IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧 ▶ 朝日バグナル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ 図1
  • 特許-耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ 図2
  • 特許-耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ 図3
  • 特許-耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ 図4
  • 特許-耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ
(51)【国際特許分類】
   B60L 5/06 20060101AFI20230911BHJP
【FI】
B60L5/06 B
B60L5/06 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019097801
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020195171
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591161944
【氏名又は名称】朝日バグナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】児玉 正博
(72)【発明者】
【氏名】磯原 正典
(72)【発明者】
【氏名】治良 輝男
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207426377(CN,U)
【文献】実開平05-009102(JP,U)
【文献】特開2007-124804(JP,A)
【文献】実開昭53-079610(JP,U)
【文献】実開平06-048301(JP,U)
【文献】特開2018-007440(JP,A)
【文献】特開2013-223282(JP,A)
【文献】特開平07-298404(JP,A)
【文献】実開昭57-096941(JP,U)
【文献】特開2017-013761(JP,A)
【文献】米国特許第04345867(US,A)
【文献】実公第029083(大正15年)(JP,Y1T)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 5/00 - 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉塵を含む熱ガス環境下で使用するパンタグラフであって、
(a)下面に碍子を備え、上面中央部に矩形枠体、上面端部に受電端子を備える基底板、
(b)一端が、上記矩形枠体に軸支され、他端が、トロリー線から電力を集電する集電ホイルを両端で回転自在に保持し、集電した電力を送電する送電端子を備える集電枠体を軸支する一対のアーム、
(c)一端が、上記矩形枠体に固定され、他端が、進退可能な止具で保持され、上記一対のアームに上向きの力を付与する弾性体、及び、
(d)上記送電端子と上記受電端子を接続する導電線
を備え
前記集電枠体が、反転ストッパーを備えることを特徴とする耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ。
【請求項2】
前記一対のアームの一端が、軸受けで、前記矩形枠体に軸支されていることを特徴とする請求項1に記載の耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ。
【請求項3】
前記集電枠体が、軸受で、前記一対のアームに軸支されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ。
【請求項4】
前記集電ホイルが、焼結ブッシュ製の銅管ホイルであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ。
【請求項5】
前記集電ホイルが、ステンレス製の軸で、前記集電枠体に回転自在に保持されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ。
【請求項6】
前記弾性体が、二重のバネ構造からなることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ。
【請求項7】
導電線が、シリコンチューブで被覆されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ。
