(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】発熱式どんぶり弁当
(51)【国際特許分類】
A47J 36/28 20060101AFI20230911BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20230911BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20230911BHJP
【FI】
A47J36/28
B65D81/34 T
C12N1/20 E
(21)【出願番号】P 2019159436
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】502313406
【氏名又は名称】有限会社魚庄
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】園田 正弥
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-155812(JP,A)
【文献】特開2001-275588(JP,A)
【文献】特開2004-057758(JP,A)
【文献】特開2018-082680(JP,A)
【文献】実開昭60-065870(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-27/13
A47J 27/20-29/06
A47J 33/00-36/42
B65D 81/34
B65D 23/00-25/56
C12N 1/00- 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋付きのどんぶり形状の容器に、発熱材と、トレーと、密封された具材と、包装米飯と、が収納されている発熱式どんぶり弁当であって、
前記具材に含まれる水分量が20~40重量%であり、
前記米飯に含まれる水分量が60.0~68.0重量%であり、
前記発熱材の総発熱量が27~35kcalであり、
前記蓋と、前記どんぶり形状の容器と、前記トレーとが重なる部分の直径は、φ130~200mmであり、
前記どんぶり形状の容器の高さは80~120mmであり、
前記蓋の高さは10~30mmであ
り、
前記具材は、植物性乳酸菌ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L44株(特許微生物寄託センター受託番号:NITE P-02369)由来の抗菌液を含むように調製されている発熱式どんぶり弁当。
【請求項2】
前記米飯に使用される米の精米含水量は14.0~16.0重量%である請求項1に記載の発熱式どんぶり弁当。
【請求項3】
前記米の品種は、滋賀県産近江米みずかがみである請求項2に記載の発熱式どんぶり弁当。
【請求項4】
前記抗菌液は、植物性乳酸菌ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L44株(特許微生物寄託センター受託番号:NITE P-02369)を、グルコースと、酵母エキスと、ペプトンと、を含む培地を用いて培養し、培養液をオートクレーブ滅菌後、遠心分離処理により回収した上清である
請求項1~3の何れか一項に記載の発熱式どんぶり弁当。
【請求項5】
前記抗菌液は、植物性乳酸菌ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L44株(特許微生物寄託センター受託番号:NITE P-02369)の前記培養液又は前記上清の7.0~9.0倍濃縮液である
請求項4に記載の発熱式どんぶり弁当。
【請求項6】
前記具材は、100gあたりに、前記抗菌液を原液換算で30~40mL含むように調製されている
請求項1~5の何れか一項に記載の発熱式どんぶり弁当。
【請求項7】
密封容器に前記具材を封入した後、65~75℃で20~40分間加熱殺菌処理されている
請求項1~6の何れか一項に記載の発熱式どんぶり弁当。
【請求項8】
賞味期限を180日以上に設定してある
請求項1~7の何れか一項に記載の発熱式どんぶり弁当。
【請求項9】
前記具材は、焼肉丼、ステーキ丼、すきやき丼、親子丼、玉子丼、中華丼、天津丼、酢豚丼、八宝菜丼、麻婆丼、カレー丼、ハヤシ丼、ローストビーフ丼、スモークサーモン丼、及び鰻丼からなる群から選択される少なくとも一つである
請求項1~8の何れか一項に記載の発熱式どんぶり弁当。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋付きのどんぶり形状の容器に、発熱材と、トレーと、密封された具材と、包装米飯と、が収納されている発熱式どんぶり弁当に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、常温での長期保存が可能な加熱機能付き食品が知られている。
【0003】
特許文献1には、食品全体にむらなく水蒸気を行き渡らせて好適に加熱するために、密封可能な蓋付きの容器の底部に水蒸気加熱装置、その上に載置されている食品容器を備える水蒸気加熱装置付き食品が開示されている。
【0004】
