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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】二重殻タンク及び船舶
(51)【国際特許分類】
   F17C 3/04 20060101AFI20230908BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
F17C3/04 C
B63B25/16 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022532229
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2020025367
(87)【国際公開番号】W WO2021260947
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下田 太一郎
(72)【発明者】
【氏名】冨永 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】持田 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 常夫
(72)【発明者】
【氏名】今井 達也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 広崇
(72)【発明者】
【氏名】中土 洋輝
(72)【発明者】
【氏名】高梨 直人
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-243590(JP,A)
【文献】特開平11-6600(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0029877(US,A1)
【文献】実開平6-25194(JP,U)
【文献】特開2016-16806(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0029170(KR,A)
【文献】特開昭63-259298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 3/04
B63B 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵部が内部に形成された非真球形の中空殻形状の内槽と、
前記内槽を覆う外槽と、
前記内槽の外壁及び前記外槽の内壁によって囲まれた空間に充填されて断熱層を形成する粒状断熱材とを、備え、
空載時の前記内槽と前記外槽との頂部隙間の大きさが、前記内槽と前記外槽との底部隙間の大きさよりも大きく、空載時における前記頂部隙間の前記粒状断熱材の厚さは、前記底部隙間の大きさよりも大きい、
二重殻タンク。
【請求項2】
空載時における前記頂部隙間の大きさは、前記底部隙間の大きさに、前記内槽の収縮変形に伴う前記粒状断熱材の沈降により生じる空隙の体積に相当する体積分の前記外槽の頂部からの高さを加えた値以上である、
請求項1に記載の二重殻タンク。
【請求項3】
前記外槽の中心が前記内槽の中心よりも上方に位置する、
請求項1又は2に記載の二重殻タンク。
【請求項4】
前記外槽及び前記内槽の各々は、下半球殻部、上半球殻部、及び、前記下半球殻部と前記上半球殻部とを繋ぐ筒形状の胴部からなり、前記外槽の前記胴部の高さは前記内槽の前記胴部の高さよりも大きい、
請求項1又は2に記載の二重殻タンク。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の二重殻タンクを搭載した、船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外槽と内槽とを備える二重殻タンク及びそれを搭載した船舶の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、低温液体を貯蔵するタンクとして、二重殻タンクが知られている。二重殻タンクは、一般的に、低温液体を収容する内槽と、この内槽を所定の間隔を隔てて外側から覆う外槽と、内槽と外槽との間に形成された断熱層とを備える。断熱層は、例えば、内槽と外槽との間に充填された粒状断熱材で形成され、粒状断熱材としてはパーライトが使用される。
【0003】
