(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】ワックス模型及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
A44C 27/00 20060101AFI20230911BHJP
【FI】
A44C27/00
(21)【出願番号】P 2019057866
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391017849
【氏名又は名称】山梨県
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【氏名又は名称】浅川 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100128071
【氏名又は名称】志村 正樹
(72)【発明者】
【氏名】林 善永
(72)【発明者】
【氏名】神藤 典一
(72)【発明者】
【氏名】宮川 和博
(72)【発明者】
【氏名】小松 利安
(72)【発明者】
【氏名】有泉 直子
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特公昭43-028081(JP,B1)
【文献】特開平06-063693(JP,A)
【文献】特開2001-121244(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1837418(KR,B1)
【文献】特開昭54-148132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 27/00
B22C 7/02
B22C 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム型内に注入されたワックスが固化してできたワックス成形体と、
ワックス成形体の内部に形成される中空部と、を有し、
前記ワックス成形体が少なくともリング状成形部を有し、このリング状成形部の内部には全周に亘って連続した一つの空間を形成するリング状の中空部が設けられ、
前記リング状
成形部の断面積に対する前記中空部の断面積の割合が3%以上であるワックス模型。
【請求項2】
前記中空部は外部と連通する連通口を有している請求項
1に記載のワックス模型。
【請求項3】
前記中空部は、
ゴム型の湯道に残ったワックス柱の内部に形成された中空部を介して外部と連通する請求項1
又は2に記載のワックス模型。
【請求項4】
製品原型となるワックス模型を作るためのゴム型内に
所定の温度で溶融されたワックスを注入し、ゴム型内で固化させてワックス成形体を形成する工程と、
前記ゴム型に
前記ワックスを注入
してから所定時間後に前記ワックスを所定の真空度で吸引してワックス成形体の内部に中空部を形成する工程と、を備え
、
前記所定の温度が、ワックスの融点をX℃としたとき、式X+18.5≦Y≦X+24.5を満たす温度Y℃であり、
前記所定時間が2~12秒であるワックス模型の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワックス模型およびその作製方法に係り、特にロストワックス法を用いて指輪や耳飾りなどの装身具を製造する場合に有用なワックス模型およびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
指輪や耳飾りなど装身具の製造法として広く用いられているロストワックス法は、装身具と同じ大きさ及び形状の原型をワックス模型で作り、このワックス模型に基づいて作った鋳型の中に溶融した貴金属材料を流し込んで装身具を製造するものである。
【0003】
一般に装身具は、ロストワックス法の一種であるいわゆるソリッドモールド法と呼ばれている方法で製造されることが多い。この方法は、ツリー状に組み立てたワックス模型の周囲に石膏を流し込んで耐火物の鋳型を作り、鋳型を加熱してその中に埋没させたワックス模型を脱ろうさせたのち、鋳型の空洞内に溶融した貴金属材料を流し込み、貴金属材料を固めたのち鋳型を除去してワックス模型と同一形状の製品を製造するものである。ところが、このソリッドモールド法では、製品の形状によっては、製品形状を成す空洞内の貴金属材料が完全に凝固する前に、湯道に残された貴金属材料が完全に凝固してしまうことがあり、そうした場合は製品に巣が生じるといった問題があった。
