(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】フローセルへ試薬を送達するための流体システム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20230908BHJP
【FI】
G01N35/08 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022066243
(22)【出願日】2022-04-13
(62)【分割の表示】P 2020138824の分割
【原出願日】2014-08-07
【審査請求日】2022-05-11
(32)【優先日】2013-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514202402
【氏名又は名称】イラミーナ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ストーン
(72)【発明者】
【氏名】ドリュー ベルケイド
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-173059(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0052446(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0130243(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 1/00- 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)液体試薬を試薬リザーバからキャッシュリザーバへ吸い上げるステップであって、該キャッシュリザーバは、前記試薬リザーバおよびフローセルの少なくとも1つのチャネルと流体連通している、吸い上げるステップと、
b)前記液体試薬を前記キャッシュリザーバから前記フローセルの少なくとも1つのチャネル上へ輸送するステップと、
c)前記フローセルからの前記液体試薬が前記フローセルとの接触後に前記試薬リザーバへ戻らないように前記フローセルのチャネル上の
少なくとも30%の前記液体試薬
を前記キャッシュリザーバへ輸送し、
この輸送された
前記少なくとも30%の前記液体試薬
と未使用の液体試薬との
前記キャッシュリザーバ内での勾配を維持するステップと、
d)少なくともステップb)を繰り返して前記フローセル上の前記液体試薬の再利用を達成するステップ
、及び、ステップc)の後に、液体試薬の一部を廃棄するために移送するステップと、を含む試薬を再利用する方法。
【請求項2】
前記キャッシュリザーバと前記フローセルとの間に接続されたバルブを通して、前記液体試薬を前記キャッシュリザーバから前記フローセルの少なくとも1つのチャネル上へ輸送するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップb)とc)を少なくとも1回繰り返すステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キャッシュリザーバにおいて、輸送された前記液体試薬の少なくとも30%が、前記未使用の液体試薬の少なくとも一部の下流側にある、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
a)液体試薬を試薬リザーバからキャッシュリザーバへ吸い上げるステップであって、該キャッシュリザーバは、前記試薬リザーバおよびフローセルの少なくとも1つのチャネルと流体連通している、吸い上げるステップと、
b)前記液体試薬を前記キャッシュリザーバから前記フローセルの少なくとも1つのチャネル上へ輸送するステップと、
c)前記フローセルからの前記液体試薬が前記フローセルとの接触後に前記試薬リザーバへ戻らないように前記フローセルのチャネル上の前記液体試薬の少なくとも一部を前記キャッシュリザーバへ輸送し、前記キャッシュリザーバ内での輸送された前記液体試薬の少なくとも一部と未使用の液体試薬との勾配を維持するステップと、
d)前記
フローセルからの前記液体試薬の一部を廃棄するために移送するステップと、
e)少なくともステップb)を繰り返して前記フローセル上の前記液体試薬の再利用を達成するステップと、を含む試薬を再利用する方法。
【請求項6】
ステップb)、c)及びd)を少なくとも1回繰り返すステップを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
ステップb)、c)及びd)を複数回繰り返すステップを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記キャッシュリザーバと前記フローセルとの間に接続されたバルブを通して、前記液体試薬を前記キャッシュリザーバから前記フローセルの少なくとも1つのチャネル上へ輸送するステップを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項9】
前記キャッシュリザーバ内で前記液体試薬を混合するステップを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項10】
試薬リザーバと、
フローセルと、
前記試薬リザーバと前記フローセルとの間に接続されたマニホールドであって、前記試薬リザーバから液体試薬を受け取るように構成されたキャッシュリザーバを有し、或る量の前記液体試薬を前記フローセルのチャネルに提供するように構成され、且つ、前記フローセルにおける再利用のために前記フローセルから戻る前記液体試薬の少なくとも一部を受け取り、前記キャッシュリザーバ内での前記フローセルから戻った前記液体試薬の一部と未使用の液体試薬との勾配を維持するように構成された、マニホールドと、
前記フローセルに接続され、前記液体試薬を前記試薬リザーバから前記キャッシュリザーバに、そして前記フローセルに吸い上げるポンプであって、再利用のために前記液体試薬の少なくとも一部を前記キャッシュリザーバに戻すように構成された、ポンプと、
前記キャッシュリザーバと前記フローセルとの間に接続され、前記液体試薬を前記フローセルへ送り、また前記キャッシュリザーバへ戻すバルブと、を備えたシステム。
【請求項11】
前記バルブが、前記フローセルからの前記液体試薬の一部を廃棄するために送るように構成された、請求項
10に記載のシステム。
【請求項12】
前記キャッシュリザーバが、前記マニホールドの試薬輸送チャネルの拡大部を備えた、請求項
10に記載のシステム。
【請求項13】
前記マニホールドが、異なる液体試薬のための複数のキャッシュリザーバを備えた、請求項
10に記載のシステム。
【請求項14】
前記キャッシュリザーバが、前記フローセルの前記チャネルよりも小さい容積を備えた、請求項
10に記載のシステム。
【請求項15】
前記キャッシュリザーバが、前記フローセルの前記チャネルよりも大きい容積を備えた、請求項
10に記載のシステム。
【請求項16】
前記キャッシュリザーバが、前記フローセルの1つ以上のチャネルの合計容積よりも大きい容積を備えた、請求項
10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【優先権の主張】
【0001】
本願は、同時係属中の2013年8月8日に出願された米国仮特許出願第61/863
,795号明細書の利益を主張するものであり、その内容は参照により本明細書に援用さ
れる。
【技術分野】
【0002】
本開示の実施形態は、一般に、例えば塩基配列決定作業における、試料の流体操作およ
び光学検出のための装置および方法に関する。
【0003】
ゲノムは、嗜好、才能、罹患性、治療薬剤反応性といった、人それぞれに固有の性質の
多くを予測可能にしてくれる設計図を提供する。ヒトゲノムは個々で30億を超えるヌク
レオチド配列を含む。それらのヌクレオチドにおけるほんのわずかな違いにより、人はそ
れぞれ独特な性質を与えられている。そのような設計図を作り上げている特徴を解明する
にあたり、研究コミュニティにおいては目覚ましい進歩が遂げられつつある。それに伴い
、各設計図における情報がどのように人間の健康と関係しているのかについてのより完全
な理解も深まりつつある。しかしながら、まだその理解は本当に完全といえるにはほど遠
く、情報を研究段階から臨床応用へ展開していける段階には到達していない。臨床におい
ていつの日か期待されているのは、私たち全員がおのおの自分個人のゲノムのコピーを所
有し、どのような選択を行えば健康的な生活を送ることができ、また適した治療を受けら
れるのかを医師と決定できるようになることである。
【0004】
現在、これを妨げているのは処理量と規模の問題である。どの個人の設計図を解明する
場合であっても、その基本的な要素は、その個人のゲノムにある30億対のヌクレオチド
について正確な配列を決定することである。これを決定するための技術は既に種々あるが
、それらの技術を使った場合、通常、配列決定に幾日もかかり、また費用も何千ドルもか
かってしまう。さらに、個人のゲノム配列の臨床的関連性は、その個人のゲノム配列(す
なわち遺伝子型)の独特の特徴を、既知の特性(すなわち表現型)と相関関係にある基準
ゲノムと比較することである。規模と処理量の問題は、以下の事実を考慮したときに明ら
