(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】セラミック原料コンパウンドの製造方法及び当該方法で得られたセラミック原料コンパウンドを用いたセラミック物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/634 20060101AFI20230911BHJP
C04B 35/488 20060101ALI20230911BHJP
A61K 6/802 20200101ALI20230911BHJP
A61K 6/884 20200101ALI20230911BHJP
【FI】
C04B35/634
C04B35/488
A61K6/802
A61K6/884
(21)【出願番号】P 2020018535
(22)【出願日】2020-02-06
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】391003576
【氏名又は名称】株式会社トクヤマデンタル
(72)【発明者】
【氏名】橋本 明香里
(72)【発明者】
【氏名】中島 慶
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0065259(US,A1)
【文献】特開平10-279364(JP,A)
【文献】特開2001-278670(JP,A)
【文献】特開2009-269812(JP,A)
【文献】特開平08-067571(JP,A)
【文献】特開2010-031011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/05
C04B 35/107
C04B 35/622-35/84
A61K 6/00 - 6/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結可能なセラミック原料無機粉体(A):100質量部、及び分子内に
複数の重合性基を有する
か、又は1つの重合性基と少なくとも1つの水素結合性基を有する、分子量が50以上1000以下の有機化合物からなる重合性単量体(B):1質量部以上25質量部未満、を含むセラミック原料コンパウンドの製造方法であって、
前記セラミック原料無機粉体(A)100質量に対して、1質量部以上25質量部未満となる量の前記重合性単量体(B)が有機溶媒(C)に溶解したモノマー溶液(D)と、前記セラミック原料無機粉体(A)100質量部と、を混合して、前記セラミック無機粉体(A)が前記モノマー溶液(D)中に分散したスラリーを調製するスラリー化工程、及び
前記スラリー化工程で得られた前記スラリーから前記有機溶媒(C)を除去する溶媒除去工程、
を含んでなることを特徴とする、前記セラミック原料コンパウンドの製造方法。
【請求項2】
前記セラミック原料コンパウンドが重合開始剤を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セラミック原料コンパウンドが粉粒体である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1乃至
3の何れか一項に記載の方法によりセラミック原料コンパウンド粉粒体を製造する工程、
前記工程で得られたセラミック原料コンパウンド粉粒体を成形し、所定の形状を有するグリーン体を得る成形工程、及び
前記成形工程で得られたグリーン体を直接又は脱脂処理後に焼結する焼結工程
を含んでなることを特徴とする、セラミック製物品の製造方法。
【請求項5】
請求項
4に記載の方法によりジルコニア歯科用ミルブランクを製造する、ジルコニア歯科用ミルブランクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック製歯科加工用ミルブランク等のセラミック製物品を製造する際に好適に使用されるセラミック原料コンパウンドの製造方法、及び当該方法で得られたセラミック原料コンパウンドを用いてセラミック物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック物品の製造は一般的に、セラミック無機粉体と有機バインダーを含む組成物(複合物:コンパウンド)を調製し、これを目的とする形状に成形してから有機バインダーを除去し、更に焼結することによって製造されている。有機バインダーとしては、ポリビニルアルコールやエチレン樹脂、パラフィンなどのワックスといった有機樹脂を用いるのが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1には、「有機バインダーとジルコニアを含有する成形体とアルカリ水溶液とを接触するアルカリ処理工程、及び、成形体を焼結する焼結工程、を有することを特徴とするジルコニア焼結体の製造方法」に関する発明が記載されており、具体的には、ジルコニア粉末とオレフィン樹脂系有機バインダーとを170℃で混練してコンパウンドを得、得られたコンパウンドを射出成形して成形体を得た後に、これをアルカリ水溶液で処理してから大気中、450℃で脱脂し、更に大気中1500℃で2時間焼結してジルコニア焼結体を得たことが記載されている。また、特許文献2には、「焼結可能な金属またはセラミックスからなる無機系微粉末と有機系バインダー樹脂とを混練してコンパウンドを作製する工程と、次いで、このコンパウンドを射出成形して成形体を形成する工程と、次いで、得られた成形体をアルカリ性水溶液中に保持し、選択的にバインダー樹脂を加水分解除去して、脱脂体を得る工程と、次いで、この脱脂体を焼結し、粉末焼結体を得る工程とを有することを特徴とする粉末焼結体の製造方法」に関する発明が記載されている。
