(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】シリコン複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/02 20060101AFI20230908BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230908BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
C01B33/02 Z
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
(21)【出願番号】P 2021550118
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 KR2020014453
(87)【国際公開番号】W WO2021091127
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】10-2019-0139739
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521378288
【氏名又は名称】コリア メタル シリコン カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チェ, チョン オ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ミン ソン
(72)【発明者】
【氏名】ユ, チョン シク
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-506035(JP,A)
【文献】特開2004-259475(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031597(WO,A1)
【文献】特表2019-530151(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0106230(US,A1)
【文献】特開2018-041712(JP,A)
【文献】特開2015-118911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン原料を湿式粉砕し、シリコン溶液を形成する段階と、
前記シリコン溶液を噴霧乾燥させ、シリコン微粉を形成する段階と、
前記シリコン微粉を解砕する段階と、
前記シリコン微粉を
黒鉛に均一に分散させてコアを形成した後、 前記コアを第1ピッチ
で乾式コーティング
することにより第1シェルを形成して分散体を形成する段階と、
前記分散体を第2ピッチ
で乾式コーティング
することにより第2シェルを形成して第1複合体を形成する段階と、
前記第1複合体を炭化させ、第2複合体を形成する段階と、
事前に設定された粒度基準により、前記第2複合体を分級する段階と、を含
む、シリコン複合体の製造方法。
【請求項2】
前記シリコン溶液を形成する段階は、
前記シリコン原料にボールと溶媒とを添加して湿式粉砕するが、前記シリコン原料と前記溶媒との比率は、重量%で1:4ないし1:6であり、
1.5時間ないし8.5時間、1,900rpmないし3,200rpmの粉砕速度で湿式粉砕を実施する、請求項1に記載のシリコン複合体の製造方法。
【請求項3】
前記シリコン溶液を形成する段階は、
1.5時間ないし4.5時間、1,900rpmないし2,100rpmの粉砕速度で湿式粉砕を実施する、請求項2に記載のシリコン複合体の製造方法。
【請求項4】
前記シリコン微粉を形成する段階は、
前記シリコン溶液を噴霧した後、熱風を加え、球状の粒子を有する前記シリコン微粉を得るが、前記シリコン微粉の粒度は、100nmないし400nmである、請求項1に記載のシリコン複合体の製造方法。
【請求項5】
前記コアを形成する段階において、
前記シリコン微粉と前記黒鉛との含有量の比率は、重量%で26:29ないし35:23である、請求項1に記載のシリコン複合体の製造方法。
【請求項6】
前記第1ピッチ
で乾式コーティングする段階は、
120℃以上150℃の温度で、前記第1ピッチ
で前記コアを乾式コーティングするが、前記分散体において、前記第1ピッチの含有量は、重量%で15%以上16%以下である、請求項1に記載のシリコン複合体の製造方法。
【請求項7】
前記第1複合体を形成する段階において、
前記第2ピッチの機械的強度は、前記第1ピッチの機械的強度より高い、請求項1に記載のシリコン複合体の製造方法。
【請求項8】
前記第1複合体を形成する段階において、
240℃以上270℃の温度で、前記第2ピッチ
で前記分散体を乾式コーティングするが、前記第1複合体において、前記第2ピッチの含有量は、重量%で16%以上17%以下である、請求項1に記載のシリコン複合体の製造方法。
【請求項9】
前記第1複合体を形成する段階において、
前記第1ピッチの含有量と、前記第2ピッチの含有量との和は、重量%で32%以上35%以下である、請求項1に記載のシリコン複合体の製造方法。
【請求項10】
前記第2複合体を形成する段階は、
前記第1複合体を800℃ないし1,200℃の温度で1時間ないし3時間、熱処理する、請求項1に記載のシリコン複合体の製造方法。
【請求項11】
