(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】耐衝撃性構造物
(51)【国際特許分類】
B29C 70/30 20060101AFI20230908BHJP
B29C 70/10 20060101ALI20230908BHJP
B29C 70/68 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
B29C70/30
B29C70/10
B29C70/68
(21)【出願番号】P 2022549233
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(86)【国際出願番号】 US2021014848
(87)【国際公開番号】W WO2021216153
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-08-12
(32)【優先日】2020-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522322996
【氏名又は名称】ヘリコイド インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】マッカーヴィル ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ワシレンコフ チャド
(72)【発明者】
【氏名】ジュベール デ ウッシュ パスカル
(72)【発明者】
【氏名】キサイラス デヴィッド
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0033411(US,A1)
【文献】米国特許第06641893(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0030805(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0314553(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00 - 70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物であって、前記複合構造物は、
前記繊維強化複合構造物の第1の領域を定める強化用繊維から成る第1の複数のプライを有し、前記第1の複数の繊維プライは、配向方向を定める互いに平行な繊維を含み、前記第1の複数の繊維プライは、前記繊維強化複合構造物のための耐荷強度を提供するよう配置され、前記第1の複数の繊維プライは、螺旋関係をなすようには配置されておらず、第1の対をなす隣り合うプライの配向方向相互間の夾角は、
螺旋関係をなさず、さらに、少なくとも他の1対をなす隣り合うプライの配向方向相互間の夾角は、
螺旋関係をなさず、
樹脂母材を形成するよう各プライの前記
平行な繊維相互間にかつ隣り合うプライ相互間に浸透させた樹脂を有し、
前記繊維強化複合構造物の第2の領域を定めかつ螺旋関係をなして配置された強化用繊維の第2の複数のプライを有し、前記第2の複数の繊維プライは、配向方向を定める互いに平行な繊維を含み、少なくとも2枚の隣り合うプライの配向方向相互間の夾角は、前記繊維強化複合構造物のための耐衝撃性を提供するよう10°超かつ30°
未満である、耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項2】
前記第1の複数の繊維プライは、バランスが取られておらず、前記第1の複数の繊維プライは、主要耐荷方向を定めている、請求項1記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項3】
前記第2の複数の繊維プライは、対称ではない、請求項1記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項4】
螺旋関係をなして配置された強化用繊維から成る第3の複数のプライをさらに有し、前記第3の複数の繊維プライは、配向方向を定める互いに平行な繊維を含み、前記少なくとも2枚の隣り合うプライの配向方向相互間の夾角は、0°超かつ約30°
未満であり、
前記第3の複数の繊維プライは、前記第2の複数の繊維プライから見て前記第1の複数の繊維プライの反対側に位置している、請求項1記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項5】
強化用繊維から成る第3の複数のプライをさらに有し、前記第3の複数の繊維プライは、互いに平行な繊維を含み、前記第3の複数の繊維プライは、前記繊維強化複合構造物のための耐荷強度を提供するよう配置され、
前記第3の複数の繊維プライは、前記第1の複数の繊維プライから見て前記第2の複数の繊維プライの反対側に位置している、請求項1記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項6】
前記プライは、スポーツ用品の形状を作るよう配置されている、請求項1記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項7】
前記プライは、風力タービン翼の形状を作るよう配置されている、請求項1記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項8】
前記プライは、軸対称部品を形成するよう配置されている、請求項1記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項9】
前記プライは、水素圧力容器の形状を作るよう配置されている、請求項8記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項10】
前記第1および/または前記第2の複数の繊維プライは、織布を構成する、請求項1記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項11】
前記第1の複数の繊維プライは、非けん縮布(NCF)を構成する、請求項1記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項12】
前記第2の複数の繊維プライは、非けん縮布(NCF)を構成する、請求項1記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項13】
前記第2の複数の繊維プライは、互いに積み重ねられた少なくとも2つの非けん縮布(NCF)を構成する、請求項12記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項14】
前記第2の複数の繊維プライのうちの少なくとも1枚のプライのプライ厚さは、約0.003インチ(0.0762mm)以下である、請求項1記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項15】
前記第1の複数の繊維プライは、約0.003インチ(0.0762mm)以上のプライ厚さを有する少なくとも1枚のプライを含む、請求項14記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項16】
前記第2の複数の繊維プライのうちの少なくとも1枚のプライのプライ厚さは、約0.0023インチ(0.0584mm)以下である、請求項14記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項17】
前記第2の複数の繊維プライのうちの2枚の隣り合うプライ相互間の夾角は、前記第2の複数の繊維プライのうちの他の2枚の隣り合うプライ相互間の夾角とは異なる、請求項1記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項18】
前記第2の複数の繊維プライは、最も外側のプライおよび最も内側のプライを含み、前記螺旋関係をなす2枚の隣り合うプライ相互間の夾角は、前記最も外側のプライから最も内側のプライまで増大している、請求項17記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項19】
前記強化用繊維の少なくとも一部分は、炭素繊維から成る、請求項1記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項20】
前記強化用繊維の少なくとも一部分は、ガラス繊維から成る、請求項1記載の耐衝撃性を備えた繊維複合構造物。
【請求項21】
前記第1または前記第2の複数の繊維プライの前記強化用繊維のうちの少なくとも何割かは、湾曲している、請求項1記載の耐衝撃性を備えた繊維強化複合構造物。
【請求項22】
繊維強化複合構造物を形成する方法であって、前記方法は、
第1の領域を定める強化用繊維から成る第1の複数のプライを配置するステップを含み、前記第1の複数の繊維プライは、配向方向を定める互いに平行な繊維を含み、前記第1の複数の繊維プライは、前記繊維強化複合構造物のための耐荷強度を提供するよう配置され、前記第1の複数の繊維プライは、螺旋関係をなすようには配置されておらず、第1の対をなす隣り合うプライの配向方向相互間の夾角は、
螺旋関係をなさず、さらに、少なくとも他の1対をなす隣り合うプライの配向方向相互間の夾角は、
螺旋関係をなさず、
第2の領域を定める強化用繊維から成る第2の複数のプライを螺旋関係に配置するステップを含み、前記第2の複数の繊維プライは、配向方向を定める互いに平行な繊維を含み、少なくとも2枚の隣り合うプライの配向方向相互間の夾角は、0°超かつ約30°
未満であり、
前記第1の複数の繊維プライおよび前記第2の複数の繊維プライを上下に重なり合う関係に位置決めするステップを含み、
前記第1の複数の繊維プライおよび前記第2の複数の繊維プライに樹脂を浸透させるステップを含み、
前記樹脂を硬化させて前記繊維強化複合構造物を形成するステップを含む、繊維強化複合構造物の形成方法。
【請求項23】
強化用繊維から成る第3の複数のプライを螺旋関係をなして配置するステップを含み、前記第3の複数の繊維プライは、配向方向を定める互いに平行な繊維を含み、少なくとも2枚の隣り合うプライの配向方向相互間の夾角は、0°超かつ約30°
未満であり、
前記第3の複数の繊維プライを前記第2の複数の繊維プライから見て前記第1の複数の繊維プライの反対側に位置決めするステップを含む、請求項22記載の繊維強化複合構造物の形成方法。
【請求項24】
前記繊維強化複合構造物のための耐荷強度を提供するよう強化用繊維の第3の複数のプライを配置するステップと、
前記第3の複数の繊維プライを前記第1の複数の繊維プライから見て前記第2の複数の繊維プライの反対側に位置決めするステップとをさらに含む、請求項22記載の繊維強化複合構造物の形成方法。
【請求項25】
前記浸透ステップは、前記位置決めステップの前に起こり、前記複数の繊維プライは、プレプレグとして形成される、請求項22記載の繊維強化複合構造物の形成方法。
【請求項26】
前記浸透ステップは、前記位置決めステップの後に起こる、請求項22記載の繊維強化複合構造物の形成方法。
【請求項27】
軸対称部品を形成するよう前記繊維プライを配置するステップをさらに含む、請求項22記載の繊維強化複合構造物の形成方法。
【請求項28】
水素圧力容器の形状を作るよう前記繊維プライを配置するステップをさらに含む、請求項22記載の繊維強化複合構造物の形成方法。
【請求項29】
非軸対称部品を形成するよう前記プライを配置するステップをさらに含む、請求項22記載の繊維強化複合構造物の形成方法。
【請求項30】
前記第2の複数の繊維プライのうちの少なくとも1枚のプライのプライ厚さは、約0.003インチ(0.0762mm)以下である、請求項22記載の繊維強化複合構造物の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、耐ショック・インパクト性(総称して「耐衝撃性」という)構造物に関する。特に、本開示は、螺旋アーキテクチャを有する材料の実施形態に関する。
【0002】
開示する実施形態は、いかなる政府支援又は契約下においてなされたというものではない。政府は、本発明に関して何ら権利を有しない。
【0003】
〔関連出願の参照〕
本願は、2020年2月11日に出願された米国特許出願第62/972,830号、2020年6月3日に出願された米国特許出願第63/033,835号、及び2020年12月17日に出願された米国特許出願第17/247,603号の権益主張出願である。上記米国特許出願を参照により引用し、目的が何であれ、どの目的についても参照により引用し、これらの記載内容を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0004】