【0004】
一方、デジタル技術の進歩により、所謂3Dプリンターなどを用いた光造形技術により得られた成形体を焼結することによりセラミックス物品を得る方法も知られている。たとえば特許文献3には、歯科材料形成用のジルコニア成形体の製造方法であって、ジルコニア粒子、重合性単量体及び光重合開始剤を含む組成物を用いて光造形する工程を有し、ジルコニア粒子の平均一次粒子径が30nm以下であり、ジルコニア粒子の単分散度が50%以上である、製造方法が記載されている。ここで、光造形とは上記組成物に光を照射することにより局所的に層を硬化させて成形体を一層ずつ順次形成していく技術であり、目的とする対象物(人工歯等)の3次元形状に対応した3次元CADデータに基づく一層毎のスライスデータに従って光を照射することで、所望の形状を有する成形体を得ることができるとされている。なお、特許文献3の具体例では、上記組成物として、水にジルコニア微粒子が分散した水系ジルコニアスラリーに有機溶媒を添加してから共沸により水を除去することにより、分散媒を水から有機溶媒に置換した有機系スラリーとしてから重合性単量体と混合するといった煩雑な方法で得られたものが使用され、更に光造形後も長時間(5日間)乾燥した後に400℃に加熱して仮焼体を得、更にそれを1050℃で焼結することによりセラミックス物品(人工歯)を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-190760号
【文献】特開2001-234202号
【文献】特開2019-26594号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献3に開示される方法では、焼結前の成形体を光造形技術により製造できるため、モールド金型などを別途準備することなく、所望の形状の成型体を得ることができる(少量多品種生産に適している)という利点がある半面、前記したような煩雑な方法で30nm以下のジルコニア1次粒子が重合性単量体中に分散した原料組成物を調製する必要があり、(たとえば、規格化された)同一の形状を有する成形体、延いてはセラミック物品を大量に製造するには不向きである。
【0007】
これに対し、特許文献1や2に記載された方法では、前記コンパウンドは粉体状やペレット状を有して取り扱い易く、しかも成形に際しては、射出成形法、プレス成形法、鋳込み成形法などの成形法が適用できるため、所定形状のセラミック物品を一定の規模以上で量産する場合に適した方法であると言える。
【0008】
しかしながら、コンパウンド調製に際しては、成形性を向上させるためにセラミック無機粉体に熱可塑性樹脂等の有機バインダーを混練する必要があり、そのためには有機バインダーが溶融する様な(例えば160℃~170℃といった)高温で加圧式ニーダー、双腕式ニーダー又はスクリュー押出機等の専用の装置を用いて混錬を行う必要がある。そのため、セラミック製歯科加工用ミルブランクのような規格化された形状を有する物品であっても、比較的生産規模の小さい物品を製造する場合には、設備費負担が大きくまたエネルギーコストもかかると言う点で、必ずしも経済的な方法であるとは言えなかった。
【0009】
そこで、本発明は、加圧式ニーダーやスクリュー押出し機といった大型装置を用いた混練を必要とせず、また100℃以上といった高温での処理を必要とせずに、十分な成形性を有するセラミック原料コンパウンドを製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記技術手段により上記課題を解決するものである。
【0011】
すなわち、本発明の第一の形態は、焼結可能なセラミック原料無機粉体(A):100質量部、及び分子内に複数の重合性基を有するか、又は1つの重合性基と少なくとも1つの水素結合性基を有する、分子量が50以上1000以下の有機化合物からなる重合性単量体(B):1質量部以上25質量部未満、を含むセラミック原料コンパウンドの製造方法であって、前記セラミック原料無機粉体(A)100質量に対して、1質量部以上25質量部未満となる量の前記重合性単量体(B)が有機溶媒(C)に溶解したモノマー溶液(D)と、前記セラミック無機粉体(A)100質量部と、を混合して、前記セラミック原料無機粉体(A)が前記モノマー溶液(D)中に分散したスラリーを調製するスラリー化工程、及び前記スラリー化工程で得られた前記スラリーから前記有機溶媒(C)を除去する溶媒除去工程、を含んでなることを特徴とする、前記セラミック原料コンパウンドの製造方法(以下、「本発明の原料製法」ともいう。)である。
【0012】
