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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】阻集器
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/16 20060101AFI20230911BHJP
   E03F 5/14 20060101ALI20230911BHJP
   C02F 1/24 20230101ALI20230911BHJP
【FI】
E03F5/16
E03F5/14
C02F1/24 A
C02F1/24 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019178136
(22)【出願日】2019-09-28
(65)【公開番号】P2021055336
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】591059445
【氏名又は名称】ホーコス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 太一
(72)【発明者】
【氏名】影久 和弥
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190655(JP,A)
【文献】特開2000-192536(JP,A)
【文献】登録実用新案第3018977(JP,U)
【文献】特開平10-072862(JP,A)
【文献】登録実用新案第3147268(JP,U)
【文献】実開昭59-178493(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/16
E03F 5/14
C02F 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留槽本体と、
流入口と、
前記流入口から油脂類を含む排水が流れ込むバスケットと、
前記バスケットを収容し、前記貯留槽本体から取り外し可能な収容箱と、
水と油の比重差を利用して油脂類を浮上分離させる分離室と、
油脂類が取り除かれた排水を前記貯留槽本体外の下流へと流出させる流出口と、
前記流出口に設けられ、前記流出口下流からの臭気や虫の侵入を防ぐトラップと、
を有し、
前記収容箱は、少なくとも底面部と側面部とを有し、前記分離室内に設置されて、前記収容箱内のスペースを排水流入室となし、
前記収容箱には、排水を受けとめる一時停留部と、前記一時停留部で受けとめられた排水を前記分離室へと流出させる開口部とが設けられていることを特徴とする阻集器。
【請求項2】
前記一時停留部は、前記底面部上面にあり、前記底面部は、前記分離室内の油脂層の最下位面の高さ位置から上昇水位面の高さ位置の間のいずれかの高さ位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の阻集器。
【請求項3】
前記開口部は、前記収容箱の前記底面部に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の阻集器。
【請求項4】
前記開口部は、前記収容箱の前記側面部に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の阻集器。
【請求項5】
前記一時停留部と前記開口部の間には、越流部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の阻集器。
【請求項6】
前記越流部は、底面部から上方に向かうように設けられた越流板であることを特徴とする請求項5に記載の阻集器。
【請求項7】
前記越流部は、前記側面部の一部であることを特徴とする請求項5または6に記載の阻集器。
【請求項8】
前記一時停留部が設けられる前記底面部の高さ位置と、前記開口部が設けられる前記底面部の高さ位置が異なり、前記越流部は、前記底面部の異なる高さ位置による段差部であることを特徴とする請求項5に記載の阻集器。
【請求項9】
前記越流部の上端部の高さは、上昇水位面の高さと同じかそれより高くなるように設けられていることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか一つに記載の阻集器。
【請求項10】
前記開口部は、前記貯留槽本体の前記流入口が設けられる側か、前記貯留槽本体の左側あるいは右側の、少なくともいずれか一つに設けられることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一つに記載の阻集器。
【請求項11】
前記収容箱内には、前記流入口から前記バスケットに流入する排水を案内する傾斜路が設けられていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一つに記載の阻集器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水に含まれる油脂類などが下水に流出する前に排水から油脂類を分離し収集する阻集器や枡などに関する。
【背景技術】
【0002】