米国特許第6,641,893号明細書及び同第9,452,587号明細書は、個々の層を隣接の層に対して既定の角度で縦軸又はx‐y軸に沿って回転させてz方向螺旋繊維配向スタック(すなわち、積層物)を形成する繊維強化弾性複合プライ積み重ね方式を記載しており、これら米国特許の各々を参照により引用し、その開示内容を本明細書の一部とする。この螺旋クロッキング(helicoidal clocking )は、特定の螺旋状ピッチ又は回転偏光を作るために選択されるのが良い。これらのピッチがつけられた繊維の集成から形成されるスパイラル(螺旋体)は、弾道特性、打撃力又は異物の衝撃によって開始される伝搬衝撃波を減衰するために特定の波長に合わせて調整されるのが良く、かかるスパイラルは、強靱にするための母材添加物を含むので突発破断の伝搬を制止することができ、また、かかるスパイラルは、鈍い又は鋭い衝撃から生じる破断をさらに制止するよう繊維と母材樹脂との弾性モジュラス差を利用するために作られるのが良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第6,641,893号明細書
【文献】米国特許第9,452,587号明細書
【発明の概要】
【0006】
本開示は、例えばポリマーを主成分とする複合材料のスタックとして配置された薄型一方向(TPUD)及びハイブリッド繊維強化螺旋材料から耐衝撃性構造物を設計・製造する技術的特徴を記載する。また、想定される構造物、すなわち、消費製品、保護具、スポーツ用品、衝撃保護器具、風力タービン翼、極低温タンク、自動車部品、航空宇宙用材料、建築資材、及び他の複合製品を有する装置が記載される。
【0007】
本発明を一般的に説明するが、今や、必ずしも縮尺通りには描かれてはいない添付の図面を参照し、幾つかは、少なくとも別段の指定がなければ、背景技術を示す場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2A】母材樹脂分子構造の実施例を示す図である。
【
図2B】母材樹脂分子構造の実施例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に従って螺旋パターンの状態に配置された繊維層のスタックを示す図である。
【
図4A】不連続及び連続材料形態(form)を示す図である。
【
図4B】不連続及び連続材料形態(form)を示す図である。
【
図6】織り合わせから生じる繊維けん縮状態を示す図である。
【
図7A】本発明の実施形態に従って3D湾曲形状体上への真っ直ぐな繊維配置で作られた螺旋プレフォーム(「プリフォーム」ともいう)を示す図である。
【
図7B】本発明の実施形態に従って2D形状体上への湾曲繊維配置で作られた螺旋プレフォームを示す図である。
【
図12】積層物の層内及び層間ゾーンを示す図である。
【
図13】本発明の実施形態に従って個々の繊維相互間接触長さの実施例を示す図である。
【
図14A】代表的な複合材衝撃損傷状態を示す図である。
【
図14B】代表的な複合材衝撃損傷状態を示す図である。
【
図14C】代表的な複合材衝撃損傷状態を示す図である。
【
図15A-15C】
図15A~
図15Cは、ナノ材料が繊維相互間の隙間及び亀裂を橋渡ししている代表的な複合材を示す図である。
【
図16】本発明の実施形態に従って階段形のクロッキング螺旋組立体を示す図である。
【
図18A】本発明の実施形態に従って耐衝撃性と耐荷強度の両方を含む構造物の略図である。
【
図18B】本発明の実施形態に従って耐衝撃性と耐荷強度の両方を含む構造物の略図である。
【
図18C】本発明の実施形態に従って耐衝撃性と耐荷強度の両方を含む構造物の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、添付の図面を参照して本発明につき以下において、より詳細に説明するが、本発明の全ての実施形態ではなく幾つかの実施形態が図示されている。確かに、本発明は、多くの種々の形態で具体化でき、したがって、本明細書に記載された実施形態に限定されるものと解されてはならず、そうではなく、これら実施形態は、本開示が適用される法上の要件を満たすよう提供されている。同一の符号は、全体を通じて全体の要素を示している。
【0010】
本開示は、本明細書に記載した先行技術の実施形態に勝って螺旋ピッチ及び構成を改造し、耐衝撃性に関与する機構を拡張するとともに向上させることによって螺旋材料設計及び製造アプローチを技術改良する。螺旋幾何学的形状が
図1に示されている。本明細書で用いられる「螺旋」という用語は、繊維のプライの積み重ね構造を意味し、この場合、少なくとも1枚のプライの繊維は、その隣りのプライの繊維の配向方向に対する配向方向を定めるとともに0°超かつ約30°
未満の夾角をもたらす。積み重ね構造は、この範囲から外れた夾角を定める隣り合うプライを含み、かかる積み重ね構造は、360°の丸一回転未満の角度を含むことができ又は1回転を超える角度を含むことができる。1枚以上のプライの繊維配向方向は、真っ直ぐでも良く、湾曲していても良い。
【0011】
本明細書に記載される新規な改良範囲は、(a)ナノ材料、(b)可変ピッチ及び部分スパイラル、(c)TPUDレイアップ、(d)ハイブリッド材料、(e)一プライ内の湾曲繊維、(f)2D又は3Dプレフォームに関する自動繊維又はテープ又はパッチ配置、(g)非けん縮布(織物)、(h)3D織布、(i)3D印刷材料、及び(j)フィラメント巻き材料を含む螺旋材料を含む。これら螺旋材料は、手でレイアップされても良く、自動機械で直接配置されても良く、かつ/あるいは織成(weaving )/組成(braiding)/縫成(stitching )機器(例えば、非けん縮布製造機械)を用いてスタックの状態にあらかじめ集成されても良い。アディティブ(例えば、3D印刷)マニュファクチャリング技術を用いると、材料の種類を変えたり混ぜ合わせたりすることができる。例えば、螺旋スタックを作る際にアディティブマニュファクチャリング技術を用いて印刷されるポリマー繊維と金属繊維を一緒に用いることができる。これら技術改良は、複合螺旋材料の個別調整能力の向上を可能にするともに広範な製品形式へのその潜在的な用途を拡張する。
【0012】
複合構造物の衝撃挙動は、弾性変形、母材樹脂亀裂発生、繊維破断及び最終的にプライ内及び/又はプライ間離層を含む場合のある複雑な動的現象である。コンポーネント破損は、自由縁のところ、集中支持荷重の領域のところ又は異物衝撃によって引き起こされる最大応力箇所のところで生じる場合がある。衝撃損傷は、打撃箇所と反対の側でいっそうひどい場合が多く、かかる衝撃損傷は、視覚的に気づかないままでいる場合が多く、大規模な非破壊検査(例えば、手持ち型超音波機器)が必要となる。したがって、耐衝撃性及び損傷許容範囲は、設計上の限定基準である場合が多い。衝撃損傷は、平面内耐荷能力を減少させ又は制限する場合がありしかも修復のために又は損傷が大規模である場合、製品を使用状態から取り出して大々的にスクラップにするとともに交換する必要がある。多くの材料及び設計上のアプローチが複合コンポーネントを耐衝撃性を高くするとともに/あるいは衝撃損傷の程度を制限するために想定されてきた。一般的に、これらの設計は、歪エネルギーを吸収し又は消散させる積層物の能力の向上を目的としている。あいにく、大抵のかかるアプローチは、繊維の構成を改変するとともに/あるいは引張強度や圧縮強度のような他の特性に悪影響を及ぼす異物を伴う。より一般的なアプローチのうちの幾つかについて以下に説明する。
【0013】
樹脂材料:複合材中の母材樹脂の分子構造は、極めて多くのかつ様々な形式の架橋(すなわち、ネットワーク構造)を備えたバックボーン構造(ポリマー鎖)から成り、これについては
図2A及び
図2Bを参照されたい。伝統的な熱硬化物(最終の形態に達するのに相変化硬化反応を生じる複合材)は、典型的には、硬質で架橋度の高いガラス質重合構造を備えている。この分子構造により、複合材は、衝撃を受けた際に母材亀裂発生及び/又は離層を生じやすくなる場合がある。この欠点を軽減するための伝統的なアプローチとしては以下が挙げられ、すなわち(a)熱可塑性樹脂(硬化ではなく溶融し、典型的には、高い分子量及び程度の低い架橋度を有しかつ/あるいは結晶質ではない非晶質である熱可塑性樹脂)の使用、(b)ネットワーク改変による熱硬化性樹脂の強靱化(例えば、モノマー機能の低下、バックボーン分子量の増大、又は柔軟性サブグループの混入)、(c)ばらばらなゴム又は熱可塑性の粒子の導入によるエラストマーの強靱化、及び(d)熱硬化プライ相互間の層間強靱化(薄い、代表的には、0.001インチ(0.025mm)の熱可塑性ベールの混入)が挙げられる。樹脂強靱化は、周知であり、当業界で利用されている。樹脂強靱化は、耐衝撃性を高めることができるが、樹脂強靱化はまた、ガラス転移温度、温冷又は乾湿性能、及び耐薬品性のような他の物理的性質に悪影響を及ぼす場合がある。本発明の実施形態は、非再処理性熱硬化性又は熱可塑性樹脂に加えて又はこれに代えて、再加工性の熱硬化性樹脂であるビトリマー(ガラス状物体)をさらに使用する場合がある。
【0014】
螺旋積層物中への、例えば
図3に示されている繊維構造物中へのマイクロスフェア及び微小孔の導入が複合材で利用されている。しかしながら、本開示によれば、ナノ空洞(例えば、レーザ又は他の機構体によって形成される)をさらに用いると破損モード中に亀裂伝搬を阻止することができるということがさらに想定される。さらに、これよりも大きな空洞並びに漸変形状の空洞を提供することもまた可能である。例えば、空洞又は弱体化領域が突発故障が好ましい場所でかつ/あるいは好ましい方向に沿って起こるようにするように方向性成分を備えるのが良い。空洞は、例えば0.1ナノメートル~500ミクロンの任意所望の平均寸法(平均横方向寸法)、又はこれら数値相互間の0.1ナノメートルの任意の増分、又は10ナノメートル~50ミクロンの度合いを有する当該範囲内の任意の部分範囲、例えば10ナノメートル、25ナノメートル、50ナノメートル、80ナノメートル、100ナノメートル、150ナノメートル、250ナノメートル、500ナノメートルなどの部分範囲を有する場合がある。
【0015】
ナノ材料:繊維強化材ともまた組み合わせ可能な母材樹脂中へのナノ粒子[例えば、炭素ナノチューブ(CNT)及びグラフェン]又は平均直径が100nm未満の繊維の形態をした細長いナノ繊維の混入は、同一厚さの従来型複合積層物と比較して機械的性質及び耐衝撃性を向上させることができる。この技術改良は、ウィスカー発生(whiskers interacting)(すなわち、横方向及び層内剪断特性を向上させるために繊維と相互作用するナノスケールウィスカー)の一因となる場合がある。
【0016】
繊維材料:繊維は、強度及びスチフネスを備えた複合材を提供する。繊維は、用途及び製造プロセスに応じて、連続であっても良く不連続であっても良い。繊維はまた、個別調整されても良い(所与の用途に適合するよう優先的な配向状態に配置されるのが良い)。当業界において最も普及しているように、プライは、0°配向、+45°配向、-45°配向、及び90°配向を用いて45°ごとに時計回りに配置される(クロッキングされる)。複合材中の繊維強化材の種類及び量は、コスト上の理由、製造上の理由、及び性能上の理由で様々であって良い。ある特定の種類の繊維(すなわち、炭素及び黒鉛)は、比強度(引張力及び圧縮力を密度で除算して得られた値のような特性)が高いが、本来的に脆弱である一方で、ガラス繊維のような他のものは、衝撃強度が良好であるが密度の高いことに起因して比強度が低い。アラミド(芳香族ポリアミド)繊維は、優れた靱性及び突出した弾道特性及び耐衝撃性を備えているが、温度変動につれて性能が低下し、紫外線に弱く、しかも水分を吸収する傾向がある。強度及び衝撃に関する特性の最適組み合わせを提供する種類の繊維を用いるというオプションを提供するため、広範な既知の種類の繊維を用いて螺旋構造物、例えば炭素、繊維、アラミド、バサルト、超硬分子量ポリエチレン(UHMWPE)、超硬分子量ポリプロピレン(UHMWPP)(例えば、Innegra(登録商標))、自己強化ポリマー繊維(例えば、Pure(登録商標)、Tegris(登録商標)、Curv(登録商標))、天然繊維、例えば亜麻又は大麻、金属繊維、石英繊維、セラミック繊維及びこれら形式のうちの任意のもののリサイクル繊維を作ることができる。
【0017】
材料形態:樹脂及び繊維選択と同様、材料形態は、一般に、用途、コスト及び製造プロセスによって定められる。広く言って、材料形態としては、
図4A及び
図4Bに示されているように、ランダム配向状態又は配向方向性を備えた不連続又は連続繊維が挙げられる。
【0018】
連続/配向繊維形態は、一般に、優れた構造的性質を有するが、製作するのにコスト高であり、不連続繊維形態の製造では普及しているシート成形配合物のプラスチック射出及び圧縮成形に対して、手動の又は特殊化された方法(自動材料配置(AMP)又は織成、組成、プライ縫成、3D印刷又は巻回機器)を必要とする。連続材料形成の2つの主要なカテゴリは、一方向(UD)と製織(3D織成及び組成を含む)である。
