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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】脚揚降用EHAシステム
(51)【国際特許分類】
   B64C 25/22 20060101AFI20230908BHJP
   F15B 11/028 20060101ALI20230908BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20230908BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
B64C25/22
F15B11/028 G
F15B11/00 G
F15B11/02 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021504073
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2020008625
(87)【国際公開番号】W WO2020179725
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2019039959
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 孝明
(72)【発明者】
【氏名】萩原 正悟
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/011975(WO,A1)
【文献】特開2018-094969(JP,A)
【文献】特開2014-132189(JP,A)
【文献】特開2016-150632(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0233064(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 25/22
F15B 11/028
F15B 11/00
F15B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の脚に取り付けられかつ、前記脚を揚降する油圧アクチュエータと、
前記脚の揚降時に前記油圧アクチュエータに作動油を供給する、少なくとも一の電動油圧ポンプと、
前記油圧アクチュエータと前記電動油圧ポンプとをつなぐ油圧路と、
前記油圧アクチュエータ又は前記油圧路に取り付けられかつ、油圧に対応する計測信号を出力する圧力センサと、
前記計測信号を受けかつ、前記油圧に基づく制御信号を前記電動油圧ポンプに出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記脚を揚げている最中に、前記油圧が設定圧力を超えた状態が、設定時間継続した場合に、運転中の前記電動油圧ポンプを停止させかつ、前記電動油圧ポンプを停止した後、前記油圧が第2設定圧力以下に低下した以降に、前記電動油圧ポンプの運転を再開させる脚揚降用EHAシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の脚揚降用EHAシステムにおいて、
前記制御部は、前記電動油圧ポンプの回転数が設定回転数以下でかつ、前記油圧が設定圧力を超えた状態が、設定時間継続した場合に、運転中の前記電動油圧ポンプを停止させる脚揚降用EHAシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の脚揚降用EHAシステムにおいて、
前記油圧路に設けられかつ、前記電動油圧ポンプへの前記作動油の逆流を止める逆止弁を備えている脚揚降用EHAシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の脚揚降用EHAシステムにおいて、
前記圧力センサは、前記油圧アクチュエータに、又は、前記油圧アクチュエータと前記逆止弁との間に、配設され、
前記制御部は、前記電動油圧ポンプの停止中に、前記計測信号に基づいて前記油圧が前記第2設定圧力以下に低下したことを判断する脚揚降用EHAシステム。
【請求項5】
請求項3に記載の脚揚降用EHAシステムにおいて、
前記圧力センサは、前記逆止弁と前記電動油圧ポンプとの間に配設され、
前記制御部は、前記電動油圧ポンプの停止中に、前記電動油圧ポンプを一時的に運転すると共に、前記電動油圧ポンプを一時的に運転した時の前記計測信号に基づいて前記油圧が前記第2設定圧力以下に低下したことを判断する脚揚降用EHAシステム。
【請求項6】
請求項5に記載の脚揚降用EHAシステムにおいて、
前記制御部は、一時的な電動油圧ポンプの運転を、前記油圧が前記第2設定圧力以下に低下するまで、間欠的に繰り返す脚揚降用EHAシステム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の脚揚降用EHAシステムにおいて、
前記電動油圧ポンプは、第1電動油圧ポンプと第2電動油圧ポンプとを含み、
前記油圧路は、前記第1電動油圧ポンプ及び前記第2電動油圧ポンプを、前記油圧アクチュエータに対して並列に接続し、
前記油圧路において、前記第1電動油圧ポンプと前記第2電動油圧ポンプとの合流箇所と前記第1電動油圧ポンプとの間には逆止弁が設けられると共に、前記合流箇所と前記第2電動油圧ポンプとの間には第2の逆止弁が設けられ、
前記制御部は、前記脚の揚降時に、前記第1電動油圧ポンプ及び前記第2電動油圧ポンプの両方、又は、いずれか一方を運転する脚揚降用EHAシステム。
【請求項8】
請求項7に記載の脚揚降用EHAシステムにおいて、
前記圧力センサは、前記油圧アクチュエータに、又は、前記油圧アクチュエータと前記合流箇所との間に、配設され、
前記第1電動油圧ポンプと前記逆止弁の間、及び、前記第2電動油圧ポンプと前記第2の逆止弁との間にはそれぞれ、第2の圧力センサが設けられ、
前記制御部は、前記電動油圧ポンプの運転中に、前記第2の圧力センサの計測信号に基づいて前記油圧が前記設定圧力を超えたことを判断しかつ、前記電動油圧ポンプの停止中に、前記圧力センサの計測信号に基づいて前記油圧が前記第2設定圧力以下に低下したことを判断する脚揚降用EHAシステム。
【請求項9】
請求項7に記載の脚揚降用EHAシステムにおいて、
前記圧力センサは、前記第1電動油圧ポンプと前記逆止弁との間、及び、前記第2電動油圧ポンプと前記第2の逆止弁との間のそれぞれに配設され、
前記制御部は、前記電動油圧ポンプの運転中に、前記計測信号に基づいて前記油圧が前記設定圧力を超えたことを判断しかつ、前記電動油圧ポンプの停止中に、前記電動油圧ポンプを一時的に運転すると共に、前記電動油圧ポンプを一時的に運転した時の前記計測信号に基づいて前記油圧が前記第2設定圧力以下に低下したことを判断する脚揚降用EHAシステム。
