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特許7345777ケトン化合物の製造方法、カルボン酸誘導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】ケトン化合物の製造方法、カルボン酸誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/62 20060101AFI20230911BHJP
   C07C 45/63 20060101ALI20230911BHJP
   C07C 49/784 20060101ALI20230911BHJP
   C07C 49/813 20060101ALI20230911BHJP
   C07C 51/36 20060101ALI20230911BHJP
   C07C 57/30 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
C07C45/62
C07C45/63
C07C49/784
C07C49/813
C07C51/36
C07C57/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019109122
(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公開番号】P2020200286
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-03-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 「日本化学会第99春季年会(2019)プログラム(発行日:平成31年3月1日、発行者:日本化学会)」にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】392000888
【氏名又は名称】株式会社合同資源
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】松本 祥治
(72)【発明者】
【氏名】赤染 元浩
(72)【発明者】
【氏名】大谷 康彦
(72)【発明者】
【氏名】海宝 龍夫
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-080046(JP,A)
【文献】特開昭54-016395(JP,A)
【文献】特開昭54-014939(JP,A)
【文献】特開昭56-016437(JP,A)
【文献】特開2015-151354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 45/62
C07C 45/63
C07C 49/784
C07C 49/813
C07C 51/36
C07C 57/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式(1)に基づいてα,β-不飽和カルボニル化合物と、ヨウ化水素酸とを酸性下で混合させ、80~150℃で加熱することにより、ケトン化合物を製造することを特徴とするケトン化合物の製造方法。
【化1】
・・・・・・・・・・(1)
ここで、R1は、直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、未置換の芳香族基である。
2~R4は、何れか1以上が芳香族基であり、残りが水素原子、未置換の1価の脂肪族炭化水素である。
【請求項2】
α,β-不飽和カルボニル化合物に対してヨウ化水素酸を2当量以上混合させること
を特徴とする請求項1記載のケトン化合物の製造方法。
【請求項3】
上記混合させた後に2~48時間加熱すること
を特徴とする請求項1又は2記載のケトン化合物の製造方法。
【請求項4】
以下の化学式(1)に基づいてα,β-不飽和カルボニル化合物と、ヨウ化水素酸とを酸性下で混合させ、80~150℃で加熱することにより、カルボン酸誘導体を製造することを特徴とするカルボン酸誘導体の製造方法。
【化1】
・・・・・・・・・・(1)
ここで、R1は、水酸基、直鎖又は分岐状の炭素数1~12のアルコキシ基である。
2~R4は、何れか1以上が芳香族基であり、残りが水素原子、未置換の1価の脂肪族炭化水素である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケトン化合物の製造方法、カルボン酸誘導体の製造方法に関し、特に酸性条件下でヨウ化水素酸を利用するα,β-不飽和カルボニル化合物のオレフィン部位が還元され、簡便で、塩基性条件下で不安定な基質に使用でき、選択的な還元が可能なケトン化合物、カルボン酸誘導体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機化合物の還元反応は、多様な有機化合物を合成する上で重要な反応である。α,β-不飽和カルボニル化合物の還元反応は非常に多くの方法が報告されている。その例として、非特許文献1(Chem. Commun., 1980, 1013)に記載された水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)や、非特許文献2(J. Chem. Soc., 1968, 616)に記載された水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)といった汎用なヒドリド還元剤を用いた反応がある。また、非特許文献3(J. Org. Chem., 32, 2851 (1967))のようなアルカリ金属による一電子還元を用いた反応がある。一方、中性条件で反応させる方法として、非特許文献4(J. Org. Chem., 23, 1853 (1958))のようにPdやPtといった金属触媒を用いた水素添加反応がある。また、酸性条件での反応は報告が少なく、非特許文献5(Quar. Rev., 23, 522 (1969))や非特許文献6(Helv. Chim. Acta, 62, 2361 (1979))のように亜鉛を用いた方法が報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】T. Tsuda, T. Fujii, K. Kawasaki, T. Saegusa, Chem. Commun., 1980, 1013