二重殻タンクの建造時に、内槽と外槽とが完成してから、内槽が空の状態で内槽と外槽との間を埋めるように粒状断熱材が充填される。そのため、内槽に低温液体が供給されて内槽が熱収縮すると、内槽と外槽との間隔が広がって、内槽と外槽との間に充填されている粒状断熱材が沈降する可能性がある。粒状断熱材が沈降した場合、二重殻タンクのタンク頂部に粒状断熱材の存在しない空間が生じ、タンク頂部の断熱層の厚さが低減する。なお、ここで「タンク頂部」とは、内槽の外側且つ外槽の内側の空間において、二重殻タンクの頂部に当たる部分をいう。二重殻タンクにおいて断熱層の厚さが不十分な箇所が生じると、その箇所の断熱性が低下する。断熱性の低下により、内槽の冷熱が外槽に伝わり、外槽に霜が付き、外槽の腐食を招くおそれがある。また、断熱性の低下により内槽への入熱量が増加すると、低温液体のボイルオフガス量が増加し、内槽の圧力が過剰となるおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献1の二重殻タンクでは、内槽の半径方向に伸縮可能な伸縮材(グラスウール)で形成された内側の断熱層と、充填材(パーライト)で形成された外側の断熱層との内外二層からなる断熱層を備える。この二重殻タンクでは、内槽の熱収縮によって断熱層に生じる隙間が膨張した伸縮材によって充たされ、充填材の沈降が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-238285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、特許文献1の二重殻タンクと異なるアアプローチから、内槽の収縮変形に起因して粒状断熱材が沈降した後もタンク頂部に適切な厚さの断熱層を保持することの可能な二重殻タンク及びそれを搭載した船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る二重殻タンクは、
貯蔵部が内部に形成された非真球形の中空殻形状の内槽と、
前記内槽を覆う外槽と、
前記内槽の外壁及び前記外槽の内壁によって囲まれた空間に充填されて断熱層を形成する粒状断熱材とを、備え、
空載時の前記内槽と前記外槽との頂部隙間の大きさが、前記内槽と前記外槽との底部隙間の大きさよりも大きく、空載時における前記頂部隙間の前記粒状断熱材の厚さは、前記底部隙間の大きさよりも大きいことを特徴としている。
ここで、前記外槽の中心が前記内槽の中心よりも上方に位置していてよい。或いは、前記外槽及び前記内槽の各々は、下半球殻部と、上半球殻部と、前記下半球殻部と前記上半球殻部とを繋ぐ筒形状の胴部とからなり、前記外槽の前記胴部の高さは前記内槽の前記胴部の高さよりも大きくてよい。
【0008】
上記二重殻タンクにおいて、空載時における前記頂部隙間の大きさは、前記底部隙間の大きさに、前記内槽の収縮変形に伴う前記粒状断熱材の沈降により生じる空隙の体積に相当する体積分の前記外槽の頂部からの高さを加えた値以上であることが望ましい。
【0009】
また、本発明の一態様に係る船舶は、上記構成の二重殻タンクを搭載している。
【0010】
上記二重殻タンク及びそれを搭載した船舶では、二重殻タンクの頂部隙間の大きさが底部隙間の大きさよりも大きいことから、空載時においてタンク頂部にタンク底部よりも厚い断熱層を形成し得る。そして、二重殻タンクの空載時における頂部隙間の粒状断熱材の厚さは底部隙間の大きさよりも大きいことから、内槽に低温液体が供給されて内槽が収縮すると、内槽と外槽との隙間が広がって、内槽と外槽との間に充填されている粒状断熱材が沈降するが、粒状断熱材が沈降した状態においても、タンク頂部に十分な厚さの断熱層が保持される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内槽の収縮変形に起因して粒状断熱材が沈降した後もタンク頂部に適切な厚さの断熱層を保持し得る二重殻タンク及びそれを搭載した船舶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る二重殻タンクを搭載した船舶を示す図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る空の二重殻タンクの空載時の全体的な構成を示す断面図である。
図3図3は、図2に示す二重殻タンクの満載時の断面図である。
図4図4は、本発明の第2実施形態に係る二重殻タンクの空載時の全体的な構成を示す断面図である。
図5図5は、図4に示す二重殻タンクの満載時の断面図である。
図6図6は、本発明の第3実施形態に係る二重殻タンクの空載時の全体的な構成を示す断面図である。