かになる。それは、統計的有効性を確保するために、基準ゲノムは通常何千人もを調査し
、その結果判明した遺伝子型と表現型との相関関係に基づいてつくられている、というこ
とである。よって、何十億ものヌクレオチドの配列が、何千人もの個々人のために最終的
には決定され、臨床的に関連するあらゆる遺伝子型と表現型との相関関連が確認される。
きわめて安価かつ迅速に行える塩基配列決定技術の必要性は、疾患、薬剤反応、およびほ
かの臨床的関連のある特性の数によりさらに倍増し、今までになく顕著になってきている
。
【0005】
必要とされているのは、塩基配列決定作業におけるコストの削減である。コスト削減が
実現すれば、研究科学者たちは大規模な遺伝子相関調査を行うことができ、臨床環境にお
いても塩基配列が入手可能となるため、人生を変えるような決断に迫られている患者それ
ぞれに合わせた治療が可能となる。本明細書に記載の実施形態はこの需要を満たし、同時
にほかの利点ももたらす。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、試薬カートリッジとフローセルの注入口との間で流体連通が達成されるよう
構成した複数のチャネルを備える試薬マニホールドと、マニホールドの複数のポートから
下方へ伸びる複数の試薬シッパーであって、各試薬シッパーは、試薬カートリッジの試薬
リザーバへ挿入され、試薬リザーバからシッパーへ液体試薬が吸い上げられるよう構成し
た、複数の試薬シッパーと、リザーバとフローセルの注入口との間の流体連通を媒介する
よう構成した少なくとも1つのバルブと、を備えた流体システムを提供する。
【0007】
本開示は、流体システムの複数の試薬シッパーとz軸方向に沿って一斉に係合するよう
に構成された複数のリザーバであって、液体試薬が前記試薬リザーバから前記シッパーへ
吸い上げられ、前記複数の試薬リザーバはxおよびy軸方向において、上列、中列、下列
に並べられ、前記カートリッジの上列および下列沿いの試薬リザーバの深さは、z軸方向
において、1つ以上の中列にある試薬リザーバよりも深い、複数の試薬リザーバと、前記
流体システムの対応する位置合わせピンと係合するよう構成した、少なくとも2つの接触
面スロットと、を備える試薬カートリッジをさらに提供する。
【0008】
また本開示は、拡散接合された多層試薬マニホールドであって、該マニホールドは少な
くとも10個、15個、または20個のポートを備え、各ポートはシッパーを介して別の
試薬リザーバから試薬を吸い上げ、前記マニホールド内の流体チャネルを介してフローセ
ルの1つ以上のチャネルと流体連通している、試薬マニホールドも提供する。
【0009】
本開示は、a)液体試薬を試薬リザーバからキャッシュリザーバへ吸い上げるステップ
であって、該キャッシュリザーバは、試薬リザーバおよびフローセルの少なくとも1つの
チャネルと流体連通している、吸い上げるステップと、b)試薬をキャッシュリザーバか
らフローセルの少なくとも1つのチャネル上へ輸送するステップと、c)フローセルチャ
ネル上の試薬の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、
または100%をキャッシュリザーバへ輸送するステップであって、フローセルからの液
体試薬は、フローセルと接触後、試薬リザーバへ戻らない、輸送するステップと、d)ス
テップb)とステップc)とを繰り返してフローセル上の液体試薬の再利用を達成するス
テップとを含む試薬を再利用する方法をさらに提供する。
【0010】
本開示は、(i)光透過性表面を具備するフローセル、(ii)核酸試料、(iii)
配列決定反応のための複数の試薬、および(iv)前記試薬を前記フローセルに送達する
流体システムを備えた流体システムを提供するステップ(a)と、(i)xおよびy次元
の画像平面において広視野画像を検出するように構成した対物レンズをそれぞれ具備する
複数のミクロ蛍光計、および(ii)試料ステージを備える検出装置を提供するステップ
(b)と、塩基配列決定作業における流体操作をカートリッジ内で実行し、該塩基配列決
定作業における検出操作を前記検出装置において実行するステップ(c)であって、(i
)前記流体システムによって前記試薬が前記フローセルに送達され、(ii)前記複数の
ミクロ蛍光計によって前記核酸のフィーチャーの広視野画像が検出され、(iii)少な
くとも一部の試薬が前記フローセルからキャッシュリザーバに取り出される、ステップ(
c)とを含む配列決定方法をさらに提供する。
【0011】
1つ以上の実施形態の詳細を添付図面および以下に記載する。以下の説明と図面、およ
び請求の範囲から、ほかの特徴、目的、および利点も明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】試薬カートリッジと連動している試薬シッパーを有する流体システムを示す図である。
【
図1B】マニホールド内の流体チャネルのレイアウトの例を示す、マニホールドアセンブリの等角図である。
【
図2】試薬シッパー、バルブ、および位置合わせピンを有するマニホールドアセンブリの正面斜視図である。長さの異なるシッパーも示す図である。
【
図3】マニホールド内の流体チャネルの可能なレイアウトの1つを示すマニホールドアセンブリの上面図である。
【
図4】キャッシュラインと非キャッシュ流体チャネルの断面図を含む、マニホールド内のチャネルの断面図である。
【
図5】試薬ポートと二つのバルブとを連結する種々の接合部の図である。
【
図6】種々の長さのウェルを有する試薬カートリッジの断面図である。
【
図7A】一実施形態による、マニホールドアセンブリ内のキャッシュラインの簡易上面図である。
【
図7B】キャッシュラインからフローセルへの試薬の流動、それに続くフローセルからのキャッシュラインへの試薬の部分的補充、という試薬の相互流動を利用する方法における、試薬の再利用の種々の段階を示す図である。
【
図8】試薬ウェルと位置合わせピン用接触面スロットとを有する試薬トレイ接触面の上面図である。
【
図10】柔軟シッパーと穿孔シッパーとを含む試薬シッパーの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、流体システムと、フローセルのようなチャンバーへ試薬を供給する方法とを
提供する。特に有用な用途は、固定化した生物試料を検出することである。例えば、本明
細書に記載の方法およびシステムは、塩基配列決定の用途に用いることができる。光学的
にも非光学的にも検出可能な試料および/または試薬を用いる種々の塩基配列決定技術を
用いることができる。これらの技術は、本開示の方法および装置に特に適合するため、本
発明の特定の実施形態の種々の利点を際立たせる。これら利点のうちのいくつかを例とし
て以下に記載する。用途として塩基配列決定を例示するが、本開示の利点はほかの用途に
も拡大可能である。
【0014】
本明細書に記載の流体システムは、2013年2月13日に出願された「INTEGRATED O
PTOELECTRONIC READ HEAD AND FLUIDIC CARTRIDGE USEFUL FOR NUCLEIC ACID SEQUENCING
」と題する、米国特許出願第13/766,413号に記載される、各検出装置構造およ
び各塩基配列決定方法と共に用いたとき、特に有用である。該出願の内容は参照により本
明細書に完全に援用される。
【0015】
特定の実施形態においては、検出対象の試料は本明細書に記載の流体システムを用いて
検出チャンバーへ供給してもよい。塩基配列決定用途のより具体的な例をとると、流体シ
ステムはマニホールドアセンブリを備えており、マニホールドアセンブリは、配列決定用
試薬を入れるための1つ以上のリザーバ、試料調製用試薬を入れるための1つ以上のリザ
ーバ、配列決定作業中に発生する廃棄物を入れるための1つ以上のリザーバ、および/ま
たはポンプ、バルブ、およびフローセルを通して流体を移動させることができるほかの部
品と流体連通する。
【0016】
特定の実施形態においては、流体システムは、1つ以上の試薬が再利用可能となるよう
構成することができる。例えば、流体システムは、試薬をフローセルへ送達した後、該試
薬を該フローセルから取り出し、その後、また該試薬を該フローセルへ再導入するよう構
成することができる。試薬を再利用することにより廃棄物の量を減らすことができ、高価
な試薬または/および高濃度で(または大量に)送達される試薬を用いる工程のコストを
抑えることが可能となる。試薬の再利用は、試薬の消耗はフローセル表面でのみ、または
おもにフローセル表面で起こるため、試薬の大半は使用されておらず再利用も可能である
、という知見を利用したものである。
【0017】
図1Aに、試薬シッパー103および104と、バルブ102とを備えた例示的な流体
システム100を示す。本システムは、本明細書に記載のいくつかの実施形態により実現
される流体システムの利点を活用するものである。流体システム100は、例えば、試薬
シッパー、バルブ、チャネル、リザーバ等、種々の固定部品を備えるマニホールドアセン
ブリ101を含む。試薬カートリッジ400も存在し、試薬カートリッジ400は、z軸
方向に沿って試薬シッパー103および104一式と一斉に係合するよう構成した試薬リ
ザーバ401および402備え、液体試薬は試薬リザーバからシッパーへ吸い上げられる