この水蒸気加熱装置付き食品は、主食品と副食品とを袋等から取り出し、食品容器内に入れた状態で、水蒸気加熱装置から発生する加熱水蒸気を箱内に充満させて、食品を加熱する。この水蒸気加熱装置は、生石灰等の水と反応して発熱する発熱剤が入った袋と、水の入った袋とを備え、これらの袋の周囲に引き回されたひもを引っ張ることで、発熱剤と水とが反応することで発生した水蒸気が、食品にむらなく行き渡り、食品を温める。
【0005】
また、主食品には、米飯のような食品で、アルファ化された米からある程度水分を取り去った状態で密封されたものが使用されており、副食品には、カレー、ハヤシライス、又は牛丼のような、加圧加熱殺菌(レトルト)処理されることが可能な具材が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の水蒸気加熱装置付き食品は、非常用食品として用いられることから、アルファ化米が使用されている。アルファ化米は、炊飯直後の米飯に熱風をあてて、急速に乾燥させたものであり、一粒一粒の飯粒の形が若干崩れている。そのため、加熱水蒸気により温めても、所謂、米粒の立ったご飯とはならず、炊き立てのご飯のような状態にすることができなかった。また、アルファ化米を密封保存した場合、米飯全体がブロック状に固まっているため、水蒸気がご飯全体に行き渡らず、一部がパサつくことから、食べる前に全体をほぐす必要があった。
【0008】
また、このような水蒸気加熱装置付き食品に使用する具材としては、カレー、ハヤシライス、又は牛丼のような煮込み料理であって、加圧加熱殺菌(レトルト)処理に適したものに限られていた。そのため、レアステーキ、ローストビーフ、スモークサーモン等の半生状態のもの、鰻の蒲焼き等の崩れやすいもの等、食材の味や形を生かしたまま調理した具材は、加圧加熱殺菌(レトルト)処理には向いていないため、長期保存ができなかった。食材の味や形を損なわず、調理後の状態を保ったまま、長期保存され、何時でも何処でも簡単に、出来立てのような状態で賞味することができる、発熱式どんぶり弁当については、上記特許文献を含めて具体的に明らかにされている技術は殆ど見られない。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、加熱する具材に含まれる水分量と、米飯に含まれる水分量と、発熱材の総発熱量とを適切な条件とすることで、食品全体が均一に温まり、出来立てのような状態で賞味することができる発熱式どんぶり弁当を提供することを目的とする。また、加圧加熱殺菌(レトルト)処理には向いていない具材について、食材の味や形を損なうことなく、長期保存可能とした発熱式どんぶり弁当を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る発熱式どんぶり弁当の特徴構成は、
蓋付きのどんぶり形状の容器に、発熱材と、トレーと、密封された具材と、包装米飯と、が収納されている発熱式どんぶり弁当であって、
前記具材に含まれる水分量が20~40重量%であり、
前記米飯に含まれる水分量が60.0~68.0重量%であり、
前記発熱材の総発熱量が27~35kcalであることにある。
【0011】
本構成の発熱式どんぶり弁当によれば、水分量が60.0~68.0重量%である米飯に、水分量が20~40重量%である具材をのせ、総発熱量27~35kcalで加熱することで、10分程度で食品全体を満遍なく温めることが可能となる。また、炊飯後に密封され、一旦冷えてベータ化した米飯が、再度アルファ化され、炊き立てのご飯と同じ状態となる。さらに、ご飯にのせた具材も均一に温まるため、出来立てのような、美味しいどんぶり弁当を賞味することができる。
【0012】
本発明に係る発熱式どんぶり弁当において、
前記米飯に使用される米の精米含水量は14.0~16.0重量%であることが好ましい。
【0013】
本構成の発熱式どんぶり弁当によれば、包装米飯に使用される米の精米含水量が14.0~16.0重量%であると、炊飯前の米の吸水量が高くなるため、炊飯したときにつやと粘りのある美味しいご飯となる。炊飯後に密封され、一旦冷えてベータ化しても、所定の水分量と所定の総発熱量により、つやと粘りのある美味しいご飯に戻すことが可能となる。そのため、炊き立てご飯を使用したような、より美味しいどんぶり弁当を賞味することができる。
【0014】
本発明に係る発熱式どんぶり弁当において、
前記米の品種は、滋賀県産近江米みずかがみであることが好ましい。
【0015】
本構成の発熱式どんぶり弁当によれば、包装米飯に使用する米の品種を、滋賀県産近江米みずかがみとすることにより、炊き上がりが白く、光沢があり、適度な粘りと甘味のある米飯が得られる。そのため、見た目も美しく、さらに美味しいどんぶり弁当を賞味することができる。また、滋賀県産近江米みずかがみは、農薬や化学肥料の使用量が通常の半分以下であるため、より安全で安心な食品として、提供することができる。
【0016】
本発明に係る発熱式どんぶり弁当において、
前記具材は、植物性乳酸菌ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L44株(特許微生物寄託センター受託番号:NITE P-02369)由来の抗菌液を含むように調製されていることが好ましい。
【0017】