図5Aは、一方向製造方法を示し、
図5Bは、製織構造を示している。
図5Cは、非けん縮多軸布の一例を示し、
図5Dは、ネットシェイプ状プレフォームを示している。
図5Eは、3D製織布の略図であり、
図5Fは、フィラメント巻回の一例を示し、
図5Gは、繊維パッチ配置の一例を示し、
図5Hは、組成の一例を示している。
【0019】
UDテープは、一般に、繊維けん縮クリンプ(織り合わせ中に平織りの内外に受け取られる繊維)が存在していないことに起因して、製織布よりも良好な面内構造的性質を提供し、これについは
図6を参照されたい。理解されるように、図は、必ずしも縮尺通りには描かれていない。織成は、z方向繊維及び相互係止非平面状繊維束を作ることができ、かかる繊維幅は、点荷重を広げるとともに母材亀裂発生及び積層物離層を遅くし又は制止する。しかしながら、織成は、大型の複雑な機械装置を必要とし、それゆえ、コストは、高くサイズが限定されている場合がある。さらに、面内特性は、典型的には、UD複合材と比較して、繊維けん縮に起因して低下する。横方向構成は、z方向耐荷能力を生じさせるようUD複合材に用いられかつ亀裂阻止手段として用いられている。この方式は、高価であり、しかもその技術的価値において信用が置けず、と言うのは衝撃に関する能力を向上させるために必要な縫成量が面内繊維を変形させるとともに引張強度、圧縮強度及び疲労強度のような中核的な特性を低下させるからである。本発明は、現行の耐衝撃性複合材設計例の欠点及び問題点の解決を助けるために螺旋用途/設計を拡張して特定の材料(最も一般的には、TPUDテープ)並びにガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維など、さらにまた、新規な繊維角度クロッキング組み合わせを含む。
【0020】
製造方法:乾燥又は予備含浸繊維を用いて連続複合材料を配置する幾つかの普及した方法は、(a)手作業によるレイアップ、(b)自動材料配置(連続配置繊維を含むが、ファイバパッチ配置をも含むAMP)、(c)織成/組成/プライ縫成機械(例えば、繊維束が編成ヤーンと一緒に保たれる多軸非けん縮布製造機械)、(d)フィラメント巻回及びプル巻回)、(e)3D織成、(f)3D印刷、(g)有機シート材の熱圧圧密を含む。いずれかの種類の繊維(スリットテープ)を用いるAMPは、材料を飛ばして付加して落下させ、任意のあらかじめプログラムされた角度までクロッキングさせる能力を有し、したがって、AMPを用いると、ニヤネットシェイプ(near net-shape)状スタックを配置することができる。螺旋スタックは、厳密で正確なクロッキングを必要とするので、AMPは、螺旋スタックを配置する例示の低コスト方法である。ニヤネットシェイプ状の二次元(2D)及び三次元(3D)プレフォーム(後で樹脂を注入することができるほとんどの場合乾燥した繊維レイアップ)は、UDテープ又は多次元テープ(この場合、プライは、粉末結合剤、プライ間不織ベール、及び/又は縫成を用いて結合される)で作られるのが良い。予備含浸テープ(典型的には、幅が1.5インチ(3.81cm)~24インチ(60.96cm))、スリットテープ(典型的には、幅が1/8インチ(0.32cm)~1.5インチ(3.81cm))、又は「トウプレグ(towpreg)」もまた、AMP機器(例えば、異形テープ積層機械(CTLM)、自動繊維配置(AMP)又はロボット式繊維配置(RFP)、次に、オーブン又はオートクレーブで硬化される)を用いて異形ツール上に形成されるよう直接敷かれても良い。
【0021】
AFPは、相当高い可撓性を提供して可能なあらゆる角度及び無制限の数のプライ又はパッチを備えたニヤネットシェイプ状の螺旋プレフォームを生じさせ、それにより任意所望の螺旋プレフォーム積み重ね順序を生じさせる。これら螺旋材料は、ニヤネットシェイプを部品に提供する。2D又は3Dプレフォーム構造は、粉末結合剤、プライ間不織熱可塑性ベール、針又は空気圧式空気穴あけによって互いに結合された数枚のプライを形成する乾燥ファイバもしくはUDテープ又は多次元テープで作られるのが良い。「トウプレグ」又は任意種類の予備含浸繊維、UDテープ、多次元テープ又は熱可塑性母材及び繊維のスリップテープにロボット式ヘッド配置繊維を被着させて
図7A及び
図7Bに記載されているようにすでに含浸されているのが良い螺旋ニヤネットシェイプ状2D又は3Dプレフォームを生じさせるのが良い。
図7Aは、3D湾曲形状上のまっすぐな繊維配置で作られた螺旋プレフォームを示し、
図7Bは、2D形状上の湾曲繊維配置で作られた螺旋プレフォームを示している。連続トウ剪断(CTS)を用いると、面内湾曲繊維配向状態を生じさせることができる。
【0022】
カール・マイヤー・ゲーエムベーハー(Karl Mayer GMBH)(例えば、
図8を参照されたい)のような業界標準のMX布製造機械は、調節可能な角度方向アーム1つ当たり1枚のプライの状態で非けん縮布又は織物(NCF)を製造することが可能であり、通常は、5枚のプライに限定され、ロール+4軸外しプライの巻回方向として定められた0°プライは、浅い角度方向アームの長さを制限し、そして機械出力の減速を回避するよう20°よりも大きな角度を有する。プライは、通常、互いに縫成されるが、僅かに溶融された粉末結合剤又は層間不織熱可塑性ベールによって互いに連係されるのが良い。
【0023】
この技術は、ヘリコイダル・マルチアキシャル(Helicoidal Multiaxial:HMX)布ロール(例えば、[0°、22.5°、45°、67.5°、90°]又は[80°、60°、40°、20°、0]又は[39.4°、28.2°、16.9°、5.6°])の大量生産に最適である。しかしながら、この技術は、追加の調節可能なアームを用いることによってかつ/あるいは数個のロールを別々に製作し、次にこれらの層を集成して多数のプライの螺旋シーケンスを形成することによって多数の螺旋プライを製造する上で、費用効果がいっそう良いと言える。例示の一実施例では、ヘリコイダル・マルチアキシャル(HMX)布を形成する5螺旋プライのロール[0°、22.5°、45°、67.5°、90°]を製作することができる。次に、このロールをその0°軸回りに丸めるのが良く、それによりその幅を2で割り又はこのロールを裏返しされた別の同じロールと単に組み合わせ、それにより10プライHMX[-90°、-67.5°、-45°、-22.5°、0°、0°、22.5°、45°、67.5°、90°]を形成するのが良い。別の実施例では、第1の螺旋MX布(例えば、[56°、70°、-79°、-56°])を大径の連続ロールから引き出して90°回転させる(例えば、[-34°、-11°、11°、34°])のが良く、そして互いの上に載せ、それにより8プライHMX布(例えば、8プライ[56°、79°、-79°、-56°、-34°、-11°、11°、34°]を備えた22°HMX)を形成する。個々のプライの場合と同様、2つのHMXスタックを縫成(縫合)又は粉末結合剤もしくは熱積層熱可塑性不織ベール又は任意他の適当な公知の技術、例えば、エアパンチ又はニードルパンチの使用により接合するのが良い。
【0024】
これは、8枚以上の螺旋プライを単一のMX布ロール中に埋め込んだHMXを提供する効率の良いかつ革新的な布又は織物であり、これにより、複合材業界において一般的に見受けられるような機械の制約に打ち勝つ。かかるHMXロールを次に予備含浸させるのが良い。
【0025】
ハイブリッド構成:非ポリマーを組み込むとともに/あるいは支持力、スチフネス及び耐衝撃性のような特性を向上させることができる材料をサンドイッチした複合コンポーネントが作られている。ハイブリッド設計の実施例が以下に提供される。
【0026】
金属:複合材が典型的には、エネルギーを消散する弾性能力が限定されており、したがって、これら複合材の局限能力を超えて負荷が加えられると突発的に破損する。変形例として、金属は、衝撃エネルギーを消散させるために可塑的に変形することができる。金属箔、メッシュ及び繊維(例えば、アルミニウム、チタン及びスチール)は、破断靱性、耐衝撃性の向上、落雷保護、及び表面腐食の減少をもたらすよう積層物中に選択的に混ぜ込まれる場合があり、これについては、
図9を参照されたい。当業界で用いられている代表的な繊維金属積層物(FML)形態としては、ARALL(アラミド/アルミニウム)、GLARE(ガラス繊維/アルミニウム)、CARALL(炭素/アルミニウム)、及びTiGr(チタン/黒鉛)が挙げられる。金属の混入には、代表的には、重量を増加させる(追加の接着剤の形態で)結合作業を必要とし、高価でありしかも危険な金属表面前処理技術(例えば、蒸気脱脂、アルカリ洗浄及びエッチングもしくは陽極(酸化)処理)を必要とする。追加の金属/複合材ハイブリッドの欠点としては、(a)金属がポリマーを主成分とする複合材中に混ぜ込まれたときに非両立性の熱膨張係数(CTE)を有する場合があり、(b)金属箔、メッシュ及び繊維は、複雑な輪郭形状に配置するのが困難でありしかも(c)金属は、これらが取って代わる複合材料よりも密度が高いということが挙げられる。
【0027】
サンドイッチ構造:例えばポリマー層を含む材料を
図10A及び
図10Bに示されているように複合積層品の表面材相互間でハニカムコア又はフォーム(foam)材料上に配置することにより、相乗的構造形態が作られ、この相乗的構造形態では、表面材は、曲げ剛性をもたらし、サンドイッチ材料は、剪断剛性及び耐座屈性を提供する。一体形積層複合材と比較して、サンドイッチパネルは、向上した強度と重量の比、消音性、耐疲労性、断熱性、及び耐衝撃/損傷性を呈することができる。サンドイッチパネルの衝撃性能は、積層物よりも優れていると言え、何故ならば、打撃と関連したエネルギーのうちの何割かは、マトリックス及び/又は繊維損傷ではなく、弾性変形として消散することができかつ/あるいはコアは、表面材がエネルギー吸収を行いながら慣性負荷を緩衝することができるからである。積層物の表面材形態、コア形式/構造特性及び境界条件は、衝撃強度を制御する。代表的には、サンドイッチ設計では、表面材は、比較的薄手であり、コアは、接着剤で表面材に結合される。サンドイッチをある用途については不適正にする構造及び破損機構は、以下のこと、すなわち、(a)限定された結合面積及び強度のゆえに、表面材は、衝撃中にコアから時期尚早に分離する場合があり、(b)表面材が均等な積層物設計繊維破断に対して薄いので、繊維母材剥離及び積層物の離層は、低い衝撃レベルで開始する場合があり、(c)コアは、潰れる場合があり又は剪断変形を生じる場合があり、しかも(d)積層物プライをサンドイッチ材料で置き換えることにより、圧縮、引張、強度及びスチフネスのような面内構造特性が劣化する場合があるといことを含む。
【0028】
薄手のプライ:TPUDスタックで形成された複合材積層物は、厚手のプライを用いて作られた同一厚さの部品と比較して良好な機械的性質及び微小割れ、離層及び衝撃に対する向上した耐性を示すことが判明している。代表的には、航空宇宙用UD炭素/エポキシ(C/E)プレプレグは、グレード190(0.0073インチ(0.1854mm)/プライ)又はグレード145(0.0056インチ(0.1422mm)/プライ)である。TPUDは、典型的には、グレード75(0.003インチ(0.076mm)/プライ)又はこれよりも薄い。このグレードは、g/mm2で測定されたUDプレプレグ中の炭素繊維の公称面積重量を特定する。TPUD積層物は、最小ゲージの減少及び/又は等価性能構造の軽量化を可能にする。コアクールダウン中の反りを回避するため、従来型レイアップは、プライスタックのバランスを取る必要があり(すなわち、積層物は、同数のプラス・マイナス配向プライを持たなければならない)、しかも対称であることを必要とする[すなわち、レイアップの中央平面よりも上方に位置する各プライは、同一プライ(同一材料、同一厚さ、及び同一配向)を中間面よりも下に等しい距離のところに持たなければならない]。
【0029】
繊維配向は、耐荷能力を制御する。したがって、繊維のバルクを主要加重方向に延ばすことが最善である。バランス/対称則は、予期しない荷重から保護するための最小配向に関する規則(例えば、任意の一方向において繊維の10%以上)と一緒になって、積み重ねの自由を制限し、しかも多くの場合、所与の荷重事例に対応するために明確に必要とされるレイアップ厚さよりも厚いレイアップを定める。これらの制約は、加重減少部分領域においてテーパが付いている(落下しつつあるプライ)の際に特に難題である。
【0030】
TPUDプライは、全体として又は通常厚さのプライとの組み合わせ状態で、軽量/薄型の積み重ねオプションを開拓する。残念ながら、TPUDは、プレプレグスリット及び硬質でありしかもスリットをプレプレグし、丸め直すのにコストがかかる場合があり、しかも多くの欠陥を免れることができず、しかも硬質であってかつ/あるいは自動繊維配置を用いて部品形状に合わせて敷くのに伝統的な厚さのプレプレグテープよりもコストがかかり、したがって、今日まで航空宇宙用途における使用が制限されている。他の用途では、TPUDテープは、敷かれているプライの枚数が多いことに起因して伝統的な厚さのプレプレグテープと比較して、部品形状に合わせて敷かれるのに時間が多くかかる。