【0004】
上記の問題を解決する手段としては、例えば、鋳型に設けられる湯道を太くし、湯道に残された貴金属材料の凝固を遅らせるなどの対策が考えられる。しかしながら、湯道を太くしてしまうと、湯道に残された貴金属材料のロスが大きくなってしまう他、鋳造後にツリーから個々の製品を切り離す際に貴金属の切断加工がやっかいになり、切り離した後の製品の仕上げが煩雑になるといった問題があった。
【0005】
そこで、本願の発明者は、従来のソリッドモールド法に代えて、ロストワックス法の一種であるいわゆるセラミックシェルモールド法による装身具の鋳造を試みた。この鋳造法は、ツリー状に組み立てたワックス模型に耐火物の被覆と乾燥を複数回繰り返して薄いコーティング層を形成し、内部のワックスを脱ろうさせたのち、焼成することで鋳型に強度を与えるものである。この鋳造法はソリッドモールド法と比較して、鋳込み金属の凝固速度を部分的にコントロールできるというメリットがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、いわゆるセラミックシェルモールド法で装身具を鋳造する場合は、鋳込み金属の凝固速度を部分的にコントロールできるため、指向性凝固させやすくなるメリットがある。指向性凝固ができれば、上述の巣の発生を抑えることができる。単に湯道を太くするという手法と比較すると、湯道に残された貴金属材料のロスも少なく、また、ツリーから個々の製品を切り離す際の切断加工も容易となるメリットがある。しかしながら、この鋳造法では鋳型が薄いコーティング層によって形成されているため、ワックスを脱ろうさせる際に鋳型内でのワックスの膨張により鋳型が割れるおそれがあった。
【0007】
そこで、本願発明は、鋳型が薄いコーティング層によって形成される場合であっても、ワックスを脱ろうさせる際に鋳型の割れを防ぐことができるワックス模型及びその作製方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るワックス模型は、ゴム型内に注入されたワックスが固化してできたワックス成形体と、ワックス成形体の内部に形成される中空部と、を有する。
【0009】
また、本発明に係るワックス模型は、少なくともリング状成形部を有し、このリング状成形部の内部に中空部がリング状に形成されている。
【0010】
また、本発明に係るワックス模型の中空部は、ワックス成形体の内部で一つの空間を形成している。
【0011】
本発明に係るワックス模型の作製方法は、製品原型となるワックス模型を作るためのゴム型内に溶融されたワックスを注入し、ゴム型内で固化させてワックス成形体を形成する工程と、前記ゴム型に注入されたワックスが固化する過程で溶融状態にあるワックスを吸引してワックス成形体の内部に中空部を形成する工程と、を備えている。
【0012】
また、本発明に係るワックス模型の作製方法において、ゴム型に注入されるワックスの溶融温度が所定の温度であり、注入から所定時間後に前記ワックスを所定の真空度で吸引する。
【0013】
また、本発明に係るワックス模型の作製方法において、前記所定の温度は、ワックスの融点をX℃としたとき、式 X+18.5≦Y≦X+24.5 を満たす温度Y℃とするのが好ましく、前記所定時間は2~12秒とするのが好ましく、前記所定の真空度は40cmHg以上とするのが好ましい。なお、本発明における融点とは、DSC(示差走査熱量測定)における吸熱ピーク温度と定義される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るワックス模型は、ワックスが固化したできた成形体の内部に中空部を備えているので、ワックス模型が中実である場合と比べて素早く溶融し、溶融前の熱膨張による鋳型への負荷を低減することができる。
【0015】
また、本発明に係るワックス模型の中空部は、ワックス成形体の内部で一つの空間を形成しているので、ワックス成形体の全体にわたって鋳型への負荷低減の効果をもたらす。
【0016】
また、本発明に係るワックス模型の作製方法によれば、ゴム型に注入された溶融ワックスを吸引することで、ゴム型内が減圧されてワックスが気化しワックス成形体の内部に中空部を形成するため、中空部が連続した一つの空間を形成しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るワックス模型の正面図である。
