(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】スチレン-ブタジエン-スチレンブロックポリマーを含む熱硬化性組成物およびその硬化方法
(51)【国際特許分類】
C08F 8/00 20060101AFI20230908BHJP
C08F 212/08 20060101ALI20230908BHJP
C08F 236/06 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
C08F8/00
C08F212/08
C08F236/06
(21)【出願番号】P 2021573994
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2021002253
(87)【国際公開番号】W WO2021153455
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2020012576
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】丹藤 泉
(72)【発明者】
【氏名】大隅 祥太
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-120351(JP,A)
【文献】特開平02-283766(JP,A)
【文献】特開2008-094889(JP,A)
【文献】特開2001-098130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/00
C08F 212/08
C08F 236/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)(A)と、熱ラジカル発生剤(B)と、を含む熱硬化性組成物を、
(I)120℃~
175℃の温度範囲で、ブタジエンブロック中の1,2結合構造に由来する二重結合が30%以上反応するまで加熱し、
(II)その後、181℃~300℃の温度範囲で、ブタジエンブロック中の1,2結合構造に由来する二重結合が50%以上反応するまで加熱する、
ことを含む硬化物の製造方法。
【請求項2】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)(A)におけるブタジエンブロック中の1,2結合構造と1,4結合構造のモル比が80:20~100:0である、請求項1に記載の硬化物の製造方法。
【請求項3】
熱硬化性組成物が、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)(A)100重量部に対し、熱ラジカル発生剤(B)を0.1~10重量部含む、請求項1または2に記載の硬化物の製造方法。
【請求項4】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)(A)中のスチレンブロックとブタジエンブロックの重量比が、10:90~90:10である、請求項1~3いずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
【請求項5】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)(A)の数平均分子量(Mn)が、2,000~100,000である、請求項1~4いずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
【請求項6】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)(A)の分子量分布(Mw/Mn)が、1.00~3.00である、請求項1~5いずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体と、熱ラジカル発生剤とを含む熱硬化性組成物に関する。また、前記熱硬化性組成物を特定の条件下で硬化することを特徴とする硬化物の製造方法に関する。本願は、2020年1月29日に出願された日本国特許出願第2020-12576号に対し優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を含む組成物は、熱硬化することにより、耐水性、耐熱性、絶縁性、基材との密着性などに優れた硬化物を得ることができる。それらの硬化物は、工業用品全般に応用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)重量平均分子量1000以上であって、25℃のクロロホルム中で測定して0.03~0.12dl/gの固有粘度を有し、かつ、分子末端炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテル化合物と、(B)数平均分子量10,000未満であって、分子中のスチレン含有量が50質量%以下、ブタジエン含有量が50質量%以上である架橋性スチレンブタジエンコポリマーと、(C)重量平均分子量10,000以上のスチレン系熱可塑性エラストマーと、(D)硬化促進剤と、(E)無機充填材と、(F)難燃剤とを含有し、前記(A)成分:[前記(B)成分+前記(C)成分]の配合比が90:10~10:90であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物が提案されている。前記熱硬化性樹脂組成物中の成分(C)であるスチレン系熱可塑性エラストマーとして、スチレンブタジエンスチレン共重合体を選択することができる。また、前記熱硬化性樹脂組成物を用いて製造した積層板は、温度170~220℃、圧力1.5~5.0MPa、時間60~150分間という条件で硬化できるようである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を含む熱硬化性組成物を従来から知られている硬化条件で硬化すると、硬化反応が十分に進行しない場合があった。そのため、熱硬化性組成物を一定時間内に効率的に硬化させることができる硬化方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記した課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)(A)と、熱ラジカル発生剤(B)と、を含む熱硬化性組成物を、(I)120℃~180℃の温度範囲で、ブタジエンブロック中の1,2結合構造に由来する二重結合が30%以上反応するまで加熱し、(II)その後、181℃~300℃の温度範囲で、ブタジエンブロック中の1,2結合構造に由来する二重結合が50%以上反応するまで加熱する、ことを含む硬化物の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、以下の発明に関する。
