(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】トリフェニルスルホニウム塩化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07C 381/12 20060101AFI20230908BHJP
C07F 5/02 20060101ALI20230908BHJP
C07D 333/76 20060101ALI20230908BHJP
C07D 307/91 20060101ALI20230908BHJP
C07D 209/88 20060101ALI20230908BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230908BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
C07C381/12 CSP
C07F5/02 A
C07D333/76
C07D307/91
C07D209/88
G03F7/004 503A
G03F7/004 503Z
G03F7/039 601
(21)【出願番号】P 2021519803
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2019108369
(87)【国際公開番号】W WO2020073822
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】201811172185.9
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811171951.X
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515324604
【氏名又は名称】常州強力先端電子材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU TRONLY ADVANCED ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Wucheng Industrial Park, Zhenglu Town, Tianning,Changzhou, Jiangsu 213159,China
(73)【特許権者】
【識別番号】517427152
【氏名又は名称】常州強力電子新材料股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU TRONLY NEW ELECTRONIC MATERIALS Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Qianjia Industrial Park, Yaoguan Town, Wujin District Changzhou city, Jiangsu 213011, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チエン、シアオチュン
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/050435(WO,A1)
【文献】特開2005-062800(JP,A)
【文献】特開2009-084219(JP,A)
【文献】特開2011-063657(JP,A)
【文献】特開2006-241435(JP,A)
【文献】特開2011-140559(JP,A)
【文献】特開平08-311018(JP,A)
【文献】特開平10-330353(JP,A)
【文献】特開2004-271843(JP,A)
【文献】特開2019-207404(JP,A)
【文献】特開2019-038764(JP,A)
【文献】Ignatov, L. Ya. et al.,Activating effect of the diphenylsulfonium group in the nucleophilic substitution of chlorine in the benzene ring,Doklady Akademii Nauk SSSR,1976年,231(4),pp. 874-877
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(IV)で示される構
造を有するトリフェニルスルホニウム塩化合物。
【化1】
[式中、
R
1は、ハロゲン元素、シアノ基、ニトロ基、ハロアルキル基、アシル基のうちから選択されるいずれか1種である。
R
2は、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基のうちから選択されるいずれか1種である。
前記一般式(IV)中、各R
4は、それぞれ独立してアシル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基のうちから選択されるいずれか1種であり、前記一般式(IV)中の前記R
4を形成する各基における-CH
2-は、-O-、-S-又は-CH=CH-により置換されてもよく、隣接する前記R
4は、前記R
4に連結するフェニル基と環を形成してもよい
。
前記一般式(IV)中、mは、0、1又は2を
表す。
X
-は、M
-、ClO
4
-、CN
-、HSO
4
-、NO
3
-、CF
3COO
-、(BM
4)
-、(SbM
6)
-、(AsM
6)
-、(PM
6)
-、Al[OC(CF
3)
3]
4
-、R
7SO
3
-、(R
7SO
2)
3C
-、(R
7SO
2)
2N
-、B(C
6M
5)
4
-、Ga(C
6M
5)
4
-又は[(Rf)
bPF
6-
b]
-を表し、その中、Mは、ハロゲン元素を表し、R
7は、C
1-C
20のアルキル基、C
1-C
20のパーフルオロアルキル基、C
6-C
20のアリール基もしくは置換アリール基のうちのいずれか1種を表し、Rfは、80%以上の水素原子がフッ素原子により置換されたアルキル基を表し、bは、1~5のいずれかの整数を表し、かつ、各Rf基は、互いに同じであってもよいし、異なってもよい
。]
【請求項2】
前記R
1としての前記ハロゲン元素は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であることを特徴とする請求項1に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
【請求項3】
前記R
1としての前記ハロゲン元素は、フッ素であることを特徴とする請求項1に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
【請求項4】
前記R
1としての前記ハロアルキル基におけるアルキル基は、C
1-C
8の直鎖アルキル基、C
3-C
8の分岐アルキル基、又はC
3-C
8のシクロアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
【請求項5】
前記R
1としての前記ハロアルキル基は、C
1-C
4のパーフルオロアルキル基のうちのいずれか1種であることを特徴とする請求項1に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
【請求項6】
前記R
1としての前記アシル基は、それぞれ独立して
【化2】
又は
【化3】
[式中、R
6は、水素、ハロゲン元素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基のうちのいずれか1種を表す。]で示される構造を有することを特徴とする請求項1に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
【請求項7】
前記R
2としての前記アルキル基は、C
1-C
8の直鎖アルキル基もしくはC
3-C
8の分岐アルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
【請求項8】
前記R
2としての前記アルキル基は、C
1-C
4の直鎖アルキル基もしくはC
3-C
4分岐状アルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
【請求項9】
前記R
2としての前記アルコキシ基におけるアルキル基は、C
1-C
8の直鎖アルキル基又はC
3-C
8の分岐アルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
【請求項10】
前記R
2としての前記アルコキシ基におけるアルキル基は、C
1-C
4の直鎖アルキル基もしくはC
3-C
4の分岐状アルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
【請求項11】
前記R
2としての前記アラルキル基は、フェニル基で末端封止されたC
1-C
8のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
【請求項12】
前記R
2としての前記アラルキル基は、フェニル基で末端封止されたC
1-C
4の直鎖アルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
【請求項13】
前記mは、0又は1を表し、mを1とした場合、一般式(IV)中のR
4は、ベンゼン環基上のSに対してパラ位に位
置することを特徴とする請求項1に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
【請求項14】
前記一般式(IV
)中、前記置換に用いられる置換基は、C
1-C
4のアルキル基、ハロゲン元素、C
1-C
3のアルコキシ基、アシル基、スルホニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、フェニル基のうちのいずれか1種であり、R
4が複数である場合、隣接する前記R
4は、前記R
4に連結するフェニル基と環を形成してもよく、前記アシル
基は、C
2-C
8の脂肪族アシル基、C
7-C
12の芳香族アシル基であり
、前記アルコキシ基におけるアルキル基は、C
1-C
8の直鎖アルキル基、C
3-C
8の分岐アルキル基、又はC
3-C
8のシクロアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか1項に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物の、レジスト酸発生剤及び/又はカチオン性重合用光重合開始剤としての使用。
【請求項16】
請求項1~
14のいずれか1項に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物を含む感光性組成物。
【請求項17】
請求項