【請求項8】
前記碍子を介し、赤熱コークスをコークス乾式消火設備に搬送するコークス車に搭載することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ。
【請求項9】
前記一対のアームのそれぞれに対応する複数の前記弾性体を備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉塵を含む熱ガス環境のような過酷な環境下で、長期間にわたり故障せずに動作するパンタグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
コークスの製造設備において、コークス車は、三本のトロリー線から、パンタグラフで電力を集電して、軌道上を走行し、コークス炉から押し出されて収容した赤熱コークスをコークス乾式消化設備(CDQ)に搬送する(例えば、特許文献1、参照)。
図1に、コークス炉から赤熱コークスをコークス車に押し出す態様を示す。
【0003】
図1に示すように、コークス炉の窯口からコークスを押し出す際、コークス炉の窯口周辺を集塵フードで覆い、赤熱コークスとともに排出されるコークス粉塵と、該粉塵を含む熱ガスが大気中に拡散するのを防止するが、コークス車の走行に必要な電力を集電するパンタグラフは、コークス粉塵と、該粉塵を含む熱ガス環境(過酷環境)に曝されることになる。
【0004】
コークス車に搭載するパンタグラフとして、通常、リンク機構で動作する菱型パンタグラフが用いられるところ、安定動作を目的として、構造が工夫・改良されたパンタグラフが、これまで、いくつか提案されている(例えば、特許文献2~4、参照)。
【0005】
例えば、特許文献4には、「基台の片端に垂設された支柱と、その支柱の上端部と下部にそれぞれ基端が枢着された互いに平行な上リンクおよび下リンクと、上部と下端部にそれぞれ前記上リンクおよび下リンクの各先端が枢着された垂直リンクとで構成される一対の平行リンクを、互いに対向配置し、対向する各枢着部にそれぞれ1本の枢着軸を共用し、前記支柱の上端位置と垂直リンクの下端位置における枢着軸相互間にコイルバネを取り付け、さらに前記垂直リンクの上部に集電部材を設けてなるパンタグラフ式集電装置」が提案されている。
【0006】
特許文献4のパンタグラフ式集電装置は、レール上を走行する車両や、クレーン等の運搬機の天井に搭載する集電装置であって、従来の菱型パンタグラフに比べ、少ない部材で構成されていて構造が簡単で、自重が小さいことに加え、コイルバネが集電ホイルを上方向に強く付勢するので、上下に波打つ架線に対する追従性が良好で、かつ、部材結合部の摩耗が少なくて故障し難く、メンテナンスが容易である集電装置である。
【0007】
しかし、特許文献4のパンタグラフ式集電装置は、リンク機構を基本とするので、所要の数の構成部材を必要とし、かつ、部材結合部の構造が枢着構造で、コークス粉塵と、該粉塵を含む熱ガス環境の影響を受けて故障し易いので、特許文献4のパンタグラフ式集電装置を、コークス粉塵と、該粉塵を含む熱ガス環境下で使用するためには、保守・点検の周期を極端に短縮して、常に、正常に機能する状態を維持する必要がある。
【0008】
図2に、コークス車に搭載する菱型パンタグラフの一態様を示す。図2(a)に、菱型パンタグラフの正面態様を示し、図2(b)に、菱型パンタグラフの側面態様を示す。
【0009】
図2(a)と図2(b)に示すように、コークス車に搭載する菱型パンタグラフは、下面に碍子1aを備える基底板1の上に、下アーム2と上アーム3、及び、下アーム2の上端と上アーム3を連結する弾性体5でリンク機構が構成され、上アーム3と上アーム3の軸部に、銅管ホイル6aを回転自在に保持する集電枠体6が軸支されて、菱型に構成されている。
【0010】
上アーム3と基底板1は、リンク機構の上下動に同調して動作し、上アームの左右の振れを抑止する振止アーム4で連結されている。銅管ホイル6aで集電した電力は、送電端子6bの導電線6cから、導電線(図示なし)を介して、基底板1に配置した受電端子1bの導電線1cに送られる。パンタグラフは、基底板1の下面の碍子1aを介して、コークス車の所定の位置に、取付ナット1dで固定される。
【0011】
図3に、菱型パンタグラフの搭載態様を示す。図3に示すように、パンタグラフを2個一組とし、三列で、コークス車に搭載する。このようにパンタグラフを搭載することにより、トロリー線20a、20b、20cに非通電区間があっても、コークス車の走行時、三本のトロリー線から、電力を間断なく集電することができる。
【0012】