【請求項10】
請求項9に記載の脚揚降用EHAシステムにおいて、
前記制御部は、一時的な電動油圧ポンプの運転を、前記油圧が前記第2設定圧力以下に低下するまで、間欠的に繰り返し、
前記制御部は、前記第1電動油圧ポンプ及び前記第2電動油圧ポンプを交互に、一時的に運転する脚揚降用EHAシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、航空機の脚の揚降を行う脚揚降用EHA(Electro Hydrostatic Actuator)システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、航空機の脚の揚降を行うEHAシステムが記載されている。EHAシステムは、油圧アクチュエータと電動油圧ポンプとを備えている。電動油圧ポンプは、油圧アクチュエータに作動油を供給する。油圧アクチュエータは、作動油の供給を受けて脚を揚降する。EHAシステムは、従来の航空機に搭載されていた油圧システムを廃止することを可能にする。EHAシステムは、航空機の燃費の向上に有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-132189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、脚を揚げている最中に、例えば脚に作用する空力によって油圧アクチュエータの負荷が高くなる場合がある。従来の航空機に搭載されていた油圧システムであれば、脚揚降用の油圧アクチュエータの負荷が高くなっても、油圧アクチュエータへ継続して油圧を供給することができる。しかしながら、EHAシステムは、油圧アクチュエータの負荷が高い状態で油圧ポンプを運転し続けると、油圧ポンプが焼き付く恐れがある。その一方で、脚揚げは速やかに完了したいという要求がある。
【0005】
ここに開示する技術は、電動油圧ポンプの焼き付きを抑制しながら、脚揚げが速やかに完了する脚揚降用EHAシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示する技術は、脚揚降用EHAシステムに係る。脚揚降用EHAシステムは、航空機の脚に取り付けられかつ、前記脚を揚降する油圧アクチュエータと、前記脚の揚降時に前記油圧アクチュエータに作動油を供給する、少なくとも一の電動油圧ポンプと、前記油圧アクチュエータと前記電動油圧ポンプとをつなぐ油圧路と、前記油圧アクチュエータ又は前記油圧路に取り付けられかつ、油圧に対応する計測信号を出力する圧力センサと、前記計測信号を受けかつ、前記油圧に基づく制御信号を前記電動油圧ポンプに出力する制御部と、を備える。
【0007】
前記制御部は、前記脚を揚げている最中に、前記油圧が設定圧力を超えた状態が、設定時間継続した場合に、運転中の前記電動油圧ポンプを停止させかつ、前記電動油圧ポンプを停止した後、前記油圧が第2設定圧力以下に低下した以降に、前記電動油圧ポンプの運転を再開させる。
【0008】
この構成によると、脚揚げ中に特定の停止条件が成立すると、制御部が電動油圧ポンプを停止させるから、電動油圧ポンプの焼き付きが抑制される。また、特定の再開条件が成立すると、制御部が電動油圧ポンプの運転を再開することによって脚揚げが再開されるから、脚揚げが速やかに完了する。
【0009】
ここで、第2設定圧力は、電動油圧ポンプの停止に係る設定圧力と同じにしてもよい。第2設定圧力は、設定圧力よりも低い圧力に設定してもよい。第2設定圧力が設定圧力よりも低いと、電動油圧ポンプが安定的に運転再開する。
【0010】
前記制御部は、前記電動油圧ポンプの回転数が設定回転数以下でかつ、前記油圧が設定圧力を超えた状態が、設定時間継続した場合に、運転中の前記電動油圧ポンプを停止させる、としてもよい。
【0011】
電動油圧ポンプは、低流量かつ高圧力の状態が継続すると焼き付きやすい。電動油圧ポンプの低流量かつ高圧力の状態が継続した場合に、制御部が電動油圧ポンプを停止することによって、電動油圧ポンプの焼き付きが、より適切に抑制される。
【0012】
前記脚揚降用EHAシステムは、前記油圧路に設けられかつ、前記電動油圧ポンプへの前記作動油の逆流を止める逆止弁を備えている、としてもよい。
【0013】
こうすることで、脚揚げの最中に電動油圧ポンプが停止しても、脚は降りずに保持される。
【0014】
前記圧力センサは、前記油圧アクチュエータに、又は、前記油圧アクチュエータと前記逆止弁との間に、配設され、前記制御部は、前記電動油圧ポンプの停止中に、前記計測信号に基づいて前記油圧が前記第2設定圧力以下に低下したことを判断する、としてもよい。
【0015】
こうすることで、制御部は、電動油圧ポンプが停止している間に、圧力センサの計測信号に基づいて油圧アクチュエータの油圧を計測することが可能になる。
【0016】
前記圧力センサは、前記逆止弁と前記電動油圧ポンプとの間に配設され、前記制御部は、前記電動油圧ポンプの停止中に、前記電動油圧ポンプを一時的に運転すると共に、前記電動油圧ポンプを一時的に運転した時の前記計測信号に基づいて前記油圧が前記第2設定圧力以下に低下したことを判断する、としてもよい。
【0017】
電動油圧ポンプが起動すると逆止弁が開弁するため、圧力センサは油圧アクチュエータの油圧に対応する計測信号を出力可能になる。また、電動油圧ポンプの運転時間は短いため、油圧アクチュエータの油圧を計測する際に電動油圧ポンプが焼き付くことが抑制される。
【0018】
前記制御部は、一時的な電動油圧ポンプの運転を、前記油圧が前記第2設定圧力以下に低下するまで、間欠的に繰り返す、としてもよい。
【0019】
電動油圧ポンプの運転を間欠的に行うことにより、電動油圧ポンプの焼き付きが抑制される。また、油圧の計測を繰り返し行うことによって、制御部は、油圧が第2設定圧力以下に低下したことを速やかに判断することができる。電動油圧ポンプが早期に運転を再開することによって、脚揚げが速やかに完了する。
【0020】
前記電動油圧ポンプは、第1電動油圧ポンプと第2電動油圧ポンプとを含み、前記油圧路は、前記第1電動油圧ポンプ及び前記第2電動油圧ポンプを、前記油圧アクチュエータに対して並列に接続し、前記油圧路において、前記第1電動油圧ポンプと前記第2電動油圧ポンプとの合流箇所と前記第1電動油圧ポンプとの間には逆止弁が設けられると共に、前記合流箇所と前記第2電動油圧ポンプとの間には第2の逆止弁が設けられ、前記制御部は、前記脚の揚降時に、前記第1電動油圧ポンプ及び前記第2電動油圧ポンプの両方、又は、いずれか一方を運転する、としてもよい。