。
【0018】
図1Bに、液体試薬を試薬リザーバからフローセルへ供給する際に用いることができる
例示的なマニホールドアセンブリ101を示す。マニホールドは、その各ポートからZ軸
方向において下方に伸びる試薬シッパー103および104を備える。試薬シッパー10
3および104は、試薬カートリッジ内の1つ以上の試薬リザーバ(図示しない)に挿入
することができる。マニホールドはまた、試薬シッパー103をバルブ102とバルブ1
09に流体接続するチャネル107を備える。試薬シッパー103および104と、チャ
ネル107と、バルブ102とで、試薬リザーバとフローセル(図示しない)との間の流
体連通を媒介する。バルブ102および109は、別々または共に、シッパー103また
は104を選択し、107のようなチャネルを通して、試薬リザーバとフローセル(図示
しない)との間の流体連通を媒介する。
【0019】
図1Aおよび
図1Bに示す装置は例示的な装置である。本開示の方法および装置のさら
なる例示的実施形態を以下でさらに詳細に記す。それら実施形態は、
図1Aおよび
図1B
に示す例に替えて代替的に使ってもよいし追加的に使ってもよい。
【0020】
図2に、試薬シッパーとバルブとを備える、別の例示的なマニホールドアセンブリを示
す。マニホールドは、試薬シッパーと平行な軸方向に沿って該マニホールドから下方に突
出する位置合わせピン105を備える。位置合わせピン105の長さは、z軸方向に沿っ
て試薬シッパーより長いが、代替的実施形態においては、試薬シッパーと同じかまたは短
くてもよい。位置合わせピン105は、試薬カートリッジ(図示しない)上にある対応す
る1つ以上の接触面スロットと係合するよう構成する。試薬シッパー103および104
は、マニホールド本体に収納されているポート106を介してマニホールドに連結してい
る。試薬シッパー104の長さは、試薬シッパー103と比較して長い。これは、試薬シ
ッパー103および104の深さに対応する種々な深さを有する試薬リザーバから液体を
吸い上げるためである。代替的な実施形態においては、シッパー103および104の長
さは同じであってもよいし、優勢な長さを取り換えてもよい。
【0021】
図2にはまた、異なるx-y平面上にあるチャネル107Aおよび107Bを示す。異
なるチャネル107Aおよび107Bは、もとは単一のチャネルから始まり、のちにT接
合109において二またに分かれ、異なる平面上に複数のチャネルを生成している。マニ
ホールドは、特定のバルブ102へ連結するチャネルを、すべて同じ平面Aに配置するか
、または平面A上と平面B上の組み合わせに配置することにより、液体試薬を1つのシッ
パーから、1つ以上のバルブへ誘導する。ほかのどのバルブに連結するチャネルも、この
共通平面または相互平面の特徴を共有しうる。
【0022】
図3にマニホールドアセンブリ101の上面図を示す。
図3には、マニホールド内の流
体チャネルの可能なレイアウトの1つを示す。流体チャネル107Aおよび107Bは、
単一ポート106から始まって、ポート106をバルブ102Aおよび102Bに連結す
る。チャネルのうちいくつかはキャッシュリザーバ108を備え、それらキャッシュリザ
ーバは、ある量の液体試薬がフローセル(図示せず)からキャッシュリザーバ108へ流
動することを可能にするのに十分な容積を有する。フローセルからの液体試薬は、フロー
セルと接触した後は、試薬リザーバ(図示せず)へ戻ることはない。
図3にまた、1つ以
上の位置合わせピン105の例示的な位置を示す。
図3に示すマニホールドアセンブリは
、共有バッファ用の注入ポート111も備える。バルブ102Aおよび102Bは、各々
、各試薬ポート106に対応する注入ポートと、フローセルへ流体接続する共用外部ポー
ト112および110と、廃棄物容器へ流体接続する廃棄物ポート113および109と
を備える。
【0023】
上記例示的実施形態において示すように、試薬カートリッジからフローセルへ試薬を送
達するための流体システムは、試薬カートリッジとフローセルの注入口との間で流体連通
が達成されるよう構成した複数のチャネルを備える試薬マニホールドを備えていてもよい
。流体システムにおいてマニホールドを用いた場合、チューブのみを用いた場合と比較し
て、いくつか利点を得られる。例えば、固定されたチャネルを有するマニホールドは、チ
ューブの取り付け場所の誤りや、連結箇所における締め過ぎまたは締め不足といった組立
時の誤りを減少させる。加えて、マニホールドは維持が容易であり、時間をかけて個々の
ラインの試験をしたり交換したりする必要はなく、例えば、ユニット全体を交換可能であ
る。
【0024】
マニホールドの1つ以上のチャネルは、固体材料を介して流体通路を備えていてもよい
。通路はいかなる直径であってもよく、通路を介して、望ましい水準で流体を輸送するこ
とができる。通路の内径は、例えば、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm
、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、2mm、3
mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、または10mmより小さくも
よい。例えば、通路の形状は直線状または湾曲していてもよい。代替的または追加的に、
通路は湾曲部分と直線部分との組み合わせを有していてもよい。通路の断面図は、例えば
、正方形、円形、「D」形状、または通路を通して望ましい水準で流体を輸送できる限り
においては、他のいかなる形状であってもよい。
図4は、マニホールド本体を通る流体通
路の例示であり、ある通路302の断面図である。
図4に示す例示的チャネル302は、
直径0.65mmの半円と、別途0.65mm×0.325mmの0長方形とを融合して
形成した、断面「D」形状を有している。
【0025】
シッパーとバルブ間のチャネルは、マニホールド本体内部にすべて収納されていてもよ
い。代替的または追加的に、チャネルは、マニホールドの外部に、その一部分を1つ以上
備えていてもよい。例えば、可撓性チューブといったチューブにより、マニホールド上の
、流体通路の一部分を該通路の別の一部分と連結してもよい。代替的または追加的に、フ
ローセルを、可撓性チューブにより、システムにおける固定された流体部品、例えば、ポ
ンプ、バルブ、センサ、およびゲージ等に接続してもよい。例として、フローセルまたは
本システムのチャネルを、可撓性チューブにより、シリンジポンプまたはぜん動ポンプと
いったポンプに連結することができる。
【0026】
マニホールド本体は、その内部の1つ以上のチャネルを支持する限りにおいては、いか
なる適した固体材料から作製してもよい。よって、マニホールド本体は、ポリカーボネー
ト、ポリ塩化ビニル、DELRIN(登録商標)(ポリオキシメチレン)、HALAR(登録商標)
、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PEEK(商標)(ポリエーテルエーテ
ルケトン)、PK(ポリケトン)、PERLAST(登録商標)、ポリエチレン、PPS(ポリ
フェニレンサルファイド)、ポリプロピレン、ポリスルホン、FEP、PFA、高純度P
FA、RADEL(登録商標)R、316ステンレススチール、TEFZEL(登録商標)ETFE(
エチレンテトラフルオロエチレン)、TPX(登録商標)(ポリメチルペンテン)、チタン
、UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)、ULTEM(登録商標)(ポリエーテルイミド
)、VESPEL(登録商標)といった樹脂、または、本明細書に提示する実施形態におけるマ
ニホールドのチャネルを通して輸送する溶剤および流体と適合する限りにおいては、ほか
のいかなる適した固体材料からなるものであってもよい。マニホールド本体は、単一片の
材料から形成してもよい。代替的または追加的に、マニホールド本体は接合した多層から
形成してもよい。接合方法は、例えば、接着材、ガスケット、拡散接合である。チャネル
は、固体材料中に、いかなる適した方法で形成してもよい。チャネルは、例えば、穿設、
エッチング、またはミリングにより固体材料中に形成してもよい。チャネルは、複数の層
を接合する前に、固体材料中に形成してもよい。代替的または追加的に、チャネルは、複
数の層をともに接合した後に形成してもよい。
【0027】
図5に、試薬ポート301と2つのバルブを接続する種々の接合部300を示す。
図5
に示す各例においては、ポート301はチャネル302と流体接続しており、チャネル3
02は、2つのチャネル302Aおよび302Bに分岐する。それら2つのチャネルは、
それぞれ、異なるバルブへ接続している。1つ目の構成においては、接合部はポート30
1からの流体の流れを、マニホールドの別々の層上にあるチャネル302Aおよび302
Bへと分けている。
図5における2つ目及び3つ目の構成においては、接合部300は、
1つの層内で分かれている角に丸みのある正方形303、またはマニホールドの1つの層
内で、完全な丸みを帯びている分かれ目304を有する。
【0028】
ここに提示するマニホールドアセンブリは、液体試薬を試薬カートリッジからフローセ
ルへ送達するために構成した。よって、マニホールドは、試薬シッパーと連結するポート