上記本発明の原料製法においては、前記セラミック原料コンパウンドは重合開始剤を含まないことが好ましく、また、前記セラミック原料コンパウンドは、粉粒体であることが好ましい。
【0013】
本発明の第二の形態は、本発明の第一の形態である前記方法によりセラミック原料コンパウンド粉粒体を製造する工程、前記工程で得られたセラミック原料コンパウンド粉粒体を成形し、所定の形状を有するグリーン体を得る成形工程、及び前記成形工程で得られたグリーン体を直接又は脱脂処理後に焼結する焼結工程を含んでなることを特徴とする、セラミック製物品の製造方法(以下、「本発明の物品製法」ともいう。)である。
【0014】
本発明の第三の形態は、本発明の物品製法によりジルコニア歯科用ミルブランクを製造する、ジルコニア歯科用ミルブランクの製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のセラミック原料コンパウンドの製造方法(本発明の原料製法)では、有機バインダーとして重合性単量体(B)を使用しているため、これを有機溶媒(C)に溶解させて焼結可能なセラミック原料無機粉体(A)と混合してから有機溶媒(C)を除去すると言う簡単な方法で両者が均一な状態で複合化されたコンパウンドを得ることができる。このため、加圧式ニーダーやスクリュー押出し機等の高価な装置を使用することなく、且つ高温加熱することなく、原料コンパウンドを製造することができる。しかも、得られるセラミック原料コンパウンドは、従来の有機樹脂系バインダーを用いたコンパウンドと同様に、良好な成形性及び成形後における保形性を有する。また、コンパウンドは、取り扱い易く、しかも量産に適した射出出成形法、プレス成形法、鋳込み成形法などの成形法が適用できる粉粒体として得ることができる。
【0016】
したがって、本発明の原料製法で得られた前記セラミック原料コンパウンドを用いる本発明のセラミック製物品の製造方法(本発明の物品製法)は、コンパウンド調製において上記したような高価な装置を用いた加熱混錬法を採用することにコストメリットを見出すことができないような規模でセラミック製物品を製造する場合に適した方法であると言える。
【0017】
本発明の原料製法で製造するセラミック原料コンパウンドは、焼結可能なセラミック原料無機粉体(A):100質量部、及び分子内に重合性基を有する有機化合物からなる重合性単量体(B):1質量部以上25質量部未満、を含んでなる。ここで、上記重合性単量体(B)は有機バインダーとして機能するものである。前記したように、従来のセラミック原料コンパウンドでは、有機バインダーとしては、加熱時に軟化或いは低粘度化して良好な成形性を示し、成形後に常温となった場合には硬化或いは高粘度化して良好な形態保持性を示す高分子量の「有機樹脂」を用いるのが一般的である。これに対して、本発明で使用する前記重合性単量体(B)は、低分子量であるにもかかわらず、前記特許文献3に記載された方法のように成形時において重合開始剤を配合した重合硬化工程を行わなくても良好な成形性及び成形後における保形性を有する。その理由は、必ずしも明らかではないが、溶媒除去工程や成形工程における、減圧操作や比較的低温での加熱操作、および加圧操作などによりモノマーの一部が自然に重合するためであると推定している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.本発明のセラミック原料コンパウンドの製造方法(本発明の原料製法)
本発明の原料製法は、前記セラミック原料無機粉体(A)100質量に対して、1質量部以上25質量部未満となる量の前記重合性単量体(B)が有機溶媒(C)に溶解したモノマー溶液(D)と、前記セラミック無機粉体(A)100質量部と、を混合して、前記セラミック無機粉体(A)が前記モノマー溶液(D)中に分散したスラリーを調製するスラリー化工程、及び前記スラリー化工程で得られた前記スラリーから前記有機溶媒(C)を除去する溶媒除去工程、を含んでなることを特徴とする。
【0019】
まず、本発明の原料製法で使用する各種原材料について説明する。
なお、本明細書においては特に断らない限り、数値x及びyを用いた「x~y」という表記は「x以上y以下」を意味するものとする。かかる表記において数値yのみに単位を付した場合には、当該単位が数値xにも適用されるものとする。また、本明細書において、「(メタ)アクリル系」との用語は「アクリル系」及び「メタクリル系」の両者を意味する。
【0020】
1-1.セラミック原料無機粉体(A)