16に記載の感光性組成物の、平版、凸版用印刷版、プリント基板、フォトレジスト、光硬化性インキ、塗料又はバインダーの作製への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性有機化合物技術分野に属し、特に新規なトリフェニルスルホニウム塩化合物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン型光硬化系は、ラジカル型と比べて、酸素による重合阻害が小さく、硬化時の体積収縮が小さく、樹脂の選択可能な種類が多い等のメリットを有し、電子部品及び半導体素子の製造に広く使用されている。トリフェニルスルホニウム塩は、KrF又はArFエキシマレーザー等の露光光源に対して高い感光性を有し、通常、化学増幅型レジストの光酸発生剤/光開始剤として、半導体素子の大規模生産を行うために用いられる。しかしながら、トリフェニルスルホニウム塩のカチオン構造が対称しかつ結晶性が高く、光硬化系単量体及び一般的な有機溶媒への溶解性が悪いため、添加量が制限され、かつ、組成物への分散が不均一となり、使用時に析出する等の問題を招きやすい。
【0003】
溶解性を高めるために、JP2005091976A及びJP2002193925Aは、ベンゼン環基のパラ位にアルキル基、フルオロアルキル基などの置換基を導入し、WO2005037778Aは、ベンゼン環基のメタ位にアルキル基を導入し、これらの文献は、無置換のものと比べて、溶媒への溶解性を向上させたが、感光性が大幅に低下した。TW201444790Aは、ベンゼン環基のメタ位に電子吸引基を導入し、無置換のものと比べて、溶解性を向上させながら、感光性を同一レベルに維持することができた。
【0004】
トリフェニルスルホニウム塩の構造を最適化してより良い使用性能を有する代替品を得ることは、技術及び市場から求められつつある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の主な目的は、従来技術において、トリフェニルスルホニウム塩構造は高い溶解性及び高い感光性を併有できないという課題を解決するために、トリフェニルスルホニウム塩化合物及びその使用を提供することにある。
【0006】
市場の使用要求に対して、本発明は、従来技術を踏まえて、構造の改進により、優れた溶解性及び感光性を有し、レジスト酸発生剤及びカチオン性重合用光重合開始剤の高品質な代替品として利用可能な新規なトリフェニルスルホニウム塩化合物を提供することを目的としている。
【0007】
本発明の1つの態様によれば、下記一般式(I)又は一般式(III)で示される構造を有するトリフェニルスルホニウム塩化合物を提供する。
【0008】
【0009】
[式中、R1は、電子吸引基を表す。R2は、増幅基を表す。
各R3は、それぞれ独立してハロゲン元素、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基のうちのいずれか1種を表し、任意選択として、前記R3を表す基における-CH2-は、-O-、-S-により置換されてもよく、かつR3基は、互いに連結して環を形成してもよい。各R4及びR5は、それぞれ独立してハロゲン元素、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基のうちのいずれか1種を表し、任意選択として、前記R4及びR5を表す基における-CH2-は、-O-、-S-又は-CH=CH-により置換されてもよく、かつR4基は、互いに連結して環を形成してもよい。n及びmは、それぞれ独立して0~5の整数を表す。X-は、非求核性アニオンを表す。]
【0010】
本発明のもう1つの態様によれば、提供するトリフェニルスルホニウム塩化合物は、さらに、一般式(II)で示される構造を有する、ビス-トリフェニルスルホニウム塩化合物であってもよい。
【0011】
【0012】
[式中、R1は、電子吸引基を表す。R2は、増幅基を表す。各R3は、それぞれ独立してハロゲン元素、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基のうちのいずれか1種を表し、任意選択として、R3を表す基における炭素-炭素結合には、-O-、-S-が介在してもよく、かつR3基は、互いに連結して環を形成してもよい。nは、0~5の整数を表す。各R4は、それぞれ独立してハロゲン元素、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基のうちのいずれか1種を表し、任意選択として、R4を表す基における炭素-炭素結合には、-O-、-S-が介在してもよく、かつR4基は、互いに連結して環を形成してもよく、mは、0~4の整数を表す。各R5は、それぞれ独立して水素、ハロゲン元素、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基のうちのいずれか1種を表し、任意選択として、R5を表す基における炭素-炭素結合には、-O-、-S-が介在してもよく、かつR5基は、互いに連結して環を形成してもよい。pは、0~4の整数を表す。A及びMは、それぞれ独立して連結基を表す。X-は、非求核性アニオンを表す。]
【0013】
本発明の別の態様によれば、上記各トリフェニルスルホニウム塩化合物の、レジスト酸発生剤及び/又はカチオン性重合用光重合開始剤としての使用を提供する。
【0014】
本発明の別の態様によれば、上記いずれか1種のトリフェニルスルホニウム塩化合物を含む感光性組成物を提供する。
【0015】
本発明の別の態様によれば、上記感光性組成物の、平版、凸版用印刷版、プリント基板、フォトレジスト、光硬化性インキ、塗料及びバインダーの作製への使用を提供する。
【0016】
既知のいかなる理論に制限されず、使用より明らかなように、トリフェニルスルホニウム塩のベンゼン環基のメタ位及びパラ位に電子吸引基及び増幅基をそれぞれ導入することにより、無置換のトリフェニルスルホニウム塩と比べて、明らかに向上した溶解性及び感光性を有するとともに、背景技術に記載の従来の改進型の代替品と比べても明らかに優れた性能を有することとなった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
なお、矛盾のない限り、本願における実施例及び実施例における特徴は、互いに組み合わせてもよい。以下、実施例を参照しながら本発明を詳しく説明する。
【0018】
従来文献からわかるように、ベンゼン環基のパラ位に置換基を導入することは、トリフェニルスルホニウム塩の溶解性の向上に有利であるが、感光性に悪影響を与える。しかし、出願人は、特定範囲のパラ位置換基を選択してメタ位の電子吸引基と組み合わせる場合、溶解性及び感光性を両立できることを見出した。
【0019】
本願の1つの典型的な実施形態において、下記一般式(I)で示される構造を有するトリフェニルスルホニウム塩化合物を提供する。
【0020】
【0021】
[式中、R1は、電子吸引基を表す。R2は、増幅基を表す。各R3は、それぞれ独立してハロゲン元素、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基のうちのいずれか1種を表し、任意選択として、前記R3を表す基における-CH2-は、-O-、-S-により置換されてもよく、かつR3基は、互いに連結して環を形成してもよい。各R4及びR5は、それぞれ独立してハロゲン元素、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基のうちのいずれか1種を表し、任意選択として、前記R4及びR5を表す基における-CH2-は、-O-、-S-又は-CH=CH-により置換されてもよく、かつR4基は、互いに連結して環を形成してもよい。n及びmは、それぞれ独立して、0~5の整数を表す。X-は、非求核性アニオンを表す。]
【0022】
使用より明らかなように、トリフェニルスルホニウム塩のベンゼン環基のメタ位及びパラ位に電子吸引基及び増幅基をそれぞれ導入することにより、無置換のトリフェニルスルホニウム塩と比べて、明らかに向上した溶解性及び感光性を有するとともに、背景技術に記載の従来の改進型の代替品と比べても明らかに優れた性能を有することとなった。
【0023】
以下、一般式(I)で示される構造における各可変基をより詳しく説明する。
【0024】
なお、本願の明細書において、C1-Cxは、1及びx以外に、さらに炭素数1~x間の整数値の全てを含み、例えば、C1-C8のアルキル基は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7及びC8の直鎖もしくは分岐状のアルキル基の全てを含む。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しないが、当業者であればその意味が明確で一義的に特定し得ることであり、含まれる各数値は、更なる補正/限定の基礎とすることができると理解され得るであろう。
【0025】
可変基
【0026】
(1)R1電子吸引基
ベンゼン環のメタ位に電子吸引基を導入することにより、スルホニウム塩の溶解性を効果的に向上させながら、感光性に対して悪影響を与えることはないと考えられる。
【0027】
適用する電子吸引基R1として、ハロゲン元素、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、ハロアルキル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基が挙げられる。
【0028】
ハロゲン元素は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であってもよい。コスト及び環境保護性能の点から考慮すると、フッ素であることが好ましい。
【0029】
アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのようなC1-C8の直鎖もしくは分岐状のアルコキシ基であってもよく、好ましくはC1-C4の直鎖もしくは分岐状のアルコキシ基である。
【0030】
ハロアルキル基とは、少なくも1つの水素原子がハロゲン元素により置換されたアルキル基を指し、前記アルキル基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などのようなC1-C8の直鎖アルキル基、又はイソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル等のC3-C8の分岐アルキル基、又はシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などのようなC3-C8のシクロアルキル基であってもよい。ハロアルキル基は、フッ素により置換されたアルキル基から選択された場合、化合物の感光性に有利であり、より好ましくはC1-C4のパーフルオロアルキル基である。
【0031】
アシル基は、