(1)スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)(A)と熱ラジカル発生剤(B)とを含む熱硬化性組成物を、
(I)120℃~180℃の温度範囲で、ブタジエンブロック中の1,2結合構造に由来する二重結合が30%以上反応するまで加熱し、
(II)その後、181℃~300℃の温度範囲で、ブタジエンブロック中の1,2結合構造に由来する二重結合が50%以上反応するまで加熱する、
ことを含む硬化物の製造方法。
(2)スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)(A)におけるブタジエンブロック中の1,2結合構造と1,4結合構造のモル比が80:20~100:0である、(1)に記載の硬化物の製造方法。
(3)熱硬化性組成物が、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)(A)100重量部に対し、熱ラジカル発生剤(B)を0.1~10重量部含む、(1)または(2)に記載の硬化物の製造方法。
(4)スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)(A)中のスチレンブロックとブタジエンブロックの重量比が、10:90~90:10である、(1)~(3)いずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
(5)スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)(A)の数平均分子量(Mn)が、2,000~100,000である、(1)~(4)いずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
(6)スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)(A)の分子量分布(Mw/Mn)が、1.00~3.00である、(1)~(5)いずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
(7)ブタジエンブロック中の1,2結合構造と1,4結合構造のモル比が80:20~100:0であるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)(A)と、熱ラジカル発生剤(B)とを含む熱硬化性組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の硬化物の製造方法によれば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を効率的に硬化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(熱硬化性組成物)
本発明の熱硬化性組成物は、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)(A成分)と、熱ラジカル発生剤(B成分)を含有するものである。各成分の含有量は特に限定されないが、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体100重量部に対し、熱ラジカル発生剤の含有量を0.1~10重量部、0.5~10重量部、0.5~5重量部、1~5重量部などから選択することができる。
【0010】
(スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体)
本発明で使用される成分(A)は、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)である。スチレンブロックは、スチレンを重合したブロックであり、ブタジエンブロックは1,3-ブタジエンを重合したブロックである。ブタジエンブロックは、式(1)で表される1,2結合構造と、式(2)で表される1,4結合構造からなる。
【化1】
本発明で使用するスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体に含まれる、式(1)で表される1,2結合構造と、式(2)で表される1,4結合構造のモル比は、特に限定されないが、80:20~100:0を挙げることができる。
【0011】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体中のスチレンブロックとブタジエンブロックの重量比は、特に限定されないが、10:90~90:10、10:90~80:20、10:90~70:30、10:90~60:40、10:90~50:50、10:90~40:60、15:85~40:60、20:80~40:60、25:75~40:60、25:75~35:65を挙げることができる。