前記解砕する段階、前記分散体を形成する段階、前記第1複合体を形成する段階、及び前記第2複合体を形成する段階のうち少なくともいずれか1以上の段階を、不活性気体雰囲気で実施する、請求項1に記載のシリコン複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、四次産業革命による情報通信技術の発達に伴い、エネルギーインフラ構築のために、エネルギー保存システム(ESS:energy storage system)が注目されている。該エネルギー保存システムは、エネルギーインフラを構成する要素と同時に、次世代エネルギー網を具現するための重要な要素である。二次電池は、そのようなエネルギー保存システムを具現するための核心技術として評価されている。
【0003】
既存のリチウム二次電池に使用される負極活物質は、炭素系素材である黒鉛が主に使用されたが、低いリチウム保存能の限界(理論容量約370mAh/g)が問題である。それにより、リチウム二次電池の容量を増やすために、非炭素系負極活物質のうち一つであるシリコン素材に係わる研究が活発になされている。
【0004】
シリコンは、炭素対比で、優秀なリチウム保存能(理論容量約4,200mAh/g)を有しており、リチウム二次電池の容量増大に寄与することができる素材として評価されている。しかし、シリコンは、既存の黒鉛対比で、10倍以上高い重量当たりリチウム保存能を有するために、充放電時にリチウムと反応し、大きい体積変化(300%ないし400%)を示す。それにより、リチウム二次電池の電極が損傷されたり破損されたりするという問題があり、今のところ商用化がなされていない。
【0005】
前述の背景技術は、発明者が、本発明の導出のために保有していたか、あるいは本発明の導出過程において習得した技術情報であり、必ずしも本発明の出願前、一般公衆に公開された公知技術であるとは言うことはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シリコン素材の体積変化を最小化させることができ、高容量の二次電池を具現することができるシリコン複合体の製造方法を提供することを目的とする。ただし、そのような課題は、例示的なものであり、それにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施例による、シリコン複合体の製造方法は、シリコン原料を湿式粉砕し、シリコン溶液を形成する段階、前記シリコン溶液を噴霧乾燥させ、シリコン微粉を形成する段階、前記シリコン粉末を解砕する段階、前記シリコン微粉を第1ピッチにコーティングし、分散体を形成する段階、前記分散体を第2ピッチにコーティングし、第1複合体を形成する段階、前記第1複合体を炭化させ、第2複合体を形成する段階、及び事前に設定された粒度基準により、前記第2複合体を分級する段階を含む。
【0008】
本発明の一実施例による、シリコン複合体の製造方法において、前記シリコン溶液を形成する段階は、前記シリコン原料にボールと溶媒とを添加して湿式粉砕するものの、前記シリコン原料と前記溶媒との比率は、1:4ないし1:6であり、1.5時間ないし8.5時間、1,900rpmないし3,200rpmの粉砕速度で湿式粉砕を実施することができる。
【0009】
本発明の一実施例による、シリコン複合体の製造方法において、前記シリコン溶液を形成する段階は、1.5時間ないし4.5時間、1,900rpmないし2,100rpmの粉砕速度で湿式粉砕を実施することができる。
【0010】
本発明の一実施例による、シリコン複合体の製造方法において、前記シリコン微粉を形成する段階は、前記シリコン溶液を噴霧した後、熱風を加え、球状の粒子を有する前記シリコン微粉を得るものの、前記シリコン微粉の粒度は、100nmないし400nmでもある。
【0011】
本発明の一実施例による、シリコン複合体の製造方法において、前記分散体を形成する段階は、前記シリコン微粉を人造黒鉛に分散させ、コアを形成する段階、及び前記コアを前記第1ピッチに乾式コーティングする段階を含んでもよい。
【0012】
本発明の一実施例による、シリコン複合体の製造方法において、前記コアを形成する段階において、前記シリコン微粉と前記黒鉛との含有量の比率は、26:29ないし35:23でもある。
【0013】
本発明の一実施例による、シリコン複合体の製造方法において、前記第1ピッチに乾式コーティングする段階は、120℃以上150℃の温度で、前記第1ピッチに前記コアを乾式コーティングするものの、前記第1ピッチの含有量は、15%以上16%以下でもある。
【0014】
本発明の一実施例による、シリコン複合体の製造方法において、前記第1複合体を形成する段階において、前記第2ピッチの機械的強度は、前記第1ピッチの機械的強度よりも高い。
【0015】
本発明の一実施例による、シリコン複合体の製造方法において、前記第1複合体を形成する段階において、240℃以上270℃の温度で、前記第2ピッチに前記分散体を乾式コーティングするものの、前記第2ピッチの含有量は、16%以上17%以下でもある。
【0016】
本発明の一実施例による、シリコン複合体の製造方法において、前記第1複合体を形成する段階において、前記第1ピッチの含有量と前記第2ピッチの含有量との和は、32%以上35%以下でもある。
【0017】
本発明の一実施例による、シリコン複合体の製造方法において、前記第2複合体を形成する段階は、前記第1複合体を800℃ないし1,200℃の温度で1時間ないし3時間、熱処理することができる。
【0018】