【0031】
環境に応じて、複合構造物は、想定される打撃、衝突、雹、雨、鳥、工具落下、弾道特性、ランダムなデブリ、衝撃波、落雷又はエーロフラッタリング(aero fluttering)からの低速及び高速度衝撃を受ける場合がある。個々の層を縦軸又はx方向軸に沿って隣接の層に対して既定の角度で回転させてz方向螺旋繊維配向スタックを作る繊維強化弾性複合プライ積層方式が
図11に示されている。左側の画像は、各プライ層(単層)を表すために単一の線を用い、この図は、生じたz方向螺旋スパイラルを強調表示している。右側の画像は、螺旋レイアップの構成層をより現実的に示すために繊維の束(代表的には、3000~50,000本以上の繊維から成るトウ)を用いている。次のブローアップは、螺旋積層スタックが均等に分散して広げられた繊維トウ及び樹脂で形成されている個々の単層でどのように作られるかを示している。
【0032】
螺旋クロッキングは、積層物繊維相互間の層内におけるような相当大きな直接荷重の分散を示すのに足るほど密接した状態にある特定の螺旋ピッチ又は回転偏向z配向繊維を生じさせるよう選択されるのが良い。これら左側及び右側キラリティー(構造から区別可能な非重ね合わせ構造)スパイラルは、業界標準0°、±45°、90°複合積層物と比較して、新規である(注記:幾つかの場合、22.5°、30°、及び60°の角度が用いられるが、これらの場合、大きなクロッキング角度及び対称/バランス則が依然として代表的である)。角度的に大きく異なる0°、±45°、90°単層を積み重ねる際、樹脂の豊富な層が各プライ相互間に結果として生じ、各プライ中では、繊維相互間の荷重分散は、母材樹脂中の層間剪断に依存し、これについては
図12を参照されたい。例えば、伝統的なレイアップクロッキングでは、2枚の隣り合うプライが90°だけ異なっていてかつ個々の繊維は、直径が0.003インチ(0.0762mm)(当業界では代表的である)であり、隣り合う層間繊維相互間のオーバーラップ直接接触面積は、9×10~8平方インチ(なお、1インチは、2.54cm)である。また、繊維が40°だけ異なっている場合、これら繊維は、直接接触の0.000424インチ(0.01077mm)しかなく、これについては
図13を参照されたい。かかる接触面積の両方は、重要ではなく、しかも大抵の層間荷重伝達が樹脂剪断を通じて行われることを必要とする。これとは逆に、螺旋レイアップでは、非常に広い接触面積が結果として生じ、すなわち、(a)30°‐0.006インチ(0.0152mm)、(b)22.5°‐0.00784インチ(0.019914mm)、(c)15°‐0.00116インチ(0.02946mm)、及び(d)5°‐0.00344インチ(0.08738mm)である。これら螺旋値(標準の0°、±45°、90°レイアップの1.5倍~10倍)は、直接的な繊維荷重分散が起こるのに足るほど重要である。
【0033】
単層プライ相互間で直接的に荷重を分散する繊維の能力は、従来型複合レイアップよりも効率的に衝撃力を吸収して消散させ、そして衝撃疲労効果を最小限に抑える螺旋積層物の能力に対する相当大きな寄与因子である。さらに、これらピッチがつけられた繊維の集成で形成されたスパイラルは、弾道特性、打撃力又は異物衝撃により開始される伝搬衝撃波を減衰させるために特定の波長に合わせて調整されるのが良く、かかるスパイラルは、突発破断の伝搬をさらに阻止し又は制止するために微小球又は強化用粒子を含む母材で満たされるのが良く、また、鈍い又は鋭い衝撃から生じる破断をさらに阻止するよう繊維と樹脂との弾性モジュラスの差を利用するよう作られるのが良い。
【0034】
衝撃力又は衝撃波を受けたときの荷重下にある複合構造物の動的性能は、複雑であり、しかも動的な技術の現状としての微細グリッド有限要素解析法(FEA)を用いた場合であっても予測するのが困難である。塑性変形、母材亀裂発生、繊維破断及び最終的な異物衝撃に起因した離層(想定済み又は未想定)の程度は、制御構造試験及び破損後評価によって任意の確度でしか確認することができない。本開示は、螺旋スタックの範囲及び能力を広範な産業用途(例えば、風力タービン、極低温タンク、水素圧力容器、航空宇宙用主要構造物、スポーツ用品、自動車部品、消費製品、防衛/宇宙ビークル、ソフト又はハード装甲車両、建築資材、及び他の複合製品)に拡張する追加の設計及び製造オプションの詳細に関する。ある特定の開示した改良例では、(a)ナノ材料、(b)可変ピッチ及び部分スパイラル、(c)TPUDプライ、(d)ハイブリッド材料、(e)一プライ内の湾曲繊維、(f)2D又は3Dプレフォームの自動繊維又はテープ又はパッチ配置、(g)非伸縮の製品、(h)3D織布、(i)3D印刷材料、及び(j)フィラメント巻き部品を含む螺旋材料を含む。単層及び/又はプレプレグ螺旋レイアップは、手でプライごとに配置されるのが良く、自動繊維配置機械を用いて異形ツール上に直接配置されるのが良く、かつ/あるいは織成/組成/UDプライ及び織布構成機器(例えば、非けん縮布製造機械)を用いてスタックの状態にあらかじめ編成されるのが良い。
【0035】
ナノ材料を含む螺旋材料:ナノ材料は、1~1000ナノメートル(10-9m)範囲の寸法を有する性状促進粒子である。例としては、単層ナノファイバ(CNF)、単層ナノチューブ(CNT)、単一壁ナノチューブ(SWNT)、多壁ナノチューブ(MWNT)、黒鉛プレートレット/グラフェン、有機球形粒子、コポリマー、無機クレイ、シリカ、炭化珪素、アルミナ、金属酸化物、及び他の既知又は将来開発されるナノ材料が挙げられる。繊維強化材と組み合わせた状態の樹脂中へのナノ材料の混入は、同一厚さの従来型複合積層物と比較して機械的性質及び耐衝撃性を向上させることが判明している。幾つかの具体化例は、ナノファイバ(直径が100nm未満の繊維)が材料中に混ぜ込まれるのが良い。
【0036】
図14A~
図14Cは、互いに異なる損傷レベル(すなわち、低、中、及び高)に起因して生じる互いに異なる形式の衝撃損傷(すなわち、変形、層内樹脂亀裂発生、層間樹脂亀裂発生、繊維破断及び離層)を示している。ナノ材料では、衝撃面における改良は、ウィスカー(単結晶)発生として(すなわち、横方向及び層内剪断特性を向上させる繊維相互間のナノスケールブリッジングによるものである場合である。
図15A~
図15Cは、ナノスケールブリッジング(縫成又は縫合とも呼ばれている)が同一の又はほぼ同じ配向の繊維相互間でどれほど特に有効であるかを示している(すなわち、同一配向の層内繊維又は
図13に示された5°螺旋実施例のような似かよった層間繊維)。かかる場合、ナノ材料は、低レベル及び中レベル衝撃に起因して生じる樹脂亀裂を減少させることができ又はそれどころかなくすことができる。螺旋レイアップのプライは、浅い角度(例えば、5°~30°)にクロッキングされるので、個々の層間繊維相互間の直接接触長さは、標準の0°、±45°、90°レイアップの場合の最高10倍以上である。この長い接触長さにより、ナノ複合添加剤は、45°又は90°の角度まで離隔されている業界標準のレイアップよりも高い効果を螺旋レイアップに及ぼす。ナノ添加剤を含む螺旋レイアップは、層内垂直/水平樹脂亀裂発生の減少/消失を示すだけでなく、中程度の衝撃下において
図14Bに示されているような水平層間樹脂亀裂発生/消失及びそれどころか離層(全プライ分離)制止を呈していると言える。ナノ材料をプレプレグ形成中、樹脂中に一様に添加しても良く、又は繊維に直接取り付けても良く、あるいはプライスタック相互間の層間層として追加しても良い。
【0037】
可変ピッチ及び部分螺旋構造:ガラス繊維レイアップのピッチは、プライ1枚当たりの単層厚さ及びプライのクロッキング/積み重ね角度に依存している。結果的に生じるスパイラルを予想衝撃形式/レベル及び/又は所要の強度を予想して特定の波長又は強度に合わせて調整するのが良い。硬化クールダウン中における反りを回避するため、従来型レイアップ(0°、±45°、90°プライを用いるレイアッププライ)では、プライスタックのバランス取りをするとともにプライスタックを対称にする必要がある。ある特定の先行技術の認めるところによれば、螺旋レイアップは、左側の方向、右側の方向又は両方向に螺旋巻き可能である場合がある。元来想定されたように、螺旋スタックは、レイアップ全体を通じて一貫した角度オフセットを有する。バランス取りされかつ対称な18°オフセット螺旋レイアップの一例は、(0°、18°、36°、54°、72°、90°、-72°、-54°、-36°、-18°、0°、-18°、-36°、-54°、-72°、90°、72°、54°、36°、18°、0°)である。浅いクロッキング角度(例えば、30°以下)のゆえに、螺旋レイアップは、バランスが取れていなくてもかつ/対称でない場合であっても業界標準0°、±45°、90°レイアップよりも反る傾向は低い。非標準型螺旋レイアップを製作するこの能力により、独特の薄い単層オプションを特定の要素についてさらに調整することができる。本開示は、追加の螺旋クロッキングオプションを記載している。
1.単一積層物中の可変クロッキング角度、例えば5°、10°、15°及び30°を有するレイアップ。一例は、(0°、5°、15°、30、45°、75°、-75°、-45°、30°、-15°、-5°、0°)である。この種のレイアップは、可変波長にわたって調整し、レイアップ中の一ゾーン/深さのところでの衝撃力の制止/消散及び/又は耐衝撃能力と全体的積層物強度のバランス取りについて良好である。
2.レイアップの(a)外部、(b)中間部、又は(c)中間部及び外部に対する狭いクロッキングを備えたレイアップ及びレイアップの残部に対する広いクロッキング。(0°、5°、10°、15°、45°、75°、-75°、-45°、-15°、-10°、-5°、0°)は、積層物の中間平面及び外面に対する狭いクロッキングを有するレイアップの一例である。この種のレイアップは、荷重支持方向における強度について他のプライの配向を個別調整する自由度を依然として可能にしながら、積層物のある特定の厚み内の衝撃荷重を消散するのに良好である。
3.左又は右にのみ螺旋巻き、例えば、(0°、30°、60°、90°、-60°、-30°、0°)及び(0°、-30°、-60°、90°、60°、30°、0°)された非対称及び/又は非バランス取りレイアップ。これらレイアップにより、螺旋クロッキング、それゆえに衝撃性能を利用することができ、この場合、厚いバランス取りされた/対称のレイアップを製作する必要はない。より狭い螺旋クロッキングが用いられるので(伝統的な0°、±45°、90°ではなく)、かかるレイアップは、反る傾向が小さい。さらに、反る傾向は、多くの場合、部品形状又は局所補剛によって解決できる。
4.部分的にしか螺旋巻きされず、360°丸々クロックすることがなく(例えば、0°、5°10°、15°、90°、90°、15°、10°、5°、0°)又は(-35°、-25°-15°、-5°、5°、15°、25°、35°)であるレイアップ。かかるレイアップは、ある特定の積層物ゾーン中の螺旋配置の衝撃の面における利点を分離することができる一方で他のゾーンにおける耐荷繊維を最適化することができる。このクロッキングは、使用中における衝撃の性質及び方向を予測するよう方向性があるのが良い。
【0038】
TPUD螺旋材料:業界の典型的なUD単層/エポキシ(C/E)プレプレググレードは、190(0.0073インチ(0.1854mm)/プライ)及び145(0.0056インチ(0.1422mm)/プライ)を含む。薄手プライのプレプレグは、典型的には、グレード60(0.0023インチ(0.0584mm)/プライ)又はこれよりも薄い。
図16は、螺旋プライ厚さ及びクロッキングが種々の高さ及び幅の階段状スパイラルをどのようにして作るかということを示している。例えば、グレード145UD螺旋レイアップは、0.0056インチ(0.1422mm)の垂直段について一プライ当たり互いの上に積み重ねられた約15~20本の炭素繊維を有する。約β=5°のクロッキング角度の場合、標準化されたオフセットa=0.064インチ(1.626mm)を用いると、水平段は、b=0.0056インチ(0.1422mm)として計算され、この場合、ほぼ1対1(1:1)スパイラルが作られる。短い層間樹脂剪断ゾーンを備えかつ実質的に繊維間直接接触があるこの1:1の狭くクロッキングされたスパイラルは、螺旋レイアップの耐衝撃性、亀裂阻止及び可能性相互間の層間荷重分散の核心である。同一の5°クロッキングを備えたグレード190(0.0073インチ(0.1854mm)/プライ)螺旋レイアップは、ほぼ2:1階段を有する。45°クロッキングを備えた典型的なグレード145業界標準のレイアップは、0.056インチ(1.422mm)垂直樹脂段及び比較的長い1:10スパイラルを有する。この長い樹脂剪断ゾーンは、螺旋レイアップと比較すると、層間直接繊維荷重分散を制限し、そして幾つかの場合においては、耐衝撃性の減少を説明することができる。90°クロッキングは、無限の層間段(すなわち、妨害されない層間樹脂ゾーン)を作る。