【0021】
これにより、EHAシステムが冗長化する。正常時は、第1電動油圧ポンプ、及び、第2電動油圧ポンプの両方が、油圧アクチュエータに作動油を供給してもよい。第1電動油圧ポンプ、及び、第2電動油圧ポンプのいずれか一方がフェイルした場合には、他方の電動油圧ポンプが、油圧アクチュエータに作動油を供給することができる。一方の電動油圧ポンプが運転している時に、逆止弁は、他方の電動油圧ポンプに作動油が逆流することを止める。また、前述したように、逆止弁によって、脚揚げの最中に電動油圧ポンプが停止しても、脚は保持される。
【0022】
前記圧力センサは、前記油圧アクチュエータに、又は、前記油圧アクチュエータと前記合流箇所との間に、配設され、前記第1電動油圧ポンプと前記逆止弁の間、及び、前記第2電動油圧ポンプと前記第2の逆止弁との間にはそれぞれ、第2の圧力センサが設けられ、前記制御部は、前記電動油圧ポンプの運転中に、前記第2の圧力センサの計測信号に基づいて前記油圧が前記設定圧力を超えたことを判断しかつ、前記電動油圧ポンプの停止中に、前記圧力センサの計測信号に基づいて前記油圧が前記第2設定圧力以下に低下したことを判断する、としてもよい。
【0023】
電動油圧ポンプが運転している間は、二つの第2の圧力センサが、第1電動油圧ポンプ及び第2電動油圧ポンプのそれぞれの吐出圧力(及び油圧アクチュエータの油圧)に対応する計測信号を出力することができる。電動油圧ポンプが停止している間は、圧力センサが、油圧アクチュエータの油圧に対応する計測信号を出力することができる。
【0024】
前記圧力センサは、前記第1電動油圧ポンプと前記逆止弁との間、及び、前記第2電動油圧ポンプと前記第2の逆止弁との間のそれぞれに配設され、前記制御部は、前記電動油圧ポンプの運転中に、前記計測信号に基づいて前記油圧が前記設定圧力を超えたことを判断しかつ、前記電動油圧ポンプの停止中に、前記電動油圧ポンプを一時的に運転すると共に、前記電動油圧ポンプを一時的に運転した時の前記計測信号に基づいて前記油圧が前記第2設定圧力以下に低下したことを判断する、としてもよい。
【0025】
第1及び/又は第2電動油圧ポンプが起動することによって逆止弁及び/又は第2の逆止弁が開弁するから、圧力センサは油圧アクチュエータの油圧に対応する計測信号を出力可能になる。また、油圧アクチュエータの油圧を計測する際に電動油圧ポンプが焼き付くことが抑制される。さらに、この構成は、同じ圧力センサが、電動油圧ポンプの運転中も停止中も計測信号を出力するため、EHAシステムに必要なセンサの数が少ない。
【0026】
前記制御部は、一時的な電動油圧ポンプの運転を、前記油圧が前記第2設定圧力以下に低下するまで、間欠的に繰り返し、前記制御部は、前記第1電動油圧ポンプ及び前記第2電動油圧ポンプを交互に、一時的に運転する、としてもよい。
【0027】
二つの電動油圧ポンプを間欠的にかつ交互に運転することによって、油圧アクチュエータの油圧を計測する際に電動油圧ポンプが焼き付くことが抑制される。また、交互運転によって、間欠運転における電動油圧ポンプの休止時間を短くすることができる。油圧の計測頻度が高くなるから、制御部は油圧が第2設定圧力以下に低下したことを速やかに判断することができる。電動油圧ポンプが早期に運転を再開することによって、脚揚げの完了が早まる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、ここに開示する脚揚降用EHAシステムは、電動油圧ポンプの焼き付きを抑制しながら、脚揚げを速やかに完了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、航空機の降着装置を例示する斜視図である。
図2図2は、脚揚降用EHAシステムを例示する回路図である。
図3図3は、図2のEHAシステムが脚を揚げる際の動作を示す図である。
図4図4は、図2のEHAシステムが脚を揚げる際の動作に係るフローチャートである。
図5図5は、EHAシステムの油圧と圧力センサの計測圧力との変化を例示する図である。
図6図6は、図2とは異なる脚揚降用EHAシステムを例示する回路図である。
図7図7は、図6のEHAシステムが脚を揚げる際の動作に係るフローチャートである。
図8図8は、EHAシステムの油圧と圧力センサの計測圧力との変化を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、航空機の脚揚降用の電動油圧アクチュエータ(EHA)システムの実施形態を、図面を参照しながら説明する。以下において説明するEHAシステムは例示である。図1は、航空機の降着装置1を例示する図である。降着装置1は主脚である。
【0031】
降着装置1は、脚11を機体12に格納しかつ、脚11を機体12から展開する。脚11の先端には、車輪15が取り付けられている。降着装置1は、ギアシリンダ21、ドアシリンダ22、ダウンロックリリースシリンダ23、ドアアップロックリリースシリンダ26、及び、ギアアップロックリリースシリンダ27を有している。
【0032】
ギアシリンダ21は、脚11を揚降する。ドアシリンダ22は、格納室13のドア14を開閉する。格納室13は脚11を収容する。ダウンロックリリースシリンダ23は、脚降ろし状態を固定するダウンロック機構を解除する。ドアアップロックリリースシリンダ26は、ドアを引き上げ状態に固定するドアアップロック機構を解除する。ギアアップロックリリースシリンダ27は、脚11を引き上げ状態に固定するギアアップロック機構を解除する。各シリンダ21、22、23、26、27は、油圧式の伸縮シリンダである。各シリンダ21、22、23、26、27は、油圧アクチュエータの一例である。尚、降着装置1は、これらのシリンダの内の、一部のみを有していてもよい。
【0033】
(EHAシステムの構成)
図2は、降着装置1のEHAシステム10の構成を例示する回路図である。図2に示すEHAシステム10は、前述したギアシリンダ21、ドアシリンダ22、ダウンロックリリースシリンダ23を含んでいる。EHAシステム10は、ドアアップロックリリースシリンダ26及びギアアップロックリリースシリンダ27を含んでもよい。また、EHAシステム10は、これらのシリンダ21、22、23、26、27の内の一部のシリンダのみを含んでもよい。以下の説明においては、ギアシリンダ21、ドアシリンダ22、及び、ダウンロックリリースシリンダ23を総称して、油圧シリンダ2と呼ぶ。尚、図2において油圧路101は実線、パイロット油圧路は破線、電気信号路は二点鎖線で示す。
【0034】
