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特許7345769直接描画露光システム及び直接描画露光方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】直接描画露光システム及び直接描画露光方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20230911BHJP
【FI】
G03F7/20 505
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022513961
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 CN2020126362
(87)【国際公開番号】W WO2021120906
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】201911303595.7
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522078196
【氏名又は名称】エス ブイ ジー テック グループ カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】520292855
【氏名又は名称】スーチョウ、ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】SOOCHOW UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】プー,ドンリン
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,ペンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,ミン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,レンジン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,グアンナン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リンセン
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-241911(JP,A)
【文献】特表2010-533972(JP,A)
【文献】特開2015-199197(JP,A)
【文献】特表2019-503866(JP,A)
【文献】米国特許第06730256(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接描画露光システムであって、
直接描画光源(33)と、移動機構(34)と、中央制御装置(35)と、スポットパターン入力装置(36)と、投影光学装置(37)と、を含み、
前記直接描画光源(33)は、開始ビームを供給し、
前記移動機構(34)は、前記投影光学装置(37)が露光しようとするリソグラフィ対象物(20)に対して予め設定された経路(P)に沿って走査するように制御し、前記投影光学装置(37)の投影した可変スポット(10)が更新される度に次の可変スポット(10)の基準点の位置データを送信し、
前記中央制御装置(35)は、前記位置データに基づいて、スポットパターンファイルシーケンスにおいて対応するスポット画像データを読み取り、前記位置データの各々に対応するスポット画像データを前記スポットパターン入力装置(36)に順にアップロードし、
前記スポットパターン入力装置(36)は、前記位置データの各々に対応する前記スポット画像データに基づいて、前記直接描画光源(33)から供給された開始ビームを変調して対応するパターン光を順に生成し、前記スポット画像データ毎に対応するパターン光を投影光学装置(37)に順に入力し、
前記投影光学装置(37)は、前記パターン光を前記リソグラフィ対象物(20)の表面に投影して可変スポット(10)を形成するように制御し、前記移動機構(34)の制御により前記可変スポット(10)が前記予め設定された経路(P)に沿って走査して前記リソグラフィ対象物(20)をエッチングし
前記中央制御装置(35)は、走査中において前記可変スポット(10)の形状及び光強度分布を前記位置データに応じて変化させる、
ことを特徴とする直接描画露光システム。
【請求項2】
前記直接描画露光システムは、
三次元トポグラフィデータを生成するための三次元トポグラフィ生成装置(31)と、