油脂、ガソリン、土砂その他を含む排水をそのまま下水に流すと、下水管などを閉塞したり損傷したりする等、配管設備の機能に支障をきたすなどのおそれがある場合、有効な位置に阻集器を設置することが義務付けられている。阻集器の一例として、飲食店の厨房から排出される排水から油脂類等を分離し収集するグリース阻集器がある。
【0003】
グリース阻集器は、貯留槽本体を有し、側溝あるいはパイプから貯留槽本体に流れ込んできた排水に混入している残さやゴミなどを取り除くバスケットを設けた排水流入室と、残さやゴミなどが取り除かれた後の排水から油脂類を分離させる分離室と、油脂類が分離された排水を下水管へと流出させる流出口に下水管から臭気や虫が侵入してくるのを防ぐ排水トラップが設けられる。
【0004】
グリース阻集器において排水から油脂類を分離させるのは、水と油の比重の違いを利用した自然浮上分離方式を基本としたものが一般的に多く用いられるのであるが、近年では、環境への配慮から、SHASE規格(SHASE-S217。空気調和・衛生工学会規格。)において、グリース阻集器の阻集効率(油脂類の分離除去効率)は従来と比べさらに高いものが求められており、いかに阻集効率を上げるかが重要な課題となっている。
【0005】
自然浮上分離方式のグリース阻集器は、例えば加圧浮上のように加圧ポンプを設けたりする必要がなく、単純な構造で安価な点が広く利用される所以であるが、乳化した油脂類を分離除去することはできない。また、自然浮上分離できる油滴の大きさには限度がある。
【0006】
またさらに、従来においては、グリース阻集器の処理能力を維持するために定めた許容流入流量(阻集器の持つ阻集効率を維持できる流入流量の最大流量)は、貯留槽本体に貯留しうる実容量の75%と定められていたのであるが、現在はそうした制限が撤廃されており、許容流入流量は、SHASE規格が求める阻集効率を維持できれば、その流量の決定はメーカー各社に委ねられることとなった。
【0007】
一般的に、自然浮上分離方式においては、貯留槽内における排水の流速が遅く、分離槽が大きく、上流から下流までの距離が長いほど、油脂類は浮上しやすい。しかしながら、上述したように、貯留槽に流入する排水の許容流入流量の制限は撤廃されてその量は増える傾向にあり、その結果、貯留槽内の流速は早まる傾向にある。また、貯留槽を埋め込む床下(建物の2階以上に設置する場合の床下は天井裏でもある)などのスペースには限りがあるため、おのずと貯留槽の大きさにも限りがある。
【0008】
さらに、水中における油の浮上速度は、一般的には、その油の粒径が大きいほど速いため、自然浮上分離方式によるグリース阻集器では、排水に含まれる油脂類の粒径は、できるだけ大きい方が望ましい。しかしながら実際は、上流の側溝やパイプから貯留槽内の排水流入室へ乱流状態で勢いよく流入した排水は、排水流入室内の排水と新しく流入してきた排水が混合され、油脂類は撹拌され、細かくせん断される傾向にある。また、バスケットの孔あるいは網目を通り抜けることによっても油脂類は細かくせん断される傾向にあるのが実情である。
【0009】
特に深型の貯留槽の場合、油脂類を含んだ排水は勢いよくバスケットを潜り抜け、貯留槽の排水流入室の底深くまで潜り込む。油滴の径が小さくなるほど、浮上するのに時間がかかるため、細かくせん断されて貯留槽内の排水中に混在してしまった油脂類は、浮上する前に排水の流れに乗って流出口から下水へと流れ出てしまい、高い阻集効率を実現するには妨げとなる。
【0010】
その点、貯留槽本体の底が浅い浅型の阻集器では、油脂類は水中深く潜ることなく、油脂類が浮上するのに、深型の貯留槽よりも時間を要しないため有利である。さらに、貯留槽本体の流入口から流出口までの距離を長くできれば、油脂類が流出口に到達するまでに浮上できる時間を稼ぐことができるので、阻集効率が高くなる。しかしながら、床下に広い設置面積が必要となり、床にはメンテナンス用の開口部を広く設ける必要があることから、それにも限界がある。なぜなら、床下にそのような広い設置面積が取れないことも、メンテナンス用の開口部を広く確保できないこともあるからである。
【0011】
ところで、自然浮上分離方式では、分離槽で浮上した油脂類は、最低でも一週間に一度の定期的な掃除によって除去されることが推奨されている。しかし、その掃除を怠ると、分離槽に浮上した油脂類の量が累積的に増えて、せっかく浮上分離した油脂類さえも、排水の流れに乗って下水管へと流出する可能性がある。つまり、阻集効率は、使用頻度や掃除頻度等によっても左右され、安定しないこととなる。そこで、阻集器は掃除のしやすさも重要な事項である。
【0012】
【文献】特開第2017-190655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1は、深型阻集器であって、バスケットの底面あるいは下方に整流板を設け、流入した排水がこの整流板に当たって勢いが弱められる。さらに、バスケットの下流側には、貯留槽本体の底部から立ち上げられた隔壁を設置しており、バスケットが設置されるスペース(排水流入室)と分離室がそれぞれ独立している。この隔壁には、標準水位よりも高い位置に開口部が設けられており、排水流入室の排水は、この隔壁に設けられた開口部を越えることで分離室へ流入できる。整流板によって排水は、勢いが弱められ、排水に含まれる油脂類は、細かくせん断されにくくなり、比較的大きな粒径を維持したまま分離室へ案内される。そのため、油脂類は比較的短時間で水面に浮上し、油水分離が促進され、阻集効率が向上する。