油圧シリンダ2は、ボア側油室24とアニュラス側油室25とを有している。ピストンヘッドは、シリンダ内で、ボア側油室24とアニュラス側油室25とを隔てている。油圧シリンダ2の第1ポートはボア側油室24に連通し、第2ポートはアニュラス側油室25に連通している。作動油は、第1ポートを介して、ボア側油室24に流入及び流出し、第2ポートを介して、アニュラス側油室25に流入及び流出する。
【0035】
ギアシリンダ21は、図2の構成例においては、伸びる際に負荷に抗して脚11を揚げ、縮む際に負荷を開放して脚11を降ろす。ドアシリンダ22は、図2の構成例においては、伸びる際に負荷を開放してドアを開け、縮む際に負荷に抗してドアを閉める。ダウンロックリリースシリンダ23は、図2の構成例においては、伸びる方向に、図示を省略する付勢部材によって負荷が付与されている。ダウンロックリリースシリンダ23は、縮むことによって脚降ろし状態を固定する機構を解除する。尚、ギアシリンダ21、ドアシリンダ22及びダウンロックリリースシリンダ23の構成は、前記の構成に限定されない。
【0036】
EHAシステム10は、第1及び第2の二つの電動油圧ポンプ31、32を備えている。第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32は、各油圧シリンダ2に作動油を供給する。第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32は、油圧シリンダ2に対して、並列に設けられている。尚、以下の説明において、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を区別せずに総称する場合は、電動油圧ポンプ3と呼ぶ。
【0037】
第1電動油圧ポンプ31は、一つの油圧ポンプ33及び一つの電動モータ34を含んでいる。油圧ポンプ33と電動モータ34とは、互いに連結されている。第2電動油圧ポンプ32も、一つの油圧ポンプ33及び一つの電動モータ34を含んでいる。油圧ポンプ33と電動モータ34とは、互いに連結されている。油圧ポンプ33は、この構成例では一方向にのみ回転可能な片回転式である。油圧ポンプ33は、例えばギアポンプとしてもよい。但し、油圧ポンプ33の形式は、これに限定されない。電動モータ34は、後述するコントローラ9の制御信号を受けて、起動、運転及び停止する。
【0038】
第1電動油圧ポンプ31と第2電動油圧ポンプ32との合流箇所37と、第1電動油圧ポンプ31の油圧ポンプ33との間には、逆止弁35が配設されている。合流箇所37と、第2電動油圧ポンプ32の油圧ポンプ33との間にも、逆止弁35(つまり、第2の逆止弁)が配設されている。これらの逆止弁35は、後述するように、第1及び第2電動油圧ポンプ31、32の一方がフェイルして停止している場合に、他方の電動油圧ポンプ3が吐出した作動油が、停止中の電動油圧ポンプ3に逆流することを止める。
【0039】
第1電動油圧ポンプ31の下流の油圧路101は分岐している。この分岐路は、リリーフ弁36及びフィルタ82を介してリザーバ81に接続されている。同様に、第2電動油圧ポンプ32の下流の油圧路101は分岐している。この分岐路は、リリーフ弁36及びフィルタ82を介してリザーバ81に接続されている。リザーバ81は、油圧シリンダ2のボア側油室24とアニュラス側油室25との合計容積が、油圧シリンダ2の伸縮に伴い変動することを吸収する。リザーバ81には、第1電動油圧ポンプ31の吸込口、及び、第2電動油圧ポンプ32の吸込口が接続されている。
【0040】
第1電動油圧ポンプ31と第2電動油圧ポンプ32との合流箇所37は、ギアセレクタ弁41及びドアセレクタ弁42に接続されている。
【0041】
ギアセレクタ弁41は、Pポート、Tポート、Aポート及びBポートの四つのポートを有する4ポート3位置の切換弁である。ギアセレクタ弁41は、ギアシリンダ21及びダウンロックリリースシリンダ23に対して作動油を選択的に供給する。Pポートは、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32の合流箇所37に接続されている。Tポートは、リザーバ81に接続されている。Aポートは、ギアシリンダ21のボア側油室24及びダウンロックリリースシリンダ23のアニュラス側油室25にそれぞれ接続されている。Bポートは、ギアシリンダ21のアニュラス側油室25に接続されている。尚、ダウンロックリリースシリンダ23のボア側油室24は、リザーバ81に接続されている。
【0042】
ギアセレクタ弁41はまた、油圧パイロット式のソレノイド弁である。スプールは、パイロット油圧を受けて動く。スプールは、スプリングによってセンター位置に付勢されている。ギアセレクタ弁41は、センター位置では、Aポート及びBポートをそれぞれTポートに連通する。ギアセレクタ弁41はまた、第1オフセット位置(つまり、図2の左側の位置)では、AポートとPポートとを連通しかつ、BポートとTポートとを連通する。ギアセレクタ弁41は、第2オフセット位置(つまり、図2の右側の位置)では、AポートとTポートとを連通しかつ、BポートとTポートとを連通する。コントローラ9は、ギアセレクタ弁41の切り換えを通じて、ギアシリンダ21のボア側油室24又はアニュラス側油室25に、作動油を選択的に供給すると共に、ダウンロックリリースシリンダ23のアニュラス側油室25への作動油の供給及び停止を切り換える。
【0043】
ギアセレクタ弁41のAポートとギアシリンダ21のボア側油室24との間には、逆止弁44とオリフィス45とが並列に介設している。逆止弁44及びオリフィス45は、ギアシリンダ21が縮む速度を制限する。
【0044】
ドアセレクタ弁42は、Pポート、Tポート、Aポート及びBポートの四つのポートを有する4ポート2位置の切換弁である。ドアセレクタ弁42は、ドアシリンダ22に対して作動油を選択的に供給する。Pポートは、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32の合流箇所37に接続されている。Tポートは、リザーバ81に接続されている。Aポートは、ドアシリンダ22のボア側油室24に接続されている。Bポートは、ドアシリンダ22のアニュラス側油室25に接続されている。
【0045】
ドアセレクタ弁42も、油圧パイロット式のソレノイド弁である。スプールはパイロット油圧を受けて動く。スプールは、スプリングによってノーマル位置に付勢されている。ドアセレクタ弁42は、ノーマル位置では、Aポート及びBポートをそれぞれPポートに連通する。ドアセレクタ弁42は、オフセット位置では、AポートとTポートとを連通しかつ、BポートとPポートとを連通する。コントローラ9は、ドアセレクタ弁42の切り換えを通じて、ドアシリンダ22のボア側油室24又はアニュラス側油室25に作動油を選択的に供給する。
【0046】