前記三次元トポグラフィデータ及び前記直接描画露光システムの予め設定されたパラメータに基づいて、座標シーケンスとこの座標シーケンスに対応するスポット画像データシーケンスとを含むスポットパターンファイルシーケンスを生成するための三次元トポグラフィ解析装置(32)と、をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の直接描画露光システム。
【請求項3】
前記可変スポット(10)の内部は、グレースケール分布光強度であり、
前記スポット画像データは、スポット形状及びスポット内光強度分布を含み、
前記直接描画露光システムの予め設定されたパラメータは、前記予め設定された経路(P)及び走査速度を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の直接描画露光システム。
【請求項4】
前記中央制御装置(35)は、さらに、前記移動機構(34)に変位命令を伝送することにより、前記投影光学装置(37)を前記リソグラフィ対象物(20)に対して三次元方向に移動させて、前記投影光学装置(37)の変位及び焦点合わせを実現する、
ことを特徴とする請求項1に記載の直接描画露光システム。
【請求項5】
直接描画露光方法であって、
三次元トポグラフィデータを生成するステップS1と、
前記三次元トポグラフィデータ及び直接描画露光システムの予め設定されたパラメータに基づいて、座標シーケンスとこの座標シーケンスに対応するスポット画像データシーケンスとを含むスポットパターンファイルシーケンスを生成するステップS2と、
前記スポット画像データシーケンスに基づいて、パターン光を生成し、このパターン光を露光しようとするリソグラフィ対象物(20)の表面に投影して可変スポット(10)を形成し、前記可変スポット(10)を予め設定された経路(P)に沿って走査させて前記リソグラフィ対象物(20)をエッチングするステップS3と、を含み、
走査中において前記可変スポット(10)の形状及び光強度分布を前記可変スポット(10)の基準点の位置データに応じて変化させる、
ことを特徴とする直接描画露光方法。
【請求項6】
前記ステップS3は、
基準点の位置データを取得するステップS31と、
前記位置データに基づいて、前記スポットパターンファイルシーケンスにおいて対応するスポット画像データを読み取るステップS32と、
前記スポット画像データに基づいて、前記パターン光を生成するステップS33と、
前記パターン光を前記リソグラフィ対象物(20)の表面に投影して前記可変スポット(10)を形成するステップS34と、
前記可変スポット(10)が所定変位するように制御するステップS35と、を含み、
ステップS31~S35を、直接描画露光が終了するまで繰り返して実行する、
ことを特徴とする請求項に記載の直接描画露光方法。
【請求項7】
前記ステップS3において、予め設定された経路(P)に沿って走査するステップは、前記可変スポット(10)が前後順序に複数の予め設定された経路(P)に沿って走査するように制御するステップを含
ことを特徴とする請求項に記載の直接描画露光方法。
【請求項8】
前記ステップS3の前に、
基板(21)を提供するステップと、
三次元トポグラフィの要求に応じて、前記基板(21)の表面に、対応する厚さのフォトレジスト(22)を塗布するステップと、をさらに含み、
前記ステップS2において、前記直接描画露光システムの予め設定されたパラメータは、フォトレジストの露光感度曲線を含む、
ことを特徴とする請求項に記載の直接描画露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロナノ加工技術分野に関し、特に直接描画露光システム及び直接描画露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電子は、マイクロ電子に続いて急速に発展したハイテク技術であり、現在のレーザデバイス、光検出器、回折格子などは、光電子技術の初期発展製品であり、光電子技術は、今後、ディスプレイ、イメージング、検出などに大きな発展が期待されている。
【0003】
デバイスの微細構造から解析すると、マイクロ電子デバイスは、その内部の回路が2Dパターンであり、このパターンのデューティ比が高くなく、光電子デバイスは、微細構造の表面3Dトポグラフィにより注目されており、多段、連続的なトポグラフィが主な特徴である。したがって、光電子の新たな応用向けの3D微細構造の加工要求は、現在のマイクロ電子と異なり、表面形状の要求が2Dから3Dに移行されている。現在の製品には、一般に3D構造を有するマイクロプリズム、マイクロレンズなども応用されるが、いずれも規則的な構造に属する。技術の発展に伴い、光電子応用の微細構造要求は、規則的な3Dから複雑な3Dに移行されている。複雑な3D構造の加工方法は、光電子分野の多くの研究サポートに対して極めて科学的意義があり、新業界、新応用の発展に対して戦略的意義がある。