しかし、菱型パンタグラフは、前述したように、コークス車が、コークス炉の窯口から押し出される赤熱コークスを収容している間、赤熱コークスとともに排出されるコークス粉塵と、該粉塵を含む熱ガス環境に曝される。コークス車は、コークス炉とCDQの間を頻繁に往復するので、コークス車に搭載した菱型パンタグラフは、赤熱コークスとともに排出されるコークス粉塵と、該粉塵を含む熱ガス環境に繰り返し曝される。
【0013】
熱ガスは、腐食性のCOやSO2を含んでいるので、菱型パンタグラフの構成部材には錆が発生する。また、熱ガス環境下で、下アーム2の上端と上アーム3を連結して、リンク機構の上下動を担う弾性体5がへたり、リンク機構が上昇しないことがある。
【0014】
また、コークス粉塵は、リンク機構の構成部材や、構成部材の結合軸部に付着・堆積して、リンク機構の上下動を阻害し、銅管ホイル6aがトロリー線20a、20b、20c(図3、参照)に達しないことがある。その結果、菱型パンタグラフが集電できず、コークス車の円滑な走行ができなくなる事態が往々にして発生する。
【0015】
特許文献5には、コークス炉に石炭を装入する装入車の走行において、トロリー線及び給電パンタグラフの異常を監視するシステムが提案されているが、特許文献5の異常監視システムは、給電パンタグラフ自体の動作不良や異常を監視するシステムではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開昭56-141385号公報
【文献】特公昭60-022722号公報
【文献】実開平05-009102号公報
【文献】特開平08-009502号公報
【文献】特開2017-013761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
前述したように、コークス車に搭載した従来の菱型パンタグラフは、コークス粉塵と、該粉塵を含む熱ガス環境(以下「粉塵・熱ガス環境」という。)に繰り返し曝されて、パンタグラフが正常に動作しなくなる場合がある。
【0018】
それ故、6個の菱型パンタグラフについて、コークス車の走行時に、パンタグラフの動作不良が発生しないように、頻繁に、保守・点検を行う必要があり、また、発生した動作不良の形態に応じて、頻繁に、動作不良部分(例えば、回動部分)を修理し、又は、構成部材(例えば、リンク)を交換せざるを得ないのが現状である。
【0019】
そこで、本発明は、過酷な粉塵・熱ガス環境に曝される菱型パンタグラフに係る従来技術に鑑み、頻繁に、修理及び保守・点検を行う必要がないように、パンタグラフの構造を工夫・改良し、修理及び保守・点検の頻度を極力低減することを課題とし、該課題を解決するパンタグラフを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、リンク機構を採用する従来の菱型パンタグラフでは、構成部材の点数が多く、また、摺動面を有する枢着軸構造の回動部分の数が多いので、粉塵・熱ガス環境の影響を受けて故障し易く、その結果、動作不良を発生するという発想の下で、上記課題を解決する手法について鋭意検討した。
【0021】
その結果、パンタグラフは、過酷な粉塵・熱ガス環境に曝されることを前提に考慮し、(i)構成部材の点数を低減してパンタグラフの構造を簡素化し、かつ、(ii)パンタグラフの回動部分を回動が円滑な軸支構造とすれば、粉塵・熱ガス環境下で、該環境の影響を受けずに、長期間にわたり動作不良が発生しないことを見いだした。
【0022】
パンタグラフの長寿命化において、過酷な粉塵・熱ガス環境に曝されることを前提に考慮し、構成部材の点数削減や、回動部分の軸支構造化は、従来、検討されていない。本発明者らは、上記知見に基づいて、修理及び保守・点検の頻度を極力低減できるパンタグラフの構造を見いだした。
【0023】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)粉塵を含む熱ガス環境下で使用するパンタグラフであって、
(a)下面に碍子を備え、上面中央部に矩形枠体、上面端部に受電端子を備える基底板、
(b)一端が、上記矩形枠体に軸支され、他端が、トロリー線から電力を集電する集電ホイルを両端で回転自在に保持し、集電した電力を送電する送電端子を備える集電枠体を軸支する一対のアーム、
(c)一端が、上記矩形枠体に固定され、他端が、進退可能な止具で保持され、上記一対のアームに上向きの力を付与する弾性体、及び、
(d)上記送電端子と上記受電端子を接続する導電線
を備え
前記集電枠体が、反転ストッパーを備えることを特徴とする耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ。