本構成の発熱式どんぶり弁当によれば、具材に植物性乳酸菌ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L44株(特許微生物寄託センター受託番号:NITE P-02369)由来の抗菌液を含むように調製されていることにより、枯草菌等のグラム陽性菌のみならず、大腸菌等のグラム陰性菌の増殖を抑制することができる。そのため、具材を加圧加熱殺菌処理することなく、長期保存することが可能となる。
【0018】
本発明に係る発熱式どんぶり弁当において、
前記抗菌液は、植物性乳酸菌ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L44株(特許微生物寄託センター受託番号:NITE P-02369)を、グルコースと、酵母エキスと、ペプトンと、を含む培地を用いて培養し、培養液をオートクレーブ滅菌後、遠心分離処理により回収した上清であることが好ましい。
【0019】
本構成の発熱式どんぶり弁当によれば、植物性乳酸菌ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L44株を、天然培地である、グルコースと、酵母エキスと、ペプトンと、を含む培地を用いて培養することにより、食品に使用しても安全な抗菌液を得ることができる。また、培養液をオートクレーブ滅菌後、遠心分離処理により培養液に含まれる菌体を除くことで、抗菌物質を高純度に含み、且つ、具材の味に影響しにくい抗菌液を得ることができる。
【0020】
本発明に係る発熱式どんぶり弁当において、
前記抗菌液は、植物性乳酸菌ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L44株(特許微生物寄託センター受託番号:NITE P-02369)の前記培養液又は前記上清の7.0~9.0倍濃縮液であることが好ましい。
【0021】
本構成の発熱式どんぶり弁当によれば、抗菌液を7.0~9.0倍濃縮液とすることで、具材の味が薄まることなく抗菌効果が得られ、長期保存が可能となる。
【0022】
本発明に係る発熱式どんぶり弁当において、
前記具材は、100gあたりに、前記抗菌液を原液換算で30~40mL含むように調製されていることが好ましい。
【0023】
本構成の発熱式どんぶり弁当によれば、前記具材は、100gあたりに、前記抗菌液を原液換算で30~40mL含むように調製されていることにより、抗菌効果が得られ、長期保存が可能となる。
【0024】
本発明に係る発熱式どんぶり弁当において、
前記密封容器に前記具材を封入した後、65~75℃で20~40分間加熱殺菌処理されていることが好ましい。
【0025】
本構成の発熱式どんぶり弁当によれば、密封容器に前記具材を封入した後、65~75℃で20~40分間加熱殺菌処理されていることで、加圧加熱殺菌処理に適しない具材についても、食材の味や形を損なわず、長期保存が可能となり、どんぶり弁当の具材として提供することができる。
【0026】
本発明に係る発熱式どんぶり弁当において、
賞味期限を180日以上に設定してあることが好ましい。
【0027】
本構成の発熱式どんぶり弁当によれば、賞味期限を180日以上に設定してあることにより、計画的な生産と販売が可能となるとともに、廃棄処分量を大幅に減らすことが可能となる。
【0028】
本発明に係る発熱式どんぶり弁当において、
前記具材は、焼肉丼、ステーキ丼、すきやき丼、親子丼、玉子丼、中華丼、天津丼、酢豚丼、八宝菜丼、麻婆丼、カレー丼、ハヤシ丼、ローストビーフ丼、スモークサーモン丼、及び鰻丼からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0029】
本構成の発熱式どんぶり弁当によれば、どんぶり弁当のバリエーションを多く取り揃えることにより、消費者の選択肢を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明の発熱式どんぶり弁当の一実施形態の構成を示す内部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明者は、発熱式どんぶり弁当において、具材に含まれる水分量と、米飯に含まれる水分量と、発熱材の総発熱量とを適切な条件とすることで、炊飯後包装され、一旦冷えてベータ化した米飯をアルファ化させることができるとともに、ご飯にのせた具材も均一に温まり、出来立てのようなどんぶり弁当とすることができることを見出した。また、加圧加熱殺菌(レトルト)処理に適しないどんぶりの具材であっても、植物性乳酸菌由来の抗菌液を加えることにより、食材の味や形を損なわずに、長期保存が可能になるとの知見が得られた。
【0032】
以下、本発明に係る発熱式どんぶり弁当に関する実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載されている構成に限定されることを意図しない。
【0033】
[蓋付きのどんぶり形状の容器]