【文献】K. Iqbal, W. R. Jackson, J. Chem. Soc., 1968, 616
【文献】H. A. Smith, B. J. L. Huff, W. J. Powers, III, D. Caine, J. Org. Chem., 32, 2851 (1967)
【文献】R. L. Augustine, J. Org. Chem., 23, 1853 (1958)
【文献】J. G. St. C. Buchanan, P. D. Woodgate, Quar. Rev., 23, 522 (1969)
【文献】A. Fischli, D. SussHelv. Chim. Acta, 62, 2361 (1979)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、還元反応で汎用に利用される水素化リチウムアルミニウムや水素化ホウ素ナトリウムといった試薬は多くは反応系が塩基性条件となることから、塩基に対して不安定な化合物には適用できなかった。また、中性条件で適用可能な金属触媒を用いた水素添加反応は、金属は触媒量でよいものの、希少金属であるため利用が限定される。さらに、酸性条件での反応として報告されている亜鉛を用いた反応については、反応後の亜鉛由来の残留物の除去が煩雑になり、副反応による副生成物が形成する場合がある。
【0005】
このように、反応条件による反応基質の制限や汎用性、後処理の煩雑さといった問題があり、塩基性条件下で不安定な化合物に適用可能な還元反応はほとんどなかった。
【0006】
本発明では、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、ヨウ化水素酸(HI)を利用することでα,β-不飽和カルボニル化合物のオレフィン部位が還元されたケトンやカルボン酸誘導体を合成することが可能なケトン化合物の製造方法、カルボン酸誘導体の製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るケトン化合物の製造方法、カルボン酸誘導体の製造方法は、ヨウ化水素酸のヨウ化物イオンによる求核能とヨウ化水素酸の還元能を利用し、α,β-不飽和カルボニル化合物へのヨウ化物イオンの付加によるヨウ素化体の形成と、加熱による還元によりケトン化合物やカルボン酸誘導体を製造するものである。ヨウ化水素酸は、酸性の試薬であり、従来の塩基性で不安定な基質や希少金属を用いて還元反応を行う必要が無くなり、ケトン化合物やカルボン酸誘導体を製造する上での新たな手法となりえるものである。
【0008】
本発明者らは、上述した課題を解決するために、ヨウ化水素酸を利用することでα,β-不飽和カルボニル化合物のオレフィン部位が還元されたケトン化合物を合成する方法について鋭意検討を行った。その結果、ヨウ化水素におけるヨウ化物イオンによる求核能とヨウ化水素の還元能を利用し、α,β-不飽和カルボニル化合物へのヨウ化物イオンの付加によるヨウ素化体の形成と、加熱による還元を通じてケトン化合物やカルボン酸誘導体を合成することができることを新たに見出した。
【0009】
第1発明に係るケトン化合物の製造方法は、以下の化学式(1)に基づいてα,β-不飽和カルボニル化合物と、ヨウ化水素酸とを酸性下で混合させ、80~150℃で加熱することにより、ケトン化合物を製造することを特徴とする。
【化1】
・・・・・・・・・・(1)
ここで、R1は、直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、未置換の芳香族基である。
2~R4は、何れか1以上が芳香族基であり、残りが水素原子、未置換の1価の脂肪族炭化水素である。
【0010】
第2発明に係るケトン化合物の製造方法は、第1発明において、α,β-不飽和カルボニル化合物に対してヨウ化水素酸を2当量以上混合させることを特徴とする。
【0011】
第3発明に係るケトン化合物の製造方法は、第1発明~第2発明の何れかにおいて、上記混合させた後に2~48時間加熱することを特徴とする。
【0012】
以下の化学式(1)に基づいてα,β-不飽和カルボニル化合物と、ヨウ化水素酸とを酸性下で混合させ、80~150℃で加熱することにより、カルボン酸誘導体を製造することを特徴とするカルボン酸誘導体の製造方法。
【化1】
・・・・・・・・・・(1)
ここで、R1は、水酸基、直鎖又は分岐状の炭素数1~12のアルコキシ基である。
2~R4は、何れか1以上が芳香族基であり、残りが水素原子、未置換の1価の脂肪族炭化水素である。
【発明の効果】
【0013】
上述した構成からなる本発明は、ヨウ化水素酸を添加することにより、酸性下で反応を行うことができるため、塩基性条件で不安定な基質に対しても適用可能である。また、市販の57 wt% HI水溶液からなるヨウ化水素酸を使用することができるため、汎用性を高めることが可能となる。さらに、ヨウ素化反応と還元反応とを同一容器にて行うことができるため、中間体の単離や精製が不要であり、後処理も1回でよい。ヨウ化水素酸による反応には、ケトン化合物に対して還元とヨウ素化が併発してヨウ素化物を生成する反応があるが、本手法ではオレフィンの還元のみが進行してケトン官能基が保たれる手法であり、選択的な還元反応を進行させることができる。
【0014】