【0032】
【0033】
【0034】
で示される構造を有してもよく、その中、R6は、水素、ハロゲン元素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。好ましくは、R6は、水素、フッ素、塩素、C1-C7の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、又はC1-C7の直鎖もしくは分岐状のフルオロアルキル基(より好ましくは、C1-C7の直鎖もしくは分岐状のパーフルオロアルキル基)を表す。
【0035】
アシルオキシ基におけるアシル基は、上述したアシル基と同じ意味を有する。
【0036】
スルホニル基は、メタンスルホニル基、ジフルオロメタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基などであってもよい。
【0037】
本発明の一般式(I)中、電子吸引基R1は、好ましくはハロゲン元素、シアノ基、ニトロ基、ハロアルキル基、アシル基であり、特に、上記の各基について挙げられた具体的な基である。
【0038】
(2)R2増幅基
増幅基とは、化合物の溶解性及び/又は感光性に対して増幅作用を発生する基である。
【0039】
従来文献には、トリフェニルスルホニウム塩のベンゼン環基のパラ位に置換基を導入することによって溶解性が向上したが、感光性が明らかに低下したことが報告されている。意外に、ベンゼン環基のメタ位に電子吸引基R1が存在する場合、パラ位に増幅基R2を導入することにより、化合物の溶解性及び/又は感光性に対して増幅作用を発生することができ、かつ、この性能をさらに向上させると同時に、その他の性能に悪影響を与えることはない。
【0040】
増幅作用を示せる基としてのR2は、ハロゲン元素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアラルキル基から選択される。
【0041】
ハロゲン元素は、フッ素であることが好ましい。
【0042】
アルキル基は、無置換のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などのC1-C8の直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などのC3-C8の分岐アルキル基であってもよい。より好ましくは、増幅基としてのアルキル基は、C1-C4の直鎖もしくは分岐状のアルキル基であり、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基又はイソブチル基を含む。
【0043】
アルコキシ基は、無置換のものであることが好ましく、その中のアルキル基は、上述したアルキル基と同じ意味を有する。
【0044】
アラルキル基は、アリール基で末端封止されたアルキル基であり、増幅効果から見れば、好ましくはフェニル基で末端封止されたC1-C8のアルキル基であり、より好ましくはフェニル基で末端封止されたC1-C4の直鎖アルキル基であり、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基又はフェニルブチル基を含む。
【0045】
従来の既知の理論に制限されず、増幅基と電子吸引基の組み合わせはトリフェニルスルホニウム塩のマイクロ電子構造に対して相乗的な影響を与え、化合物の性能を向上させる。より具体的には、本発明は、上記増幅基を採用することにより、トリフェニルスルホニウム塩の溶解性をさらに向上させながら、感光性に対して悪影響を与えることはなく、さらに、一部の化合物は、比較的に優れる感光性を示す。
【0046】
(3)R3置換基
一般式(I)で示される構造において、任意選択として、R3置換基を含有してもよく、その前提は、化合物の光硬化使用性能に対して悪影響を与えないことである。
【0047】
この前提条件で、同一種類の代替品をより多く提供する点から、R3は、それぞれ独立して水素、ハロゲン元素、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基を表してもよく、任意選択として、基における-CH2-は、-O-、-S-により置換されてもよく、かつR3基は、互いに連結して環を形成してもよく、その中のR3基は、互いに連結して環を形成してもよく、好ましくは、隣接する2つのR3がベンゼン環と環を形成する。
【0048】
nは、R3基の数を表し、0~5の整数であってもよい。
【0049】
当業者であれば有機分野の基礎理論からわかるように、R3置換基の存在は、前記ベンゼン環の共役構造及びトリフェニルスルホニウムの全体構造の特性に影響を与えることができる。いかなる理論に制限されず、このような影響による結果は、通常、予期しにくいことであり、試験の最終結果に依存する場合が多い。
【0050】
好ましくは、nは0であり、この場合、後の光硬化過程において置換基により引き起こされ得る副反応、又は効果に対する未知な悪影響を避けることができる。
【0051】
より好ましくは、nは2であり、かつ、2つのR3はそれぞれR1及びR2を表し、最も上方のベンゼン環のR1及びR2と上下対称し、即ち、本発明のトリフェニルスルホニウム塩は、下記一般式(IV)で示される構造である。
【0052】
【0053】
[式中、R1及びR2は、上記と同じ意味を有する。電子吸引基R1は、好ましくはハロゲン元素、シアノ基、ニトロ基、ハロアルキル基、アシル基である。R2は、好ましくはフッ素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペントキシ基、n-ヘキシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基又はフェニルブチル基である。mは、0、1又は2を表し、より好ましくは0又は1を表す。mを1とした場合、R4は、好ましくはベンゼン環基のパラ位に位置する。]
【0054】
意外に、アニオン部分が同じである条件下、トリフェニルスルホニウム塩は、上下2つのベンゼン環基に上記構造で示される、対称する電子吸引基及び増幅基を有する場合、従来技術における改進型トリフェニルスルホニウム塩と比べて、当該化合物は、さらに明らかに向上した溶解性及び感光性を示す。
【0055】
(4)R4置換基
一般式(I)で示される構造において、任意選択として、R4置換基を含有してもよく、その前提は、化合物の光硬化使用性能にマイナスな影響を与えないことである。
【0056】
この前提条件下、同一種類の代替品をより多く提供する点から、R4は、それぞれ独立して水素、ハロゲン元素、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基を表してもよく、任意選択として、基における-CH2-は、-O-、-S-又は-CH=CH-により置換されてもよく、かつR4基は、互いに連結して環を形成してもよく、その中のR4基は互いに連結して環を形成してもよく、好ましくは隣接する2つのR4とベンゼン環とが環を形成する。
【0057】
ハロゲン元素は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であってもよい。コスト及び環境保護性能から考慮して、フッ素であることが好ましい。
【0058】
アシル基は、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ヘプタノイル基などのようなC2-C8の脂肪族アシル基、ベンゾイル基、メチルベンゾイル基、トリメチルベンゾイル基、α-フェニルプロピオニル基、ナフトイル基などのようなC7-C12の芳香族アシル基から選択されてもよい。
【0059】
アシルオキシ基におけるアシル基は、上記と同様の意味を有してもよい。
【0060】
スルホニル基は、メタンスルホニル基、ジフルオロメタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基などであってもよい。
【0061】
アルキル基は、置換もしくは無置換のものであってもよい。前記アルキル基は、C1-C8の直鎖、C3-C8の分岐又はC3-C8の環状のアルキル基から選択されてもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などであってもよい。好ましくは、前記アルキル基は、C1-C4の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、又はC3-C6の環状アルキル基から選択される。置換アルキル基における置換基は、ハロゲン元素(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、アミノ基、ヒドロキシル基などを含むが、これらに限られない。
【0062】
アルコキシ基は、置換もしくは無置換のものであってもよく、その中のアルキル基及び置換基は、上記と同じ意味を有してもよい。
【0063】
アリール基は、置換もしくは無置換のものであってもよい。前記アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基などであってもよい。置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのC1-C4のアルキル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン元素、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基のようなC1-C3のアルコキシ基、アシル基、スルホニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、フェニル基などであってもよい。
【0064】
アラルキル基は、アリール基で末端封止されたアルキル基であり、置換もしくは無置換のものであってもよい。その中、アリール基部分及び置換基は、上記と同じ意味を有してもよい。その中のアルキル基部分としては、好ましくはC1-C6のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基などを含む。特に好ましくは、アラルキル基は、ベンジル基、フェネチル基又はフェニルプロピル基であり、任意選択として、フェニル基上の少なくとも1つの水素が、上述した置換基により置換されてもよい。
【0065】
mは、R4基の数を表し、0~5の整数であってもよい。好ましくは、mは、0、1又は2を表し、より好ましくは0又は1を表す。mを1とした場合、R4は、ベンゼン環基のパラ位に位置することが好ましい。
【0066】
(5)非求核性アニオン
X-は、非求核性アニオンを表し、M-、ClO4
-、CN-、HSO4
-、NO3
-、CF3COO-、(BM4)-、(SbM6)-、(AsM6)-、(PM6)-、Al[OC(CF3)3]4
-、R7SO3
-、(R7SO2)3C-、(R7SO2)2N-、B(C6M5)4