【0004】
現在、3Dマイクロナノトポグラフィを実現する主な微細加工技術手段には、精密ダイヤモンド旋削、3Dプリント、リソグラフィ(露光)などの技術がある。ダイヤモンド旋削は、数十ミクロンのサイズ、規則的配列の3Dトポグラフィ微細構造の作製に好適な方法であり、その典型的な応用は、マイクロプリズムフィルムである。3Dプリント技術は、複雑な3D構造を作製することはできるが、従来のガルバノスキャナ3Dプリント技術の解像度が数十ミクロンであり、DLP投影型3Dプリントの解像度が10~20umであり、2光子重合3Dプリント技術は、解像度がサブミクロンに達することはできるが、逐次加工方式であるので、その効率が極めて低い。フォトレジスト露光方式によるマイクロリソグラフィ技術は、依然として現代の微細加工の主流技術手段であり、そのフォトレジスト材料が成熟されており、工程もコントロール可能であり、これまでに達成できる最高精度の加工手段である。
【0005】
2D投影リソグラフィ技術は、すでにマイクロ電子分野に広く応用されており、3Dトポグラフィリソグラフィ技術は、現在初歩的段階にあり、成熟された技術体系を形成しておらず、現在の進展は以下の通りである。
1.従来のマスクアライメント法は、多段構造の作成に適用され、イオンエッチングと協同して構造の深さをコントロールし、複数回の位置合わせ工程が必要であるので、工程の要求が高く、連続的な3Dトポグラフィを加工することが困難である。
2.グレースケールマスク露光法は、ハーフトーンマスク(half-tone mask)を製作し、水銀ランプ光源で照射してグレースケール分布の光透過エリアを生成し、フォトレジストを感光して3D表面構造を形成する技術である。しかし、このようなマスクは、製作難度が高く、構造の解像度が低く、工程が複雑で、かつ非常に高価である。
3.移動マスク露光法は、規則的なマイクロレンズアレイなどの構造の製作に適合する。
4.音響光学走査直接描画法は、単一のビームで走査を行うので、効率が低いだけではなく、パターンスプライスの問題も存在する。
5.電子ビームグレースケール直接描画法は、代表的なメーカー及び製品モデルとしては、日本Joel JBX9300、ドイツVistec、Leica VB6があり、この方法は、大きなサイズの製品に対して製造効率が極めて低く、電子ビームのエネルギーに制限を受け、3Dトポグラフィの深さ制御能力が十分でなく、小さなサイズの3Dトポグラフィ微細構造の製造にのみ適用される。
6.デジタルグレースケールリソグラフィ法は、グレースケールマスクとデジタル光処理技術との組み合わせによって発展したマイクロナノ加工技術であり、DMD(Digital Micromirror Device)空間光変調器をデジタルマスクとして採用し、1回の露光で連続的な三次元の面形状のレリーフ微細構造を加工し、1つの露光視野よりも大きいパターンに対してステップスプライスの方法を採用する。主な不足点は、グレースケール変調能力がDMDのグレースケールレベルによって制限を受け、顕著な段差の問題や視野間のスプライス問題が存在し、スポット内部の光強度の均一性が3Dトポグラフィの表面形状の品質に影響を与える点である。
【0006】
よって、3Dトポグラフィリソグラフィの研究現状と未来の要求との間に顕著な差が存在しているので、任意の3Dトポグラフィを実現することができる高品質リソグラフィ方法が、関連分野におけるマイクロリソグラフィ技術に対する重要かつ切実な需要となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、複雑な表面三次元トポグラフィ構造のマスクレスグレースケールリソグラフィを実現し、かつリソグラフィ精度及びリソグラフィ効率を向上させるために、直接描画露光システム及び直接描画露光方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的に係る直接描画露光システムは、直接描画光源と、移動機構と、中央制御装置と、スポットパターン入力装置と、投影光学装置と、を含み、
前記直接描画光源は、開始ビームを供給し、
前記移動機構は、前記投影光学装置が露光しようとするリソグラフィ対象物に対して予め設定された経路に沿って走査するように制御し、基準点の位置データを送信し、
前記中央制御装置は、前記位置データに基づいて、スポットパターンファイルシーケンスにおいて対応するスポット画像データを読み取り、このスポット画像データを前記スポットパターン入力装置にアップロードし、
前記スポットパターン入力装置は、前記スポット画像データに基づいて、前記ダイレクトライト光源から供給された開始ビームを変調してパターン光を生成し、このパターン光を投影光学装置に入力し、