セラミック原料無機粉体(A)としては、焼結可能なセラミックの粉体であれば特に限定されず、オキサイドセラミック粉体、非オキサイドセラミック粉体が使用できる。オキサイドセラミックを具体的に例示すると、ジルコニア、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、シリカジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、二ケイ酸リチウムなどを挙げることができ、非オキサイドセラミックを具体的に例示すると、炭化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素などを挙げることができる。これらの中でも、強度等の観点から、ジルコニア、アルミナ、シリカ、シリカジルコニアの粉体を使用することが好ましい。これらの無機粉体は、2種類以上の無機粉体を混合して使用してもよく、例えばジルコニアとアルミナの混合粉体、ジルコニアとシリカの混合粉体などを用いてもよい。セラミック製歯科加工用ミルブランクのような歯科用途のセラミック物品用のセラミック原料コンパウンドに用いる場合には、色調、強度、靱性の観点からジルコニア粉体を主成分とするセラミック原料無機粉体を使用することが好ましい。ここで、主成分とはセラミック原料無機粉体全体の重量を100重量部とした時に80重量部以上であることを指す。
【0021】
セラミック原料無機粉体としては、取り扱いが容易でかつ結晶の相変態が生じにくいという理由及び焼結により粒成長が進みすぎないという理由から、平均結晶子径が0.001μm~50μmのものが好適に用いられる。平均結晶子径0.003μm~20μmの粉末を用いることがより好ましい。
【0022】
さらにセラミック原料無機粉体の凝集粒子の形状(外形)は、球形であっても非球形であってもよく、凝集粒子の平均粒子径も特に限定されないが、取り扱いやすさ及び成形性の観点から、形状は球状もしくは略球形が好ましく、凝集粒子の平均粒子径は5μm以上300μm以下が好ましい。ここで、凝集粒子の平均粒子径とは、特記しない限り、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察に基づいて次のようにして決定された値である。すなわち、SEMにより観察される前記セラミック原料無機粉体(A)の凝集粒子が球状又は略球状の場合には、SEM観察画面において無作為に抽出した100個の凝集粒子の最大径である凝集粒子径(Xi)を測定し、測定値に基づき、下記式1により凝集体の平均粒子径を算出することにより決定された値を意味する。また、SEMにより観察される前記セラミック原料無機粉体(A)の粒子が不定形の場合には最大径を凝集粒子径(Xi)とみなし、球状の場合と同様に下記式1により凝集体の平均粒子径を算出することにより決定された値を意味する。
【0023】
【0024】
セラミック原料無機粉体(A)は、焼結助剤を含んでもよい。焼結助剤とは、セラミックスを製造する際の焼結を促進させるために添加される無機粉体であり、主材となる焼結可能なセラミックの粉体の種類に応じて、公知のものが使用できる。例えば、主材がアルミナ粉体である場合には、シリカ、マグネシア、カルシア等が好適であり、主材がジルコニア粉体である場合にはアルミナ等が好適である。セラミック原料無機粉体(A)が焼結助剤を含む場合における焼結助剤の添加量は、主材である焼結可能なセラミックの粉体100質量部に対して、通常、0.005~10質量部の範囲である。
【0025】
1-2.重合性単量体(B)(以下、「モノマー」とも言う。)
重合性単量体(モノマー)(B)としては、分子内に重合性基有する有機化合物からなるものであれば特に限定されないが、有機溶媒に対する溶解性の観点から、その分子量は、50~1000、特に100~500であることが好ましい。また、脱脂、焼成工程により容易に除去できると言う観点から、モノマー分子構成する炭素及び水素以外の元素が酸素及び/又は窒素のみである有機化合物からなることが好ましい。
【0026】
なお、重合性基とは光や熱などの刺激によって重合し得る官能基を意味し、具体的には、(メタ)アクリル基、ビニル基等のラジカル重合性基、エポキシ基、オキセタン基等のカチオン重合性基、アニオン重合性基などを挙げることができる。
【0027】
セラミック製歯科加工用ミルブランクのような歯科用途のセラミック物品用のセラミック原料コンパウンドに用いるモノマーにおける重合性基は、安全性等の理由から(メタ)アクリル基であることが好ましい。また、セラミック原料コンパウンドの成形性や成形後の形態保持性の観点から、重合性基は、(メタ)アクリル基又はエポキシ基であることが好ましい。更にこれら効果がより高まると言う観点から、モノマーとしては、分子内に複数の重合性基を有するか、又は1つの重合性基と少なくとも1つの水素結合性基を有するものを使用することが好ましい。ここで、水素結合性基とは分子内もしくは分子間で双極子相互作用し得る官能基を意味し、具体的には、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基等を挙げることができる。
【0028】
(1)分子内に複数の重合性基を有するとして、好適なものを例示すれば、(メタ)アクリル基を複数有するモノマーとして、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ウレタンジメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート、1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルヘキサン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等を挙げることができる。