図1に示されるように、発熱式どんぶり弁当1の容器は、蓋13と、どんぶり形状の容器10と、食品を入れるトレー11とを備える。どんぶり形状の容器10の底部には、発熱材20が載置され、トレー11の上には、密封された具材30と包装米飯40とが収納されている。蓋13は、食品を温める際に水蒸気が逃げないように容器全体を密閉するために使用される。蓋13は、どんぶり形状の容器10から完全に取り外すことができるものであってもよいし、蓋13の一部分がトレー11又はどんぶり形状の容器10と連結していてもよい。また、蓋13、どんぶり形状の容器10、又はトレー11の素材は、プラスチック、アルミニウム、紙、木材、陶器であってもよく、プラスチックであることが最も好ましい。どんぶり形状の容器10の形状は、どんぶり形状のほか、円形や四角形のカップ形状であってもよい。また、トレー11には、発熱材20から発生する水蒸気により、食品全体を満遍なく温めるために、蒸気口12を2箇所以上設けることが好ましい。蓋13と、どんぶり形状の容器10と、トレー11とが重なる部分の直径は、φ130~200mmであることが好ましい。また、どんぶり形状の容器10の高さは80~120mmであることが好ましい。トレー11の高さは40~60mmであることが好ましい。蓋13の高さは10~30mmであることが好ましい。
【0034】
発熱式どんぶり弁当1において、食品を温める際は、先ず、蓋13を開け、密封された具材30と包装米飯40とを取り出す。次に、包装米飯40を開封し、米飯をトレー11に入れ、さらに、密封された具材30を開封し、具材を米飯の上にかける。次に、蓋13を閉じ、発熱材20の紐23をゆっくり引っ張ると、発熱材20から高温の水蒸気が発生し、トレー11の蒸気口12を通って水蒸気が容器内に充満し、具材と米飯とが温められる。
【0035】
[発熱材]
発熱材20は、発熱剤21と水袋22とから構成されている。水袋22の端部には、紐23が取り付けられており、この紐23を引っ張ると水袋22が破れ、流れ出た水と発熱剤21とが接触することにより発熱する。発熱材20に使用される発熱剤21について特に限定はないが、生石灰とアルミニウムとを含むものが好ましい。発熱量が高く、また、悪臭や有害な物質が発生しないからである。発熱剤21は、不織布のような通気性のある袋に充填され、さらに金属箔等の非透水性で密封性の高い袋に封入されていることが好ましい。発熱剤21に含まれる粉体生石灰は15~30重量%であることが好ましく、粉体アルミニウムは70~85重量%であることが好ましい。発熱剤21の重量に対して、1.8~3.0倍量の水を接触させることが好ましい。また、発熱材20による総発熱量は、27~35kcalであることが好ましい。総発熱量が27kcal未満であると、食品全体が温まらず、部分的に食品が冷たくなってしまうため、出来立てのどんぶり弁当のような状態とすることができなくなる虞がある。また、総発熱量が35kcalを超えると、食品が温まりすぎて、レアステーキやローストビーフ、スモークサーモンのような半生状態の具材が、過度に加熱され、食味が変わってしまう虞がある。また、やけどの危険性も高まる虞がある。
【0036】
[具材]
どんぶり弁当に使用する具材30は、特に限定はないが、焼肉丼、ステーキ丼、すきやき丼、親子丼、玉子丼、中華丼、天津丼、酢豚丼、八宝菜丼、麻婆丼、カレー丼、ハヤシ丼、ローストビーフ丼、スモークサーモン丼、及び鰻丼の具材であることが好ましい。また、どんぶりの具材の他、使用する素材の食感を生かした雑炊、おじや、リゾット等であってもよい。具材30は、加圧加熱殺菌処理をしてもよいが、後述する植物性乳酸菌ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L44株由来の抗菌液を加える場合は、具材を密封した後、70℃で20分程度の加熱殺菌処理を行えば、加圧加熱殺菌処理と同様の効果が得られる。抗菌液を具材に使用することにより、加圧加熱殺菌処理に適しない具材であっても、食材の味や形を損なうことなく、調理後の状態を保ったまま、長期保存が可能となる。また、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L44株由来の抗菌液を食酢等に所定量加えてマリネ液を調製し、食材とマリネ液とを密封容器に入れて真空包装した場合、必ずしも加熱殺菌処理を実施しなくとも、調理後の状態を保ったまま、ある程度の期間は保存が可能となる。また、具材30の密封容器は、プラスチックフィルム、金属箔であってもよく、これらを多層に合わせたものであってもよい。
【0037】
[包装米飯]
包装米飯40に使用される米飯の水分量は、好ましくは60.0~68.0重量%であり、より好ましくは62~65重量%である。米飯の水分量が60.0重量%未満となると、硬めでパサついた触感となり、食味が悪くなる虞がある。また、68重量%を超えると、ベタついて飯粒同士が繋がってしまい、具材が米飯全体になじみ難くなる虞がある。また、飯粒の形が崩れるので、見た目も悪くなる虞がある。
【0038】
包装米飯40に使用する米は、精米含水量が14.0~16.0重量%であることが好ましい。精米含水量が14.0重量%未満となると、炊飯前の吸水時に米がヒビ割れを起こし、炊飯する時にデンプンが糊となって流れ出るため、ベタついた米飯となり、食味が悪くなる虞がある。精米含水量が16.0重量%を超えると、カビ汚染等により、米が変質し、食味が悪くなる虞がある。米の産地は、日本国産であることが好ましい。包装米飯40に使用する米の品種は特に限定はないが、好ましくは、みずかがみ、近江米、コシヒカリ、キヌヒカリ、日本晴れ、ヒノヒカリ、ひとめぼれ、ゆめみずほ、あきたこまち、各県が開発した食用米等であり、より好ましくは、滋賀県産近江米みずかがみである。