【
図3】一実施形態に係るワックス模型を作るゴム型の斜視図である。
【
図5】セラミックシェルモールド法を用いて装身具を製造する場合の工程図である。
【
図7】シェル鋳型の断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るワックス模型及びその作製方法について、その実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面は、本発明のワックス模型及びその作製方法を模式的に表したものである。これらの実物の寸法は、図面上の寸法と必ずしも一致していない。また、重複説明は適宜省略させることがあり、同一部材には同一符号を付与することがある。また、本発明の技術的範囲は以下で説明する各実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。本発明のワックス模型及びその作製方法は、特にセラミックシェルモールド法によって指輪や耳飾りなど装身具を製造する際に適している。
【0019】
図1には本発明に係るワックス模型1の一実施形態が示されており、
図2にはワックス模型1の断面形状が示されている。この実施形態に係るワックス模型1は、
図1に示されるように、模型全体でリング状成形部2を形成しているが、製品原型によって様々な形状を取り得る。なお、
図1において、符号3は、ゴム型の湯道に残ったワックスが固まってできたワックス柱である。
【0020】
前記ワックス模型1は、
図3及び
図4に示されるようなゴム型4によって作られる。このゴム型4は、製品原型となるための前記ワックス模型1を作るためのもので、ゴム型4の内部には溶融ワックスを導き入れる注入口5と、溶融ワックスが充てんされる製品原型と同一形状のリング状のキャビティ6と、注入口5からキャビティ6内に溶融ワックスを導く湯道7が形成されている。この実施形態において、ゴム型4は上下二つに分かれた上型4aと下型4bとからなるが、この実施形態に限定されるものではなく、例えばゴム型4のキャビティ6内で成形されたワックス成形体1’をゴム型2から取り出すための切り込みが設けられた上下一体のものであってもよい。
【0021】
ゴム型4に注入されるワックスは、所定の温度に溶融されたものである。所定の温度は、ワックスの融点をX℃としたとき、式 X+18.5≦Y≦X+24.5 を満たす温度Y℃であることが望ましい。この温度とすることで、減圧時に空洞を形成しやすくなる。一方、この温度より低いと、キャビティ6に充てんされたワックス全体が固化するまでの時間が短くなり、吸引してもワックス成形体1’の内部が中空にならない。また、この温度より高いと、注入時に気泡を多く含んでしまい、減圧時に気泡が膨らむことで表面形状が崩れるおそれがある。なお、ワックスを注入する前にもキャビティ6内を減圧することで、ワックスの注入及び充てんがよりスムーズとなる。
【0022】
ワックスは溶融された状態でゴム型4の注入口5からキャビティ6に注入され、キャビティ6内に充てんされたのち、時間の経過と共に固化が始まる。キャビティ6内でワックスが固化することで、ワックス成形体1’が形成されるが、前記ワックスが固化していく過程でワックスを吸引する。ワックスを吸引することでキャビティ6内及び溶融ワックスが減圧され、気化した溶融ワックス成分により、前記ワックス成形体1’の内部に中空部1aを形成することができる。具体的には溶融ワックスをゴム型4に注入後、一定の保持時間を確保したのち所定時間ゴム型4の注入口5から所定の真空度でゴム型4の内部を真空引きする。保持時間が短いとワックス成形体1’の表面がまだ柔らかいため、吸引時に表面形状が崩れるおそれがある。一方、保持時間が長いとワックスの固化が進みすぎて、吸引してもワックス成形体1’の内部に中空部ができないおそれがある。すなわち、保持時間としては、吸引開始時において、キャビティ6内に充てんされたワックスの表面の固化が少し始まっているくらいが望ましい。
【0023】
また、吸引時間は、吸引する際の真空度によっても左右されるが、おおむね1~3秒程度が望ましい。さらに、真空度は約40cmHg以上で行われるのが望ましい。真空度が低すぎると、ワックス成形体1’の内部に十分な空間を持った中空部1aを形成できない可能性がある。