【0029】
(2)1つの重合性基と少なくとも1つの水素結合性基を有するものを例示すれば、重合性基がエポキシ基であるものとして、メタクリル酸グリシジル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等を、重合性基が(メタ)アクリル基であるものとして、メタクリル酸、フタル酸2-メタクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-メタクリロイルオキシエチル、2-メタクリロイルオキシエチルサクシネート、11-メタクリロキシ-1,1-ウンデカンジカルボン酸、4-メタクリロキシエチルトリメリット酸等を挙げることができる。
【0030】
これらモノマーは1種を単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0031】
本発明におけるモノマーの含有量は、前記セラミック原料無機粉体(A)100質量部に対して1質量部以上25質量部未満である必要がある。モノマーの含有量が1質量部未満の場合、モノマーの添加理由である成型性の向上が得られず、一方、含有量が25質量部以上の場合、脱脂後や焼成後に十分な強度が得られないことがあるばかりでなく、成型の際にセラミック原料無機粉体(A)とモノマー(B)で一部分離してしまうことがある。モノマーの上記含有量は4~15質量部であることが好ましい。なお、モノマー(B)は、スラリー化工程や溶媒除去工程において、その一部が重合して比較的低分子量の重合体やオリゴマーとなっている可能性があるが、その量を定量することは困難であるので、本発明では、セラミック原料コンパウンドにおけるモノマー(B)の含有量は、これらを含めた量(別言すれば、混合したモノマー量)で表している。
【0032】
1-3.有機溶媒(C)
有機溶媒(C)としては、前記モノマー(B)を溶解し、且つ沸点が、使用する前記モノマー(B)の沸点より低いものであれば、公知の有機溶媒が特に制限されず使用できる。溶媒除去工程における除去性の観点から、有機溶媒としては、常温常圧(25℃、1気圧下)での沸点が200℃以下、特に120℃以下のものを使用することが好ましい。
【0033】
好適に使用できる有機溶媒を例示すれば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、アセトン、ジエチルエーテル、ヘキサン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルムなどを挙げることができる。
【0034】
これら溶媒は1種を単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよく、2種以上を混合して使用する場合は互いに相溶するものが好ましい。また、モノマーの溶解を阻害しない量であれば水を含んでもよい。
【0035】
1-4.その他添加物等
本発明の原料製法を用いて作製されるセラミック原料粉体には、混合段階において前記セラミック原料無機粉体(A)及び前記モノマー(B)の他に、無機顔料、有機顔料、蛍光剤、紫外線吸収剤、無機粉体分散剤等の添加材を配合することができる。また、効果に悪影響を与えない範囲で、前記モノマー(B)以外の有機成分として他の有機物を添加することもできる。ただし、操作性の観点から、重合開始剤は含まないことが好ましい。なお、重合開始剤とは、ラジカル重合開始剤のような前記モノマー(B)を重合硬化させる機能を有する化合物又は化合物の組み合わせを意味する。
【0036】
次に、本発明の原料製法におけるスラリー化工程及び溶媒除去工程について説明する。
【0037】
1-5.スラリー化工程
スラリー化工程では、前記セラミック原料無機粉体(A)100質量に対して、1質量部以上25質量部未満となる量の前記重合性単量体(B)が有機溶媒(C)に溶解したモノマー溶液(D)と、前記セラミック原料無機粉体(A)100質量部と、を混合して、前記セラミック無機粉体(A)が前記モノマー溶液(D)中に分散したスラリーを調製する。
【0038】
モノマー溶液(D)を調製する際に使用する有機溶媒(C)の量は、均一混合性、操作性及び溶媒除去性の観点から、使用するモノマー(B)を溶解できる量で且つセラミック原料無機粉体(A)とモノマー(B)の総量:100質量部に対して、50質量部以上であることが好ましく、100~3000質量部、特に100~2000質量部とすることがより好ましい。
【0039】
スラリーの調製は、容器内でモノマー溶液(D)とセラミック原料無機粉体(A)とを混合し、撹拌等により均一化することにより好適に行うことができる。均一化方法としては、撹拌、振盪、振動、超音波等による方法が採用できる。さらに、分散性向上の観点から、ホモジナイザーやボールミル等と用いた分散処理を行ってもよい。また、混合に際しては、結果として前記セラミック無機粉体(A)が前記モノマー溶液(D)中に分散したスラリーが得られる方法であれば特に限定されないが、予めモノマー溶液(D)を調製し、これとセラミック原料無機粉体(A)を混合するのが一般的である。このとき、より短時間でスラリーを均一化するという観点から、セラミック原料無機粉体(A)を事前に有機溶媒及び/又は水と混合してスラリー化しておき、これをモノマー溶液(D)と混合してもよい。この時、前記有機溶媒はモノマー溶液(D)で使用した有機溶媒(C)と同じものであっても、異なるものであってもよいが、均一に混合するという観点から互いに相溶し、且つ、モノマー(B)の溶解を阻害しない有機溶媒及び/又は水を使用することが好ましい。