前記投影光学装置は、前記パターン光を前記リソグラフィ対象物の表面に投影して可変スポットを形成するように制御し、移動機構の制御により前記予め設定された経路に沿って走査し、走査中において前記スポット画像データを位置データに応じて変化させることにより、予め設定されたコントロール可能な可変スポットを形成する。
【0009】
また、前記移動機構は、前記投影光学装置の走査位置が変化した後、再度基準点の位置データを送信し、
前記中央制御装置は、再度前記位置データに基づいてスポットパターンファイルシーケンスにおいて対応するスポット画像データを読み取り、再度前記スポット画像データを前記スポットパターン入力装置にアップロードし、
前記スポットパターン入力装置は、再度前記スポット画像データに基づいて前記ダイレクトライト光源から供給された開始ビームを変調してパターン光を生成し、再度前記パターン光を投影光学装置に入力し、
前記投影光学装置は、再度前記パターン光を前記リソグラフィ対象物の表面に投影して可変スポットを形成するように制御し、移動機構の制御により前記予め設定された経路に沿って走査する。
【0010】
また、前記直接描画露光システムは、
三次元トポグラフィデータを生成するための三次元トポグラフィ生成装置と、
前記三次元トポグラフィデータ及び前記直接描画露光システムの予め設定されたパラメータに基づいて、座標シーケンスとこの座標シーケンスに対応するスポット画像データシーケンスとを含むスポットパターンファイルシーケンスを生成するための三次元トポグラフィ解析装置と、をさらに含む。
【0011】
また、前記可変スポットの内部は、固定光強度であり、前記スポット画像データは、スポット形状を含み、前記直接描画露光システムの予め設定されたパラメータは、前記予め設定された経路、走査速度及び前記固定光強度を含む。
【0012】
また、前記可変スポットの内部は、グレースケール分布光強度であり、前記スポット画像データは、スポット形状及びスポット内光強度分布を含み、前記直接描画露光システムの予め設定されたパラメータは、前記予め設定された経路及び走査速度を含む。
【0013】
また、前記中央制御装置は、さらに、前記移動機構に変位命令を伝送することにより、前記投影光学装置を前記リソグラフィ対象物に対して三次元方向に移動させて、前記投影光学装置の変位及び焦点合わせを実現する。
【0014】
本発明に係る直接描画露光システムは、
直接描画光源と、移動機構と、中央制御装置と、スポットパターン入力装置と、投影光学装置と、を含み、
前記直接描画光源は、開始ビームを供給し、
前記移動機構は、前記投影光学装置が露光しようとするリソグラフィ対象物に対して予め設定された経路に沿って走査するように制御し、基準点の少なくとも2群の位置データを順に送信し、
前記中央制御装置は、前記位置データに基づいて、スポットパターンファイルシーケンスにおいて対応するスポット画像データを読み取り、各群の前記位置データに対応するスポット画像データを前記スポットパターン入力装置に順にアップロードして、このスポット画像データを前記移動機構から送信された位置データに応じて変化させ、
前記スポットパターン入力装置は、前記各群の位置データに対応する前記スポット画像データに基づいて、前記直接描画光源から供給された開始ビームを変調して対応するパターン光を順に生成し、前記スポット画像データ毎に対応するパターン光を投影光学装置に順に入力し、
前記投影光学装置は、前記パターン光を前記リソグラフィ対象物の表面に投影して可変スポットを形成するように制御し、前記移動機構の制御により前記予め設定された経路に沿って走査して、予め設定されたコントロール可能な可変スポットを形成する。
【0015】
本発明に係る直接描画露光方法は、
三次元トポグラフィデータを生成するステップS1と、
前記三次元トポグラフィデータ及び直接描画露光システムの予め設定されたパラメータに基づいて、座標シーケンスとこの座標シーケンスに対応するスポット画像データシーケンスとを含むスポットパターンファイルシーケンスを生成するステップS2と、
前記スポット画像データシーケンスに基づいて、パターン光を生成し、このパターン光を露光しようとするリソグラフィ対象物の表面に投影して可変スポットを形成し、予め設定された経路に沿って走査し、走査中において前記可変スポットの形状を位置データに応じて変化させて、予め設定されたコントロール可能な可変スポットを形成するステップS3と、を含む。
【0016】
また、前記ステップS3において、走査中において前記可変スポットの光強度分布も位置データに応じて変化する。
【0017】
また、前記ステップS3は、具体的に、
基準点の位置データを取得するステップS31と、
前記位置データに基づいて、前記スポットパターンファイルシーケンスにおいて対応するスポット画像データを読み取るステップS32と、
前記スポット画像データに基づいて、前記パターン光を生成するステップS33と、