【0039】
包装米飯40は、米飯が気密な容器に包装された、常温での長期保存が可能なものである。包装米飯40は、無菌室内で炊飯と包装を行う無菌化包装米飯であっても、米飯を包装後に加圧加熱殺菌処理を行うレトルト米飯でもあってもよいが、炊き立ての米飯の食感を保つためには、無菌化包装米飯であることがより好ましい。
【0040】
[植物性乳酸菌]
植物性乳酸菌であるラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L44株は、市販の漬物に含まれる乳酸菌の中から、単離同定されたものである。ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L44株は、2016年10月5日付けで、受託番号NITE P-02369として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託されている。漬物には、ラクトバチルス・プランタラムの他、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)のような植物性乳酸菌が存在していることが知られている。なお、これらの植物性乳酸菌は整腸作用の他、免疫力を高める作用があることから、ヨーグルトや飲料等の食品に使用されている。
【0041】
[抗菌液]
抗菌液としては、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L44株の培養液をそのまま使用してもよいし、培養液をオートクレーブ滅菌し、遠心分離処理により得られる上清を使用してもよい。L44株を培養するための培地は、食用として使用することができる成分のみから構成されていることが必要であり、例えば、グルコースと、酵母エキスと、ペプトンとを含む培地(GYP培地)を用いて培養されることが好ましい。グルコース、酵母エキス、及びペプトンは、食品用に用いられるものであれば、特に限定されず、市販のものを使用することができる。
【0042】
通常、植物性乳酸菌の培養液は、枯草菌(Bacillus subtilis)やセレウス菌(Bacillus cereus)のようなグラム陽性菌に対しては、抗菌作用を有するが、大腸菌(Escherichia coli)のようなグラム陰性菌に対しては抗菌作用を有さない。しかしながら、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L44株の培養液は、大腸菌のようなグラム陰性菌に対しても抗菌作用を有し、エルシニア菌(Yersinia enterocolitica)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)にも抗菌作用を有する。このようなL44株の培養液の抗菌作用は、L44株が増殖過程において産生する特有の抗菌ペプチドによるものと考えられている。L44株の培養液は、pH6以下において、優れた抗菌作用を発揮することができる。
【0043】
「抗菌液」は、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L44株の培養方法によって特定され得る。抗菌液に含まれる特有の抗菌ペプチドは、L44株の培養条件によって異なり、多種多様でもあることから、ペプチド一般式(構造)で表すことは到底できず、また、抗菌液を構成する極めて多種多様のペプチドのうち、どのペプチドが抗菌作用に寄与するのかについて、分析・特定することが不可能である。即ち、抗菌液は、その構造又は特性により直接特定することが不可能であり、抗菌液を得るためのプロセス(製法)によって初めて特定することが可能なものである。本願出願時において当該「抗菌液」をその構造又は特性により直接特定することは、実質的に不可能であり、実際的ではない。
【0044】
抗菌液は、具材100gあたりに、抗菌液の原液換算で30~40mL含むように調製されていることが好ましい。30mL未満であると、抗菌作用が十分でなくなり、長期保存が困難となる。また、40mLを超えても、抗菌効果は期待するほど向上せず、経済的ではない。さらに抗菌液の含有量が多くなると、具材の味が薄まる虞がある。具材に含まれる抗菌液は、具材の味が変化することを避けるために、抗菌液の濃縮液(例えば、7.0~9.0倍の濃縮液)が使用されることが好ましい。抗菌液の濃縮は、煮沸濃縮、真空濃縮、凍結濃縮のいずれの方法で行ってもよい。後述するように、抗菌液は、煮沸濃縮によっても、抗菌作用は保たれるため、熱耐性の抗菌物質が存在しているものと考えられる。なお、抗菌液は、具材のみならず、包装米飯に含まれていてもよい。
【0045】
[加熱殺菌処理]