【0040】
1-6.溶媒除去工程
溶媒除去工程では、スラリー化工程にて調製したスラリーから有機溶媒(C)を除去しセラミック原料コンパウンドを作製する。
【0041】
溶媒除去の方法としては、前記有機溶媒(C)をスラリーから除去できる方法であれば特に限定されないが、溶媒除去にかかる時間の短さや溶媒をほぼ全て除去できるという観点から、減圧乾燥法及び/又は加熱乾燥法を採用することが好ましい。ここで、減圧乾燥法とは、例えば800ヘクトパスカル以下での減圧下にて溶媒を除去する方法であり、加熱乾燥法とは、室温以上の温度にて溶媒を除去する方法であり、減圧下で加熱することにより、有機溶媒の沸点よりも低い温度で有機溶媒の除去(乾燥)を行うことができる。高温下での処理を必要としないと言う観点から、加熱乾燥法を採用する場合でも、適宜減圧乾燥法と併用する等して100℃以下の温度で乾燥させることが好ましい。溶媒除去工程を得ることにより、焼結可能なセラミック原料無機粉体(A):100質量部、及び分子内に重合性基を有する有機化合物からなる重合性単量体(B):1質量部以上25質量部未満、を含むセラミック原料コンパウンドを得ることができる。
【0042】
本発明の原料製法では、有機バインダーとして低分子量の重合性単量体(B)を用いているため、取り扱い易い粉粒体の形態で上記セラミック原料コンパウンドを得ることができる。ここで、粉粒体とは、粉体及び粒体の総称であり、具体的には、前記セラミック原料無機粉体(A)を構成する1次粒子の表面に前記重合性単量体(B)が付着した粒子:a1、当該粒子a1が凝集した凝集粒子:a2、及び当該凝集粒子a2が解砕された粒子:a3、並びに前記セラミック原料無機粉体(A)を構成する凝集粒子の表面に前記重合性単量体(B)が付着した凝集粒子:a4、当該凝集粒子a4が凝集した凝集粒子:a5、及び当該凝集粒子a5が解砕された粒子:a6からなる群より選ばれる少なくとも1種の粒子を含む粉体を意味する。なお、前記重合性単量体(B)を介して無機粒子が結合する場合であってもその結合力は弱いので簡単に解砕することができる。
【0043】
また、本発明の原料製法で得られる前記コンパウンドは、従来の有機樹脂系バインダーを用いたコンパウンドと同様に、良好な成形性及び成形後における保形性を有する。したがって、セラミック原料コンパウンドを成形する方法としては様々な方法が適用できる。たとえば、有機バインダーとしてオレフィン樹脂系有機バインダーのような熱可塑性樹脂を用いた場合には、加圧式ニーダーやスクリュー押出し機を用いて混錬する必要があるばかりでなく、混錬後の複合化物は冷えると固化するため、熱時に切断されてペレット状のコンパウンドとされるのが一般的であり、これを成形するためには、再度加熱して可塑性を付与する必要がある。このため、成形方法は、そのような工程を含む射出成形法のような方法に限定されてしまう。射出成形法は、装置自体が高価であるばかりでなく再加熱にエネルギーや手間がかかるため、樹脂系バインダーを用いる場合には、コンパウンド化時と合わせて二重に負担がかかると言える。これに対し、本発明の原料製法で粉粒体のコンパウンドを製造した場合には、それをそのまま型に入れて圧縮するだけで所望の形状に成形することが可能であるので、成形時の負担を軽減することができる。
【0044】
2.本発明のセラミック製物品の製造方法(本発明の物品製法)
前記したように、セラミック原料コンパウンドの製造工程として前記本発明の原料製法で粉粒体のコンパウンドを製造する工程を含む本発明の物品製法は、セラミック原料コンパウンドの製造工程として前記本発明の原料製法を採用することによる利点を有するだけでなく、このような粉粒体のコンパウンドを用いることによる利点を有するものであり、コンパウンド調製において上記したような高価な装置を用いた加熱混錬法を採用することにコストメリットを見出すことができないような規模でセラミック製物品を製造する方法、特にジルコニア歯科用ミルブランクのような歯科用セラミック物品を製造する方法として好適である。
【0045】
以下、本発明の物品製法について詳しく説明する。
本発明の物品製法は、本発明の原料製法により、セラミック原料コンパウンド粉粒体を製造する工程、前記工程で得られたセラミック原料コンパウンド粉粒体を成形し、所定の形状を有するグリーン体を得る成形工程、及び前記成形工程で得られたグリーン体を直接又は脱脂処理後に焼結する焼結工程を含んでなることを特徴とする。
【0046】
2-1.セラミック原料コンパウンド粉粒体を製造する工程