前記パターン光を前記リソグラフィ対象物の表面に投影して前記可変スポットを形成するステップS34と、
前記可変スポットが所定変位するように制御するステップS35と、を含み、
ステップS31~S35を、直接描画露光が終了するまで繰り返して実行する。
【0018】
また、前記ステップS3において、予め設定された経路に沿って走査するステップは、具体的に、
前記可変スポットが前後順序に複数の予め設定された経路に沿って走査するように制御するステップを含み、
前記複数の予め設定された経路は、頭尾不連続又は頭尾連続であり、前記複数の経路同士は、平行又は交差する。
【0019】
また、前記投影光学装置は、前記可変スポットの投影にパラレルイメージング方式を採用する。
【0020】
また、前記ステップS3の前に、
基板を提供するステップと、
三次元トポグラフィの要求に応じて、前記基板の表面に、対応する厚さのフォトレジストを塗布するステップと、をさらに含み、
前記ステップS2において、前記直接描画露光システムの予め設定されたパラメータは、フォトレジストの露光感度曲線を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る直接描画露光システム及び直接描画露光方法は、リソグラフィ対象物上の各評価点における露光量が変化するように、ドラッグ走査中において形状及び/又は光強度分布が変化している可変スポットを用いてリソグラフィ対象物の表面を露光して、複雑な表面三次元トポグラフィ構造のマスクレスグレースケールリソグラフィを実現し、リソグラフィ精度及びリソグラフィ効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の直接描画露光光システムにおける可変スポットのドラッグ走査中の形状変化及びリソグラフィ対象物のリソグラフィ槽形状の概略図である。
図2a】本発明の直接描画露光システムにおける可変スポットのある時点での形状の概略図である。
図2b】本発明の直接描画露光方法におけるある時点で可変スポットがリソグラフィ対象物の表面を走査した断面の概略図である。
図3】本発明の実施例1の直接描画露光システムの構成の概略図である。
図4】本発明の実施例1の直接描画露光方法のフローチャートである。
図5図4に示す直接描画露光方法におけるステップS3の具体的なフローチャートである。
図6a】本発明の実施例1の直接描画露光方法における複数の予め設定された経路の概略図である。
図6b】本発明の実施例1の直接描画露光方法における複数の予め設定された経路の概略図である。
図6c】本発明の実施例1の直接描画露光方法における複数の予め設定された経路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本発明の具体的な実施形態についてさらに詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0024】
本発明に係る直接描画露光(マスクレス露光)システム及び直接描画露光方法は、リソグラフィ対象物20上の各評価点における露光量が変化するように、ドラッグ走査中において形状及び/又は光強度分布が変化している可変スポット10を用いてリソグラフィ対象物20の表面を露光して、複雑な表面三次元トポグラフィ構造のマスクレスグレースケールリソグラフィを実現する。
【0025】
図1及び図3を参照すると、図1は、本発明の可変スポット10のドラッグ走査中の形状変化及びリソグラフィ対象物20のリソグラフィ槽形状を示している。可変スポット10は、走査経路に沿って間隔的更新を行い、この更新は、中央制御装置35によって制御され、例えば、所定の時間間隔でフレームレート更新を行い、又は、三次元トポグラフィの要求に応じて非等時間間隔の更新を行う。更新する度に、可変スポット10の形状が変化し、さらに、可変スポット10の内部がグレースケール分布光強度であり、更新する度に、可変スポット10の形状及び/又は光強度分布が変化する。
【0026】
図2a及び図2bを参照すると、図2aは、可変スポット10のある時点での形状を示しており、投影光学装置37の直接描画光学ヘッドによって生成された投影面積内には、明るい領域101及び遮光領域102が含まれ、明領域101を可変スポット10の内部と呼ぶ。図2bは、ある時点で可変スポット10がリソグラフィ対象物20の表面を走査した断面を示している。リソグラフィ対象物20の表面のいずれかの評価点Qについて、可変スポット10が所定の走査経路に沿って所定の走査速度で当該評価点Qを走査し、本発明の直接描画露光方法は、可変スポット10の前端11及び後端12が評価点Qを走査するときの露光時間及び/又は光強度分布を調整し、露光時間及び光強度分布は、評価点Qにおける露光量に影響し、さらに近傍の複数の評価点のエッチング深さは、その位置におけるリソグラフィ対象物20のリソグラフィ槽形状を定義する。例えば、可変スポット10がある経路に沿って走査するとき、内部ラインA-A’上の各点が評価点Qを順次走査し、評価点Qにおける露光量は、ラインA-A’上の各点の光強度及び走査速度に影響され、可変スポット10が他の経路に沿って走査するとき、内部ラインB-B’上の各点が当該評価点Qを順次走査し、評価点Qにおける露光量は、ラインB-B’上の各点の光強度及び走査速度に影響される。