-、Ga(C6M5)4
-又は[(Rf)bPF6-b]-を含むが、これらに限られない。
【0067】
Mは、ハロゲン元素を表し、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、好ましくはフッ素である。
【0068】
R7は、C1-C20のアルキル基、C1-C20のパーフルオロアルキル基、又はC6-C20のアリール基もしくは置換アリール基を表し、アルキル基及びパーフルオロアルキル基は、直鎖、分岐状又は環状のうちのいずれか1種であってもよい。
【0069】
Rfは、80%以上の水素原子がフッ素原子により置換されたアルキル基を表し、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基などのような直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などのような分岐状アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのようなシクロアルキル基が挙げられる。Rfにおいて、アルキル基に固有の水素原子のモル数に基づき、フッ素原子により置換される好適な割合は、80%以上であり、90%以上であることが好ましく、100%であることがより好ましい。もしフッ素原子により置換される割合がこれらの範囲内であれば、化合物の感光性が良好となる。さらに、Rfとしては、CF3
-、CF3CF2
-、(CF3)2CF-、CF3CF2CF2
-、CF3CF2CF2CF2
-、(CF3)2CFCF2
-、CF3CF2(CF3)CF-及び(CF3)3C-が挙げられる。bは、1~5の整数を表し、かつ、b個のRf基は互いに同じであってもよいし、異なってもよい。
【0070】
M-が表すアニオンとしては、Cl-、Br-、F-が挙げられる。
【0071】
(BM4)-、(SbM6)-、(AsM6)-、(PM6)-が表すアニオンとしては、BF4
-、SbF6
-、AsF6
-、PF-が挙げられる。
【0072】
R7SO3
-が表すアニオンとしては、CF3SO3
-、C2F5SO3
-、C3F7SO3
-、C4F9SO3
-、C6F5SO3
-、C3F7SO3
-、パラトルエンスルホネートアニオン、ベンゼンスルホネートアニオン、カンファースルホネートアニオン、メタンスルホネートアニオン、エタンスルホネートアニオン、プロパンスルホネートアニオン及びブタンスルホネートアニオンが挙げられる。
【0073】
(R7SO2)3C-が表すアニオンとしては、(CF3SO2)3C-、(C2F5SO2)3C-、(C3F7SO2)3C-及び(C4F9SO2)3C-が挙げられる。
【0074】
(R7SO2)2N-が表すアニオンとしては、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-、(C3F7SO2)2N-及び(C4F9SO2)2N-が挙げられる。
【0075】
B(C6M5)4
-、Ga(C6M5)4
-が表すアニオンとしては、B(C6F5)4
-、Ga(C6F5)4
-が挙げられる。
【0076】
[(Rf)bPF6-b]-が表すアニオンとしては、(CF3CF2)2PF4
-、(CF3CF2)3PF3
-、[(CF3)2CF]2PF4
-、[(CF3)2CF]3PF3
-、(CF3CF2CF2)2PF4
-、(CF3CF2CF2)3PF3
-、[(CF3)2CFCF2]2PF4
-、[(CF3)2CFCF2]3PF3
-、(CF3CF2CF2CF2)2PF4
-及び(CF3CF2CF2CF2)3PF3
-などが挙げられる。
【0077】
製造方法
本発明のトリフェニルスルホニウム塩化合物の製造方法については特に限定されず、周知の有機合成プロセスを用いることができる。例えば、特許文献CN1871212Aに記載の製造方法を参考にして(ここで、参考として全文を引用する)、市販のジアリールスルホキシドとアリール基化合物とをスルホニオ化反応させてスルホニウム塩を得、さらに、必要に応じて塩交換反応によりアニオンを導入し、これにより、本発明のトリフェニルスルホニウム塩化合物を得る。
【0078】
応用
本発明のトリフェニルスルホニウム塩化合物は、エネルギー線の照射によってルイス酸を放出する特性を有し、レジスト酸発生剤及びカチオン性重合用光重合開始剤として使用可能である。
【0079】
適用するエネルギー線としては、低圧、中圧、高圧又は超高圧の水銀ランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、蛍光ランプ、半導体固体レーザ、アルゴンレーザ、He-Cdレーザ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ又はF2レーザ等により得られた紫外線-可視光領域のエネルギー線を使用してもよいし、電子ビーム又はX線等の高エネルギー放射線を使用してもよい。
【0080】
本発明のトリフェニルスルホニウム塩化合物は、感光性単量体(例えば、カチオン重合性化合物)と混合して感光性組成物を形成し、平版、凸版用印刷版、プリント基板及びIC、LSI用のフォトレジスト、光硬化性インキ、塗料、バインダーの作製等の分野へ利用可能である。
【0081】
本発明の上記の一般式(I)で示されるトリフェニルスルホニウム塩化合物は、優れた溶解性、高い酸発生効率及び感光性を有し、非常に良い市場応用価値を有する。
【0082】
誘導体
本発明の上記のトリフェニルスルホニウム塩化合物の構造の誘導体として、本発明は、下記一般式(III)で示される構造を有するチオキサントンスルホニウム塩をさらに提供する。
【0083】
【0084】
[式中、R1、R2、R3、R4及びX-は、上記と同じ意味を有する。n及びmは、それぞれ独立して1~5の整数を表す。]
【0085】
上記チオキサントンスルホニウム塩は、一般式(I)中の1つのR3及び1つのR4が互いに連結してケト基を構成してなる構造と見なされてもよく、同時に、一般式(I)で示されるトリフェニルスルホニウム塩化合物に類似する有益な効果を取得できると考えられる。
【0086】
この化合物の製造方法については、特許文献WO2003072567に記載のプロセス合成を参考にすることができ、ここで、その全文を参考として引用する。
【0087】
代表的には、下記のプロセスにより合成することができる。
【0088】
【0089】
本願のもう1つの典型的な実施形態において、もう1種のトリフェニルスルホニウム塩化合物を提供し、それが一般式(II)で示される構造を有するビス-トリフェニルスルホニウム塩化合物である。
【0090】
【0091】
[式中、R1は、電子吸引基を表す。R2は、増幅基を表す。各R3は、それぞれ独立してハロゲン元素、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基のうちのいずれか1種を表し、任意選択として、R3を表す基における炭素-炭素結合には、-O-、-S-が介在してもよく、かつR3基は、互いに連結して環を形成してもよい。nは、0~5の整数を表す。各R4は、それぞれ独立してハロゲン元素、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基のうちのいずれか1種を表し、任意選択として、R4を表す基における炭素-炭素結合には、-O-、-S-が介在してもよく、かつR4基は、互いに連結して環を形成してもよい。mは、0~4の整数を表す。各R5は、それぞれ独立して水素、ハロゲン元素、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基のうちのいずれか1種を表し、任意選択として、R5を表す基における炭素-炭素結合には、-O-、-S-が介在してもよく、かつR5基は、互いに連結して環を形成してもよい。pは、0~4の整数を表す。A及びMは、それぞれ独立して連結基を表す。X-は、非求核性アニオンを表す。]
【0092】
使用より明らかなように、ビス-トリフェニルスルホニウム塩のベンゼン環基のメタ位及びパラ位に電子吸引基及び増幅基をそれぞれ導入することにより、無置換のトリフェニルスルホニウム塩と比べて、明らかに向上した溶解性及び感光性を有するとともに、背景技術に記載の従来の改進型代替品と比べても明らかに優れた性能を有する。
【0093】
以下、一般式(II)で示される構造における各可変基をより詳しく説明する。
【0094】
なお、本願の明細書において、C1-Cxは、1及びx以外に、さらに炭素数1~x間の整数値の全てを含み、例えば、C1-C8のアルキル基は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7及びC8の直鎖もしくは分岐状のアルキル基の全てを含む。紙数に限りがあるため、明細書では逐一に説明しないが、その意味は当業者にとって明確かつ一義的に特定し得ることであり、それに含まれる各数値は、更なる補正/限定の基礎とすることができると理解され得るであろう。
【0095】
可変基
(1)R1電子吸引基
ベンゼン環のメタ位に電子吸引基を導入することにより、スルホニウム塩の溶解性を顕著に向上させながら、感光性に悪影響を与えることはないと考えられる。
【0096】
適用する電子吸引基R1としては、ハロゲン元素、シアノ基、ニトロ基、ハロアルキル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基から選択される。
【0097】
ハロゲン元素は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であってもよい。環境保護性能から考慮すると、フッ素であることが好ましい。
【0098】
ハロアルキル基とは、少なくとも1つの水素原子がハロゲン元素により置換されたアルキル基を指し、前記アルキル基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などのようなC1-C8の直鎖アルキル基、又はイソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などのようなC3-C8の分岐アルキル基、又はシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのようなC3-C8のシクロアルキル基であってもよい。ハロアルキル基が、フッ素に置換されているアルキル基から選択された場合、化合物の感光性に有利であり、より好ましくはC1-C4のパーフルオロアルキル基である。
【0099】
アシル基は、
【0100】
【0101】
で示される構造を有してもよく、その中、R6は、水素、ハロゲン元素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。好ましくは、R6は、水素、フッ素、塩素、C1-C7の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、C1-C7の直鎖もしくは分岐状のハロアルキル基(より好ましくは、C1-C7の直鎖もしくは分岐状のパーフルオロアルキル基)、C6-C12のアリール基、又はC7-C16のアラルキル基を表す。