本発明の一実施例による、シリコン複合体の製造方法において、前記解砕する段階、前記分散体を形成する段階、前記第1複合体を形成する段階、及び前記第2複合体を形成する段階のうち少なくともいずれか1以上の段階を不活性気体雰囲気で実施することができる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
シリコン原料を湿式粉砕し、シリコン溶液を形成する段階と、
前記シリコン溶液を噴霧乾燥させ、シリコン微粉を形成する段階と、
前記シリコン微粉を解砕する段階と、
前記シリコン微粉を第1ピッチにコーティングし、分散体を形成する段階と、
前記分散体を第2ピッチにコーティングし、第1複合体を形成する段階と、
前記第1複合体を炭化させ、第2複合体を形成する段階と、
事前に設定された粒度基準により、前記第2複合体を分級する段階と、を含む、シリコン複合体の製造方法。
(項目2)
前記シリコン溶液を形成する段階は、
前記シリコン原料にボールと溶媒とを添加して湿式粉砕するが、前記シリコン原料と前記溶媒との比率は、重量%で1:4ないし1:6であり、
1.5時間ないし8.5時間、1,900rpmないし3,200rpmの粉砕速度で湿式粉砕を実施する、項目1に記載のシリコン複合体の製造方法。
(項目3)
前記シリコン溶液を形成する段階は、
1.5時間ないし4.5時間、1,900rpmないし2,100rpmの粉砕速度で湿式粉砕を実施する、項目2に記載のシリコン複合体の製造方法。
(項目4)
前記シリコン微粉を形成する段階は、
前記シリコン溶液を噴霧した後、熱風を加え、球状の粒子を有する前記シリコン微粉を得るが、前記シリコン微粉の粒度は、100nmないし400nmである、項目1に記載のシリコン複合体の製造方法。
(項目5)
前記分散体を形成する段階は、
前記シリコン微粉を黒鉛に分散させ、コアを形成する段階と、
前記コアを前記第1ピッチに乾式コーティングする段階と、を含む、項目1に記載のシリコン複合体の製造方法。
(項目6)
前記コアを形成する段階において、
前記シリコン微粉と前記黒鉛との含有量の比率は、重量%で26:29ないし35:23である、項目5に記載のシリコン複合体の製造方法。
(項目7)
前記第1ピッチに乾式コーティングする段階は、
120℃以上150℃の温度で、前記第1ピッチに前記コアを乾式コーティングするが、前記分散体において、前記第1ピッチの含有量は、重量%で15%以上16%以下である、項目5に記載のシリコン複合体の製造方法。
(項目8)
前記第1複合体を形成する段階において、
前記第2ピッチの機械的強度は、前記第1ピッチの機械的強度より高い、項目1に記載のシリコン複合体の製造方法。
(項目9)
前記第1複合体を形成する段階において、
240℃以上270℃の温度で、前記第2ピッチに前記分散体を乾式コーティングするが、前記第1複合体において、前記第2ピッチの含有量は、重量%で16%以上17%以下である、項目1に記載のシリコン複合体の製造方法。
(項目10)
前記第1複合体を形成する段階において、
前記第1ピッチの含有量と、前記第2ピッチの含有量との和は、重量%で32%以上35%以下である、項目1に記載のシリコン複合体の製造方法。
(項目11)
前記第2複合体を形成する段階は、
前記第1複合体を800℃ないし1,200℃の温度で1時間ないし3時間、熱処理する、項目1に記載のシリコン複合体の製造方法。
(項目12)
前記解砕する段階、前記分散体を形成する段階、前記第1複合体を形成する段階、及び前記第2複合体を形成する段階のうち少なくともいずれか1以上の段階を、不活性気体雰囲気で実施する、項目1に記載のシリコン複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施例によるシリコン複合体の製造方法は、シリコン素材の体積変化を最小化させ、バッテリの寿命と容量とを向上させることができるシリコン複合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施例による、シリコン複合体の製造方法を示す図面である。
【
図2】
図1の第2複合体のSEM(scanning electron microscope)写真である。
【
図3】
図1の分散体と第1複合体とを示す図面である。
【
図4】
図1のシリコン微粉の粒度分布を示す図面である。
【
図5】発明例と比較例1との二次電池の容量特性を比較する図面である。
【
図6】発明例と比較例1との二次電池の効率特性を比較する図面である。
【
図7】従来のシリコン複合体の粒度分布を示す図面である。
【
図8】
図7の従来のシリコン複合体のSEM写真である。
【
図9】比較例2ないし比較例4の二次電池の効率特性を比較する図面である。
【
図10】比較例2ないし比較例4の二次電池の容量特性を比較する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施例による、シリコン複合体の製造方法は、シリコン原料を湿式粉砕し、シリコン溶液を形成する段階、前記シリコン溶液を噴霧乾燥させ、シリコン微粉を形成する段階、前記シリコン粉末を解砕する段階、前記シリコン微粉を第1ピッチにコーティングし、分散体を形成する段階、前記分散体を第2ピッチにコーティングし、第1複合体を形成する段階、及び前記第1複合体を炭化させ、第2複合体を形成する段階、及び事前に設定された粒度基準により、前記第2複合体を分級する段階を含む。
【0022】