【0039】
以上要約すると、
図16を引き続き参照して注目できることとして、「スパイラル階段」がきつくなればなるほど、潜在的な耐衝撃性はそれほどいっそう良好になり、ただし、他の全ての基準がほぼ同一であることを条件とする。しかしながら、1°から5°までの範囲内の極めて浅い角度は、螺旋状の母材クラックとして説明される主要な破損機構を促進することが見込まれ、他方、15°から30°までの範囲にあるこれよりも大きな浅い角度は、プライ内及びプライ間離層及び繊維破断として説明される主要な破損機構体を促進することが見込まれる。本出願人の理解するところによれば、所与の繊維種類及びプライ厚さについて角度値の好ましい範囲スポットが存在し、この場合、上述の破損機構体の両方は、互いに協働して衝撃エネルギー消散及び衝撃強度を最大にする。この好ましい範囲及び当該範囲内の任意の最適値は、繊維層のクロッキング角度に加えて、樹脂特性、繊維特性、トウサイズ、及び層間樹脂厚さを含む数に依存する場合がある。TPUDレイアップは、同様な厚さの伝統的なレイアップと比較して、強度及び衝撃に関する能力を有することが判明した。
【0040】
本開示により説明される新規な実施形態として、5°クロッキングを備えたTPUDグレード60(0.0023インチ(0.05842mm)/プライ)螺旋レイアップは、例示の1/2:1階段を作る。かかるプレプレグクロッキング構造は、伝統的な(厚さ及びクロッキング)レイアップと比較して最高50%の衝撃に関する改良結果を有することが判明した。加うるに、薄手プライレイアップは、ほぼ同じ全厚及び配向の伝統的なレイアップと比較して、最大30%の強度に関する改良結果をもたらすことが判明した。さらに、注目されるべきこととして、僅かなクロッキング角度に関し、隣り合うプライは、層内垂直樹脂亀裂の発生を制止するのに役立つのに十分に依然として末広がりである。これとは逆に、同一配向の2枚以上のプライを積み重ねた際に見出されたこととして、層内亀裂は、1枚のプライから次のプライに比較的容易に広がる。樹脂層内微小亀裂発生はまた、極低温(例えば、-200°F(-128.9℃)~-415°F(-248.3℃)環境(例えば、宇宙空間極低温タンク)内で起こる場合がある。本発明によれば、改良された衝撃及び微小亀裂阻止の結果は、TPUDプレプレグとともに構成された場合に従来知られている螺旋構造物のうちの任意を用いて見込まれる。微小亀裂阻止は、荷重支持能力の維持を助けるだけでなく、格納容器内の液体及び/又はガスの浸透を減少させる。以下のTPUDバリエーションは、当該技術の例外的な実施形態である。
1.TPUD螺旋スタックは、標準プライ厚さの伝統的なクロッキングレイアップと比較して、向上した強度、耐衝撃性及び層間微小亀裂制止を呈する。これらの能力は、厳密なアスペクト比の急上昇及び向上した層間荷重分散によるものである場合がある。
2.連続的にクロッキングされたスパイラルのTPUD螺旋スタックは、配向度の高い伝統的なスタック(主要な耐荷方向における余分のプライ)と同じほど良好な又はこれよりも良好な強度を有し、それでいて耐衝撃特性が向上している。これは、螺旋レイアップが主要荷重方向において少ない全本数の繊維を有することができるが、薄いプライ及び僅かにクロッキングされたオフアングル(off-angle )繊維は、効率的な層間荷重分散を促進するという事実に由来する。加うるに、同一角度の繊維が螺旋スタック中において互いの上に直接積み重ねられていないので、垂直樹脂微小亀裂が高加重中及び/又は衝撃事象中及び/又は寒冷環境内において単層相互間で伝搬する傾向が小さい。微小亀裂阻止は、荷重支持能力の維持を助けるだけでなく、格納容器中における液体及び/ガスの浸透を減少させる。
3.小さな全厚のTPUD螺旋スタックは、厚い伝統的な積層物と同等な又はこれよりも良好な衝撃強度を有する場合がある。本明細書においては、この場合、業界の非螺旋標準型のバランスが取れていて対称のしかも方向性配向度が最小の積層物を用いた場合よりもTPUD螺旋スタックを用いた場合の方が薄くかつ軽量の積層物を製作することが可能である。
4.薄い最小ゲージのTPUD螺旋スタックは、伝統的なレイアップ対称則、バランス則及び最小配向則に準拠しながら所望の特性を備えることができる。例えば、航空機外板は、標準の0°、±45°、90°レイアップ則を用いた場合に雹による打撃についてはグレード190又は全厚において0.058インチ(14.732mm)のUDテープの8プライ(0°、+45°、-45°、90°、90°、-15°、+45°、0°)を必要とする場合がある。しかしながら、同一の用途に関し、TPUD螺旋レイアップ(16プライ0.037インチ(0.940mm)積層物を用いた衝撃要件及びレイアップ則を満たす可能性がある。
5.螺旋スタックは、TPUDと厚いプライを組み合わせて伝統的なレイアップよりも優れた特徴的に調整された強度/衝撃の積層物を作ることができる。TPUDの一欠点は、TPUDが厚いプライ材料部品と比較して積層物をレイアップするのに多くの時間を必要とする場合があるということであり、と言うのは、より多くの層が必要とされるからである。この欠点は、薄いプライと厚いプライの組み合わせを用いることによって部分的に軽減できる。本開示によって示唆される例示の場合に関し、薄い螺旋プライは、レイアップを調整して全体的な耐衝撃能力を高めるようレイアップの一部分について使用されるのが良く、他方、厚いプライは、レイアップ時間を短縮して全体的強度を生じさせるために使用されるのが良い。好ましい一実施例では、螺旋プライは、衝撃強度を向上させるために積層物の外面の近くでかつ主要な荷重支持機構としてのレイアップの残部又は中間部上の厚いプライの近くで用いられる場合がある。例えば、風力タービン翼の例では、一方向繊維を用いる厚い内層を有することが可能であり、これは、螺旋材料の層内で巻かれ又は封入されるのが良い。別の例として、螺旋材料は、圧力容器の内層上に用いられるのが良くそれにより亀裂が圧力容器の外層に伝搬するのを阻止することができる。所望ならば、螺旋材料は、圧力容器の内層に加えて又はこれに代えて、圧力容器の中間層又は外層に使用できる。
この例は、
図18A~
図18Cで理解でき、
図18A~
図18Cは、本発明の実施形態にかかる繊維強化複合構造物10のためのプライ配置の略図である。
図18Bは、
図18A及び
図18Cの斜視図に示された構造物の断面図である。複合構造物10は、繊維強化複合構造物の第1の領域を定める強化用繊維の第1の複数のプライ11を有し、これらプライは、互いに平行な繊維を含み、これらプライは、繊維強化複合構造物のための荷重支持強度を提供するよう配置されている。図示の実施例では、第1の複数のプライ11は、5枚のプライを含む。底部のところに位置する2枚のプライは、+80°/-80°で配置され、これらの上方に位置する3枚のプライは、全て、0°に配置されているが、この実施例では、0°のプライは、軸対称部品、例えば管状構造物の軸線に沿って配置され、そして主要加重方向に強度を提供する。+80°/-80°のプライは、0°のプライを強化するのに役立ち、そして軸対称部品、例えば長さにおいて有利であるかもしれない薄い管状構造物の座屈に抵抗する。
強化用繊維12の第2の複数のプライは、繊維強化複合構造物の第2の領域を定めるとともに螺旋関係をなして配置され、少なくとも2枚のトライアルプライの配向方向相互間の夾角は、繊維強化複合構造物のために耐衝撃性を提供するよう0°超かつ約30°
未満である。図示の実施例では、プライ(頂部から始まり、その下に進む)は、70°、65°、60°、55°、50°、45°、40°、30°、20°、10°で配置されている。本明細書のどこか別の場所で説明するように、この螺旋関係は、下に位置する構造物に対して耐衝撃性をもたらす。
強化用繊維の第3の複数のプライは、第2及び第3のプライの中間部に位置する第1の複数のプライの両側に耐衝撃性を提供するよう強化用繊維の第2の複数のプライと反対側に位置決めされるのが良い。耐衝撃性、主要耐荷能力及びレイアップ時間の減少という観点において利点を提供する第2の複数の螺旋プライのためのTPUDプライ及び他のプライのための厚いプライで示されているが、プライの厚さは、これらプライの各々について同一であるのが良い。
6.TPUD螺旋スタックは、伝統的なレイアップよりも優れている強度及び衝撃特性を依然として有する特徴的に調整された積層物を作るよう可変クロッキングで作られるのが良い。例えば、業界では典型的である45°及び90°の標準クロッキングを用いるのではなく又は基本螺旋レイアップについて実施される場合のある一貫した5°のクロッキングを用いるのではなく、クロッキングが次の各単層について数度ずらす螺旋レイアップを作ることができる。結果的に得られる積層物は、この場合、所定のピッチ及び部品重量を最小限にしながら製品環境の要求(一例として、熱的要件、衝撃要件、及び強度要件)を一意的に満たす調整方式を備えている。
7.狭いクロッキング及び薄いプライを用いて作られた螺旋配置は、標準のクロッキング及び標準のプライ厚さを用いた伝統的なレイアップよりも反る傾向が小さいことが判明した。さらに、反りはTPUD非対称/バランスが取られていないスタック中に残存する事態は、部分形状又は極小補剛効果によって解決できる場合が多い。この場合、左側のみ、右側のみのTPUD螺旋レイアップでは、螺旋TPUDレイアップは、最小限のゲージ及び可能な限り最も小さい重量を保持しながら例示の強度及び衝撃特性を有することができる。
8.組み合わせ型TPUD・厚手プライ螺旋スタックは、伝統的なレイアップよりも優れている特徴的に調整されかつ強度/衝撃能力を備えた積層物を作るために可変クロッキングで製作されるのが良い。この場合、薄いプライと厚いプライは、レイアップコストを最小限に抑えるとともに強度/スパイラル調整能力を最適するために使用でき、他方、可変クロッキングピッチは、特性を別の度(°)まで最大にし又は別の性質の特性を最大にするよう使用できる。例えば、薄いプライと厚いプライの選択を、主として、レイアップ比の見地から行うのが良く、他方、可変クロッキングは、垂直層内樹脂微小亀裂発生を制止するよう選択できる。強度に対するコスト、耐衝撃性に対するコスト、及びコストパフォーマンスを向上させるよう重量調整に対するコストの他の組み合わせを想定することができる。
【0041】
プライを追加して落下させることによって複合コンポーネントを特別に製作することができ、それにより高い加重の領域における強度及び耐衝撃性を高める一方で他の領域における最小厚さ及び最小重量を維持することができるということにある。多くの場合、部品に詰め物をして、構造物、例えば締結具配置場所及び導管通過部に設けられた開口部及び結合ゾーンに設けられた開口部の周りに膨らませてリベット付きの航空宇宙構造組立体又はスポーク取り付け箇所周りの自転車リムのようにコンポーネントを局所的に補剛するとともに/あるいは維持及び/又は構造強度を向上させる。他の場合、部品をウィング又は風力タービン翼の前縁、ゴルフクラブ、バットやクラブの打撃領域、保護ヘルメットなどのような衝撃力の高いことが予想される領域において厚くする。他の場合、部品は、例えば、釣り竿、ゴルフクラブ、棒高跳び用ポール、セーリングマスト、スキー及びスノーボード、運動用シューズなどの場合と同様に一領域において撓み、他の領域においては剛性であるよう製作できる。本開示によって説明する別の特定の場合として、コンポーネントのパッドアップ(pad-up)領域は、明細書において説明する螺旋変形物のうちの任意のものから成って良い。このパッドアップには、基本的な伝統的レイアップ又は同一構造もしくは異なる構造の基本螺旋レイアップを組み込むことができる。8つの先の列挙した場合で詳述したように、TPUD螺旋積層物は、減少した最小ゲージ及び/又は軽量の良好な又は均等な働きをする構造物の実現を可能にする。バランス/対称則は、積み重ね自由度を制限し、そして多くの場合、所与の荷重の場合を取り上げるために明確に必要とされる場合よりも厚いレイアップを定める予想していない加重(例えば、任意の一方向において繊維の10%以上)について保護すべき最小配向のための規則と一緒に、TPUD螺旋構造物に控え目に使用でき又は幾つかの場合においては無視できる。
【0042】
ハイブリッド材料螺旋構造物:ナノ材料、可変ピッチ及び部分スパイラル及びTPUDを含む螺旋積層物をハイブリッド材料(例えば、織り複合材、非ポリマー、金属、フォーム、サンドイッチ材料、及び/又は当業界において知られている又は開発される他の材料)と組み合わせると、全体的重量、制作費、耐荷重、スチフネス及び耐衝撃性のような特性を向上させることができる。これら組み合わせは、全域的に(例えば、母材樹脂全体を通じて組み合わせされたナノ材料)又は地域的に(例えば、薄‐厚螺旋スパイラル中の伝統的な厚さのプレプレグの4枚のプライに置き換わるチタン箔の1つの層)実施されるのが良くそれにより比強度及び衝撃特性を調整する一方で、コスト、重量及び/又は厚さを最小限にすることができる。ハイブリッド螺旋構造物の特定の例示の実施例が以下に列挙されている。