【0014】
しかしながら、特許文献1では、排水流入室とその下流にある分離室とを、貯留槽の底部から立ち上がる隔壁を設けて仕切るため、分離室が大きく取れない。また、バスケットの底面あるいは下方に整流板を設けたとしても、排水流入室に流入した排水は、排水流入室の深部にある排水までも流動をさせてしまい、それにより油脂類はどうしても攪拌されてしまう。
【0015】
また前述したように、阻集器の貯留槽本体への許容流入流量は増す傾向にあり、一時に大量の排水が貯留槽の排水流入室へと流入する場合がある。その際、排水は勢いあまって、バスケットの下流側側面から直接隔壁の越流部の上を乗り越えて分離室へと流入してしまうこともある。勢いのある排水が、分離室上に浮上分離された油脂類に衝突し、油脂類は撹拌され、細粒化されてしまう。また、排水流入室へ流入した排水が大量すぎて分離室へ飛び出してしまう場合、排水は越流部で均一な流れに整流される機会を失い、流速にムラが生じ、分離室内の排水を攪拌してしまう。旋回流の発生をそのままにしておくと、油脂分と水と空気が撹拌され、泡状の油脂類が発生してしまい、阻集効率が下がってしまう。
【0016】
そこで、本発明では、油脂類が浮上分離しないまま排水とともに流出口へ流出しないよう排水を貯留槽本体の底深くまで潜り込ませず、また、排水の流入に伴って発生する油水の撹拌をできるだけ抑えて油脂類が細かくせん断されることを防ぎ、すばやく油水分離が進む阻集器を提供することを課題とする。さらに、その阻集器は掃除しやすいものであることも併せて課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る阻集器は、貯留槽本体と、流入口と、流入口から油脂類を含む排水が流れ込むバスケットと、バスケットを収容し、貯留槽本体から取り外し可能な収容箱と、水と油の比重差を利用して油脂類を浮上分離させる分離室と、油脂類が取り除かれた排水を貯留槽本体外の下流へと流出させる流出口と、流出口に設けられ、流出口下流からの臭気や虫の侵入を防ぐトラップとを有し、収容箱は、少なくとも底面部と側面部とを有し、分離室内に設置されて、収容箱内のスペースを排水流入室となし、収容箱には、排水を受けとめる一時停留部と、一時停留部で受けとめられた排水を分離室へと流出させる開口部とが設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、分離室内に収容箱を取り外し可能に設けるというシンプルな構造で、収容箱の内側は排水流入室とし、収容箱の外側は分離室となすことができ、従来の排水流入室にとっては不要な空間を分離室の空間として利用することができる。そのため、同じ貯留槽本体の大きさと比較して、従来よりも広く分離室を設けることができる。同じ容量の貯留槽本体で比較すれば、分離室が大きいほうが、その分、油脂類は分離室に長くとどまることができ、流出口から流出する前に分離室において浮上分離することができる量も増え、その結果、阻集効率は高くなる。
【0019】
また、本発明に係る阻集器では、一時停留部は底面部上面にあり、底面部は、分離室内の油脂層の最下位面の高さ位置から上昇水位面の高さ位置の間のいずれかの高さ位置に設けられることを特徴とする。
【0020】
収容箱は、排水流入室と分離室を仕切る仕切板の役割も有しており、排水が排水流入室の無駄なスペースで底深く潜り込むのを防ぐ。さらに、流入口から底面部の上面である一時停留部STまでの落差が小さく、排水の落下速度を抑えることに貢献している。そして、分離室内へ静かに流入した排水に含まれる油脂類は、細かくせん断されて浮上分離する前に流出してしまうような事態を避け、大きな粒径のまま、分離室内の堆積した油脂層と接触して油脂類同士の凝集がすすみ、より大きな粒径となって、油水分離が促進される。
【0021】
また、本発明に係る阻集器では、開口部を、収容箱の底面部あるいは側面部に設けることを特徴とする。分離室内に設けられる収容箱の底面部あるいは側面部に開口部を設けるだけで、分離室と連通でき、非常にシンプルな構造で排水流入室を構成することができる。
【0022】
また、本発明に係る阻集器の収容箱には、一時停留部と開口部の間には、越流部が設けられていることを特徴とする。越流部は、底面部から上方に向かって設けられた越流板や、側面部の一部を利用したものや、底面部の異なる高さ位置による段差部を利用したものとしてもよい。
【0023】
そして越流部の上端部の高さは、上昇水位面の高さと同じかそれより高くなるように設けられていることを特徴する。それによって、分離室で浮上分離した油脂類が排水流入室へ逆戻りすることがない。
【0024】
さらに、収容箱に設けられる開口部は、貯留槽本体の流入口が設けられる側か、貯留槽本体の左側あるいは右側の、少なくともいずれか一つに設けられることを特徴とする。
【0025】
流入口から排水が貯留槽本体へと流入する際は、排水は、流入口直下ではなく、流入口から弧を描いて一時貯留部へ落下するため、開口部が流入口側、貯留槽本体の左側あるいは右側に設けられることにより、排水が開口部へ直接流れ込むことを防ぐことができる。また、開口部が貯留槽本体の流出口から離れているため、開口部から流入した排水は分離内で滞在する時間を長く確保でき、阻集効率の向上に寄与できる。