図7図7は、図6に示す二重殻タンクの満載時の断面図である。
図8図8は、本発明の第4実施形態に係る二重殻タンクの空載時の全体的な構成を示す断面図である。
図9図9は、本発明の第5実施形態に係る二重殻タンクの空載時の全体的な構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る二重殻タンク1を搭載した船舶5を示す図である。図1に示す船舶5は、例えば、液化ガス運搬船である。二重殻タンク1は、液体水素、液体窒素、液化天然ガス等の低温液体を貯蔵するために利用される。船舶5の船体51の後側上部には船橋52が設けられ、後側下部には推進器53が設けられている。船体51には、船長方向に並ぶ複数個(本実施形態では3個)の二重殻タンク1が搭載されている。複数の二重殻タンク1は、船体51の上甲板から上方へ突出するように配置され、各二重殻タンク1の上部はタンクカバー54で覆われている。各二重殻タンク1Aは、図示されないスカート又は支柱によって船体51に支持される。以下、二重殻タンク1の第1~5実施形態(二重殻タンク1A~1E)について説明する。
【0014】
〔第1実施形態〕
次に、図面を参照して本発明の第1実施形態に係る二重殻タンク1Aを説明する。図2は、本発明の第1実施形態に係る二重殻タンク1Aの空載時の全体的な構成を示す断面図であり、図3は、図2に示す二重殻タンク1Aの満載時の状態を示す断面図である。
【0015】
図2及び図3に示す二重殻タンク1Aは、内槽2と、内槽2を覆う外槽3と、内槽2と外槽3との間に充填されて断熱層を形成する粒状断熱材4と、内槽2と外槽3との間の空間を真空引きする真空ポンプ6とを備える。
【0016】
内槽2は、非真球形の中空殻形状を呈し、例えば、多数のSUS製パネルが溶接されて成る。内槽2の内部には、低温液体7を密閉した状態で貯蔵する貯蔵部20が形成されている。内槽2は、タンク建造時の常温と低温液体7収容時の低温との温度差による収縮変形及び変形回復を許容し得る。
【0017】
外槽3は、内槽2よりも一回り大きい非真球形の中空殻形状を呈し、例えば、多数の鋼板が溶接されて成る。内槽2は、内槽2の外壁と外槽3の内壁との間を接続する図示されないロッド等によって、外槽3に支持される。
【0018】
図2に示す二重殻タンク1Aでは、内槽2は水平方向へ伸長した中空球殻形状を呈する。内槽2は、水平方向に延びる円筒状の胴部27と、胴部の両端を閉塞する半球状の側部28とからなる。内槽2の船長方向と平行な断面は水平方向を長手方向とする長円形(角丸長方形とも称する)を呈し、内槽2の船幅方向と平行な断面は円形を呈する。但し、内槽2の船幅方向と平行な断面が水平方向を長手方向とする長円形を呈し、内槽2の船長方向と平行な断面が円形を呈していてもよい。
【0019】
外槽3は、内槽2と同様に、水平方向へ伸長した中空球殻形状を呈する。外槽3は、軸心方向を水平方向する略円筒状の胴部37と、胴部の両端を閉塞する略半球状の側部38とからなる。外槽3の船長方向と平行な断面は水平方向を長手方向とする略長円形を呈し、外槽3の船幅方向と平行な断面は上下方向を長手方向とする長円形を呈する。但し、外槽3の船幅方向と平行な断面が水平方向を長手方向とする略長円形を呈し、外槽3の船長方向と平行な断面が上下方向を長手方向とする長円形を呈していてもよい。外槽3の胴部37の直径は内槽2の胴部27の直径よりも大きい。外槽3の中心3cは、内槽2の中心2cよりも上方に位置する。
【0020】
粒状断熱材4は、内槽2の外壁及び外槽3の内壁によって囲まれた空間に圧密状態で充填されている。粒状断熱材4は、例えば、粒状のパーライトである。但し、粒状断熱材4は、パーライト以外の公知の粒状断熱材が採用されてよい。また、内槽2の外壁及び外槽3の内壁によって囲まれた空間に、グラスウールなどの繊維状断熱材が部分的に配置されていてもよい。
【0021】
内槽2と外槽3との間の空間は、真空ポンプ6によって強制排気され、ほぼ真空状態とされている。このように粒状断熱材4が充填された空間がほぼ真空状態とされることで、断熱効果が更に高められている。但し、内槽2と外槽3との間の空間は、必ずしも真空状態である必要はなく、貯蔵部20に貯蔵される低温液体7の性状に応じて気体が充填されていてもよい。
【0022】