本発明は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施例を有することができるが、特定実施例を図面に例示し、発明の説明によって詳細に説明する。しかし、それらは、本発明を、特定の実施例によって限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変換、均等物ないし代替物を含むと理解されなければならない。本発明についての説明において、異なる実施例に図示されているとしても、同一構成要素については、同一識別符号を使用する。
【0023】
第1、第2のような用語は、多様な構成要素についての説明にも使用されるが、該構成要素は、用語によって限定されるものではない。該用語は、1つの構成要素を、他の構成要素から区別する目的のみに使用される。
【0024】
本出願で使用されている用語は、単に特定の実施例についての説明に使用されたものであり、本発明を限定する意図ではない。本出願において、「含む」または「有する」というような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、またはそれらの組み合わせが存在するということを指定するものであり、1またはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、またはそれらの組み合わせの存在または付加の可能性を事前に排除するものではないと理解されなければならない。
【0025】
以下、添付図面に図示された本発明に係わる実施例を参照し、本発明について詳細に説明する。参考までに、本明細書において、特別な言及がない限り、%は、重量%を意味しうる。
【0026】
図1は、本発明の一実施例による、シリコン複合体の製造方法を示す図面である。
【0027】
図1を参照すれば、本発明の一実施例による、シリコン複合体の製造方法は、シリコン原料を湿式粉砕し、シリコン溶液を形成する段階(S100)、前記シリコン溶液を噴霧乾燥させ、シリコン微粉を形成する段階(S200)、前記シリコン微粉を解砕する段階(S300)、前記シリコン微粉を第1ピッチにコーティングし、分散体を形成する段階(S400)、前記分散体を第2ピッチにコーティングし、第1複合体を形成する段階(S500)、前記第1複合体を炭化させ、第2複合体を形成する段階(S600)、及び事前に設定された粒度基準により、前記第2複合体を分級する段階(S700)を含んでもよい。
【0028】
シリコン溶液を形成する段階(S100)は、メタルシリコンから得られたシリコン粉末に湿式粉砕を実施し、シリコン溶液を形成する。該シリコン粉末は、次のようなシリコン粉末準備段階を介しても得られる。
【0029】
まず、メタルシリコン塊を破砕し、破砕されたメタルシリコン粒子を一次粉砕する。次に、一次粉砕されたメタルシリコン粒子から、金属不純物を除去する。該金属不純物は、磁力選鉱装置などを利用しても除去される。次に、金属不純物が除去されたシリコン粒子を二次粉砕し、第1シリコン粉末を得る。二次粉砕されたシリコン粉末の粒子は、45μmないし425μmの直径を有し、そこから、粒度分布のうち、98%以内のシリコン粉末を選別し、第2シリコン粉末を獲得することができる。
【0030】
得られた第2シリコン粉末には、メタルシリコン塊に含まれている多様な異物が含まれた状態でもある。従って、二次シリコン粉末から異物を除去する工程が追加しても実施される。例えば、第2シリコン粉末に含まれている鉄(Fe)を除去する工程を介し、第2シリコン粉末の純度を高めることができる。次に、第2シリコン粉末から、平均粒度20μmないし30μmのシリコン粉末を捕集し、シリコン複合体の原料になる最終シリコン粉末を獲得することができる。本発明の一実施例で使用される最終シリコン粉末の成分含量を下記表1に示す。
【0031】
【0032】
表1に示されているように、本発明の一実施例においては、シリコンの含量が99.9wt%以上の高純度シリコン粉末を利用し、シリコン複合体を製造することができる。ただし、表1に示されたシリコン粉末の成分含量は、一実施例であり、該成分含量は、異なりうる(残量は、不可避的不純物でもある)。
【0033】
シリコン溶液を形成する段階(S100)においては、そのように得られたシリコン粉末に、ボールと溶媒とを添加して混合した後、湿式粉砕を実施し、シリコン溶液を形成することができる。
【0034】
該ボールの材質と量は、特別に限定されるものではなく、湿式粉砕が実施されるチャンバまたは容器の大きさによっても変更される。本発明の一実施例においては、ジルコニア(zirconia)材質のボールを、容器体積の80%前後に混合することができる。また、該ボールの直径は、0.3mmでもある。
【0035】
該溶媒は、湿式粉砕中、分散反応の促進剤としても利用され、本発明の一実施例においては、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA:isopropyl alcohol)、メタノールのような有機溶媒が利用されうる。そのように、該有機溶媒をシリコン粉末に添加することにより、乾式粉砕に比べ、シリコン粉末の粒度を効率的に制御することができる。がい溶媒は、特別に限定されるものではないが、水は、二次電池の性能に好ましくない影響を及ぼしてしまうので、それを使用しないことが望ましい。水を溶媒として使用する場合、シリコン粉末の酸化度が上昇し、水がリチウム二次電池の負極材として機能し、充放電過程中、リチウムイオンがシリコン及び酸素と結合することにより、化合物(Li2O、LiSiOxなど)を形成することになる。また、水により、非可逆反応が起こりながら、二次電池の性能を低下させる原因になる。
【0036】