1.織布複合材プライがスタック中に又は内面及び外面上に分布して配置された螺旋構造物を耐衝撃性の向上のために選択された特徴的なクロッキング配置で作ることができる。織りプライは、穴あけし又はトリムする際に繊維のちぎれを最小限に抑えるよう内面及び外面上で有用な場合があり、そして腐食及び衝撃に対する能力を向上させることができる。レイアップ内において、布は、衝撃力の吸収及び消散を助け、そして衝撃疲労の効果を最小限に抑える特徴的なクロッキング/螺旋巻き及び調整組み合わせを作ることができる。布プライは、落雷を消散させ、電流を通し、電気部品をシールドし又は熱伝導率を変化させるのを助けるために金属箔、繊維又はメッシュをさらに含むのが良い。
2.金属箔が内面及び外面上に施された螺旋構造物を作って耐腐食性及び耐衝撃性を向上させることができる。この場合、金属箔は、軸受破損をなくし、腐食を軽減し又は遅らせるとともに/あるいは衝撃下で撓むことができる一方で、螺旋構造物が無傷のままでいることができ、それによりさらに耐衝撃性及び耐荷特性を向上させることができる。
3.減衰フォーム又はサンドイッチ材料の層を螺旋スタックの中心に配置することは、剪断剛性を高め、慣性荷重を緩衝し、打撃エネルギーを消散させるとともに/あるいは耐座屈性を向上させるよう実施されるのが良い。かかる構成により、コンポーネントの強度と重量の比、消音、耐疲労性、断熱、及び/又は衝撃/損傷に対する耐性を向上させることができる。
4.二軸(例えば、[+x°/-x°])、三軸(例えば、[0°,+x°,-x°])もしくは四軸(例えば、[0°,±45°、90°])、又は織布で作られた伝統的なスキン構造物に置き換わったサンドイッチ構成内に螺旋TPUDスキンを用いることにより、スキンの貫通厚さの衝撃強度を向上させることができ、しかも面内圧縮下におけるスキン座屈を遅延させることができる。これは、小さなプライ間角度及び多数のプライの結果から生じ、それにより、重量の低減が可能である。かかる構造物では、螺旋積み重ね方式は、高い貫通厚さ衝撃強度をもたらし、そして面外強度に関して薄いプライの積層物に特有の脆弱さを補完したり打ち消したりする。かくして、薄いプライの螺旋積み重ねにより、軽量化を高めることができるよう薄いプライの面内特性を向上させることができる。
5.ナノ材料を母材樹脂中に組み込むと、螺旋プライ自体とハイブリッド材料(例えば、金属及びサンドイッチ)との間の結合度を高め、それにより、層間強度及びかかる層間強度(例えば、強度剪断、曲げ引張、圧縮及び衝撃)に依存する特性を向上させることができる。
【0043】
一プライ内の湾曲繊維は、伝統的な又はロボット式繊維配置機器を用いて作られるのが良い。この場合、スリットテープ又はトウの比較的幅の狭い(例えば、1/4インチ(0.635cm)のストリップを幅の広い(例えば、4インチ(10.16cm))バンド中に並置して配置され、そして同時に配置されるのが良い。配置ヘッドは、バンドが円弧をなして(例えば、200mm半径)、s字形をなしてあるいは大抵の複合材を配置する際に用いられる伝統的な直線配向に代えて任意所望の輪郭をなして、ステアリングされることができるような仕方で熱、配置圧力及び角度剪断敷設力を変更するのが良く、これについては
図17を参照されたい。この曲率は、より多くの自由度を螺旋スタックに追加することができ、そして本明細書で説明される別の設計例のうちの任意のものに使用することができる。螺旋プライ積み重ねと組み合わせられる2D又は3D形状内の面内湾曲は、波長調整(同調)及び衝撃能力をさらに向上させることができる。
【0044】
かくして、本開示は、先行技術を超えたある範囲の新規な螺旋設計及び製造上の技術的改良を詳述している。本開示は、螺旋ピッチ及び特に建築資材/変形例に対する改造を教示しており、かかる改造としては、(a)ナノ材料、(b)可変ピッチ及び部分スパイラル、(c)TPUD、(d)ハイブリッド材料、(e)一プライ内の湾曲繊維、(f)2D又は3Dプレフォームのための自動繊維又はテーパ配置、(g)非けん縮布、(h)3D織布、(i)3D印刷材料、及び(j)フィラメント巻き部品が挙げられる。
【0045】
かくして、本発明によれば、以下の実施例は、本発明の諸観点を説明している。しかしながら、理解されるように、これら実施例は、本発明を限定するものではなく、例示であることが意図されている。
【0046】
実施例1:CNF、CNT、SWNT、MWNT、黒鉛プレートレット/グラフェン、有機球形粒子、コポリマー、無機クレイ、シリカ、炭化珪素、アルミナ、金属酸化物、及び他の既知又は将来開発されるナノ材料を含む(しかしながら、これらには限定されない)ナノ材料を含む螺旋構造物。繊維強化材と組み合わせた状態の樹脂中へのナノ材料の混入は、同一厚さの従来型複合積層物と比較して、機械的性質及び耐衝撃性を向上させることが判明した。所望ならば、ナノファイバ(直径100nm未満の繊維)を材料中に混入することが可能である。繊維相互間のウィスカー発生は、横方向及び層内剪断特性を向上させるとともに低レベル及び中レベル衝撃に起因して生じる樹脂亀裂を減少させることができ又はそれどころかなくすことができる。層間繊維相互間の直接接触長さを増大させるクロッキング角度の浅い螺旋レイアップは、ウィスカー発生効果を高めることができる。狭い螺旋クロッキングから結果として得られるこの長い接触長さにより、ナノ複合添加剤の効果は、螺旋レイアップ中に混入された場合に、業界標準のレイアップに用いられた場合よりも高くなる。ナノ添加剤を含む螺旋レイアップは、層内垂直/水平樹脂亀裂発生の減少/消失を示すだけでなく、水平層間樹脂亀裂の減少/消失及び離層の未然防止を図ることができる。
【0047】
実施例2:TPUD螺旋構造物は、短い層間樹脂剪断ゾーン及び相当多くの繊維間直接接触を含む厳密にクロッキングされたスパイラルを作る。かかるレイアップは、耐衝撃性であって亀裂発生を制止し(両方共、衝撃及び低温に起因する)であり、しかも向上した層間荷重分散能力を有する。TPUD螺旋積層物は、最小ゲージの減少及び/又は等価性能発揮構造の軽量化を可能にする。積み重ねの自由を制限し、しかも多くの場合、所与の荷重事例に対応するために明確に必要とされる場合よりも厚いレイアップを定めるバランス/対称則は、予期しない加重から保護するための最小配向に関する規則(例えば、任意の一方向において繊維の10%以上)と一緒になって、TPUD螺旋構造物に控え目に使用でき又は幾つかの場合においては無視できる。この実施例の特定の変形例は、以下の内容を含む。
1.全ての層がTPUDプライである螺旋スタック。
2.連続的にクロッキングされたスパイラルのTPUD螺旋スタック。
3.伝統的レイアップよりも薄いが、同様な又は良好な強度及び耐衝撃性を有する業界標準のバランス、対称性、及び最小方向配向則を固守したTPUD螺旋スタック。
4.伝統的レイアップ対称性、バランス及び最小方向配向則を固守しながら所望の性質を備えた薄手の最小ゲージTPUD螺旋スタック。
5.TPUDと厚いプライを組み合わせて伝統的なレイアップよりも優れた特徴的に調整された強度/衝撃性能積層物を作る螺旋スタック。例えば、薄い螺旋プライは、レイアップを調整して全体的な耐衝撃能力を高めるようレイアップの一部分について使用されるのが良く、他方、厚いプライは、レイアップ時間を短縮して全体的強度を生じさせるために使用されるのが良い。
6.伝統的なレイアップよりも優れた強度及び衝撃に関する特性を依然として備えた特徴的に調整された積層物を作るための可変クロッキングを有するTPUD螺旋スタック。
7.標準のクロッキング及び標準のプライ厚さを用いた伝統的なレイアップよりも反る傾向が小さい狭いクロッキング及び薄いプライを有する螺旋スタック。これにより、螺旋TPUDレイアップは、最小限のゲージ及び可能な限り最も低い重量を有しながら例示の強度及び衝撃に関する性質を有することができる。
8.伝統的なレイアップよりも優れている特徴的に調整されかつ強度/衝撃能力を備えた積層物を作るために可変クロッキングを備えた組み合わせ型TPUD・厚手プライ螺旋スタック。例えば、薄いプライと厚いプライの選択を、主として、レイアップ比の見地から行うのが良く、他方、可変クロッキングは、垂直層内樹脂微小亀裂発生を制止するよう選択できる。
9.コンポーネントのパッドアップ領域は、本開示において説明した螺旋変形例のうちの任意のものを含むことができる。このパッドアップには、基本的な伝統的レイアップ又は同一構造もしくは異なる構造の基本螺旋レイアップを組み込むことができる。
【0048】
実施例3:強度、支持力、スチフネス及び耐衝撃性を向上させるために上述のナノ材料、可変ピッチ、部分スパイラル、及びTPUDプライのうちの任意のものをハイブリッド材料(例えば、非ポリマー、金属、フォーム及び/又はサンドイッチ材料)と組み合わせて用いてハイブリッド材料螺旋構造物を製作することとができる。これら組み合わせは、全域的に又は選択された領域でのみ実施されるのが良くそれにより比強度及び衝撃特性を調整する一方で、コスト、重量及び/又は厚さを最小限にすることができる。この実施例の特定の変形例は以下の内容を含む。
1.衝撃力を吸収・消散させ、穴あけし又はトリムする際に繊維のちぎれを最小限に抑え、そして耐腐食性及び耐衝撃性を向上させることができるよう選択された特徴的なクロッキング配置を作るためにスタック中に又は内面及び外面上に分布して配置された織布複合材プライを有する螺旋変形例。布プライは、落雷を消散させ、電流を通し、電気部品をシールドし又は熱伝導率を変化させるのを助けるために金属箔、繊維又はメッシュをさらに含むのが良い。
2.腐食及び衝撃に対する能力を向上させるよう内面及び外面上に施された金属箔を有する螺旋変形例。
3.剪断剛性を高め、慣性荷重を緩衝し、打撃エネルギーを消散させるとともに/あるいは耐座屈性を向上させるために減衰フォーム又はサンドイッチ材料がレイアップの中心に配置された螺旋変形例。加うるに、コンポーネントの強度と重量の比、消音、耐疲労性、断熱、及び/又は衝撃/損傷に対する耐性を向上させるためである。
4.螺旋材料は、非けん縮布又は織布で作られた伝統的なスキン構造物に置き換わるサンドイッチ構造の状態に集成された薄いプライの一方向(TPUD)材料を用いて製作できる。この構造物により衝撃強度の対応の改善が可能であり、しかも面内圧縮下においてスキン座屈の遅延を助けることができる。かかる構造物では、螺旋積み重ね方式は、比較的高い貫通厚さ衝撃強度をもたらし、そして面外強度に関して薄いプライの積層物に特有の脆弱さを補完したり打ち消したりすることが見込まれる。かくして、この例では、TPUDの螺旋積み重ねにより、薄いプライの面内特性を向上させることができ、それにより部品の軽量化を可能にすることができる。
5.螺旋プライ自体とハイブリッド材料(例えば、金属及びサンドイッチ)との間の結合度を高め、それにより、層間強度及びかかる層間強度(例えば、強度剪断、曲げ引張、圧縮及び衝撃)に依存する特性を向上させるようナノ材料を樹脂中に用いた螺旋変形例。
【0049】
実施例4:連続繊維、テープ又は繊維パッチの載置のための自動材料配置機器が所与のプライ内における繊維の湾曲をさらに促進させる状態で上述の螺旋設計例のうちの任意のものを作るために使用できる。この曲率は、より多くの自由度を2D又は3D形状螺旋スタックに追加することができ、そして波長調整及び衝撃能力をさらに向上させるよう使用できる。
【0050】
実施例5:螺旋多軸(HMX)非けん縮布[0°、22.5°、45°、67.5°、90°]を製作することができる。次に、このロールをその0°軸回りに丸めるのが良く、それによりその幅を2で割り又はこのロールを裏返しされた別の同じロールと単に組み合わせ、それにより10プライHMX[-90°、-67.5°、-45°、-22.5°、0°、0°、22.5°、45°、67.5°、90°]を形成するのが良い。別の実施例では、第1の螺旋MX布(例えば、[56°、70°、-79°、-56°])を大径の連続ロールから引き出して90°回転させる(例えば、[-34°、-11°、11°、34°])のが良く、そして互いの上に載せ、それにより8プライHMX布(例えば、8プライ[56°、79°、-79°、-56°、-34°、-11°、11°、34°]を備えた22°HMX)を形成する。個々のプライの場合と同様、2つのHMXスタックは、縫成又は粉末結合剤もしくは熱積層熱可塑性不織ベールもしくは任意他の適当な公知の技術、例えばエアパンチ又はニードルパンチを用いて接合されるのが良い。
【0051】
これは、8枚以上の螺旋プライを単一のMX布ロール中に埋め込んだHMXを提供する効率の良いかつ革新的な布又は織物であり、これにより、複合材業界において一般的に見受けられるような機械の制約に打ち勝つ。次にかかるHMXロールを予備含浸するのが良い。