をいくつ有していてもよい。より具体的には、ポートの数は、試薬カートリッジ中の試薬
リザーバの数および構成に対応していてもよい。いくつかの実施形態においては、マニホ
ールドが備えるポートの数は、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、
9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、1
9個、20個、または30個であり、各ポートは、試薬シッパーとチャネルとを、少なく
とも1つのバルブを用いて、流体連通するよう接続する。
【0029】
本明細書に提示する流体システムはまた、マニホールドのポートからz軸方向に沿って
下方へ伸びるシッパーチューブの配列を備えていてもよい。各試薬シッパーは、試薬カー
トリッジの試薬リザーバへ挿入され、試薬リザーバからシッパーへ液体試薬が吸い上げら
れるよう構成される。試薬シッパーは、例えば、近位端と遠位端とを有するチューブ体を
備えていてもよい。遠位端の先端を鋭く先細りさせ、試薬カートリッジの試薬リザーバを
覆うシールとして用いるフィルム層またはフォイル層に穴を開けられるよう構成する。図
10に種々の例示的シッパー先端を示す。試薬シッパーは、例えば、チューブ体を遠位端
から近位端へ通る単一の内腔を備えていてもよい。該内腔は、シッパーの一端側である試
薬カートリッジとシッパーの他端側である試薬マニホールドとの間の流体連通を可能にす
るよう設けもよい。
図2に例示するように、試薬シッパー103および104は、マニホ
ールド本体に収納されたポート106を介してマニホールドに結合する。
【0030】
いくつかの実施形態においては、
図2に例示するように、一部の試薬シッパーの長さは
、それ以外の試薬シッパーの長さよりも短い。例えば、その一部のシッパーの長さは、少
なくとも、1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1
.7mm、1.8mm、1.9mm、または2.0mmだけ、それ以外の試薬シッパーよ
り短い。マニホールドと試薬シッパーは、試薬カートリッジをz軸方向に沿って双方向的
に移動させる昇降機構を有するデバイスにおいて用いてもよい。そのようなデバイスにお
いて、試薬シッパーは、試薬カートリッジの対応するウェルまたはリザーバに挿入される
。ある実施形態においては、試薬ウェルは保護フォイルで覆われていてもよい。よって、
種々の長さのシッパーを用いることにより、昇降機構が要する力の量を減少させることが
でき、試薬カートリッジが穿孔シッパーと接触する際に、フォイルを穿孔する力を供与で
きる。シッパーの長さの違いは試薬カートリッジの試薬ウェルの深さと有利に対応する。
ゆえに、シッパーとカートリッジが完全に係合する位置にくるとき、各シッパーは、その
対応する試薬ウェルにおいて、望ましい深さに達することができる。
【0031】
シッパーは、内腔を通る流体輸送を可能にし、本明細書に提示する実施形態におけるマ
ニホールドのチャネルを通して輸送する溶剤および流体と適合する限りにおいては、いか
なる適した材料から形成してもよい。シッパーは単一のチューブから形成してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態においては、少なくとも1つの試薬シッパーは、その先端が試薬カ
ートリッジの試薬ウェルの底部に突き当たったとき屈曲するよう構成した柔軟な先端部を
備える。柔軟な先端部が屈曲または変形するため、シッパーの内腔は試薬ウェルの底部に
十分に近づくかまたは接触さえ可能になる。よって、試薬ウェル内の退避体積を減少また
はなくすことさえ可能となる。先端部に柔軟性があると、小容量の試料または試薬を吸い
上げる際に特に有利である。または、試薬リザーバ内のほぼすべてまたはすべての液体を
吸い上げることが望ましい場合にも特に有利である。柔軟な先端部を有するシッパーの本
体部はすべて、先端部と同じ可撓性材料により作製してもよい。代替的または追加的に、
シッパー本体部は先端部とは異なる材料により作製してもよい。柔軟な先端部は、試薬リ
ザーバの底部に押し付けられ接触したときに、変形したり撓んだりする材料であれば、い
かなる適した材料により作製してもよい。適した材料としては、ポリウレタンのような熱
可塑性重合体を含む、重合発泡体および/または合成発泡体、ゴム、シリコンおよび/ま
たはエラストマーが挙げられる。
【0033】
本明細書に提示の流体システムはまた、例えば、リザーバとフローセルの注入口との間
の流体連通を制御するために代替的に動作可能なポンプおよびバルブを備える。
図2およ
び
図3に示すマニホールドアセンブリにおいて例示するように、マニホールド側チャネル
注入口は、1つ以上のバルブ側の対応する注入ポートと接続するよう構成してもよい。こ
れにより、各試薬チャネルがバルブ側の注入ポートと流体連通する。よって、マニホール
ドの試薬チャネルを介して、1つ以上の各注入ポートが試薬シッパーと流体連通可能とな
る。各1つ以上のバルブは、フローセル上の1つ以上のレーンの注入口に流体接続する共
通外部ポート(110、112)を備える。代替的または追加的に、各1つ以上のバルブ
は、1つ以上の廃棄物容器に流体接続する廃棄物ポート(109、113)を備える。
【0034】
流体システムが第1のバルブと第2のバルブとを少なくとも備える実施形態においては
、各バルブが、各々、フローセルの第1のチャネルと第2のチャネルに別々の試薬を同時
に送達するよう構成してもよい。よって、第1のバルブにより1つの試薬が第1のフロー
セルチャネルに送達され、同時に、第2のバルブにより異なる試薬が第2のフローセルチ
ャネルに送達される。
図9の例示的な実施形態に示すように、バルブA(VA)はフロー
セルの注入口V1と流体接続しており、該フローセルはマニホールドであり、レーン1と
レーン3とへ試薬を送達する。同様に、バルブB(VB)は、フローセルの対向端に位置
する注入口V2と流体接続しており、該フローセルはレーン2とレーン4とへ試薬を送達
する。注入口V1およびV2は、フローセルにおける対向端に位置しており、試薬の流れ
る方向は、レーン1およびレーン3と、レーン2およびレーン4とでは逆方向である。
【0035】
本明細書に記載の流体システムは、塩基配列決定作業におけるフローセルチャネルの流
体操作を行う際に有利に用いることができる。より具体的には、本明細書に記載の流体シ
ステムは、検出装置による、フローセルにおける核酸のフィーチャー検出用の構成におい
て、該検出装置と動作的に関連してもよい。いくつかの実施形態においては、検出装置は
複数のミクロ蛍光計を備えていてもよく、各ミクロ蛍光計は、xおよびy軸次元の画像平
面において広視野画像を検出するよう構成した対物レンズを備える。本明細書に記載の流
体システムは、2013年2月13日に出願された「INTEGRATED OPTOELECTRONIC READ H
EAD ANDFLUIDIC CARTRIDGE USEFUL FOR NUCLEIC ACID SEQUENCING」と題する、米国特許
出願第13/766,413号に記載される、各検出装置構造と共に用いたとき、特に有
用である。該出願の内容は参照により本明細書に完全に援用される。
【0036】
一例として、塩基配列決定の特定の実施形態においては、複数のチャネルを備えるフロ
ーセルは千鳥状に流体操作し光学検出することができる。より具体的には、流体操作は、
フローセルの第1のチャネルサブセットに対して行い、光学検出は第2のチャネルサブセ
ットに対して行ってもよい。例えば、一構成においては、フローセルに、少なくとも4つ
の直線状のチャネルを互いに平行になるよう配置することができる。(例えば、チャネル
1からチャネル4は連続する列として並べてもよい。)流体操作は1つおきのチャネル(
例えばチャネル1とチャネル3)について行い、検出はそのほかのチャネル(例えばチャ
ネル2とチャネル4)について行ってもよい。この特定の構成は、間隔を空けて配置され
た検出器を有する読み込みヘッドを用いて実現することができ、フローセルの1つおきの
チャネルに対物レンズを誘導する。この場合、検出中のチャネルの検出状態は維持しつつ
も、各バルブは、塩基配列決定のサイクルための試薬が交互のチャネルに流れるよう誘導
するよう作動する。この例においては、交互のチャネルの第1セットは、第1の配列サイ
クルの流体ステップを通り、交互のチャネルの第2のセットは、第2の配列サイクルの検
出ステップを通る。第1のサイクルの流体ステップが完了し、第2のサイクルの検出ステ
ップが完了すると、読み込みヘッドは交互のチャネルの第1セットへ(x軸沿いに)移り
、各弁は発動してチャネルの第2セットへ配列試薬を送達する。その後、第1のサイクル
のための検出ステップが(チャネルの第1セットにおいて)完了し、第3のサイクルのた
めの流体ステップを(チャネルの第2のセットにおいて)始めることができる。望ましい
回数のサイクルを行うまで、または塩基配列決定作業が完了するまで、このような方法で
これらステップを幾度か繰り返すことができる。
【0037】
上記のように千鳥状に流体ステップと検出ステップを行うことにより、配列決定にかか
る全体の作業時間をより短縮できる。上記例では、流体操作に要する時間が検出に要する