また、上述した構成からなる本発明によれば、ヨウ化水素酸を用いたα,β-不飽和カルボニル化合物の還元反応を行わせる上で、添加剤としてリンを共存させる必要もなく、より簡便な方法で実現することができる。このため、本発明はより汎用性の高いα,β-不飽和カルボニル化合物から酸性条件下で、ケトン化合物、カルボン酸誘導体を合成することができる。また、本発明は、比較的に入手しやすいヨウ化水素酸を用いることで反応を行わせることができ、しかも希少金属を使用しないで選択的な還元反応が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るケトン化合物、カルボン酸誘導体の製造方法について詳細に説明する。
【0016】
本発明を適用したケトン化合物、カルボン酸誘導体の製造方法は、溶媒中で、以下の化学式(1)に基づいてα,β-不飽和カルボニル化合物と、ヨウ化水素酸とを混合する。
【0017】
【化1】
・・・・・・・・・・(1)
【0018】
ここで、R1は、ケトン化合物を構成する場合には、水素原子、置換されていてもよい1価の脂肪族炭化水素、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基である。
【0019】
1は、カルボン酸誘導体を構成する場合には、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、直鎖又は分岐状の炭素数1~12のアルコキシ基、フェノキシ基、置換されていてもよい炭化水素を有する窒素原子や酸素原子である。
【0020】
2~R4は、何れか1以上が芳香族基であり、残りが水素原子、置換もしくは未置換の1価の脂肪族炭化水素、置換もしくは未置換の1価の芳香環基である。
【0021】
1の脂肪族基は、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基を示す。脂肪族が置換されている場合には、置換基の数は、置換可能であれば特に制限はなく、1又は複数である。
【0022】
またR1の脂肪族基において、置換してもよい基としてはハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、直鎖又は分岐状の炭素数1~12のアルコキシ基等が挙げられる。
【0023】
芳香族基は、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、ビナフチル基、アズレニル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フラレニル基、チエニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ピリジル基、ベンゾフラニル基、インドリル基、ベンゾチアゾリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
【0024】
この芳香族基は置換されていてもよく、この場合の置換基の数は、置換可能であれば特に制限はなく、1又は複数である。
【0025】
また、芳香族基について、置換してもよい基としてはハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基、直鎖又は分岐状の炭素数1~12のアルコキシ基などが挙げられる。
【0026】
溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に限定されない。この溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等である。溶媒は、1種又は2種以上を適宜混合して用いてもよい。
【0027】
本発明を適用したケトン化合物、カルボン酸誘導体の製造方法における合成条件としては、α,β-不飽和カルボニル化合物と、ヨウ化水素酸とを酸性下で混合させる。ヨウ化水素酸を混合することで酸性条件下とすることが可能となる。ここでいう酸性とは、pHが7未満であり、望ましくはpHが1以下である。α,β-不飽和カルボニル化合物に対してヨウ化水素酸を2当量以上を混合する。反応温度は、溶媒の沸点以下の温度とされていることが望ましく、好適には80~150℃の範囲で加熱することが望ましい。反応時間は、2~48時間程度とされていることが望ましい。
【0028】
このようなケトン化合物、カルボン酸誘導体の製造方法について、以下の化学式(2)に基づいて説明する。
【0029】
【化2】
・・・・・・・・・・(2)
【0030】
式(2)に示すように、ヨウ化水素酸とα,β-不飽和カルボニル化合物を溶媒(ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、クロロホルム、ジオキサン、水)を利用して還流を行う。還流は80℃~150℃で加熱を行う。ヨウ化水素酸は、例えば、57重量%のヨウ化水素酸の水溶液を利用する。ヨウ化水素酸はα,β-不飽和カルボニル化合物に対して2.5当量混合させ、約8時間にわたり反応を進ませる。
【0031】
上述した方法からなる本発明によれば、強い酸性と高い還元性を示す試薬としてのヨウ化水素酸を利用することにより、α,β-不飽和カルボニル化合物から直接ケトン化合物及びカルボン酸誘導体を生成することができる。特に市販のヨウ化水素酸を用いて、汎用性が高い、簡便なプロセスで、選択的な還元反応が可能になる。
【0032】
上述した方法からなる本発明によれば、酸性条件で反応を進めることができる。このため、塩基性条件で不安定な基質に対しても使用可能である。
【0033】
以下、本発明の実施例について説明をする。実施例1~4は、1,2-ジフェニル-2-プロペン-1-オンを基質とした実施例であり、実施例5~6は、1,3-ジフェニル-2-プロペン-1-オンを基質とした実施例であり、実施例7は、1,3-ジフェニル-2-ブタン-1-オンを基質とした実施例であり、実施例8~9は、3-フェニル-2-プロペン酸を基質とした実施例である。以下、実施例1~9の条件をまとめた表1を示す。
【0034】
【表1】
各実施例の詳細について以下説明する。
【実施例1】
【0035】
1,2-ジフェニルプロパン-1-オンの合成
【化3】
【0036】