【0052】
実施例6:フィラメント巻きは、種々の軸対称、例えばパイプ、テーパ付き管並びにタンク及び圧力容器(典型的には、一端又は両端にドームを有する場合のある球又は筒体の形態をしている)のための螺旋アーキテクチャに基づいて構造物を作るよう使用されるのが良い。幾つかの用途に関し、これらフィラメント巻き部品(例えば、車両内の燃料タンクの形態をした水素圧力要素)は、大規模な衝突に耐えるとともに爆発を避けるように外部からの衝撃に対して高い耐性を示すことが必要であり、そして粉砕及び落下試験される。かかる構造物は、衝撃強度を高めるとともにさらにガス漏れを避けるとともに稼働ライフサイクルを延ばすようより拡散した亀裂伝搬を示すように全体的又は部分的螺旋積層物を用いて製作されるのが良い。
【0053】
螺旋巻き技術を用いると、例えばマンドレル上で一端から他端まで巻回することによって、螺旋状に形成された一方向繊維方向又はバンドテープを織り合わせるために使用できる。かかる織り合わせ螺旋パターン(例えば、
図5Hに示されている)は、マンドレル被覆を二角+X°/-X°二重層で完成させることができる。この角度は、0°角度基準を説明するマンドレル回転軸から測定できる。この技術により、この二重層内の2枚の隣り合うプライ相互間相対角度は、X<45°の場合に2X°(例えば、X=7°の場合、14°)であるのが良く、又はX≧45°の場合に180°-2X°(例えば、X=85°の場合に-10°)であるのが良い。したがって、このフィラメント技術により、連続して折り合わされた螺旋二重層を形成することが可能であり、これら層相互間の小さな浅いクロッキング角度(例えば、5°~10°)は、0°又は90°配向回りである。45°方向回りにおいて、繊維は、ほぼ直角に交差することになる。
【0054】
別の具体化例では、螺旋アーキテクチャを有する構造物は、全てが同一の角度を有し又は一プライ当たりの層内の可変角度を有する繊維の層を巻回することによってフィラメント巻きで製造できる。これは、ロボット式フィラメント巻回機械をそれに従ってプログラムして所望のパターンを巻回することによって又はロービングディスペンサのセットアップを調整することによって達成できる。この技術により、プライ相互間のクロッキング角度の僅かなばらつきで繊維の数枚の全平面プライを巻回して螺旋アーキテクチャの利点を得ることができる。一例として、連続した円周方向プライを90°に近い相対角度(4°の増分で、例えば88°、84°、80°、76°、72°)で巻回することにより、極めて高い衝撃強度及びより拡散した亀裂伝搬を呈する製品、例えば圧力容器が提供される。かかる螺旋アーキテクチャはまた、部分的に損傷した積層構造物内の亀裂を通るガス漏れに関して安全係数を高めるよう内側層として使用できる。プル巻回プロセスは、プロフィールの引き抜き成形と巻線に又はテープを含む繊維強化材の0°周方向と組み合わせて横方向解除に対する耐性をさらに高めることができる。これら巻きプライはまた、螺旋アーキテクチャを有する構造物を形成して高い横方向耐衝撃性を提供するようこれらの角度の僅かなばらつきで互いに隣接するのが良い。
【0055】
実施例7:編組及びねじれの製品。2D又は3D技術を用いて製造された編組は、直径のばらつきが繊維角度のばらつきと関連しているというおもしろい性質を提供する。繊維は、管状編組内で滑ることができるので、これにより、かかる編組の直径を拡張し又は減少させることができる。この性質は、構造物の直径を次第に大きくするよう互いの上に効果的にスリーブ状にされた数個の層を備えた螺旋アーキテクチャを有する構造物を製作したり層相互間及び/又は層に沿う繊維角度を僅かに変えて2つの隣り合う編成層相互間の極めて僅かなクロッキング角度のばらつきを生じさせたりする上で有利な場合がある。かかる編成繊維強化構造物は、長手方向に沿って切断され、次に平らに置かれた管状編組から得られた平らな編成テープの形態でも提供できる。繊維角度配向はまた、テープの幅につれて変化する。かかる編成テープはまた、螺旋アーキテクチャを有する構造物を形成するよう僅かに異なる繊維角度を備えた同一テープの互いに異なる層を積み重ねるために使用できる。この性質はまた、たて糸とよこ糸との間の当初の90°角度を変更するようねじれる織布でも見受けられる場合があり、この角度は、1つの布層から次の布層までの僅かな角度のばらつきを備えた一連のたて糸/よこ糸の角度を形成するよう調整でき(例えば、層を90°、85°、80°、75°などで整列させるための5°クロッキング角度)、かくして、螺旋アーキテクチャを有する構造物が作られる。
【0056】
実施例8:アディティブマニュファクチャリング:上述の技術のうちの多くは、既存の組をなす布、プレプレグなどを用いる。この実施例では、螺旋アーキテクチャを形成する別の方法が提供される。アディティブマニュファクチャリングに対しては、多くのルートが存在し、かかるアディティブマニュファクチャリングとしては、レーザを用いて層ごとにフォトポリマー樹脂を硬化させる光造形(SLA)、3Dプリンタを用いて熱可塑性ガイドを堆積させる熱溶融積層法(FDM)、材料を三次元で堆積させるプリンタヘッドにより材料を構築することができるマルチジェットモデリング(MJM)、及び高出力レーザを用いて小さなポリマー、金属、又はセラミック/ガラス粒子を互いに溶融する選択的レーザ焼結法(SLS)が挙げられる。上述の技術のうちの全てによって、螺旋構造物を構成することができる。用いられる方法論、1つには、用いられる材料及び特定の用途に必要とされる特徴の長さスケールに依存する。したがって、これは、螺旋材料を製作するだけでなく、繊維又はプレプレグフォーム、zピン止め構造物などの状態で購入するのに利用できない材料の印刷により多機能性の実現を可能にする多くの機会を提供する。
【0057】
一実施例では、マルチジェットモデリング(MJM)を用いて2つの以上の材料を同時に印刷することができ、これら材料は、全て、螺旋構造物を有することができるが、特定の角度(例えば、二重螺旋体)だけオフセットするのが良く、又は1つの材料を面内螺旋体及びzピン止め構造物として働く面外に印刷されるべき別の材料として作用させることができる。さらに、材料は、固体繊維形態の状態に印刷される必要はない。例えば、印刷中、「コア‐シェル」プリントヘッドを用いると、コア‐シェル材料を印刷することができ、この場合、シェルは、所望の最終材料であり、コアは、犠牲テンプレートして用いられる。一実施例では、疎水性ポリマー、例えばポリプロピレン(PP)をコアとしてのポリ塩化ビニル(PVA)と一緒に印刷できる。印刷後、この構造物を水性浴内に配置するのが良く、この水性浴は、次に、PVJを除去し、中空PP繊維/管を生じさせる。別の実施例では、材料は、ポリマーとして印刷される必要なく、セラミックを主成分とする前駆体(例えば、SiC、B4C)などとして印刷される。この場合、セラミック前駆体(例えば、ポリカーボシラン、SiCの前駆体)をコアとしてのPVAと共にシェルとして印刷できる。低温(例えば、200℃)でのアニーリング時点、セラミック前駆体は、凝固することになる(まだSiCには変換しない)。この後、管を潰すことなくPVAを安全に取り出すことができ、次に結果として生じる構造物をアニーリングしてセラミック前駆体を所与の材料(例えば、SiC)に完全に変換させることができる。結果的に得られる繊維は、マクロ又はナノチューブであるのが良く、かかるチューブは、流体(空気、水、自己回復樹脂、熱冷却材料など)のための乾燥チャネルとして作用することができる。
【0058】
多くのアディティブマニュファリング方法として、強制する可能性が得られ、それにより、構成されるべき勾配構造物を高精度で構築することができるようにするリアルタイムで用いられる印刷材料を調整することができる。これは、種々のやり方で適用でき、かかるやり方としては、以下のやり方が含まれるが、これらには限定されない。
1.堆積されるべき材料のスチフネス又は硬度(又は材料組成、粒径などに依存する任意他の材料性質)を印刷リザーバ内の材料を連続的に変更することによって徐々に変化させることができる。
2.螺旋体の回転角度は、さらに、勾配のついた螺旋複合材料を形成するようさらに調整でき、それにより、追加の機械的利点もまた提供することができる。
【0059】
別の具体化例では、既存のテンプレート付き構造物を足場又は犠牲構造物として印刷段上に配置することができ、かかる構造物は、まさに螺旋アーキテクチャを超えるアーキテクチャを生じさせる。例えば、ピン、管、又は他の構造物(例えば保つことができ又は溶解して除去することができる多数の形式の材料で構成される)の2D又はそれどころか3DアレイをSLAプリンタの構成プレート上に配置することができる。螺旋アーキテクチャをこの足場周りに印刷し、その後、足場を除去することができ、それにより耐衝撃性を維持するが、追加の利点(例えば、機械的利点、例えばzピンニング(z-pinning)及び熱的利点:冷却)を提供する螺旋アーキテクチャを備えた多構造物が得られる。別の具体化例では、3D印刷技術を用いると、湾曲した構造物を容易に印刷することができる。この場合、単純CADモデルを作ってFDMプリンタ(例えば)が繊維を螺旋アレイの状態に、しかしながら湾曲した微小構造部品の状態に配置することができる。
【0060】
当業者であれば理解されるように、事実上任意の布を用い、そして螺旋構造物の状態に集成することができ、これが炭素繊維であれ別の材料であれいずれにせよそうである。上述すると共に図示した本発明の方法、システム、及び製品は、とりわけ、改良された複合材料及び改良された複合材料を形成する方法を提供する。当業者には明らかなように、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の装置及び方法に関して種々の改造及び変形を行うことができる。かくして、本発明は、本発明の範囲及び均等範囲に含まれる改造例及び変形例として含むものである。
【0061】
本発明の以下の諸観点は、上述した本発明の実施形態に係る本発明の特徴を表している。
1.螺旋鋼材プライクロッキング/積み重ね設計及び方法であって、複合プライがz方向繊維配置状態を生じさせるために特定のピッチに合わせて密なスパイラルをなして積み重ねられ、z方向繊維配置状態は、衝撃波伝搬を減衰させるとともに吸収し、歪エネルギーを消散させ、衝撃疲労効果を最小限に抑え、そして衝撃と関連した損傷を最小限に抑えるとともに/あるいは制止する。
2.観点1に記載された螺旋システムであって、螺旋システムは、手でレイアップされて直接自動機械内に配置され、かつ/あるいは織成/組成/縫成機器(例えば、非けん縮布製造機械)を用いてスタックの状態にあらかじめ編成されることを特徴とする螺旋システム。あらかじめ編成されたスタック(例えば、強度及び耐衝撃性が得られるよう選択された4枚、6枚、10枚以上の特別にクロッキングされた螺旋プライ)として配置されると、スタックは、乾燥しているのが良く、後で液体成形され又はプレプレグから作られる。このスタックは、本明細書において開示した諸変形例のうちの任意のものを用いて螺旋改良が得られるよう選択されたコンポーネントの部分全体又は特定の領域であるのが良い。
3.観点1に記載された螺旋システムであって、自動配置機器が所与のプライ内の繊維を湾曲させるために用いられることを特徴とする螺旋システム。
4.観点1に記載された螺旋システムであって、ピッチがつけられた繊維は、弾道特性、打撃力又は異物衝撃によって開始される伝搬衝撃波を減衰させるために特定の波長に合わせて調整されることを特徴とする螺旋システム。
5.観点1に記載された螺旋システムであって、クロッキングは、特定の螺旋ピッチ又は回転偏光z配向を生じさせるよう選択され、繊維は、プライ相互間の相当大きな層内直接荷重分散を示すのに足るほど互いに密接していることを特徴とする螺旋システム。
6.観点1に記載された螺旋システムであって、母材樹脂改変(例えば、モノマー機能の低下、骨格分子量の増加、又は軟質サブグループの混入)及び/又は添加剤(微小球、分離したゴム、熱可塑性粒子又はベール)は、積層物を強化し、さらに突発破断の伝搬をさらに制止するために用いられることを特徴とする螺旋システム。
7.観点1に記載された螺旋システムであって、樹脂及び繊維は、繊維と樹脂との弾性モジュラスの差を利用するために特別に選択されることを特徴とする螺旋システム。
8.観点1に記載された螺旋システムであって、繊維強化材の種類[例えば、炭素、ガラス繊維、アラミド、超硬分子量ポリオレフィン繊維、PBO繊維、及び天然繊維、例えば亜麻及び大麻]、量、及び形態は、コスト、製造要件及び性能要件に最も良くマッチするよう選択されることを特徴とする螺旋システム。
9.観点1に記載された螺旋システムであって、コンポーネントのパッドアップ領域は、本明細書に同一又は異なる構成の基本的な伝統的レイアップ又は基本的な螺旋レイアップを含む本明細書において説明した螺旋変形例のうちの任意のものを含むことができることを特徴とする螺旋システム。