時間が大体同じであれば、千鳥状にステップを行うことにより(すべてのチャネルを平行
して流体操作し、その後すべてのチャネルを平行して検出する場合と比較して)配列決定
時間を短縮できる。もちろん、検出ステップのタイミングと流体ステップのタイミングと
が同じでない実施形態においては、千鳥状構成を、1つおきからより適切なパターンに変
更して、チャネルの1つのサブセットについて平行スキャンを行っている間に、チャネル
の別のサブセットは流体ステップ中である、という状態を実現してもよい。
【0038】
また、流体を逆方向に流動させることにより、個々のミクロ蛍光計の性能を比較する手
段を得ることができる。例えば、複数のミクロ蛍光計をフローセルの各レーンに用いると
、ミクロ蛍光計の性能が低下した場合、検出器が原因なのか、それともレーンの一端から
他端への化学的有効性が減少したせいなのかを判断するのは難しいであろう。流体流動が
逆な場合、レーンにまたがるミクロ蛍光計性能を比較できるため、性能の低下はミクロ蛍
光計に原因があるのかどうかを効果的に判断できる。
【0039】
図9に例示的流体システムの流体工学図を示す。フローセル2020には4本のレーン
があり、それらレーンは各々、2本の個々の流体ラインFVおよびRVのうちの1本と流
体接続している。流体ラインFVおよびRVは、注入バルブVAおよびVBにより個々に
動作する。注入バルブVAおよび注入バルブVBは、試薬マニホールド2030内の種々
のポートと流体接続している試薬カートリッジまたはトレイ2035の試料リザーバ、S
BS試薬リザーバ、および増幅試薬リザーバからの流体の流動を制御する。
【0040】
図9のシステムを流れる流体の流動は、2つの別々のシリンジポンプ2041および2
042により動作する。シリンジポンプは、流体を流体システムを通して吸い上げるよう
設けられており、各シリンジポンプは個別にバルブ2051および2052により発動さ
せてもよい。よってフローセルの各チャネルを流れる流体は個別に専用の圧力源により制
御することができる。バルブ2051および2052は、廃棄物リザーバ2060へ向か
う流体の流動も制御する。
【0041】
図9においては、下流シリンジポンプの動作により流体が吸い上げられる流体システム
を例示する。有用な流体システムであれば、シリンジポンプの代わりにほかの種類のデバ
イスを用いて流体を動作させられることは理解されたい。そのようなデバイスの例として
は、例えば、正圧または負圧、ぜん動ポンプ、膜ポンプ、ギアポンプ、またはアルキメデ
スポンプ等が挙げられる。さらに、これらおよびほかのデバイスは、フローセルに対して
下流域から流体を吸い上げるか、または上流域から流体を送ることができる。
【0042】
図9に、フローセルの4つのチャネルのための2つのシリンジポンプの利用を例示する
。よって、流体システムは、用いるチャネルの数よりも少ない数のポンプを備える。本開
示の流体カートリッジにおいて有用な流体システムであれば、ポンプをいくつ備えていて
もよいことは理解されたい。例えば、そのポンプ(またはほかの圧力源)の数は、用いる
チャネルの数と同じか、またはそれよりも少なくてもよい。例えば、いくつかのチャネル
を共用ポンプと流体接続可能であり、バルブはそれぞれのチャネル内に流体の流れを発動
させることができる。
【0043】
図9に例示する流体システムは、バルブVAとフローセル注入口V1との間の流体経路
RV沿いに位置する、気泡検出センサBUB‐4も備える。追加で、気泡センサBUB‐
3も、バルブVBとフローセル注入口V2との間の流体経路FV沿いに備える。本開示の
流体システムにおいて有用な流体ラインであれば、気泡センサ、圧力計等をいくつ備えて
いてもよい。センサおよび/または圧力計は、流体システムにおけるいかなる流体経路部
分沿いに配置してもよい。例えば、センサまたは圧力計は、バルブのうちの1つとフロー
セルとの間の流体ライン沿いに配置してもよい。代替的または追加的に、センサまたは圧
力計は、試薬リザーバとバルブのうちの1つとの間の流体ライン沿いに配置してもよいし
、バルブとポンプとの間の流体ライン沿いに配置してもよいし、または、ポンプと注入口
または廃棄物リザーバのようなリザーバとの間の流体ライン沿いに配置してもよい。
【0044】
図6に例示的な試薬カートリッジの断面図を示す。
図6に示す試薬カートリッジ400
は、各ウェル402と比較して、z軸方向に沿うさまざまな深さの各ウェル401を備え
る。より具体的には、
図6に例示した試薬カートリッジは、対応する試薬シッパー(図示
しない)の長さを収容できるよう設計されたウェルを有し、各シッパーは、各シッパーと
カートリッジが完全に係合する位置にくるとき、その対応する試薬ウェル内で望ましい深
さに達する。
図6に例示する試薬カートリッジにおいては、各ウェルは、y軸方向に沿っ
て行または列をなして並んでいる。そこでは、行または列にはないウェル401は、行や
列にあるウェル402と比較して、z軸方向に下に向かって伸びている。いくつか、また
はすべてのウェルの深さは異なるものであってもよい。代替的または追加的に、いくつか
、またはすべてのウェルの深さが同じであってもよい。各シッパーとカートリッジが完全
に係合する位置にくるとき、どのシッパー端の侵入深さ(すなわち、ウェルの底面からシ
ッパー端のさきまでの距離)も、試薬カートリッジのほかのどの所定のウェルの、ほかの
どのシッパー端の侵入深さと同じとすることができる。どのシッパー端の侵入深さも、試
薬カートリッジのほかのどの所定のウェルの侵入深さと同じでなければいけないという必
要性はない。少なくともいくつかの試薬ウェルの深さが異なる場合、そのウェルの深さは
、ほかの試薬シッパーよりも、例えば、少なくとも0.2mm、0.3mm、0.4mm
、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.2
mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1
.9mm、または2.0mm短くてもよい。同様に、各シッパーとカートリッジが完全に
係合する位置にくるとき、どのシッパー端の侵入深さでも、試薬カートリッジのほかのど
のシッパー端の侵入深さと、少なくとも0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5m
m、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.2mm、1.
3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、
または2.0mm異なっていてもよい。
【0045】
試薬ウェルと位置合わせピン用接触面スロットとを有する例示的な試薬トレイの接触面
の上面図を
図8に示す。
図8の例示的な試薬カートリッジ400に示すように、カートリ
ッジは複数の試薬リザーバ401A、401B、402A、および402Bを備える。図
8における試薬リザーバは、列をなしてx軸方向およびy軸方向に並んでいる。また
図8
に示すように、カートリッジは、マニホールドアセンブリ(図示しない)の対応する位置
合わせピンと係合する接触面スロット403および404を備える。カートリッジはまた
、試薬ウェルまたはリザーバをいくつ覆っていてもよい保護フォイルを備え、それらフォ
イルは、試薬カートリッジが穿孔シッパーと接触する際に、穿孔されうる。
【0046】
本明細書に提示する試薬カートリッジは、試薬リザーバまたはウェルをいくつ備えてい
てもよい。試薬リザーバまたはウェルは、x軸方向およびy軸方向にそっていかなる形態
で並べてもよいが、カートリッジ内での試薬の輸送および保存が容易になるように並べる
。代替的または追加的に、試薬リザーバまたはウェルは、x軸方向およびy軸方向にそっ
ていかなる形態で並べてもよいが、マニホールドのポートからz軸方向に沿って下向きに
伸びるシッパーチューブの配列との連動に適するように並べる。より具体的には、試薬リ
ザーバまたはウェルは、マトリクス状に並ぶ試薬シッパーと一斉に係合するのに適した並
びであればいかなる形態でもよいが、液体試薬が試薬リザーバからシッパーへ吸い上げら
れることが可能であるよう並べる。
【0047】
すべての試薬ウェルが、マニホールドアセンブリのすべてのシッパーチューブと一斉に
連動しなければいけない訳ではない。例えば、試薬カートリッジは、ほかのリザーバまた
はウェルがシッパーチューブの配列により係合しているときでも、非連動状態のままであ
る1つ以上の試薬リザーバまたはウェルのサブセットを備えることができる。一例として
、本明細書に提示するカートリッジは、複数の試薬リザーバに対応する配置をとる複数の
洗浄リザーバを備えていてもよい。そのような配置により、試薬シッパーが試薬リザーバ
と係合しておらず洗浄バッファが洗浄リザーバからシッパーへ吸い上げられるとき、洗浄
リザーバは試薬シッパーと一斉に係合する。
図8に、試薬ウェル401Aの列を示す例示
的実施形態を提示する。カートリッジは、また、対応するウェル401Bの列も備える。
ウェル401Bは、x軸方向において互いに同じ配置方向を保持するが、y軸方向におい
てはウェル401Aからオフセットである。各オフセットウェル401Bは、例えば、1
つのカートリッジを使用した後、別のカートリッジを使用する前とにシッパーチューブお
よび流体ラインをすすぎ洗いするために設けた洗浄バッファを備えていてもよい。