【0026】
また、収容箱内には、貯留槽本体の流入口からバスケットに流入する排水を案内する傾斜路を設けることもできる。
【0027】
排水は傾斜路上を案内されて一時停留部へと流入するため、著しく勢いが弱められたのち、開口部へと至る。そのため、分離室内で底深く潜り込むこともなく、すでに浮上分離した油脂類を細かくせん断することもない。また、流入口からバスケットにかけて傾斜路を設けることで、排水の流入量が極端に少ない場合であっても、排水が開口部へ直接流れ込むことを確実に回避できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、流入した排水に含まれる油脂類も、分離室内ですでに浮上分離した油脂層も細かくせん断されることがないため、油脂類が分離内において深く潜り込むこともなく、油脂類は効率よく油水分離される。また、掃除もしやすく、環境に配慮した阻集器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態に係る阻集器の平面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る阻集器の側面断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る排水流入室を形成する収容箱のバリエーション例を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る阻集器の側面断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る排水流入室を形成する収容箱のバリエーション例を示す図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る阻集器の側面断面図である
図7】本発明の第3実施形態に係る排水流入室を形成する収容箱のバリエーション例を示す図である。
図8】本発明の第4実施形態に係る阻集器の平面図である。
図9】本発明の第4実施形態に係る阻集器の(a)側面断面図および(b)収容箱の概略底面図である。
図10】本発明の第5実施形態に係る阻集器の平面図である。
図11】本発明の第5実施形態に係る阻集器の(a)側面断面図および(b)収容箱の概略底面図である。
図12】時間の経過と共に、阻集器内の水位と油脂層と変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図を参照しつつ説明するのであるが、最初に図12の模式図を用いて、阻集器内の水位や油脂層について簡単に定義しておくことにする。また、各実施形態を説明する図1から図11において、同一の部分または対応する部分には、同一の符号を付してある。
【0031】
図12に示す符号SWLとは標準水位面を意味する。標準水位面SWLとは、阻集器に実容量の貯留水が入っているときの水位面である。後述するトラップのあふれ面下端の高さに相当する。また、符合TWLとは上昇水位面を意味する。上昇水位面TWLとは、阻集器の阻集効率が一定以上維持できる流入流量の最大許容流入流量が阻集器に流入したときの阻集器内の最高水位面を意味する。また、符号OLとは、油脂類を含む排水が阻集器内へ流入し、後述する分離室内において浮上分離し、水位面WLに堆積した油脂層である。そして、水位面WLは、時間の経過とともに、油脂層OLの層の厚みが厚くなり、油脂層OLと油脂類が除去された排水との境を示す。図12の(1)~(5)は、時間の経過によって、油脂層OLが徐々に厚みを増していく過程をわかりやすく模式的に示したもので、(1)は貯留槽本体内に油脂類がまだ流入していない状態を示している。なお、図12では、イメージしやすくするため、排水量が上昇水位面に達している(貯留槽本体内へ許容流入量の排水が流入し続けている状態)での油脂層の厚みを表現しているが、通常、貯留槽本体内へ流入する排水量は常に変動しているため、油脂層の最上位の高さ位置も常に変動している。これ以降に説明する実施形態においても、図示する油脂層OLの厚みはあくまで例示である。
【0032】
図1から図3は、本発明の第1実施形態に係る阻集器に関する図である。符号1は阻集器、そして符号2は比較的深さのある方形の貯留槽本体である。便宜上、貯留槽本体の側面部について、流入口3側の側面部を前側面部2a、その対面に相当する下流側の側面部を後側面部2b、紙面の上側の側面部を左側面部2c、紙面下側の側面部を右側面部2dとする。貯留槽本体2には、厨房などの床に備え付けられた図示しない側溝あるいは排水管から流れ込んでくる厨芥や油脂類を含む排水が流れ込む流入口3と、流入口3の直下には、流入してくる排水から厨芥を取り除くため、排水や油脂類は通す無数の孔を有する金網やパンチングメタルなどで形成されたバスケット4が設置されている。
【0033】
図3に示すように、収容箱5は、少なくとも底面部6と側面部7を有する箱型形状をしている。側面部7は、前側面部7a、後側面部7b、左側面部7c、右側面部7dの四面を有している。そして底面部6には、開口部8を有している。
【0034】