当該工程では、本発明の原料製法により、焼結可能なセラミック原料無機粉体(A):100質量部、及び分子内に重合性基を有する有機化合物からなる重合性単量体(B):1質量部以上25質量部未満、を含むセラミック原料コンパウンドを粉粒体の形態で得る。具体的には前記a1乃至a6からなる群より選ばれる少なくとも1種の粒子を含む粉体を製造する。前記したように、前記重合性単量体(B)を介して無機粒子が結合する場合であってもその結合力は弱いので簡単に解砕することができるので、必要に応じて解砕を行うことにより、若干大きめにシフトするものの、使用したセラミック原料無機粉体(A)と同程度の粒度分布とすることもできる。取り扱いの容易さ及び圧縮成形時の生成性の観点から、必要に応じて解砕を行うことにより、使用したセラミック原料無機粉体(A)と同程度の粒度分布とすることが好ましい。
【0047】
2-2.成形工程
成型工程では、前記工程で得られたセラミック原料コンパウンド粉粒体を用いて所定形状の圧縮成形体又はグリーン体を得る。このとき成形方法は、原料として前記セラミック原料コンパウンド粉粒体を用いる以外は、従来の方法と特に変わる点は無く、プレス成形、押出成形、射出成形、鋳込成形、テープ成形、積層造形による成形、粉末造形による成形等、粉体成形法或いはグリーン体成型法として知られている方法が特に制限なく使用できる。また、多段階的な成形を施してもよい。例えば、本発明のセラミック原料コンパウンド粉粒体を一軸プレス成形した後に、さらにCIP(Cold Isostatic Pressing;冷間静水等方圧プレス)処理を施したものでもよい。高密度の成形に向いているという観点から、成型方法としてはプレス成型を用いるのがより好ましく、例えば、1軸プレス成型、2軸プレス成型、HIP(Hot Isostatic Pressing;熱間等方圧プレス)成型、CIP(Cold Isostatic Pressing;冷間静水等方圧プレス)成型等が挙げられる。
【0048】
また、成形工程において、複数種のセラミック原料コンパウンド粉粒体を積層し成形してもよい。
【0049】
成型工程で得られる圧縮成形体又はグリーン体の形状は、目的とするセラミック物品の形状に応じて適宜決定すればよいが、歯科用ミルブランクを製造する場合には、円盤状のもの(ディスクタイプ)、或いは直方体又は略直方体形状のもの(ブロックタイプ)とすることが一般的である。
【0050】
2-3.焼結工程
焼結工程では、前記成形工程で得られた圧縮成形体又はグリーン体を焼結温度で一定時間加熱して、焼結体を得る。ここで、焼結(焼成或いは焼き締めとも呼ばれる。)とは、その温度(或いは温度範囲)で一定時間保持して、圧縮成形体又はグリーン体をセラミック原料無機粉体の融点以下の温度に加熱して、粉末粒子を互いに表面拡散(凝着、融着)させて多結晶体に変化させることを意味する。但し、必ずしも完全に焼結させる必要はなく、用途によっては、焼結に至らない温度で焼成した所謂「仮焼体」の状態であってもよい。たとえば、ジルコニア歯科用ミルブランクは所謂ジルコニア仮焼体の状態で提供され、使用時にCAD/CAMシステムを用いて歯冠形状に切削加工されてから本焼結を行うことも多い(例えば国際公開WO2016/104724パンフレット参照。)。本発明の物品製法の目的物であるセラミック製物品は、このような仮焼体をも含む概念である。また、上記焼結温度とは、その温度(或いは一定の温度範囲内)に一定時間保持して、所望の程度に焼結(仮焼を含む)を進行させる温度(或いは温度範囲)をいう。強度や加工性の観点から、600℃~1800℃が好ましい。
【0051】
また、本発明の物品製法では、焼結工程における焼結を行う前に脱脂処理を行うこともできる。ここで、脱脂処理とは、前記成形工程で得られた圧縮成形体又はグリーン体に含まれる水分、溶媒、バインダーなどを揮発除去或いは分解除去する処理を意味する。これら処理は、通常、100℃以上、1100℃以下であって且つ焼結温度よりも低い温度で行われる。
【0052】
脱脂処理の方法としては、従来から知られている方法が特に制限されず使用でき、連続的に行っても、多段階的に行ってもよい。また、有機物を効率的に除去するため、酸素を含む空気雰囲気下で行うことが好ましい。なお、脱脂処理は、その前工程である成形工程及び/又はその後に行われる焼結工程と同一の装置を用いた方法、例えばSPS(放電プラズマ焼結:Spark Plasma Sintering)法やHP(ホットプレス)法等により、連続的に行うこともできる。
【0053】
本発明の物品製法は、ジルコニア歯科用ミルブランクの製法として好適に採用できる。歯科用ジルコニアとしては、イットリア、カルシア、マグネシア、セリア、酸化エルビウム等の安定化剤、アルミナ等の焼結助剤、及び、酸化鉄、酸化コバルト等の顔料を含むものが一般的であり、本発明で製造されるジルコニア歯科用ミルブランクにおいてもこれらが含まれていてもよい。本発明の物品製法により好適に製造されるジルコニア歯科用ミルブランクは、特に限定されるものではないが、強度と審美性の観点から、焼結後に正方晶が主成分となる部分安定化ジルコニアからなるものが好ましい。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらにより何等制限されるものではない。まず、以下に、各実施例および比較例のサンプルの作製に用いた物質の略称・略号等について説明する。