ドアセレクタ弁42のBポートとドアシリンダ22のアニュラス側油室25との間には、逆止弁46とオリフィス47とが並列に介設している。逆止弁46及びオリフィス47はドアシリンダ22が伸びる速度を制限する。
【0047】
ギアシリンダ21及びドアシリンダ22とリザーバ81との間には、ダンプ弁43が介設している。ダンプ弁43は、A、B、C、Dポートと、Tポートとを有する5ポート2位置の切換弁である。ダンプ弁43のAポートは、ギアシリンダ21のアニュラス側油室25に接続されている。Bポートは、ギアシリンダ21のボア側油室24に接続されている。Cポートは、ドアシリンダ22のアニュラス側油室25に接続されている。Dポートは、ドアシリンダ22のボア側油室24に接続されている。Tポートは、リザーバ81に接続されている。
【0048】
ダンプ弁43は、ソレノイドによって直接駆動されるスプールを備えたソレノイド弁である。スプールは、スプリングによってノーマル位置に付勢されている。ダンプ弁43は、ノーマル位置では、A、B、C、Dポートを全てTポートに連通する。ダンプ弁43は、オフセット位置では、A~Dの各ポートとTポートとを遮断する。コントローラ9は、ダンプ弁43の切り換えを行う。
【0049】
前述した第1電動油圧ポンプ31の分岐路には圧力センサ38が取り付けられている。圧力センサ38は、第1電動油圧ポンプ31の吐出圧力に対応する計測信号を、コントローラ9に出力する。また、第2電動油圧ポンプ32の分岐路にも圧力センサ38が取り付けられている。圧力センサ38は、第2電動油圧ポンプ32の吐出圧力に対応する計測信号を、コントローラ9に出力する。二つの圧力センサ38によって、コントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31の吐出圧力及び第2電動油圧ポンプ32の吐出圧力を、個別に計測することができる。これらの圧力センサ38は、第2の圧力センサの一例である。
【0050】
また、図2に例示するEHAシステム10は、もう一つの圧力センサ39を有している。圧力センサ39は、第1電動油圧ポンプ31と第2電動油圧ポンプ32との合流箇所37と、ギアシリンダ21のボア側油室24とをつなぐ油圧路101に取り付けられている。圧力センサ39は、ギアシリンダ21のボア側油室24の圧力に対応する計測信号を、コントローラ9に出力する。尚、圧力センサ39は、ギアシリンダ21に取り付けてもよい。さらに、図2の符号310は、降着装置1の脚揚げが完了したことを検知するセンサである。センサ310はコントローラ9に検知信号を出力する。
【0051】
(脚揚げ時のEHAシステムの動作)
次に、脚を揚げる際のEHAシステム10の動作を説明する。降着装置1は、脚11を機体12に格納する際には、先ず閉じているドアを開けた後に、脚揚げを行い、脚揚げの完了後にドアを閉じる動作を順に行う。また、脚11を機体12から展開する際には、先ず閉じているドアを開けた後に、脚降ろしを行い、脚降ろしの完了後にドアを閉じる動作を順に行う。
【0052】
コントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32に制御信号を出力する。第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32は、制御信号を受けて、起動、運転及び停止する。コントローラ9はまた、ギアセレクタ弁41、ドアセレクタ弁42、及びダンプ弁43に制御信号を出力する。ギアセレクタ弁41、ドアセレクタ弁42、及びダンプ弁43は、制御信号を受けてスプールの位置を切り換える。コントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31、第2電動油圧ポンプ32、ギアセレクタ弁41、ドアセレクタ弁42、及びダンプ弁43に制御信号を出力することを通じて、脚11を機体12に格納したり、脚11を機体12から展開したりする。コントローラ9は制御部の一例である。
【0053】
図3はドアが開いて脚揚げを行う際の、EHAシステム10の動作を示している。尚、図3は、コントローラ9、電動モータ34及び電気信号路の図示を省略している。また、図3は、作動油が供給されている油圧路を太実線で、パイロット油圧路を破線で、リザーバ81に接続されている油圧路101を実線で、それぞれ示している。
【0054】
コントローラ9は、ギアセレクタ弁41を第1オフセット位置にする。ギアセレクタ弁41のAポートとPポートとが連通しかつ、BポートとTポートとが連通する。また、コントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を運転させる。コントローラ9は、二つの圧力センサ38の計測信号に基づいて、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32のそれぞれを個別にフィードバック制御する。作動油は、同図に矢印で示すように、ギアセレクタ弁41を介して、ダウンロックリリースシリンダ23のアニュラス側油室25に供給される。ダウンロックリリースシリンダ23は、図3に矢印で示すように縮む。脚降ろし状態を固定する機構が解除される。また、作動油は、逆止弁44を介してギアシリンダ21のボア側油室24に供給される。ギアシリンダ21は、図3に矢印で示すように伸びる。これにより、脚11が上昇する。尚、ギアシリンダ21が伸びることに伴いアニュラス側油室25から排出される作動油は、ギアセレクタ弁41及びフィルタ82を通って、リザーバ81に戻る。コントローラ9は、センサ310の検出信号に基づいて、脚揚げが完了したことを判断する。
【0055】
尚、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32のいずれか一方がフェイルした場合に、コントローラ9は、他方の電動油圧ポンプ3のみを運転させる。EHAシステム10は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を、各油圧シリンダ2に対して並列に設けることによって冗長化している。このため、一つの電動油圧ポンプ3のみでも、各油圧シリンダ2に作動油を供給することができる。
【0056】
(電動油圧ポンプの焼き付き抑制制御)
脚11を揚げている最中に、例えば脚11に作用する空力によってギアシリンダ21の負荷が高くなる場合がある。EHAシステム10は、油圧ポンプ33の熱容量が小さいため、ギアシリンダ21の負荷が高い状態で油圧ポンプ33を運転し続けると、油圧ポンプ33が焼き付いてしまう恐れがある。ギアポンプは特に、低流量かつ高圧力での運転が継続すると、焼き付きやすい。
【0057】