10.観点1~7に記載された螺旋システムであって、樹脂中に添加され、直接繊維に取り付けられ又は層間層として配置されるナノ材料(CNF、CNT、SWNT、MWNT、黒鉛プレートレット/グラフェン、有機球形粒子、コポリマー、無機クレイ、シリカ、炭化珪素、アルミナ、金属酸化物、及び他の既知又は将来開発されるナノ材料)を含むことを特徴とする螺旋システム。この場合、結果として得られた螺旋/ナノ材料ハイブリッドは、繊維を跨ぐとともに繊維相互間の分散を可能にし、積層物の機械的性質を向上させ、耐衝撃性を向上させ、そして亀裂制止特性を有するナノスケールウィスカー/結合部を有する。
11.観点8に記載された螺旋システムであって、ナノ材料添加は、螺旋クロッキング角度に対して横方向及び層内剪断特性を改善する(すなわち、狭いクロッキング角度は、長い接触長さ及び高い繊維間相互作用を生じさせる)ことを特徴とする螺旋システム。
12.観点8に記載された螺旋システムであって、螺旋/ナノ材料ハイブリッドは、(a)層内垂直及び/又は水平樹脂亀裂発生、(b)水平層間樹脂亀裂、及び/又は(c)衝撃を受けた際の離層の減少及び/又は消失を呈することを特徴とする螺旋システム。
13.観点1~7に記載された螺旋システムであって、予想衝撃形式、レベル、及び源を予想して特定の波長及び/又は配向に合わせて調節されるとともに/あるいは特定の加重要件を満たすよう個別調整される可変ピッチ及び/又は部分スパイラルを含むことを特徴とする螺旋システム。
14.観点1に記載された螺旋システムであって、単一の積層物中の可変クロッキング(すなわち、5°、10°、15°)は、可変波長にわたって調整され、特定のゾーン/深さのところの衝撃力を制止/消散させ、そして可変クロッキング角度を衝撃能力と全体的積層物強度の好ましい組み合わせが得られるよう最適化できることを特徴とする螺旋システム。
15.観点1に記載された螺旋システムであって、積層物のある特定の厚み容器内の衝撃荷重を消散させる一方で、自由度が平面内強度が得られるようプライのうちの大部分の配向を個別調整することができるようにするためにレイアップの(a)外部、(b)中間部、(c)内部、又は(d)内部、中間部及び外部のうちの1つ以上に設けられた狭いクロッキング(すなわち、5°)及びレイアップの残部に設けられた広いクロッキングを含むことを特徴とする螺旋システム。
16.観点1に記載された螺旋システムであって、例えば左又は右巻きにしかすることができない非対称及び/又はバランスが取れていないプライ積み重ねを有することを特徴とする螺旋システム。かかるレイアップは、厚さを増大させてバランス及び対称に関する経験則を固守する必要なく、螺旋クロッキングにより得られる利点を利用することができる。
17.観点1に記載された螺旋システムであって、レイアップは、部分的に巻かれるに過ぎず、また360°全体にわたってクロッキングするわけではないことを特徴とする螺旋システム。かかるレイアップは、ある特定の積層物ゾーン中の螺旋配置の衝撃の面における利点を分離することができる一方で他のゾーンにおける耐荷繊維を最適化することができる。
18.観点1~7に記載された螺旋システムであって、TPUDプライ(代表的には、一プライ当たり0.0023インチ(0.05842mm)/又はこれよりも薄い)ことを特徴とする螺旋システム。結果的に得られた狭くクロッキングされた螺旋スパイラルは、短い層間樹脂剪断ゾーンを有し、それ故に相当な繊維間直接接触/分散(すなわち、厳密なアスペクト比)を呈し、それにより螺旋スパイラルは、耐衝撃性にかつ亀裂制止可能になる。さらに、TPUDレイアップは、ほぼ同じ厚さの伝統的なレイアップと比較して、強度が向上していることが判明した。
19.観点16に記載された螺旋システムであって、衝撃事象からの優れた樹脂亀裂制止能力を有するだけでなく、例えば宇宙用途及び極低温タンク用途の際に受ける極端な環境(例えば、-200°F(-128.9℃)~-415°F(-248.3℃))に起因する層内及び層間亀裂発生を最小限に抑える能力をも示すことを特徴とする螺旋システム。
20.観点16に記載された螺旋システムであって、配向度の高い伝統的なスタック(主要な耐荷方向における余分のプライ)と同じほど良好な又はこれよりも良好な強度を有し、それでいて耐衝撃特性が向上している連続的にクロッキングされたスパイラルを有することを特徴とする螺旋システム。かかる用途では、螺旋レイアップが主要加重方向において全本数が少ない繊維を有する場合であっても、薄いプライと僅かにクロッキングされたオフアングル繊維が組み合わさって効率のよい層間荷重分散をもたらし、その結果、優れた面内強度性能が得られる。
21.観点16に記載された螺旋システムであって、同性能の伝統的な積層物スタックよりも全厚が小さいが、螺旋システムは、ほぼ同じ又はこれよりも良好な強度及び衝撃性能を有することができることを特徴とする螺旋システム。この場合、業界標準のバランス、対称性、及び最小方向配向則を固守した場合に可能なレベルよりも薄くかつ軽量のTPUD螺旋積層物を製作することが可能である。
22.観点16に記載された螺旋システムであって、本螺旋システムは、所望の性質を依然として保持しながら伝統的なレイアップの対称性、バランス及び最小配向則に固執しながら、薄い又は最小ゲージ(雹又は鳥の衝突のような臨界荷重の場合に取る厚さ)のものであることを特徴とする螺旋システム。
23.観点16に記載された螺旋システムであって、本螺旋システムは、TPUDと厚いプライを組み合わせて特徴的に調整され、強度及び衝撃能力のコンポーネントを作ることができることを特徴とする螺旋システム。例えば、薄い螺旋プライは、レイアップを調整して耐衝撃能力を高めるようレイアップの一部分について使用されるのが良く、他方、厚いプライは、レイアップ時間を短縮して全体的面内強度を生じさせるために使用されるのが良い。
24.観点16に記載された螺旋システムであって、伝統的なレイアップよりも優れた強度及び衝撃特性を依然として有する特徴的に調整された積層物を作るために可変クロッキングを有することを特徴とする螺旋システム。
25.観点16に記載された螺旋システムであって、本螺旋システムは、狭いクロッキング及び薄いプライを用い、そして標準のクロッキング及び標準のプライ厚さを用いて伝統的なレイアップよりも反る傾向が小さいことを特徴とする螺旋システム。したがって、螺旋TPUD非対称/バランスの取れていないスタックは、最小ゲージ及び低重量を有することができる。
26.観点16に記載された螺旋システムであって、伝統的なレイアップよりも優れた特徴的に調整されるとともに強度/耐衝撃性の積層物を生じさせるための組み合わせ型TPUD・厚いプライ螺旋スタック及び可変クロッキング方式を有することを特徴とする螺旋システム。この場合、薄いプライと厚いプライは、レイアップコストを最小限に抑えるとともに強度/スパイラル調整変数をある特定の度(°)まで最適するために使用でき、他方、可変クロッキングピッチは、特性を最適化するために使用できる。
27.観点16に記載された螺旋システムであって、コンポーネントのパッドアップ領域は、観点17~24に記載されたTPUD変形例のうちの任意のものを同一又は異なる構成の基本的な伝統的レイアップ又は基本的な螺旋レイアップと共に含むのが良いことを特徴とする螺旋システム。
28.観点1~25に記載された螺旋システムであって、強度、支持力、スチフネス及び/又は耐衝撃性を向上させるためにハイブリッド材料(例えば、非ポリマー、金属、フォーム及び/又はサンドイッチ材料)と組み合わされていることを特徴とする螺旋システム。かかる組み合わせは、比強度、腐食特性、及び衝撃特性を満たす一方でコスト、重量及び/又は厚さを最小限にするために定められたように全域的に(例えば、母材樹脂全体を通じて組み合わされたナノ材料)又は選択的に(例えば、チタン箔の層)実施されるのが良い。
29.観点26に記載された螺旋システムであって、ナノ材料が螺旋プライとハイブリッド材料(例えば、金属及びサンドイッチ)との結合部を改善し、それにより層間強度及びかかる層間強度(例えば、強度剪断、曲げ引張、圧縮及び衝撃)に依存する特性を向上させるよう樹脂に混入されていることを特徴とする螺旋システム。
30.観点26に記載された螺旋システムであって、布複合プライが衝撃力を吸収して消散するよう特別に選択された特徴的なクロッキング構成を作るようスタック内に又は内面及び外面上に選択的に配置されていることを特徴とする螺旋システム。また、穴あけ又はトリム中に繊維のちぎれを最小限に抑えるよう外側プライ上に用いられる場合、織りプライは、落雷を消散させ、電流を通し、電気部品をシールドし又は熱伝導率を変化させるのを助けるために金属箔、繊維又はメッシュをさらに含むのが良い。
31.観点26に記載された螺旋システムであって、強度、耐腐食性、支持力及び耐衝撃能力を向上させるために金属箔が内面及び外面に施されていることを特徴とする螺旋システム。かかる螺旋/ハイブリッドの事例では、金属箔は、撓むことができ、螺旋プライは、衝突中にエネルギーを吸収/減衰することができる。
32.観点26に記載された螺旋システムであって、剪断剛性を高め、慣性荷重を緩衝し、打撃エネルギーを消散させるとともに/あるいは耐座屈性を向上させるために減衰フォーム又はサンドイッチ材料の層が螺旋スタックの中心に配置されていることを特徴とする螺旋システム。
33.観点1~30に記載された螺旋システムであって、衝撃波伝搬を減衰させるとともに吸収し、衝撃疲労効果を最小限に抑え、そして衝撃と関連した亀裂及び損傷を最小限に抑えるとともに/あるいは制止するために消費製品、保護具、スポーツ用品、衝突保護器具、風力タービン翼、自動車部品、航空宇宙用材料、水素圧力容器、建築資材、及び他の複合製品中に組み込まれることを特徴とする螺旋システム。
34.観点1~30に記載された螺旋システムであって、想定される打撃、衝突、雹、工具落下、弾道特性、ランダムなデブリ、衝撃波、落雷、キャビテーション及びエーロフラッタリングからの低、中及び高エネルギー衝撃効果を最小限に抑えるために複合構造物中に組み込まれることを特徴とする螺旋システム。
35.多軸布製造機械を用いて螺旋構造物を非けん縮布から製作する方法。
36.観点35に記載された方法であって、材料の複数のロールを作り、そして材料ロールの層を集成して多数のプライの螺旋シーケンスを形成することによって複数の螺旋プライを製作することを特徴とする方法。
37.観点36に記載された方法であって、多軸ヘリコイド・ノンクリンプ・ファブリック(Helicoid Non-Crimp Fabric :HMX)を形成する4枚又は5枚の螺旋プライのロール(例えば、H‐NCF12°:[48°、60°、72°、84°]又はH‐NCF22.5°:[0.22、5.45、67.5、90])が製造されることを特徴とする方法。
38.観点37に記載された方法であって、材料HMXの8枚又は10枚のプライのロール(例えば、H‐NCF12°:[48°、60°、72°、84°、-84°、-72°、-60°、-48°]又はH‐NCF22.5°:[90、-67.5、-45、-22.5、0、0、22.5.45、67.5、90])を形成するよう材料のロールから材料を裏返すステップを含むことを特徴とする方法。
39.観点38に記載された方法であって、材料を材料のロールから約その0°軸回りに折り曲げてその幅を2で割り、それにより材料HMXの8枚又は10枚のプライロール(例えば、H‐NCF12°:[48°、60°、72°、84°、-84°、-72°、-60°、-48°])又はH‐NCF22.5°:[90、-67.5、-45、-22.5、0、0、22.5、45、67.5、90])を形成するステップを含むことを特徴とする方法。
40.観点38に記載された方法であって、材料のロールからプラス又はマイナス90°回転させて材料HMXの8枚又は10枚のプライロール(例えば、-90°回転させた[56.3°、78.8°、-78.8°、-56.3°]:H‐NCF22.5°:[56.3°、78.8°、-78.8°、-56.3°、-33.8°、-33.8°、-11.3°、11.3°、33.8°])を形成するよう組み合わされた[-33.8°、-11.3°、11.3°、38.8°])を形成するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
41.観点38~40に記載の方法であって、初期HMXロールの裏返し、折り曲げ及び回転が連続螺旋を備えた非常に多くのプライのロールを作るための組み合わせ運動であるのが良いことを特徴とする方法。
42.観点35~41に記載の方法であって、布の層は、縫成機械又は熱積層熱可塑性ベール、粉末結合剤、エアパンチもしくはニードルパンチによって組み合わされることを特徴とする方法。
43.観点35~42に記載された方法であって、可変クロッキング角度は、観点13~15に記載されているように適用されることを特徴とする方法。