1,2-ジフェニル-2-プロペン-1-オン(0.208 g,1.01 mmol)と57wt%HI水溶液(0.560 g,2.50 mmol)、クロロベンゼン(5 mL)を加え、80℃で8時間撹拌した。反応後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(30 mL)を加え、クロロホルム(10 mL×3)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過後減圧濃縮することで1,2-ジフェニルプロパン-1-オンと3-ヨード-1,2-ジフェニルプロパン-1-オンの混合物(0.252 g)を得た。収率は、p-クロロベンズアルデヒドを内部標準として1H-NMRの積分比より1,2-ジフェニルプロパン-1-オンが48%、3-ヨード-1,2-ジフェニルプロパン-1-オンが48%と決定した。
【0037】
1,2-ジフェニルプロパン-1-オン:1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ1.53(d,J=6.8Hz,3H),4.69(q,J=6.9Hz,1H),7.18-7.23(m,1H),7.27-7.31(m,4H),7.36-7.40(t,J=7.3Hz,2H),7.45-7.50(tt,J=1.3,7.4Hz,1H)7.95(d,J=8.4Hz,2H).
【0038】
3-ヨード-1,2-ジフェニルプロパン-1-オン:1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ3.40(dd,J=5.6,9.7Hz,1H),3.92(t,J=9.4Hz,1H),5.01(dd,J=5.6,9.1Hz,1H),7.25-7.28(m,1H),7.29-7.35(m,4H),7.40(t,J=7.6Hz,2H),7.51(tt,J=1.3,7.5Hz,1H),7.95(d,J=7.2Hz,2H).
【実施例2】
【0039】
1,2-ジフェニルプロパン-1-オンの合成
【化4】
【0040】
1,2-ジフェニル-2-プロペン-1-オン(0.208 g,1.01 mmol)と57wt%HI水溶液(0.458 g,2.04 mmol)、クロロベンゼン(5 mL)を加え、100℃で8時間撹拌した。反応後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(30 mL)を加え、クロロホルム(10 mL×3)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過後減圧濃縮することで1,2-ジフェニルプロパン-1-オンと3-ヨード-1,2-ジフェニルプロパン-1-オンの混合物(0.259 g)を得た。収率は、p-クロロベンズアルデヒドを内部標準として1H-NMRの積分比より1,2-ジフェニルプロパン-1-オンが90%、3-ヨード-1,2-ジフェニルプロパン-1-オンが5%と決定した。
【実施例3】
【0041】
1,2-ジフェニルプロパン-1-オンの合成
【化5】
【0042】
1,2-ジフェニル-2-プロペン-1-オン(0.208 g,1.01 mmol)と57wt%HI水溶液(0.568 g,2.53 mmol)、トルエン(5 mL)を加え、還流条件(110℃)下8時間撹拌した。反応後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(30 mL)を加え、クロロホルム(10 mL×3)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過後減圧濃縮することで1,2-ジフェニルプロパン-1-オン(0.210 g)を得た。収率は、p-クロロベンズアルデヒドを内部標準として1H-NMRの積分比より97%と決定した。
【実施例4】
【0043】
1,2-ジフェニルプロパン-1-オンの合成
【化6】
【0044】
1,2-ジフェニル-2-プロペン-1-オン(0.209 g,1.00 mmol)と57wt%HI水溶液(0.560 g,2.49 mmol)、トルエン(5 mL)を加え、還流条件(110℃)下2時間撹拌した。反応後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(30 mL)を加え、クロロホルム(10 mL×3)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過後減圧濃縮することで1,2-ジフェニルプロパン-1-オンと3-ヨード-1,2-ジフェニルプロパン-1-オンの混合物(0.3014 g)を得た。収率は、p-クロロベンズアルデヒドを内部標準として1H-NMRの積分比より1,2-ジフェニルプロパン-1-オンが43%、3-ヨード-1,2-ジフェニルプロパン-1-オンが55%と決定した。
【実施例5】
【0045】
1,3-ジフェニルプロパン-1-オンの合成
【化7】
【0046】
1,3-ジフェニル-2-プロペン-1-オン(0.211 g,1.01 mmol)と57wt%HI水溶液(0.572 g,2.55 mmol)、トルエン(5 mL)を加え、還流条件(110℃)下8時間撹拌した。反応後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(40 mL)を加え、クロロホルム(10 mL×3)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過後減圧濃縮することで1,3-ジフェニルプロパン-1-オン(0.239 g)を得た。収率は、p-クロロベンズアルデヒドを内部標準として1H-NMRの積分比より85%と決定した。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ3.08(t,J=7.7Hz,2H),3.31(t,J=7.8Hz,2H),7.21(t,J=7.1Hz,1H),7.25-7.29(m,2H),7.29-7.32(m,2H),7.45(t,J=7.6Hz,2H),7.56(tt,J=1.3,7.4Hz,1H),7.96(d,J=7.1Hz,2H).