【0102】
アシルオキシ基におけるアシル基は、上述したアシル基と同じ意味を有する。
【0103】
スルホニル基は、メタンスルホニル基、ジフルオロメタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基などであってもよい。
【0104】
本発明の一般式(II)中、電子吸引基R1は、ハロゲン元素、シアノ基、ニトロ基、ハロアルキル基であることが好ましく、特に上記した好ましい基である。
【0105】
(2)R2増幅基
増幅基とは、化合物の溶解性及び/又は感光性に対して増幅作用を生じる基を指す。
【0106】
従来文献には、トリフェニルスルホニウム塩のベンゼン環基のパラ位に置換基を導入することにより、溶解性を向上させたが、感光性が明らかに低下したことが報告されている。意外に、ベンゼン環基のメタ位に電子吸引基R1が存在する場合、パラ位に増幅基R2を導入することにより、化合物の溶解性及び/又は感光性に対して増幅作用を生じ、かつ、この性能をさらに向上させると同時に、他の性能に悪影響を与えることはない。
【0107】
本発明において増幅作用を示す基として、R2は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアラルキル基から選択される。
【0108】
アルキル基は、好ましくは無置換のアルキル基であり、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などのC1-C8の直鎖アルキル基、又はイソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などのC3-C8の分岐アルキル基であってもよい。より好ましくは、増幅基としてのアルキル基は、C1-C4の直鎖もしくは分岐状のアルキル基であり、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基又はイソブチル基を含む。
【0109】
アルコキシ基は、好ましくは無置換のものであり、その中のアルキル基は、上記と同じ意味を有する。
【0110】
アラルキル基は、アリール基で末端封止されたアルキル基であり、増幅効果から見れば、好ましくはフェニル基で末端封止されたC1-C8のアルキル基であり、より好ましくはフェニル基で末端封止されたC1-C4の直鎖アルキル基であり、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基又はフェニルブチル基を含む。任意選択として、アラルキル基における少なくとも1つの水素原子がハロゲン元素(特にフッ素)により置換されていもよい。
【0111】
一般式(II)構造において、任意選択として、R3置換基を含有してもよく、その前提は化合物の光硬化使用性能に悪影響を与えないことである。
【0112】
この前提条件下、同一種類の代替品をより多く提供する点から、R3は、それぞれ独立して水素、ハロゲン元素、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基を表し、任意選択として、基における炭素-炭素結合には、-O-、-S-が介在してもよく、かつR3基は互いに連結して環を形成してもよい。
【0113】
nは、R3基の数を表し、0~5の整数であってもよい。
【0114】
当業者であれば、有機分野の基礎理論からわかるように、R3置換基の存在は、それが位置するベンゼン環の共役構造及びビス-トリフェニルスルホニウムの全体構造の特性に影響を与えることができる。いかなる理論に制限されることなく、このような影響による結果は、通常、予期しにくいことであり、試験の最終結果に依存する場合が多い。
【0115】
好ましくは、nは0であり、この場合、後の光硬化工程において置換基により引き起こされ得る副反応、又は効果に未知な悪影響を与えることを避けることができる。
【0116】
より好ましくは、nは2であり、かつ同一ベンゼン環上の2つのR3はそれぞれR1及びR2を表し、最も上方のベンゼン環のR1及びR2と上下対称し、即ち、本発明のビス-トリフェニルスルホニウム塩は、下記一般式(V)で示される構造である。
【0117】
【0118】
[式中、各置換基は、上記と同じ意味を有する。]
【0119】
意外に、ビス-トリフェニルスルホニウム塩は、上下4つのベンゼン環基において上記構造で示される対称する電子吸引基及び増幅基を含有する場合、従来技術における改進型トリフェニルスルホニウム塩と比べて、当該化合物は、さらに向上した溶解性及び感光性を示す。
【0120】
(4)R4置換基
一般式(II)構造において、任意選択として、R4置換基を含有してもよく、その前提は、化合物の光硬化使用性能に悪影響を与えないことである。
【0121】
この前提条件下、同一種類の代替品をより多く提供する点から、R4は、それぞれ独立して水素、ハロゲン元素、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基を表し、任意選択として、基における炭素-炭素結合には、-O-、-S-が介在してもよく、かつR4基は互いに連結して環を形成してもよい。
【0122】
ハロゲン元素は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であってもよい。コスト及び環境保護性能から考慮して、フッ素であることが好ましい。
【0123】
アシル基は、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ヘプタノイル基などのようなC2-C8の脂肪族アシル基、ベンゾイル基、メチルベンゾイル基、トリメチルベンゾイル基、α-フェニルプロピオニル基、ナフトイル基などのようなC7-C12の芳香族アシル基から選択されてもよい。
【0124】
アシルオキシ基におけるアシル基は、上述したアシル基と同じ意味を有してもよい。
【0125】
スルホニル基は、メタンスルホニル基、ジフルオロメタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基などであってもよい。
【0126】
アルキル基は、置換もしくは無置換のものであってもよい。前記アルキル基は、C1-C8の直鎖、分岐状又は環状のアルキル基から選択されてもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などである。好ましくは、前記アルキル基は、C1-C4の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、又はC3-C6の環状アルキル基から選択される。置換アルキル基における置換基は、ハロゲン元素(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、アミノ基、ヒドロキシル基などを含むが、これらに限られない。
【0127】
アルコキシ基は、置換もしくは無置換のものであってもよく、その中のアルキル基及び置換基は、上記と同じ意味を有してもよい。
【0128】
アリール基は、置換もしくは無置換のものであってもよい。前記アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基などであってもよい。置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのようなC1-C4のアルキル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のようなハロゲン元素、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基のようなC1-C3のアルコキシ基、アシル基、スルホニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、フェニル基などであってもよい。
【0129】
アラルキル基は、アリール基で末端封止されたアルキル基であり、置換もしくは無置換のものであってもよい。その中、アリール基部分及び置換基は、上記と同じ意味を有してもよい。その中のアルキル基部分として、好ましくはC1-C6のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基などを含む。特に好ましくは、アラルキル基は、ベンジル基、フェネチル基又はフェニルプロピル基であり、任意選択として、フェニル基上の少なくとも1つの水素が上述した置換基により置換されてもよい。
【0130】
本発明の一般式(II)中、R4は、水素、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基であることが好ましく、特に上記の好ましい基である。
【0131】
mは、R4基の数を表し、0~4の整数であってもよい。好ましくは、mは、0、1又は2を表し、より好ましくは0又は1を表す。mを1とした場合、R4は、A基側のオルト位に位置することが好ましい。
【0132】
(5)R5置換基
一般式(II)で示される構造において、任意選択として、R5置換基を含有してもよく、その前提は、化合物の光硬化使用性能に悪影響を与えないことである。
【0133】
選択範囲について、R5は、上記R4置換基と同じ意味を有してもよい。R4及び各R5は、それぞれ連結するフェニル基およびA基と環を形成してもよい。
【0134】
pは、R5基の数を表し、0~4の整数であってもよい。好ましくは、pは、0、1又は2を表し、より好ましくは0又は1を表す。pを1とした場合、R5は、A基側のオルト位に位置することが好ましい。
【0135】
(6)連結基
2つのトリフェニルスルホニウム構造の連結基として、Aは、直結(即ち、単結合)、
【0136】
【化13】
、アルキレン基又はアルケニレン基を表し、Mは、不存在、
【0137】
【0138】
【0139】
基を表し、そのうち、*は、結合位置を表し、R8、R9、R10は、それぞれ独立して水素、C1-C20の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、C3-C20のシクロアルキル基、C4-C20のシクロアルキルアルキル基又はC4-C20のアルキルシクロアルキル基を表す。
【0140】
好ましくは、アルキレン基は、C1-C4の直鎖アルキレン基であり、アルケニレン基は-CH=CH-である。
【0141】
Mは不存在を表す場合、2つのベンゼン環の間は連結基Aのみで連結されることを表す。Mは不存在ではない場合、Aは直結を表すことが好ましい。
【0142】
(7)結合位置