シリコン溶液を形成する段階(S100)において、シリコン粉末と溶媒は、1:4以上1:6以下の比率によっても混合される。ここで、該比率は、wt%基準でもある。シリコン粉末と溶媒との比率が1:4未満である場合、湿式粉砕装置のポンプに過度な圧力が生じてしまう。また、湿式粉砕装置の過負荷、及び湿式粉砕に利用されるチャンバまたは容器の圧力と温度とが上昇する問題が生じてしまう。それにより、シリコン粉末が酸化され、湿式粉砕の目標粒度に逹することができなくなる。反対に、シリコン粉末と溶媒との比率が1:6を超える場合、溶媒の比率が過度に高く、湿式粉砕に利用されるチャンバまたは容器の圧力が低くなり、シリコン粉末と溶媒との循環速度が遅くなる。それにより、湿式粉砕の効率が低下し、目標とする粒度のシリコン溶液を製造し難いだけではなく、工程時間が延長され、生産効率にも、好ましくない影響を及ぼすことになる。
【0037】
湿式粉砕は、1,900rpm以上3,200rpm以下の粉砕速度においても実施される。該粉砕速度が1,900rpm未満である場合、シリコン粉末の粒度分布において、10%(D10)及び90%(D90)の粒度が過度に高くなり、目標粒度に逹することができない。反対に、粉砕速度が3,200rpmを超える場合、湿式粉砕が実施される容器内のボールが、シリコン粉末と接触することができず、容器の内壁に沿って空転する現象が生じてしまう。それにより、D10の粒度が過度に低くなるが、あるいはD90の粒度が過度に高くなり、シリコン原料と類似した粒度(約1μm)を有することになる。また、シリコン粉末の温度が40℃を超えるようになり、湿式粉砕装置の安定性に問題が起こってしまう。
【0038】
望ましくは、該湿式粉砕は、1,900rpm以上2,100rpm以下の粉砕速度で実施されうる。さらに望ましくは、該湿式粉砕は、1,900rpm以上2,000rpm以下の粉砕速度で実施されうる。前記粉砕速度の範囲内においてシリコン粉末は、37℃以上38℃以下の温度を維持することができ、該湿式粉砕は、その温度範囲において、安定して実施されうる。
【0039】
該湿式粉砕は、1.5時間以上8.5時間以下の間、実施されうる。該粉砕時間が1.5時間未満である場合、シリコン粉末の粒度が、目標粒度に逹することができないのである。また、粉砕時間が8.5時間を超える場合、シリコン粉末の粒度が、目標粒度より低くなるか、あるいはシリコン粉末間の粒度差がほとんどなくなり、目標とする粒度分布を達成することができない。最終的に製造されるシリコン複合体を利用し、極板を製造する場合、該極板の密度を高めるためには、シリコン複合体は、多様な粒度分布を有することが望ましい。従って、シリコン粉末間の粒度差を適切に制御する必要がある。また、該粉砕時間が8.5時間を超える場合、工程時間が長くなり、生産性が低下してしまう。
【0040】
望ましくは、湿式粉砕は、1.5時間以上4.5時間以下の間、実施されうる。さらに望ましくは、湿式粉砕は、4時間以上4.5時間以下の間、実施されうる。前記条件を満足する湿式粉砕工程を介してシリコン溶液を形成することにより、シリコン粉末の体積変化を最小化させることができる。
【0041】
次に、シリコン溶液を噴霧乾燥させ、シリコン微粉を形成する(S200)。形成されたシリコン溶液は、溶媒を含んでいるために、シリコン溶液をそのまま利用し、シリコン複合体を製造する場合、後述する分散体形成段階(S400)、第1複合体形成段階(S500)、第2複合体形成段階(S600)において、シリコン溶液制御に困難さを伴うことにもなる。従って、シリコン溶液に含まれている溶媒を蒸発させる必要がある。
【0042】
シリコン溶液を乾燥させる方法は、特別に限定されるものではなく、本発明の一実施例においては、噴霧乾燥法を利用することができる。例えば、噴霧乾燥器の内部にシリコン溶液を噴霧して粒子を微粒化させた後、噴霧乾燥器の内部に熱風を吹き入れ、溶媒を蒸発させることにより、乾燥されたシリコン微粉を形成することができる。ここで、該噴霧乾燥器の入口温度は100℃以上250℃以下の範囲でもある。
【0043】
噴霧乾燥を経て形成されたシリコン微粉の形態は、特別に限定されるものではないが、本発明の一実施例において、シリコン微粉は、球状の粒子によってもなる。該噴霧乾燥器の作動温度、時間、速度などを制御し、シリコン微粉の粒子形態を球状に制御することにより、最終的に製造される二次電池の極板密度を向上させることができる。
【0044】
図4は、
図1のシリコン微粉の粒度分布を示す図面である。
【0045】
図4に図示されているように、本発明の一実施例による、シリコン複合体の製造方法によって製造されたシリコン複合体において、シリコン微粉の粒度は、100nm以上400nm以下でもある。具体的には、粒度分布において10%(D10)は、0.072μmであり、粒度分布において50%(D50)は、0.136μmであり、粒度分布において90%(D90)は、0.261μmであり、粒度分布において100%(D100)は、0.452μmでもある。該シリコン微粉の粒度分布をそのように特定することにより、二次電池の効率特性、容量特性及び安定性が向上しうる。
【0046】
一方、熱風でシリコン溶液を乾燥させる過程において、シリコン粉末の粒子が互いに凝集することにより、湿式粉砕において、粗いシリコン粉末の粒子よりさらに高い粒度を示す場合がある。従って、シリコン微粉を形成する段階(S200)後、シリコン微粉を解砕(disintegration)する段階をさらに含んでもよい。
【0047】