加熱殺菌処理は、調理後の具材に含まれる食中毒の原因となる細菌を全て死滅させるために行われる。長期保存用の食品の主な加熱殺菌処理としては、加圧加熱殺菌処理(レトルト処理)が行われており、具材を容器に入れて密封した後、食品衛生法で定められた、「中心温度120℃4分相当以上」の加熱処理が行われる。加圧加熱殺菌処理は、煮込み料理には適しているが、その他の料理については、食材の形状が損なわれたり、味が変化してしまう虞がある。本発明において、具材にラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L44株由来の抗菌液を所定量加えることにより、具材を密封容器に入れて真空包装した後、65~75℃で20~40分間加熱殺菌処理されることで、調理後の状態を保ったまま常温での長期保存が可能となる。加熱温度を65~75℃に抑えることで、例えば、卵製品では柔らかな状態に調理することが可能となる。また、「常温」とは、15~30℃であることを意味する。具材中に食中毒の原因となる細菌が存在するか否かについての判定(品質評価試験)は、具材を真空包装後、常温で5日間保管し、具材の入った容器が膨らんできたり、具材の色が変化したり、臭いが発生したりしないかを確認することにより行う。常温で5日間経過しても、特に変化がない場合は、抗菌効果が発揮されており、180日以上の常温保存が可能である。
【0046】
[賞味期限]
賞味期限とは、袋や容器を開けないままで、書かれた保存方法を守って保存していた場合に、この「年月日」まで、「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」のことである。本発明における「賞味期限を180日以上に設定」とは、直射日光、多湿を避けて、常温で180日以上品質を保つことができることを意味する。また、具材を冷蔵保存(4~8℃)することにより、賞味期限をさらに延長することもできる。金属箔や、プラスチックフィルムと金属箔を多層に合わせた容器に密封された具材であれば、さらに賞味期限を延長することも可能である。
【実施例】
【0047】
具材に使用する抗菌液は、以下の方法により得られた。ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L44株(NITE P-02369)を、5mLのGYP培地(グルコース1%、酵母エキス1%、ペプトン0.5%)に植菌し、30℃で12時間、静置して前培養を行った。前培養液を25μL採取し、50mLのGYP培地に加え、30℃で4日間、静置して本培養を行った。本培養液をオートクレーブにより滅菌を行い(121℃、15分間)、遠心分離(8000rpm、10分間)後、菌体を除いた上清を抗菌液として使用した。
【0048】
[官能評価試験]
官能評価試験においては、どんぶり弁当を発熱材で加熱し、「出来立て(あつあつ)感」、「具材の素材感」、「米飯のもちもち感」、及びこれらを総合して、5人のパネラーにより3段階の採点評価を行った。点数が高い方が、評価の高いどんぶり弁当となるものとした。また、官能評価試験は、具材を真空包装してから180日経過後に行った。
【0049】
[実施例1]
具材として、鶏そぼろカレーを使用した。調理方法としては、潰してみじん切りにしたにんにく3片を、オリーブオイルを入れたフライパンで弱火で炒め、香りが出てきたところで、みじん切りにした玉ねぎ600gを加え、5分程度中火で炒めた。次に、鶏ひき肉360gを加え、焼き色が付くまで炒め、小麦粉36gを振り入れ、さらに炒めた。次に、水煮トマト600gを加え、トマトの酸味がなくなるまで炒めた。次に、ひよこ豆の水煮240gを加えて混ぜ合わせ、カレー粉18gとコリアンダーパウダー18gとクミンパウダー9gとターメリック9gを合わせた香辛料と顆粒コンソメ6gとを加え、10分程度煮込んで水分量が25重量%くらいになってきたところで、ガラムマサラ6gを加え、火を止めた。調理後の具材を180gずつ、5パックのプラスチックフィルム(藤森工業株式会社製 レトルト用(白ベタ)T-35 200cc)に夫々真空密封し、120℃で20分間、加熱殺菌処理を行なった。常温保存にて180日経過後、蓋付きのどんぶり形状の容器のトレーの上に、水分量が64重量%である滋賀県産近江米みずかがみレトルトごはん1パック200g(JAグリーン近江製)を入れ、さらに上記密封された具材を開封して入れ、蓋を閉じて発熱材により加熱した。発熱材として、モーリアンヒートパック(登録商標)25g(総発熱量:約29.8kcal)(株式会社協同製)を使用した。どんぶり形状の容器として、丸丼(本体φ180mm×高さ95、トレーφ180mm×高さ50mm:株式会社ヨシザワ製)を使用した。加熱後のどんぶり弁当について、官能評価試験を行った。
【0050】
[実施例2]
具材として、サイコロステーキを使用した。調理方法としては、近江牛270gを2cm角のサイコロ状にカットし、表面に焼き色がつくまでフライパンで焼き、ミディアムレアの状態とした。フライパンから、ステーキ肉を一旦取り出し、乱切りしたニンジン42g、ジャガイモ60g、赤パプリカ48g、黄パプリカ48g、長ネギ102gを、全体に火が通るまで炒めた。次に、角切りした赤こんにゃく42g、小分けにしたエリンギ90g、薄切りした玉ねぎ144gを食感が残る程度にさっと炒め、サイコロステーキと合わせ、ステーキ用調味料222gを加え、沸騰したところで火を止めた。調理後の具材を180gずつ、5パックのプラスチックフィルム(藤森工業株式会社製 レトルト用(白ベタ)T-35 200cc)に入れ、夫々の具材を入れたパックに、煮沸濃縮により得られた8倍濃縮の抗菌液を8.1mL(原液換算64.8mL。具材100gあたり、抗菌液を原液換算で36mL)含まれるように添加した。具材の水分量は25重量%であった。具材を入れたプラスチックフィルムを真空密封し、70℃で20分間、加熱殺菌処理を行なった。後に説明する品質評価試験において、具材に臭いや色の変化が生じないか確認した。品質評価試験において、変化がみられなかった具材について、常温保存にて180日経過後、実施例1と同様の条件とし、加熱後のどんぶり弁当について、官能評価試験を行った。
