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▶ 山田 利寛の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】古代食品、醍醐味
(51)【国際特許分類】
   A23L 35/00 20160101AFI20230908BHJP
【FI】
A23L35/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023043177
(22)【出願日】2023-03-17
【審査請求日】2023-03-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500062298
【氏名又は名称】山田 利寛
(72)【発明者】
【氏名】山田 利寛
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-222172(JP,A)
【文献】特開平02-057143(JP,A)
【文献】特開昭53-145955(JP,A)
【文献】酒粕と梅酒のチーズケーキ,クックパッド,2016年04月26日,[令和5年5月16日検索],インターネット<URL:https://cookpad.com/recipe/3821840>
【文献】米粉で作る 梅チーズふわっとケーキ,クックパッド,2019年05月08日,[令和5年5月16日検索],インターネット<URL:https://cookpad.com/recipe/5638627>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛乳、生クリーム、バター及びチーズからなるより選ばれた1種以上の乳製品と、
蜂蜜、水飴及び砂糖からなるより選ばれた1種以上の甘味料と、
米粉、麦粉、豆粉、粟粉及び葛粉からなるより選ばれた1種以上の粉末類と、
清酒、濁り酒、甘酒及び味醂からなるより選ばれた1種以上の酒類と、
塩、梅肉からなる塩梅、
とを備えることを特徴とする古代食品、醍醐味。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古代食品である乳粥味、乳酪味、生酥味、熟酥味、醍醐味などの乳の五味に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伝説の食品である乳の五味とは、実在するものではなく、仏教の教義や経典の段階の説明に用いられるものである。
古来醍醐味とは、牛乳を精製していって最終的に乳製品ができるまでの味を、五段階に分けたもので、もと大乗の「大般涅槃経」の「聖行品」に出典する、譬えば牛より乳を出し、乳より酪を出し、酪より生酥を出し、生酥より熟酥を出し、熟酥より醍醐を出すといい、最後の醍醐味を最高の味として、仏の涅槃に例えるもので、経典や仏の衆生教化の深浅の次第を表す比喩や、悟りの境地を示す仏教用語であると信じられていた。
【0003】
しかし、釈尊が説かれた仏典は、古代の真実であると一途に信じた本出願人は、一片の疑念も抱かずに史料の発掘と精査に着手し、延喜式に大宰府のほか四十六国を、六区分して毎年順に酥を税として、貢酥する順番と年次が指定されていた事が判明した。
更に大臣大饗の際には、朝延から酥と甘栗を賜るならわしがあり、その勅使を<酥、甘栗使>と呼んだことが知られている。
以上のように古代朝延に酥蜜部という部署が置かれ、貴族や高僧など上流階級の占有物であった秘薬類は、不老長生の霊薬として提供されていた事実が判明した。
【0004】
釈尊が最高無上の美味であると讃えられた乳粥味、乳酪味、生酥味、熟酥味、醍醐味などの乳の五味は、飛鳥時代に遣隋使や渤海使がもたらした北方遊牧系の文化であり、貴族や高僧などの上流階級の食膳に枢要な地位を占める食べ物であったが、一子相伝・不立文字の掟を有する秘薬類は、乙巳の変後忽然と消滅してしまった。
更に、仏教の伝来により肉食を禁忌するようになり、我が国では実際に乳や獣肉を使用する調理は早々に廃れていった。
【0005】
飛鳥時代に渡来人や遣隋使がもたらし、その後忽然と消滅した醍醐味など古代食品の研究開発と復元作業は、数多くの先人達の興味と功名心を刺激して多くの研究者を虜にしたが、実物はもとより、レシピや製造方法も現代に伝承されることなく、完全に消滅しており、その挑戦は総て敗北してしまい、多くの努力は烏有に帰した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】「大般涅槃経」 「聖行品」