シリコン微粉を解砕する段階(S300)は、乾燥されたシリコン微粉を、超微粉砕装置に投入し、短時間の間、トラック運動を介しても実施される。そのような解砕段階を介し、目標とするシリコン微粉の粒度分布をさらに確実に達成することができる。
【0048】
次に、シリコン微粉を第1ピッチにコーティングし、分散体を形成する(S400)。該シリコン微粉を、二次電池の負極材として利用するためには、前述のように、シリコンの体積変化が問題になる。そして、そのようなシリコンの体積変化問題を解決するために、シリコン微粉と炭素素材との複合構造を形成することができる。具体的には、シリコン微粉に、炭素素材とピッチとを混合し、分散体を形成する。炭素素材とピッチは、特別に限定されるものではなく、本発明の一実施例においては、炭素素材として、黒鉛(さらに具体的には、人造黒鉛)が使用され、ピッチとして、石油系ピッチ(以下、「第1ピッチ」ともする)を利用することができる。
【0049】
まず、シリコン微粉を黒鉛上に均一に分散させ、コアを形成する。本発明の一実施例で使用される黒鉛は、3μmないし5μmの粒度を有する微粒子人造黒鉛粉末でもある。そのような人造黒鉛を利用することにより、安定した組織を有し、寿命が向上された二次電池を製造することができる。
【0050】
コアを形成する段階において、シリコン微粉と人造黒鉛との含有量の比率は、重量%で、26:29ないし35:23を満足するように、人造黒鉛を混合することができる。シリコン微粉と人造黒鉛との含有量の比率が26:29未満である場合、相対的に、リチウム保存能が高いシリコン含量が低く、二次電池の容量が低下する。また、人造黒鉛の含有量が低く、二次電池の安定性及び出力に好ましくない影響を及ぼしてしまう。反対に、シリコン微粉と人造黒鉛との含有量の比率が35:23を超える場合、シリコンの体積変化が大きくなり、二次電池の電極が損傷されたり破壊されたりし、充放電効率が低下してしまう。
【0051】
次に、形成されたコアを第1ピッチにコーティングし、分散体を形成する。該第1ピッチは、分散体のシェル(shell)を形成することができる。本発明の一実施例においては、乾式粒子コーティング装置を利用し、第1ピッチにコアを乾式コーティングすることができる。該第1ピッチにコーティングする段階は、120℃以上150℃の温度で実施されうる。前記温度範囲において、第1ピッチ内に含有された不純物を容易に除去することができる。前記温度範囲を外れる場合、二次電池の充放電性能に好ましくない影響を及ぼすことになる。本発明の一実施例において、該第1ピッチにコーティングする段階は、120℃以上150℃の温度で、2,500rpmの速度で1時間、遂行されうる。
【0052】
また、該第1ピッチの含有量は、15%以上16%以下でもある。該第1ピッチの含有量が15%未満である場合、人造黒鉛上に分散されたシリコン微粉、すなわち、コアを円滑にコーティングすることができない。また、シリコン微粉が人造黒鉛から離脱する脱離現象が生じてしまう。また、二次電池の充放電容量が低くなってしまう。反対に、第1ピッチの含有量が16%を超える場合、製造コストが過度に高くなるだけではなく、シリコン微粉を覆い包む人造黒鉛の厚み(シェル厚)が過度に厚くなる。また、第1複合体の粒子が均一に混合されず、二次電池の寿命特性が劣化され、二次電池極板のエネルギー密度が低くなってしまう。
【0053】
図3は、
図1の分散体と第1複合体とを示す図面である。
図3を参照すれば、分散体は、黒鉛(人造黒鉛)上に、シリコン微粉が取りつき合って形成されたコアを、第1ピッチが覆い包む形状を有することができる。すなわち、シリコン微粉と黒鉛とがコアを形成し、第1ピッチがシェルを形成することができる。
【0054】
次に、分散体を第2ピッチにコーティングし、第1複合体を形成する(S500)。本発明の一実施例においては、乾式粒子コーティング装置を利用し、該第2ピッチに分散体を乾式コーティングすることができる。該第2ピッチは、第1ピッチと同一または異なる系ピッチでもある。該第2ピッチは、第1ピッチより機械的強度が高いことが望ましい。それにより、二次電池の極板製造工程時、極板が破砕される現象を防止することができる。
【0055】
第2ピッチの含有量は、16%以上17%以下でもある。該第2ピッチの含有量が16%未満である場合、該第2ピッチにコーティングされていない分散体が存在することになる。それにより、シリコン微粉の体積変化を円滑に抑制することができず、該シリコン微粉の体積変化により、該二次電池に損傷が生じ、充放電容量が低減されることになる。反対に、第2ピッチの含有量が17%を超える場合、製造コストが過度に高くなるだけではなく、分散体を覆い包む第2ピッチの厚みが過度に厚くなる。また、非晶質炭素(amorphous carbon)の含有量が増大し、二次電池の寿命特性が低下し、該第2ピッチ内に含まれた不純物(例えば、キノリン(quinoline)など)の含有量が増加することになる。不純物の含有量が増加する場合、不純物が結晶を形成し、二次電池の特性に好ましくない影響を及ぼすことになる。
【0056】
本発明の一実施例において、第1複合体を形成する段階は、240℃以上270℃の温度で実施されうる。前記温度範囲において、第2ピッチの粘性が最も優秀であり、分散体を容易にコーティングすることができる。