【0027】
したがって、所望のリソグラフィによって形成される三次元トポグラフィに応じて、直接描画光学系における走査経路、走査速度などの予め設定されたパラメータ、そして露光量に対するリソグラフィ対象物20の感度などの要因を考慮して、一連の特定の二次元スポットを推定設計することができ、スポットの形状及び/又は光強度と走査経路における(x,y)座標とは対応関係を有する。この一連の特定の二次元スポットの形状及び/又は光強度と位置データとの対応関係は、スポットパターンファイルシーケンスを構成する。本発明の直接描画露光システムは、スポットパターンファイルシーケンスに基づいて、ドラッグ走査中において形状及び/又は光強度分布が変化している可変スポット10を生成する。
【0028】
(実施例1)
図3を参照すると、本実施例の直接描画露光システムは、三次元トポグラフィ生成装置31と、三次元トポグラフィ解析装置32と、直接描画光源33と、移動機構34と、中央制御装置35と、スポットパターン入力装置36と、投影光学装置37と、を含む。三次元トポグラフィ生成装置31と三次元トポグラフィ解析装置32と中央制御装置35とは、1台又は複数台のコンピュータ又はサーバに設けられてもよい。
【0029】
三次元トポグラフィ生成装置31は、三次元トポグラフィデータを生成する。三次元トポグラフィデータは、三次元トポグラフィの各点位置のx、y方向の座標と、対応するz方向の高さデータとを含むが、これらに限定されず、この三次元トポグラフィデータは、三次元モデリングソフトウェアによって生成され、この三次元モデリングソフトウェアは、コンピュータによって解析される汎用の三次元データフォーマット(例えば、STL、3DS、STP、IGS、OBJなど)を導出することができ、ベクトルファイルであることが好ましい。
【0030】
三次元トポグラフィ解析装置32は、三次元トポグラフィデータ及び直接描画露光システムの予め設定されたパラメータに基づいて、スポットパターンファイルシーケンスを生成する。スポットパターンファイルシーケンスは、座標シーケンスと、この座標シーケンスに対応するスポット画像データシーケンスと、を含む。本実施例では、可変スポット10の内部は、固定光強度を採用し、スポット画像データシーケンスにおける各スポット画像データは、スポット形状を含み、スポット画像データにおけるスポット形状は、スポット輪郭を記述する複数の座標、又は直接描画光学ヘッドによって生成された投影面積内の各点の2値化光強度データによって限定される。直接描画露光システムの予め設定されたパラメータは、予め設定された経路P、走査速度及び固定光強度を含むが、これらに限定されない。スポットパターンファイルシーケンスは、生成された後、順序に従ってメモリに記憶され、中央制御装置35は、メモリ内のスポットパターンファイルシーケンスの読み取り、マッチングなどの操作を行うことができる。
【0031】
直接描画光源33は、スポットパターン入力装置36に開始ビームを供給する。直接描画光源33は、リソグラフィ対象物20上のフォトレジスト材料を感光するLED、半導体レーザ、固体レーザ、ガスレーザなどを用いることができ、非干渉性の連続光源であることが好ましい。
【0032】
移動機構34は、投影光学装置37が露光しようとするリソグラフィ対象物20に対して予め設定された経路Pに沿って走査するように制御し、位置データを送信する。なお、本発明でいう走査や移動、変位とは、投影光学装置37とリソグラフィ対象物20との相対的変位である。具体的には、移動機構34は、投影光学装置37を連動させて水平方向に移動させるための第1ステップシャフト及び第1駆動モータと、投影光学装置37を連動させて上下に移動させるための第2ステップシャフト、及び第2駆動モータと、を含み、あるいは、移動機構34は、リソグラフィ対象物20が載置されたステージを連動させて水平方向に移動させるための第1ステップシャフト及び第1駆動モータと、このステージを連動させて上下に移動させるための第2ステップシャフト及び第2駆動モータと、を含み、あるいは、2つの移動方式の組み合わせを採用してもよい。投影光学装置37又はステージの水平方向の移動には、直角座標系又は極座標系を用いる。移動機構34は、レーザや超音波などにより位置データを取得し、この位置データは、可変スポット10内での基準点の座標、投影光学装置37での基準点の座標、移動機構34で移動する基準点の座標などを含むが、これらに限定されない。