本発明の一般式(II)で示されるビス-トリフェニルスルホニウム塩化合物において、左右両側のS原子はそれぞれ3つのベンゼン環と連結する。中間の2つのベンゼン環において、S原子の結合位置は、基Aに対してパラ位であることが好ましい。
【0143】
(8)非求核性アニオン
X-は、非求核性アニオンを表し、Q-、ClO4
-、CN-、HSO4
-、NO3
-、CF3COO-、(BQ4)-、(SbQ6)-、(AsQ6)-、(PQ6)-、Al[OC(CF3)3]4
-、R6SO3
-、(R6SO2)3C-、(R6SO2)2N-、B(C6Q5)4
-、Ga(C6Q5)4
-又は[(Rf)bPF6-b]-を含むが、これらに限られない
【0144】
Qは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のようなハロゲン元素を表し、フッ素であることが好ましい。
【0145】
R6は、C1-C20のアルキル基、C1-C20のパーフルオロアルキル基、又はC6-C20のアリール基もしくは置換アリール基を表し、アルキル基及びパーフルオロアルキル基は、直鎖、分岐状又は環状のうちのいずれか1種であってもよい。
【0146】
Rfは、80%以上の水素原子がフッ素原子により置換されたアルキル基を表し、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基のような直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などのような分岐状アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのようなシクロアルキル基が挙げられる。Rfにおいて、アルキル基に固有の水素原子のモル数に基づき、フッ素原子により置換される好適な割合は、80%以上であり、好ましくは90%以上であり、より好ましくは100%である。もしフッ素原子により置換される割合がこれらの範囲内であれば、化合物の感光性がより良好となる。さらに、Rfとしては、CF3
-、CF3CF2
-、(CF3)2CF-、CF3CF2CF2
-、CF3CF2CF2CF2
-、(CF3)2CFCF2
-、CF3CF2(CF3)CF-及び(CF3)3C-が挙げられる。bは、1~5の整数を表し、かつb個のRf基は互いに同じであってもよいし、異なってもよい。
【0147】
Q-が表すアニオンとしては、Cl-、Br-、F-が挙げられる。
【0148】
(BQ4)-、(SbQ6)-、(AsQ6)-、(PQ6)-が表すアニオンとしては、BF4
-、SbF6
-、AsF6
-、PF-が挙げられる。
【0149】
R6SO3
-が表すアニオンとしては、CF3SO3
-、C2F5SO3
-、C3F7SO3
-、C4F9SO3
-、C6F5SO3
-、C3F7SO3
-、パラトルエンスルホネートアニオン、ベンゼンスルホネートアニオン、カンファースルホネートアニオン、メタンスルホネートアニオン、エタンスルホネートアニオン、プロパンスルホネートアニオン及びブタンスルホネートアニオンが挙げられる。
【0150】
(R6SO2)3C-が表すアニオンとしては、(CF3SO2)3C-、(C2F5SO2)3C-、(C3F7SO2)3C-及び(C4F9SO2)3C-が挙げられる。
【0151】
(R6SO2)2N-が表すアニオンとしては、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-、(C3F7SO2)2N-及び(C4F9SO2)2N-が挙げられる。
【0152】
B(C6Q5)4
-、Ga(C6Q5)4
-が表すアニオンとしては、B(C6F5)4
-、Ga(C6F5)4
-が挙げられる。
【0153】
[(Rf)bPF6-b]-が表すアニオンとしては、(CF3CF2)2PF4
-、(CF3CF2)3PF3
-、[(CF3)2CF]2PF4
-、[(CF3)2CF]3PF3
-、(CF3CF2CF2)2PF4
-、(CF3CF2CF2)3PF3
-、[(CF3)2CFCF2]2PF4
-、[(CF3)2CFCF2]3PF3
-、(CF3CF2CF2CF2)2PF4
-及び(CF3CF2CF2CF2)3PF3
-などが挙げられる。
【0154】
製造方法
本発明のビス-トリフェニルスルホニウム塩化合物の製造方法については特に制限されず、周知の有機合成プロセスを採用することができる。例えば、特許文献CN1871212Aに記載の製造方法を参考にして、ジアリールスルホキシドとジアリール基化合物とをスルホニオ化反応させてスルホニウム塩を得、さらに、必要に応じて塩交換反応によりアニオンを導入し、これにより、本発明のビス-トリフェニルスルホニウム塩化合物を得ることができる。
【0155】
応用
本発明のビス-トリフェニルスルホニウム塩化合物は、活性エネルギー線の照射によりルイス酸を放出する特性を有し、酸反応性有機物質として分解又は重合を行うことができるので、フォトレジスト用光酸発生剤又はカチオン型重合性光開始剤として使用可能である。
【0156】
適用するエネルギー線としては、低圧、中圧、高圧又は超高圧の水銀ランプ、メタルハライドランプ、LED灯、キセノンランプ、カーボンアークランプ、蛍光ランプ、半導体固体レーザ、アルゴンレーザ、He-Cdレーザ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ又はF2レーザなどで得られた紫外線-可視光領域のエネルギー線を使用してもよいし、電子ビーム又はX線等の高エネルギー放射線を使用してもよい。
【0157】
本発明のビス-トリフェニルスルホニウム塩化合物と感光性単量体(例えばカチオン重合性化合物)とを混合して感光性組成物を形成し、平版、凸版用印刷版、プリント基板及びIC、LSI用のフォトレジスト、光硬化性インキ、塗料、バインダーの作製等の分野に使用可能である。
【0158】
本発明の上記一般式(II)で示されるビス-トリフェニルスルホニウム塩化合物は、優れた溶解性、高い酸発生効率及び感光性を有し、非常に良い市場応用価値を有する。
【0159】
実施例
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の保護範囲を制限するものと読み取るべきではない。
【0160】
一般式(I)を有するトリフェニルスルホニウム塩化合物について
【0161】
製造実施例
【0162】
実施例I-1:スルホニウム塩A-1の製造
(1)中間体a1
【0163】
【0164】
500mLの4つ口フラスコに110.0gのo-フルオロトルエン、59.5gのジクロロスルホキシド、200mLのジクロロメタンを投入し、氷水浴で冷却し、温度を5℃程度に制御し、66.5gのトリクロロアルミニウムを複数回分けて添加し、約1h後に添加終了し、引き続いて2h撹拌し、反応が完全になるまで液相追跡した。生成物のジクロロメタン溶液を500gの氷水に入れて、撹拌し続け、ジクロロメタン層を分離し、ジクロロメタン層を水で洗浄し、生成物のジクロロメタン溶液を回転蒸発し、106gの淡黄色固体、即ち中間体a1を得、収率が79.7%であり、HPLC純度が98%であった。
【0165】
中間体生成物の構造は、核磁気共鳴水素スペクトル及び質量スペクトルにより確認され、具体的なキャラクタリゼーション結果は以下の通りである。
【0166】
1H-NMR(CDCl3,500MHz):2.3312(6H,s),7.2438-7.3305(6H,m)。
【0167】
MS(m/Z):267(M+H)+。
【0168】
(2)中間体b1
【0169】
【0170】
500mLの4つ口フラスコに66.5gの中間体a1、200mLの無水酢酸を投入し、氷水浴中で撹拌し、温度を0℃程度に制御し、35gの濃硫酸(質量分率70%)を滴下し、約1h後に滴下を終了し、滴下終了後に反応系に27gのメトキシベンゼンを複数回に分けて添加し、引き続いて12h撹拌し、次いで、100mLの脱イオン氷水を徐々に滴下し、溶液をベンゼンで2~3回抽出し、水層を分離し、ベンゼン層を合併して水で1回洗浄し、水層を合併して中間体b1の水溶液を得た。
【0171】
(3)目標生成物、即ち化合物A-1
【0172】
【0173】
上記中間体b1の水溶液に46gのKPF6固体を添加してイオン交換を行い、撹拌しながら脱イオン水を適宜補充し、KPF6固体が溶解するにつれて、目標生成物A-1が徐々に析出し、ろ過、乾燥して77.8gの白色固体を得、収率が62.0%であり、HPLC純度が99%であった。
【0174】
目標生成物の構造は、核磁気共鳴水素スペクトル及び質量スペクトルにより確認され、具体的なキャラクタリゼーション結果は以下の通りである。
【0175】
1H-NMR(DCl3,500MHz):2.3312(6H,s),3.7345(3H,s),6.8038-7.2818(10H,m)。
【0176】
MS(m/Z):357(M)+。
【0177】
実施例I-2:スルホニウム塩A-2の製造
(1)中間体a2
【0178】
【0179】
1500mLの4つ口フラスコに12.7gのイソプロピル基チオキサントン(ITX)及び800mLのアセトニトリルと水との混合溶液(アセトニトリル75%、水25%)を投入し、撹拌しながら35℃に加熱し、完全に溶解した後、107.9gの硝酸アンモニウムセリウムを添加し、室温下で撹拌しながら約1h反応させ、反応が完全になるまで液相追跡した。反応終了後、500mLの水、ジエチルエーテルを添加して混合物を複数回抽出し、有機層を合併し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、回転蒸発して12.5gの中間体a2を得、収率が79.7%であり、HPLC純度が98%であった。
【0180】
中間体生成物の構造は、核磁気共鳴水素スペクトルにより確認され、具体的なキャラクタリゼーション結果は以下の通りである。
【0181】
1H-NMR(CDCl3,500MHz):1.2167-2.8743(7H,m),7.5912-7.9532(7H,m)。
【0182】
(2)中間体b2
【0183】
【0184】
500mLの4つ口フラスコに67.5gの中間体a1、200mLの無水酢酸を投入し、氷水浴中で撹拌し、温度を0℃程度に制御し、36gの濃硫酸(質量分率70%)を滴下し、約1h後に滴下を終了し、滴下終了後に反応系に27.5gのo-フルオロトルエンを複数回に分けて添加し、引き続いて12h撹拌し、次いで、100mLの脱イオン氷水を徐々に滴下し、溶液をベンゼンで2~3回抽出して、水層を分離し、ベンゼン層を合併して水で1回洗浄し、水層を合併して中間体b1の水溶液を得た。
【0185】
(3)目標生成物、即ち化合物A-2
【0186】
【0187】
上記中間体b2の水溶液に46gのKPF6固体を添加してイオン交換を行い、撹拌しながら脱イオン水を適宜補充し、KPF6固体が溶解するにつれて、目標生成物A-2が徐々に析出し、ろ過、乾燥して77.8gの白色固体を得、収率が62.0%であり、HPLC純度が99%であった。
【0188】