そこで、コントローラ9は、脚揚げ時に、油圧ポンプ33の焼き付きを抑制するよう構成されている。具体的にコントローラ9は、脚11を揚げている最中に、油圧ポンプ33の回転数が、設定回転数以下の低回転でかつ、油圧が第1設定圧力を超えた状態が、設定時間継続したか否かを判断する。コントローラ9は、電動モータ34に出力する制御信号に基づいて、油圧ポンプ33の回転数を検出してもよい。また、油圧ポンプ33及び/又は電動モータ34の回転数に対応する計測信号をコントローラ9に出力するセンサを、油圧ポンプ33及び/又は電動モータ34に取り付けてもよい。コントローラ9はまた、二つの圧力センサ38の計測信号に基づいて、ギアシリンダ21のボア側油室24の油圧を検出してもよい。また、コントローラ9は、圧力センサ39の計測信号に基づいて、ギアシリンダ21のボア側油室24の油圧を検出してもよい。油圧ポンプ33の回転数が、設定回転数以下の低回転でかつ、油圧が第1設定圧力を超えた状態が、設定時間継続した場合、コントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を停止する。尚、コントローラ9は、EHAシステム10の油圧が第1設定圧力を超えた状態が、設定時間継続した場合、コントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を停止してもよい。
【0058】
ギアシリンダ21と第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32との間には、逆止弁35、35が介設している。脚揚げ中に第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を停止しても作動油は逆流しない(図3参照)。上昇途中の脚11は、そのままの位置に保持される。脚11を降ろさないため、電動油圧ポンプ3の運転を再開すれば脚揚げを速やかに完了することができる。
【0059】
コントローラ9は、ギアシリンダ21のボア側油室24の油圧が低下すると、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を起動する。ここで、二つの圧力センサ38とギアシリンダ21との間には、逆止弁35が配設されている。このため、二つの圧力センサ38は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32の停止中に、ギアシリンダ21のボア側油室24の油圧を検出することができない。そこで、コントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32の停止中は、圧力センサ39の計測信号に基づいて、ギアシリンダ21のボア側油室24の油圧を検出する。コントローラ9は、ギアシリンダ21のボア側油室24の油圧が第2設定圧力以下になると、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32の運転を再開する。
【0060】
ここで、第1設定圧力は、油圧ポンプ33が、当該第1設定圧力で長時間運転を継続すると、焼き付きが生じる圧力として、予め設定すればよい。第1設定圧力は、リリーフ弁36の開弁圧力よりも低い圧力としてもよい。第2設定圧力は、第1設定圧力よりも低い圧力としてもよい。こうすることで、電動油圧ポンプ3の運転再開を、安定して行うことができる。また、第2設定圧力は、第1設定圧力と同じ圧力としてもよい。
【0061】
次に、図4及び図5を参照しながら、前述した制御手順を説明する。図4は、脚揚げ時にコントローラ9が実行する制御手順を示すフローチャートであり、図5は、EHAシステム10の油圧の変化と、圧力センサ38の計測信号に基づく圧力(つまり、計測圧力)の変化とを例示する図である。図5の実線は、EHAシステム10の油圧の変化を示している。EHAシステム10の油圧は、圧力センサ39の計測信号に基づいて計測することができる。図5の太実線は、圧力センサ38の計測圧力の変化を示している。尚、図5は、図の見やすさのために、実線と太実線とをずらして描いている。
【0062】
先ずスタート後のステップS11において、コントローラ9は脚揚げ時であるか否かを判断する。ステップS11の判断がNOの場合、プロセスはステップS11を繰り返す。ステップS11の判断がYESの場合、プロセスはステップS12に進む。
【0063】
ステップS12においてコントローラ9は、後述するフラグFがゼロであるか否かを判断する。フラグFがゼロである場合、プロセスはステップS13に進む。フラグFがゼロでない場合、プロセスはステップS110に進む。ここでは、フラグFがゼロであるとして説明を続ける。
【0064】
ステップS13においてコントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を運転させる。ギアシリンダ21に作動油が供給され、脚11が上昇する。その後、ステップS14においてコントローラ9は、油圧ポンプ33が設定回転数以下の低回転でかつ、油圧が第1設定圧力を超える状態であるか否かを判断する。ステップS14の判断がNOの場合、プロセスはステップS18に進む。ステップS14の判断がYESの場合、プロセスはステップS15に進む。ここで、図5の例では、時刻t11に、油圧が第1設定圧力を超えている。
【0065】
ステップS15においてコントローラ9は、油圧ポンプ33が設定回転数以下の低回転でかつ、油圧が設定圧力を超える状態が、設定時間継続したか否かを判断する。ステップS15の判断がNOの場合、プロセスはステップS14に戻る。ステップS15の判断がYESの場合、プロセスはステップS16に進む。
【0066】
ステップS16においてコントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を停止する。図5の例では、時刻t12に、設定時間が経過したとして、コントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を停止している。圧力センサ38の計測圧力は、実質的にゼロになる。
【0067】
ここで、コントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31について、ステップS15及びS16の判断に係る停止条件が成立したか否かを判断すると共に、第1電動油圧ポンプ31とは別に、第2電動油圧ポンプ32について、ステップS15及びS16の判断に係る停止条件が成立したか否かを判断してもよい。コントローラ9はまた、第1電動油圧ポンプ31について停止条件が成立した場合には、当該第1電動油圧ポンプ31を停止し、第2電動油圧ポンプ32について停止条件が成立した場合には、当該第2電動油圧ポンプ32を停止してもよい。これとは異なり、コントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32のいずれかについて停止条件が成立した場合には、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32の両方を停止してもよい。