【0033】
中央制御装置35は、位置データに基づいて、スポットパターンファイルシーケンスにおいて対応するスポット画像データを読み取り、このスポット画像データをスポットパターン入力装置36にアップロードする。具体的には、中央制御装置35は、記憶されているスポットパターンファイルシーケンスと位置データとをマッチングし、位置データに対応するスポット形状を読み取り、スポットパターン入力装置36が対応するパターン光を生成して更新するように制御する。さらに、中央制御装置35は、移動機構34に変位命令を伝送することにより、投影光学装置37をリソグラフィ対象物20に対して三次元方向に移動させて、投影光学装置37の変位及び焦点合わせを実現する。
【0034】
スポットパターン入力装置36は、スポット画像データに基づいて、直接描画光源33から供給された開始ビームを変調してパターン光を生成し、このパターン光を投影光学装置37に入力させる。スポットパターン入力装置36は、例えば、デジタルマイクロミラーアレイ(DMD)、シリコン系液晶(LCOS)などの二次元アレイ構造の空間光変調器を用いる。
【0035】
投影光学装置37は、パターン光をリソグラフィ対象物20の表面に動的変形構造スポットを投影して動的変形構造スポットを形成し、移動機構34の連動により予め設定された経路Pに沿って走査する。投影光学装置37は、中央制御装置35及び移動機構34の補助により焦点調整を行い、焦点調整により所定形状の可変スポット10のリソグラフィ対象物20の表面への投影面積をコントロールする。走査中において、基準点の位置データが持続的に中央制御装置35にアップロードされてパターン光の形状が更新されるため、可変スポット10の形状が位置データに応じて変化して、予め設定されたコントロール可能な可変スポットが形成される。n(nは、正の整数)回目の更新とn+1回目の更新との間の期間は、可変スポット10は、n回目の更新後の形状を維持するので、投影光学装置37の走査方式は、ドラッグステップ走査である。投影光学装置37による可変スポット10の投影は、音響光学変調光学方式、ガルバノミラー光学方式などのシリアルイメージング方式ではなく、フラットフィールド縮小結像投影光学方式などのパラレルイメージング方式を採用する。
【0036】
さらに、直接描画露光システムは、直接描画光源33とスポットパターン入力装置36との間に位置して、直接描画光源33からの開始ビームを整形するビーム整形器をさらに含むことができる。
【0037】
図4を参照すると、本実施例に係る直接描画露光方法は、
三次元トポグラフィデータを生成するステップS1と、
三次元トポグラフィデータ及び直接描画露光システムの予め設定されたパラメータに基づいて、座標シーケンスとこの座標シーケンスに対応するスポット画像データシーケンスとを含むスポットパターンファイルシーケンスを生成するステップS2と、
スポット画像データシーケンスに基づいて、パターン光を生成し、このパターン光を露光しようとするリソグラフィ対象物20の表面に投影して可変スポット10を形成し、予め設定された経路Pに沿って走査し、走査中において可変スポット10の形状を位置データに応じて変化させて、予め設定されたコントロール可能な可変スポットを形成するステップS3と、を含む。
【0038】
具体的には、図5を参照すると、ステップS3は、
位置データを取得するステップS31と、
位置データに基づいて、スポットパターンファイルシーケンスにおいて対応するスポット画像データを読み取るステップS32と、
スポット画像データに基づいて、パターン光を生成するステップS33と、
パターン光をリソグラフィ対象物20の表面に投影して可変スポット10を形成するステップS34と、
可変スポット10が所定変位するように制御するステップS35と、を含み、
ステップS31~S35を、直接描画露光が終了するまで繰り返して実行する。
【0039】
ステップS3において、予め設定された経路Pに沿って走査するステップは、具体的に、可変スポット10が前後順序に複数の予め設定された経路Pに沿って走査するように制御するステップを含み、この複数の予め設定された経路Pは、頭尾不連続又は頭尾連続であることができ、複数の経路同士は、平行又は交差することができる。図6a~図6cを参照すると、走査経路の3つの具体例を示し、図6aにおいて、可変スポット10は、連続的な予め設定された経路Pに沿って走査し、投影光学装置37の直接描画光学ヘッドの走査面積が、重なり合わないようにスプライスした連続的な帯状パターン13を形成して幅パターンを構成し、図6bにおいて、可変スポット10は、不連続的な予め設定された経路Pに沿って走査し、直接描画光学ヘッドの走査面積が、平行であると共に重複領域14が存在する複数の帯状パターン13を形成して幅パターンを構成し、図6cにおいて、可変スポット10は、交差が存在する予め設定された経路Pに沿って走査し、直接描画光学ヘッドの走査面積が、重なり合うようにスプライスした複数のストライプパターン13を形成して幅パターンを構成する。