(2)前記一対のアームの一端が、軸受けで、前記矩形枠体に軸支されていることを特徴とする前記(1)に記載の耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ。
(3)前記集電枠体が、軸受で、前記一対のアームに軸支されていることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ。
)前記集電ホイルが、焼結ブッシュ製の銅管ホイルであることを特徴とする前記(1)~()のいずれかに記載の耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ。
)前記集電ホイルが、ステンレス製の軸で、前記集電枠体に回転自在に保持されていることを特徴とする前記(1)~()のいずれかに記載の耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ。
)前記弾性体が、二重のバネ構造からなることを特徴とする前記(1)~()のいずれかに記載の耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ。
電線が、シリコンチューブで被覆されていることを特徴とする前記(1)~()のいずれかに記載の耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ。
)前記碍子を介し、赤熱コークスをコークス乾式消設備に搬送するコークス車に搭載することを特徴とする前記(1)~()のいずれかに記載の耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ。
(9)前記一対のアームのそれぞれに対応する複数の前記弾性体を備える、前記(1)~(8)のいずれかに記載の耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、過酷な粉塵・熱ガス環境下で、長期間にわたり故障せずに動作する角型パンタグラフを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】コークス炉から赤熱コークスをコークス車に押し出す態様を示す図である。
図2】コークス車に搭載する菱型パンタグラフの一態様を示す図である。(a)は、菱型パンタグラフの正面態様を示し、(b)は、菱型パンタグラフの側面態様を示す。
図3】菱型パンタグラフの搭載態様を示す図である。
図4】角型パンタグラフの一態様を示す図である。(a)は、角型パンタグラフの正面態様を示し、(b)は、角型パンタグラフの側面態様を示す。
図5】角型パンタグラフの形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の耐過酷環境性に優れた角型パンタグラフ(以下「本発明パンタグラフ」ということがある。)は、粉塵を含む熱ガス環境下で使用するパンタグラフであって、
(a)下面に碍子を備え、上面中央部に矩形枠体、上面端部に受電端子を備える基底板、
(b)一端が、上記矩形枠体に軸支され、他端が、トロリー線から電力を集電する銅管ホイルを両端で回転自在に保持し、集電した電力を送電する送電端子を備える集電枠体を軸支する一対のアーム、
(c)一端が、上記矩形枠体に固定され、他端が、進退可能な止具で保持され、上記一対のアームに上向きの力を付与する弾性体、及び、
(d)上記送電端子と上記受電端子を接続する導電線
を備えることを特徴とする。
以下、本発明パンタグラフについて図面に基づいて説明する。
【0027】
図4に、角型パンタグラフの一態様を示す。図4(a)に、角型パンタグラフの正面態様を示し、図4(b)は、角型パンタグラフの側面態様を示す。
【0028】
下面に碍子1aを備える基底板1の上面中央部に、矩形枠体7が配置され、上面端部に導電線1cを保持する受電端子1bが配置されている。矩形枠体7には、一対のアーム8の一端が軸支されている。アーム8の一端の軸支は、軸受による軸支が好ましい。
【0029】
一対のアーム8の他端には、トロリー線(図示なし)から電力を集電する集電ホイル6aを両端で回転自在に保持し、集電した電力を送電する導電線6cを保持する送電端子6bを備える集電枠体6が軸支されている。集電枠体6の軸支は、軸受による軸支が好ましい。
【0030】
一対のアーム8は、補強部材8bと補強部材8cで補強されていて、補強部材8bと補強部材8cは、一方のアーム8の側面に、ナット8dで固定されている。ナットは、ナット8dに限らず、ハードロックナットが好ましい。
【0031】