【0007】
【文献】酪 生酥 熟酥 醍醐論孝 古・中期インド・アーリア文献「Veda文献」「Pali聖典」を基にした再現実験 平田昌弘 帯広畜産大学地域環境学研究部門(国会図書館 蔵)
【0008】
【文献】日本における古代乳製品の“酥”および“醍醐”の本草綱目<李奢>にもとずく再現試験 有賀秀子・高橋セツ子・倉持泰子・浦島匡・筒井静子 帯広畜産大学家畜生産科学科 帯広市080 北海道文理科短期大学 江別市069 (国会図書館 蔵)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
釈尊が「最高 無上の美味」であると讃えられた、不老長生の霊薬である乳粥味、乳酪味、生酥味、熟酥味、醍醐味などの古代食品である乳の五味の研究開発は困難を極めたが、この謎を解く<鍵>はお釈迦様の出身地、古代インドの言語であるサンスクリット語を翻訳した一文字、一文字がある言葉の意味を表す表意文字である漢訳仏典の漢字にあると考え、部首別に分解してみると、酉偏が多用されている事例が判明した。
【0010】
酒の歴史は人類とともに古く、果実や蜂蜜などの自然発酵によるものが、その原形であると思われる。原初の酒は洋の東西を問わず、農耕の神々と深いかかわりをもっている。酒の原料となる穀物は、またその地の主食であり、農耕によってもたらされるからである。
【0011】
酒が本来お神酒から始まるということは、今では常識である。お神酒が荒神にたいしても、和神にたいしても、祭る仲間たちの協同結束をはかる機会をつくる神聖な飲食物であった。
酒がうまくて、しかも陶酔境に引きいれるものであることを経験した黎明期の古代日本人は、恐るべき魔物や、神々を鎮めたりするのにも、酒をすすめ飲ませることを思いつき、超人的な威力を具えたものを、いっさい神と称して、古代の人々はこれを恐れるとともに、その克服に努め、お神酒を供えて、神々を鎮めたのであるが「不許葷酒入山門」の掟を有する日本の仏教界において、酒に関する痕跡も、残滓も発見し得ない上、古代食品 乳の五味等の古書にも酒に関する記載の事例も絶無であった。
【0012】
塩梅とは、最古の調味料と言われるもので、海水から得られた塩と、酸味の強い梅の実、又は柑橘類、又は酢と、麹よりなるものであり、ほどよい塩かげん、味かげんのみならず、転じて体の調子、天気の具合など、広義に用いられるように、我々の生活に深く根差している独自の調味料である。
【0013】
本発明に係る古代食品、乳の五味である乳粥味、乳酪味、生酥味、熟酥味、醍醐味を、部首別に分解してみると
「酥蜜の酥は乳製品の一種である」
「酥蜜の酉偏は酒壺を表す」
「禾偏は禾本来の種、稲穂を表す」
「蜜は蜂蜜を表す」
「羹はスープの冷えて固まった煮凝り状の食品である」
「こうは棹型の形状をした外郎状の食品である」
以上のことが判明し、謎は遂に解読された
【0014】
この祭紀に用いられる酒と、塩梅は、古代食品である乳の五味との関連は親和性が高く、緊密なものであったが、致酔性飲料である当時の酒はアルコール濃度が低く、更に、加工課程における混合、撹拌、加熱、冷却、成形等の工程においてアルコール分は消滅し、香味成分のみが残留し、風味が高まることが判明した。
【0015】
更に乳の五味である乳粥味、乳酪味、生酥味、熟酥味、醍醐味の内、唯一酉偏を有していない乳粥味においても、釈尊成道の日とされる12月8日の供物として、お粥に味噌と酒粕を入れて煮た臘八粥が、各地方で提供されていることが知らされている。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、飛鳥時代に伝来し、大化年間の乙巳の変による混乱と、仏教の伝来により肉食を禁忌するようになり、我が国では実際に牛乳や牛肉を使用する調理方法は早々に廃れていき、北方遊牧系の文化は滅亡していった。
本発明は、飛鳥時代に確実に存在しており、その後忽然と消滅した古代食品、乳の五味の復活を目論み「倭名類聚抄」「斉民要術」「本草網目」等の文献を渉猟し「古事記」「日本書記」「風土記」「正倉院薬帳」に記載の甘味料、食材である蜂蜜、水飴、甘酒、粳米、糯米、豆類、牛乳等の乳製品が現代のスイーツ類の原材料と共通していることに着目し、試行錯誤の末に羊羹と水飴の中間の形態を有するスイーツとして再現したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る古代食品・乳の五味の実施形態とは、古事記、日本書紀等の古書に記載されている食材である。