外槽3の中心3cを通る鉛直線と、内槽2の中心2cを通る鉛直線とは、二重殻タンク1Aのタンク中心線Cと一致する。タンク底部において、タンク中心線C上における外槽3の内壁と内槽2の外壁との隙間を「底部隙間G1」と称する。また、タンク頂部において、タンク中心線C上における外槽3の内壁と内槽2の外壁との隙間を「頂部隙間G2」と称する。なお、この明細書において「タンク頂部」とは、内槽2の外側且つ外槽3の内側の空間において、二重殻タンク1Aの頂部に当たる部分をいう。また、この明細書において、「タンク底部」とは、内槽2の外側且つ外槽3の内側の空間において、二重殻タンク1Aの底部に当たる部分をいう。
【0023】
本実施形態に係る二重殻タンク1Aでは、底部隙間G1よりも頂部隙間G2が大きくなるように、内槽2と外槽3とが配置されている。
【0024】
内槽2に低温液体7が収容されると内槽2は収縮変形し、これに伴って粒状断熱材4が沈降し、タンク頂部に空隙が生じる。空載時(図2)のタンク頂部の空隙の体積と、満載時(図3)のタンク頂部の空隙の体積との差を空隙体積ΔVとする。空隙体積ΔVは、計算やシミュレーションにより求めることができる。なお、空載時とは、内槽2の貯蔵部20が空の状態(図2)のときのことであり、積み荷が空(又は、空と見做せる液位)であるときや、製造されたときが該当する。また、満載時とは、内槽2の貯蔵部20に低温液体7が所定の満載液位まで収容された状態(図3)のときのことである。タンク頂部から空隙体積ΔVに相当する体積分の高さをΔLとする。高さΔLは、外槽3の形状等の情報を利用して計算によって求めることができる。空載時の頂部隙間G2の大きさL2は、底部隙間G1の大きさL1に、タンク頂部から空隙体積ΔVに相当する体積分の高さΔLを加えた値以上である。空載時の頂部隙間G2の大きさL2と、底部隙間G1の大きさL1と、高さΔLとの間には、次式1が成立する。
L2>L1+ΔL・・・(式1)
空載時の頂部隙間G2の大きさL2が過剰となると経済的ではないことから、空載時の頂部隙間G2の大きさL2は上記式1を満足するうち小さい値であることが望ましい。
【0025】
そして、空載時における頂部隙間G2の粒状断熱材4の厚さは、底部隙間G1の大きさL1よりも大きい。望ましくは、満載時における頂部隙間G2の粒状断熱材4の厚さが、底部隙間G1の粒状断熱材4の厚さ以上である。なお、空載時における頂部隙間G2は、粒状断熱材4で埋められていてもよい。
【0026】
以上に説明した通り、本実施形態に係る二重殻タンク1Aは、貯蔵部20が内部に形成された中空殻形状の内槽2と、内槽2を覆う外槽3と、内槽2の外壁及び外槽3の内壁によって囲まれた空間に充填されて断熱層を形成する断熱材(本実施形態では粒状断熱材4)とを、備える。そして、空載時の内槽2と外槽3との頂部隙間G2の大きさが、内槽2と外槽3との底部隙間G1の大きさよりも大きい。
【0027】
ここで、空載時における頂部隙間G2の粒状断熱材4の厚さは、底部隙間G1の大きさL1よりも大きいことが望ましい。更に、空載時における頂部隙間G2の大きさL2は、底部隙間G1の大きさL1に、内槽2の収縮変形に伴う粒状断熱材4の沈降により生じる空隙の体積(空隙体積ΔV)に相当する体積分の外槽3の頂部からの高さΔLを加えた値以上であることが望ましい。
【0028】
上記構成の二重殻タンク1Aでは、空載時において、タンク頂部にタンク底部よりも厚い断熱層が形成されている(図2、参照)。そして、内槽2に低温液体7が供給されて内槽2が収縮すると、内槽2と外槽3との隙間が広がって、内槽2と外槽3との間に充填されている粒状断熱材4が沈降するが、粒状断熱材4が沈降した状態においても、タンク頂部に十分な厚さL2’の断熱層が保持される(図3、参照)。
【0029】
このように、本実施形態に係る二重殻タンク1Aによれば、内槽2の収縮変形に起因して粒状断熱材4が沈降した後もタンク頂部に適切な厚さL2’の断熱層を保持することができる。
【0030】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る二重殻タンク1Bを説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る二重殻タンク1Bの空載時の全体的な構成を示す断面図である。図5は、図4に示す二重殻タンク1Bの満載時の断面図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の第1実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0031】
図4及び図5に示すように、本実施形態に係る二重殻タンク1Bは、内部に貯蔵部20が形成された非真球形の内槽2と、内槽2を覆う外槽3と、内槽2の外壁及び外槽3の内壁によって囲まれた空間に充填されて断熱層を形成する粒状断熱材4とを備える。