【0024】
図1及び
図2に示されるように、リング状のワックス模型1に対して、ワックス成形体1’の内部に形成される中空部1aもリング状に形成されるのが望ましい。すなわち、中空部1aは途中で閉じることなく、ワックス模型1の全周に亘って連続した一つの空間を有していることが望ましい。
図2に示されたワックス成形体1’の断面積に対する中空部1aの断面積の割合は特に限定されるものではないが、好ましくは3%以上である。また、中空部1aの断面積がワックス模型1の全周に亘って均一である必要もない。ワックス模型1の中空部1aは、ワックス柱3の内部に形成された中空部3aを介して外部と連通している。ワックス模型1の中空部1aにはワックス柱3の基端部付近にワックス柱3の中空部3aと連通する接続口1bが設けられる
【0025】
ゴム型4によって作製されたワックス模型1は中空部1aを有しており、セラミックシェルモールド法を用いて指輪や耳飾りなどの装身具を製造する場合に有用とする。一例として、セラミックシェルモールド法を用いた製造方法を
図5の工程図及び
図6の工程説明図に基づいて説明する。なお、
図6の工程説明図は、工程2,3,5,6のみを模式的に示したものである。
【0026】
工程1では、前述したように、ゴム型4を用いて製品原型と同一形状のワックス模型1を作製する。工程2では複数のワックス模型1をツリー状に組み立ててワックスツリー8とする。工程3でフィラーとバインダーとからなるスラリー中にワックスツリー4を浸漬するディッピングと、スタッコをワックスツリー8に振り掛けることにより、ワックスツリー8の表面にスタッコを付着させるスタッコイングと、を複数回繰り返し、ワックスツリー8の表面に薄いシェル層9をコーティングする。
【0027】
次の工程4でシェル層を乾燥させる。この乾燥工程では、シェル層9を自然乾燥又は真空乾燥などによって乾燥させることができる。シェル層9の乾燥を十分に行いシェル鋳型10としたのち、工程5でシェル鋳型10からワックスを脱ろうさせ、焼成する。脱ろう工程では、シェル鋳型10を加熱することで内部のワックスを溶融させ、溶融したワックスをシェル鋳型10から流し出してシェル鋳型10内に製品原型と同一形状の空洞部11を残す。
【0028】
上記脱ろう工程においては、シェル鋳型10が加熱されることでシェル層9を介してワックスが膨張するが、ワックス模型1の内部に中空部1aが形成されているために、中空部がない場合と比べて素早く溶融することができる。その結果、ワックスの膨張に伴うシェル層9への負荷が緩和されることになり、シェル層9の亀裂を効果的に防ぐことができる。特に、中空部1aがワックス模型1の内部で連続した一つの空間を形成しているので、ワックス模型1の全体に亘ってシェル層9への負荷低減の効果が大きくなる。
【0029】
工程6では、脱ろうと焼成が完了したシェル鋳型10の湯口10aから溶融した貴金属材料12が流し込まれる。貴金属材料12は湯道10bを通って各空洞部11に導かれる。
図7に示されるように、シェル鋳型10は、空洞部11を形成する外側のシェル層9の厚みが薄く形成されている一方、湯道10b付近の内側のシェル層9が外側に比べて厚く形成されている。そのため、空洞部11内の貴金属材料12は急冷される一方、湯道10b付近では貴金属材料12が空洞部11に比べて徐冷されることになる。その結果、製品側と湯道側とで温度勾配ができ、製品側が先に凝固してから湯道側が凝固する指向性凝固ができて、結果的に製品としての貴金属に巣が生じにくくなる。
【0030】
工程7では、シェル鋳型10が冷えてからシェル層9をハンマーなどで除去し、ツリーから各貴金属の固体物を切り落とす。各固体物の表面を磨きバリを落とすなどして仕上げ、製品として完成させる。
【0031】
実施例I
ゴム型のキャビティに注入するワックスの溶融温度と、ワックス模型の内部に形成される中空部の有無およびシェル鋳型からワックスを脱ろうさせたあとのシェル鋳型の亀裂の有無との関係について調べた。吸引を開始する時間は、比較例を含めて全ての実施例ともワックス注入後2秒である。吸引時の真空度は約76cmHgである。また、使用したワックスはFreeman製のターコイズ(製品名)であり、その融点は約58.5℃である。
【0032】