図3は、底面部6に設けられる開口部8の位置バリエーションをいくつか例示したものである。図3(a)では、流入口3側にあたる収容箱5の前側面部7aに平行に直方形の開口部8aが設けられている。図3(b)は、右側面部7dに平行に直方形の開口部8dが設けられ、図3(c)では、左側面部7cに平行に直方形の開口部8cが設けられている。図3(d)では、左右側面部7c、7dに沿って開口部8が2つ(8c、8d)が設けられている。さらに、図3(e)は、前側面部7a、左右側面部7c、7dに沿ってコの字状の開口部8eが設けられている。これらは例示であり、後側面部7bに平行な開口部を設けることもでき、それらに限定されない。
【0035】
これら開口部8の位置バリエーションは、例えば、図1に示すように、貯留槽本体2のバスケット4はそのままで、流入口3dが、貯留槽本体2の右側面部2d側に設けられる場合がある。その場合には、収容箱5は、図3(b)に示すように、右側面部7d側に開口部8d設けられた収容箱5を採用することができる。また、流入口3が貯留槽本体2が左側面部2c側に設けられる場合には、収容箱5は、図3(c)に示すように、左側面部7c側に開口部8cが設けられたものを採用すると良い。
【0036】
しかしながら施工場所に応じ、流入口3の位置が決められない場合もある。そのような場合には、図3(d)のように、左右側面部7c、7dcの両側に開口部8c、8dが設けられたものを一律に採用してもよく、図3(e)のように、コの字状に設けられた開口部8eを有するものを採用することもできる。製造コストの観点から、開口部8の位置が異なる複数種の収容箱5を在庫として用意しておくよりも、流入口3がどの位置にあっても、例えば、図3(d)の収容箱5のような一種類の在庫を確保しておけば、経済的に有利である。
【0037】
流入口3からバスケット4を経由して収容箱5へ流入した排水は、底面部6と側面部7で囲まれた箇所で一瞬受け止められ、勢いが弱められ、開口部8から分離室9へと案内される。収容箱5の底面部6と側面部7で囲まれた箇所は、排水を一瞬受け止め、勢いを弱める一時停留部ST1となり、開口部8を形成する底面部のエッジ(図3で例示する6a、6c、6d、6e)とともに、分離室9内へ流入する排水の整流部としての役割を有する。底面部のエッジ(6a、6c、6d、6e)は、分離室9へ流入する排水の流れを均一に整える役割も果たす。
【0038】
収容箱5を境界とし、収容箱5内のスペースを排水流入室10とし、収容箱5外のスペースを分離室9とする。分離室9に流入した排水は、ここで油と水の比重差を利用して排水中の油脂類が浮上分離される。収容箱5の底面部6は、図2に示すように、貯留槽本体2の標準水位面SWLに浸かる高さに設定されており、排水流入室10の下方領域を分離室9のスペースとすることができ、貯留槽本体2に占める分離室9の容積を大きく確保することができる。さらに、排水は一時停留部ST1で勢いが弱められているため、分離室9に静かに流入し、排水が貯留槽本体2の底深くに潜り込むことを防ぐことができる。
【0039】
収容箱5は、排水流入室10と分離室9を仕切る仕切板の役割も有しており、分離室9内で堆積した油脂類が排水流入室10へ逆流するのを最小限にとどめることができるとともに、排水が貯留槽本体2の底深く潜り込むのを防ぐ。つまり、排水流入室の下方領域を分離室とすることで、従来であれば、排水流入室としては無駄であったスペースを、分離室として有用なスペースへと改良することができる。さらに、底面部6が標準水位面SWLの高さ位置に設けられているため、流入口3から一時停留部ST1までの落差が小さく、排水の落下速度を抑えることに貢献している。収容箱5の底面部6の高さ位置は、分離室9内へ流入する排水の勢い(流速)にも影響を及ぼすため、できるだけ流入口3との落差が小さいほうが望ましいからである。
【0040】
標準水位面SWLの表面近くで緩やかに分離室9へと案内された排水は、分離室9内のすでに油水分離が終わって浮上堆積した油脂層OLを攪拌することなく、また貯留槽本体2の底深く潜り込むことなく、分離室9内に静かに流入する。そのため、流入した排水に含まれる油脂類は、細かくせん断されて浮上分離する前に流出してしまうような事態を防ぐことができるだけでなく、大きな粒径のまま、分離室9内の堆積した油脂層OLと接触して油脂類同士の凝集が進み、より大きな粒径となって、油水分離が促進される。
【0041】
そして分離室9内で油脂類を除去された排水は、貯留槽本体2に設けられた流出口11に接続されたトラップ12を経て、図示しない下水へと流出する。図2に示すトラップ12は、いわゆるT字トラップ(日本阻集器工業会「認定委員会規程・規則集」)といわれるものである。T字トラップにおいては、T字トラップが接続されている流出口11の最下部の高さ位置11aがあふれ面下端、つまり標準水位面SWLとなる。
【0042】
図1図2に示すように、トラップ12の周囲には、隔壁13が設けられ、隔壁13内のスペースを排水流出室14という。分離室9で油脂類が除かれた排水は、隔壁13の下方に設けられた連通口13aによって、排水流出室14へと案内され、トラップ12の開口部12aへと流れ込み、下水へと流出する。 隔壁13は、流出口11側を除く三面に平板を有する立体の平面視コ字状に隔壁を形成し、トラップ12を囲むように設けられる。これによって、分離室9をさらにより広く確保でき、同じ容量の貯留槽で比較すると、油脂類の浮上時間はそれだけ長くなる。さらに、分離室9の表面に浮上体積する油脂層OLの厚みも従来と比較すると薄くできるため、流入する排水に触れて、乱流(といっても穏やかな)に巻き込まれる油脂類の量も減らすことができる。高い阻集効率を維持できるとともに、許容流入流量も増やすことができる。