【0032】
本実施形態に係る二重殻タンク1Bにおいて、内槽2は上下方向へ伸長した中空球殻形状を呈する。内槽2は、下半球殻部21と、上半球殻部22と、下半球殻部21と上半球殻部22とを繋ぐ筒形状の胴部23とからなる。下半球殻部21、上半球殻部22、及び胴部23の直径は等しい。
【0033】
また、二重殻タンク1Bにおいて、外槽3は上下方向へ伸長した中空球殻形状を呈する。外槽3は、下半球殻部31と、上半球殻部32と、下半球殻部31と上半球殻部32とを上下方向に繋ぐ筒形状の胴部33とからなる。下半球殻部31、上半球殻部32、及び胴部33の直径は等しく、その値は内槽2の直径よりも大きい。そして、外槽3の胴部33の高さは内槽2の胴部23の高さよりも大きい。内槽2と外槽3とは、内槽2の下半球殻部21の中心21cと外槽3の下半球殻部31の中心31cとが一致するように配置されている。
【0034】
二重殻タンク1Bにおいても、前述の二重殻タンク1Aと同様に、内槽2と外槽3との頂部隙間G2の大きさL2が、内槽2と外槽3との底部隙間G1の大きさL1よりも大きい。また、空載時における頂部隙間G2の粒状断熱材4の厚さは、底部隙間G1の大きさL1よりも大きい。
【0035】
本実施形態に係る二重殻タンク1Bでは、外槽3及び内槽2の各々は、下半球殻部31,21、上半球殻部32,22、及び、下半球殻部31,21と上半球殻部32,22とを繋ぐ筒形状の胴部33,23からなり、外槽3の胴部33の高さは内槽2の胴部23の高さよりも大きい。このように二重殻タンク1Bでは内槽2が上下方向にストレッチした球殻形状を呈するので、上記第1実施形態に係る二重殻タンク1Aの作用効果に加えて、内槽2及び外槽3が真球球殻形状である場合と比較して、貯蔵部20の容積を占有床面積に対して大きくすることができるという作用効果を奏する。
【0036】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係る二重殻タンク1Cを説明する。図6は、本発明の第3実施形態に係る二重殻タンク1Cの空載時の全体的な構成を示す断面図である。図7は、図6に示す二重殻タンク1Cの満載時の断面図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の第1実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0037】
図6及び図7に示すように、本実施形態に係る二重殻タンク1Cは、内部に貯蔵部20が形成された非真球形の内槽2と、内槽2を覆う外槽3と、内槽2の外壁及び外槽3の内壁によって囲まれた空間に充填されて断熱層を形成する粒状断熱材4とを備える。
【0038】
本実施形態に係る二重殻タンク1Cにおいて、外槽3及び内槽2の各々は、いずれも直方体状の中空殻形状を有する。つまり、外槽3及び内槽2の各々は、いずれも方形タンクである。そして、外槽3の中心3cは、内槽2の中心2cよりも上方に位置する。
【0039】
二重殻タンク1Cにおいても、前述の二重殻タンク1Aと同様に、内槽2と外槽3との頂部隙間G2の大きさL2が、内槽2と外槽3との底部隙間G1の大きさL1よりも大きい。また、空載時における頂部隙間G2の粒状断熱材4の厚さは、底部隙間G1の大きさL1よりも大きい。
【0040】
本実施形態に係る二重殻タンク1Cでは、上記第1実施形態に係る二重殻タンク1Aの作用効果に加えて、内槽2及び外槽3が真球球殻形状である場合と比較して、貯蔵部20の容積を占有床面積に対して大きくすることができるという作用効果を奏する。
【0041】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態に係る二重殻タンク1Dを説明する。図8は、本発明の第4実施形態に係る二重殻タンク1Dの空載時の全体的な構成を示す断面図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の第1実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0042】
図8に示すように、本実施形態に係る二重殻タンク1Dは、内部に貯蔵部20が形成された非真球形の内槽2と、内槽2を覆う外槽3と、内槽2の外壁及び外槽3の内壁によって囲まれた空間に充填されて断熱層を形成する粒状断熱材4とを備える。
【0043】