【0048】
代替的または追加的に、空のリザーバ、またはバッファ、試料、またはほかの試薬を有
するリザーバがカートリッジ上にあってもよい。追加のリザーバはシッパーチューブと連
動するする必要性はないが、連動することはできる。例えば、リザーバは、カートリッジ
を使用する間に、廃棄物、あふれ出た試薬、またはバッファで満たされてもよい。そのよ
うなリザーバには、例えば、シッパーチューブと連動しないポートを介してアクセス可能
となりうる。
【0049】
カートリッジのリザーバを対応するシッパーチューブと容易に正確に位置合わせできる
ように、位置合わせスロットをカートリッジに配置してもよい。例えば、シッパーチュー
ブの列をある1セットのリザーバから取り除き、別の試薬リザーバまたは洗浄リザーバの
セットへ移動するという特定の実施形態においては、位置合わせスロットをカートリッジ
に配置して、試薬シッパーの列を1つまたは両方のリザーバセットと正確に位置合わせす
ることができる。
図8に示すように、例示的なカートリッジは、x軸方向に同じ配置方向
を保持する各位置合わせスロット404を備えるが、それらスロットは、対応する位置合
わせスロット403に対してy軸方向にオフセットである。本明細書に提示する実施形態
のカートリッジは、流体アセンブリの特徴と適合する位置合わせを可能にする位置合わせ
スロットをいくつ備えていていてもよい。例えば、カートリッジは、0個、1個、2個、
3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれより多くの位置合わせ
スロットを備えることができる。位置合わせスロットは、流体システムの対応する位置合
わせピンと係合し、流体システムの試薬シッパーは、試薬リザーバおよび/または洗浄リ
ザーバと合致するよう配置可能となる。
【0050】
特定の実施形態においては、流体システムにおいて1つ以上の試薬が再利用可能である
。例えば、流体システムにおいて、試薬をフローセルへ送達し、該フローセルから該試薬
を取り除き、該試薬を該フローセルへ再導入するよう構成する。
図7に一構成を例示する
。
図7には、マニホールドアセンブリのキャッシュラインの上面図を示す。
図7Aの上部
模式図に示すように、試薬キャッシュは、ほぼ使用済み試薬からほぼ未使用(完全未使用
)試薬までの濃度勾配を維持することに用いることができる。いくつかの実施形態におい
ては、キャッシュリザーバは、キャッシュリザーバ内における流体の混合を低減し、フロ
ーセルの最近位からフローセルの最遠位までのリザーバの長さに沿って液体試薬の勾配を
維持することができる。試薬がキャッシュリザーバからフローセルへ戻し返されると、フ
ローセルをまたいで流れる試薬は、ほぼ使用済み試薬からほぼ未使用(完全未使用)試薬
までの勾配を形成するよう、勾配は維持される。
【0051】
図7Aの下部図に例示するように、マニホールドの流体工学により、試薬リザーバは、
バルブ注入口1804を介してフローセル(図示しない)の入力ポートと流体連通する。
バルブ1804は、フローセル(図示しない)と、CLMリザーバ、SREリザーバ、I
MFリザーバ、およびLAM1・LPM1リザーバとの間の流体の流動を制御する。チャ
ネル1802は、ポート1801を介して、CLMリザーバをバルブ注入口1804に流
体接続する。チャネル1802の一部分は、フローセル(図示しない)の一本以上のレー
ンの容積と同等の容積の試薬を有する試薬キャッシュ1803を含む。試薬キャッシュ1
803の容積が、チャネルのほかの部分1802と比較して増加しているため、未使用試
薬の蓄えを試薬リザーバに維持しつつも、使用済み試薬を再利用のために保存することで
きる。よって、試薬リザーバ内の未使用試薬の蓄えが使用済み試薬により汚染されること
を回避できる。
【0052】
図7Aに示す構成は例示的なものである。 ほかの構成によっても再利用を実現するこ
とが可能である。例えば、1つ以上のキャッシュリザーバの容積は、キャッシュリザーバ
と流体連通しているフローセルチャネルの容積の5%、10%、15%、20%、25%
、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%
、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、250%、300
%、350%、400%、450%、500%、550%、600%、650%、700
%、750%、800%、850%、900%、950%、1000%、1500%、2
000%、2500%、3000%、またはそれより大きい。代替的または追加的に、キ
ャッシュリザーバは、1つ以上のフローセルチャネルを流れる液体試薬のある量がキャッ
シュリザーバへ流動することを可能にするのに十分な容積を有し、フローセルからの液体
試薬は、フローセルに接触した後は、試薬リザーバに戻ることはない。例えば、その液体
試薬のある量は、1つ以上のフローセルチャネルを流れる液体試薬の5%、10%、15
%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65
%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%
、250%、300%、350%、400%、450%、500%、550%、600%
、650%、700%、750%、800%、850%、900%、950%、1000
%、1500%、2000%、2500%、3000%、またはそれより多い。
【0053】
本明細書に提示するキャッシュリザーバは、キャッシュリザーバ内における流体の混合
を低減する。いくつかのそのような実施形態においては、流体の混合が低減することによ
り、フローセルの最近位からフローセルの最遠位までのリザーバの長さに沿って、液体試
薬の勾配を維持することができる。代替的または追加的に、本明細書に提示するキャッシ
ュリザーバは、キャッシュリザーバ内における流体の混合を促進する1つ以上の混合要素
を備えていてもよい。任意の適した能動的または受動的な混合要素を、そのような実施形
態で用いてもよい。例えば、混合要素はバッフル要素であってもよい。バッフル要素は、
流体がキャッシュリザーバを輸送される際に流体の混合を促進するよう構成された、湾曲
構造、またはほかの任意の受動的・能動的構造または流体的特徴を有する。代替的または
追加的に、任意の適したポンプ、回転子、回転翼、注入口等を、キャッシュリザーバ内で
の能動的混合に用いることができる。
【0054】
本明細書に提示するキャッシュリザーバは、その目的に適しているかぎり、いかなる形
状、容積、長さであってもよい。特定の実施形態においては、キャッシュリザーバは、1
つ以上のフローセルチャネルを流れる液体試薬のある量がキャッシュリザーバへ流動する
ことを可能にするのに十分な容積を有し、フローセルからの液体試薬は、フローセルに接
触した後は、試薬リザーバに戻ることがない限り、あらゆる形状、容積、および/または
長さのキャッシュリザーバを、本明細書に提示する流体システムに用いることができる。
例えば、キャッシュリザーバは蛇行したチャネルであってもよい。別の例としては、キャ
ッシュリザーバは、円柱または非円柱形状であってもよい。さらに、本明細書に提示する
流体システム中において、1つ以上のキャッシュリザーバを備える流体チャネルはいくつ
あってもよい。
【0055】
本明細書に提示するキャッシュリザーバは、ポンプと流体連通していてもよく、該ポン
プは、キャッシュリザーバからフローセルへ液体試薬を移動させ、かつ該フローセルから
該キャッシュリザーバへ液体試薬を戻すよう構成される。フローセルへの試薬の進入およ
びフローセルからの試薬の退出は、フローセルの同じポートを通して行われる。代替的ま
たは追加的に、フローセルへの試薬の進入およびフローセルからの試薬の退出は、フロー
セルの異なるポートを通して行われることもあるが、その場合でも試薬の再利用は達成で
きる。例えば、本明細書に提示の流体システムは、2013年2月13日に出願された「
INTEGRATED OPTOELECTRONIC READ HEAD AND FLUIDIC CARTRIDGE USEFUL FOR NUCLEIC ACI
D SEQUENCING」と題する、米国特許出願第13/766,413号に記載される各装置構
造と関連して記載された、あらゆる再利用リザーバおよび構成を利用することができる。
該出願の内容は参照により本明細書に完全に援用される。
【0056】
図7Bにおける模式図に、本明細書に提示する再利用方法の例示的な実例を示す。該方
法は試薬の相互流動を利用するものであり、試薬はキャッシュラインからフローセルへ流
動し、それに続いて、キャッシュラインはフローセルから部分的補充を受ける。
図7Bの
最上部図に示す状態においては、キャッシュリザーバ1903は100μLの試薬190
6を含み、スプリッタ1904およびバルブ1911を介してフローセルのレーン190
5と流体連通している。バルブ1904は、試薬1906がフローセルのレーン1905
へ流れるよう発動する。同時に、未使用試薬1907が試薬リザーバから吸い上げられ、
キャッシュリザーバ1903の左側の空間を満たす。フローセル上の試薬が使用された後
、バルブ1911は、使用済み試薬1906の一部(75μL)をキャッシュリザーバ1