目標生成物の構造は、核磁気共鳴水素スペクトル及び質量スペクトルにより確認され、具体的なキャラクタリゼーション結果は以下の通りである。
【0189】
1H-NMR(DCl3,500MHz):1.2034-1.2045(6H,d),2.3312(3H,s),2.8732-2.8745(1H,m),6.9908-7.7221(10H,m)。
【0190】
MS(m/Z):363(M)+。
【0191】
実施例1の製造方法を参照して、表1に示す化合物3~38を製造した。
【0192】
目標生成物の構造及びそのMS(m/Z)と1H-NMRデータを表1に示す。
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
一般式(II)を有するトリフェニルスルホニウム塩化合物について
【0202】
製造実施例
【0203】
実施例II-1:スルホニウム塩C-1の製造
(1)中間体a1
【0204】
【0205】
500mLの4つ口フラスコに110.0gのo-フルオロトルエン、59.5gのジクロロスルホキシド、200mLのジクロロメタンを投入し、氷水浴で冷却し、温度を5℃程度に制御し、66.5gのトリクロロアルミニウムを複数回に分けて添加し、約1h後に添加終了し、引き続いて2h撹拌し、反応が完全になるまで液相追跡した。生成物のジクロロメタン溶液を500gの氷水に入れて、撹拌し続け、ジクロロメタン層を分離し、ジクロロメタン層を水で洗浄し、生成物のジクロロメタン溶液を回転蒸発し、106gの淡黄色固体、即ち、中間体a1を得、収率が79.7%であり、HPLC純度が98%であった。
【0206】
中間体の生成物構造は、核磁気共鳴水素スペクトル及び質量スペクトルにより確認され、具体的なキャラクタリゼーション結果は以下の通りである。
【0207】
1H-NMR(CDCl3,500MHz):2.3512(6H,s),7.2438-7.3305(6H,m)。
【0208】
MS(m/Z):267(M+H)+。
【0209】
(2)中間体b’1
【0210】
【0211】
500mLの4つ口フラスコに66.5gの中間体a1、200mLの無水酢酸を投入し、氷水浴中で撹拌し、温度を0℃程度に制御し、35gの濃硫酸(質量分率70%)を滴下し、約1h後に滴下を終了し、滴下終了後に反応系に23.3gのジフェニルスルフィドを複数回に分けて添加し、引き続いて12h撹拌し、次いで、100mLの脱イオン氷水を徐々に滴下し、溶液をベンゼンで2~3回抽出し、水層を分離し、ベンゼン層を合併して水で1回洗浄し、水層を合併して中間体b’1の水溶液を得た。
【0212】
(3)目標生成物、即ち化合物C-1
【0213】
【0214】
上記中間体b’1の水溶液に179.5gのカリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート固体を添加してイオン交換を行い、撹拌しながら脱イオン水を適宜補充し、カリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート固体の溶解についれて、目標生成物C-1が徐々に析出し、ろ過、乾燥して158gの白色固体を得、収率が62.0%であり、HPLC純度が99%であった。
【0215】
目標生成物の構造は、核磁気共鳴水素スペクトル及び質量スペクトルにより確認され、具体的なキャラクタリゼーション結果は以下の通りである。
【0216】
1H-NMR(CDCl3,500MHz):2.3512(12H,s),6.8038-7.2818(20H,m)。
【0217】
MS(m/Z):684(M)+。
【0218】
実施例II-2
実施例II-1の製造方法を参照して、ジクロロスルホキシドと相応する置換ベンゼンとを出発原料として、表2に示す化合物C2~C25を製造した。
目標生成物の構造及びそのMS(m/Z)と1H-NMRデータを表2に示す。
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
性能の評価
例示的な光硬化組成物を調製することにより、本発明の一般式(I)、(II)で示される化合物の、光開始剤としての使用性能を測定した。
【0225】
1.溶解性能の測定
本発明の化合物A-1~A-38、C-1~C-25及び比較例化合物B-1とB-2、D-1とD-2の、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン単量体における溶解度を測定し、20℃の条件下、100g溶媒中に溶解した最大グラム数として計算した。
【0226】
【0227】
測定結果を表3及び表4に示す。
【0228】
2.酸発生率の測定
上記化合物をそれぞれ0.02mmol/gのアセトニトリル溶液に調製した。調製したアセトニトリル溶液 5.00gを、内径100mmのシャーレに入れて、その後、紫外線ランプ(型番FL10BL)の照射により、0.8mw/cm2の照度で合計200mj/cm2のエネルギーを受けた。露光後の溶液について、BTBを指示薬とし、0.05Nの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定を行った。得られた測定滴定値から、光照射前の溶液について同様に滴定をした値をブランク値として差し引き、下記式により換算して、酸発生率を求めた。
【0229】
酸発生率%=(酸滴定値-ブランク値)(mol)/化合物理論モル数(mol)×100%。
【0230】
測定結果を表3及び表4に示す。
【0231】
3.感光度の測定
例示的なフォトレジストを調製することにより、本発明の一般式(I)及び(II)で示される化合物の感光度を測定した。
【0232】
フォトレジストの組成:
樹脂A 40質量部、
樹脂B 60質量部、
光開始剤 1質量部、
溶媒(PGMEA) 150質量部。
その中、
樹脂Aは、
【0233】
【0234】
を表し、
【0235】
樹脂Bは、m-クレゾール及びp-クレゾールを1:1のモル比でホルムアルデヒド及び酸触媒条件で縮合して得られたノボラック樹脂を表し、分子量が10000程度であり、
【0236】
光開始剤は、上記化合物A-1~A-38、C-1~C-25又は比較例化合物B-1とB-2、D-1とD-2である。
【0237】
各成分を上記割合で均一に撹拌し、孔径1μmのメンブレンフィルターを通過させてろ過を行い、固形分40%のレジスト組成物に製造した。
【0238】
レジスト組成物をスピンコーターによりシリコンウエハ基板上に均一に塗布し、乾燥させて厚さ20μmのフォトレジスト塗布層を得た。130℃で6minプリベークし、その後、TME-150RSCを使用してパターン露光(i線)を行い、ホットプレートを用いて75℃で5min露光した。その後、質量分率が2.38%の水酸化テトラメチルアンモニウム溶液を用いて5min現像し、さらに、流れる水で洗浄し、窒素ガスで乾燥となるまで吹き続き、10μmのラインパターンを得た。パターン残渣が見えない最低限の露光量、即ち、レジストパターンの形成に必要な最低露光量をを測定し、数値が低ければ低いほど、開始剤の感光度が高いことを表す。
【0239】
測定結果を表3及び表4に示す。
【0240】
【0241】
【0242】
表3の測定結果から明らかなように、本発明のスルホニウム塩化合物は、良好な溶解度を示しており、かつ、酸発生率及び感光性に優れ、従来の改進型トリフェニルスルホニウム塩B-1及びB-2と比べて、性能が明らかに優れ、広く応用される見込みがある。
【0243】
【0244】
表4の測定結果から明らかなように、本発明の一般式(II)で示されるビス-トリフェニルスルホニウム塩化合物は、良好な溶解度を示しており、かつ、酸発生率及び感光性に優れ、従来の改進型トリフェニルスルホニウム塩D-1及びD-2と比べて、性能が明らかに優れ、広く応用される見込みがある。
【0245】
以上の内容は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を制限するためのものではなく、当業者にとって、本発明は種々の変更及び変化を行うことができる。本発明の趣旨及び原則内で行われたいかなる変更、均等置換、改進等は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
本開示は以下の態様<1>~<25>も含む。
<1>
下記一般式(I)又は一般式(II)又は一般式(III)で示される構造を有するトリフェニルスルホニウム塩化合物。
【化27】
【化28】
【化29】
[式中、
R
1
は、電子吸引基を表す。
R
2
は、増幅基を表す。
各R
3
は、それぞれ独立してハロゲン元素、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基のうちのいずれか1種を表し、任意選択として、前記一般式(I)中のR
3
を表す基における-CH
2
-は、-O-、-S-により置換されてもよく、前記一般式(II)中のR
3
を表す基における炭素-炭素結合には、-O-、-S-が介在してもよく、かつ、R
3
基は、互いに連結して環を形成してもよい。
各R
4
及びR
5
は、それぞれ独立してハロゲン元素、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基のうちのいずれか1種を表し、任意選択として、前記一般式(I)中の前記R
4
を表す基における-CH
2
-は、-O-、-S-又は-CH=CH-により置換されてもよく、前記一般式(II)中のR
4
及び前記R
5
を表す基における炭素-炭素結合には、-O-、-S-が介在してもよく、かつR
4
基は、互いに連結して環を形成してもよく、R
5
基は、互いに連結して環を形成してもよい。
前記一般式(I)中、n及びmは、それぞれ独立して、0~5のいずれかの整数を表し、前記一般式(II)中、nは、0~5のいずれかの整数を表し、m及びpは、それぞれ独立しては0~4のいずれかの整数を表し、前記一般式(III)中、n及びmは、それぞれ独立して、1~5の整数を表す。
X
-
は、非求核性アニオンを表す。
一般式(II)中、A及びMは、それぞれ独立して連結基を表す。]
<2>
前記R
1
は、ハロゲン元素、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、ハロアルキル基、アシル基、アシルオキシ基、スルホニル基のうちから選択されるいずれか1種であり、好ましくは、前記R
1
は、ハロゲン元素、シアノ基、ニトロ基、ハロアルキル基、アシル基のうちから選択されるいずれか1種であることを特徴とする<1>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<3>
前記R
1
としての前記ハロゲン元素は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、好ましくは、フッ素であることを特徴とする<2>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<4>