【0012】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、2,000~100,000、2,000~80,000、2,000~60,000などを挙げることができる。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されないが、1.00~3.00、1.00~2.00などを挙げることができる。前記数平均分子量(Mn)や分子量分布(Mw/Mn)は、ポリスチレンを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したものである。その測定条件は、移動相THF(テトラヒドロフラン)、移動相流量1mL/分、カラム温度40℃、試料注入量40μL、試料濃度2重量%である。
【0013】
本発明で用いるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の製造方法は特に限定されない。例えば、特開平6-192502号公報、特表2000-514122号公報、特開2007-302901号公報などに記載された方法およびそれに準ずる方法により製造することができる。
【0014】
(熱ラジカル発生剤)
熱ラジカル発生剤としては、特に限定されない。熱ラジカル発生剤は市販品を用いることができる。熱ラジカル開始剤として、具体的には、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(パークミルP)、クメンハイドロパーオキサイド(パークミルH)、t-ブチルハイドロパーオキサイド(パーブチルH)等のハイドロパーオキサイド類や、α,α-ビス(t-ブチルペルオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン(パーブチルP)、ジクミルパーオキサイド(パークミルD)、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25B)、t-ブチルクミルパーオキサイド(パーブチルC)、ジ-t-ブチルパーオキサイド(パーブチルD)、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ビチルパーオキシ)ヘキシン-3(パーヘキシン25B)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーブチルO)等のジアルキルパーオキサイド類や、ケトンパーオキサイド類や、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)バレレート(パーヘキサV)等のパーオキシケタール類や、ジアシルパーオキサイド類や、パーオキシジカーボネート類や、パーオキシエステル類等の有機過酸化物や、2,2’-アゾビスイソブチルニトリル、1,1’-(シクロヘキサンー1-1カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等などを挙げることができる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
(その他の成分)
本発明の熱硬化性組成物は、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A)と、熱ラジカル発生剤(B)に加えて、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。前記のその他の成分としては、例えば、フィラー、有機樹脂(シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂など)、溶剤、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤など)、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤など)、難燃助剤、補強材、滑剤、ワックス、可塑剤、離型剤、耐衝撃性改良剤、色相改良剤、流動性改良剤、着色剤(染料、顔料など)、分散剤、消泡剤、脱泡剤、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤等を挙げることができる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
本発明の熱硬化性組成物を製造する方法としては特に限定されない。例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A)に、熱ラジカル発生剤(B)を添加した後、混練機で混練する方法を挙げることができる。
【0017】
(硬化物の製造方法)
本発明の硬化物の製造方法は、前記熱硬化性組成物を工程(I)120℃~180℃の温度範囲で、ブタジエンブロック中の1,2結合構造に由来する二重結合が30%以上反応するまで加熱し、その後、工程(II)181℃~300℃の温度範囲で、ブタジエンブロック中の1,2結合構造に由来する二重結合が50%以上反応するまで加熱する、ことを含む。
工程(I)及び(II)の温度範囲の設定は、上記温度範囲内であれば適宜設定できる。たとえば、工程(I)の温度範囲の下限は、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、150℃等とすることもできる。工程(I)の温度範囲の上限は、175℃、170℃等とすることもできる。
また、工程(II)の温度範囲の下限は,185℃、190℃、195℃、200℃等とすることもできる。工程(II)の温度範囲の上限は、295℃、290℃、285℃、280℃、275℃、270℃、265℃、260℃、255℃、250℃、245℃、240℃等とすることもできる。
工程(I)において50%以上反応させてもよく、その場合は、工程(II)においてはそれ以上に反応させる。ただし、工程(I)においては、通常30%~70%の程度で工程(I)を終え、工程(II)に移行する。その際、加熱は、通常、引き続き昇温すればよい。
加熱は、工程(I)、工程(II)共に、上記温度の範囲内において一定温度で反応させてもよいし、昇温しながら行ってもよい。
工程(I)と工程(II)の条件で硬化することにより、効率的に硬化反応を進行させることができる。
工程(I)及び工程(II)において、「ブタジエンブロック中の1,2結合構造に由来する二重結合が反応した割合(%)」(以下、「反応率」と記載することがある)については、以下の方法で算出することができる。