【0068】
続くステップS17においてコントローラ9は、フラグFを1にする。このフラグFは、脚揚げの最中に、焼き付き抑制のために第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を停止したことを表すフラグである。プロセスはその後、リターンする。
【0069】
リターン後のステップS11において、脚揚げが完了していないため、ステップS11の判断はYESとなり、プロセスはステップS12に進む。フラグFが1であるため、ステップS12の判断はNOとなる。プロセスは、ステップS110に進む。
【0070】
ステップS110においてコントローラ9は、圧力センサ39の計測信号に基づいて、EHAシステム10の油圧が第2設定圧力以下に低下したか否かを判断する。ステップS110の判断がNOの場合には、プロセスはステップS11に戻る。ステップS110の判断がYESの場合には、プロセスはステップS111に進む。
【0071】
ステップS111においてコントローラ9は、フラグFをゼロにし、プロセスはその後ステップS13に進む。コントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプの運転を再開する。つまり、電動油圧ポンプ3の運転は、油圧が第2設定圧力以下に低下した以降に再開する。コントローラ9は、EHAシステム10の油圧が第2設定圧力以下に低下すると直ちに電動油圧ポンプ3の運転を再開してもよいし、時間を空けて電動油圧ポンプ3の運転を再開してもよい。
【0072】
ここで、図5の例では、時刻t13に、EHAシステム10の油圧が第2設定圧力以下に低下しており、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32の運転が再開している。
【0073】
電動油圧ポンプ3が運転中のステップS18において、コントローラ9は、脚揚げが完了したか否かを判断する。コントローラ9は、センサ310の検出信号に基づいて脚揚げが完了したことを判断することができる。ステップS18の判断がNOの場合は、プロセスはステップS11に戻り、脚揚げを続ける。ステップS18の判断がYESの場合は、プロセスはステップS19に進む。
【0074】
ステップS19においてコントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を停止し、プロセスはリターンする。
【0075】
この制御によると、脚揚げ中に特定の停止条件が成立すると、コントローラ9が電動油圧ポンプ3を停止させるから、電動油圧ポンプ3の焼き付きが抑制される。また、特定の再開条件が成立すると、コントローラ9が電動油圧ポンプ3の運転を再開することによって脚揚げが再開されるから、脚揚げが速やかに完了する。
【0076】
油圧シリンダ2と逆止弁35との間の油圧路101に圧力センサ39を取り付けているため、コントローラ9は、電動油圧ポンプ3の停止中も、油圧シリンダ2の油圧を計測することができる。コントローラ9は、電動油圧ポンプ3を、適切なタイミングで運転再開させることができる。
【0077】
尚、図4に示すフローチャートにおいて、ステップは可能な範囲で入れ替えることが可能である。また、ステップの一部は省略することが可能である。
【0078】
(EHAシステムの他の構成例)
図6は、図2とは異なる構成のEHAシステム100の回路図を示している。このEHAシステム100は、圧力センサ39を省略している。図2のEHAシステム10及び図6のEHAシステム100において、同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0079】
コントローラ9は、前記と同様に、脚揚げの最中に特定の停止条件が成立すると、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を停止する。圧力センサ38は、前述したように、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32の停止中は、EHAシステム100の油圧を計測することができない。そこで、コントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32の停止中に、第1電動油圧ポンプ31又は第2電動油圧ポンプ32を、一時的に運転する。第1電動油圧ポンプ31又は第2電動油圧ポンプ32が運転すると、逆止弁35が開弁するから、圧力センサ38は、EHAシステム100の油圧に対応する計測信号を出力することができる。コントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を停止した後も、EHAシステム100の油圧が第2設定圧力以下に低下したことを判断することができる。
【0080】
ここで、EHAシステム100の油圧を計測する際の、電動油圧ポンプ3の運転時間は短い。このため、電動油圧ポンプ3が焼き付くことが抑制される。
【0081】
次に、図7及び図8を参照しながら、前述した制御手順を説明する。図7は、脚揚げ時にコントローラ9が実行する制御手順を示すフローチャートである。図8は、脚揚げ時に、EHAシステム100の油圧と、圧力センサ38の計測信号に基づく圧力との変化を例示する図である。図8の実線は、EHAシステム100の油圧の変化を示している。図8の太実線は、圧力センサ38の計測圧力の変化を示している。
【0082】
図7のフローのステップS21~S29は、図5のフローのステップS11~19に対応する。コントローラ9は、脚揚げ時に、油圧ポンプ33が、設定回転数以下の低回転でかつ、油圧が第1設定圧力を超える状態が、設定時間継続した場合は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を停止する(ステップS26)。図8の例では、時刻t21に油圧が第1設定圧力を超え、時刻t22に、コントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を停止している。
【0083】
コントローラ9はまた、脚上げが完了した場合に、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を停止する(ステップS29)。