【0043】
次に、本発明に係る第2実施形態について、図4図5を用いて説明する。なお、これ以降、第1実施例と同じものについては同じ符号を用いており、詳しい説明は省略する。
【0044】
第2実施形態における収容箱15は、第1実施形態における収容箱5と同じく、底面部16と側面部17を有し、側面部17は、前側面部17a、後側面部17b、左側面部17c、右側面部17dの四面を有している。そして底面部16には、開口部18を有している。収容箱15を仕切板として、収容箱15内のスペースは排水流入室10、収容箱15外のスペースは分離室9である。排水流入室10と分離室9とを連通させる開口部18は底面部16に設けられる。図5は、底面部16に設けられる開口部18の位置バリエーションを示す図である。
【0045】
開口部18は、図5(a)に示すように流入口3側にあたる収容箱15の前側面部17aに平行に直方形の開口部18aが、図5(b)に示すように右側面部17dに平行に直方形の開口部18dが、図5(c)に示すように左側面部17cに平行に直方形の開口部18cが、図5(d)に示すように左右側面部17c、17dに沿って開口部18が2つ(18c、18d)が設けられている。また図5(e)に示すように、前側面部17a、左右側面部17c、17dに沿ってコの字状の開口部18eが設けることもできる。なお、これらは例示であり、後側面部7bに平行な開口部を設けることもでき、それらに限定されない。これは第1実施形態と同じである。
【0046】
第2実施形態における収容箱15には、底面部16と開口部18の間に越流部19が設けられている。越流部19は、具体的には、底面部16のエッジ(16a、16c、16d、16e)から鉛直方向に設けられた越流板20(20a、20c、20d、20e)である。流入口3側に設けられる越流板20aは、収容箱15の左右幅一杯に、左右側面部17c、17d側に設けられる越流板20c、20dは、前後長さ一杯に設けられる。越流板20eも、底面部18のエッジ16eに沿ってコの字状に設けられている。開口部18と同様、越流板20についても、これらは例示であって、これらに限定されない。また、越流板は鉛直方向に設けられるものに限らず、傾斜が設けられていてもよく、上方に向かって設けられることを意味する。
【0047】
越流板20の上端部21(21a、21c、21d、21e)の高さは、上昇水位面TWLと同じかそれよりも高くなるように設けられる。流入口3から大量の排水が流入し続けると、貯留槽本体2内の水位面は、標準水位面から徐々に上昇し、上昇水位面TWLまで上昇する。底面部16、側面部17、越流板20で囲われた一時停留部ST2で勢いを弱められた排水は、越流板20の上端部21を超えることによって流れが整えられ、均一な流れとなる過程において、排水に含まれる油脂類は接触して凝集を進めながら水位面が上昇した分離室9内へ静かに流入することとなる。そのため、分離室9内の油脂層OLや排水は攪拌されることなく、流入する油脂類もすでに堆積している油脂類もいずれも細かくせん断されることがない。また、貯留槽本体2内の底深く流入しないため、流入した排水に含まれる油脂類が浮上分離する前に流出してしまうような事態をも防ぐことができる。そして、分離室9に流入した油脂類は大きな粒径のまま、分離室9内の堆積した油脂層OLと接触して油脂類同士の凝集がすすみ、より大きな粒径となって、油水分離が促進される。
【0048】
また、越流板20の上端部21が上昇水位面TWLと同じかそれよりも高い位置に設置してあるため、分離室9内で浮上分離し堆積した油脂層OLの油脂類が、収容箱15の一時停留部ST2内へ入り込む(逆流)することを防ぐことができる。すでに油水分離が終わり堆積している油脂類が一時停留部ST2内へ入り込むと、流入口3から落下してくる排水によって油脂類が撹拌され、それが分離室9内へ再度流入するためは、阻集効率上望ましくないからである。
【0049】
さらに、第2実施形態における収容箱15の底面部16は、図4に示すように、標準水位面SWLよりも高く、上昇水位面TWLとほぼ同じ高さ位置になるように設定されている。一時停留部ST2を成す底面部16が、流入口3に近い高さ位置に設けられることにより、排水流入室10内に落下してくる排水の落下速度が速まるのを抑止し、分離室9内へ流入する排水の勢いをさらに弱める効果をもたらす。
【0050】
なお、底面部16の高さは、上述した例に限らず、第1実施形態と同じように標準水位面SWLに浸かる高さ位置に設けることもできる。また、第1実施形態においても、その底面部6の高さを、第2実施形態と同じように上昇水位面TWLと同じ高さ位置に設けることもできる。
【0051】
万一、分離室9内の油脂層OLの最上位面が越流板20の上端部21の高さ位置より高くなった場合であっても、越流板20と収容箱15の側面部17により囲まれているため、油脂類が一時停留部ST内に逆流を抑止する圧力(水頭圧)が働くため、一時停留部ST内に逆流して残留する油脂類の量は極めて少ない。