【0051】
[実施例3]
具材として、鰻の蒲焼きを使用した。調理方法としては、下処理した国産ウナギ100gを、炭火で焼き色がつくまで両面を焼き、鰻たれ50mLを加えて、鰻がふっくらとなるまで、弱火で煮た。鰻たれは、25mLの酒、10mLの本みりん、5mLのだし醤油、30mLの濃口醤油、10gのザラメ、5gのきび砂糖を合わせた調味料を弱火で煮詰めたものを使用した。調理後の具材を180gずつ、5パックのプラスチックフィルム(藤森工業株式会社製 レトルト用(白ベタ)T-35 200cc)に入れ、夫々の具材を入れたパックに、煮沸濃縮により得られた8倍濃縮の抗菌液を8.1mL(原液換算64.8mL。具材100gあたりに、抗菌液を原液換算で36mL)含まれるように添加した。具材の水分量は25重量%であった。プラスチックフィルムに真空密封し、70℃で20分間、加熱殺菌処理を行なった。後に説明する品質評価試験において、具材に臭いや色の変化が生じないか確認した。品質評価試験において、変化がみられなかった具材について、常温保存にて180日経過後、実施例1と同様の条件とし、加熱後のどんぶり弁当について、官能評価試験を行った。
【0052】
[比較例1]
具材として、鶏そぼろカレーを使用した。調理方法としては、具材の水分量が15重量%であること以外は、実施例1と同様とした。調理後の具材の真空密封の方法、加熱殺菌処理、包装米飯、どんぶり形状の容器、トレー、及び発熱材については、実施例1と同様とした。また、実施例1と同様の条件で官能評価試験を行った。
【0053】
[比較例2]
具材として、鶏そぼろカレーを使用した。調理方法、調理後の具材の真空密封の方法、加熱殺菌処理、具材、包装米飯、どんぶり形状の容器、トレーについては、実施例1と同様とした。使用する発熱材として、モーリアンヒートパック(登録商標)20g(総発熱量:約23.8kcal)(株式会社協同製)を使用した。その他は、実施例1と同様の条件で官能評価試験を行った。
【0054】
[比較例3]
具材として、鶏そぼろカレーを使用した。使用する包装米飯として、水分量が60重量%未満と推定される市販のレトルトご飯を使用した。調理方法、調理後の具材の真空密封の方法、加熱殺菌処理、具材、どんぶり形状の容器、トレー、及び発熱材については、実施例1と同様とした。その他は、実施例1と同様の条件で官能評価試験を行った。
【0055】
官能評価試験(実施例1~3、及び比較例1~3)において、「出来立て(あつあつ)感」、「具材の素材感」、「米飯のもちもち感」、及びこれらを総合して、5人のパネラーにより3段階の採点評価を行った。点数が高い方が、評価の高いどんぶり弁当となるものとした。
【0056】
出来立て感 具材の素材感 米飯のもちもち感 総合
実施例1 15 13 15 14
実施例2 15 15 15 15
実施例3 15 15 15 15
比較例1 10 10 10 10
比較例2 5 10 5 8
比較例3 10 15 5 8
【0057】
実施例1(具材の水分量が25重量%、米飯の水分量が64重量%、発熱材の総発熱量が29.8kcal)においては、「出来立て(あつあつ)感」、「具材の素材感」、「米飯のもちもち感」、及び「総合」とも高評価であり、「そぼろやひよこ豆の食感が生きている」、「ご飯が炊き立てのようだ」、「出来立てみたいでとても美味しい」とのコメントがみられた。一方で、比較例1(具材の水分量が15重量%)においては、実施例1ほどの高評価は得られず、「美味しいが、具材が若干パサついている」、「ご飯に具材が馴染んでいない」、「カレー丼というよりはドライカレー」といったコメントがみられた。また、比較例2(発熱材の発熱量が23.8kcal)においては、「出来立て感」「米飯のもちもち感」の評価が低く、「温まっていないところがある」、「あつあつ、出来立てではない」とのコメントがみられた。さらに、比較例3(水分量が60重量%未満と推定される市販の包装米飯を使用)においては、「米飯のもちもち感」の評価が低く、「炊き立ての感じはしない」、「固くなった冷飯をレンジで温めた感じ」といったコメントがみられた。
【0058】
実施例2(具材100gあたりに、抗菌液を原液換算で36mL含まれるように添加したサイコロステーキ)においては、「出来立て(あつあつ)感」、「具材の素材感」、「米飯のもちもち感」、及び「総合」とも高評価であり、「肉全体が温かいが、レア部分がちゃんと残っている」、「柔らかくてジューシーである」、「ご飯との相性がよい」とのコメントがみられた。また、実施例3(具材100gあたりに、抗菌液を原液換算して36mL含まれるように添加した鰻の蒲焼)においても、すべて高評価であり、「鰻の蒲焼が全く崩れていない」、「加熱しているときから、炭火の良い香りが漂ってきた」、「ふわっとした食感で美味しい」といったコメントがみられた。従って、具材に含まれる水分量、米飯に含まれる水分量、発熱材の総発熱量を適切な条件とすることで、出来立てのようなどんぶり弁当を賞味することができることが示された。