第1複合体において、第1ピッチの含有量と、第2ピッチの含有量との和は、32%以上35%以下でもある。第1ピッチの含有量と、第2ピッチの含有量との和が32%未満である場合、第1ピッチと第2ピッチに、分散体及び第1複合体を正しくコーティングすることができず、該分散体及び該第1複合体を覆い包む第1ピッチと第2ピッチとの量が不足し、シリコン微粉の体積変化を効果的に抑制することができない。また、二次電池の全体的な安定性が落ち、該二次電池の容量及び寿命特性に好ましくない影響を及ぼしてしまう。反対に、第1ピッチの含有量と、第2ピッチの含有量との和が35%を超える場合、製造コストが過度に高くなり、二次電池のエネルギー密度が低くなってしまう。
【0057】
そのように形成された第1複合体の形状を、
図3に示す。
図3を参照すれば、第1複合体は、第2ピッチが多数個の分散体を外側でコーティングし、全体的に球状を有することができる。
【0058】
次に、第1複合体を炭化させ、第2複合体を形成する(S600)。シリコン微粉、人造黒鉛、第1ピッチ及び第2ピッチで構成された第1複合体を高温で熱処理することにより、それら間の結合力を高め、シリコン複合体の構造を堅固に維持することができる。
【0059】
炭化工程に使用される熱処理としては、特別に限定されるものではなく、本発明の一実施例においては、完全密閉型のチューブ炉(tube furnace)を利用することができる。熱処理温度は、800℃以上1,000℃以下の範囲で実施されうる。該熱処理温度が800℃未満である場合、非晶質炭素である第1ピッチ及び第2ピッチの揮発成分が十分に除去されず、二次電池の初期効率向上に困難さが伴う。反対に、熱処理温度が1,200℃を超える場合、シリコン結晶が成長し、リチウムイオンと反応することにより、シリコン微粉が膨脹することになる。それにより、極板に亀裂が生じ、二次電池の性能に好ましくない影響を及ぼしてしまう。
【0060】
本発明の一実施例において、炭化工程は、800℃ないし1,200℃の温度で1時間ないし3時間、実施されるる。
【0061】
次に、事前に設定された粒度基準により、第2複合体を分級する(S700)。二次電池の性能に影響を及ぼす特性は、二次電池の放電容量、寿命効率、膨脹率、極板の容量密度などがあり、極板の容量密度は、シリコン複合体の粒度分布によって決定される。極板の容量密度を上昇させるためには、シリコン複合体が、類似した粒度分布を有するよりは、多様な粒度分布を有することが望ましい。ただし、極板密度が過度に高い場合、電解液の含浸が容易ではなく、二次電池の効率及び容量特性が低下してりまう。従って、シリコン複合体の粒度分布を適切に制御することが重要である。本発明の一実施例においては、分級装置を利用し、第2複合体を分級することにより、第2複合体の粒度分布において、50%(D50)を、10μm以上20μm以下に制御することができる。さらに望ましくは、第2複合体の粒度分布において、D50を15μm前後に制御することに粒度基準を設定することができる。分級された第2複合体をシリコン複合体にし、二次電池を製造することができる。そのように、シリコン複合体の粒度分布を制御することにより、極板の容量密度と電解液含浸性とが両立可能なシリコン複合体を製造することができる。
【0062】
図2は、
図1の第2複合体のSEM(scanning electronmicroscope)写真である。
図2の左側写真は、第1複合体を示し、
図2の右側写真は、分散体を示す。
【0063】
図2に図示されているように、本発明の一実施例によるシリコン複合体は、人造黒鉛を中心に、シリコン微粉が均一に分散されてコアを形成し、第1ピッチがコアをコーティングして分散体を形成する。また、複数個の分散体を第2ピッチがコーティングし、シリコン複合体を形成する。ここで、シリコン微粉と人造黒鉛とによって構成されて第1ピッチによってコーティングされた分散体のコアを第1コアにし、第2ピッチによってコーティングされた複数個の分散体を第2コアにすることができる。また、該第1ピッチを第1シェルにし、該第2ピッチを第2シェルにすることができる。すなわち、本発明の一実施例によるシリコン複合体は、二重コア・シェル構造によってもなる。
【0064】
図5は、発明例と比較例1との二次電池の容量特性を比較する図面である。
図6は、発明例と比較例1との二次電池の効率特性を比較する図面である。
【0065】
発明例は、本発明の一実施例によるシリコン複合体を利用して製造された二次電池である。比較例1は、蒸着型シリコン複合体に製造された二次電池であり、蒸着型シリコン複合体は、プラズマ蒸着装置を利用し、コアにシリコン酸化物を蒸着する方式によって製造されたシリコン複合体である。そのような蒸着型シリコン複合体は、本発明の一実施例において利用するピッチを利用した乾式コーティング方法に比べ、顕著に高い製造コストが必要となり、経済成果生産性が低い。
【0066】
図5に図示されているように、発明例は、比較例1に比べ、初期容量は、多少低いが、サイクル反復回数の増加による容量の低減が緩慢であることが分かる。そしてサイクル反復回数が30回を超えながら、発明例が比較例1に比べ、さらに高い容量特性を示すということが分かる。
【0067】
また、
図6に図示されているように、発明例は、比較例1に比べ、高い初期効率を示し、比較例1と同等なレベルの効率特性を示すということが分かる。特に、サイクル反復回数が32回を超える時点から、発明例が従来例に比べ、さらに高い効率特性を示すということが分かる。
【0068】
そのように、本発明の一実施例によって製造されたシリコン複合体を利用し、二次電池を製造する場合、高価の蒸着型シリコン複合体を利用して製造された二次電池より、すぐれた容量特性及び効率特性を示すということが分かる。
【0069】
図7は、従来のシリコン複合体の粒度分布を示す図面である。
図8は、