【0052】
次に、第3実施形態について、図6図7を用いて説明する。第3実施形態における収容箱25は、第1・第2実施形態と同じく、底面部26と側面部27を有し、側面部27は、前側面部27a、後側面部27b、左側面部27c、右側面部27dの四面を有している。そして、収容箱25を仕切板として、収容箱25内のスペースは排水流入室10、収容箱25外のスペースは分離室9である。
【0053】
第3実施形態では、排水流入室10と分離室9とを連通させる開口部28は、側面部27に設けられている。そして、第2実施形態と同じように、底面部26と開口部28の間に越流部29が設けられる。
【0054】
図7は、側面部27に設けられる開口部28の位置バリエーションのいくつかを示す図である。図7(a)に示すように、開口部28aは、前側面部27aの上方に収容箱25の左右幅とほぼ同じ幅を有する直方形の孔を設けたものである(孔でなく、前側面部27aの上方部を切欠くこともできる)。そして、開口部28aが設けられた前側面部27aの下方部分が、排水が分離室9内へと流入する際に越流する越流部29の役割を果たす。前側面部27aの下方部分を鉛直方向に設けられた越流板30aとし、開口部28aの下端部が、越流板30aの上端部31aとなる。そして越流板30aの上端部31aの高さは、上昇水位面TWLと同じかそれよりも高くなるように設けられる。
【0055】
図7(b)に示す開口部28dは、右側面部27dの上方に収容箱25の前後長さとほぼ同じ長さを有する直方形の孔を設けたものである(孔でなく、右側面部27dの上方部を切欠くこともできる)。そして、開口部28dが設けられた右側面部27dの下方部分が、排水が分離室9内へと流入する際に越流する越流部29dの役割を果たす。右側面部27dの下方部分を鉛直方向に設けられた越流板30dとし、開口部28dの下端部31dが、越流板30dの上端部31dとなる。そして越流板30dの上端部31dの高さは、上昇水位面TWLと同じかそれよりも高くなるように設けられる。図7(c)も同様であるため、ここでは説明を割愛する。なお、これらは例示であって、第1・第2実施形態と同じように、これらの形状や位置等に限定されない。
【0056】
流入口3から排水が流入し続けると貯留槽本体2内の水位面は、標準水位面SWLから徐々に上昇し、上昇水位面TWLまで上昇する。底面部26、側面部27、越流板30で囲われた一時停留部ST3で勢いを弱められた排水は、越流板30の上端部31によって流れが整えられ、均一な流れとなって、水位面が上昇した分離室9内へ静かに流入することとなる。そのため、分離室9内の油脂層OLや排水は攪拌されることなく、油脂類は細かくせん断されにくい。よって、流入した排水に含まれる油脂類が貯留槽本体2内に深く潜り込み浮上分離する前に流出してしまうような事態を防ぐことができるだけでなく、大きな粒径のまま、分離室9内の堆積した油脂層OLと接触して油脂類同士の凝集がすすみ、より大きな粒径となって、油水分離が促進される。
【0057】
また、越流板30の上端部31が上昇水位面TWLよりも高い位置(油脂層OLの最上面よりも高い位置)に設置してあるため、分離室9内で浮上分離し堆積した油脂層OLの油脂類が、収容箱25の一時停留部ST3内へ入り込む(逆流する)ことを防ぐことができる。すでに油水分離が終わり堆積している油脂類が一時停留部ST3内へ入り込むと、流入口3から落下してくる排水によって油脂類が撹拌され、それが分離室9内へ再度流入するためは、阻集効率上望ましくないからである。
【0058】
なお、第3実施形態では、越流板30の上端部31は、上述したように油脂層OLの最上面と同じかこれよりも高い位置に設けるほうがより望ましい。越流板30は側面部27の一部であるため、第2実施形態のような水頭圧が働かず、越流板30の上端部30の高さが、油脂層OLの最上面よりも低いと、分離室9内で浮上分離した油脂類が一時停留部ST3内に逆流することを阻止できないからである。
【0059】
また、第3実施形態における収容箱25の底面部26も、図6に示すように、上昇水位面TWLと同じ高さ位置になるように設定されている。一時停留部ST3を成す底面部26が、流入口3に近い高さ位置に設けられることにより、排水流入室10内に落下してくる排水の落下速度が速まるのを抑止し、分離室9内へ流入する排水の勢いをさらに弱める効果をもたらすのは第2実施形態と同じである。
【0060】
なお、第3実施形態においても、底面部26の高さは、上述した例に限らず、第1実施形態と同じように標準水位面SWLに浸かる高さ位置に設けることもできる。また第3実施形態において、排水流出室14内に設けられるトラップは、比較的深い場所に設けられた流出口32に取り付けられる偏心型ワントラップ(特開2017-133334)を採用しているが、これに限定されない。
【0061】
次に、第4実施形態について、図8図9を用いて説明する。本実施形態に係る収容箱35は、底面部36と側面部37とを有している。底面部36は、高さの異なる2つの底面部を有しており、一つは流入口3側の底面部36aと、もう一つは、下流側の底面部36bを有している。流入口3側の底面部36aの高さ位置は、上昇水位面TWLと同じ高さ位置に設けられ、下流側の底面部36bの高さ位置は、上昇水位面TWLより低い位置に設けられている。これら底面部36の周囲には、前後側面部37a、37bと左右側面部37c、37dが設けられている。収容箱35内のスペースを排水流入室10とするとともに、収容箱35外のスペースが分離室9となる。