903へ戻す。使用済み試薬1906の残りの部分(25μL)はバルブ1911により
廃棄物容器へ移送される。サイクル1が終わると、キャッシュリザーバ1903は、キャ
ッシュリザーバの長さにわたって、25μLの未使用試薬1907と75μLの使用済み
試薬1906とを含む勾配を有する。キャッシュリザーバからフローセルへ、その後また
キャッシュリザーバへという試薬の相互流動のサイクルを繰り返す。各サイクルにおいて
、バルブ1911により、使用済み試薬1906の一部(25μL)は廃棄物容器へ移送
され、使用済み試薬1906の残りの部分はキャッシュリザーバ1903へ戻される。そ
のようなサイクルを4回繰り返すと、キャッシュリザーバ1903は、25μLの未使用
試薬1910と、25μLの1度使用した試薬1909と、25μLの2度使用した試薬
1908と、25μLの3度使用した試薬1907とを含む。
【0057】
図7Aおよび
図7Bに示す構成は例示的なものである。ほかの構成によっても、特定の
工程で用いる1つ以上の試薬を再利用することは可能である。いくつかの試薬を再利用す
る構成においては、試薬を再利用する流体構成は、特定の工程で用いる試薬サブセットに
のみ用いられることは理解されたい。例えば、試薬の第1のサブセットは、強靭ゆえ再利
用可能だが、第2のサブセットは、1度使用した後、汚染や劣化、またはほかの望まない
影響にさらされ易くなるという場合もある。よって、流体システムは試薬の第1のサブセ
ットを再利用するために構成することができる一方、試薬の第2のセットの流体工学は一
度きりの使用のために構成されることとなる。
【0058】
ある特定の試薬は何度でも再利用でき、特定の工程に適している。例えば、本明細書に
て例示した、本明細書にて引用した参照文献に記載された、またはそうでなければ、本明
細書に記載の工程で用いる既知の1つ以上の試薬は、少なくとも2回、3回、4回、5回
、10回、25回、50回、またはそれよりも多い回数再利用できる。実際、種々の望ま
しい試薬は、いかなるものでも、少なくとも何度も再利用できる。特定の試薬のどの部分
が、再利用のためにキャッシュリザーバへ戻されてもよい。本明細書にて例示した、本明
細書にて引用した参照文献に記載された、またはそうでなければ、本明細書に記載の工程
で用いる既知の1つ以上の試薬の容積は、1本以上のフローセルのレーン上の、引き続き
の再利用のためにキャッシュリザーバへ戻される試薬の容積の1%、2%、3%、4%、
5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、4
0%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、9
0%、95%、または100%であってもよい。代替的または追加的に、1本以上のフロ
ーセルのレーン上の試薬の容積の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9
%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55
%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100
%を、廃棄物容器へ移送、またはそうでなければフローセル上の引き続きの利用から取り
除いてもよい。
【0059】
塩基配列決定作業への適用が例示されてはいるが、試薬を再利用するための流体構成お
よび方法は、ほかの作業に適用してもよい。特に、試薬を送達する際、あるサイクルの繰
返しを伴う作業に適用してもよい。適用できる例示的な作業としては、ポリペプチド、多
糖、または合成高分子のような重合体の配列決定作業やそのような重合体の合成作業が挙
げられる。
【0060】
上記実施形態に示したように、試薬を再利用する方法は、a)液体試薬を試薬リザーバ
からキャッシュリザーバへ吸い上げるステップであって、該キャッシュリザーバは、試薬
リザーバおよびフローセルの少なくとも1つのチャネルと流体連通している、吸い上げる
ステップと、b)試薬をキャッシュリザーバからフローセルの少なくとも1つのチャネル
上へ輸送するステップと、c)フローセルチャネル上の試薬の少なくとも30%、40%
、50%、60%、70%、80%、90%、または100%をキャッシュリザーバへ輸
送するステップであって、フローセルからの液体試薬は、フローセルと接触後、試薬リザ
ーバへ戻らない、輸送するステップと、d)ステップb)とステップc)とを繰り返し、
フローセル上の液体試薬の再利用を達成する、ステップとを含みうる。1つ以上のキャッ
シュリザーバは、ポンプと流体連通していてもよく、該ポンプは、キャッシュリザーバか
らフローセルへ液体試薬を移動させ、かつ該フローセルから該キャッシュリザーバへ液体
試薬を戻すよう構成する。フローセルへの試薬の進入およびフローセルからの試薬の退出
は、フローセルの同じポートを通して行われる。代替的または追加的に、フローセルへの
試薬の進入およびフローセルからの試薬の退出は、フローセルの異なるポートを通して行
われることもあるが、その場合でも試薬の再利用は達成できる。いくつかの実施形態にお
いては、ステップc)において、キャッシュリザーバへ輸送されなかった、フローセルか
らの試薬を移送してもよい。一例として、キャッシュリザーバへ輸送されなかった、フロ
ーセルからの試薬は、廃棄物リザーバへ輸送してもよい。ステップb)およびステップc
)のうちの1つまたは両方のステップにおける試薬の輸送は、キャッシュリザーバとフロ
ーセルとを流体接続するバルブを介して行われてもよい。ステップb)およびステップc
)のうちの1つまたは両方のステップにおける試薬の輸送は、例えば、単一方向への流体
の流動により行われてもよいし、または相互流動により行われてもよい。
【0061】
本流体システムおよび方法の諸実施形態は、塩基配列決定技法に特に有用である。例え
ば、1塩基合成反応(sequencing-by-synthesis:SBS)プロトコールに特に適する。
SBSでは、核酸テンプレートに沿って伸長する核酸プライマーを観察して該テンプレー
ト内のヌクレオチド配列を決定する。基本となる化学プロセスは、重合(例えばポリメラ
ーゼ酵素による触媒作用等)またはライゲーション(例えばリガーゼ酵素による触媒作用
等)であり得る。ポリメラーゼベースSBSの特定の実施形態では、蛍光標識したヌクレ
オチドをテンプレートに応じてプライマーに付加し(それによりプライマーを伸長させ)
、プライマーに付加したヌクレオチドの順序および型の検出を使用してテンプレートの配
列を決定する。複数の異なるテンプレートを、テンプレート毎の発生事象が識別可能な条
件下においた表面上でSBS法に供することができる。例えば、テンプレートは、各テン
プレートが空間的に識別可能となるアレイ表面上に存在させることができる。典型的には
、テンプレートはフィーチャーにおいて発生し、各フィーチャーはそれぞれ同じテンプレ
ートの複数のコピー(「クラスター」または「コロニー」とも呼ばれる)を有する。ただ
し、SBSは、各フィーチャーがシングルテンプレート分子を有し、シングルテンプレー
ト分子が互いに分解可能なアレイ(「単分子アレイ」とも呼ばれる)上で実行してもよい
。
【0062】
フローセルは、核酸アレイの収容に利用可能な基板である。配列決定技法では典型的に
試薬の送達が複数サイクルにわたって繰り返し実行されるため、フローセルは配列決定技
法に好都合である。例えば、第1のSBSサイクルを開始するにあたり、一種または複数
の標識ヌクレオチドやDNAポリメラーゼなどを核酸テンプレートのアレイが収容された
フローセル内に流し込むこと、またはそのようなフローセルを通過させることができる。
プライマー伸長により標識ヌクレオチドが取り込まれるフィーチャーの検出は、例えば本
明細書に記載の方法または装置を使用して行うことができる。任意選択で、ヌクレオチド
がプライマーに付加された後にプライマー伸長の進行を停止させる可逆的停止特性をヌク
レオチドに備えさせることもできる。例えば、可逆的ターミネーター部分を有するヌクレ
オチドアナログをプライマーに付加することにより、当該部分にブロック解除剤が送達さ
れるまで伸長が進行しないようにしてもよい。したがって、可逆的停止を使用する実施形
態では、(検出の実行前または実行後に)ブロック解除試薬をフローセルに送達するよう
にしてもよい。送達ステップ間に洗浄を実行してもよい。その後、このサイクルをn回繰
り返してプライマーをヌクレオチドn個分伸長させ、それにより長さnの配列を検出する
ことができる。例示的な配列決定技法は、例えばBentley et al., Nature 456:53-59 (20
08)、国際公開第04/018497号、米国特許第7,057,026号、国際公開第
91/06678号、国際公開第07/123744号、米国特許第7,329,492
号、米国特許第7,211,414号、米国特許第7,315,019号、米国特許第7
,405,281号、および米国特許出願公開第2008/0108082号に記載され
ている。該文献および出願の内容は参照により本明細書に援用される。
【0063】
SBSサイクルのヌクレオチド送達ステップでは、一度に単一の型のヌクレオチドを送
達することも、複数の異なるヌクレオチド型(例えばA、C、T、およびG)を送達する