【0055】
<セラミック原料コンパウンドの原材料>
1.セラミック原料無機粉体(A)
・TZ-6Y:東ソー株式会社製ジルコニア、バインダー未含有品、平均一次粒径40nm、凝集粒子の平均粒子径40μm、イットリア含有量6mol% 。
【0056】
2.重合性単量体(B)
・3G(トリエチレングリコールジメタクリレート):新中村化学工業株式会社製、分子量=123、分子内にメタクリル基を2つ有する
・UDMA(1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルヘキサン):デグッサ製、分子量=471、分子内にメタクリル基を2つ有する
・CB-1(2-メタクリロイロキシエチルフタル酸):新中村化学工業株式会社製、分子量=278、分子内にメタクリル基1つとカルボキシ基1つを有する
・GMA(メタクリル酸グリシジル):富士フィルム和光純薬株式会社製、分子量=142、分子内にメタクリル基1つとエポキシ基1つを有する
・OXT-211((3-エチルオキセタン3-イル)メチルフェノール):東亜合成株式会社製、分子量=192、分子内にオキセタン基を1つ有する
・OXE-30((3-エチルオキセタン3-イル)メチルメタクリレート):大阪有機化学工業株式会社製、分子量=184、分子内にメタクリル基1つとオキセタン基1つを有する。
【0057】
3.重合性単量体(B)以外の有機化合物
・1,5-ペンタンジオール:富士フィルム和光純薬株式会社製、分子量=104、分子内に2つのヒドロキシ基を有する
・PEG200(ポリエチレングリコール):富士フィルム和光純薬株式会社製、平均分子量=180~220
・PEG400(ポリエチレングリコール):富士フィルム和光純薬株式会社製、平均分子量=360~440
・PEG2000000(ポリエチレングリコール):富士フィルム和光純薬株式会社製、分子量=約200万。
【0058】
4.有機溶媒(C)
・エタノール:富士フィルム和光純薬株式会社製。
【0059】
実施例1
TZ-6Y 10gとエタノール 90gを秤量後、15分間超音波(アズワン株式会社製 卓上型超音波洗浄機MODEL VS-150、50kHz)をあてることでTZ-6Y分散液を得た。3G 1.21gとエタノール 5gを秤量、撹拌子を用いて混合し、3G溶液を得た。TZ-6Y分散液に3G分散液を加え、2時間撹拌子を用いて混合した。その後、エバポレーターを用い、常温下にて減圧することでエタノールを除去し、セラミック原料コンパウンド粉体を得た。
【0060】
得られたセラミック原料コンパウンド粉体1gを直径16mmのプレス用金型を用いて最大荷重1tで一軸プレスし成型体を作製した。合計4枚の成型体を作製し、その結果を評価した。以下に評価基準を示す。
評価基準:
◎:4枚全て、問題なく成型可能であった。
○:3枚が、問題なく成形可能であった。
△:2枚が、問題なく成型可能であった。
×:1枚しか成型できなかった、もしくは、1枚も成型できなかった。
評価結果を表1に示す。
【0061】
実施例2~8
モノマー(B)の原料及び配合重量を表1に示すように変える他は実施例1と同様にしてセラミック原料コンパウンド粉体を調製し、同様に成型性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
比較例1
TZ-6Y 10gとエタノール 90gを秤量、混合後、15分間超音波を当てることでTZ-6Y分散液を得た。TZ-6Y分散液を2時間撹拌子を用いて混合した。その後、エバポレーターを用い、常温下にて減圧することでエタノールを除去し、セラミック原料コンパウンド粉体を得た。その後、実施例1と同様にして成型性評価を行った、結果を表1に示す。
【0063】
比較例2~4
モノマー(B)の原料及び配合重量を表1に示すように変える他は実施例1と同様にしてセラミック原料コンパウンド粉体を調製し、実施例1と同様にして成型性評価を行った、結果を表1に示す。
【0064】
比較例5
TZ-6Y 10gとエタノール 90gを秤量、混合後、15分間超音波を当てることでTZ-6Y分散液を得た。PEG2000000 0.51gとエタノール 5gを秤量、混合し、PEG2000000分散液を得た。TZ-6Y分散液にPEG2000000分散液を加え、2時間撹拌子を用いて混合した。その後、エバポレーターを用い、常温下にて減圧することでエタノールを除去し、セラミック原料コンパウンド粉体を得た。その後、実施例1と同様にして成型性評価を行った、結果を表1に示す。
【0065】
【0066】
表1示されるように実施例1~8では、良好な成型性を示した。これに対し、バインダーとなる有機化合物を含まない比較例1、及び、バインダーとしてモノマーでない低分子量の有機化合物を添加した比較例2~4では成形性が極めて低かった。さらに、バインダーとしてモノマーではない高分子量の有機化合物を添加した比較例5では、揮発性溶媒中に溶けず、結果として無機粉体とバインダーが均一複合化された粉体を得ることができず、成型性極めて低かった。