【0062】
高い位置に設定される底面部36aには、図9(b)に示すように、左右幅ほぼ一杯に直方形の開口部38が設けられている。そして、異なる高さを有する底面部36aと底面部36bとの段差によってできる段差部36cと底面部36bと側面部37に囲われた箇所を一時停留部ST4とする。一時停留部ST4上には、バスケット4が設けられ、開口部38を有する底面部36aの上部には、流入口3から流入する排水をバスケット4に案内する傾斜路である案内傾斜板42が設けられている。
【0063】
第4実施形態にかかる収容箱35においても、一時停留部ST4と開口部38との間には越流部39が設けられている。越流部39とは、底面部36a・36bとの段差による段差部36cのことであり、底面部36aの上面が越流部39の上端部となる。
【0064】
案内傾斜板42から一時停留部ST4に案内された排水は、そこで流速が急速に弱まり、越流部39である段差部36cと底面部36aの上面を経由して開口部38に至り、さらに、開口部38を形成する底面部36aのエッジ36eを経由することで整流され、均一な流れとなって、分離室9内へ静かに流入することとなる。そのため、分離室9内の油脂層OLや排水は攪拌されることなく、油脂類は細かくせん断されにくい。
【0065】
さらに、流入口3から流入する排水は、収容箱35に落下するのでなく、案内傾斜板42によって静かに一時停留部ST4に案内されるため、分離室9内へ流入する排水の勢いをさらに弱める効果をもたらす。本実施形態においても、分離9内へ流入した排水に含まれる油脂類は、細かくせん断されて浮上分離する前に流出してしまうような事態に陥ることなく、大きな粒径のまま、分離室9内の堆積した油脂層OLと接触して油脂類同士の凝集がすすみ、より大きな粒径となって、油水分離が促進される。
【0066】
なお、図8図9では、流入口3が前側面部2aにある場合を示しているが、これに限らず、左右側面部2c、2dのいずれかに設けても良い。また、収容箱35の段差部の配置や開口部38の位置も適宜自由に選択することができる。
【0067】
次に、第5実施形態について、図10図11を用いて説明する。第5実施形態に係る収容箱45は、少なくとも底面部46と側面部47を有する箱型形状をしている。側面部47は、前側面部47a、後側面部47b、左側面部47c、右側面部47dの四面を有している。そして底面部46には、収容箱45の左右幅ほぼ一杯に直方形の開口部48が設けられている。開口部48は、底面部46の流入口3側に位置している。
【0068】
開口部48の周囲には越流部49が設けられている。越流部49は、直方形の開口部48を成す底面部46のエッジ46eから鉛直状に、かつエッジ46e全周に越流板50をめぐらせて直方の筒状に設けたものである。底面部46と側面部47と筒状に形成された越流板50とで囲われた箇所が一時停留部ST5となる。流入口3から一時停留部ST5に流入した排水は、そこで流速が弱められ、さらに、越流板50の上端部51によって均一な流れとなり、分離室9内へ静かに流入する。
【0069】
分離9内へ流入した排水に含まれる油脂類は、貯留槽本体2の底深くまで潜り込むことがないため、細かくせん断されて浮上分離する前に流出してしまうような事態に陥ることなく、大きな粒径のまま、分離室9内の堆積した油脂層OLと接触して油脂類同士の凝集がすすみ、より大きな粒径となって、油水分離が促進される。
【0070】
なお、図10図11では、流入口3が前側面部2aにある場合を示しているが、これに限らず、左右側面部2c、2dのいずれかに設けても良い。また、収容箱45の底面部46に設けられる開口部48の位置も適宜自由に選択することができる。
【0071】
さらに、本発明にかかる実施形態は、上述したものに限定されず、箱型形状を有する収容箱とは、底面部を有するものであれば良く、側面部は円筒や多角形であってもかまわない。また本発明にかかる収容箱は、シンプルな構造を採用し、貯留槽本体から取り外し可能に設けられる。そのため阻集器全体の掃除が容易になる。
【0072】
また、流出口11も、流入口3と同様に、貯留槽本体2の後側面部2bに設けられるばかりでなく、左右方向のいずれかに設けられる場合もある。また、トラップの形状も例示したものに限らず、トラップを囲う隔壁13の形状もさまざまな形態が考えられることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
1 阻集器
2 貯留槽本体
3 流入口
4 バスケット
5、15、25、35、45 収容箱
6、16、26、36、46 収容箱の底面部
7、17、27、37、47 収容箱の側面部
8、18、28、38、48 収容箱の開口部
19、29、39、49 収容箱の越流部
ST 一時停留部
9 分離室
10 排水流入室
11、32 流出口
12、33 トラップ
13 隔壁
14 排水流出室
SWL 標準水位面
TWL 上昇水位面
WL 水位面(油脂層と排水との境界面)
OL 油脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12