反応率は赤外分光光度計を用いて算出することができる。室温下、ブタジエンブロック中の1,2結合構造に由来する二重結合の赤外吸収スペクトルは、850cm-1から950cm-1付近に検出される(スペクトルA)。硬化反応前の熱硬化性組成物について、室温下、赤外吸収スペクトルを測定し、スペクトルAの積分値A0を算出する。次に硬化反応後のサンプルについて、同条件で赤外吸収スペクトルを測定し、スペクトルAの積分値Atを算出する。反応率(%)は、下記の式で算出した値である。
反応率(%)=((スペクトルA0- スペクトルAt)/スペクトルA0)×100
【実施例】
【0018】
以下実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
【0019】
(スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の製造)
【0020】
製造例1
5000mLフラスコにシクロヘキサン1893.91g、テトラヒドロフラン306.92gを加えた。30℃に昇温した後、n-ブチルリチウム25.32g(15.1重量%濃度ヘキサン溶液)を加えた。10分間撹拌後、スチレン150.32gを滴下し、10分間撹拌した。ガスクロマトグラフィー(以下GCと略す)によりモノマー消失を確認した。
次いで、1,3-ブタジエン301.30g、ヘキサン197.50gの混合液を滴下し、15分間撹拌した。GCによりモノマー消失を確認した後、スチレン150.30gを滴下した。30分間撹拌した後メタノール10.40gを加えた。
得られた共重合体をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(移動相テトラヒドロフラン、ポリスチレンスタンダード)により分析したところ、数平均分子量(Mn)は19600、分子量分布(Mw/Mn)は1.16、組成比がPS/PB/PS=25/50/25重量%の共重合体であることを確認した。
反応液を二回水洗後、溶媒を留去した。真空乾燥することでスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体A(白色粉末)を得た。1H-NMRにて算出したブタジエンブロック中の1,2結合構造と1,4結合構造のモル比は、94:6であった。
【0021】
製造例2
500mLフラスコにシクロヘキサン155.90g、テトラヒドロフラン20.10gを加えた。30℃に昇温した後、n-ブチルリチウム1.95g(15.1重量%濃度ヘキサン溶液)を加えた。10分間撹拌した後、スチレン7.64gを滴下し、30分間撹拌した。ガスクロマトグラフィー(以下GCと略す)によりモノマー消失を確認した。
次いで、1,3-ブタジエン35.07g、ヘキサン35.07gの混合液を滴下し、15分間撹拌した。GCによりモノマー消失を確認した後、スチレン7.78gを滴下した。30分間撹拌した後メタノール0.40gを加えて反応を停止した。
得られた共重合体をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(移動相テトラヒドロフラン、ポリスチレンスタンダード)により分析したところ、数平均分子量(Mn)は17400、分子量分布(Mw/Mn)は1.07、組成比がPS/PB/PS=15/70/15重量%の共重合体であることを確認した。
反応液を二回水洗後、溶媒を留去した。メタノールに再沈殿、ろ別し真空乾燥することでスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体B(無色透明な粘性液体)を得た。1H-NMRにて算出したブタジエンブロック中の1,2結合構造と1,4結合構造のモル比は、89:11であった。
【0022】
(熱硬化性組成物の製造)
実施例A
製造例1で得られたスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体A100重量部と、ジクミルパーオキサイド(日油社製、パークミルD)2重量部を混練機に添加し、90℃にて10分間混合することにより、熱硬化性組成物Aを製造した。
【0023】
実施例B
製造例2で得られたスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体B100重量部と、ジクミルパーオキサイド(日油社製、パークミルD)2重量部を自転公転ミキサーに添加し、60℃にて20分間混合することにより、熱硬化性組成物Bを製造した。
【0024】
(硬化物の製造)
比較例1~5
実施例Bで得られた熱硬化性組成物Bを一定の温度で2時間加熱することにより、硬化物を得た。得られた硬化物について、反応率(%)とガラス転移温度(℃)を測定した。反応率(%)は前記した方法で算出した。ガラス転移温度(℃)は、JIS K 6240を参考に測定した。結果を表1に示した。
【0025】
実施例1~6
実施例Bで得られた熱硬化性組成物Bを、表2に示す工程Iおよび工程IIの条件で加熱することにより、硬化物を得た。工程I後に得られた硬化物および工程II後に得られた硬化物についてそれぞれの反応率(%)を算出した。また、工程II後に得られた硬化物のガラス転移温度(℃)を測定した。反応率(%)は前記に記載した方法で算出した。ガラス転移温度は、JIS K 6240を参考に測定した。結果を表2に示した。
【0026】
【0027】
【表2】
実施例1では150℃で1時間加熱後、200℃で1時間加熱し合計2時間で硬化させた際の結果を示しており、反応率62.5%、ガラス転移温度52.6℃であった。この値は、比較例1の150℃で2時間硬化させた場合や、比較例3の200℃で2時間硬化させた場合よりも高い値を示した。このことからスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の硬化条件は単一温度で加熱するよりも、段階的に加熱するほうがより硬化が進むことがわかる。他の実施例でも、同様のことが言える。