このように、本発明パンタグラフにおいては、構成部材の点数、及び、回動部分の数が少なく、構造が簡素化されているので、コークス粉塵の付着・堆積が抑制され、かつ、構成部材の回動部分が軸支構造であるので、パンタグラフの動作性が向上する。それ故、本発明パンタグラフは、過酷な粉塵・熱ガス環境下で、トロリー線に起伏があっても、その起伏に追従して円滑に集電機能を果たすことができる。
【0032】
集電枠体6は、何らかの力が作用して反転することがあるので、集電枠体6を軸受で軸支することに併せ、反転ストッパー6dを設けることが好ましい。反転ストッパー6dは、アーム8の軸支部近傍に設けた孔8aと協働して、集電枠体6の反転を阻止する。なお、反転ストッパーは、必要に応じ、設ければよい。
【0033】
集電ホイル6aは、通常、銅管ホイルであるが、焼結ブッシュ製の銅管ホイルが好ましい。焼結ブッシュ製の銅管ホイルは、潤滑油を含浸させて使用するので、集電ホイル6aの回転がより円滑になる。
【0034】
集電枠体6の両端に固定されている、集電ホイルを軸支する軸は、ステンレス製の軸が好ましい。ステンレスは、耐食性に優れていて、熱ガス環境下で錆び難いので、集電ホイル6aは、焼結ブッシュ製の銅管ホイルの回転円滑化効果と相俟って、粉塵・熱ガス環境下で、回転が止まることなく円滑に回転して集電作用をなすことができる。
【0035】
集電ホイル6aで集電した電力は、集電枠体6に配置した送電端子6bの導電線6cから、導電線(図示なし)を介して、基底板1に配置した受電端子1bの導電線1cに送電される。
【0036】
送電端子と受電端子を接続する導電線は、耐熱性のシリコンチューブで被覆した導電線が好ましい。導電線を、耐熱性のシリコンチューブで被覆することにより、粉塵・熱ガス環境下での導電線の劣化を抑制し、導電線の断線を防止することができる。
【0037】
矩形枠体7には、一対のアーム8に上向きの力を付与する作用をなす弾性体9が、基板9aを介し配置されている。弾性体9の一端が、基板9aに固定され、他端が、進退可能な止具9bで保持されている。止具9bを進退させることにより、弾性体9の反発力を調整して、一対のアーム8に付与する上向きの力を調整することができる。弾性体9は、一対のアーム8に付与する上向きの力を確保するため、複数配置してもよい。
【0038】
弾性体9は、一対のアーム8に上向きの力を付与し得るものであればよいが、粉塵・熱ガス環境に曝されることを考慮すると、ピアノ線製のスプリングが好ましい。また、一対のアーム8に上向きの力を、粉塵・熱ガス環境下で、長期間、常に付与することを考慮すると、弾性体9は、二重のバネ構造とし、弾性体9の反発力を高めることが好ましい。
角型パンタグラフは、基底板1の碍子1aを介して、コークス車の所定の位置に、取付なナット1dで固定される。
【0039】
図5に、角型パンタグラフの形態を示す。図5に示す角型パンタグラフは、図3に示す菱型パンタグラフの搭載態様における菱型パンタグラフを、角型パンタグラフに置き換えて、コークス車に搭載する。
【実施例
【0040】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0041】
(実施例1)
粉塵を含む熱ガス環境に繰り返し曝されるコークス車のパンタグラフとして、リンク機構の菱型パンタグラフを使用すると、3か月毎に、保守・点検が必要で、それでも、コークス車の走行時、動作不良が生じたが、本発明の角型パンタグラフを使用すると、約1年間、保守・点検が不要で、動作不良は生じず、保守・点検後も、コークス車の走行時、動作不良は生じなかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
前述したように、本発明によれば、過酷な粉塵・熱ガス環境下で、長期間にわたり故障せずに動作する角型パンタグラフを提供することができる。本発明の角型パンタグラフは、コークス炉から赤熱コークを収容し、コークス乾式消化設備に搬送するコークス車のパンタグラフとして好適である。よって、本発明は、コークス製造産業及び鉄鋼産業において利用可能性が高いものである。
【符号の説明】
【0043】
1 基底板
1a 碍子
1b 受電端子
1c 導電線
1d 取付ナット
2 下アーム
3 上アーム
4 振止アーム
5 弾性体
6 集電枠体
6a 集電ホイル
6b 送電端子
6c 導電線
6d 反転ストッパー
7 矩形枠体
8 アーム
8a 孔
8b、8c 補強部材
8d ナット
9 弾性体
9a 基板
9b 止具
11 ダンパー
12 ダンパー
13 集塵フード
14 バケット
15 トロリー・パンタグラフ位置
16 押出ラムビーム
17 窯口集塵配管
18 ダンパー
20a、20b、20c トロリー線
図1
図2
図3
図4
図5