牛乳と生クリーム、バター、チーズ等の乳製品と、
蜂蜜、水飴、砂糖等の甘味料と、
米、麦、小豆、大豆、葛粉等の五穀類の粉末からなる古代食品・乳の五味において、
清酒、濁り酒、甘酒、味醂等の酒類と、
塩、梅肉からなる塩梅等の調味料とを含有することを特徴とする乳の五味組成物である醍醐味羹を得た。
更に、現在の各食材を組み合わせ、現代の薬事法、食品衛生法に基づいた最新技術を駆使して復元した古代食品は、我が国古来の東洋哲学に則った歴史的裏付けと、話題性を有する商品である。
【実施例1】
【0018】
粳米粉、糯米粉に少量の牛乳を加えてかき回し、これに蜂蜜、砂糖、酒粕、味噌を混入してばらばらにほぐす。
これを濡れ布巾を敷いた蒸籠の中に、約2センチの厚さになるまでふるいこんで蒸す。
蒸し上がれば、棹物状に切断して、外郎状の乳粥羹を得た。
【実施例2】
【0019】
赤小豆粉、すりおろしのヤマノイモ、蜂蜜、砂糖、小麦粉、葛粉に、牛乳、生クリーム、チーズ、及び味醂を加え混合撹拌する。
これを箱状の槽に流し込んで加熱する。
蒸し上がれば、棹物状に切断して、蒸し羊羹状の乳酪羹を得た。
【実施例3】
【0020】
鍋に牛乳200cc、生クリーム200cc、及び無塩バター30gを入れて弱火にかける。
次に蜂蜜10g、水飴10g、砂糖200g入れて、かき混ぜながら煮溶かす。
更に米粉10g、豆粉10g、及び葛粉5gを加え、弱火のまま絶えず混ぜながら煮つめる。
木ベラでかき混ぜ続け、クリーム状になったら甘酒30cc、塩梅小サジ2/1を加えて火を止め、粗熱を取り、槽に流し入れて冷やし固めると、メイラード反応の無い乳白色の生酥味羹を得た。
【実施例4】
【0021】
鍋に発酵乳200cc、発酵クリーム200cc、バター30gを入れて弱火にかける。
次に砂糖200g、水飴10g、蜂蜜10gを入れて、かき混ぜながら煮溶かす。
更に米粉10g、麦粉10g、及び葛粉5gを加え、弱火のまま煮つめる。
木ベラでかき混ぜ続け、クリーム状になったら濁り酒30cc、塩梅小サジ2/1を加えて火を止める。
粗熱が取れたら、槽に流し入れて冷やし固めて水飴と羊羹の中間の形態を有する牛皮状の熟酥味羹を得た。
【実施例5】
【0022】
鍋に牛乳200cc、生クリーム200cc、及びチーズ30gを入れて弱火にかける。
次に砂糖200g、水飴10g、蜂蜜10gを入れて、かき混ぜながら煮溶かす。
更に米粉10g、麦粉10g、及び栗粉5gを加え、弱火のまま煮つめる。
木ベラでかき混ぜ続け、クリーム状になったら清酒30cc、塩梅小サジ2/1を加えて火を止める。
粗熱が取れたら、槽に流し入れ、冷やし固めて水飴と羊羹との、中間の形態を有する牛皮状の醍醐味羹を得た。
【0023】
中東、コーカサスの高原地帯で発生した、北方遊牧民族の乳食文化は、ユーラシア大陸の東と西への両方に伝播していった。
しかし、同大陸の東端に位置する我が国では、乳、酪、生酥、熟酥、醍醐などの乳加工文化は、大化年間の乙巳の変により忽然と消滅した。
一方西に向かった乳食文化は、ポーランドで“フルニカ”などのスイーツの形態で残存している。
【0024】
本発明における古代食品・乳の五味とは、発想を逆転して時空を1300年有余、遡り天平年間に到ったものであり、古代食品の研究開発は競合者すらいない、孤独な作業であった。
しかし、釈尊が説かれた仏典は古代の真実であると、一片の疑念も抱かずに全部信じた本出願人は、史料の痕跡と残滓の発掘と検証によって、蘇らした酥蜜類は、水飴と羊羹との中間の形態と、口に入れると淡雪のような口どけを有する嗜好品として再現したものである。
以上のように醍醐味とは、仏道における最上の教えや、抽象的な比喩ではなく、釈尊が最高の美味、言葉では表現できない恍惚たる味わいであると謳われ、その美味が驚嘆されていた酥蜜部工房作成の乳粥味、乳酪味、生酥味、熟酥味、醍醐味等の乳の五味の再出現は釈尊の仰る通り、玄妙なる滋味を有する牛皮状の古代食品である。
【要約】      (修正有)
【課題】伝説の古代食品である乳粥味、乳酪味、生酥味、熟酥味、醍醐味などの乳の五味を復活させた食品を提供する。
【解決手段】牛乳、生クリーム、バター及びチーズからなる郡より選ばれた1種以上の乳製品と、蜂蜜、水飴及び砂糖からなる郡より選ばれた1種以上の甘味料と、米粉、麦粉、豆粉、粟粉及び葛粉からなる郡より選ばれた1種以上の粉末類と、清酒、濁り酒、甘酒及び味醂からなる郡より選ばれた1種以上の酒類と、塩、梅肉からなる塩梅、とを備えることを特徴とする古代食品、醍醐味を提供する。
【選択図】なし