【0059】
[品質評価試験]
品質評価試験においては、具材を真空包装した後、常温で5日間保管し、具材の劣化を視覚と嗅覚で確認した。「具材の形状や色の変化」、「臭いの発生」、「ガス発生による包装パックの膨張」のあり(+)なし(-)で評価した。一つでも(+)があれば、腐敗と判定した。
【0060】
[参考例1]
具材として、サイコロステーキを使用した。調理方法としては、具材180gに煮沸濃縮により得られた8倍濃縮の抗菌液を5.4mL(原液換算43.2mL。具材100gあたりに、抗菌液を原液換算で24mL)含まれるように添加したこと以外は、実施例2と同様の方法により行った。調理後の具材の真空密封の方法、加熱殺菌処理、包装米飯、どんぶり形状の容器、トレー、及び発熱材については、実施例2と同様とした。品質評価試験において、実施例2と同様に、具材に臭いや色の変化が生じないか確認した。
【0061】
[参考例2]
具材として、サイコロステーキを使用した。調理方法としては、具材に抗菌液が含まれないこと以外は、実施例2と同様の方法により行った。調理後の具材の真空密封の方法、加熱殺菌処理、包装米飯、どんぶり形状の容器、トレー、及び発熱材については、実施例2と同様とした。品質評価試験において、実施例2と同様に、具材に臭いや色の変化が生じないか確認した。
【0062】
[参考例3]
具材として、鰻の蒲焼を使用した。調理方法としては、具材180gに煮沸濃縮により得られた8倍濃縮の抗菌液を5.4mL(原液換算43.2mL。具材100gあたりに、抗菌液を原液換算で24mL)含まれるように添加したこと以外は、実施例3と同様の方法により行った。調理後の具材の真空密封の方法、加熱殺菌処理、包装米飯、どんぶり形状の容器、トレー、及び発熱材については、実施例3と同様とした。品質評価試験において、実施例3と同様に、具材に臭いや色の変化が生じないか確認した。
【0063】
[参考例4]
具材として、鰻の蒲焼を使用した。調理方法としては、具材に抗菌液が含まれないこと以外は、実施例3と同様の方法により行った。調理後の具材の真空密封の方法、加熱殺菌処理、包装米飯、どんぶり形状の容器、トレー、及び発熱材については、実施例3と同様とした。品質評価試験において、実施例3と同様に、具材に臭いや色の変化が生じないか確認した。
【0064】
品質評価試験(実施例2、3、参考例1~4)において、具材の劣化を確認した。「具材の形状や色の変化」、「臭いの発生」、「ガス発生による包装パックの膨張」のあり(+)なし(-)で評価した。一つでも(+)があれば、腐敗と判定した。なお、腐敗と判定された具材については、当然ながら、官能評価試験は行わなかった。
【0065】
具材の形状や色の変化 臭いの発生 包装パックの膨張
実施例2 - - -
実施例3 - - -
参考例1 - - +
参考例2 + + +
参考例3 - - +
参考例4 + + +
【0066】
実施例2(具材100gあたりに、抗菌液を原液換算で36mL含まれるように添加したサイコロステーキ)においては、常温にて5日間保管しても、見た目に変化は生じず、またガス発生による包装パックの膨張や臭いの発生もみられなかった。また、常温にて180日間保管しても、同様であった。一方で、参考例1(具材100gあたりに、抗菌液を原液換算で24mL含まれるように添加したサイコロステーキ)においては、常温にて5日間保管したところ、ガスの発生により包装パックが膨張していた。また、抗菌液を含まない参考例2については、サイコロステーキの色に濁りが生じ、包装パックが膨張していた。開封してみたところ、酸臭が発生していた。そのため、参考例1及び2については、官能評価試験は行わなかった。
【0067】
実施例3(具材100gあたりに、抗菌液を原液換算で36mL含まれるように添加した鰻の蒲焼)においては、常温にて5日間保管しても、見た目に変化は生じず、またガス発生による包装パックの膨張や臭いの発生もみられなかった。また、常温にて180日間保管しても、同様であった。一方で、参考例3(具材100gあたりに、抗菌液を原液換算で24mL含まれるように添加した鰻の蒲焼)においては、常温にて5日間保管したところ、ガスの発生により包装パックが膨張していた。また、抗菌液を含まない参考例4については、鰻全体に濁りが生じ、包装パックが膨張していた。開封してみたところ、腐敗臭が発生していた。そのため、参考例3及び4については、官能評価試験は行わなかった。
【0068】
従って、植物性乳酸菌ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L44株由来の抗菌液を使用することで、加圧加熱殺菌処理に向かない食材であっても、常温での長期保存が可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る発熱式どんぶり弁当は、パーキングエリア、駅、空港での販売や、贈答用として利用することができる。また、アウトドアや支援物資としても利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 発熱式どんぶり弁当
10 どんぶり形状の容器
11 トレー
13 蓋
20 発熱材
30 具材
40 包装米飯