【0084】
ステップS27においてフラグFが1になった後、プロセスはステップS22からステップS210に進む。ステップS210においてコントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31又は第2電動油圧ポンプ32を起動する。このときにコントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32のいずれか一方の電動油圧ポンプ3のみを起動する。電動油圧ポンプ3を起動することによって逆止弁35が開くから、圧力センサ38は、EHAシステム100の油圧に対応する計測信号を出力することができる。
【0085】
ステップS210に続くステップS211において、コントローラ9は、圧力センサ38の計測信号に基づく計測圧力が、第2設定圧力以下であるか否かを判断する。ステップS211の判断がNOの場合には、プロセスはステップS212に進む。ステップS212においてコントローラ9は、起動した電動油圧ポンプ3を停止する。電動油圧ポンプ3の運転は、一時的である。電動油圧ポンプ3の運転時間は、例えば2~3秒程度としてもよい。電動油圧ポンプ3を短時間だけ運転することにより、電動油圧ポンプ3の焼き付きが抑制される。図8の例では、時刻t23に電動油圧ポンプ3が起動している。圧力センサ38の計測圧力が第2設定圧力以下ではなかったため、コントローラ9は、電動油圧ポンプ3を停止している。
【0086】
電動油圧ポンプ3を停止させた後、ステップS213においてコントローラ9は、予め設定した休止時間が経過したか否かを判断する。ステップS213の判断がYESになるまで、プロセスはステップS213を繰り返す。ステップS213の判断がYESになると、プロセスはステップS210に戻る。
【0087】
二回目のステップS210において、コントローラ9は、前回起動した電動油圧ポンプ3とは別の電動油圧ポンプ3を起動する。そして、ステップS211においてコントローラ9は、圧力センサ38の計測信号に基づいて、計測圧力が第2設定圧力以下に低下したか否かを判断する。図8の例で、コントローラ9は、時刻t24に、電動油圧ポンプ3の二回目の起動を行っている。電動油圧ポンプ3の二回目の起動時も、EHAシステム100の油圧が低下していないため、電動油圧ポンプ3を停止している。
【0088】
コントローラ9は、圧力センサ38の計測圧力が第2設定圧力以下になるまで、電動油圧ポンプ3を間欠的に運転する。コントローラ9はまた、第1電動油圧ポンプ31と第2電動油圧ポンプ32とを交互に運転する。
【0089】
電動油圧ポンプ3を間欠的に起動して、EHAシステム100の油圧を計測することにより、コントローラ9は、油圧が低下したことを速やかに判断することができる。また、第1電動油圧ポンプ31と第2電動油圧ポンプ32とを交互に起動することにより、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32の焼き付きを抑制することができる。また、第1電動油圧ポンプ31と第2電動油圧ポンプ32とを交互に起動することにより、休止時間を短くすることができる。休止時間は、例えば1~3秒程度で適宜設定すればよい。これにより、EHAシステム100の油圧が低下したことを、より速やかに判断することができる。電動油圧ポンプ3の運転再開を早期に行うことができるから、脚揚げの完了が早まる。尚、電動油圧ポンプ3の起動は交互で無くてもよい。また、第1電動油圧ポンプ31と第2電動油圧ポンプ32との両方を、一時的に運転してもよい。
【0090】
そして、EHAシステム100の油圧が低下して、ステップS212の判断がYESになれば、プロセスはステップS215に進む。ステップS215においてコントローラ9は、フラグFをゼロにし、プロセスはステップS23に進む。コントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を共に運転し、脚揚げを再開する。図8の例で、コントローラ9は、時刻t25に、電動油圧ポンプ3の三回目の起動を行っている。圧力センサ38の計測信号に基づく計測圧力が第2設定圧力以下に低下したため、コントローラ9は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32の運転を再開する。
【0091】
尚、図7に示すフローチャートにおいて、ステップは可能な範囲で入れ替えることが可能である。また、ステップの一部は省略することが可能である。
【0092】
このEHAシステム100は、電動油圧ポンプ3の運転中も停止中も、圧力センサ38が油圧を計測している。このEHAシステム100は、図2のEHAシステム10と比べて、圧力センサの数を削減することができる。
【0093】
尚、図2及び図6に示すEHAシステム10、100はそれぞれ例示である。脚揚降用のEHAシステムを構成する回路は、適宜の回路構成を採用することが可能である。
【0094】
例えば、前述したEHAシステム10、100は、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32を備えることによって、冗長化している。ここに開示する技術は、図示は省略するが、冗長化していない脚揚降用のEHAシステムに適用することも可能である。
【0095】
また、図2及び図6に示すEHAシステム10、100は、航空機の右舷又は左舷の降着装置1のEHAシステムである。これとは異なり、航空機の右舷の降着装置と、左舷の降着装置とを組み合わせたEHAシステムに、ここに開示する技術を適用してもよい。右舷の降着装置と左舷の降着装置とを組み合わせたEHAシステムは、図示は省略するが、第1電動油圧ポンプ31及び第2電動油圧ポンプ32が、右舷の降着装置の各油圧シリンダ2に作動油を供給すると共に、左舷の降着装置の各油圧シリンダ2に作動油を供給するよう、例えばセレクタ弁の下流の油圧路を、右舷の降着装置と左舷の降着装置とに分岐して構成してもよい。
【0096】
また、前記の説明では、ギアシリンダ21を制御対象としているが、ドアシリンダ22を制御対象として、ここに開示する技術を適用してもよい。
【符号の説明】
【0097】
10、100 EHAシステム
101 油圧路
21 ギアシリンダ(油圧アクチュエータ)
22 ドアシリンダ(油圧アクチュエータ)
3 電動油圧ポンプ
31 第1電動油圧ポンプ
32 第2電動油圧ポンプ
33 油圧ポンプ
34 電動モータ
35 逆止弁
38 圧力センサ
39 圧力センサ
9 コントローラ(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8