前記R
1
としての前記アルコキシ基は、C
1
-C
8
の直鎖もしくは分岐状のアルコキシ基のうちのいずれか1種であり、好ましくは、C
1
-C
4
の直鎖もしくは分岐状のアルコキシ基のうちのいずれか1種であることを特徴とする<2>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<5>
前記R
1
としての前記ハロアルキル基におけるアルキル基は、C
1
-C
8
の直鎖アルキル基、又はC
3
-C
8
の分岐アルキル基、又はC
3
-C
8
のシクロアルキル基であり、好ましくは、ハロアルキル基は、C
1
-C
4
のパーフルオロアルキル基のうちのいずれか1種であることを特徴とする<2>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<6>
前記R
1
としての前記アシル基又は前記アシルオキシ基におけるアシル基は、それぞれ独立して
【化30】
又は
【化31】
[式中、R
6
は、水素、ハロゲン元素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基のうちのいずれか1種を表し、好ましくは、R
6
は、水素、フッ素、塩素、C
1
-C
7
の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、又はC
1
-C
7
の直鎖もしくは分岐状のフルオロアルキル基のうちのいずれか1種を表し、前記フルオロアルキル基は、C
1
-C
7
の直鎖もしくは分岐状のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。]で示される構造を有することを特徴とする<2>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<7>
前記R
1
としての前記スルホニル基は、メタンスルホニル基、ジフルオロメタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基であることを特徴とする<2>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<8>
前記R
2
は、ハロゲン元素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアラルキル基のうちから選択されるいずれか1種であり、好ましくは、前記一般式(II)中の前記R
2
は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアラルキル基のうちから選択されるいずれか1種であり、好ましくは、前記R
2
としての前記ハロゲン元素はフッ
素であることを特徴とする<1>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<9>
前記R
2
としての前記アルキル基は、無置換のC
1
-C
8
の直鎖アルキル基もしくはC
3
-C
8
の分岐アルキル基であり、好ましくは、C
1
-C
4
の直鎖もしくは分岐状のアルキル基であることを特徴とする<8>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<10>
前記R
2
としての前記アルコキシ基は、無置換であり、前記アルコキシ基におけるアルキル基は、無置換のC
1
-C
8
の直鎖アルキル基又はC
3
-C
8
の分岐アルキル基であり、好ましくは、C
1
-C
4
の直鎖もしくは分岐状のアルキル基であることを特徴とする<8>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<11>
前記R
2
としての前記アラルキル基は、フェニル基で末端封止されたC
1
-C
8
のアルキル基であり、好ましくはフェニル基で末端封止されたC
1
-C
4
の直鎖アルキル基であることを特徴とする<8>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<12>
前記一般式(I)及び前記一般式(II)中のnは0であることを特徴とする<1>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<13>
前記一般式(I)及び前記一般式(II)中のnは2であり、かつ、2つのR
3
はそれぞれ前記R
1
及び前記R
2
を表し、前記化合物は、一般式(IV)で示される構造又は一般式(V)で示される構造を有することを特徴とする<1>~<11>のいずれか1つに記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
【化32】
<14>
前記mは、0、1又は2を表し、好ましくは0又は1を表し、mを1とした場合、一般式(I)中のR
4
は、ベンゼン環基上のSに対してパラ位に位置し、一般式(II)中のR
4
は、ベンゼン環基上のA基に対してオルト位に位置することを特徴とする<1>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<15>
前記X
-
は、M
-
、ClO
4
-
、CN
-
、HSO
4
-
、NO
3
-
、CF
3
COO
-
、(BM
4
)
-
、(SbM
6
)
-
、(AsM
6
)
-
、(PM
6
)
-
、Al[OC(CF
3
)
3
]
4
-
、R
7
SO
3
-
、(R
7
SO
2
)
3
C
-
、(R
7
SO
2
)
2
N
-
、B(C
6
M
5
)
4
-
、Ga(C
6
M
5
)
4
-
又は[(Rf)
b
PF
6
-
b
]
-
を表し、その中、Mは、ハロゲン元素を表し、R
7
は、C
1
-C
20
のアルキル基、C
1
-C
20
のパーフルオロアルキル基、C
6
-C
20
のアリール基もしくは置換アリール基のうちのいずれか1種を表し、Rfは、80%以上の水素原子がフッ素原子により置換されたアルキル基を表し、bは、1~5のいずれかの整数を表し、かつ、各Rf基は、互いに同じであってもよいし、異なってもよいことを特徴とする<1>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<16>
前記一般式(I)及び前記一般式(III)中、各前記R
4
は、それぞれ独立してアシ
ル基、アシルオキシ基、スルホニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基のうちから選択されるいずれか1種であり、前記R
4
を形成する各基における-CH
2
-は、-O-、-S-又は-CH=CH-により置換されてもよく、前記置換に用いられる置換基は、C
1
-C
4
のアルキル基、ハロゲン元素、C
1
-C
3
のアルコキシ基、アシル基、スルホニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、フェニル基のうちのいずれか1種であり、R
4
が複数である場合、隣接する前記R
4
は、前記R
4
に連結するフェニル基と環を形成してもよく、好ましくは、前記アシル基及びアシルオキシ基におけるアシル基は、C
2
-C
8
の脂肪族アシル基、C
7
-C
12
の芳香族アシル基であり、好ましくは、前記スルホニル基は、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基であり、前記アルキル基及び前記アルコキシ基におけるアルキル基は、C
1
-C
8
の直鎖アルキル基、C
3
-C
8
の分岐アルキル基、又はC
3
-C
8
のシクロアルキル基であることが好ましいことを特徴とする<1>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<17>
前記一般式(II)中、各前記R
4
及び各前記R
5
は、それぞれ独立してニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基のうちから選択されるいずれか1種であり、前記R
4
及び前記R
5
を形成する各基における-CH
2
-は、-O-、-S-又は-CH=CH-により置換されてもよく、前記R
4
及び各前記R
5
は、それぞれに連結するフェニル基およびAと環を形成してもよいことを特徴とする<1>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<18>
前記pは、0、1又は2を表し、好ましくは0又は1を表し、前記pは1を表す場合、前記R
5
は、ベンゼン環基上のA基に対してオルト位に位置することを特徴とする<1>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<19>
前記Aは、直結、
【化33】
、アルキレン基又はアルケニレン基を表し、好ましくは、前記アルキレン基は、C
1
-C
4
の直鎖アルキレン基であり、好ましくは、前記アルケニレン基は、-CH=CH-であることを特徴とする<1>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<20>
Mは、不存在でるか、又は
【化34】
又は
【化35】
基を表し、その中、R
8
、R
9
、R
10
は、それぞれ独立して水素、C
1
-C
20
の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、C
3
-C
20
のシクロアルキル基、C
4
-C
20
のシクロアルキルアルキル基又はC
4
-C
20
のアルキルシクロアルキル基のうちのいずれか1種を表すことを特徴とする<1>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<21>
Mは不存在ではなく、Aは直結であることを特徴とする<20>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<22>
前記一般式(II)中、Aと直接に連結する2つのベンゼン環において、S原子の結合位置は、A基に対してパラ位であることを特徴とする<1>に記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物。
<23>
<1>~<22>のいずれか1つに記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物の、レジスト酸発生剤及び/又はカチオン性重合用光重合開始剤としての使用。
<24>
<1>~<22>のいずれか1つに記載のトリフェニルスルホニウム塩化合物を含む感光性組成物。
<25>
<24>に記載の感光性組成物の、平版、凸版用印刷版、プリント基板、フォトレジスト、光硬化性インキ、塗料又はバインダーの作製への使用。