【0040】
ステップS3の前に、
基板21を提供するステップと、
三次元トポグラフィの要求に応じて、基板21の表面に、対応する厚さのフォトレジスト22を塗布するステップと、をさらに含むことができる。
【0041】
上記ステップS2において、直接描画露光システムの予め設定されたパラメータは、フォトレジスト22の露光感度曲線を含み、この曲線は、露光量とフォトレジストの露光感度との対応関係であり、フォトレジストの露光感度とは、フォトレジスト22に良好なパターンを生成するに必要な所定の波長の光の最小エネルギー値を意味する。さらに、直接描画露光システムの予め設定されたパラメータは、フォトレジスト22の厚さ、フォトレジスト22のコントラストなども含み、フォトレジスト22のコントラストは、フォトレジスト22の露光領域から非露光領域へ過渡する勾配をいう。
【0042】
上記ステップS3の後に、リソグラフィ対象物20に対して現像などの化学処理を行って、フォトレジスト22の一部を階調的に除去するステップをさらに含むことができる。フォトレジスト22の除去深さは、表面の各点で得られる露光量に関係し、これにより、所望の三次元トポグラフィを有する三次元マイクロナノ構造パターンマスタを得る。その後、三次元マイクロナノ構造パターンマスタを基に、イオンエッチング、複製、電気メッキなどを行うステップをさらに含んでもよい。
【0043】
(実施例2)
本実施例は、直接描画露光システム及び直接描画露光方法を提供する。本実施例の直接描画露光方法は、上記実施例1と以下の点で相異する。
可変スポット10の内部は、グレースケール分布光強度であり、スポット画像データは、スポット形状及びスポット内光強度分布を含む。直接描画露光システムの予め設定されたパラメータは、予め設定された経路P及び走査速度を含み、この予め設定されたパラメータは、フォトレジスト22の露光感度曲線、厚さ、コントラストなどをさらに含んでもよい。
【0044】
本実施例の直接描画露光方法は、上記実施例1と以下の点で相異する。
ステップS2において、三次元トポグラフィデータ、予め設定された経路P、走査速度に基づいて、スポットパターンファイルシーケンスを生成し、スポットパターンファイルシーケンスは、座標シーケンスと、この座標シーケンスに対応するスポット画像データシーケンスと、この座標シーケンスに対応する光強度分布シーケンスと、を含む。
【0045】
ステップS3において、走査中において可変スポット10の光強度分布も位置データに応じて変化する。さらに、ステップS32において、位置データに基づいてスポットパターンファイルシーケンスにおいて対応するスポット画像データを読み取るステップは、具体的に、位置データに基づいて、スポットパターンファイルシーケンスにおいて対応するスポット形状及びスポット内光強度分布を読み取ることである。
【0046】
本実施例では、n(nは、正の整数)回目に更新された可変スポット10及びn+1回目に更新された可変スポット10は、同じ形状と異なる光強度分布とを有する場合と、異なる形状と異なる光強度分布とを有する場合と、がある。
【0047】
以上によれば、本発明に係る直接描画露光システム及び直接描画露光方法は、リソグラフィ対象物20上の各評価点における露光量が変化するように、ドラッグ走査中において形状及び/又は光強度分布が変化している可変スポット10を用いてリソグラフィ対象物20の表面を露光して、マスクレスグレースケールリソグラフィを実現し、スポットパターンファイルシーケンスが高い柔軟性を有するため、複雑な表面三次元トポグラフィ構造を実現することができ、高精度のハーフトーンマスクを製作する必要がなく、コストを節約し、かつリソグラフィ精度及びリソグラフィ効率を向上させることができる。
【0048】
上記の実施例の各技術的構成は、任意に組み合わせることが可能であり、説明を簡潔にするために、上記実施例における各技術的特徴の全ての可能な組み合わせを記述していないが、これらの技術的構成の組み合わせは、矛盾しない限り、本明細書に記載の範囲とみなされるべきである。
【0049】
以上は、本発明の具体的な実施形態にすぎず、本発明の保護範囲は、これに限定されず、本発明に開示された技術的範囲内で、当業者が容易に想到し得る変更や置換は、本発明の保護範囲に包含されるものとする。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲に記載の保護範囲を基準とする。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c