ワックス模型のリングのデザインは、全周の断面が円形状の単純なリングとした。腕の断面は直径5mmの円形状とした。リングのサイズは、JCS(ジャパン・カスタム・サイズ)における10番とした。湯道は、直径3mm、長さ5mmとした。シェル鋳型の作製は、次のように行った。まず、コロイダルシリカ(日産化学製スノーテックス30)と純水を2:1の体積比で混合した液を1L用意した。そこに#350のジルコンフラワー4kgを入れて18時間撹拌した後、ザーンカップNo.4での測定値が48秒となるように、#350のジルコンフラワー又は前述の混合液を適宜追加して粘度を調整し、第1層用のスラリーを作製した。さらに、#200のジルコンフラワーを用いることと、ザーンカップNo.4の測定値を38秒とすること以外は同様の手順で、第2層以降用のスラリーを作製した。そして、ワックス模型に界面活性剤(GC製シュールミスト)を噴霧し、第1層用スラリーにディッピングし、メジアン径103μmのジルコンサンドをスタッコイングし、2時間乾燥させ、1回目のコーティングを完了した。その後、第2層以降用スラリーにディッピングし、前述のジルコンサンドをスタッコイングし、2時間乾燥させ、2回目のコーティングを完了した。その後、第2層以降用スラリーにディッピングし、粒径0.3~0.7mmのムライトサンドをスタッコイングし、2時間乾燥させ、3回目のコーティングを完了した。その後、同様の手順で、4回目のコーティングを完了した。その後、第2層以降用スラリーにディッピングし、粒径0.7~1.0mmのムライトサンドをスタッコイングし、2時間乾燥させ、5回目のコーティングを完了した。その後、同様の手順で、6回目のコーティングを完了した。その後、18時間乾燥させ、シェル鋳型の作製を完了した。脱ろうは、300℃の電気炉の中で30分間加熱することによって行った。
【0033】
上記実施例Iの結果を表1に示す。実施例と共にワックスの溶融温度を低く設定した時の比較例を併せて表1に示した。各実施例1~7の溶融温度は、実施例1が融点58.5℃より18.5℃高い溶融温度であり、実施例2から実施例7まで1.0℃刻みで上がっている。一方、比較例6の溶融温度は、融点58.5℃との差が17.5℃の溶融温度であり、比較例5から比較例1まで1.0℃刻みで溶融温度が下がっている。なお、比較例7は、溶融温度を融点58.5℃より25.5℃高くした場合の結果である。
【0034】
【0035】
上記表1に示されるように、いずれの実施例もワックス模型の内部には中空部が形成され、また、ワックスを脱ろうさせたあとのシェル鋳型には亀裂が認められなかった。一方、比較例の方は融点との差が大きい比較例5及び比較例6には湯道付近のみに中空部が形成され、さらに融点との差が小さい比較例1~4には湯道付近も含めて製品部分には中空部が形成されていなかった。また、比較例1~6について、ワックスを脱ろうさせたあとのシェル鋳型に亀裂が認められた。さらに、比較例7では成形されたワックス模型の表面形状に崩れが認められた。
【0036】
実施例II
ワックス模型の内部に中空部を形成する際の吸引開始時間と、ゴム型から取り出したワックス模型の表面の外観、脱ろう後のシェル鋳型の亀裂などとの関係について調べた。吸引開始までの所定時間は、実施例8が2秒であり、実施例9が7秒であり、実施例10が12秒である。また、比較例8が1秒であり、比較例9が13秒である。ワックスの融点と溶融温度との差はいずれも19.5℃である。その他の条件は実施例Iと同様である。上記実施例IIの結果を表2に示す。
【0037】
【0038】
上記表2に示されるように、吸引開始までの所定時間が短い比較例8は、ワックス模型の表面形状に崩れが生じていた。実施例8~10は、いずれも表面形状の崩れは生じず、ワックス模型の内部には中空部が形成され、また、ワックスを脱ろうさせたあとのシェル鋳型には亀裂が認められなかった。比較例9は、湯道付近のみに中空部が形成され、ワックスを脱ろうさせたあとのシェル鋳型に亀裂が認められた。
【符号の説明】
【0039】
1 ワックス模型
1a 中空部
1b 連通口
1’ ワックス成形体
2 リング状成形部
3 ワックス柱
3a 湯道の中空部
4 ゴム型
4a 上型
4b 下型
5 注入口
6 キャビティ
7 ゴム型の湯道
8 ワックスツリー
9 シェル層
10 シェル鋳型
10a 湯口
10b 湯道
11 空洞部
12 貴金属材料