分なコーティング材料または余分な研磨した金属または金属合金含有ワークピース材料を除去するステップと、
(d)金属または金属合金含有ワークピースのコーティングされた接合面を拡散接合するステップとを含み、
コーティング材料は、周囲条件下で金属または金属合金含有ワークピースの接合面上に安定したバリアを形成するように動作可能であり、拡散接合条件下で金属または金属合金含有ワークピースの接合面から蒸発する、方法によって接合された金属または金属合金含有ワークピースを含む接合されたワークピースが提供される。
【0042】
本明細書に含まれるすべての構成は、上記の態様のいずれか1つと任意の組み合わせで組み合わせることができる。
【0043】
本発明をよりよく理解するために、および本発明の実施形態がどのように実施され得るかを示すために、ここで、例として、以下の添付の図を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の第1の態様の一実施形態に係る方法ステップのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1において、金属または金属合金含有ワークピースの金属または金属合金は、6061アルミニウム合金である。
【0046】
ステップ1は、金属または金属合金含有ワークピースの接合面を、適切な洗剤溶液を使用して洗浄、脱脂、および/または研磨し、続いて糸くずの出ない布を使用してアセトンなどの溶媒で拭く任意選択の方法ステップである。
【0047】
乾燥すると、金属または金属合金含有ワークピースの接合面は、ステップ2に示されるように、コーティング材料の層でコーティングされる。
【0048】
ステップ3は、コーティングされた接合面の表面研磨の概要を示す。これは、コーティングされた接合面のすべての表面積が研磨されるように十分な期間施されるが、接合面のエッジの優先的な研磨は最小限に抑えられる。
【0049】
金属または金属合金含有ワークピースの接合面が研磨されたら、ステップ4において、過剰なコーティング材料または過剰な研磨された金属または金属合金含有ワークピースを、金属または金属合金含有ワークピースの接合面を軽く通過するゴムエッジのワイパーなどの適切な工具を使用して除去する。
【0050】
ステップ5および6は、コーティング材料の他の層を接合面に塗布し、次いで、拡散接合のために、金属または金属合金含有ワークピースを組み立てる前に、ブレードまたは他のツールで過剰なコーティング材料を除去することができる任意選択の方法ステップである。
【0051】
ステップ7において、金属または金属合金含有ワークピースは、金属または金属合金含有ワークピースの接合面が互いに直接接触するように組み立てられる。
【0052】
ステップ8を参照すると、金属または金属合金含有ワークピースが組み立てられると、拡散接合が実行される。金属または金属合金含有基板は、炉内で450~550℃の拡散接合条件に15分~4時間さらされ、0.5~5MPaの負荷(圧力)が加えられて接合ワークピースを形成する。
図1