【実施例6】
【0047】
1,3-ジフェニルプロパン-1-オンの合成
【化8】
【0048】
1,3-ジフェニル-2-プロペン-1-オン(0.209 g,1.00 mmol)と57wt%HI水溶液(0.570 g,2.54 mmol)、o-キシレン(5 mL)を加え、還流条件(144℃)下2時間撹拌した。反応後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(40 mL)を加え、クロロホルム(10 mL×3)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過後減圧濃縮することで1,3-ジフェニルプロパン-1-オン(0.228 g)を得た。収率は、p-クロロベンズアルデヒドを内部標準として1H-NMRの積分比より91%と決定した。
【実施例7】
【0049】
1,3-ジフェニルブタン-1-オンの合成
【化9】
【0050】
1,3-ジフェニル-2-ブタン-1-オン(0.224 g,1.01 mmol)と57wt%HI水溶液(0.567 g,2.53 mmol)、トルエン(5 mL)を加え、還流条件(110℃)下8時間撹拌した。反応後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(30 mL)を加え、クロロホルム(10 mL×3)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過後減圧濃縮することで1,3-ジフェニルブタン-1-オン(0.226 g)を得た。収率は、p-クロロベンズアルデヒドを内部標準として1H-NMRの積分比より70%と決定した。
【0051】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ1.34(d,J=7.0Hz,3H),3.19(dd,J=8.3,16.0Hz,1H),3.30(dd,J=5.7,16.0Hz,1H),3.51(sext,J=7.0Hz,1H),7.17-7.21(m,1H),7.26-7.32(m,4H),7.44(t,J=7.6Hz,2H),7.54(t,J=7.4Hz,1H),7.93(d,J=7.1Hz,2H).
【実施例8】
【0052】
3-フェニルプロピオン酸の合成
【化10】
【0053】
3-フェニル-2-プロペン酸(0.150 g, 1.01 mmol))と57wt%HI水溶液(0.562 g, 2.50 mmol))、トルエン(5 mL)を加え、還流条件(110℃)下24時間撹拌した。反応後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(30 mL)を加え、クロロホルム(10 mL×3)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過後減圧濃縮することで3-フェニルプロピオン酸(0.159 g)を得た。収率は、p-クロロベンズアルデヒドを内部標準として1H-NMRの積分比より84%と決定した。
【0054】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ2.68(t,J=8.0Hz,2H),2.95(t,J=7.9Hz,2H),7.19-7.23(m,3H),7.25-7.31(m,2H).
【実施例9】
【0055】
3-フェニルプロピオン酸の合成
【化11】
【0056】
3-フェニル-2-プロペン酸(0.150 g,1.01 mmol)と57wt%HI水溶液(0.570 g,2.54 mmol)、トルエン(5 mL)を加え、還流条件(110℃)下48時間撹拌した。反応後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(30 mL)を加え、クロロホルム(10 mL×3)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過後減圧濃縮することで3-フェニルプロピオン酸(0.155 g)を得た。収率は、p-クロロベンズアルデヒドを内部標準として1H-NMRの積分比より85%と決定した。