図7の従来のシリコン複合体のSEM写真である。
図9は、比較例2ないし比較例4の二次電池の効率特性を比較する図面である。
図10は、比較例2ないし比較例4の二次電池の容量特性を比較する図面である。
【0070】
図7に示された従来のシリコン複合体は、本発明によるシリコン微粉の粒度分布範囲を外れるシリコン複合体である。具体的には、従来のシリコン複合体のシリコン微粉は、粒度分布において、50%(D50)は、0.404μmであり、90%(D90)は、1.056μmであり、100%(D100)は、2μmである粒度分布を示す。すなわち、
図7に示された従来のシリコン複合体は、シリコン微粉の粒度分布において、D90が1μmを超える。
図8を参照すれば、
図3と比較したとき、シリコン微粉の粒度がはるかに高いということが分かる。
【0071】
図9及び
図10において、比較例2は、
図7の従来のシリコン複合体を利用して製造された二次電池を示す。また、比較例3と比較例4は、他の従来のシリコン複合体を利用して製造された二次電池であり、本発明によるシリコン微粉の粒度分布を満足する。ただし、比較例3と比較例4は、本発明の一実施例による製造方法をいずれも満足しない。
【0072】
図9、
図10を参照すれば、比較例2は、比較例3,4に比べ、二次電池の効率特性と充放電容量維持率特性とがいずれも低いということが分かる。それを介し、シリコン微粉の粒度分布が、二次電池の特性に大きな影響を及ぼすということが分かる。特に、シリコン微粉の粒度分布において、90%(D90)は、二次電池の寿命特性に大きな影響を及ぼすということが分かる。
【0073】
また、
図3、
図4、
図9、
図10を参照するとき、本発明によるシリコン複合体の製造方法をいずれも満足する場合、従来のシリコン複合体を利用して製造された二次電池に比べ、性能特性が改善された二次電池を提供することができる。
【0074】
他の実施例において、解砕する段階(S300)、分散体を形成する段階(S400)、第1複合体を形成する段階(S500)、及び第2複合体を形成する段階(S600)のうち少なくともいずれか1以上の段階は、不活性気体雰囲気においても実施される。該不活性気体は、特別に限定されるものではなく、アルゴンまたは窒素気体でもある。
【0075】
例えば、解砕する段階(S300)において、超微粉砕装置にシリコン微粉を投入した後、アルゴン及び/または窒素ガスを利用し、不活性気体雰囲気でシリコン微粉を解砕することができる。また、分散体を形成する段階(S400)において、第1ピッチにコアをコーティングする過程において、アルゴン及び/または窒素ガスを流入させて、活性気体雰囲気でコーティングを実施することができる。同様に、第1複合体を形成する段階(S500)において、第2ピッチに分散体をコーティングする過程において、アルゴン及び/または窒素ガスを流入させ、不活性気体雰囲気でコーティングを実施することができる。また、第2複合体を形成する段階(S600)において、熱処理を、アルゴン及び/または窒素ガスの不活性気体雰囲気で実施することができる。前記段階を不活性気体雰囲気で実施することにより、本発明で目標とするシリコン複合体の特性を、さらに安定して達成することができる。また、本発明によるシリコン複合体によって製造される二次電池の特性を安定して達成することができる。
【0076】
本発明の一実施例による、シリコン複合体の製造方法によって製造されたシリコン複合体は、シリコン微粉と、人造黒鉛と、第1ピッチと、第2ピッチとを含んでもよい。該シリコン微粉は、人造黒鉛上に分散され、コア(第1コア)を形成することができる。また、該コアは、第1ピッチ(第1シェル)によってコーティングされ、分散体を形成することができる。また、複数個の分散体(第2コア)は、第2ピッチ(第2シェル)によってコーティングされ、シリコン複合体を形成することができる。すなわち、本発明によるシリコン複合体は、二重コア・シェル構造を有することができる。
【0077】
ここで、シリコン微粉と人造黒鉛との含有量の比率は、26:29ないし35:23でもある。また、第2ピッチの含有量は、16%以上17%以下であり、第1ピッチと第2ピッチとの含有量の和は、32%以上35%以下でもある。また、シリコン微粉の粒度分布は、100nm以上400nm以下であり、さらに具体的には、粒度分布において10%(D10)は、0.072μmであり、粒度分布において50%(D50)は、0.136μmであり、粒度分布において90%(D90)は、0.261μmであり、粒度分布において100%(D100)は、0.452μmでもある。
【0078】
本発明の一実施例によるシリコン複合体は、リチウム二次電池の負極活物質に利用されうる。本発明によるシリコン複合体を利用し、安定性、及び容量、効率、膨張率などを含む性能特性が改善された二次電池を提供することができる。また、寿命が画期的に改善された二次電池を提供することができる。
【0079】
本明細書においては、本発明について、限定された実施例を中心に説明されたが、本発明の範囲内において、多様な実施例が可能である。また、説明されていないが、均等な手段も、本発明にそのまま結合されると言うるのである。従って、本発明の真の保護範囲は、特許請求の範囲によって定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の実施例によるシリコン複合体の製造方法は、シリコン素材の体積変化を最小化させ、バッテリの寿命と容量とを向上させることができるシリコン複合体の製造方法を提供し、関連産業分野にも利用される。