本実施形態に係る二重殻タンク1Dにおいて、外槽3及び内槽2の各々は、いずれも平底円筒状の中空殻形状を有する。内槽2は、円形状の平らな底部と、底の周囲から立ち上がる円筒状の胴部と、胴部の上部に接続された半球殻状の頂部とからなる。外槽3は、内槽2と同様に、円形状の平らな底部と、底の周囲から立ち上がる円筒状の胴部と、胴部の上部に接続された半球殻状の頂部とからなる。外槽3の胴部は、内槽2の胴部よりも大径であり且つ高さが高い。そして、外槽3の中心3cは、内槽2の中心2cよりも上方に位置する。
【0044】
本実施形態に係る二重殻タンク1Dにおいても、前述の二重殻タンク1Aと同様に、内槽2と外槽3との頂部隙間G2の大きさL2が、内槽2と外槽3との底部隙間G1の大きさL1よりも大きい。また、空載時における頂部隙間G2の粒状断熱材4の厚さは、底部隙間G1の大きさL1よりも大きい。
【0045】
本実施形態に係る二重殻タンク1Dでは、上記第1実施形態に係る二重殻タンク1Aの作用効果に加えて、内槽2の底部が平底であることによって、内槽2及び外槽3が真球球殻形状である場合と比較して、貯蔵部20の容積を占有床面積に対して大きくすることができるという作用効果を奏する。
【0046】
〔第5実施形態〕
次に、本発明の第5実施形態に係る二重殻タンク1Eを説明する。図9は、本発明の第5実施形態に係る二重殻タンク1Eの空載時の全体的な構成を示す断面図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の第1実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0047】
図9に示すように、本実施形態に係る二重殻タンク1Eは、内部に貯蔵部20が形成された非真球形の内槽2と、内槽2を覆う外槽3と、内槽2の外壁及び外槽3の内壁によって囲まれた空間に充填されて断熱層を形成する粒状断熱材4とを備える。
【0048】
本実施形態に係る二重殻タンク1Eにおいて、内槽2は、真球体の一部をなす形状である頂部及び底部と、非真球体の一部をなす形状である胴部とを有する。頂部と胴部、底部と胴部とは滑らかにつながっている。頂部の曲率中心は内槽2の中心2cより下方にあり、底部の曲率中心は内槽2の中心2cよりも上方にある。胴部の赤道部分の直径は、頂部と胴部によってその一部が形成される仮想の真球体の直径と略同一である。胴部と頂部の接続部分、及び、胴部と底部の接続部分は、頂部と胴部によってその一部が形成される仮想の真球体よりも外側へ膨張している。
【0049】
二重殻タンク1Eにおいて、外槽3は、内槽2と同様に、真球体の一部をなす形状である頂部及び底部と、非真球体の一部をなす形状である胴部とを有する。外槽3の頂部及び底部の曲率半径は、内槽2の頂部及び底部の曲率半径よりも大きい。外槽3の胴部の高さは、内槽2の胴部の高さよりも大きい。そして、外槽3の中心3cは、内槽2の中心2cよりも上方に位置する。
【0050】
本実施形態に係る二重殻タンク1Eにおいても、前述の二重殻タンク1Aと同様に、内槽2と外槽3との頂部隙間G2の大きさL2が、内槽2と外槽3との底部隙間G1の大きさL1よりも大きい。また、空載時における頂部隙間G2の粒状断熱材4の厚さは、底部隙間G1の大きさL1よりも大きい。
【0051】
本実施形態に係る二重殻タンク1Eでは、上記第1実施形態に係る二重殻タンク1Aの作用効果に加えて、真球体よりも部分的に膨張した球殻形状であることによって、貯蔵部20の容積を占有床面積に対して大きくすることができるという作用効果を奏する。
【0052】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。上記の構成は、例えば、以下のように変更することができる。
【0053】
例えば、上記実施形態において二重殻タンク1,1A~1Eは船体51に支持されているが、二重殻タンク1,1A~1Eは地上に設置されてもよい。二重殻タンク1,1A~1Eが船体51に支持された場合、船体51の動揺や振動による粒状断熱材4の沈降に対してもタンク頂部に十分な厚さの断熱層が保持される。
【符号の説明】
【0054】
1,1A,1B,1C,1D, 1E:二重殻タンク
2 :内槽
2c :内槽の中心
3 :外槽
3c :外槽の中心
4 :粒状断熱材
5 :船舶
51 :船体
6 :真空ポンプ
7 :低温液体
20 :貯蔵部
21,31 :下半球殻部
31c :下半球殻部の中心
22,32 :上半球殻部
23,33 :胴部
C :タンク中心線
G1 :底部隙間
G2 :頂部隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9