こともできる。一度に単一の型のヌクレオチドしか存在しないヌクレオチド送達構成では
、各ヌクレオチドを個別送達特有の時間的分離に基づいて識別することができるので、必
ずしも各ヌクレオチドに固有の標識を付する必要はない。したがって、配列決定方法また
は装置は、単色検出法を使用することができる。例えば、ミクロ蛍光計または読み込みヘ
ッドは、単一の波長または単一の波長範囲で励起を生じさせるものであればよい。したが
って、ミクロ蛍光計または読み込みヘッドは単一の励起源さえあればよく、マルチバンド
励起フィルターは必ずしも必要でない。一度に複数の異なるヌクレオチドがフローセル内
に存在することになるヌクレオチド送達構成では、混合物中の各ヌクレオチド型に付され
る蛍光標識の差に基づいて、様々なヌクレオチド型が取り込まれるフィーチャーを識別す
ることができる。例えば、それぞれ異なる蛍光体を有する4種類のヌクレオチドを使用し
てもよい。一実施形態において、これら4種類の蛍光体は、スペクトル中の4種類の領域
における励起を使用して識別することができる。例えば、ミクロ蛍光計または読み込みヘ
ッドが4種類の励起放射源を含むようにしてもよい。別法として、読み込みヘッドに含ま
れる励起放射源を4種類未満とする一方、単一ソースに由来する励起放射の光学フィルタ
リングを利用とし、フローセルにおいて様々なレンジの励起放射を発生させることができ
るようにしてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、試料(例えば核酸フィーチャーのアレイ)中に存在する4種
類のヌクレオチドを4色未満の色を使用して検出することができる。第1の例として、1
対のヌクレオチド型を同一波長で検出することができるが、1対のヌクレオチド型は、当
該対の一方の要素と他方の要素の強度差に基づいて識別すること、または当該対の一方の
要素に対する、当該対の他方の要素について検出されたシグナルと比較して見かけのシグ
ナルを顕在化または消失させる変化(例えば化学的修飾、光化学的修飾、または物理的修
飾による)に基づいて識別することが可能である。第2の例として、4種のヌクレオチド
型のうち3種目までを特定の条件下で検出可能としながら、4種目のヌクレオチド型には
当該条件下で検出可能な標識を付さないようにすることもできる。第2の例におけるSB
Sの一実施形態では、3種目までのヌクレオチド型の核酸への取り込みを、それぞれのシ
グナルの存在に基づいて決定し、4種目のヌクレオチド型の核酸への取り込みを、シグナ
ルの欠如に基づいて決定することができる。第3の例として、2種の画像または2種のチ
ャネル内で1種のヌクレオチド型を検出することができ(例えばベースは同じであるが標
識が異なる2つの種(species)の混合物を使用すること、2種の標識を有する単一の種
を使用すること、または両チャネル内で検出される標識を有する単一の種を使用すること
ができ)、他のヌクレオチド型は2種の画像またはチャネルのうちの一方のみで検出され
る。この第3の例において、2種の画像間または2種のチャネル間の比較は、異なるヌク
レオチド型を識別する働きをする。
【0065】
上段に記載した3種の例示的な構成は、互いに排他的なものではなく様々な組合せで使
用することができる。例示的な一実施形態は、蛍光標識を有する、可逆的にブロックされ
たヌクレオチド(rbNTP)を使用するSBS法である。この形式では、4種の異なる
ヌクレオチド型を配列決定対象となる核酸フィーチャーのアレイに送達することができる
。また、可逆的ブロック群の存在により各フィーチャーにつき1つの取り込み事象しか発
生しない。本例においてアレイに送達されるヌクレオチドは、以下のヌクレオチド型を含
むことができる。すなわち、第1のチャネルで検出される第1のヌクレオチド型(例えば
、第1の励起波長で励起したときに第1のチャネルで検出される標識を有するrbATP
)、第2のチャネルで検出される第2のヌクレオチド型(例えば、第2の励起波長で励起
したときに第2のチャネルで検出される標識を有するrbCTP)、第1のチャネルと第
2のチャネルの両方で検出される第3のヌクレオチド型(例えば、第1および/または第
2の励起波長で励起したときに両チャネルで検出される少なくとも1種の標識を有するr
bTTP)、およびどちらのチャネルで検出される標識も有しない第4のヌクレオチド型
(例えば、外因性標識のないrbGTP)である。
【0066】
これら4種のヌクレオチド型が上例のアレイと接触したときに検出作業を実行して、例
えばアレイの2種の画像をキャプチャすることができる。これらの画像は別々のチャネル
において同時に取得しても順次取得してもよい。第1の励起波長および第1のチャネル内
の蛍光波長を使用して得られる第1の画像は、第1および/または第3のヌクレオチド型
(例えばAおよび/またはT)が取り込まれたフィーチャーを示す。第2の励起波長およ
び第2のチャネル内の蛍光波長を使用して得られる第2の画像は、第2および/または第
3のヌクレオチド型(例えばCおよび/またはT)が取り込まれたフィーチャーを示す。
各フィーチャーに取り込まれるヌクレオチド型の明確な同定は、これら2種の画像を比較
して下記のフィーチャーを特定することによって決定することができる。すなわち、第1
のヌクレオチド型(例えばA)が取り込まれた、第1のチャネルでのみ確認されるフィー
チャー、第2のヌクレオチド型(例えばC)が取り込まれた、第2のチャネルでのみ確認
されるフィーチャー、第3のヌクレオチド型(例えばT)が取り込まれた、両チャネルで
確認されるフィーチャー、および第4のヌクレオチド型(例えばG)が取り込まれた、ど
ちらのチャネルでも確認されないフィーチャーである。なお、本例においてGが取り込ま
れたフィーチャーの位置は、(他の3種のヌクレオチド型のうちの少なくとも1種が取り
込まれる)他のサイクルから決定することができる。4色未満の色の検出を使用して4種
類のヌクレオチドを識別する例示的な装置および方法は、例えば米国仮出願第61/53
8,294号に記載されている。該出願の内容は参照により本明細書に援用される。
【0067】
いくつかの実施形態では、核酸を表面に付加し、配列決定前または配列決定中に増幅さ
せることができる。増幅は、例えば表面上に核酸クラスターを形成するブリッジ増幅を使
用して行うこともできる。有用なブリッジ増幅方法は、例えば米国特許第5,641,6
58号、米国特許出願公開第2002/0055100号、米国特許第7,115,40
0号、米国特許出願公開第2004/0096853号、米国特許出願公開第2004/
0002090号、米国特許出願公開第2007/0128624号、または米国特許出
願公開第2008/0009420号に記載されている。該特許文献の内容は参照により
本明細書に援用される。表面上の核酸を増幅させる別の有用な方法は、例えばLizardi et
al., Nat. Genet. 19:225-232 (1998)や米国特許出願公開第2007/0099208号
に記載されているローリングサークル増幅法(RCA)である。該文献および出願の内容
は参照により本明細書に援用される。ビーズを利用したエマルジョンPCRも使用可能で
あり、例えばDressman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:8817-8822 (2003)、国
際公開第05/010145号、米国特許出願公開第2005/0130173号、また
は米国特許出願公開第2005/0064460号に記載がある。該文献および出願の内
容は参照により本明細書に援用される。
【0068】
上述のとおり、配列決定の実施形態は繰り返し処理の一例である。本開示の方法は、繰
り返し処理との相性が良い。以下および本明細書の他の箇所に記載する実施形態を参照さ
れたい。
【0069】
このように、本明細書に記載の配列決定方法は、(i)光透過性表面を具備するフロー
セル、(ii)核酸試料、(iii)配列決定反応のための複数の試薬、および(iv)
前記試薬を前記フローセルに送達する流体システムを備えた流体システムを提供するステ
ップ(a)と、(i)xおよびy次元の画像平面において広視野画像を検出するように構
成した対物レンズをそれぞれ具備する複数のミクロ蛍光計、および(ii)試料ステージ
を備える検出装置を提供するステップ(b)と、塩基配列決定作業における流体操作をカ
ートリッジ内で実行し、該塩基配列決定作業における検出操作を前記検出装置において実
行するステップ(c)とを含み、(i)前記流体システムによって前記試薬が前記フロー
セルに送達され、(ii)前記複数のミクロ蛍光計によって前記核酸のフィーチャーの広
視野画像が検出され、(iii)少なくとも一部の試薬が前記フローセルからキャッシュ
リザーバに取り出されることを特徴とする。
【0070】
本出願全体にわたって、種々の出版物および/または特許出願を参照した。これら出版
物等の開示内容は、参照により本出願に完全に援用される。
【0071】
本明細書における「備える(comprising)」という用語は、オープンエンド形式を意図し
、記載した要素だけでなく、いかなる追加的要素もさらに含むことを意図する。
【0072】
いくつかの実施形態を記載したが、種々の変形が行われるうることは理解されたい。よ
って、ほかの実施形態も添付の実用新案登録請求の範囲に含まれる。